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Academic year: 2021

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(1)

−65−

学 位 研 究 紹 介 65

肋骨骨折モデルにおける骨膜の初期軟骨

形成と骨形成の組織学観察

Histochemical Evidences on the Initial

Chondrogenesis and Osteogenesis in

the Periosteum of Rib Fracture

Model

新潟大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面口腔外科学分野

李 敏啓

Division of Oral and Maxillofacial Surgery Niigata University Graduate School of

Medical and Dental Sciences

Li Minqi

緒   言

骨折の治癒過程にとって骨外膜の役割は大きく,軟骨 および骨の形成に関与している。軟骨膜は大きく外側の 線 維 層 “ fibrous layer” と 内 側 の 骨 芽 細 胞 層 “osteoblastic layer" あるいは形成層“cambium layer”

に分けて考えることができる。骨折の初期治癒過程の骨 膜において,軟骨細胞はどの細胞層から形成されるか, それとも軟骨および骨に分化する多分化機能を有する細 胞が存在するのかなど未解明の点が多い。さらには骨細 胞と骨芽細胞の細胞間コミュニケーションは細胞分化や 骨改造現象にて重要な役割を演ずることから,骨折時に おける骨膜形成層の骨芽細胞と皮質骨内部の骨細胞との 関連性について興味が持たれる。また,骨折部位におけ る血管の分布や単球・マクロファージの局在はその組織 の炎症や酸素・栄養供給などに関わると考えられる。そ こで,マウス肋骨骨折モデルを作成し,骨折後の骨外膜 の骨・軟骨分化,またそれに隣接する皮質骨の骨細胞, さらには周囲の軟組織におけるマクロファージや血管の 局在について組織学的・経時的に観察した。

材料と方法

生後7週齢ICR系雄性マウスにおける第8肋骨を切断 し,術後2,4,6日目に4%パラホルムで灌流固定, 骨折させた肋骨を一塊として摘出し10%EDTAで脱灰 後,通法にてパラフィン包埋した。それらの試料におい て,骨芽細胞,骨細胞,軟骨細胞,破骨細胞,血管内皮 細胞および単球・マクロファージのマーカーとしてアル カリ性ホスファターゼ(ALP),dentin matrix protein -1(DMP-1),II型コラーゲン,酒石酸抵抗性酸性ホスファ ターゼ(TRAP),CD31とF4/80組織化学を行い,また, 細胞増殖のマーカーとしてPCNAの免疫染色を行った。 また,透過型電子顕微鏡による観察を行った。

結果および考察

骨折後2日目 骨折断面には変性組織が形成されたが,その周囲には 明らかな炎症は認められなかった。骨折部位に近い骨外 膜の形成層が肥厚し,多数のPCNA陽性細胞が観察され た。また,肥厚した骨膜でも骨折に近い部位ではII型コ ラーゲンが,また,離れた部位ではALP陽性骨芽細胞 系細胞が観察されたことから,すでに骨あるいは軟骨分 化が開始していることが推察された。また,II型コラー ゲン陽性を示す軟骨に隣接する骨基質には空の骨小腔 “empty lacunae”を認めた。さらにCD31陽性血管は肥 厚した骨膜周囲に均等な局在を示した。 骨折後4日目 骨折部位に近い骨膜ではII型コラーゲン陽性を示す軟 骨組織が,また離れた部位ではALP陽性骨芽細胞系細 胞の局在が観察された。これらの軟骨および骨組織とも に皮質骨から直接形成されていることから,骨膜の形成 層の細胞は軟骨と骨に分化できることが推測された。一 方,新しく形成された骨に隣接する既存の皮質骨内部に はDMP-1陽性を示す骨小腔や骨細管が存在したのに対 し,軟骨に隣接する皮質骨内部には空の骨小腔あるいは 骨細胞の変性像と思われる構造物が認められ,これらは DMP-1反応を示さなかった。この事実は,骨基質中の 骨細胞は,骨折時における骨膜形成層の細胞分化に影響 を及ぼすことを示唆している。また,CD31陽性血管が 骨・軟骨の形成部位に関わらず骨膜周囲に均等に分布し ており,骨折周囲にはF4/80陽性マクロファージの集積 は認められなかった。骨髄内においては,TRAP陽性破 骨細胞が骨折部位に集積していた。以上のことから,骨 膜に対して炎症反応はほとんど認められず,栄養や酸素 は均等に供給されている可能性が考えられた。 骨折後6日目 骨膜からの骨・軟骨形成が同時に起きている箇所につ いて観察すると,骨組織領域はALP陽性を,軟骨領域 はII型コラーゲン陽性を示したが,オステオポンチン陽

(2)

−66− 新潟歯学会誌 34(1):2004 66 性反応は軟骨組織から骨組織へと連続的に観察されるこ と,さらにそこにはCD31陽性血管やTRAP陽性破骨細 胞が存在しないことから内軟骨骨化は行われていないこ とが推測された。すなわち,骨膜からの軟骨分化と骨分 化は境界が無く,連続的に形成されることが推測された。

結   論

骨折治癒初期において,(1)骨折部位からの距離によ り骨外膜の反応が異なること,(2)骨外膜形成層の細胞 は骨芽細胞および軟骨細胞へ分化できること,(3)皮質 骨の骨細胞は骨膜形成層の細胞分化に影響を与えるこ と,が考えられた。 骨折治癒初期におけるまとめの図 Blood vessles Osteoblastic cell Osteocyte Empty lacunae Bone Marrow Cortical Bone Cartilaginous cell Fracture line Periosteum

参照

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