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小学校体育授業における「フロアキックボール」教材の学習成果の検討: 児童のボールを蹴る・止める技能に着目して

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37(1):17-33.2021

小学校体育授業における

「フロアキックボール」教材の学習成果の検討

:児童のボールを蹴る・止める技能に着目して

村井 梨沙子

(和洋女子大学)

荻原 朋子

(順天堂大学)

1. 問題提起

2008 年の小学校学習指導要領解説体育編にお けるゲーム及びボール運動領域では,「ボール操 作」と「ボールを持たないときの動き」の技能を 児童に習得させることが求められるようになっ た.また,2017 年に改訂された小学校学習指導 要領解説においても,その流れは踏襲されている (文部科学省,2008,2017). そのなかで,特に,ボール運動のゴール型の授 業においては,児童生徒のゲームパフォーマンス を最大限に伸ばすために「ボールを持たない動き」 の指導が重要であることが報告されている(グリ フィンら,1999).その理由として,ゴール型の 単元では単元のはじめの段階で発達させたはずの ボール操作技能がゲームでは発揮されていないこ とが指摘されている.そのため,「ボールを持た ないときの動き」を学習者に習得させることで, ゲームパフォーマンスが向上するかに焦点が当て られてきた.実際,学校体育の現場では,ボール を持たないときの動きの学習として,サポート学 習や状況判断の向上のための教材の検討がなさ れ,一定の研究成果が報告されている(後藤・瀬谷, 2010;鎌田・岩田,2014,岡田・末永ら,2013; 菅沼・岩田ら,2008;丸井,2012).一方,「ボー ル操作」に関して,林(2014)は,足を使ったボー ル操作が主流となるサッカー系のボールゲームで の技能習熟は,手を使うボール操作系のスポーツ よりも至難であることが大きな課題であると述べ ている. ゴール型サッカータイプの授業においては,吉 永・高橋ら(2001)は,小学校 6 年生を対象として, サポート学習を設定することにより,ゲーム中の サポートの動きができるようになったことを明ら かにした.また,松本・後藤(2007)は,小学校 5 年生を対象に戦術行動に基づく「課題ゲーム」 を中心とした学習過程を実践し,個人技能や集団 技能の向上と体育授業に対する愛好的態度も高め ることができることを明らかにした.これらのよ うに,小学校高学年におけるゴール型サッカータ イプの授業成果が報告されている. しかし,吉永・馬場(2009)によるサポート学 習に関する実践では,「(ボールを持っている人と 自分の間に相手がいるが)ボールを受けた後に攻 撃方向に相手がいないスペースへ走り込む動き」 が減少したと報告している.その要因として,ス ルーパスが用いられたサポートであったため,パ

実践研究

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サーのパスの精度の低さと,受け手のトラップ技 能の低さを原因としたサポートの動きの減少を 指摘した.また,岩田(2012)は,ゴール型サッ カータイプのゲームにおいて,子どもはボールを キープすることで精一杯であり,ゲーム中におい て誰にパスを出すのかなどの状況判断どころでは なく,無意図的で偶然のキックが頻発するだけで, 子どもにとってのオーセンティックなゲーム学習 からはほど遠くなってしまうと述べている.加え て,足でボールを蹴るという非日常的な動作が求 められるサッカーの場合,ボールを蹴る経験が少 ない子どもたちにとっては目線を上げながら周囲 の状況を把握し,ボールを操作することはかなり 難しいこと(吉永,2013a)や,刻一刻とゲーム 状況が変化する中で,戦術的知識に基づいた状況 判断をしてこれらの技能を発揮することは,児童 生徒にとって決して容易な課題ではないこと(吉 永,2013b)が報告されている.以上のように, ゴール型サッカータイプの授業では,足でボー ルを操作することの難しさが報告されている. 足でボールを操作するキック動作については,子 どもの発達過程に関する研究が多数みられ,キッ ク動作の学習は 6 歳ごろから可能であることが報 告されている(後藤,1986).一方,小学校学習 指導要領解説における低学年では,中学年以降に おける型ベースへの発展を見越して,ボール蹴り ゲームが設定され,「ねらったところにボールを 蹴る」,「ボールを止める」,「ボールが転がってく るコースに入る」,「ボールを操作できる位置に動 く」といった技能の習得が求められている(文部 科学省,2017).学校体育実技指導資料第 8 集(文 部科学省,2000)では,低学年において,児童がボー ルを蹴ったり止めたりする学習が十分に行えるよ うに配慮したゲームにすることが大切であると指 摘されている.ボールを足で操作することの難し さから,バスケットボールを実施している学校も みられ(高橋,2016),ボールを手で操作するタ イプのゲームが教材として選択されやすく,サッ カータイプが避けられることが予想される(横井 ら,2013)が,ボールを蹴る動作の必要性が低学 年の児童においても求められることから,小学校 低学年の児童を対象とした体育授業におけるボー ル蹴りゲームの実践がこれまでにも報告されてい る(林,1990a;林,1990b;船冨,2004). しかし,上記の先行研究において適用されてい る教材は,足でボールを蹴り出すことが中心の ゲームであり,ボールを足で止める学習機会は保 障されていないケースが散見された.このよう な現状から,須甲ら(2017)は,パス技能及びト ラップ技能の両方の視点を学習内容に据えた指導 プログラムの開発と成果の検討は焦眉の課題であ るとし,低学年児童を対象としたボール蹴りゲー ムの指導プログラムを開発した.その結果,開発 された指導プログラムを単元を通して実施するこ とでパス技能及びトラップ技能が向上し,それは 下位児にも有効であることを明らかにした.他方 で,今後の課題として具体的な動作分析の必要性 や,小学校 2 年生以降のボール蹴りゲームや中学 年以降のゴール型サッカータイプのゲームへの接 続に関する縦断的研究の必要性があることを指摘 した. 中学年以降の足でボールを蹴る・止める技能の 両方の視点を学習内容に据えた教材として,井上・ 小畑(2016)の小学校 4 年生及び 6 年生を対象と した,攻守が分離され,常に一定の攻撃方向に身 体を向けた状況でボールを足で操作する「フロア キックボール」の実践がある注 1).この研究では, 授業の成果について,具体的なパス技能やトラッ プ技能の習得に関して言及されていなかった.そ のため,技能の習得という観点から正確に小学校 中学年や高学年を対象とした教材として適切かど うか判断し難い結果であった.また,類似のボー ルを足で扱う教材で 6 年生を対象とした「フット・ ボレーボール」が報告されている(山西,2016).

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しかし,これも授業者の主観的報告にとどまって おり,学習成果が実証的に明らかにされていない. 他方で,小学校低学年を対象としたボール投げ ゲームの教材では,攻守分離した状態でボールを 手で操作する「トンネルコロコロ・キャッチゲー ム」(宮内・本田,2014)がある.ここでは,児 童から肯定的に受け入れられたことが報告されて いる.また,佐々(2014)は,攻守分離型のゲー ムを小学校低学年で実施することで,中学年以降 の発達段階に応じた系統的なゴール型ゲームの学 習に繋がると述べている.ゴール型ゲームに共通 する攻撃は,「ゴールに向かってボールと人が前 進する」こと(松本ら,2015)が一般原則とされ, 選手が攻撃方向に動き出すことが有効な攻撃とさ れている(吉村ら,2002).つまり,中学年以降 のゴール型ゲームでの有効な攻撃に繋がるボール 操作技能の習得を目指すためには,小学校低学年 で一定の攻撃方向を意識できる教材を用いること が有効であると考えられる.以上を踏まえると, 攻守が分離され,常に相手コートに向かって身体 を向けてボールを操作する「フロアキックボール」 は小学校低学年の教材としても適していると考え られる. また,ゴール型サッカータイプの授業では,足 でボールを操作することの難しさが問題視されて いることから,中学年段階への接続を踏まえると, 小学校低学年から足でのボール操作の「正確性」 や「方向」について習得していくことが必要であ ると考えられる.ボールを蹴る際の正確性につい ては,ボールと足の接触面が大きいこと,面が平 面であることから,インサイドキックが最も良 いキックであるとされている(戸苅,1984).ま た,シュートの局面においては,インサイドキッ クが多用されていることも報告されている(藤 岩,2013).しかし,インサイドキックの股関節 を外向きに捻る動作は,子どもやサッカー初心者 にとって,やや複雑で難しい動作であることが指 摘されており(浅井,2002),小学校体育授業に おけるインサイドキックの習得に関する実践報告 は見当たらない.一方で,未熟練者を対象とした インサイドキックの指導方法や指導のポイントが 検討されており(渡邊ら,2015;池田ら,1988), インサイドキックは後天的に身に付けられると報 告されている(浅井,2002).また,瀧ら(1978) によると,サッカー教室に通う小学生は,4・5 年生までにほぼ発達を終えるとされている.した がって,技能が未熟である低学年から,体育授業 の中でインサイドキックの学習機会を保障するこ とで,正確なボール操作技能の習得ができ,中学 年以降の学習に繋がっていく可能性があると考え た. 以上を踏まえ,本研究では,小学校 2 年生を対 象とした「ボール蹴りゲーム」 の単元において, インサイドキックを指導しながら,井上・小畑 (2016)が実践したフロアキックボールをメイン ゲームとして実践することで,足でボールを扱う 技能(ボールを蹴る・止める)を低学年の児童が 習得することが可能であるか検討することを目的 とし,中学年以降のゴール型サッカータイプへの 発展に寄与するかについて検討することとした.

2. 方法

2.1 対象者と時期 研究対象とした千葉県内の N 小学校 2 年生の 児童の内訳と,授業を担当する教師の詳細及び時 期を表 1 に示した.2017 年 2 月から 3 月にかけ て実施した計 8 時間のボールゲーム単元の授業を 対象とした.まるわかりハンドブック(文部科学 省,2011)の低学年ゲーム領域では,6 時間の単 元計画を例としている.また,須甲ら(2017)は, ボール蹴りゲームの単元時数 6 時間という設定に よって,学習成果が向上することを示唆してい る.しかし本研究の対象校では,1 年生でボール

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蹴りゲームの単元時数を 5 時間程度設定していた ため,2 年生では計 8 時間のボールゲーム単元を 設定した.また,本研究では,8 時間単元のすべ ての授業に参加できなかった児童を分析対象外と した.その結果,分析対象者は計 21人であった注 2) 2.2 単元計画と学習過程 実施した単元計画は図 1 の通りである.著者が 単元計画を作成し,授業の意図について授業実施 前に授業担当教師の共通理解を得て実施された. 主な学習内容は,小学校学習指導要領解説体育 編の低学年「ボール蹴りゲーム」に示された例示 を参考に,ボール操作技能として「ねらったとこ ろに緩やかにボールを蹴ること」,「ボールを止め ること」とした.あわせて,ボールを持たないと きの動きに関しては,「ボールが転がってくるコー スに入ること」,「ボールを操作できる位置に動く こと」とした.中学年への発展を見通し,単元を 通して「ボール操作」→「ボールを持たないとき の動き」の順に配列した.また,ボールは molten のソフトライトドッジボール(2 号球)を使用し, ボールが転がりすぎないように空気を少し抜いて 使用した.また,フロアキックボールではネット を使用するため,以下のように簡易式ネットを作 成した.まず,重りとして 2ℓのペットボトルに 水を入れたものを 4 本 1 セットにし,その中心部 に塩化ビニル管を差し込み,支柱とした.次に, 2 つの支柱にゴムひもを通し,ゴム紐にスズラン テープを巻き付けて,遠くからでもネットがわか るようした.ネットの高さは,約 50cm の高さに した(図 2). メインゲームでは, 2 対 2 のフロアキックボー 表 1 調査対象の授業における時期と対象者の一覧 学校 千葉県 N 小学校 学年 2 年生 時期 2017 年 2 月∼ 3 月 授業時間数 8 時間 実施場所 N 小学校グラウンド ( 土 ) 授業対象者の内訳 (分析対象者) 男子 16 人(10 人) 女子 15 人(11 人) 計 31 人(21 人) 担当教師 性別 女性 教員経験 4 年 教員免許 ※中学校以降の保健体育免許は未取得小学校一種 専門種目 バスケットボール ※( )内が分析対象者 1(pre) 2 3 4 5 6 7 8(post) 学習過程 準備運動 / w-up/ 今日のねらい 2 人組の パス 授業内容 及び ゲームの 説明 ドリルゲーム (2 人組のパス、3 角形のパス、的当てゲーム) 2 人組の パス フロア キックボール タスクゲーム フロアキックボール大会 フロアキックボール 図 1 単元計画

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図2 簡易式ネット 図 2 簡易式ネット 図3 フロアキックボールのルール 2年生 人数 2対2 コート 縦10m, 横6m ボール molten ソフトライトドッジボール2号球から空気を抜いた。 スタート アタックラインから相手に向かって優しいボールを蹴る。 1人目 ボールをコート内で止めて、仲間にパスを出す。(①パス) 2人目 ボールを止めてから(②トラップ)、相手コートに向かってシュートを蹴る(③シュート)。 ※シュートはアタックラインよりも手前から蹴る。 失点 守備側の失点相手からのシュートが自陣のサイドラインまたはエンドラインを越えた場合。 攻撃側の失点 シュートがネットの上を通った場合。 シュートが相手コートのアウトラインを越えた場合。 全員が触れることなく相手コートにボールが渡った場合。 アタックライン ネット サイドライン アウトライン エンドライン 6m 4m 1m ④シュートストップ ③シュート ②トラップ ①パス 図 3 フロアキックボールのルール ル(図 3)を行った.この教材は攻守分離された コートで足を使ってボールを扱うことから,すべ ての児童に守備に邪魔されない状態でパス,ト ラップ,シュートの技能の学習機会が保障される 特徴がある.井上・小畑(2016)の実践では,タ スクゲームでは 2 対 2,メインゲームでは 3 対 3 で実践しており,ルールは「3 回以内の触球で相 手コートに返球」としていた.ゴール型ゲーム学 習の初期段階では,パスの選択肢や複雑な判断を 減らせることから少人数で行うことが効果的とさ れている(Stephen A. Mitchell et al., 2013).したがっ て,本研究では低学年児童が対象であるため,人 数が少なく,パスが一方向に限定されることか ら,2 対 2 のゲームを行い,1 人目がボールを受 け 2 人目にパスをし,2 人目はボールを止めてか らシュートを蹴ることとした.また,シュート範 囲の角度を狭めるために,アタックラインを設け た.なお,メインゲームは 2 分間もしくは 3 分間 で実施し,6 コートに分かれて 1 単位時間当たり 各 3 試合実施した.また,フロアキックボールで の課題解決に結び付く,以下のような下位教材を 用いた注 3) ドリルゲームは,2 人組のパス,3 角形のパス, 的当てゲーム,の 3 つの場(図 4)を設定し,ス テーション形式で各チームが 3 分で次の場に移動 し,狙った方向に力強く蹴ることと,ボールを止 める技能の習得を図った. タスクゲームでは,相手コートへ素早くパスを することや,狙ったところへパスをすることを意 図して,パス回しゲームを 5 分間行った.具体的 には,チーム毎に別れ,ポジションを交代しなが ら制限時間内(1 分間)でパスをした回数を競う ものであった.素早くパスをするためには,「ボー ルが転がってくるコースに入ること」や「ボー ルを操作できる位置に動くこと」などのボールを 持たないときの動きも関わってくるため,ドリル ゲームで学習したボール操作技能に加え,メイン ゲームに繋がるボールを持たないときの動きに焦 点化したタスクゲームを実施した.

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2.3 教師の言語教示 調査対象授業において,教師が単元進行に伴い クラス全体に示した技術的課題に関する言語教示 の内容は,表 2 の通りである.●はボール操作技 能に関する教示,〇はボールを持たないときの動 きに関する教示である. 2.4 データの収集と分析 2.4.1 学習者からの授業評価 児童の立場から 1 授業時間の学習活動を評価 し,その単元推移に伴う変容を検討するために高 橋ら(2003)が作成した形成的授業評価を単元 2 時間目から 8 時間目までの授業後に実施した. 毎 時間終了後に,形成的授業評価を記入してもらい, 得られた回答から「はい」を 3 点,「どちらでも ない」を 2 点,「いいえ」を 1 点とし,平均点を 算出した.また, 得られた結果から「成果」「意 欲・関心」「学び方」「協力」の 4 つの次元につい て,集計を行い,4 つの次元の平均点である「総 合評価」を求めた.各次元と総合評価については, 形成的授業評価の診断基準に基づいて 5 段階で評 価した. 2.4.2 ボールを蹴る・止める技能 対象となるクラスの毎時間のメインゲームをデ ジタルビデオカメラにて撮影した.撮影する際に は,高さのある場所(体育館 2 階)から撮影を行っ た.映像の分析については,Studio code(フィッ トネスアポロ社)を使用し,メインゲームの開始 から 5 分 30 秒間注 4)までを対象として,分析を 【2人組のパス】 〇ねらい ・狙った方向に蹴ること。 ・正面にきたボールを足で止めること。 〇行い方 ・2人組で対面になってコーンとコーン の間を通るようにパスをする。 ・必ず止めてから相手にパスをする。 ・時間内で何回パスが通ったか記録する。 【3角形のパス】 〇ねらい ・横からきたボールを止めて、違 う方向へパスを出す。 〇行い方 ・3人組で3角形を作り、3人でパス を回す。 ※人数が中途半端な場合は、4人 組で4角形のパスを行う。 【的当てゲーム】 〇ねらい ・狙った方向に力強く蹴る。 〇行い方 ・2チームに分かれて、コート中央 の的(段ボール)に向かってボールを 当てる。 ・時間内に何個の的を相手ゾーンに移動 することができるか競う。 図4 ドリルゲームの3つの場 Aチームの相手ゾーン Bチームの相手ゾーン Aチーム Bチーム 図 4 ドリルゲームの 3 つの場 表 2 学習内容と教師の言語教示 3 時間目 4 時間目 5 時間目 6 時間目 学習内容 a.ねらったところに緩やかにボール c. ボールが転がってくるコースに入ること   を蹴ること b.ボールを止めること d.ボールを操作できる 位置に動くこと 言語教示 ●軸足はボールの  横におこう。(a) ●軸足のつま先は  狙いたい方向に  向けよう。(a) ●蹴り足のつま先は  上に向けよう。(a)  ( 足首の固定 ) 〇守備のときは  コートの後ろで  準備しよう。(c) ●〇体の前でボール   を止めよう。   (b, c) 〇シュートはネット  に近い場所で蹴ろ  う。(d) ●〇少ないタッチ数で素早く攻撃しよう。(b, c, d) ※一斉指導はせず、タスクゲームとメインゲームの間に巡回しながら指導 ●ボール操作技能  ○ボールを持たないときの動き

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行った .また,単元推移に伴う変容と,学習内容 が切り替わることによる技能の変容を検討するた めに,1 時間目を単元はじめ,5 時間目を単元なか, 8 時間目を単元おわりとして,分析を行った. ボールを蹴る技能及び止める技能の学習成果を 明らかにするために,「成否」と「質」について, 観察的評価規準(表 3)を用いて分析を行った. また,調査対象授業では,インサイドキックにつ いての教示を行っているため,インサイドキック を蹴ることができているか,ボールと足の接触面 についても分類カテゴリー(表 4)を用いて分析 した.観察的評価規準と分類カテゴリーの作成方 法は以下の通りである. ボール操作技能の観察的評価基準については, ネット型を分析した北村ら(2014)を参考に,足 でのボール操作に置き換えて作成した注 5).ボー ル操作技能について,「パス」,「シュート」,「ト ラップ」に加えて,シュートを阻止した場合の 「シュートストップ」の 4 つの場面に分けた.そ れぞれの場面の 成功と失敗の割合を観察し,成功 についてはボール操作の質の変容を観察するため に A,B,C パターンに分けた注 6).ボールと足の 接触面に関る分類カテゴリーについては,加藤 (2001)のボールと蹴り足の接触面の分析項目お よびサッカー指導教本(日本サッカー協会技術委 員会,2016)に記載されているキックの種類を参 考に作成した.「成否」と「質」と同様に,接触 面についても「パス」,「シュート」,「トラップ」, 「シュートストップ」の 4 つの場面に分けて分析 を行った. 表 3 ボール操作技能の観察的評価基準 カテゴリー 成否 パターン 定義 蹴る ①パス 成功 A 仲間の攻撃方向前方に、動かずにトラップできる位置にボールを蹴った。 B 仲間の攻撃方向前方で 2 歩以内でトラップできる範囲にパスを蹴った。 C 仲間がトラップできる範囲にパスを蹴った。(A と B は含まない) 失敗 仲間が動いてもトラップできない範囲にパスを蹴った。 空振りした。 ③シュート 成功 A 2 人の守備者の間や、相手がいないコートの隅を狙って蹴った。 B 相手の正面に蹴った。 C 相手のコートに入った。その他。(A と B は含まない) 失敗 端っこを狙ったがアウトラインを通過した。 ネットの上を通過した。 相手コートに届かなかった。 空振りした。 止める ②トラップ ④シュートストップ 成功 A ワンタッチで次のプレーがしやすい位置にトラップした。 B ワンタッチで体の真下にボールを止めた。 C ツータッチ以上で次の動作に入った。 失敗 コート内でボールを止めることができなかった。 ボールに触れなかった。 ※①∼④の表記は図 4 の①∼④と対応した場面を示している。 ※「①パス」は仲間同士でのパス、「②トラップ」は仲間のパスのトラップ、「③シュート」は相手コートへのシュート、「④シュー トストップ」は、相手からのシュートを防ぐ場面である。 ※「②トラップ」と「④シュートストップ」では、同様の観察的評価規準を用いた。 表 4 接触面の分類カテゴリー 接触面 つま先 インサイド(内側) その他 ※アウトサイド(外側)、足裏、足の甲、脛、膝等

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2.4.3 分析の信頼性 分析の際は,信頼性を確保するため体育科教育 学を専攻し,サッカー経験のある大学院生(サッ カー経験 13 年)と著者(サッカー経験 6 年)の 2 名で 1 試合(3 分)の同一の映像を分析した. 観察者間の一致率は,ボール操作技能は 82.3%, 足とボールの接触面は 70.8%であった.一致率が 80.0%に達していない項目(足とボールの接触面) については,不一致箇所について協議し,異なる 試合映像を用いて再度分析を行った.その結果, 80.0%となったため,その後の分析は,著者 1 名 ですべて実施した(シーデントップ,1990). 2.4.4 統計処理 ボール操作技能およびボールと足の接触面に関 する単元はじめ,なか,おわりの変容を分析する ために,χ² 検定と Fisher の正確確率検定を行った. 有意であった場合には残差分析を行い,3 群間の 差を比較した.統計処理ソフトは,χ² 検定には SPSS,Fisher の正確確率検定には統計ソフト R注 7) を使用した.なお,すべての検定における有意水 準は 5% 未満とした. 2.4.5 研究倫理 本研究の実施にあたっては,順天堂大学研究等 倫理調査委員会による承認を得て行われた.具体 的には,学校長および学級担任には書面及び口頭 で本研究の目的や内容,同意が得られない場合は データを使用しないこと,参加に同意した後でも 同意を撤回できること,同意しないことで不利益 を生じることは無いこと,データの管理に関する ことを説明し,同意を得た.また,児童の保護者 へは学級担任を通して書面で説明し,同意を得た.

3. 結果と考察

3.1 形成的授業評価の変容 表 5 は,2 時間目から 8 時間目までの形成的授 業評価の結果である.単元を通して,評定は 4 ∼ 5 であった.形成的授業評価の評定が高くなった 理由は,次の通りである.まず,2 時間目では,ルー ルを理解していない児童がいたが,強くシュート する様子がみられ,児童にとってシュートをする ことの楽しさを覚えた時間であったことが窺え た.また,5 時間目では,教師が早くボールを回 すよう促していたため,ボールに触れる機会が増 えたことで児童が楽しいと感じたことが推測され る.7,8 時間目では,フロアキックボール大会 を行い,チームごとで競争した.そのため,7 時 間目では,児童の意識が競争に向けられていたこ とで「総合評価」が最も低くなったことが推測さ れる.8 時間目では,すべてのチームに優勝する チャンスがあることを児童に伝え,積極的にハイ タッチすることが促された.そのため,児童の意 欲の向上や,仲間との協力を実感できたことによ り,全ての次元の評定が 5 となったと推測される. 以上,本授業の形成的授業評価の結果は,評定が 最終的に 5 であったことから,特に優れた授業で あったと推測される(長谷川ら,1995). 表 5 形成的授業評価の推移   2 時間目 3 時間目 4 時間目 5 時間目 6 時間目 7 時間目 8 時間目 成果 2.84 5 2.61 4 2.65 4 2.63 4 2.63 4 2.68 4 2.73 5 意欲・関心 2.95 5 2.95 5 3.00 5 2.93 5 2.98 5 2.93 5 2.95 5 学び方 2.83 5 2.80 4 2.74 4 2.81 5 2.83 5 2.71 4 2.81 5 協力 2.56 3 2.69 4 2.69 4 2.81 4 2.60 3 2.60 3 2.74 5 総合評価 2.80 5 2.75 5 2.76 4 2.78 5 2.75 4 2.72 4 2.80 5

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3.2 ボールを蹴る技能の変容 3.2.1 パスの変容 表 6 は,パス技能における成否と質の変容の結 果を示したものである.単元はじめ,単元なか, 単元おわりの成否について,Fisher の正確確率検 定を行った結果,有意な差はみられなかった.パ スの成功率は単元はじめから 90%を超えていた. 対象の児童は,1 年生で 2 人組のパスの学習を行っ ていた.したがって,今回のゲームで設定された 攻守が分離された状態でディフェンスがおらず, 相手からのプレッシャーがない状況でパスをする ことは,単元はじめから容易であったと考えられ る.単元はじめや単元なかでみられた失敗は,味 方に対して力強く速いボールを蹴ってしまった ことが要因であった.単元おわりでは成功率が 100%となったことから,仲間へのパスに適した 加減を調整できるようになったと考えられる. パス技能の単元はじめ,単元なか,単元おわり における質の変容について,χ² 検定を行った結果, 有意な差はみられなかった.単元を通して,パター ン B(仲間の攻撃方向前方で 2 歩以内でトラップ できる範囲にパスを蹴った),C(パターン A,B には含まれないが,仲間がトラップできる範囲に パスを蹴った)に比べ,パターン A(仲間の攻撃 方向前方に,動かずにトラップできる位置にボー ルを蹴った)が比較的多かったことから,攻守が 分離されており相手からのプレッシャーがない状 況において,仲間が動かずにトラップできる位置 にボールを蹴ることは比較的容易であることが示 唆された.一方で,パターン B の割合は,単元 なかで最も低く(17.7%),単元おわりでは増加 した(27.0%).これは,6 時間目で教師から「シュー トはネットに近い場所で蹴る」という教示がなさ れ,そのためには「(シューターへの)パスはネッ トに近い場所へ蹴る」ことが有効であることを, 児童が授業の中で発見しており,実際,児童から そのような発言がみられたためと考えられる.中 学年以降のゴール型サッカータイプのゲームにお いては,状況判断したうえで,足でボールを蹴る ことは難しく,無意図的なキックが頻発するこ とが指摘されている(吉永・馬場,2009;岩田, 2012;吉永,2013a;吉永,2013b).しかし,先 述したように,ゲームの中で攻撃方向を意識する ことが,有効な攻撃に繋がる(松本ら,2015;吉 村ら,2002).また,攻守分離されているフロアキッ クボールでは,仲間がネットにより近い場所から 表 6 パス技能の変容 パス技能 単元はじめ 単元なか 単元おわり χ² 値 P 値 回数 % 回数 % 回数 % 成否 成功 80 141 100 4.066 0.099 96.4% 95.9% 100.0% 失敗 3 6 0 3.6% 4.1% 0.0% 質 パターン A 47 99 64 5.550 0.235 58.8% 70.2% 64.0% パターン B 20 25 27 27.8% 17.7% 27.0% パターン C 13 17 9 16.3% 12.1% 9.0% 総数 83 147 100 ※成否は Fisher の正確確率検定による P 値

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シュートできるように,攻撃方向を意識したパス がみられた.これらのことを踏まえると,フロア キックボールは,中学年以降のゴール型サッカー タイプのゲームに必要な前方への攻撃を,守備の プレッシャーを緩和した状況で学習できる教材で ある可能性が示唆された. 3.2.2 シュートの変容 表 7 は,シュート技能における成否と質の変容 の結果を示したものである.χ² 検定を行った結果, 有意な差がみられた(χ² = 14.434, p<.01).残差 分析を行った結果,単元はじめで失敗数が多く, 単元なかで成功数が多かった.シュートの成功 率は,単元を通して 80%以上と比較的高かった. 単元はじめでみられた失敗は,児童の膝の高さ程 度に設定されたネットの上を越すシュートが原因 であることが多かった.しかし,授業を重ねるに つれて,ネットの下を通るシュートが多く見受け られたことから,児童は,ただシュートを蹴るの ではなく,シュートが浮かないように制御できる ようになったと考えられる. シュート技能の単元はじめ,単元なか,単元お わりにおける質の変容について,Fisher の正確確 率検定を行った結果,この 3 つのパターンに有意 な差がみられた(p<.001)注 8).単元はじめでは パターン B(相手の正面に蹴った)の割合が最も 高かったが,単元なかではパターン A(2 人の守 備者の間や,相手がいないコートの隅を狙って 蹴った)の割合が最も高くなった.単元おわりに は,パターン A と B がそれぞれ 50%程度を占め ていた.このことから,授業を重ねるにつれて, 相手チームの動きに合わせて,相手コートの隅や 間を狙って蹴ることが出来るようになったと考え られる.後藤ら(1974)は,7 才以降の児童のキッ クの正確性は加齢的に向上すると述べており,本 研究でもシュートの質が高まったことから,それ を追従する結果が得られた.他方で,パターン B も単元おわりにパターン A と同数程度あったの は,ボールを受ける側が,ボールの正面に入る動 きができるようになっていたため,結果的に相 手の正面に蹴ってしまっていたからだと考えられ る. 3.3 ボールを止める技能の変容 3.3.1 トラップの変容 表 8 は,仲間からのパスをトラップした場合の 表 7 シュート技能の変容 シュート技能 単元はじめ 単元なか 単元おわり χ² 値 P 値 回数 % 残差 回数 % 残差 回数 % 残差 成否 成功 101 -3.1** 155 2.3** 139 0.2 14.434 0.001** 83.5% 95.7% 90.8% 失敗 20 3.1** 7 -2.3** 14 -0.2 16.5% 4.3% 9.2% 質 パターン A 28 ― 79 ― 70 ― 28.970 0.000*** 27.7% 51.0% 50.4% パターン B 66 ― 60 ― 68 ― 65.3% 38.7% 48.9% パターン C 7 ― 16 ― 1 ― 6.9% 10.3% 0.7% 総数 121 162 153 ※質は Fisher の正確確率検定による P 値 **:p<.01,***:p<.001

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成否と質の変容の結果を示したものである.Fish-er の正確確率検定を行った結果,仲間からのパス をトラップした場合において,有意な差がみられ た(p<.001).成功率は単元はじめから 80% 以上 であり,単元おわりには 98.9% であった.このこ とから,仲間からきた易しいパスを止める技能は 授業を重ねるにつれて,成功率が高くなったと考 えられる.球技の授業において,French et al(1991) は,80%程度の達成率を保証する課題設定をする ことが重要であると指摘している.この指摘を踏 まえて,中垣・岡出(2009)は,中学生段階のベー スボール型ゲームの場合,ボールを操作する技能 については 80%以上の成功率を期待することは 困難であるが,ボールを持たない動きである意思 決定については,80%以上の成功率を設定するこ とは十分可能であると報告している.このことを 踏まえると,本研究における小学校 2 年生を対象 としたフロアキックボールでは,ボールを足で止 める技能は,比較的容易であったと考えられる. 仲間からのパスをトラップした場合の単元はじ め,単元なか,単元おわりの質の変容について, χ² 検定を行った結果,仲間からのパスをトラップ した場合において,有意な差がみられた(χ² = 47.581, p<.001).残差分析の結果,仲間からのパ スをトラップした場合は,パターン A(ワンタッ チで次のプレーがしやすい位置にトラップした) は単元おわりに多く,パターン B(ワンタッチで 体の真下にボールを止めた)は単元なかに多く, パターン C(ツータッチ以上で次の動作に入った) は単元はじめに有意に多かった.このことから, 単元はじめよりも単元おわりの方が,より少ない タッチ数で次の動作を行えるようになっていたと 考えられる.これは,ドリルゲームとタスクゲー ムにおいて,チームやペアで時間内に何回パスを 行えるか競争性のあるゲームを実施したことで, パスを回すために,より少ないタッチ数で次の人 にパスを回す意識ができたことが考えられる.マ イネル(1981)によると,2 つの動作の組み合わ せは習熟に伴い局面融合によりスムースな動きに 変容するとされている.また,サッカーにおける ボールコントロール(トラップ)の局面での技術 や認知が,キックの局面に影響を与えている(中 山ら,2007)ことを踏まえると,本研究の結果は, シュートを蹴る前の局面であるトラップにおい て,「ワンタッチで次のプレーがしやすい位置」(パ ターン A)へのトラップが高くなったことにより, 表 8 トラップ技能の変容 トラップ技能 単元はじめ 単元なか 単元おわり χ² 値 P 値 回数 % 残差 回数 % 残差 回数 % 残差 成否 成功 127 ― 182 ― 175 ― 21.775 0.000*** 87.6% 96.3% 98.9% 失敗 18 ― 7 ― 2 ― 12.4% 3.7% 1.1% 質 パターン A 37 -0.9 40 -3.7** 79 4.6** 47.581 0.000*** 29.1% 22.0% 45.1% パターン B 51 -2.9** 117 4.5** 80 -1.8 40.2% 64.3% 45.7% パターン C 39 5.0** 25 -1.3 16 -3.3** 30.7% 13.7% 9.1% 総数 145 189 177 ※成否は Fisher の正確確率検定による P 値 **:p<.01,***:p<.001

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シュートの学習成果(表 7)の向上にも繋がった 可能性が示唆された. したがって,本研究におけるフロアキックボー ル教材は,蹴る動作と止める動作を分けて行う学 習よりも学習成果が向上することが示唆された. また,須甲ら(2017)で実施された指導プログラ ムにおいても,ボールを止めて蹴る一連の動作が ある教材を適用しており,パス技能及びトラップ 技能の向上に有効であったため,これを追従する 結果となった. 3.3.2 シュートストップの変容 表 9 は,シュートストップの成否と質の結果を 示したものである.χ² 検定を行った結果,シュー トストップにおいても有意な差がみられた(χ² = 7.378, p<.05).残差分析を行った結果,単元はじ めで成功数は少なく,単元なかでは多くなった. 単元はじめでは,シュートの質(表 7)において, パターン B(相手の正面に蹴った)が最も高い割 合であったことから,正面にきたシュートが多く, シュートを止めることが比較的容易であったと考 えられる.単元なかでのシュートの質(表 7)は, 50%以上がパターン A(相手の間や,相手がいな いコートの隅をねらって蹴った)であったにも関 わらず,シュートを防いだ成功率が高くなってい た.撮影したビデオ映像から,相手からのシュー トが蹴られる前にボールの軌道を予測し,ディ フェンスの位置取りができるようになっていたこ とが窺えたため,これが要因と推測される. シュートストップの質の単元はじめ,単元なか, 単元おわりの質の変容について,χ² 検定を行った 結果,シュートストップにおいて,有意な差がみ られた(χ² = 36.494, p<.001). 残差分析の結果, パターン A(ワンタッチで次のプレーがしやすい 位置にトラップした)は単元おわりに多く,パ ターン B(ワンタッチで体の真下にボールを止め た)は単元なかに多く,パターン C(ツータッチ 以上で次の動作に入った)は単元はじめに有意に 多かった.単元はじめでは,ボールが転がってく る方向に対して正面を向いてトラップすることが できずボールを後へそらしてしまうことや,足を 横に広げることでボールの勢いを止め,ボールを コントロールする様子がみられた.そのため,5 時間目では,ドリルゲームの前に,体の前でボー ルを止めることを授業者が実演しながら一斉指導 した.このことから,単元なかと単元おわりにお 表 9 シュートストップ技能の成否 シュートストップ技能 単元はじめ 単元なか 単元おわり χ² 値 P 値 回数 % 残差 回数 % 残差 回数 % 残差 成否 成功 53 -2.4** 113 2.3** 67 -0.2 7.378 0.025 * 77.9% 91.9% 85.9% 失敗 15 2.4** 10 -2.3** 11 0.2 22.1% 8.1% 14.1% 質 パターン A 10 -0.7 16 -2.9** 26 3.8** 36.494 0.000 *** 18.9% 14.2% 38.8% パターン B 15 -2.7** 70 5.3** 18 -3.4** 28.3% 61.9% 26.9% パターン C 28 3.4** 27 -3.0** 23 0.2 52.8% 23.9% 34.3% 総数 68 123 78 *:p<.05,**:p<.01,***:p<.001

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いて,体の前でシュートストップすることができ るようになり,より少ないタッチ数で次の動作 を行えるようになっていたと考えられる.須甲ら (2017)の実践による下位児のトラップ技能にお いても,単元序盤では同様のつまずきがみられた ことから,小学校低学年の足でボールを止める技 能の習得には,転がってくるボールのコースに入 り,正面を向いてボールを止めることも指導する ことが有効であると考えられる.また,本研究で は,ボールを持たないときの動きに関するデータ を示すことはできなかったが,シュートストップ の結果から,小学校低学年で求められる「ボール が転がってくるコースに入ること」ができるよう になったと考えられる.したがって,フロアキッ クボールにおいては,ボール操作のみではなく, ボールを持たないときの動きの学習可能性が示唆 された. 3.3.3 ボールと足の接触面の変容 表 10 は,ボールと足の接触面の変容の結果 を示したものである.χ² 検定を行った結果,パ ス(χ² = 25.598, p<.001),シュート(χ² = 26.745, p<.001)において有意な差がみられた. パスにおいて,残差分析を行った結果,つま 先,その他は単元はじめで多く,インサイドは単 元なかで多くなった.インサイドキックを行う際 には,蹴り足のつま先を上に向け,足首を固定す ることが挙げられる(シュテーラー,1993;日本 表 10 接触面の変容 技能 接触面 単元はじめ 単元なか 単元おわり χ2 P 値 回数 % 残差 回数 % 残差 回数 % 残差 パス つま先 27 2.6** 22 -2.8** 24 0.5 25.598 0.000*** 32.5% 15.0% 24.0% インサイド 39 -4.2** 116 4.5** 62 -0.9 47.0% 78.9% 62.0% その他 17 2.7** 9 -3.0** 14 0.7 20.5% 6.1% 14.0% シュート つま先 74 4.8** 57 -2.5** 56 -2.0** 26.745 0.000*** 61.2% 35.2% 36.6% インサイド 38 -4.9** 92 2.0** 90 2.6** 31.4% 56.8% 58.8% その他 7.4%9 0.4 8.0%13 0.9 4.6%7 -1.3 トラップ つま先 18 ― 14 ― 14 ― 7.708 0.103 12.4% 7.4% 7.9% インサイド 24 ― 42 ― 49 ― 16.6% 22.2% 27.7% その他 103 ― 133 ― 114 ― 71.0% 70.4% 64.4% シュート ストップ つま先 6 ― 6 ― 6 ― 5.963 0.202 8.8% 4.9% 7.7% インサイド 27 ― 36 ― 32 ― 39.7% 29.3% 41.0% その他 35 ― 81 ― 40 ― 51.5% 65.9% 51.3% **:p<.01,***:p<.001

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サッカー協会技術委員会,2016).本研究におけ る単元のはじめでは,蹴り足のつま先を上に向け る動作については指導していなかったため,つま 先を下に向けて蹴る児童が多かった.そのため, 5 時間目で一斉指導を行い,教師が巡回指導し, その結果,インサイドキックをする児童が多くみ られた.また,インサイドキックは,正確性を考 えたときに,最も良いキックであるとされている (戸苅,1984).これを踏まえると,本研究では, 5 時間目以降にインサイドで蹴ったパスが増加し たことは,パスの質(表 5)についてもパターン A やパターン B のような,人や攻撃に有効な空間 に向けたより正確なパスができるようになったこ とが考えられる. シュートをするときの足とボールの接触面の変 容について,残差分析を行った結果,つま先が単 元はじめに多く,インサイドが単元なかと単元お わりに多くなった.シュートの接触面については, パスの接触面と同様に,5 時間目の指導によりイ ンサイドの割合が増加傾向であった.シュートと パスは「狙ったところへボールを蹴る」という共 通性が見出されること(寺田ら,2015)から,児 童はパスと同様に,シュートにおいてもインサイ ドを使用して正確に狙って蹴ることができるよう になったことが考えられる.また,サッカーにお いてシュート成功率が高いのはインサイドキック であること(吉田,1969)から,シュートの質(表 7) が単元なかで相手の間や,相手がいないコートの 隅を狙って蹴ったシュートの割合が増加したこと は,接触面においても単元なかでインサイドの割 合が増加したことが要因であると推測できる.し たがって,児童のシュートの正確性を向上させる には,インサイドキックが有効であり,小学校 2 年生においては,インサイドでシュートを蹴る技 能の習得ができる可能性が示唆された. 仲 間 か ら の パ ス を ト ラ ッ プ し た 場 合 及 び, シュートストップの接触面の変容について,χ² 検 定を行った結果,有意な差はみられなかった.ト ラップの接触面については,その他が単元を通し て 60%以上であった.その他のうち,足裏でト ラップする児童が多かった.インサイドキックに おいては,初心者群と熟練者群を比較した場合に, 初心者は蹴り足が十分に外転されていない(池田 ら,1988)ことから,本研究においても足の外転 を必要としない足の裏でボールを止めていたと考 えられる. シュートストップの接触面の変容については, シュートの質に関して単元おわりにパターン A (相手の間や,相手がいないコートの隅を狙って 蹴った)が最も高くなったため,足や体の一部で ボールに触れることで,シュートを防ごうとした ことが考えられる.

4. 結 論

本研究の目的は,小学校 2 年生の体育授業にお ける,ボール蹴りゲーム単元において攻防分離し た状況で,足を使った教材の「フロアキックボー ル」を実施し,足でボールを扱う技能(ボールを 蹴る・止める)を低学年の児童が習得することが 可能であるか検討し,中学年以降のゴール型サッ カータイプへの発展に寄与するか検討することで あった. その結果,以下のことが明らかになった. 1) パスの技能は,攻守が分離された状態での成 功率は単元を通して 90%以上であった. 2) シュートの技能は,授業を重ねるにつれて, 相手の間や,相手がいないコートの隅を狙っ て蹴る技能が習得された. 3) ボールを止める(トラップ)の技能は,授業 を重ねるにつれて,ワンタッチで次のプレー がしやすい位置へのトラップが習得された. 4) パスやシュートをインサイドで行うことは, 教師が指導することで,習得が可能であった.

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以上のことから,攻守分離型ゲームの足でボー ルを扱う教材「フロアキックボール」を実施した 授業では,ボールを蹴る・止める技能の向上に一 定の成果があった.また,ゴール型サッカータ イプで求められる正確なボール操作技能が習得さ れ,中学年以降の学習へ接続可能な教材であった. 一方で,本研究によるボールを蹴る・止める技 能の習得については,攻守分離された状態での技 能発揮であるため,攻守混合型ゲームになった場 合についての検証はされていない.したがって, 今後は攻守分離型ゲームにおいてのボールを蹴 る・止めるの技能の習得が,攻守混合型ゲームを 実施した際に,どのような成果が得られるのか検 討することも必要である.また,本研究の教材で ある「フロアキックボール」は複数の課題を含ん だゲームであるため,教材を評価するためには, ボールを蹴ること・止めること以外のボールを持 たないときの動きを分析することや,ゲーム中の 児童の考えや動き方を記す学習カードの分析等, 思考・判断に関する検討も今後必要になると考え る. 【注】 1)この実践では,「意図的な攻撃によって得点をとること」 やネット型における「場の判断」に関する学習でもあ ったため,ネット型単元としての位置付けで授業が展 開されていた. 2)1 年生でのボール蹴りゲームにおける学習内容は,2 人 組でのパス,ボールをドリブルしながら鬼ごっこを実 施していたが,インサイドキックについての教示はし ていなかった . 3)単元 2 時間目の「授業内容及びゲームの説明」では, ドリルゲームとタスクゲームを実際に行いながら,ル ールとローテーションの仕方を説明した. 4)毎時間の授業進行状況に応じて,ゲーム時間と試合数 を授業担当者の裁量で実施していたため,1 時間目は 3 分× 3 試合,5 時間目は 2 分× 3 試合,8 時間目は 2 分× 5 試合となっていた.また,ゲーム時間数を平等 に確保するために,試合の途中で児童が交代していた. そのため,1 単位時間で最もゲーム時間が少なかった 対象者に合わせ,5 分 30 秒間を分析対象とした.ゲー ム時間が 2 分間の場合は,1 試合目と 2 試合目の合計 4 分間に加え,3 試合目の開始から 1 分 30 秒までを分 析し,5 分 30 秒間とした. 5)北村ら(2014)は,ネット型ゲームにおける分析カテ ゴリーをレシーブ,トス,アタックとしていた.した がって,本研究でのボール操作技能の観察的評価基準 については,パスはレシーブの分析カテゴリー中の項 目「返球の範囲」を参考に歩数を基準とした.シュー トはアタックの分析カテゴリー中の項目「コースの選 択」を参考に,相手とシュートコースの位置関係を基 準とした.また,トラップに関しては,ボールコント ロール(トラップ)とは,次にプレーしやすいところ にコントロールする技術であること(日本サッカー協 会技術委員会,2016)から,ボール保持者とボールの 位置関係と次の動作までのボールタッチ数を基準とし た. 6)足立ら(2013)は,ゴール型に共通するサポートを学 習するための教材の効果を検証する際に,学習成果 としてサポートの「成否」と「質」を検証していた. サッカー指導教本(日本サッカー協会技術委員会, 2016)では,パスやコントロールの質を正確さ,強さ, 意図,方向,タイミングなどと示していること,小学 校学習指導要領解説の低学年「ボール蹴りゲーム」の 例示では,ボール操作技能として「ねらったところに 緩やかにボールを蹴ること」,「ボールを止めること」 示されていることから,本研究においては,主に「正 確性」や「方向」を「質」とし,観察的評価基準を作 成した. 7)統計ソフト R は, SPSS などの有料の統計ソフトと同等 の高度な解析を行うことが可能なフリーの統計解析ソ フトである.実際に教育心理学の分野では,R を利用 した研究が多くなってきていることが報告されており (鈴木,2018),SPSS のベーシックパッケージでは対応 できない Fisher の正確確率検定も解析することができ るため,R を使用した. 8)Fisher の正確確率検定での残差分析は望ましくない(郷 式,2008)ことから,Fisher の正確確率検定の下位検 定は実施せず,パーセンテージによる結果のもと考察 をした. 【引用・参考文献】 1)足立匠・宮崎明世・三木ひろみ(2013)ゴール型に共 通するサポートを学習するための教材の効果―中学校 におけるバスケットボールとサッカーの授業実践を例 に―.スポーツ教育学研究,32(2):1-14. 2)浅井武(2002)サッカーファンタジスタの科学.光文社: 東京. 3)ダリル・シーデントップ:高橋健夫他訳(1988)体育

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の教授技術.大修館書店:東京,pp.282-296. 4)French, K, E., Rink, J, E., Rikard, L., Mays, A., Lynn, S., and

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