「不妊」の社会的意味 : マス・メディア言説を通して
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(2) 甲南女子大学研究紀要第 38号. 不妊女性 に苦悩 をもたらしてい るかを照 らし出 した。 他 にも,生 殖技術 が もた らす問題 を焦点 に しなが ら 「生めない」問題 に触 れてい る文 献 にお い て,不 妊 の 苦悩 の背後 に「産む性」 としての女性へ の社会的圧力 がある ことが指摘 されて きた. (お 茶 の水女子大学生命. 人間科学編 (2002年 3月. ). 較 的長期 間 の 言 説 を考 察 す る とい う 目的 にお い て 「朝 日新 聞」 の場合 は戦後 50年 間 の記事 見 出 しが. ,. CD. ―ROM化 され てお り,第 一 次検 索 が他 紙 に比 べ て 容 3。. 易 に行 なえる. また ,本 紙 が広 く全 国 的 に購 読 され. て い る こ と も,選 定 の 理 由 の 一 つ で あ る。 た だ し ,. 「朝 日新 聞」 が 新 聞 メデ イア を代 表 して い る とい う こ. 倫理研究会,1992;宮 ,1992;松 尾 ,1995)。 しか しなが ら,「 不妊」 とい う問題 が どの よ うな社. とで はないの で他紙 との比 較 が必 要 と思 われ るが ,そ. 会的条件 の中か ら現 れ, どのような意味 を付与 され. れは本稿 で行 なえる分析範 囲 を越 えて い る。 ここでの. またどのような機能 を呆 た してい るのか,に 関す る研. 知見 は,「 朝 日新 聞」 とい う特 定 マ ス ・ メデ イアか ら. 究 は今 だ十分 に積み上げられてい るとはい えない。社 会学的な視点 か らの研究 として,「 産めない」 ことに. 得 られた もので あ る こ とを断 つてお きた い 。. 対す る概念や人工生殖が普及す る心性 が形成 される過. 記事 が 収録 されて い る 「戦後 50年 朝 日新 聞見 出 しデ. 程お よび今 日の状況 を論 じた倉重の研究 (1992)や. ー タベ ース CD― ASAX 50 yrs」 (以 下 「CD― ASAX」 と. ,. ,. 主 と して依拠 したデ ー タは,1945年 か ら 1995年 の. 戦前 の家 としての近代家族 と戦後 の よ り欧米的な近代. 表 記 )で あ る。 これ は「朝 日新 聞 縮 刷 版 (東 京 版 )」. 家族 とい う二つの家族制度が交錯す る現代家族 の なか. の 見 出 し を cD― ROM化 し た も の で あ る。「CD―. で,不 妊家族 とそのなかの女性 たちが 占める位置付 け. ASAX」 に よって検索 され る内容 は,「 記事 見 出 し」. を考察 した田間の研究 (1995)が 挙げ られる。 さらに. 「 日付」,「 朝刊/夕 刊」,「 掲載面 ペー ジ」,「 縮刷版 ペ. 言説分析 を用い た研究 として,199o年 か ら 1993年 ま での 3年 間に 35名 の医師に対 して行 ったインタヴュ. ー ジ」,「 掲載段」 であ る。見出 しの分類 については. 編集担当者が各 々の記事内容 にあた り独 自のキー ワー. ー ・デー タに基づいて 「不妊治療 にたず さわった医師. ドをつ けてお り,検 索語 を含 まない記事 も検索 される. の語 り」 を分析 した柘植 の研究 (1999),1985年 か ら 1995年 までの雑誌記事 を基 にマス ・メデ イア空間 に. 場合がある。. 流通 す る「不 妊 問題」言 説 を分 析 した諸 田 の 研 究. 下の語彙で記事見出 しを検索 した。「不妊」,「 石女」. (2000)が ある。 これ らの研究 の多 くが ,「 不妊」 の社. 「子 な し」,「 生 殖技術」,「 体外受精」 である。 この う ち,「 石女」,「 子 な し」 につい ては検索語彙 になか つ. 会問題化以 降を研究対象 としてい る。山本 (1997)が. ,. ,. 手続 きと して は,ま ず,「 cD一 ASAX」 を用 いて以 ,. 年 か ら 1995年 まで とい う長期間 にわたる医学論文 を. た。「生殖技術」 は 1990年 代 以 降 に,「 体外受精」 は 1978年 以 降 に検索語彙 と して設定 されて い た。「出. 通 しての医学的言説 の分析 は,不 妊 に関 して 日本 では まだなされてい ない。. 産」 での検索 も行 な った ところ,「 不妊」 に関す る記 事見出 しのすべ てが体外受精 をめ ぐるものだった。本. 本稿 の 目的は,新 聞 に現 れた 「不妊」 の言説 を通 し. 稿 の 目的である「不妊」 の言説 の長期的な考察 を満た. て,「 不妊」 の社 会的意味 を明 らか にす る こ とで あ. す検索語 は 「不妊」 のみであ ったこと,記 事見出 しの. る。あ る問題 の社会へ の提示 と定着 において重要性 と 一般性 を持 つ新聞 とい うマス・メデ イアを採用 し,戦. 分類 において記事内容 も考慮 されてい ることか ら,最. 後 50年 間 とい う比較的長期間の流れを追 うことによ って,社 会における「不妊」 の意味 の変遷 をより広 く. た。「体外受精」 は不妊治療 にとって重要 と思 われる. 「更年期 の構築」 の研究 にお いて用 い た よ うな,1949. 2。. 照 ら し出す ことがで きる と考 える. そ こか ら,「 不. 終的 に「不妊」 の語 による検索結果 を分析対 象 とし ので,補 助 デー タとして加えた。 「不妊」 の語彙 に よつて「CD― ASAX」 か ら検索 さ. 妊」 が社会 において どのような問題 として位置付 けら. れた「記事見出 し」 の件数 は 124件 であ った。次 に. れて きたのか, さらにそのことが当事者 の問題 とどの. これ らすべ てについて「縮刷版」 にあた り記事内容 を. ように関わっているのか について も考察 を加えたい。. 確認 した上で,動 植物 に関す る記事 お よびヒ トの避妊 ・不妊手術 に関す る記事 を除外 した。最終的に分析対. 2。. 分 析 の方 法. ,. 象 となった記事 見 出 し数 は,83件 で あ る。「体外受 精」 については,関 連 の記事見出 しを検索 した後 ,動. 本稿 では,マ ス 0メ デイアの一つ として新聞記事 を. 植物 に関する記事 を除外するために見出 しだけでは判. 取 り上げる。複数あ る全 国紙 の うち「朝 日新聞」 を対. 断で きない ものについてのみ「縮刷版」 にあたって確. 象 として採用 したのは,お もに以下の理由による。比. 認 した。 また,必 要 に応 じて 「縮刷版」 での記事内容.
(3) 門野里栄子 :「 不妊」の社会的意味. の確認 を行 った。. して,「 生めない問題」 に関す る記事 は 1割 に も満 た. 「CD― ASAX」 によって検索 で きる記事見出 しは 1995 年 までの ものであるが,生 殖技術 の発展 に伴 い「不. な い。「朝 日新 聞」 にお い て「不 妊」 は,主 と して 「医療的な問題」 として語 られてい るといえる。. 妊」 に関連する記事が これ以 降増加 してい ることが予. 次 に,時 代 的 な変化 を見 る と,50年 代 は 1件 ,60. 想 される。近年 の「不妊」 の社会的意味 を考察す るに. 年代 は 3件 であ ったのが,70年 代 に入 って 14件 と増. あた り,朝 日新聞社がイ ンターネ ッ ト上で提供 してい. え始め,80年 代 は 26件 ,90年 代 には 95年 までで 39. DNAと を用 い. 件 を数 える。全件数 の変化 か ら言 えば,70年 代 と 9o 年代 に急激な変化 が見 られる。す でに述べ たように. て,1985年 以 降 最 新 の 記 事 を検 索 す る こ とが で き. 件数 の変化 とともに語 られ方 の変化 にも注 目す る必要. る。 これ には東京版 だけで な く地方版 の記事 ,ま た雑. がある。 ここでは簡単 に,上 記 の 2つ の記事分類別 に. 誌 『ア エ ラ』 の 記 事 も含 ま れ る。「DNA」 の 場 合 は. 見 た件数 の変化 につい て触れ てお く。「生殖医療」 に. 「CD― ASAX」 と違 って,語 彙それ 自体 を検索 し,「 見. 関す る記事 はどの年代 も一貫 して多数 を占めるが,70. 出し」,「 本文」,「 見出しと本文」別にその語彙を含む. 年代 と 80年 代 には全件数 の 8割 以上 だったのが,90. 記事を検索することが可能である。本稿では「見出し. 年代 には 6割 台 に下が る。代 わ って「そ の他」 が増. と本文」 に「不妊」の語が含まれる記事を検索 した。. え,「 生めない問題」 も若干増 える。. る「Digital News Archives for Library」 表 記 )を. (以 下. 参 考 デ ー タ と して 加 え た。「DNA」. ,. また,必 要に応 じて「縮刷版」にあたった。断 りがな. 記事見出 し件 数 の全体 的な結果 か ら,「 不妊」 の言. い限 り,分 析結果は「CD― ASAX」 に関す るものであ. 説 の特徴 として挙げ られるのは,第 一に「不妊」が紙. る。. 面 に登場 して以来,主 として「医療的な問題」 として. 注意 してお きたい のは,記 事件数 に関 してである。. 語 られて きてい ること,第 二 に 90年 代 以 降,医 療 と. 近年 になるほ ど「朝 日新 聞」 の紙面 自体 が 拡大 してお. は別 の文脈 で「不妊」が 語 られ始 めていることで あ. り,全 体 の記事件数が増加 して い る こ とを考慮 す る必 ° 要 が あ る 。近年社 会 問題化 して い るテ ーマ を取 り上. る。以下 では,こ の 2つ の特徴 に沿 って,戦 後 50年 の「不妊」関連記事 を考察 してい く。. げ,過 去 に遡 って検索 した場合 ,お のず と「増加 して い る」 とい う結果が得 られ る ことになる。 件数 の増減 に大 きな変 動 が な い 限 り,単 な る増 加 傾 向 だ けで は 「以 前 よ り高 い 関心 が 向 け られ る よ う にな った」 とは. (1)「 医療的な問題」 としての不妊. 戦後か ら 70年 代 にかけて年間 にせ いぜ い 1,2件 し かなかった「不妊」関連記事 の中で注 目されるのは. ,. 言 えない 。件数 の変化 とともに,語 られ方 の変化 に も. 78年 「試験管 ベ ビー」 の名 で衝撃 を与 えた世 界初 の. 注 目す る必 要 が あるだろ う。. 体外受精児誕生の記事 で あ る。「元気 に “世紀の赤 ち ゃん"」 の 見 出 しが 入 っ た 第 一 報 (7月 26日 夕 刊 ). 3.「 不 妊 」 の 言 説 と社 会 的 条 件. は ,10面 と 11面 の 見 開 き面 の ほぼ 3分 の 2,二 人 の 医 師 の 写真 入 り,10段 抜 きの 扱 い で あ る。 この 記 事. 戦後 50年 間の「不妊」 に関連す る記事見出 しの検. はそれ以 前 の「不妊」 関連記事 と比 べ て,か な り大 き. 索結果 か ら,ま ず全体 的 な流 れ を見 てお きたい (表. く報 道 され て い る。 また,5年 後 の 83年 ,日 本 初 の. 対象 となった記事見出 しの全 件数 は,83件 で あ. 体外 受精卵 着床 の 成功 を伝 える記 事 (3月 14日 夕刊 ). った。 これ らの記事 を,現 在 「不妊」 が医療的な問題. も,1面 と 15面 にお い て ともに写真 入 りで 紙 面 の 約. として扱 われる傾向が強い とい う筆者 の現状認識 ,お. 半分 を使 って掲載 されて い る。 どち らも「不妊 」 が注. よび「生め ない」問題が どの程度扱われて きたのか と. 目された記事 で あ るが ,記 事 の 関心 は「不妊」 とい う. い う筆者 の 関心 か ら,「 生 殖 医療」 に 関す る記事 と. よ りは体 外 受 精 とい う「生 殖 技 術」 に向 け られ て い. 「生めない 問題」 に関す る記事 とに分 けた。「生 殖 医. る。生殖技術 へ の 関心 は,「 体外 受 精」 に 関連 す る記. 療」 には近代西洋医学 だけでな く,漢 方や民間医療 も. 事 見 出 しが 83年 を ピー クにその前 後 の 年 を含 め て 集. 含 まれる。分類 の結果 ,「 生殖医療」 に関す る記事が. 中的 に取 り扱 われて い る ことに も現 れて い る'。. 1)。. 61件. ち 5件 は特集記事 ),「 生 めない 問題」 に関. 上 記 2つ の記事 に共通す るの は,生 め ない もの を生. ち 4件 は医療. め る よ うに した不妊治療技術 を評価す る一 方 で ,そ れ. 事故 ,5件 は「不妊」関連 出版物)で あ った。「生 殖. が もた らす倫理 的 な問題 を提示 して い る ことで あ る。. 医療」 に関す る記事が全体 の 7割 以上 を占めるのに対. た とえば 日本初体外 受精卵着床 の記 事 で は,「 不 妊症. (う. す る記事が 8件 ,「 その他」 が 14件. (う.
(4) 甲南女子大学研究紀要第 38号. 52. 人間科学編 (2002年 3月. ). 表 1「 CD一 ASAX」 「不妊」関連記事見出 し 記事見出 し件数 生. 年代 全体. 50年 代. 殖. 医. 療. 不妊 治 高度 生 倫理 問題 療 一般 殖技術. 特. 集. 1. 1. 60年 代. [ ]内 は掲載年 肺臓 ガ ンと不妊増す. [53]. 不妊 の弟 の嫁 [65] 不妊 にい どむ ス トレスの解消 も大切 [65]. 1. 不妊女性 に人工輸 卵 管手術 [70] 子宮移植可能 な段 階 試験管 ベ ビー [71] 不妊 と子宮 内膜 そ うは [74] せ つ な い不妊 の人 体外受精児誕 生 (英 )[78] い ま不妊症対策 は [78]. 70年 代. 80年 代. 記事見出 し例. 生 め ない その他 問題. 1(+H). 26. 米 で不妊 の新解決法 [80] 顕微鏡 で卵 管手術 不妊 治療 に朗報 [81] ¨ (解 説 )不 妊症 には福音 だが・ [83] 揺 れ る「生 命」 の定義 体外受精 で妊 娠検査 [83] 免疫不妊症 ,体 外受精 で子宝 [85] 〈連載 〉 (1)不 妊夫婦 ,10組 に 1組 も [85]. 「男性不妊」 の治療 に成功 精子採 り出 し [90] 急増す る出生前診断 [92] 代理母 の出産 不妊学会が否定的見解 [92] 「実の母」 は中絶胎児 P(英 )[94] 「不妊 の悩 み克服」 に共感や心の揺れ語る [94] 〈連載 〉不妊 (1)∼ (4)[94]. 90年 代 (∼ 95). 24. 5(+H). 件数. ※ 主9)を 参月 瞑。 ′. 「不妊治療一般」:受 精卵の操作を含まない生殖技術に関する記事 「高度生殖技術」:受 精卵の操作が可能な生殖技術に関する記事 「倫理問題」:倫 理問題に比較的多 く触れている記事 に悩 む女性 に とっては,大 きな福音 と して迎 え入 れ ら. (83年 )な どが並 ぶ 。「体 外 受 精」 は,同 時期 に社 会. れよ う。 だが人間の誕生 とい う生命 の出発点 に人工 の. 問題 化 した 「脳死」. 手 が加 え られるこ とへ の疑念 もなお強 くり改 めて,議. 終 わ り」 の定義 を揺 るがす高度医療技術 として注 目さ. 論 を呼びそうだ」 と記 されてい る。世界初体外受精児 誕生の記事 において示 されたの と同 じ懸念が,こ こで. れて い る。. も繰 り返 されてい る。78年 と 83年 当時 の「不妊」 お. 受精技術 を発展 させ た不妊治療 に加 え,出 生前診 断. よび「体外受精」関連記事 か ら読 み取 れることが 2点. 代理母 ,卵 子 の提 供 ,余 剰胚 の譲渡 ,医 療事故 な ど. あ る。一 つ は,不 妊治療が体外受精 に よつて 象徴 さ. 多岐 にわたる問題 が 「不妊」 を通 して取 り上 げ られ よ. れ,他 方体外受精 はその適用 の場 として不妊治療 を必. うになる。 これ らの 問題 の多 くは,受 精卵 の操作 によ. 要 とする, とい う両者 の関連性 である。 もともと体外. って生 じる問題群 で あ る。体外受精 が登 場 した当初 は. 受精 は畜産 において品種改良を目的 として開発 された 技術 であ り,同 時 に多 くの可能性 をはらんでいた。後. 生殖過程 へ の 人為 的介入 が問題 に され たが ,「 む しろ. に「クロー ン羊 ドリー」 が誕生 したのが,そ の例 であ. 精卵 を直視 下 に操作 す る こ とが可 能 にな った こ とだ」. る。 しか しなが ら当時 ヒ トに関 しては,体 外受精が不 妊治療 の枠組みを踏み越 えるものではなかったとい え. (村. る。い ま一つは,「 不妊」 を通 して生殖技術 によつて もたらされる倫理問題が提示 されていることであ る。 当時 の記事見 出 しには,「 はた して医学の勝利 か」 「賛 否 の 声 さま ざま」 (78年 ),「『人 工 の 手』な お疑. 6と. 対 を成 して ,「 生 命 の 始 ま りと. 90年 代 に入 る と,顕 微授 精 や凍結受 精卵 な ど体 外 ,. ,. 重大 な変化 は,体 外受精 とい う技術 の確 立 に よつて受. 岡, 1998:170)。. ここで受精卵 の操作 が可能 か ど うか を基準 に して. ,. 「生 殖 医療」 に関す る記事 を さ らに,「 不 妊 治療 一 般」 (受 精卵 の操作 を含 まない 生 殖技 術 )と. 「高度 生殖技. 術」 (受 精卵 の操 作 が可 能 な生 殖技 術 )に 分 類 した。. ". 念」"「 倫理 に複雑 な波紋」"「 揺 れる『生命』の定義」. また,倫 理問題 に比 較的多 く触 れて い る記事 につい て は これ ら とは 別 の カ テ ゴ リ ー と して 設 定 した (表.
(5) 門野里栄子 :「 不妊」の社会的意味. 70年 代 と 80年 代 は件 数 と して は「不 妊 治療 一. (91年 ),お 茶 の水女子大学 生命倫 理研 究会編 の『不. 般」 の方 が「高度生殖技術」 よ り多 い。 ところが 90. 妊 とゆれる女 たち』 (92年 ),不 妊治療 の現状 をフジ. 年代 になる と逆転 し,「 不妊治療 一般」 が 6件 に対 し. テ レビと『週刊文春』が提携 して リポー トしてい るの. て「高度生殖技術」が 13件 となる。後者 13件 の うち. を伝 える記事 [後 に松尾 (1995)が 本 として出版 ]で ある。あ るいは,「『不妊 の悩み克服』 に共感や心 の揺. 1)。. 5件 が「非配偶者間体外受精」 の問題 である。 「CD― ASAX」 お よび 「DNA」 で 検 索 され た 「不 妊 」. れ語 る」 (94年 ),「 不妊. 各地 で広がる語 りあい 悩. に 関連 す る記 事 見 出 しを検 討 して い る と,医 療 的 な問. む人たちがグループ」 (95年 )な ど心の悩 み を取 り上. 題 としての不妊 は,ま ず 「不妊夫婦 の治療」 の問題 と. げた記事 ,養 子 を育てたい人のための講座 を紹介する. してあ ったといえる。 ところがその限定的な問題 は 生殖技術 の発展 とともに,卵 子 0余 剰胚 の提供 ,非 配. 記事 などである。 これ らの記事 に共通 して言える こと. ,. 偶者間体外受精な ど「夫婦間」 とい う枠組 みを越えた. は,「 当事者 の問題」 を取 り上げてい る点 で あ る。 ま た,医 療 に関連する記事 について も,不 妊治療薬へ の. 問題 に拡大 し,さ らに出生前診断,ク ローニ ングや ES. 異物混入や排卵誘発剤 の副作用 による死亡事故 の記事. (万 能)細 胞 の研究な ど不妊治療 と直接的 な関係 を持. (4件 )な ど,当 事者問題 の視点 を持 つ もので ある と. たない問題へ と展開 してい る。生殖技術 はその適用 の. 言えるだろ う。. 場 として,必 ず しも「不妊治療」 を必要 としな くなっ. 「当事者 の問題」 が取 り上げ られるようにな った理. てい るのである。にもかかわ らず,「 不妊」関連 の記. 由 として考 えられる ことの一つに,新 聞 における編集. 事見出 しを検索すると,不 妊治療 とは関係 しない問題 群 の記事 が上が って くる。つ ま り,「 不妊」 は「高度. 方針 の変更 がある。90年 代 か ら新 聞界全体 に読者 の 意見 を掲載するペー ジが増え,読 者 とともに考 える姿. 生殖技術」内部 に取 り込 まれたまま,不 妊治療 の枠組. 勢 が打 ち出 されて い く (後 藤 ,1997:46-48)。. を越 えた問題 と関連付 け られてい る とい う ことで あ. しなが ら新聞以外 に目を転 じると,学 術雑誌 に掲載 さ. る。. れた記事 ・論文 や国立国会図書館蔵書 にも同様 の傾向 が見 られるのでつ 集方針 だけの理由ではない と思. 「朝 日新聞」 の戦後 50年 間の記事 において,「 不妊」 は主 として「医療的な問題」 として提示 されてきた。. しか. ,編. われる。. そ こでの「不妊」 は医学的に定義 される「不妊症」 の. 主 として「医療的な問題」 として語 られて きた「不. ことであ り,「 治療」 に関心が 向けられ,「 生めない問. 妊」が,な ぜ「当事者 の問題」 として も語 られるよう. 題」 はほ とん ど取 り上げ られてい ない。 さらに,「 不. になったのか ?. 妊」 は体外受精 に代表 される高度生殖技術 と結 びつ け て語 られる。生殖 もしくは生命へ の人為的介入を可能. として語 られなか ったのか ?. にする高度生殖技術 が倫理問題 をはらんでい る以上. ,. 逆 に,な ぜそれまでは当事者 の問題 この観点 か ら戦 後 の. 「不妊」 に関連す る記事 を再度検討 し,そ の 中か らマ ス ・メデ イアにおける不妊の社会的意味 のい くつかを. そ して「不妊」 が生殖技術 に取 り込 まれて語 られる限. 照 らし出 したい と思 う。記事見出 しの件数お よび記事. り,「 不妊」 は倫理問題 と関連付 け られるのである。 「朝 日新聞」 とい うマス ・メデ イアにお い て,「 不妊」. 内容 の変化 を考慮 して,3つ の時期一― (a)戦 後 か ら 世界初体外受精児誕生以前 ,(b)世 界初体外受精児誕. に付与 される意味 の最 も重要なもの として,「 新 しい. 生か ら80年 代 まで,(c)90年 代―― に分けて考察す. 生殖技術 を社会に提示 し,そ こか らもたらされる倫理. る。. 問題 を議論す るために必要 な “ 場"」 を挙 げる ことが. (a)不 可視化 される不妊・ 母性 を追求する不妊― 戦. で きるだろう。. 後から世界初体外受精児誕生以前 「不妊」 に関連す る記事見出 しは,50年 代 に 1件. (2)「. 当事者 の問題」 としての不妊. ,. 60年 代 では 3件 しかない。一方,「 不妊手術」 に関す. 記事見出 し件数 の全体 的 な結果か ら得 られた「不. る記事見出 しが 60年 代 に 3件 あ り,70年 代 の世界初. 妊」 に関す る言説 の もう一つの特徴 は,90年 代 以 降. 体外 受精児誕 生以前 で 言 えば,「 不 妊 手術」 の 方 が. 医療 とは別 の文脈 で「不妊」が語 られ始 めてい ること. 「不妊」 よ りも多 い. (「. 不妊手術」:10件 ,「 不 妊」:7. で あ る。90年 代 (95年 まで)に お い て医療 関係 以外. 件 ,両 方 を含 む :1件 )。 戦後 か ら高度経済成長期 に. の記事見 出 しが全 体 に 占 め る割合 は,4分 の 1で あ. かけて,所 得 の増加 と産児制限 によつて豊かな生活が. る。その具体的内容 は,不 妊関連 の出版物やテ レビ番 組 の紹介 ,た とえば レナ ー テ・クライ ン編 の『不妊』. 追求 されてい た時代背景 の 中で,「 子沢 山,も うイヤ 増 える中絶・ 不妊手術」 (68年 )の 見出 しにあるよう.
(6) 甲南女子大学研 究紀 要第 38号. に,新 聞の関心 は「生み過 ぎないこ と」 の方 にあ り ,. 「生め ない こと」 は特別 な意味 を持 たなかった と考 え. ^. 人間科学編 (2002年 3月. ). 主 張す る。 また田間 (1999)は. ,同 時期 の子捨 て ・子. 殺 しの社会 問題 化 を通 して ,「 母性 喪失」 とい う逸 脱 形態 の 背景 に集 合表 象 と して の「母 親」 の 成 立 を見. られる。. 70年 代 に入って記事見出 し件数が増加す るが,そ. る。生 め ない不妊女性 は母性 の 欠落 した人 ,そ れゆえ. れは体外受精児誕生 に関する記事 が登場 した ことによ. 母性獲得 のため に努力す る人 と位置 づ け られ ,新 聞紙. るだけでない。それ以前 から「不妊治療一般」 に関す. 上では「せつない不妊 の人」 (78年 記事見出 し)と 説. る記事見出 しが見 られる。 たとえばオース トラリアで. 明 されるに留 まる。. の 「不妊女性 に人工 輸卵管手術」 (70年 )や ,「 産婦. (b)生 殖医療 と結びついた不妊―一世界初体外受精児誕. 人科医 の メモ」欄 での「不妊」 (72年 )な どである。. 生から80年 代まで. 当時の時代背景 として挙げ られるのは,ま ず出生率 の. 体外受精 児 の誕生 によって生 殖技術 に関心 が向け ら. 変化 で あ る。戦後減 りつづ けて きた平均 出生児数 が. れ る よ うにな ったが ,す で に見 た よ うに,80年 代 は. 「2.2」 にな り,そ れ以 降横 ばい を続 ける。子 ども数 の. 「不妊 治療 一 般」 に関す る記事 の 方 が 件 数 と して は 多. 分 布 で 見 て も,70年 に入 っ て 「2人 」 (6割 )と 「3 婚 と出産に関す る全 国調査」 より)。 「夫婦 と子 ども二. い 。 出産へ の 関心 の 高 ま りと出産 の 医療化が進行す る 紳 中 で ,不 妊 も また医 療 化 され る 。女 性 に と っ て の 「産 む 。産 まな い 自由」 とそれ を可 能 にす る生 殖 医療. 人」 とい う理想的な家族形態が実現す ると同時に,こ. へ の 関心 は,体 外受精児 の誕生 を きっか け に「不妊治. の理想型 は「平均的家族」 となる。不妊手術 の記事 が. 療」 に も向 け られ る。必要 とされ るのは専 門家 で ある. 70年 代後半 か ら減少 し,「 お産革命 」の連載記事 が 78. 医師 の説明 で あ り,そ の こ とが 不妊 に関す る初 めての. 年 に登場す ることに現 れてい るように,新 聞の関心 は. 連載記事 に よ くあ らわれて い る。 日本初体外受精児誕. 生 み過 ぎな い こ とか ら生 む こ との 再 認 識 へ と移 行 して. 生 の 2年 後 の 85年 に,家 庭面 「読 むク リニ ック」欄. い る 。 生 む こ とへ の 関心 の 中 で ,不 妊 の 逸 脱性 が 浮 上. において,「 赤 ちゃんが欲 しい」 とい うタイ トルで 12. して くる。. 回 にわたって掲載 された (表. 人」 (2割 弱)が 大半 を占めるようになる (72年 「結. 2)"。. どの 回 も記者 の質. この時代 は「母性」が強調 される時期で もある。当. 問 に医 師が答 える とい う形式 で,12人 の医師が排卵. 時の優生保護法改正運動 を見ると,労 働力政策や人口 政策 と並 んで胎児 の生命尊重 の観点 か ら改正要求が出. 障害,着 床障害,男 性不妊 ,人 工授精 ,体 外受精 ,漢 方療法,習 慣流産 など「不妊治療」全般 について解説. され,他 方反対派 は命 を産み育てる母親の立場 か らこ. してい る。当事者 の声 はほとんど取 り上げ られていな. 野 ,1990)。 いず れの立場. い。生殖医療 に関す る知識へ の要求 において,専 門家. も子 どもの命の大切 さとそれを育てる母親 の重要性 を. の説明が提示 されるだけで,当 事者 の物語 は必要 とさ. れに異議 を唱 えてい る. (上. 表 2. 連載記事 いの ち. タ イ ト ル. 赤 ちゃんが欲 しし. 掲 載 年 月. 1985年 8月 ∼9月. 1998年 10月 ∼ 12月. 家庭 面 三読 む クリニ ック. 第二 社会面. 掲. 載. 面. 掲載回. l. 2 3. 記. 4 5. 事. 6 7. 見. 8. 出. 9 10. し. 11. 12 13. 14 15 16. 不妊夫婦 ,10組 に 一組 も 薬 で 治療 しやす い排卵 障害 卵 管障害 もあ きらめ ないで 着床 は 第 3の ハ ー ドル 精子 が子宮 に入れ な い 原 因 の半分 は男性 の倶1に 三種類 あ る人工授 精 体外受精 は こ う して 漢 方療法 の効用 と限界 夫婦 間 の理解 と協 力 を 習慣流 産 を克服す る 読者 の 質問 に答 える. 生殖医療 のい ま. 自分 の子望 み 絶 たれ 「父」 同 じ子 が結婚 の不安 期待 ,落 胆 に疲 れ呆 て 患 者 の気持 ち 先生分 か って ごめん ね 母体心配涙 の 減胎 希望 の 陰 副作用禍 も 不妊治療 に費用 の壁 ヽ ′ にの しかか るイく 妊 亡 「私 の 父 はだれ なの …」 不妊 苦悩 と希望 と 250通 超す手紙 [養 親 と養子 の 会話 :筆 者注 ] 義姉 に宿 った夫 の命 医者 は何 をすべ きか 子 ども い な くて も 「お 子 さんは ?」 の裏側 で 体 の劣等感消 えた.
(7) 門野里栄子 :「 不妊」の社会的意味. れないのであろう。. 55. しか しなが ら一方 で,当 事者 の語 りを可能にす る状. ど,子 ども観や家族観の揺 らぎが顕在化 した時期だと いえよう。少子化議論 において子 どもを生むこと・持. 況が整えられてい く。 日本初 の体外受精児誕生 のわず. つことの意味が問われ,児 童虐待問題において子 ども. か 5年 後 に,「 体外受精 で妊娠 り東海 大 で loo例. 普. を育てることの意味が問われる。 これまで自明視 され. 及 し方法 も多様化」,「 わた しは体外受精児なんだって. てきた事柄が自明性を失い,そ れらの再構築が要請さ れる社会状況において,「 不妊」 を媒介 にして新 しい. 岩手県の希美 ちゃん 国内初の公表」 (87年 )の 見出 い)配 偶者間体外受精 に限って言えば,特 異な秘すべ. 意味が見出され ようとしているのではないだろうか。 「二人のままでも,十 分 に幸せ。でも9子 どもがいた. き治療ではな くな りつつ ある こ とを示 してい る。 ま. らもっと楽 しいはず」 (連 載「家族模様」第 3回 ,99. た,89年 には「『不妊女性 への差別 な くして』宮城・ 女性教師 が手記」,91年 には「『不妊』 レナーテ・ ク. 年),「 子どもを産むことがゴールではなくり子 どもを 迎えて家族 として生きていることの方 が大切だと思い. ライン編」 の出版が取 り上げられてい る。体外受精が. ます」 (連 載「いのち 生殖医療 のいま」98年 ),「 子. 普及 し,実 名公表 された ことによって不妊治療 に対す. 供 を産み育てるだけが女の人生ではない」 (「 ひととき 欄」99年 )と いった不妊女性 の声が紹介 される。そ. しが見 られ る。通常 の. (凍. 結受精卵 や顕 微授精 で な. るタブー感 は薄 らぎ,実 際 に当事者 の物語が登場 した ことによって,当 事者 の語 りが拡大す る可能性が切 り 開かれる。 しか し逆 に,体 外受精が特異性 を喪失す れ ば,新 聞 の 関心 は薄 らい で い くとも考 え られる。90 年代 以降,新 聞はなぜ 当事者 の問題 を取 り上げるよう. れらの声 は,子 どもを持つことを迷っている者,親 子 関係 に1画 んでいる者,子 育て後の人生を模索 している 者 に,子 どもとは何 か,家 族 とは何 か,を 映 し出す 「鏡」 となる。「夫婦にとって子どもって何 だ。子 ども. になったのだろ うか。. がいないからこそ1話 し合えたのだ」 (連 載「いのち. (c)多 様化す る不妊―-9o年 代. 生殖医療 のい ま」98年 )と 語 る当事者 の ことばか ら,子 どもと家族の新 しい意味を引き出そうとしてい. 90年 代 に入 る と,生 殖技術 と結 びつ い た「不 妊」 の問題が 「不妊夫婦」 の枠組 みを越え,さ らに「不妊. るように思われる。. 治療」 の枠組 みをも越えて拡大 してい ることをすでに 指摘 した。それは生 殖技術 の 問題 が「不妊夫婦 の治 療」 とい う限定的な領域 の問題か ら,よ り広範な「社. 4。. ま とめ と議 論. 会 の問題」 になったと言 いかえることもで きる。たと. 「朝 日新 聞」 とい うマス ・メデ イアにお い て,「 不. えば,あ る医師が 日本では認め られていない非配偶者. 妊」 は主 として生殖医療 と関連付 けて扱 われて きた。. 間体外受精 の実施 を公表 した ことが注 目された。第一. そのことは体外受精児誕生当初はもとより,現 在 にお. )が 夕刊 ,総 合 1面 で報 じられ た. い て も基本 的 には変 わって い ない。 したが って「不. 報 (98年 6月 6日. DNA」. 妊」関連 の記事 中のほ とん どで,「 治療」 とセ ッ トに. 検索 による)。 技術的 には同 じであ りなが ら,適 用 の. なった「不妊治療」 の語彙が使用 されてい る。新聞 に. 対象枠 が これまでは配偶者間 に限定 されて きた ことで. おいて「不妊」が生殖医療 と結 びつ けて語 られる こと. 後 ,3ケ 月間 に関連記事 が 10件 掲載 された. (「. 「不妊夫婦 の問題」 として受 け止 め られてい たのが. によつて,そ れは医学的 に定義 される問題 として位置. ,. 配偶者以外 に拡大 された ことによって家族 の定義 を揺. 付 けされる。 しか もそ こでの「不妊」 は,新 しい生殖. るがす 「社会 の問題」 となったのであ る。公表 の 4ケ 月後 に始 ま った連載 「いの ち 生殖医療 の い ま」 で. 技術 を社会に提示 し,そ こか らもたらされる倫理問題 を議論するために必要な「場」 としての意味 を持 つ。. は,夫 婦以外 の精子や卵子 を用 いた出産,多 胎妊娠 に. 90年 代 以 降 に当事者 の 問題 が取 り上 げ られるよう. よる減数手術 など,生 殖医療 に関わる体験 が募集 され. になったのは, もちろんそれまでの 「不妊」 の問題 の 扱 い に対す る反省 か らではない。高度生殖医療 が不妊. た。 16回 にわたる記事 の 内容 のほ とん どが,当 事者 に よって 語 られ た 体験 で 構 成 され て い る (表 2参 照)。 生殖技術 と結 びついた不妊 の問題が 「不妊夫婦」. 夫婦 だけの「特殊な問題」 ではな く,よ り広範な人 び. の問題 か ら乖離 した ことによって,逆 に当事者 の声が. た,近 代家族 の安定期 では生殖技術 は,近 代家族 を擁 護 し保持す る方向 で使 われるが (横 山 ・難波 ,1992:. 拾 われるようになってい る。 また,9o年 代 とい う時代背景 を考 えると,少 子化. ,. 児童虐待 ,未 婚者 の増加 ,夫 婦別姓 ,離 婚 の増加 な. とに関わる「社会的な問題」 となったためである。 ま. 243),家 族 の多様化 や家族解体が叫 ばれるようになる 中で,技 術的 に近代家族 の解体 を可能にする生殖技術.
(8) 甲南女子大学研究紀要第 38号. 人間科学編 (2002年 3月. ). る。当事者 の問題 としての「不妊」 は,医 療的な問題. 心にズキ ンと くるようなものはありません」。 自己 イメー ジが他者による自己へ の評価 を通 して形. としての不妊が子 どもや家族 をめ ぐる社会問題 と交叉. 成 されるとい う点で,当 事者がマス・メデ イアによっ. す る場 に出現 していると言 える。マス 0メ デ イアの中. てつ くられ る「不妊 イメー ジ」 に拘束 される部分はあ. で不妊 の当事者 は,新 しい生殖医療 のあ り方,新 しい. るだろう。 しか し,上 記 の当事者 の ようにズ レている. 家族 のあ り方 を映 し出す 「鏡」 としての役割 を担わさ れるとい う,新 しい局面 に置かれてい ると言えるだの. とい う認識 とそれを主張す ることが,他 者 の「不妊」. とその当事者の声 に関心が向けられた ことも背景 にあ. ではないだろ うか。 こうしたマス・メデ イアにおける「不妊」 の社会的 意味 は,社 会 における「不妊 イメージ」 の形成 にとつ て重要であ るだけでな く,社 会の一員である当事者 の 不妊 に対す る認識 において も重要である。本稿 の分析 か ら言える ことは,第 一 に,マ ス・メデ イアにおける. に対す るイメー ジを修正 し,翻 って 自己イメー ジを変 更 してい くことにつ ながる。当事者が 自らの経験 を感 じたままに語:る ことば,た とえばマス・メデ イアでは 聞かれない「治療 はつ らくない」 とか「一番や りたい )と いった声 ことは,や っぱ りお母 さんになる こと」Ю をも含めて,丹 念 に拾 い上げてい く作業が必要である と思 われる。. 不妊 のイメージは当事者 に対 して,「 不妊」 を医療的 な問題 として認識す ることを支 え,社 会的な要因か ら. 注. 生 じる問題 として理解す るよ りも「治療」 とい う医学 的対処 によって解決す る方向へ と推 し進 める。 もう一. 1)「 不妊」 の 問題 は多 くの場合女性 につ い て語 られ る が,「 男性不妊」 とい う男性側 の問題があ ること,そ も. 点 は,子 どもと家族 の意味 の再構築 にとって必要 とさ れた当事者 の語 りは,ま さに同 じ当事者 であるゆえに. そ も「不妊」 はカ ップルの 間に生 じる問題 であ るこ と か ら,「 産めない」 ではな く「生めない」 とい う表現 に した。. 受け手 の当事者 にとって重要 となる。諸田も雑誌記事. 2)言 説分析 に関 しては,シ. の言説分析 において,つ らい不妊治療 の結果子 どもを. 場 か らセクシュアル・ス トー リーの分析 を行 った Plum_ mer(1995)を 参考 に した。 3)デ ー タベースでの検索が可能なのは,日 経新聞が 1975. 得 たス トー リーか ら,子 宝 を得 な くて も不妊 とい う経 験 を価値づ け,自 己を回復する「克服 ス トー リー」 に 移行 してい る と指摘 してい る. (言. 者田,2000)。. こ うし. た克服 ス トー リー は当事者 に励 ま しを与 える と同時 に,そ れを目指 して努力すること,つ まり単 に医学的 に不妊 を克服す るのではな く,不 妊 とい う状態か ら新 しい生 き方 を見つ け出す ことへ の強制力 ともなる。子 どもがで きないこ とに悩 みつづ ける当事者 は,そ の感 情 の表出 を抑圧 される可能性がある。 しか しなが ら,マ ス 0メ デ イアにお い て語 られる 「不妊」 の言説 は,い うまで もな くマス 0メ デ イアに とっての言説である。鄭が「マ イノリテ イが 『鏡』 と されるか ぎり,マ ジ ョリテ イはそ こに『自画像』 を見 ることに夢 中で,決 してマ イノリテ イ自身を見 ようと しない」 (鄭 1996: 22)と 才 旨摘 してい るように, マス ・メデ イアは当事者 の語 りの中か ら彼 らの聞 きたい部 分 を選び出 してい るのである。 したが つて,マ ス 0メ デ イアにおける「不妊」 の言説 と当事者 が経験 す る 「不妊」 との 間 にズ レが生 じる。た とえば,当 事者 の 語 りを中心 に構成 された 98年 の連載 「いの ち 生殖 医療 のいま」 に対 して,一 読者 であ る当事者が次 の投 稿 を寄せてい る。「生殖医療 その もの より"心 の もち 方 につ いて悩 み ,苦 しみ ま した。 (中 略 )こ の コー ナ ー で,何 か を見 つ けた い と読 んでい ます。 で もり まだ. ンボ リック相互作用論 の立. 年 以 降 (た だ し全文 は 1981年 10月 以 降),毎 日新聞が 1987年 以 降,読 売新聞が 1986年 9月 以降,産 経新聞が 1992年 以降である。. 4)紙 面数だけを見て も,64年 :16面 ,70年 :24面 ,80 年 三24面 ,90年 三32面 ,99年 三40面 , と増 加 して い る。. 5)「 CD― ASAX」 で「体外受精」 を検索す る と,78年 に 初 めて ヒ トの体外受精 に関す る記事 が 5件 登場 す る。 翌年は 13件 と増 えるが,80年 ,81年 は件数が減 り,83 年 に激増す る。前後 の年 を合 わせ た 3年 間 で 161件 を 数 え,他 の時期 に比べ て格段 に大 き く扱 われて い る。 そ の後 95年 まで の 11年 間で最 も件数が多か った年 で も24件 であることか ら,日 本初体外受精児誕生が い か に注 目を浴びたかが うかがえる。. 6)「 CD― ASAX」 で「月 尚死」 を検 索す る と,68年 に初 め て登 場す る。60年 代 ,70年 代 は共 に 10件 に満 たな い が,80年 代 に入って 289件 と急増 し,90年 代 は前半 だ けで 458件 を数える。. 7)1985年 以降の国内 の学術雑誌 に掲載 された記事 0論 文が検 索 で きる「雑誌 記事 索 引 (CD― ROM)」 で 「不 妊」 を検 索 す る と,80年 代 はす べ てが 医学専 門論 文 (ほ とん どが 『日本不妊学会雑誌』掲載論文)だ ったの が,92年 に倉重 の「不妊 と人工生 殖 に関す る社会学的 」 に寄せ た論 文 が 考察」,柘 植 ,長 沖 の「特集 『不妊』 あ らわれたのを皮切 りに徐 々に増 え始め,98年 には 35 件中 10件 が医学領域以外 の論文 であった。 1969年 以降の国内で発行 された図書 目録 である「国.
(9) 門野里栄子 :「 不妊」の社会的意味. 57. 代 には当事者向けの医学的解説書が現れ,90年 代 に入. 社会学会編 『家族社会学研究』 12(1),69-80。 村 岡 潔 ,1998,「 不妊治療」,佐 藤純 一 ・黒 田浩 一 郎 編 『医療神話 の社会学』,世 界思想社,158-184.. って女性 問題や生命倫理 の視点か ら書 かれた文献が登. 長沖暁子 ,1992,「 不妊 の女性 たちが語 りは じめた」,『 日. 立国会図書館蔵書 目録 (CD― ROM)」 での検索 にお い て も,70年 代 はすべ てが医学専 門文献 だったのが,80年. 本婦人問題懇話会会報』52,日 本婦人問題懇話会,72-. 場す る。. 8)倉 重. (1992)は ,不 妊 の 医療化が生殖 と病気 の 医療 化 の 中で必然的に起 こったことを考察 してい る。. 9)記 事見 出 しの第一次検索過程 で は,特 集記事 の 1回 目だけが検索 され,残 りの 11回 は検索 されなか った。 「縮刷版」 にあたった時点でそれ らの存在 を確認 で きた が,記 事見出 し件数 には加 えていない。 10)筆 者が代表 をつ とめる 自助 グル ー プ内での当事 者 の. 引用 文献. 33.. ち―一生殖技術 の現在 と女性 の生殖権』,学 陽書房 大 日向雅美 ,1992,『 母性 は女 の勲章 ですか ?』 ,扶 桑社。 .. Plummer,K。 ,1995,■ ′ g Jjκ. gι Sa“ α rjι sf Pθ ″ ι J S′ θ 4Cttα κ. ακ グSθ ε Jα J隕 刑治 ,Routledge。. (桜. 井 厚 ・好井裕明 ・小. 林多寿 子訳 ,1997,『 セクシュアル ・ス トー リー の時代 ). 嘆恵 ,1996,「 アイデ ンテ ィテ ィを超 えて」,『 岩波講. 座現代社会学. お茶 の水女子大学生命倫理研究会編 ,『 不妊 とゆれる女た. ―一語 りのポ リテ イクス』,新 曜社 。 田間泰子 ,1995,「 不妊 と家族 の近代化」,『 熊本大学文学. 発言か ら。. 鄭. 79.. 15. 差別 と共生 の社会学』,岩 波書店 ,1-. 後藤 文康 ,1997,「 新 聞」,岡 満男 ・山口功 二 ・渡 辺 武 達編 『メデイア学 の現在』,世 界思想社 ,45-61。. f隕朋 ι αたθ ′Abθ ′ `4シ “ “ jr&rrj`κ θ 動ι ι Sげ R9“ あθ′ι ν jκ ι,Pergamon `グ Press.(フ インレー ジの 会訳 ,1991,『 不妊―― い ま何. Klein,R。 ,D。 ,ed.,1989,I崚 ″jJj″. jソ. jε. が行 われているのか』,晶 文社。 ) 倉重加代 ,1992,「 不妊 と人工 生 殖 に関す る社 会学 的考 察」,『 山口大学文学会誌』43,山 口大学文学会,51-68. 松尾紀子 ,1995,『 赤 ちゃんがほ しい一―不妊症治療 の最 前線 で何がお こっているか』,文 藝春秋 . 宮 淑子 ,1992,『 不妊 と向 き合 う一一 生殖技術 。わた し の選択』,教 育史料出版会 . 諸 田裕子 ,2000,「『不妊 問題』 の社会的構成」 日本家族. 部論叢』48,熊 本大学文学会,1-24. 一一―― ,1999'「 逸脱する母親たち」,『 講座社会学 10 逸脱』,東 京大学出版会,35-84. 柘植あづ み,1992,「 生殖技術の発達 と選択」,『 日本婦 人 問題懇話会会報』52,日 本婦人問題懇話会,80-88. 一一一― ,1999,『 文化 としての生殖技術一一不妊治療 に たず さわる医 師の語 り』,松 籟社 .. 上 野 輝 将 ,1990,「 出 産 をめ ぐる意 識 変 化 と女 性 の 権 利」,女 性史総合研究会編 『 日本女性生活史 5 現代』 ,. 東京大学出版会,101-131. 山本 祥 子 ,1997,「 更 年 期 の 構 築―一 医 療 が 描 く女 性 像」, 日本女性学研究会編 『女性学年報』 18,78-87. 横 山美栄子 ・難波貴美子 ,1992,「 現代 日本 の家族 と生 殖 技術」,お 茶 の水女子大学 生命倫理研究会編 『不妊 とゆ れる女たち一一 生殖技術 の現在 と女性 の生殖権』,学 陽 書房,225-247..
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