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道の駅の地域振興に関する一考察

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The New Role of MICHINOEKI for Local Promotion

佐 藤

Yoshinobu Sato

快 信、西 川

Yoshiaki Nishikawa

芳 昭、鶴 渕

Teppei Turubuchi

鉄 平

長崎ウエスレヤン大学現代社会学部紀要

10巻1号

Bulletin of Faculty of Contemporary Social Studies

Nagasaki Wesleyan University

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[現代社会学部紀要 10巻1号,P53-62(2012)(一般論文)] キーワード:道の駅、地域活性化、国際協力、ベ トナム、農産物直売所 概 要:  1993年5月に誕生した「道の駅」は、「休憩機 能」、「情報機能」、「地域の連携機能」という3つ の機能を軸に展開された。2011年8月には977か所 に拡大し、「道の駅」そのものに対する消費者の認 知度も高まっていて、集客力のある、または期待 のできる施設として存在してそのポジションを獲 得しつつある。  また。「道の駅」は、「一村一品運動」と並んで 地域振興に対する有効な手段として海外に紹介さ れ、特に開発途上国の地域開発に国際協力機構等 を通じてモデル事業や実践が展開されてきている。  本報告では、「道の駅」の定義・設置状況を把握 し、「道の駅」に併設される農産物直売所の果たす 役割と振興の拡大の可能性について日本国内の状 況について概観した後、筆者たちが関わることに なったベトナム国を対象とする「道の駅」をテー マとするJICAの研修プログラムについても報 告する。 はじめに  1993年5月に誕生した「道の駅」は、「休憩機 能」、「情報機能」、「地域の連携機能」という3つ の機能を軸に展開された。その意味では、一般国 道に3つの機能を備えたお立ち寄り場として存在 していた。「道の駅」は、初年度に103か所からス タートし、2011年8月には977か所に拡大し、「道 の駅」そのものに対する消費者の認知度も高まっ ていて、集客力のある、または期待のできる施設 として存在してそのポジションを獲得しつつある。  そのため、新たに設置される「道の駅」では、 その集客力を活かして「直売所」を設置し、目玉 として位置づけられるケースも少なくない。その 流れのなかで、徐々に農産物または海産物の「直 売所」、「加工品の販売」、地産地消の「レストラ ン」というものを備えながら中山間地域や農山村 の振興における地場産業活性化の拠点として、そ の機能を拡大してきている。  また、「道の駅」は、「一村一品運動」と並んで 地域振興に対する有効な手段として海外に紹介さ れ、特に開発途上国の地域開発に国際協力機構(以 下、JICA)等を通じてモデル事業や実践が展 開されてきている。  本報告では、「道の駅」の定義・設置状況を把握 し、農産直売所の果たす役割と振興の拡大の可能 性について日本国内の状況について概観した後、 筆者たちが関わることになったベトナム国を対象 とする「道の駅」をテーマとするJICAの研修 プログラムについても報告する。 1.道の駅の定義、設置状況、地域振興 1.1 「道の駅」の定義・機能  「道の駅」の所轄官庁は、国土交通省1(以下、 国交省)である。国交省によれば『「長距離ドライ ブが増え、女性や高齢者のドライバーが増加する なかで、道路交通の円滑な「ながれ」を支えるた め、一般道路にも安心して自由に立ち寄れ、利用 できる快適な休憩のための「たまり」空間が求め られています。 表1.国土交通省と地方自治体の担当整備施設 国土交通省 地方自治体 道路情報・休憩施設 地域振興施設 駐 車 場 ト イ レ 道 路 情 報 提 供 施 設 休 憩 所 園 地 物 産 館 レ ス ト ラ ン 地 域 情 報 案 内 所 イ ベ ン ト 広 場・ 公 園 郷 土 資 料 館・ 美 術 館 宿 泊 施 設 第 2 駐 車 場 な ど * Received February 2,2012

** 長崎ウエスレヤン大学 現代社会学部 経済政策学科、Faculty of Contemporary Social Studies,Nagasaki Wesleyan University,1212 1 Nishieida,Isahaya,Nagasaki 854 0082,Japan

*** 名古屋大学大学院 国際開発研究科、Graduate School of International Development,Nagoya University Furo-cho, Chikusa-ku,Nagoya 464 8601,JAPAN

道の駅の地域振興に関する一考察

*

佐藤快信 **、西川芳昭 ***、鶴渕鉄平 ***

The New Role of MICHINOEKI for Local Promotion

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 また、人々の価値観の多様化により、個性的で おもしろい空間が望まれており、これら休憩施設 では、沿道地域の文化、歴史、名所、特産物など の情報を活用し多様で個性豊かなサービスを提供 することかできます。  さらに、これらの休憩施設が個性豊かなにぎわ いのある空間となることにより、地域の核が形成 され、活力ある地域づくりや道を介した地域連携 が促進されるなどの効果も期待されます。  こうしたことを背景として、道路利用者のため の「休憩機能」、道路利用者や地域の方々のための 「情報発信機能」、そして「道の駅」をきっかけに 町と町とが手を結び活力ある地域づくりを共に行 うための「地域の連携機能」、の3つの機能を併せ 持つ休憩施設「道の駅」が誕生しました。』2 と説 明されている。  「道の駅」施設は国交省と地方自治体との協力の 下に設置され、経営は第三セクターの法人あるい は農協や民間企業などに委託して行われ、施設設 置者と経営主体が異なる点が大きな特徴でもあ る。表1に示されるように、国交省は道路情報休 憩施設、地方自治体は地域振興施設とそれぞれ整 備するものが異なる。  「道の駅」は、車移動者のための休憩場所という 点では、従来の民間によるドライブインや高速道 路のP.A.、S.A.と似ているが、通過交通者で あった人たちに対して地域情報を提供し外来者と 地元住民との交流が行われる場所であるという点 が異なる。また、民間のドライブイン3 は休憩・ 食事が基本であり、地域の産業拠点・交流拠点と しての機能はあまり意識されてはいない。そのた め、地域振興施設の内容は、設置主体、運営主体 の目的、地域資源などによってその内容は駅ごと に異なり、それがそれぞれの「道の駅」の個性と なっている。 1.2 「道の駅」の設置状況  「道の駅」の登録が開始される前から、事実上現 在の「道の駅」に近い機能を備えた施設が設置さ れていた。例えば、1988年11月に新潟県豊栄市(現 在の新潟市北区)に国道7号線に沿って「新新バ イパス豊栄道路情報ターミナル(現在の「道の駅  豊栄」)が当時の建設省によって設置されてい る。また、1990年3月に島根県掛合町(現在の雲 南市)が「ふるさと創生事業」の一環としてドラ イブイン的な施設として「掛合の里」を設置して いる。日本経済が成熟した時期の1980年代後半に は、こうした機能を持つ施設の必要性が高まって いたといえよう。  1990年1月に広島市で開催された「地域づくり シンポ&交流会」の「道路部会」において山口県 阿東町の坂本氏が「鉄道に駅があるように道路に 駅があってもいいのではないか」と発言し、その 提案を受けて建設省(当時)が社会実験をおこな うこととなった。「道の駅」は、1991年(平成3 年)10月~1992年4月に山口県(阿武町、田万川 町)、岐阜県(古川町、国府町、羽生川村、久々野 町、下呂町、加子母村、付知町)、栃木県(河内 町、上三川町、南河内町)の12か所で社会実験が おこなわれ、1993年(平成5年)1月に「道の駅」 の提言、2月に「道の駅」の整備についての要綱 が策定され、4月に103か所が設置されてから、 2011年(平成23年)8月30日までに設置された「道 の駅」は977か所にまでなった(表2)。 表2.都道府県別「道の駅」設置個所数 北海道 113 近 畿 112 福 井 9 東 北 139 青 森 27 滋 賀 15 岩 手 30 京 都 15 宮 城 12 大 阪 8 秋 田 30 兵 庫 30 山 形 17 奈 良 12 福 島 23 和歌山 23 北 陸 70 新 潟 34 中 国 91 鳥 取 12 富 山 14 島 根 27 石 川 22 岡 山 16 関 東 114 茨 城 9 広 島 16 栃 木 19 山 口 20 群 馬 26 四 国 78 徳 島 15 埼 玉 18 香 川 18 千 葉 22 愛 媛 24 東 京 1 高 知 21 神奈川 2 九 州 116 福 岡 16 山 梨 17 佐 賀 8 中 部 144 長 野 41 長 崎 9 岐 阜 53 熊 本 21 静 岡 21 大 分 22 愛 知 14 宮 崎 14 三 重 15 鹿児島 19 沖 縄 沖 縄 7 合  計 977 2011年8月現在  その推移をみてみると、1993年の登録開始から 2000年までは610か所の登録、年平均87か所であ り、その後の2001年から2005年までの5年間では

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道の駅の地域振興に関する一考察 220か所、年平均44か所となっている。さらに、 2006年から2011年までの6年間で130か所、年平均 22か所となっており、登録の伸び幅は縮小してい る。当初のイメージでは、全国に1,000か所とされ ており、ほぼそれに近い設置個所になってきている。  その内訳は、ブロック別でみると、北海道113か 所、東北139か所、関東114か所、北陸70か所、中 部144か所、近畿112か所、中国91か所、四国78か 所、九州・沖縄116か所となっている。都道府県別 でみると、北海道が113か所と最も多く、次いで岐 阜53か所、長野41か所となっている。最も少ない のが東京の1か所、神奈川の2か所で、平均20.8 か所となっている。過去に登録を抹消した事例は 1件あり、2003年12月に登録し2004年3月に登録 を抹消した「道の駅 茶処 和束」がある。そこは、 京都府で最初に登録した「道の駅」でもあった。  設置運営形態別でみると、鉄道駅舎併設型:の だ(三陸鉄道北リアス線陸中野田駅;岩手県)、歓 遊舎ひこさん(JR九州日田彦山線ひこさん駅; 福岡県)など、鉄道駅前設置型:いかりがせき(J R東日本奥羽本線碇ヶ関駅;青森駅)、関宿(JR 西日本関西本線関駅;三重県)など、ハイウェイ オアシス併設型:みぶ(北関東自動車道壬生PA; 栃木県)、小松オアシス(松山自動車道石鎚山S A;愛媛県)など、SA/PA運営型:高松(能 登有料道路高松SA;石川県)、はわい(山陰自動 車道はわいSA;鳥取県)など、みなとオアシス と重複型:あきた港(秋田県)、大阪城残石記念公 園(香川県)など、海の駅と重複:伊東マリンタ ウン(静岡県 海の駅の名称「いとう海の駅」)、 小豆島ふるさと村(香川県 海の駅の名称「しょ うどしま・ふるさと村海の駅」)など、空港併設: 大館能代空港(秋田県)、能登空港(石川県)、な どがある。 2.「道の駅」と地域振興 2.1 「道の駅」の機能と農産直売所  1992年の「道の駅懇談会」で整理された「道の 駅」の3つの機能は、以下のようなものであった (表3) 表3.道の駅の機能 機  能 内     容 休 憩 機 能  一般道路には、『ながれ』を支える『たまり』機能として、道路利用者がいつでも自 由に休憩し、清潔なトイレを利用できる快適な休憩施設が求められている。 情 報 交 流 機 能  地域においては、人と人、人と地域との交流により、地域が持つ魅力を知ってもら い、地域振興が図れるよう、人・歴史・文化・風景・産物等の地域に関する情報を提 供する場が求められている。 地域の連携機能  地域が一体となって『道の駅』をつくるとともに、地域と地域が道を軸として協力 するなど、地域内及び地域間の連携の場となることも期待される。『道の駅』を契機と する広域的な連携と交流により、活力ある地域づくりが促進されることになる。  「情報交流機能」や「地域の連携機能」の面か ら、先述したように高速道路のS.A.、P.A.と異 なり「道の駅」は地域への入り口という面を持つ。  地域の人々との交流拠点としての機能は、農産 物の直売や郷土の伝統食などの提供に見ることが できる。かつて、農産物の直売所は、不定期に道 の駅の軒下やテントで行われていたが、今では「道 の駅」の主要な要素として利用者を吸引しており、 近年新たに設置される「道の駅」においては屋内 のかなりのスペースが農産物直売所として配置さ れることが少なくない。農産直売所の認知度が高 まるにつれ、そこでの販売額が上昇することで確 実に出荷している農家、生産グループの収入を上 げる直接的な効果がある。農協などに出荷するた めには規格にあったものを提供する必要がある が、農産直売所にあっては規格外のモノも出荷で きることから収入の多様化や小規模生産者、高齢 者などに出荷の機会を与えることにつながる。さ らに、販売を農協などに委託しなくても自ら価格 決定できるということも大きい。場合によっては、 自らレジに立つことで消費者の声を直接聞くこと や売れ筋やニーズを知る機会を得ることも可能で ある。こうした生産から販売までを自らの決定権 を持って行えることは収入を増やすこと以上にや りがいという精神面の効果も大きく、実際、そう した努力の結果は自分の銀行口座に反映されるわ けで、やりがいをより高める効果がある。  さらに、地域の特産品への関心が高まるに従い、

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お土産においても地域の加工品が目立つように なった。以前から、農山漁村や中山間地域の活性 化として「農産物直売所」、「農産物加工」、「農村 レストラン」という三点セットが言われていたが、 こうした動きは、その受け皿として「道の駅」が その存在感を示すようになってきたともいえる。 いわゆる、第1次産業(農水産業)×第2次産業 (加工業)×第3次産業(観光業)=第6次産業とし て、複合的な地場産業の活性化が推進される。  こうした動きによって、「道の駅」は道路利用者 が立ち寄る場所から外来者が地域を楽しむ場所そ のものへと進化し、「地域との出会いの場」という 機能を発揮し始めている。こうした外部者との交 流が、地域の生産者を元気づけられていることも 忘れてはいけないだろう。その視点からみれば、 「道の駅」は地場産業の活性化という機能をも果た しているといえよう。 2.2 農産物の持つ役割  1970年代後半からの数多くある「村おこし」運 動などのなかで地域の特産品とその生産や流通に 関わる人や組織の力を最大限に活用した「一村一 品運動」は、大分県から始まり、地方の農村の活 性化に大きな効果をもたらした4。それは、新た に物を開発するというのではなく、在る物を最大 限に活用するという戦略的な大きな転換でもあ り、昔から伝えられてきた伝統的な農産物や食材 を前面に出すことにより地域の固有性を主張する ものであった。そして、1990年代半ばから農村の 婦人部を中心とした「自立的」な取り組みとして の「味噌」、「漬物」といった加工品を販売する運 動が積極的におこなわれるようになっていた。そ の販売ルートとして、宅配便や農産直売所の存在 は大きかった。  かつて筆者(佐藤)は、道の駅ではないが農産 直売所5 に農産物を出している女性から、『ここは 私たちとって刺激的な所です。買い物をされるお 客さんが、ラベルを見て生産者の名前を確認して 買われていく。同じ野菜でも、ある生産者のもの は早くはけていくが、ある生産者のものはいつま でも残ることが多い。また、色々と工夫した漬物 なども集まってくるので、自分も工夫をしなけれ ばと思う。』と言われたことがある。また、『自分 の味付けが口に合うかどうか不安だったが、試食 用においてあるものを口にして、おいしいから 買っていくと言われるのを見てホッとしたし、こ れでいいんだと勇気づけられた』とも話してくれ たことがある。こうした自信と勇気を与えられる 場を得られたことの意義は大きい。そして、先述 したように交通の要所に立地し集客力に高い「道 の駅」が、農産直売所の機能を発揮させることの 意味は大きい。  一方、消費者側に立てば、規格化された食品に 飽きており、また同時に「安心・安全」を意識す るなかで、直売所においてそれが担保され、しか も地域性を感じさせる新鮮なものが提供される場 であるならば、願ってもない地域との出会いの場 を与えられたといえよう。また、その地域性ゆえ に、それらが生み出される産地への関心を高めて いくことに繋がっていく。食文化、暮らし方、風 景など風土への関心であり、より深くその地への 思いを醸成させ、一度は行ってみようかという観 光への扉を開くのである。それは、都市と農村の 交流へと発展し、さらに体験型観光、グリーツー リズムへと転換していく可能性を秘めている。  とすれば、「道の駅」に集められる農産物など は、先述した「道の駅」の機能である「情報発信 機能」、「地域の連携機能」を果たす役割を担って いるともいえよう。 3.「道の駅」と国際協力 3.1 「MICHINOEKI」  開発途上国では都市と地方の格差是正のため地 方開発が課題となっている。そのため、物流促進 の観点から道路整備が重視されてきた経緯があ る。しかし、貧困撲滅が国際的な援助の潮流とな り、貧困層への直接的な裨益効果を一層高めるた めに、道路整備というハード面だけでなく、その 道路を活用した地域振興の検討・提案といったソ フト面の支援が求められてきている。特に、「道の 駅」は地域の創意工夫により道路利用者に快適な 休憩と多様で質の高いサービスを提供する施設で あり、「道の駅」の整備や「道の駅」を通じた社 会・経済活動は地域住民の参画が可能な開発手法 のひとつとして地場産業の振興、計画運営への住 民参加によって地域経済を活性化させる効果も期 待されるなど注目されている。  実際、道端で地元産品を販売する光景は日本に 限らず世界各国でみられる光景であり、「道の駅」 は組織的・体系的開発活動、地域住民参加型の地 域振興モデルとして、国際協力銀行(現 国際協力 機構)は2001年にタイ王国において地方開発事業 向け円借款のなかでそのノウハウ導入を図ってい る。タイでは全国20村を対象に手工芸品の生産・

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道の駅の地域振興に関する一考察 販売促進と周辺観光地との連携を図ることで地域 住民の所得向上を目指す「観光促進のための産業 村開発事業」を実施しており、国際協力銀行はこ の活動の場となるコミュニティセンター建設を円 借款で支援するほか、そのコンセプトが「道の駅」 に類似していることに着目し、日本の「道の駅」 実施者の知見をタイで「産業村」事業に取り組む 住民に紹介し運営改善のアドバイスをおこなって いる。2003年に開催されたタイでのワークショッ プには千葉県富浦町と愛媛県内子町の「道の駅」 関係者が専門家として参加し、技術支援をおこ なっている6  また、国交省と世界銀行が「MICHINOE KI」の開発途上国への導入で協力し、2004年に 世界銀行のガイドラインが作成されたほか、パイ ロットプロジェクトとしてケニア、中国などで開 始されている。その年の2月にはセミナーを開催 し、アジア、アフリカの10ヶ国から道路整備や地 方開発を担当する政府職員等が研修生として参加 した7  ガイドラインでは、開発途上国における「道の 駅」導入過程を、4段階で示しており、①「道の 駅」のコンセプトの明確化と立地適地の選定、② 計画の準備、③計画の評価、④運営となっている。 ①では、実現したい「道の駅」の機能、関連主体、 施設および整備インパクトを含む青写真を作成す る。②では、関連主体の声、特に地域住民の声を いかに反映するかが重要である。③では、商業活 動へのインパクト、公共サービスなど社会活動へ のインパクト、休憩機能としての交通インパクト などを評価する。④では、公共サービスと商業サー ビスの両方を提供することから、官民協調を基本 とする第三セクターが運営主体として推奨された。 3.2 ベトナム国を対象とした研修  2007年度から開発調査事業の一環として研修が 実施され、その後を継ぐ形で2010年度から新たな 研修が開始された。本報告では、2010年度から開 始された研修プログラムのなかで筆者らが担当し た研修について紹介する。なお、研修結果等の考 察は、別の機会に述べることとしたい。 (1)研修の背景  2007年2月~2009年3月にJICAにより実施 された開発調査事業「ベトナム国道の駅マスター プラン策定調査」では、全国道の駅マスタープラ ンの提案と、ベトナム北部3省(ホアビン省、ニ ンビン省、バクザン省)でのパイロット道の駅の 設計・建設・運営管理支援8 が行われた。  また、この調査の過程で、マスタープラン策定 にあたるベトナム国交通省道路局(VRA)及び パイロット道の駅施設の運営管理に関わる地方政 府を含む関係者が、適切な運営管理(組織体制、 財政、サービス・活動内容、関係機関との連携等) のあり方について学ぶため、日本国内でのカウン ターパート研修(視察・講義受講)を実施した (2007年9月、2008年9月、2009年2月の計3回実 施)。主に千葉県内(2007年9月の回のみ)と岐阜 県内の道の駅を訪問し、岐阜県当局の道の駅にか かる支援策や交通管理・地場産業振興のための活 動について学びながら、道の駅関係者との交流を 深めた。  一方、パイロット道の駅は開業したものの、従 来ベトナムでの沿道休憩施設の特徴として、ドラ イブインとしての機能がもっとも重視され、地域 振興機能がまだ本格的に実践されていない。  パイロット道の駅開発の他にも、JICAのベ トナムにおける地域振興に対する協力において は、一村一品運動に関わるセミナーの開催や、「ベ トナム国農村地域における社会経済開発のための 地場産業振興にかかる能力向上プロジェクト」に おける一村一品アプローチの導入等により、一村 一品運動に関するノウハウを習得するニーズが高 まっている。 (2)2010年度実施要領より抜粋 ①研修概要  2010年度から開始された研修は「アジア地域  地域振興(一村一品運動)B:ベトナム国 道の 駅の地域振興機能強化」という事業として、協力 年度は2010年~2012年の3年間である。初年度の 本邦における研修は2010年11月28日~12月21日に 実施された。想定される対象機関は、運輸省交通 総局(VRA)、人民委員会、交通局(DOT)、 農業農村開発局(DARD)、商工局(DIT)、 道の駅管理者であったが、将来的には地域の生産 者、流通及び観光関係者の招聘も検討されている。  研修員数は当初8名の予定であったが、JIC Aの他のプロジェクトの関係者の参加希望もあ り、実際には14名が参加した。 ②研修の目標  研修の目標は、以下のように設定された。 ・上位目標:道の駅における地域振興機能が強化 される。

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・案件目標:パイロット道の駅や地域振興技プロ の関係者が日本における一村一品運 動を含む地域関係者主導の地域振興 の企画、実施に関するノウハウを習 得し、ベトナムでの実践を始める。 ・単元目標: 地域振興の理論的背景及びその日本における仕 組みを理解する。 「一村一品運動」「道の駅」「直売所」等の視察を 通じて地域振興における多様なステークホル ダーの関わり方について理解する。 日本で学んだ内容を自国でどのように活用する か整理し、研修員の置かれている地域・組織・ 立場において実践するためのインテリムレポー トを作成する。 帰国後、インテリムレポートの内容が実践され る。 (3)長崎県での研修  本報告では、2010年度研修の長崎でおこなった 研修について、記述する。全研修については、別 の機会に紹介することとする。 ①スケジュール(2010年12月15日~19日) 日 曜日 概   要 担   当 場   所 15 水 地域資源を活かした開発(実習) AM:道の駅(夕陽が丘そとめ) PM:外海さるく    学びの整理(個別作業)NWU 佐藤快信 (長崎ウエスレヤン大学) 道の駅 NWU 16 木 地域資源を活かした開発(実習) AM:道の駅(みずなし本陣ふかえ) PM:雲仙災害博物館    学びの整理(個別作業)NWU 佐藤快信 (長崎ウエスレヤン大学) 道の駅 NWU 17 金 地域資源を活かした開発(実習) グループディスカッション AM:学びの整理    現状の把握 PM:解決策の策定    具体的計画の策定 主:佐藤快信   (長崎ウエスレヤン大学) 副:西川芳昭   (名古屋大学大学院) 記録アシスタント:鶴渕鉄平   (名古屋大学大学院学生) 長崎ウエスレヤン大学 18 土 地域資源を活かした開発(実習) 発表 AM:行動計画の優先順位    発表準備 PM:発表準備    市民開放 主:佐藤快信   (長崎ウエスレヤン大学) 副:西川芳昭   (名古屋大学大学院) 記録アシスタント:鶴渕鉄平   (名古屋大学大学院学生) 長崎ウエスレヤン大学 ②研修の目的 ・長崎地域での「道の駅」を視察し、抱えている 課題などを知る ・日本国での研修成果を基に、それぞれの地域に あった活性化方策を立案する。 ③研修プログラム  上記の目的を達成するために、以下の事をおこ なう。 (i)長崎地域の「道の駅」を視察する。 <観光の視点から> ◎「道の駅」として以下の2箇所を選定することに よって、「道の駅」の前提としての観光関連施設 としての対象となる観光客の違いによる施設の 違いを知る。 ◎具体的には、「そとめ」が個人・グループなどの 少人数に対し、「ふかえ」は団体の大人数であ り、農産物販売の売り場面積の違い、周辺観光 施設の規模の違いであり、観光客の観光スタイ ルの違いがある。 <地域振興の視点から> ◎そのうえで、地元地域との連携の相違を見るこ とができる。

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道の駅の地域振興に関する一考察

訪問した「道の駅」の概要

<長崎市外海町「夕陽が丘そとめ」>  事業主体:JA長崎西彼農業協同組合  特  徴: 規模は、平均的。       JAさいかいが関わっている。       合併後、長崎市の観光地として「さるく外海」が設定されている。       西彼半島の西海岸を走るサンセットロード沿いにある。       遠藤周作記念館がそばにあり、観光拠点になっている。 <南島原市深江町「みずなし本陣ふかえ」>  事業主体:㈱みずなし本陣  特  徴: 規模は、日本一大きい。       合併後、南島原市の観光地して、島原半島の観光拠点となっている。       雲仙普賢岳噴火災害の屋外展示場を併設している。 (ⅱ)地域資源を活かした開発についてのワーク ショップ ・日本国でのこれまでの研修成果をまとめる。 ・その結果を基に、それぞれの地域で「道の駅」 を活性化させるために必要なものは何であった かを認識する。 ・さらに、具体的な方策についてのアウトライン を構築する。 ・それを発表することで、さらにアドバイスをも らい改善する。 <研修風景> 道の駅 夕陽が丘そとめ 道の駅 夕陽が丘そとめ 道の駅 夕陽が丘そとめ 道の駅 みずなし本陣ふかえ 道の駅 みずなし本陣ふかえ 道の駅 みずなし本陣ふかえ ワークショップ ワークショップ アクションプラン発表

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3.3 ベトナム国の「道の駅」の視察 (1)目 的  2011年11月から12月にJICA研修としてベト ナムの道の駅関係者に対する研修を実施した。そ の研修のアフターフォローとして現地視察をおこ ない、来年度以降の研修の改善に役立てる。 (2)視察期間  2011年2月25日㈮~3月2日㈬ (3)視察地  ベトナム ホアビン省 道の駅、ハノイの政府 関係機関 (4)視察の結果  ハロン湾に向かうハノイ-ハイファンの観光 ゴールデンルート沿いのドライブインを観察する と、お店のターゲットをベトナム人、アジア系、 西洋系の3つに分けて、それぞれを対象とした マーケティングが展開されている。その意味では、 うまく客層を分けて共存している。行程の半分の 1時間半程度のところに集中して大規模なドライ ブインが立地している。  地元相手のドライブインでは、道路に面した所 を広く開放し、直接建物に乗り付ける形で建物の 配置がされている。そのため、地元の人から「道 の駅」がドラブインとして認識できない可能性が ある。研修員の道の駅のイメージは、高速道路に おけるサービスエリアである可能性がある。  ひときわ賑わいを見せている「ドライブイン 559」をみると、高速バスなどのバス利用者がトイ レ休憩で利用している。行動パターンとしては、 トイレ、お土産物、軽食という流れにある。その 意味では、トイレは重要な要素といえるが、水浸 し、詰まっているなど必ずしも良い状態にはな かった。物産の販売では、地元産の素朴なパッケー ジなどで十分であり、アジア・西洋系ではパッケー ジのデザインは重要といえる。 ドライブイン559 559の店先風景 559の店先風景  ホアビン、ニンビンの2つの道の駅を視察して、 停車する車がほとんど無く、経営への関心は必然 的に高くなることが予測される。ホアビンでは西 洋系の団体客が2台車で入ってきたことは今後の 可能性として期待できるが、接客が十分でないよ うに見受けられる。  ニンビンでは、商品開発をしているというが具 体的にどのようなことをしているのかという話に なると曖昧で具体的でない。いずれの道の駅でも、 こうしたらもっと客を呼び込めるのではないかと いうヒントがあるので、まだまだ可能性はあると いえる。 国際協力のプレート ホアビンの道の駅 ホアビン 外国人観光客 ホアビン 道の駅周辺の店 ニンビンの道の駅 ニンビン 展示販売

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道の駅の地域振興に関する一考察  地域振興との関連性についての認識では、ホア ビンで周辺の農産物を販売するとか、食材として 活かせないかという提案があったことは成果とい える。  次年度以降の研修では、地域振興についての概 念をより具体的にイメージさせ、それぞれの地域 性を認識した上で、どのような可能性があるのか を確認する必要がある。そして、ターゲットを絞 るのか、全方位で行くのか経営戦略と絡めながら、 アクションプランを策定する必要もある。 3.4 研修受け入れ先への効果9  研修受け入れ後に、道の駅「みずなし本陣ふか え」(以下、「ふかえ」)にて、海外研修員受け入れ の同地へのインパクトを調べるために、インタ ビュー調査を実施した。  地域振興の要諦は「住民の暮らしが良くなるこ と」であるが、そこには、単に経済的な生活の改 善だけではなく、そこに住まう人々が自らの土地、 自らの行動に誇りを持てるようになるといった、 非経済的な側面も含まれる。今回のインタビュー の目的は、海外研修員の受け入れが、そうした地 域振興に貢献し得るのかについて探ることにあっ た。  今回初めて海外研修員を受け入れたという「ふ かえ」は、受け入れの理由として、国際的な交流、 親善のため、ということを挙げていた。こうした 交流、親善には、経済的、非経済的な2つの側面 があるだろう。  経済的側面については、現在、「ふかえ」は、来 場者数の減少にどう歯止めをかけるかが課題と なっているが、その一方で、年々アジア圏の海外 観光客の来場が増えているとのことだった。「ふか え」としては、知名度を上げ、潜在的観光客の増 加につなげるためにこうした海外研修員受け入れ による国際交流を重視していることがうかがわれ た。  海外研修員受け入れは、海外から来場する多様 な人々の文化的背景を把握することができるた め、それに合わせたサービス提供のノウハウを獲 得することにも役立つと言える。「ふかえ」では、 現在、文化の違いに合わせたサービスを提供する ノウハウを構築している段階であるということが インタビューにより明らかになったが、こうした ニーズの違いを把握するためにも、海外研修員の 受け入れは有意義である。なぜならば、単なる観 光客だと「ふかえ」の経営側とあまり交流する機 会がないまま観光を終えて帰ってしまうことがほ とんどだが、研修員の受け入れ時には、より密接 な双方向の交流が期待できるからである。実際、 今回の研修員が視察に関するアンケートで指摘し ていたことの幾つかは、正鵠を得た指摘として「ふ かえ」側に受け止められていた。例えば、研修員 から、「ふかえ」のサービス向上のアイディアとし て提示された、「観光客の滞在時間を長くするこ と」あるいは「地域の農産物を紹介するイベント を増やしていくこと」は、職員の注目を集めた提 案であった。  非経済的側面については、今回の研修員受け入 れにおいて、職員の印象に残ったのは、研修員の 熱心さ、道の駅事業への関心の高さだったそうで ある。とりわけ、研修員から災害の経過や対策に 対する質問が多く出たことが印象に残っていると のことだった。火山噴火によって引き起こされる 災害の恐ろしさへの理解を広めることをその活動 の一環としている「ふかえ」にとって、こうした 研修員の熱心さは、活動の意義を理解してもらえ たという実感に繋がったはずである。「ふかえ」の 社会的活動の意義が国際的にも認識されたという 実感は、今後、この活動を維持、発展させていく インセンティブになるはずである。  以上のように、今回の研修で受け入れ側となっ て頂いた「ふかえ」へのインタビューでは、海外 研修員の受け入れが、受け入れ側にとっても経済 的、非経済的メリットの享受につながり得ること、 ひいては、「そこに住まう人々のより良い暮らしを 実現させる地域振興」につながり得ることが確認 された。 おわりに  「道の駅」が誕生して20年近くが経過し、その数 も1,000か所に迫るほど普及してきている。近年 は、農産物などの直売所が消費者から注目され、 農業などの第一次産業に活性化の風を送ってい る。それは、「道の駅」の3つの機能のなかの「情 報交流機能」と「地域の連携機能」に大きく寄与 している。  また、農産物というその地域の風土から生まれ る産物と伝統的加工による加工品が、「道の駅」の 地域個性を表現するものとなっている。そのこと が交流人口を増加させる要因となっている可能性 は高いといえる。  「道の駅」がある地域の全体的な地域振興のなか で、「道の駅」自体がどのように位置づけられ、ど

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のような役割が求められているのかは、あまり明 確でないようにみえる。特に、交流人口の増加と いう効果は必要であるが、 そのことが“定住者た ちの生活が良くなること”につながっているかが 重要である。その意味では、地域おこしが定住人 口の増加へとつながることが重視される日本と過 疎化がまだ問題となっていない途上国の「道の駅」 における地域振興機能には異なるものがあると考 えられるが、具体的にどのように日本の経験を途 上国の「道の駅」事業発展の過程のなかで位置づ けられるかを分析する必要性があろう。  「道の駅」が「休憩機能」を出発点としているの で難しいことではあるが、外向けだけなく内的な コミュニティへの関わりを意識した機能があって も良いではないかと思える。直売所は「道の駅」 の専売ではなく、観光に関してもトレンドという 波がある。観光客に大きな期待をかけるリスクも 存在する。そのため、地元の人たちにとっても魅 力的で活用される施設ということが、特に海外の 農村開発においては今後求められるのではないか と思える。 注) 1 設置当初の管轄は、国道などの道路管理をしていた前身 の建設省である。 2 国 土 交 通 省  ホ ー ム ペ ー ジ:http://www.mlit.go.jp/ road/station/road-station_outl.html 2011年12月24日アクセス 3 関満博・酒本宏『道の駅/地域産業振興と交流の拠点』、 新評論、2011年、p.38で「1970年代に多く見られたド ライブインは現在ではほとんど目にしないものになっ ている。郊外型の「ファミリーレストラン」や「道の 駅」にとって代わられたと思う。」と述べている。 4 平松守彦、『地方からの発想』、岩波書店、1990年。 5 長崎県長崎市三和町の農産物直売所。 6 千葉県富浦町の「とみうら」は、特産物の琵琶の加工に 力を入れ、地元農家との共存・共栄をめざし、市場に出 荷できない琵琶をすべて農家から引き取り、新商品開発 に活路を見出している。愛媛県内町の「内子」は、情報 システムを取り入れFAXと携帯電話を利用し、リアル タイムに農産品の販売戸数や販売額、出荷品目などが生 産者に伝わるシステムを活用し販売意識を高めている。 7 プ レ ス リ リ ー ス、2004年 2 月13日、http://www.jica. go.jp/press/archives/jbic/autocontents/japanese/ news/2004/000014/index.htm(2011年12月26日現在) 8 マスタープラン調査におけるパイロット事業として、 都ハノイから50 100㎞程度の地方省(ホアビン省、ニン ビン省、バクザン省)の農村部3箇所に、現在ベトナム 版道の駅を建設し、2009年2月~5月からそれぞれ開業 している。ベトナム版道の駅の5つの基本機能として① 休憩、②情報提供、③地場産業振興、④道路交通管理、 ⑤ランドマーク、を掲げている。運営管理のためのJI CA(開発調査調査団)支援として、人材育成のための トレーニング、商品開発・販売、広報・イベント準備を 実施している。 9 名古屋大学社会連携課、『平成22年度地域貢献特別支援 事業報告書』、p23 29、「国際協力を通じた参加型地域 づくり人材育成支援事業」、名古屋大学大学院国際開発 研究科、2011年。

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