1
食変光星観測と質量推定
11s1-035
齋藤英恵
2
目次
要旨
1. 変光星の分類
2. 観測対象の食変光星の特性
3. 観測
3.1 使用機器
3.2 観測方法
4. 画像解析
4.1 ダークフレーム
4.2 フラットフレーム
4.3 光度測定
5. 観測結果
6. 質量推定
7. 考察
謝辞
参考文献
3
要旨
本研究では食変光星 V364Cas の光度曲線から質量を求めることを目的とし、大学構内に ある 40cm リッチー・クレチアン式反射望遠鏡と冷却 CCD カメラを用いて V バンドフィルタ ーでの観測を行った。本論文は、本学にて初めてとなる食変光星観測を行った論文である。 観測の結果 2014 年 12 月 1 日から 2015 年 1 月 17 日までの光度曲線が得られたが、食の 時間帯に観測出来たのは 2 度のみで、このデータから周期を決定することはできなかった。 このため先行研究による周期 1.54 日を仮定して光度曲線を折りたたみ、周期全体にわたる 光度曲線の形を求めた。ここから得られた食による減光や食の持続時間に基づいて質量を 算出したところ、V364Cas を構成する二つの星の質量の上限値はどちらも4.64𝑀⊙(太陽質 量)と求められた。4
1. 変光星の分類
~変光星とは~
変光星とは、明るさが時間とともに変わる恒星のことである。星によってその周期は異 なり、明るさも様々である。大抵は若い星や年老いた星のことであり、変光するのには内 的原因の場合と外的原因の場合とがある。種類は、変光星総合カタログ(GCVS)第 4 版に よると、食変光星(食連星)・爆発変光星(爆発星)・脈動変光星(脈動星)・回転変光星(回 転星)・激変変光星(激変星)・変光 X 線型の 6 種類に分類されている。~食変光星~
連星は重心の周りを 2 つ(以上)の星が公転し、軌道傾斜角が 90 度に近づくと星同士が 食をおこす。食によって見かけの恒星の明るさは減光する。食連星は成分星同士が公転に よって隠しあうことによって減光する現象をいう。食は一回の公転で 2 回起こり、明るい 星が暗い星に隠される主極小と、暗い星が明るい星に隠される副極小がある。明るい星を 暗い星が隠すと減光量(変更範囲)が大きくなる。 また今回はこの食変光星を観測対象とする。 [図 1-1. 食変光星簡易図]5
2. 観測対象の食変光星の特性
[名称]V364 Cas [赤経]00h52m43.0s [赤緯]+50°28’10” [変光範囲]10.6-11.2V [変光周期]1.543069 日 [比較星]H1:V 等級 11.477 H2:V 等級 12.471 今回、比較星を 2 点あげているが本来 7 点存在する。しかし今回指定した 2 点の比較星 以外は目標星と距離が離れていることで比較星としては適切ではない為、除外した。また、 その他の比較星は 2 つの天体が重なっている事や表示されている天体が比較星なのか明確 に定まらないなどの理由から除外した。そこで明確になっている比較星を今回 2 点で定め た。それが H1:V 等級 11.477 H2:V 等級 12.471 である。6
3. 観測
3.1 使用機器
~望遠鏡~
明星大学 30 号館 R 階の屋上に設置されているリッチークレシアン式の反射望遠鏡 [図 3-1]を使用する。 [口径] 40cm [焦点距離] 2800cm [図 3-1. 反射望遠鏡]7
~冷却 CCD カメラ~
本研究は大学所有の冷却 CCD カメラ BN-52E[図 3-2]にて観測対象の撮影を行う。CCD カメ ラはパソコンを使用し操作する為、専用のソフトが必要となる。撮影前に CCD を望遠鏡本 体に取り付け冷却を行う。冷却温度は、観測時の気温-20 度に設定した。 CCD は熱的に発生する電流が生じることで画像にノイズが残り、露出時間が長時間に及ぶ ほどにノイズは蓄積される。しかしながら、冷却することにより電流が減り、長時間露出 が可能とする。 カメラに搭載されているフィルターホルダー内に、ジョンソンフィルター[図 3-3]が装填 されている。今回の撮影では V フィルターを使用した。 [図 3-2. 冷却 CCD カメラ BN-52E] [図 3-3. ジョンソンフィルター]8
3.2 観測方法
今回の目標天体は、観測時期・期間・変光周期の短い V364Cas と決定した。 観測を行うにあたり、AAVSO(アメリカ変光星観測者協会)から目標天体の星図[図 3-4]を 入手した。観測日は 2014 年 12 月 1 日から 2015 年 1 月 17 日の中の 10 日間であり、撮影は 一回につき 50 枚撮影を行った[表 3-1]。 [表 3-1]~観測手順~
1.冷却 CCD を望遠鏡に設置し、1 回に 50 枚の撮影をする。 2.天体画像処理ソフトウェアのステライメージ 7 を使用し画像処理を行い、 光度・カウント値の測定を行う。 3.得られた値とユリウス日をExcelに 50 枚分打ち込む。 これらのデータから 1 日分のグラフを表示する。 日にち 時間 気温(度) 湿度(%)露出時間(秒) 月齢 12月1日 19:49~20:15 14.2 81% 10 8.6 12月3日 00:10~00:37 6.4 37% 10 10.6 12月5日 22:40~23:10 5.8 44% 15 12.6 12月6日 21:01~21:25 5.1 53% 10 13.6 12月8日 20:12~20:35 7.6 48% 10 15.6 12月15日 01:35~02:14 2.5 55% 15 22.6 12月17日 21:50~22:24 3.4 32% 13 24.6 12月26日 20:25~20:59 4.7 39% 15 4.1 12月27日 19:05~19:15 4.8 37% 10 5.1 1月17日 22:10~22:40 2.5 32% 13 5.79 カシオペヤ座 V364 Cas AAVSO 星図チャート [図 3-4. V364 Cas の観測用星図] 名称:V364 Cas 変光範囲:10.6-11.2V 変光周期 :1.543069 比較星の等級 H1:V 等級 11.477 H2:V 等級 12.471
10
4. 画像解析
4.1 ダークフレーム
ダークフレーム[図 4-1] は、撮影時に生じるノイズを処理する。遮光空間を撮影した画 像を撮影する。[図 4-1.
ダークフレーム]
11
4.2 フラットフレーム
望遠鏡に直接光りが当たらぬよう、ドームに光りを当てることにより間接的に光りを 入れ撮影を行う。フラットフレーム[図 4-2]を用いて、望遠鏡のゴミを処理や撮影画像に生 じた周辺減光処理をする。ダーク補正を行い加算平均し、合成したフラットフレームを使 用する。 [図 4-2. フラットフレーム]12
4.3 光度測定
変光星の光度を求める為、画像解析においてステライメージ 7[図 4-3]を使用した。その 際、必要となる比較星として、V 等級 11.477(H1)と V 等級 12.471(H2)を使用した。 割り出した値は Excel を使用し、まとめる[図 4-3]。数値入力が完了したところで、ユリ ウス日の値を表示させる。 [図 4-3. 光度測定] [図 4-4. Excel による表]13
5. 観測結果
光度測定のデータ(表 5-1・5-2・5-3・5-4)から 1 日分の光度曲線のグラフを作成する (図 5-1・5-2・5-3・5-4)。縦軸は等級であり、横軸は時間となっている。これは、観測日 ごとのデータが存在するので 10 日分×50 枚のデータが存在する。次に、1 日分の光度曲線 を作成したものを折りたたみ 1 周期のグラフに換算し表す(図 5-6)。縦軸は等級であり、 横軸は 1 周期(1.54 日)である。1 周期(1.54 日)と示しているのは先行研究の Chaubey (1984)の論文より引用した値である。 参考の為に、初日観測日である 12 月 1 日による観測データ・グラフを提示した。また、 12 月 5 日の食の観測データ・グラフを基準に、食の始まりである 12 月 14 日による観測デ ータ・グラフから、食の終わりである 12 月 3 日による観測データを表す。比較として、 一度目の食の最大値である 12 月 26 日による観測データ・グラフも示す。14 [表 5-1. 初日観測日 12 月 1 日による観測データ] [図 5-1. 初日観測日 12 月 1 日による観測グラフ]
回目
時間
等級
回目
時間
等級
1
19:50:33
10.535
26
19:55:33
10.546
2
19:50:45
10.542
27
19:55:45
10.532
3
19:50:57
10.537
28
19:55:57
10.550
4
19:51:09
10.536
29
19:56:09
10.556
5
19:51:21
10.550
30
19:56:21
10.507
6
19:51:33
10.539
31
19:56:33
10.545
7
19:51:45
10.551
32
19:56:45
10.535
8
19:51:57
10.537
33
19:56:57
10.554
9
19:52:09
10.542
34
19:57:09
10.490
10
19:52:21
10.536
35
19:57:21
10.515
11
19:52:33
10.532
36
19:57:33
10.515
12
19:52:45
10.539
37
19:57:45
10.549
13
19:52:57
10.537
38
19:57:57
10.491
14
19:53:09
10.505
39
19:58:09
10.534
15
19:53:21
10.548
40
19:58:21
10.485
16
19:53:33
10.541
41
19:58:33
10.541
17
19:53:45
10.544
42
19:58:45
10.515
18
19:53:57
10.527
43
19:58:57
10.529
19
19:54:09
10.537
44
19:59:09
10.549
20
19:54:21
10.553
45
19:59:21
10.511
21
19:54:33
10.550
46
19:59:33
10.529
22
19:54:45
10.523
47
19:59:45
10.542
23
19:54:57
10.570
48
19:59:57
10.524
24
19:55:09
10.532
49
20:00:09
10.557
25
19:55:21
10.552
50
20:00:21
10.555
平均
-
10.535
15 [表 5-2. 2 回目の食の入りの直前12 月 15 日による観測データ] [図 5-2. 2 回目の食の入りの直前12 月 15 日による観測グラフ]
回目
時間
等級
回目
時間
等級
1
1:35:01
10.542
26
1:42:06
10.573
2
1:35:18
10.583
27
1:42:23
10.578
3
1:35:35
10.537
28
1:42:40
10.541
4
1:35:52
10.605
29
1:42:57
10.572
5
1:36:09
10.569
30
1:43:14
10.597
6
1:36:26
10.581
31
1:43:31
10.559
7
1:36:43
10.555
32
1:43:48
10.563
8
1:37:00
10.564
33
1:44:05
10.565
9
1:37:17
10.557
34
1:44:22
10.552
10
1:37:34
10.588
35
1:44:39
10.530
11
1:37:51
10.535
36
1:44:56
10.563
12
1:38:08
10.566
37
1:45:13
10.595
13
1:38:25
10.565
38
1:45:30
10.576
14
1:38:42
10.597
39
1:45:47
10.567
15
1:38:59
10.570
40
1:46:04
10.535
16
1:39:16
10.527
41
1:46:21
10.579
17
1:39:33
10.576
42
1:46:38
10.625
18
1:39:50
10.579
43
1:46:55
10.527
19
1:40:07
10.572
44
1:47:12
10.604
20
1:40:24
10.548
45
1:47:29
10.594
21
1:40:41
10.543
46
1:47:46
10.540
22
1:40:58
10.598
47
1:48:03
10.560
23
1:41:15
10.544
48
1:48:20
10.569
24
1:41:32
10.580
49
1:48:37
10.553
25
1:41:49
10.626
50
1:48:54
10.581
平均
-
10.568
16 [表 5-3. 2 回目の食 12 月 5 日による観測データ] [図 5-3. 2 回目の食 12 月 5 日による観測グラフ]
回目
時間
等級
回目
時間
等級
1
22:42:21
11.213
26
22:49:26
11.196
2
22:42:38
11.193
27
22:49:43
11.197
3
22:42:55
11.224
28
22:50:00
11.208
4
22:43:12
11.159
29
22:50:17
11.213
5
22:43:29
11.214
30
22:50:34
11.211
6
22:43:46
11.179
31
22:50:51
11.222
7
22:44:03
11.286
32
22:51:08
11.233
8
22:44:20
11.209
33
22:51:25
11.220
9
22:44:37
11.209
34
22:51:42
11.219
10
22:44:54
11.186
35
22:51:59
11.241
11
22:45:11
11.197
36
22:52:16
11.206
12
22:45:28
11.187
37
22:52:33
11.243
13
22:45:45
11.197
38
22:52:50
11.228
14
22:46:02
11.203
39
22:53:07
11.192
15
22:46:19
11.205
40
22:53:24
11.247
16
22:46:36
11.239
41
22:53:41
11.239
17
22:46:53
11.174
42
22:53:58
11.244
18
22:47:10
11.192
43
22:54:15
11.250
19
22:47:27
11.195
44
22:54:32
11.211
20
22:47:44
11.192
45
22:54:49
11.239
21
22:48:01
11.207
46
22:55:06
11.205
22
22:48:18
11.163
47
22:55:23
11.245
23
22:48:35
11.208
48
22:55:40
11.227
24
22:48:52
11.207
49
22:55:57
11.239
25
22:49:09
11.201
50
22:56:14
11.234
平均
-
11.212
17 [表 5-4. 2 回目の食の出の直後12 月 3 日による観測データ] [図 5-4. 2 回目の食の出の直後12 月 3 日による観測グラフ] 回目 時間 等級 回目 時間 等級 1 0:11:30 10.525 26 0:16:30 10.555 2 0:11:42 10.593 27 0:16:42 10.551 3 0:11:54 10.563 28 0:16:54 10.577 4 0:12:06 10.582 29 0:17:06 10.565 5 0:12:18 10.570 30 0:17:18 10.568 6 0:12:30 10.566 31 0:17:30 10.582 7 0:12:42 10.530 32 0:17:42 10.575 8 0:12:54 10.545 33 0:17:54 10.558 9 0:13:06 10.577 34 0:18:06 10.541 10 0:13:18 10.587 35 0:18:18 10.573 11 0:13:30 10.556 36 0:18:30 10.571 12 0:13:42 10.569 37 0:18:42 10.548 13 0:13:54 10.546 38 0:18:54 10.577 14 0:14:06 10.561 39 0:19:06 10.583 15 0:14:18 10.588 40 0:19:18 10.577 16 0:14:30 10.602 41 0:19:30 10.512 17 0:14:42 10.580 42 0:19:42 10.560 18 0:14:54 10.510 43 0:19:54 10.562 19 0:15:06 10.548 44 0:20:06 10.553 20 0:15:18 10.555 45 0:20:18 10.578 21 0:15:30 10.600 46 0:20:30 10.551 22 0:15:42 10.575 47 0:20:42 10.556 23 0:15:54 10.615 48 0:20:54 10.570 24 0:16:06 10.527 49 0:21:06 10.578 25 0:16:18 10.516 50 0:21:18 10.556 平均 - 10.563
18 [表 5-5. 1 回目の食 12 月 26 よる観測データ] [図 5-5. 1 回目の食 12 月 26 よる観測グラフ]
回目
時間
等級
回目
時間
等級
1
20:26:46
10.849
26
20:26:46
10.835
2
20:27:02
10.840
27
20:27:02
10.836
3
20:27:19
10.826
28
20:27:19
10.827
4
20:26:46
10.851
29
20:26:46
10.815
5
20:27:02
10.769
30
20:27:02
10.772
6
20:27:19
10.887
31
20:27:19
10.806
7
20:26:46
10.825
32
20:26:46
10.804
8
20:27:02
10.848
33
20:27:02
10.789
9
20:27:19
10.828
34
20:27:19
10.789
10
20:26:46
10.826
35
20:26:46
10.789
11
20:27:02
10.846
36
20:27:02
10.819
12
20:27:19
10.836
37
20:27:19
10.792
13
20:26:46
10.818
38
20:26:46
10.754
14
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10.816
39
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10.760
15
20:27:19
10.879
40
20:27:19
10.788
16
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10.817
41
20:26:46
10.851
17
20:27:02
10.820
42
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10.793
18
20:27:19
10.836
43
20:27:19
10.780
19
20:26:46
10.871
44
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10.777
20
20:27:02
10.839
45
20:27:02
10.850
21
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10.820
46
20:27:19
10.784
22
20:26:46
10.772
47
20:26:46
10.776
23
20:27:02
10.817
48
20:27:02
10.802
24
20:27:19
10.770
49
20:27:19
10.773
25
20:26:46
10.813
50
20:26:46
10.782
平均
-
10.813
19 [図 5-6. 軌道周期(1.54 日)で折りたたんだ等級変化]
20
6. 質量推定
質量𝑀!と𝑀!の星が距離𝑎離れて互いの回りを角速度Ωで回転しているとする。 [図 6-1.天体と値] 2 つの星は重心の回りを回ることになるが重心から𝑀!の星の中心までの距離を𝑟!、𝑀!の 星の中心までの距離を𝑟!とすると次の式になる。 𝑟! = !! !!!!! 𝑎 (1) 𝑟!= !! !!!!! 𝑎 (2) この連星の回転運動は円であると仮定すると𝑀!の星の運動方程式は重心の回りの回転に よる遠心力と𝑀!に引かれる重力のつりあいの式から 𝑀!𝑟!Ω ! =!!!!! !! (3) 連星の回転周期を𝑃!とすると Ω=!!! ! (4) (1)~(4)式より 𝑎! =!(!!!!!) (!!)! 𝑃! ! (5) となる。Ω
21 今回、連星の軌道面を真横から観測していると仮定する。 (これは、先行研究である Chaubey(1984)の論文によると軌道の法線と観測方向のなす角 が 87 度になっている。) 2 つの星の半径を𝑅!と𝑅!とし、𝑅! ≥ 𝑅!とする。𝑀!の星が𝑀!の星の後にかくれ時、 𝑀!の星を中心においた図で見ると𝑀!の星が食に入るときと食から出る時の置は [図 6-2.食] となる。 この食に入る時の𝑀!の星の位置をA、食を出る時の𝑀!の星の位置をBとすると AB(AとBの距離)= 2(𝑅!+ 𝑅!) (6) となり、 𝑀!の星の中心を 0 とおき、∠AOBの半分の角度を𝜑!とおくと 𝑅!+ 𝑅!= 𝑎 sin 𝜑! (7) となる。 よって 𝜑!=!!!!! ! (8) と近似する。
22 食の入りから食の出までの時間幅を∆𝑡!とおく。この時間幅∆𝑡!と連星周期𝑃!との比を𝛼! とすると 𝛼!=∆!!! ! (9) となる。 今回の観測では、食の入りと食の出を観測することはできなかった。そこで、食の入り の直前である 12 月 15 日の観測[表 5-2]の最後の時間を食の入りの時間とし、一方、食の出 の直後である 12 月 3 日の観測表[5-4]の最初の時間を食の出の時間として、(12 月 3 日から 12 月 15 日の間の連星の回転分は補正し)∆𝑡!を求めた。その結果は ∆𝑡!= 0.285 日 であった。 ちなみに軌道周期は、先行研究より 𝑃!= 1.54 日 である。 𝑀!の星が𝑀!の星の回りを2𝜋回るのにかかる時間が𝑃!で食の時間の間に回る角度 2𝜑!は 𝜑!=!!!!! ! (10) であるから、 𝛼!=!!! !! = !! ! = !!!!! !" (11) ともなる。 𝑀!の星が𝑀!の星の後に完全に隠れる(皆既食)時間幅∆𝑡!を考える。 上式では、部分食も含めた食全体の時間幅∆𝑡!を考えた。食の入りから、皆既食の始まり (部分食)、皆既食、皆既食の終わり(部分食)となる。 皆既食にいる間に𝑀!の星が動く距離𝑖 は以下の図のようになる。
23 [図 6-3. 皆既食中の移動距離] 図から 𝑖 = 2(𝑅!− 𝑅!) (12) となることがわかる。 食全体の幅を考えた時と同様に、皆既食の間に𝑀!の星が𝑀!の星の回りを回る角度を2𝜑! とすると 𝜑!=!!!!! ! (13) となり、 ∆𝑡!と𝑃!の比を𝛼!とおくと𝛼!の時と同様に 𝛼!=!!!!! ! (14) となる。 Chaubey(1984)の観測に見られるように、この連星の食では、2 つの食とも、皆既食の 時間幅はほぼ0である。この時間幅が完全に0だとすると(9)(10)式から 𝑅!− 𝑅! = 0 (15) すなわち 𝑅! = 𝑅! (16)
24 半径も同じで明るさも同じであれば、2 つの星は同じ型の星で質量も同じと考えられる。 よって、 𝑀! = 𝑀! (17) とおく。 今回の観測では、皆既食の時間幅も求めることは出来なかった。しかし、[表 5-3]、[図 5-3]に見られるように、この食中の連星の等級は 11.25 等近くまで上がっている。すなわ ち、この連星の通常の等級 10.55 等からほぼ 0.7 等ふえていることになる。この等級の増 加を連星光度の変化量に変換すると10!!.!!.!、すなわち約半分に変化したことがわかる。2 つ の星がどちらも主系列の星であるとすると、2 つの星の質量が等しい時、皆既食の光度変化 の割合がもっとも大きくなり、その変化の割合は半分になる事が言える。よって、今回の 観測からも、2 つの星の質量がほぼ等しいと言う事が出来る。 (5)、(9)、(11)の式を使い、どちらの星も質量𝑀、半径𝑅の星であるとすると 𝑎 = !!!!! (!!)! ! ! 𝑀!! (18) 𝛼!=!"!!, 𝛼!=∆!!! ! (19) となることから、(11)に代入すると 𝑅 = !!! ! !! ! !∆!! !! ! ! 𝑀 ! ! (20) となる。 Chaubey(1984)の先行研究により、この連星の星は太陽より少し重い主系列星と考えら れる。 すると、星の半径、質量を太陽の半径𝑅⊙、太陽の質量𝑀⊙で規格化して ! !⊙ = ! !⊙ !.! (21) と近似できる。 ここで 𝑀⊙= 2.0×10!"kg (22) 𝑅⊙= 7.0×10!m (23)
25 (21)式を(20)式に代入し整理すると ! !⊙ = !"!⊙∆!!! !!!!!⊙! ! ! (24) になる。 上の式に∆𝑡!、𝑃!、𝑀⊙、𝑅⊙の数値を入れると最終的に M = 4.6𝑀⊙ (25) の値を得る。
26
7. 考察
明星大学望遠鏡を用いて、食変光星 V364 Cas の観測を行った。 観測した撮像データから連星の等級を求め、先行研究で求められていた軌道周期 1.54 日 で折りたたむ事により、連星の連星周期による等級変化を求めた。しかしながら、先行研 究によると周期は同じ変更範囲となり、同じ大きさの曲線が出来る事になるになると考え られている。観測時間が不十分で、観測点が離散的にならんだものとなり、2 回ある食につ いては、一部ずつしか食中の等級変化を捉える事が出来なかった。望ましいデータは一周 期分のみではなく、なるべく多くの周期の重ね合わせをしたグラフを作成する事である。 次に、今回の観測データを用い、先行研究の結果も利用しながら 2 つの星の質量の推定 を行った。その結果、2つの星の質量がほぼ等しいとの推論の下で、全観測日の光度の平 均は 10.64 等級となり、食の見られない範囲の光度の平均は 10.55 等級となった。(標 準偏差では 0.02 という値になり)であった。以上の結果からこの連星を構成する星の質 量として、 M=4.64𝑀⊙ という値が得られた。 これは、太陽質量2.0×10!"kg であるので質量は、 M =9.284×10!"kg という値である。 この値を得るに当たっては、今回の観測における食の入り直前の最後の時間と、食の出直 後の最初の時間から、食の入りから出までの時間を求めた。 この数値は、実際の食の入りから出までの時間幅の上限値を与える事になるので、求め た星の質量は、実際の星の質量の上限値を与えていることになる。この結果は、先行研究 の結果と矛盾するものでなかった。 以上の研究から、観測としては不十分な面もあったが、明星大学天文台を利用した初め ての食変光星観測として、貴重な第一歩を踏み出せたと考える。27
謝辞
卒業論文作成にあたり、大変お世話になりました。井上一先生・小野寺先生・日比野様・ 先輩方・天文学研究室の 4 年生、作業を進めていくにわたり慌ただしくなる私に、何度も 手を差し伸べて頂き、また温かく見守ってくださり、本当に有難う御座いました。28