北京の旧城区における「有機更新」に関する研究 [ PDF
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(2) 更新による弊害に対して,「有機更新論」を提唱し、. 実行性により、「開発単元」を分割実施する。. 「新四合院」システムを提案した。. c.新しい住宅はすべて「新四合院」の形式で設計して. 3-1.プロジェクトの概要. いる。元の「胡同―四合院」体系をそのまま保留す. 菊児胡同は北京二環路の内、南鑼鼓巷の最北の胡同. ると同時に、マンションと四合院のメリットを合わ. であり、全長438mで、面積は8.28haである。. せた。. 菊児胡同プロジェクトは全部の工事は三期に分けら. d.「新四合院」の高さは基本的に2-3階あり、一部は. れ(Fig.3)、第三期工事は開発業者が資金の不足ため、. 屋根裏部屋と地下室も設計されていて、伝統の建築. 旅館棟だけが完成され、他の建物は未実施である。. 様式、色彩、材料を保ちつつ、創造性もある。 e.「新四合院」は経済的合理性の追求を目指し、居住. 区の発展に関する一連の探索を試みた。例えば、住 宅制度改革、「住宅合作社」等。 3-3. 「新四合院」システム 四合院は、「院子注 5」を中心とした建物群を一つず つのユニットとし,それを前後左右に自由に増やすこ とができる特徴を持っている。敷地の間口に余裕があ れば,縦方向の建築群を二列以上並べることができる。 さらに、奥行きに余裕がある場合は奥に向かって中庭 を重層的にいくつも連ねることが可能である。その限 られた空間は,複数の街区に区画される。 1978 年から、北京旧城の伝統的風貌と空間構成の継. Figure 3 菊児胡同プロジェクト配置図 a.第一期工事(甲院). 承するために、呉良鏞と専門家達は伝統四合院の特徴. 1989年10月から着工し、翌年の8月に竣工した。敷地. を生かせる中庭を持つ住居システムを研究し、各種の. 2. の面積は2090m である。7つの質が悪い四合院を取り. 敷地条件にも適当な新四合院システムを提案した。. 壊し、新しい住宅を46軒建てた。床面積は2760㎡であ. 「大通り、街区、胡同」の道路体系、「胡同--四合. る。. 院」体系と伝統的四合院の特徴によって、1987 年、呉. b.第二期工事(乙、丙、丁、戊、己院). 良鏞は新四合院システムの基本単位(Fig.4)を提案し. 1991年から着工し、1994年に竣工した。敷地面積は. た。それは、一定の数量の住民が一つの「院子」をめ. 1.027ha、床面積は1.7万㎡である。5つの合院、新築住. ぐって居住し、できるだけ高い容積率を得ると同時に. 宅を207軒建てた。. 住環境を改善. 3-2.菊児胡同における「有機更新論」の応用. する。この基. 呉良鏞は町が生命を持つ有機体としてみられ、次の. 本単位は多く. ように述べている。 「大規模な取り壊しと建設を止め、. の組み合わせ. 町の「新陳代謝」を通じて、順番を踏んで有機的な更. の可能性があ. 新をする。町の文化を守り、「死亡細胞」を取り除き、. り、それぞれ. 「新しい細胞」を更生させ、町の「ミクロ循環」を回. の大きさで組. 復し、古い建物の適切な再利用を図らなければならな. み合わせた新. 2). い。」 彼は既存住宅建築に対する現状による分別対. 四合院は取り. 処を主張する。. 壊しに伴う不. a.菊児胡同地域内の既存建物の質によって3種類に分. 整形になった. 類される:70年代以降建てられた家屋、質が高いた. 敷地に適用で. め、保留する;保存状況のいい四合院を補修し、再. きる。. 利用する;壊れ果てる「危旧房」を取り壊して建て. 3-4.「住宅合作社」の仕組み. 直す。. Figure 4 新四合院システムの基本単位. 菊児胡同住宅合作社は危旧房整備型住宅合作社であ. b.取り壊す予定の四合院の中で、塀の境界により「開. る。具体的に、住民から1平米の居住面積にあたる350. 発単元」を決める。一番破れた41号合院から経済の. 元の出金と、住民が所属している企業から1平米の居住. 24-2.
(3) 面積にあたる250元の出金と、残りの部分が区政府の補. らあらわれる。庭の空間は、人が出入りできる同時に、. 2). 助により、全部事業費を集めた 。. 人に観賞される空間でもある。多くの庭は側面の開放. 住宅合作社は地域コミュニティと政府の役割をはた. を通じて、庭の空間が他の空間とお互いに繋ぎ、交流. している。政府管理部門の旧城区整備の実施をサポー. を行うことができる。その繋ぎは道路、門、窓、廊下. トし、住民、開発業者と設計者を繋ぎ、交渉を行い、. などにより実現される。半屋外の階段、廊下と屋上の. 矛盾を解決し、改造プロジェクトの実施を促進する。. テラスは外部空間と室内との中間領域である。. 住宅合作社は、政府、企業と個人が共同負担で住宅. 4-1-3. 「新四合院」の道路体系. 投資を行う原則を使い、住民の住宅消費観の変化を促. 南鑼鼓巷は北京で一番古い町. 進し、住宅制度改革を促進したのである。. であり、南から北に一本の大通り. 国と会社の補助によって、合作社に参加する組合員. が貫通していて、東から西に続く. も一部のお金を出さなければならないため、改造に参. 8本の通りが平行に並び、典型的. 加する積極性が向上した。. な「魚骨式」の道路体系である。. 4.菊儿胡同の現状の考察. 新四合院は中国南方住宅の「避弄. 4-1. 菊児胡同の「新四合院」の空間. 注6. 」と「魚骨式」の胡同体系の特 Figure 7「魚骨式」の道. 4-1-1.閉鎖的な空間. 徴を継承し、通路を骨組みとして 路体系. 伝統的四合院は、中庭、正房、東西の廂房と倒座房. 構成された(Fig.7)。. によって構成される建築群である(Fig.5)。周りは住居. 4-2.住民の意見. 用の部屋で、真ん中は中庭であり、完全閉鎖的な居住. 菊儿胡同に現住民を対象とした調査に基づいて、主. 空間が構成される。「新四合院」は四面囲いの形式を. に以下の問題点が反映された。. 使っており、合院が外に対し、相対的に閉鎖的な状態. a.不満. になる(Fig.6)。 . 居住面積不足 調査によると、人々が住居環境に対する要求が大き. く向上したため、多くの住民が住居面積に対し、不満 を持っている。例えばリビングの面積が小さすぎて、 家具などはまったく置けられないのである。また、住 民は厨房とトイレの面積に対し、普遍的に不満を持っ ており、面積が小さすぎて、とても不便だと思ってい る。しかし、このような小面積のモデルは、単身ある. Figure 5 伝統的四合院. いはカップルに好まれている。. Figure 6「新四合院」の平面図. . 採光不足 四合院は四面囲いの形式を採用しているため、必然. 4-1-2. 開放的な空間. 的に東西向きの部屋が存在する。一階に住む住民から. 「新四合院」の開放性は庭の側面を開放することか. 屋外の障害物が多く、自然光が少ないという不満の声 が上がっている。 . 駐車スペース不足 住民たちの交通ツールは自転車から自動車へ変わり、. これは20年前では考えられないことである。そのため、 設計の時は、駐車場の問題を考慮していなかった。現 在、多く の車は 道路の 両側あ るいは Photo 1 開放的な空間. Photo 2 無断駐車. 24-3.
(4) 中庭にとまっているため、住民の公共スペースが占用. 環境を改善するためである。だんだんにその名声が大. されたのである。. きくなり、菊児胡同の値段が上がり、多くの富商、外. b.満足:. 国人が入居してきた。また、旧城区は便利な生活条件. 住民たちは、三階建ての新四合院は伝統的な四合院. が備えているため、地価も上昇しつつ、元の住民は部. の外部サイズと基本的に協調していると考え、新四合. 屋を賃貸し、あるいは部屋を売ることになった。菊儿. 院には伝統四合院の雰囲気が残っていると考えている。. 胡同新四合院は、2005年の売る値段は8000元/m2、2DK. 子供と年寄は庭で雑談、体の鍛えなどを行う。. の家賃は3000元/月であった。現在の売る値段は4万元. 4-3. 計画と現実の区別. /m2、2DKの家賃は1万元/月となっている。このような. 菊儿胡同が建てた後に、設計者は住民に対するアン. 危改地域事業は開発会社に巨大な利益をもたらし、危. ケート結果によると、54%の住民はテラス、バルコニ. 改の初心にある程度に反したのである。. ー、庭を貯蔵スペースとして利用されていて、ただ18%. 5.まとめ. 2). の住民は休憩、娯楽の場所として利用されていた 。. 近年、中国では人口密度は絶えずに増長し、住宅区. この現象は現在の実際現状にも続いて見られている。. は激しく増えたため、大規模の住宅団地の建設計画が. 多くの住民は住居面積を増やすために、テラスを部. 町の活気と活動、住民の交流空間を無視したことによ. 屋に改造して、元々開放的ベランダーを閉鎖した。ま. りもたらした問題を人々は次第に意識し始めた。菊児. た、安全性の考慮しアルミ窓を装着し、防犯用の防盗. 胡同は伝統的な四合院と比べ、すでに「高密度」の住. ドアと防盗窓も加えた。廊下はほとんど改造され、新. 宅であるが、しかし現在のマンションと比べては、濃. しい強化プラスチックの壁が建てられた。現有住居面. 厚な生活雰囲気と充分の公共スペースをもっている。. 積に満足しない、庭内に勝手に小屋を作り、他の住民. 調査と研究の過程において、たくさんの違う意見も. に模倣され、共用スペースがますます狭くなってきて. あった。菊児胡同の改造も旧城区に対する破壊である. いる。新四合院も大雑院になる恐れがあると思われる。. と多くの専門家が指摘した。伝統住宅区に対する保護 は、物質面の伝承に従うか、それども住居文化面の伝 承に従うか、このような争論はずっと存在していた。 菊児胡同新四合院は開放的な住宅モデルを作り出し、 院落式、近所付き合いの空間をうまく創造したのであ る。伝統的空間からの原型を取り出し、北京の都市特 徴を継承したのである。. Photo 3 竣工したところの写真. 改造前. 改造後. ■注釈. 現状の写真. 1.元の都市建設に基づいて、元、明、清800 年以上の都市構造歴 史を持ち、徐々に形成した平面は「凸」型の地域となる。内城と 外城と分けられる。面積は62.5km2である。/2.20世紀80年代末に、 中国住宅制度改革により、「国家補助と民間集金」の方針に基づ き、都市の中低所得者層の住居問題を解決する協同組合である。 /3.「大雑院」とは2つの意味がある:1つは数世帯の群居である。 人口の構成が複雑で、なおかつ一般的には社会の中、下流階層が 住んでいる。もう1つは、空間、住環境の破壊である。建物の質 が低く、中庭では建物の増築と改造が普遍的に存在する。その大 雑院の形成過程は「雑院化」と呼ぶ。/4. 老朽化のために倒壊の 恐れがあるなど住むのに危険な家屋。/5.中庭:冠婚葬祭の場, 日常生活の場としての快適な環境である。/6.避けて通る路地: 中心軸の通路は主人,立派な人だけのものであって,家族は使う ことができなかった。そこで,使用人のみならず,他人と顔を合 わすことがはばかられていた女性のためのものとして,住宅の側 面に沿って,奥へ通じる通路が別に計画された。 ■参考文献 1.方可、『当代北京旧城更新』中国建築工業出版社、2000年. 表 1 住民自らの改造行為. 2.呉良鏞、『北京旧城与菊児胡同』中国建築工業出版社、1994年. 4-4.「危旧房」改造プロジェクトの商品化と高級化. ■図版出典 Fig.1,7参考文献2をもとに筆者作成, Fig.2,3,6:筆者作成,Fig.4 参考文献2 /Photo1,2:2011 年調査時撮影, Photo3清華大学のHP/ 表1. 筆者作成. 菊児胡同プロジェクト設計の本意は当時の住民の住. 24-4.
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