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多結晶Fe-Mn-Cオーステナイト合金の微視的塑性変形

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Academic year: 2021

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全文

(1)

多結晶Fe-Mn-Cオーステナイト合金の微視的塑性変

著者

吉村 俊基, 藤枝 俊, 篠田 弘造, 鈴木 茂

雑誌名

東北大学多元物質科学研究所素材工学研究彙報

65

1/2

ページ

1-6

発行年

2010-03-01

URL

http://hdl.handle.net/10097/48493

(2)

多結晶

Fe-Mn-C

オーステナイト合金の微視的塑性変形

吉村俊基

*1

,

藤枝 俊

*1

,

篠田弘造

*1

,

鈴木 茂

*1

Microscopic Processes of Plastic Deformation of Polycrystalline

Fe-Mn-C Austenitic Alloys

By Toshiki Yoshimura, Shun Fujieda, Kozo Shinoda and Sigeru

Suzuki

The twinning induced plasticity (TWIP) for the polycrystalline Fe-25mass%Mn-0.6mass%C alloy was investi-gated. In this study, two dimensional diffraction rings obtained by X-ray diffraction (XRD) using synchrotron radiation and electron backscatter diffraction (EBSD) were used for analyzing changes of grain orientations caused by tensile tests. The results of XRD for 10% strained sample indicated that the plastic deformation occurs prefer-entially in grains with large Schmid factors for tensile twinning. However, changes of the grain orientations caused by 60% tensile strain seemed to be influenced by slip deformation, which were different from the case in by 10% tensile strain. Furthermore, the EBSD map showed that the formation of twins was affected by a slip deformation. The complex deformation processes for the polycrystalline TWIP alloys were discussed.

(Received on December 25th, 2009)

Keywords: twinning induced plasticity(TWIP), polycrystal, twin, tensile deformation

1

緒言

Fig.1 Schematic views of the crystallographic orientation relationship between matrix fcc (solid circle) and fcc twin (open circle). Top views of the drawings are (a) (01-1) and (b) (111). Small circles indicate atoms on the neighboring plane.

TWIP(Twinning induced plasticity: 双晶誘起塑性)鋼と呼ばれる高いMn含 有量のFe-Mn-Cオーステナイト合金は 室温で塑性変形させると双晶が形成さ れ,高延性・高強度を示す[1, 2].Fig.1 に,fcc合金における(a) (01-1)面と(b) (111)面についての,双晶変形に伴う結 晶方位変化を示す.各図において,母相 および変形双晶の原子をそれぞれ黒丸お よび白丸で示し,小さい丸はすぐ上ある いは下の層にある原子を表す.各原子が 矢印で示したように[-211]方向にせん断 変形すると,(111)面について鏡面対称 となる変形双晶が形成される [3].双晶 は母相と[111]軸に対し60度の回転対 称等の∑3対応方位関係をもつ.また,単結晶では[-144]方向に近い方位に引張変形すると(引張 りに対するSchmid因子が最大),容易に双晶変形が生じる.しかし,実際には変形に伴いFig.1で示 した双晶の形成に並行してすべりも起こる.また,実用材料は様々な方位をもつ結晶粒で構成される 多結晶であり,変形過程はさらに複雑になる.本研究では,多結晶のFe-Mn-C系オーステナイト合 金において、引張変形による結晶方位変化について評価した.多結晶合金を引張変形したときの巨視 的な結晶方位変化を2次元XRD測定により解析し,また,電子後方散乱回折(Electron backscatter diffraction:EBSD)測定により,局所的な結晶方位変化も評価した. *1東北大学多元物質科学研究所

(3)

2 多結晶 Fe-Mn-C オーステナイト合金の微視的塑性変形 第 65 巻 第 1,2 号

2

実験方法

2.1

試料作製

試料の組成は,室温付近でTWIP効果が報告されているFe-25mass%Mn-0.6mass%Cとした[1,2]. 試料は真空誘導炉を用いて溶解後,1323Kで鍛造および熱間圧延をして作製した.この合金から圧延 方向と引張方向が平行になるように,ゲージ部10mm,厚さ0.5mmの形状の引張試験片を,放電加 工機を用いて切り出した.その後,真空雰囲気において1223Kで1800sec熱処理を施した.熱処理に 伴い表面近傍のMn濃度は低下してフェライト相が形成されるため[4],両面を約0.1mmずつ電解研 磨した.引張ひずみは,島津オートグラフAG-IS引張試験機を用いて,1mm/minのクロスヘッドス ピードで付与した.

2.2

結晶方位の評価

試料の変形に伴う結晶方位変化を調べるために,SPring-8の産業ビームラインBL-19B2を利用 してシンクロトロン放射光による2次元XRD測定を実施した.フォトンエネルギーは30keV(波長 0.04127mm),カメラ長は210mmとした.また,電界放射型走査電子顕微鏡法(FE-SEM)を用い, EBSD測定を加速電圧25kV,ステップサイズを1µmおよび0.1µmで行った.

3

結果および考察

3.1

XRD

測定結果

Fig.2に 放 射 光 に よ る XRD測 定 か ら 得 た(a) 変 形 前 お よ び(b)60% 引 張 変 形 し た 試 験 片 に お け る 二 次 元 的 回 折 リ ン グ の 1/4 を 示 す .図 に お い て ,色 が 濃 い ほ ど 回 折 強 度 が 強 い こ と を 表 す .変 形 前 の 試 料 で は ,fcc 相 に よ る ス ポ ッ ト 状 の 回 折 パ タ ー ン が 観 測 さ れ る .60% の 引 張 変形した後においてもfcc 相のみが観察されるが,回折パターンは帯状になり,強度分布の顕 著 な 偏 り を 示 す .例 え ば ,Fig.2(b) で 示 し た よ う に ,(111) の 回 折 リ ン グ に お い て ,引 張 軸 か らα1 程 度 傾 い た 所 で は 回 折 強 度 が 減 少 し ,α2 程 度 傾 い た 所 で は 逆 に 回 折 強 度 が 増 大 す る . (200)および(220)の回折リングにおいても同様に,変形による回折強度の変化が観測された. (a) (b)

(4)

Fig.3 Geometry of (hkl) diffraction from a crystal having [uvw] axis oriented to the tensile axis (T.A.). 引張変形に伴う回折リングにおける強度 分布の変化について詳細に検討するために, Fig.3に引張方向に[uvw]軸をもつ結晶と2 次元XRD測定における(hkl)回折との幾 何学的関係を示す.Fig.2では横方向を引張 方向としたが,この図では縦方向を試験片 の引張軸としている.CPは(hkl)面の法 線を示す.回折は(hkl)面が入射X線IC に対してBraggの法則を満たす角θだけ傾 いているときのみ起こる.つまり,(hkl)面 による回折は(hkl)の極が円PUQV上にあ るとき起こる.従って,ランダムな結晶配 向の多結晶であれば,イメージングプレー トにおいてリング状の回折パターンが観測 される.一方,引張方向に[uvw]軸をもつ結晶では,(hkl)の極は円PAQB上に限定されるため,回 折は円PUQVと円PAQBとの交点PとQで生じる.PおよびQは,それぞれ,イメージングプ レートにおいて引張軸と平行な直線からαだけ傾いたRおよびTとして観測される.つまり,Fig.2 で述べた回折リングにおける顕著な強度分布の偏りは,引張変形により結晶配向が変化したことを意 味する. (hkl)面の法線CPと[uvw]軸の方向Nがなす角をρとすると,ρ, θおよびαには次の関係が成り 立つ.

cos ρ = cos θ cos α (1)

そこで,(111),(200)および(220)の各回折リングからθおよびαを読み取り,上式よりρを求め た.10%および60%引張変形した試験片の2次元XRD測定結果をもとに計算したρをTable 1お よび2に示す.10%引張変形した試験片において回折強度が特に減少したα1から,(111),(200)お

よび(220)面の法線はそれぞれ引張軸に対して84∼ 90度,42∼ 46度および6∼ 14度傾いていた. これらの面間角ρ1から,引張軸方向に対し優先的に変形する結晶粒の方位を調べた.また,引張変形

Table 1 The values of θ, α1, α2, ρ1and ρ2obtained from the 2D diffraction rings for the 10% deformed

Fe-Mn-C.

fcc θ(degree) α1(degree) ρ1(degree) α2(degree) ρ2(degree)

111 5.7 84∼ 90 84∼ 90 10∼ 11 11∼ 12

200 6.5 42∼ 46 42∼ 46 0∼ 4 6∼ 7

220 9.3 0∼ 12 6∼ 14 25∼ 35 25∼ 35

Table 2 The values of θ, α1, α2, ρ1and ρ2obtained from the 2D diffraction rings for the 60% deformed

Fe-Mn-C.

fcc θ(degree) α1(degree) ρ1(degree) α2(degree) ρ2(degree)

111 5.7 24∼ 45 25∼ 46 0∼ 7 6∼ 9

200 6.6 27∼ 45 28∼ 45 0∼ 8 6∼ 10

(5)

4 多結晶 Fe-Mn-C オーステナイト合金の微視的塑性変形 第 65 巻 第 1,2 号 した試験片において回折強度が特に増大したα2からも同様の解析により面間角ρ2を求め,引張軸方 向に強く配向している結晶粒の方位を求めた.Fig.4(a)に(111)面における立方晶のステレオ投影図 の1/4上に,10%変形した試験片の引張軸に対し優先的に変形する結晶粒の方位を白丸で示した.ま た,Fig.4(b)には,(a)を< 111 >軸について180度回転させたステレオ投影図上に,引張軸方向に 強く配向している結晶粒の方位を黒丸で示した.fccにおいて双晶面およびすべり面は{111}であり, 双晶方向は[-211],すべり方向は[-110]である.図中には,双晶変形およびすべり変形のSchmid因 子が最大となる方位をそれぞれ四角形および三角形で示した.Fig.4(a)より,10%引張変形した試験 片の引張軸に対し優先的に変形する結晶方位は,双晶変形のSchmid因子最大方位である[-144]に近 い方位であった.また,Fig.4(b)の結果より,(a)で示した< 144 >に対し180度の回転対称関係を もつ方位近傍で結晶配向が特に強まった.Fig.1(b)から明らかなように,双晶と母相は< 111 >に対 して180度の回転対称関係をもつ.従って,10%引張変形した試験片において,引張方向に対して双 晶変形のSchmid因子が大きい結晶粒で優先的に変形双晶が形成されるために,結晶配向が変化した と推察される. 60%引張変形した試験片における解析結果をFig.4(c)および(d)に示す.Fig.4(d)の結果より, 60%変形した試験片において強く配向している結晶粒の方位と< 144 >に対し180度回転対称の関 係をもつ方位のずれは,10%引張変形した場合と比較して大きい.また,Fig.4(c)の結果より,60%引 張変形した試験片において,引張方向に対して優先的に変形する結晶粒の方位は,10%の引張変形し た場合と比較して,すべり変形のSchmid因子最大方位に近い.つまり,ひずみ量が60%まで増大す

(a)

(b)

(c)

(d)

Fig.4 Stereographic projections showing the orientation of tensile axes (a) of preferentially deformed matrix grains and (b) of formed twin grains, which were estimated from decreases and increases of diffraction intensities in 10% deformed sample, respectively. These axis orientations were obtained form ρ2 and ρ1. The open square in (a) is nearly the orientation of largest Schmid factor (near

(6)

[-ると,すべり変形の活動は活発になることが示唆される.

3.2

EBSD

測定による結晶方位の評価

引張変形による局所的な結晶方位変化を調べるために,試験片のゲージ部表面に対してEBSD測 定を実施した.Fig.5に20%引張変形した試験片に対する測定ステップ(a)1µmおよび(b)0.1µmの EBSD測定結果から得た粒界マップを示した.結晶粒界を灰色線,双晶境界を黒線で示している.(a) の結果より,一部の結晶粒では薄板状の変形双晶が層状に形成されているのが観察された.結晶粒方 位解析の結果より,変形双晶が形成した結晶粒の引張方向に対する方位は,< 101 >∼< 111 >近傍で あることが多かった.この方位では,双晶変形のSchmid因子はすべり変形と比較して大きい.この 特徴は10%引張変形した試験片の二次元XRD測定の結果とほぼ一致する.しかし,上記以外の方位 を持つ結晶粒の一部でも変形双晶が形成された.また,引張方向に対する双晶変形のSchmid因子最 大方位にも関わらず,変形双晶が観察されない結晶粒も存在した.これらの結晶粒は,粒界による変 形の拘束などにより,引張方向以外の方向からも力を受けていると考えられる.また,変形双晶は通 常直線状に形成される[1]が,Fig.5(b)では湾曲した双晶帯が観察された.これは,双晶帯周囲で起 こるすべり変形に起因すると考えられる.さらに,結晶粒が変形双晶により分断されていることが分 かる.つまり,双晶変形に伴い結晶粒の微細化が起こることが示唆される. 㻩㻞㻜㻌㼙㻧㻌㻹㼍㼜㻝㻜㻧㻌㻿㼠㼑㼜㻩㻜㻚㻝㻌䡱㼙㻧㻌㻳㼞㼕㼐㻢㻡㻜㼤㻡㻡㻜 㻩㻞㻜㻜㻌㼙㻧㻌㻯㼛㼜㼥㻌㼛㼒㻌㻹㼍㼜㻝㻜㻧㻌㻿㼠㼑㼜㻩㻝㻌䡱㼙㻧㻌㻳㼞㼕㼐㻢㻝㻜㼤㻠㻝㻥 (b) (a) 100ȣm 5ȣm

Fig.5 (a)EBSD boundary map for 20% tensile deformed Fe-Mn-C, which was taken in the scan step of 1µm. (b)The map of a small area measured in the scan step of 0.1µm.

4

結言

多結晶Fe-Mn-C合金の変形について検討するために,引張変形した試験片に対し2次元XRD測 定を実施した.XRD測定結果より,変形の前後で試料はfcc単相であることが明らかになった.ま た,10%引張変形した試験片では,引張軸に対し双晶変形のSchmid因子が大きい方位をもつ結晶粒 で優先的に双晶変形が起こった.一方,60%引張変形した試験片では,優先的に塑性変形する結晶粒 の方位がすべり変形のSchmid因子最大方位に近づいた.以上の結果より,試料は変形初期において は,引張軸に対しSchmid因子の大きい方位をもつ結晶粒が優先的に双晶変形すると考えられる.一 方,変形の進行に伴いすべり変形が盛んになると,Schmid因子が大きい結晶方位をもつ粒以外でも変 形が起こると考えられる. 局所的な結晶方位変化を調べるために,20%引張変形した試験片に対しEBSD測定を実施した. EBSD測定結果より,変形双晶は引張軸方向に対し< 101 >∼< 111 >近傍の双晶変形のSchmid因 子が大きい方位をもつ結晶粒で形成されやすいことが明らかになった.この結果は二次元XRDの測

(7)

6 多結晶 Fe-Mn-C オーステナイト合金の微視的塑性変形 第 65 巻 第 1,2 号

定結果とほぼ一致する.また,変形双晶の形成により,結晶粒が双晶面により分断される部分が観察 された.つまり,双晶変形により結晶粒の微細化が起こることが示唆される.

文 献

[1] L. Bracke, K. Verbeken, L. Kestens, J. Penning:Acta Mater. 57 (2009) 1512.

[2] D. Barbier, N. Gey, S. Allain, N. Bozzolo, M. Humbert:Mater. Sci. Eng. A 500 (2009) 196. [3] F. D. Fischer, T. Schaden, F. Appel, H. Clemens:Eur. J. Mech. A / Solids 22 (2003) 709. [4] H. Fukai, S. Suzuki, N. Masahashi, S. Hanada, T. Maruyama, H. Kubo, Y. Waseda:Mater.

Table 1 The values of θ, α 1 , α 2 , ρ 1 and ρ 2 obtained from the 2D diffraction rings for the 10% deformed Fe-Mn-C.

参照

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