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高齢者の健康と労働(PDF:129KB)

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Academic year: 2021

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日本労働研究雑誌 1  高齢者という場合,まず高齢者とは何歳以上で あるかの定義が必要である。  国連が高齢者の定義を 65 歳以上に決めたのは もう半半世紀前のことであったが,その頃の日本 人の平均寿命約 68 歳であった。だからその後を 余生として良かったが,今では 65 歳以上の平均 寿命は男は 79 歳,女は 86 歳にもなっているのだ から,これでは若すぎ,75 歳以上を新しい定義 での老人としてもよいので,私は約 10 年前に 「新老人」という造語を作り,「新老人の会」を立 ち上げた。その後 75 歳以上を「シニア会員」,60 歳以上を「ジュニア会員」,20 歳以上を「サポー ター会員」とし,現在 1 万 2000 名近くの会員が 登録されている。  上述のごとく,私流に高齢者を定義して論を進 めたいと思う。なお半世紀前には 100 歳以上の日 本人は 125 名であったのが,2009 年度の統計で は,今では 4 万 399 名と激増である。  高齢者は 65 歳を過ぎても,その大部分は身体 的に自立できるが,日本に 2000 年に介護保険の 制度ができてからは,些細の身体的故障があれば 介護が受けられることから,社会的に自立できる のに介護を受けている人があることは残念である。  現在は電動車いすや自動車運転が高齢者でもで きるので,普通の社会的生活ができるのに,介助 を求める人が少なくないことは遺憾である。  昔は労働者というと,カーキ色の作業着を着 け,デスクワークの人と言えば,ホワイトカラー 族と言われて来たが,現在昔多かった重労働者は 陰をひそめている。  昔は重い石を運んだり,荒れた山野を真夏にも 鍬を持って耕したが,今や労働者と言われる人も トラックに乗って,作業は皆機械が代行し,高層 ビルを建てるのも作業員は運転台に乗ってギアを 手に握って作業するだけで,重い鉄骨やコンク リートで出来合いの箱を高層の階に自在に積み上 げることができるのである。  重い石を運んだり,炎天下に重い鍬を持って荒 れ地を耕すことの必要のない労働者や農民は,今 や体力消耗の点からホワイトカラーとは余り違わ ないし,昔は重労働者と言われた者でも,摂取カ ロリーは昔のように 1 日 4000 キロカロリーもの 食品摂取など不要となったのである。  以上の理由から普通の高齢者や,またたとえ体 に何らかの障害を持っている高齢者でも普通人の 如く働くことができるのである。  現在は例えば 80 歳以上で心臓弁膜症をもつ老 人が,外科医が開胸し心臓を切り開いて人工弁を 縫いつけるような,昔では大手術と言われたよう な手術を受けても,術後 5 日後には退院して普通 生活ができ,したがって心臓病の外科手術を受け た老人でも術後 2 週間後には自宅またはオフィス で仕事を再び行うことができるのである。  以上の如くであるので,75 歳以上の高齢者で も,何かの仕事が行える体力や知力を持っている 人が圧倒的に多いと言って良いのである。しか し,問題はそういう高齢者に仕事の場を提供する 施設や会社,学校がないと言うことである。  そうなれば高齢者自らがボランティアの仕事を 探して,これを実行するほかないのである。  私は 1911 年,明治 44 年生まれで,あと 4 カ月 で満 99 歳になるが,未だに聖路加国際病院の理 事長をしながら,ボランティアとして研修医の臨 床医学の現場での教育的回診を行い,夜間でも看 護大学院生に 2 時間続きの講義や実習を立ったま ま行っている。500 人以上 2000 人まで収容する 大講堂での 1 時間半の立ったままでの講演を日本 だけでなく,外国でも,過去 1 年間に約 150 回を 行い,10 歳の子供への「命の授業」を全国の小 学校で年 40 回行っている。  癌の手術を行い,胃全摘や大腸癌や肺がんで摘 出手術を受けた老人でも,ボランティアの種々の 仕事を積極的に引き受けることが可能である。  癌を今持ちながらもピアノを演奏し,オーケス トラの指揮をしている高齢者のいることを私は 知っているのである。  要は,齢(よわい)に負けず,内なるスピリッ トを発揮して「生き甲斐」を持って行える仕事は 沢山あることを申したい。 (ひのはら・しげあき 聖路加国際病院理事長)

提 言

高齢者の健康と労働

日野原 重明

参照

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