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佛教大學大學院紀要 28号(20000301) L099小松万喜子「日本の現代の青年の死生観とその教育課題」

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佛 教 大 学 大 学 院紀 要 第28号(2000年3月)

日本 の現代 の青 年 の死 生観 とその教育課 題

万 喜 子

〔抄 録 〕 死 生 観 は 文 化 や 時 代 の影 響 を受 け な が ら,人 生 の 各 段 階 に お い て,現 実 の 死 の経 験 や 様 々 な機 会 を通 して培 わ れ て い く もの で あ る が,近 年,人 間 の 生 や 死 の あ りよ う は 急 速 に変 化 して お り,現 代 ほ ど死 生 観 が 問題 に され る時 代 は ない 。 本 稿 で は,「 日本 」 と 「現 代 」 と い う二 つ の 観 点 か ら,行 動 の 指 針 と して の価 値 観 や 倫 理 体 系 を 身 につ け る こ と を発 達 課 題 とす る 「青 年 期 」 を と りあ げ て,死 生 観 とそ の形 成 に 関 す る 考 察 を深 め,あ わせ て教 育 の課 題 を検 討 した 。 キ ー ワ ー ド 死 生 観,日 本 人,青 年,現 代,教 育

死 生 観 は 人 生 の各 段 階 にお い て,現 実 の 死 の 経 験 や 様 々 な機 会 を通 して培 わ れ て い くも の で あ る。 人 間 は生 ま れ た と きか ら,死 に向 か っ て 生 き る存 在 で あ り,生 涯 を通 じて 自己 の 死 とい う ものへ の 準 備 を して い く と もい え よ う。 とす れ ば,死 生 観 の 形 成 は偶 然 の 外 的 要 因 に よ っ て 受 動 的 に与 え られ た り,他 者 か ら強 制 さ れ た もの で は な く,個 人 が 自分 な りの 信 念 や 基 本 的 態 度 を 自 ら身 につ け られ る よ うな もの で な け れ ば な らな い。 また,人 間 の 生 活 が 文 化 や 時 代 の影 響 を受 け な が ら営 まれ る こ とか ら,死 生 観 の形 成 に つ い て検 討 す る際 に は,風 土 や 時代 を 考慮 す る こ とが 重 要 で あ る。 本 稿 で は,「 日本 」 と 「現 代 」 と い う二 つ の視 点 か ら,「 青 年 期 」 を と りあ げ て 死 生 観 とそ の 形 成 に関 す る考 察 を深 め,あ わせ て 教 育 の 課 題 を検 討 す る。 青 年 期 を と りあ げ るの は,死 生 観 の 形 成 に お い て は,行 動 の 指 針 と な る価 値 観 や 倫 理 体 系 を 学 ぶ こ とを発 達 課 題 とす る 青年 期 が 重 要 な 時 期 で あ る と考 えた か らで あ る。 こ と に,20世 紀 は, くユラ 「青 年 の 時 代 」 と呼 ば れ る ほ ど青 年 期 が 社 会 的 ・文 化 的現 象 と して重 要 視 され て お り,青 年 期 の 死 生 観 を探 る こ とは現 代 の 日本 人 の死 生 観 を 明 らか にす る こ と に もつ なが る もの と考 え る。 ・ ・

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日本の現代の青年の死生観 とその教育課題(小 松万喜子) 1現 代 と い う 時 代 の 特 徴 1.医 療 技 術 の 進 歩 くの 日本 人 の 死 亡 率 の年 次 推 移 を主 要 死 因別 に み る と,昭 和22年 に最 も高 か っ た 結核 が 急 減 す る 一 方 で,悪 性 新 生 物 と心 疾 患 に よる 死 亡 数 が増 加 し,現 在 の 死 因 の 第1位 ・第2位 を 占 め る に 至 っ て い る。 結 核 な どの 感 染 症 の 減 少 は,生 活 環 境 ・衛 生 状 態 の 改 善,抗 生 物 質 な どの 医 薬 品 の 開発 に よ る もの で あ り,以 来,日 本 の 医 療 技 術 は,医 薬 品 ・医 療 機 器 ・リハ ビ リテ ー シ ョ ン 技 術 ・情 報 通 信 や コ ン ピ ュー タ技 術 な どの 向上 と歩 調 をあ わ せ つ つ,急 激 な進 歩 を とげ て きた 。 こ の よ う に,常 に死 と対 峙 し,病 に よ る死 を 克 服 す る こ とを 使 命 と して きた 医 療 の あ り方 は, 「生 は 尊 く,死 は望 ま し くな い もの」 とい う死 生 観 を強 化 しつ つ 発 展 して きた と言 い 換 え る こ と が で きる。 そ の た め,病 院 に お い て は 勿 論,社 会 にお い て も,死 の 話 題 を避 け,忌 み 嫌 う傾 向 が 強 くなっ た。 医 療 の進 歩 は 死 亡 場 所 に も変 化 を もた ら し,第 二 次 世 界 大 戦 直 後 に は在 宅 死 が 約90%で あ っ たが,次 第 に病 院 な どで 亡 くな る人 が 増 加 し,昭 和50年 頃 を境 に逆 転 し,現 在 で は 約80%が 施 設 内 で亡 く な っ て い る 。 この 背 景 に は,家 庭 の 介 護 力 低 下,住 宅 構 造 の 変化 な ど に よる 物 理 的 な介 護 困 難,医 療 へ の 期 待 の 増 大 とい っ た要 因 の 他 に,主 要 死 因 で あ る癌 の 末 期 に は種 々 の症 状 が 出 現 し在 宅 ケ アが 難 しい とい う側 面 もあ る。 死 亡 場 所 の 変 化 は 人 間 の 死 に方 や 看 取 り方 も変 化 させ る 。 身 近 な人 との 死 別 体 験 が あ る大 学 くヨラ くの くら り ゆ 生 の 割 合 に つ い て,荒 木 は82.1%,渡 辺 は84.4%と 報 告 し て お り,他 の 報 告 を み て も大 体70∼ ゆ り ゆ コ  りゆ 90%程 度 と な っ てい る。 しか し,臨 終 に立 ち会 っ た経 験 につ い て は,20∼30%前 後 と 報 告 され て お り,死 へ の 直 接 的 な接 触 は 少 な く,通 夜 や 葬 儀 の 際 に 遺 体 に対 面 す る程 度 の現 実 感 の ロの うす い 死 別 体 験 と な って い る こ とが わ か る。 こ う して 死 が 非 現 実 化 す る一 方 で,死 ま で に 一 定 の 時 間 的 猶 予 が あ る癌 死 の 台 頭,エ イ ズ な ど の新 た な 感 染 症 の 出 現,生 命 科 学 の 領 域 に まで 及 ん だ 医 療 技 術 の進 歩 が 生 み 出 した 「脳 死 」 「臓 器移 植 」 の 問 題 な どに直 面 し,こ れ まで伝 統 的 に培 っ て きた健 康 観 や 死 生 観 ・倫 理 観 の見 直 しを迫 られ て い るの が 現 代 とい う時 代 の 一 つ の 特 徴 で あ る。 2.家 族 と地 域 共 同 体 の 変 化 家 族 構 造 の 変 化 と して,最 も顕 著 に み られ る の は核 家 族 世 帯 の 増 加 で あ り,こ とに,「 夫 婦 (片 親)と 未 婚 の子 の み の 世 帯 」 は 昭和40年 は1200万7千 世 帯 で あ っ た が,平 成8年 に は1759 くユらラ くユゆ 万7千 世 帯 に増 えて い る。 離 婚 件 数 は30年 代 ま で は,ほ ぼ 減 少 傾 向 を示 して きた が,40年 代 か らは58年 を ピー ク に増 加,そ の後 や や 減 少 した もの の再 び 増 加 し,平 成7年 に は 史 上 最 多 の19 万9016件 と な っ た。 ロの 世 帯 構 造 の 変 化 とあ わ せ て 注 目すべ き点 と して,田 村 は,核 家 族 化 の ス ピー ドは 高 度 経 済 成

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佛教大学 大学 院紀要 第28号(2000年3月) 長 期 に比 べ て鈍 化 した が,多 くの 家 族 は経 済 の 低 成 長 下 にお い て 経 済 生 活 水 準 の 維 持 ・確 保 の た め に,共 働 き も,長 距 離 通 勤 も,単 身赴 任 も,出 稼 ぎ も辞 さな い こ と に な っ た こ と を指 摘 し て い る。 また,こ う した 家族 分解 に よ り,家 族 内の 人 間 関係 は,時 間 的 ・物 理 的 に接 触 度 を低 め, 相 互 に個 別 化 ・孤 独 化 の方 向 に あ る と して い る。 現 代 社 会 に み られ る,こ の よ う な人 口 の都 市 集 中 化,核 家 族 化 ・単 身 赴 任,女 性 の 就 労 な ど の 変化 は,家 庭 や 個 人 が 積 極 的 に 選 択 した とい う よ りは,資 本 主 義社 会 が 発 展 を 追 求 す る過 程 で 副 産 物 と して 生 じた 現 象 と もい え る。 しか し,離 婚 の 増 加 な どを あ わ せ て み る と,個 人 の権 利 や 主 体 性 ・選 択 性 を尊 重 す る とい う価 値 観 の 強 化,家 族 とい う もの に対 す る意 識 の 変 化 が 背 景 に あ る こ とが うか が え る。 問 題 は,親 に と って は個 人 の 生 き方 と して の 望 ま しい 選 択 で あ っ た と して も,子 ど もの よ う な弱 い 立 場 の もの に と っ て は,そ れ が 深 刻 な 状 況 を もた ら し得 る と い う こ とで あ る 。 人 間 形 成 過 程 に お け る家 族,こ と に 両 親 の 果 たす 役 割 は大 き い が,こ の よ う に構 成 員 が 減 少 した 状 況 で は,家 庭 の 機 能 を十 分 に果 た す こ とは で きに くい 。 従 来 か ら,核 家 族 化 の 進 展 に対 して,祖 父 母 を 通 して の 文 化 継 承 の 機 会 減 少 を危 惧 す る 向 きが あ っ た が,近 年 で は 両 親 か らの 文化 継 承 も危 うい 様 相 を呈 して い る。 人 口 の 流 動 に伴 う地 域 共 同体 の 脆 弱 化 に よ り地 域 社 会 にお け る相 互 扶 助 や 文 化 継 承 の 機 能 も また 低 下 して い る。 3.マ ス ・メデ ィア の 発 展 (1)マ ス ・メデ ィア の 発展 と文化 マ ス ・メ デ ィア は マ ス ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン(以 下,マ ス コ ミ と略 す)の 機 能 を もつ 媒 体 で くユさラ あ り,情 報 伝 達 の 広 汎 性 ・迅 速性 ・瞬 時 性 とい う機 能 を も って い る 。 と く に映 像 な どの視 聴 覚 メ デ ィア は,文 字 よ りも情 報 量 が 多 く,Communica-bility(交 流 能 力)が 高 く,報 道 や 娯 楽 以 外 に も,視 聴 覚 教 材 を学 習 ・指 導 の 補 助 手 段 と して 用 い る な ど教 育 分 野 に お い て も,広 く活 用 さ れ る よ う に な っ て い る。 マ ス ・メデ ィ ア は い まや,生 活 の す べ て の領 域 を扱 い,深 刻 な 国 際 問 題 か ら 日常 生 活 まで マ ス コ ミが 主 導 す る よ うに な っ て い る。 人 気 タ レ ン トが テ レビ で 宣伝 した だ け で 商 品 の売 れ 行 きが 左 右 され,社 会 が 共 有 す る価 値 観 や 規 範 す ら もマ ス ・メ デ ィア に よ っ て容 易 に影 響 を うけ て い る。 マ ス ・メ デ ィア は 多 くの 恩 恵 を もた らす 一 方 で,大 衆 の 思 考 や 行 動 に 対 す る操 作 性 を有 して い る 。 た とえ ば,私 た ち は,新 聞 や テ レ ビな どの 報 道 に つ い て,世 界 の で き ご との す べ て が 正 確 に 報 道 さ れ て い る と錯 覚 しが ち で あ る が,実 際 の 報 道 は 事 件 性 の あ るニ ュ ー ス や 興 味 を引 きや す い ニ ュ ー ス が 選 択 的 に 流 され て い る の で あ り,そ の奥 に は本 質 的 に は 送 り手 の視 点 が存 在 して い る。 (2)テ レビ,テ レ ビゲ ー ム と思 考 力 テ レ ビ や テ レ ビゲ ー ム の 普 及 が 青 少 年 の 思 考 力 や 行 動 に及 ぼす 影響 につ い て,ジ ェ ー ン ・ハ くユね 一 リ ーJaneHealyは 次 の よ う に 指 摘 して い る。1つ は,テ レ ビ や テ レ ビ ゲ ー ム に 時 聞 を 費 や す こ と に よ る,言 語 や 聞 く力 ・読 む 力 を 育 て る 「家 族 の 会 話 」 や,感 情 の コ ン ト ロ ー ル の 方 法 に つ 一101一

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日本の現代 の青年の死生観 とその教 育課題(小 松万喜子) い て 「大 人 が 見 本 を示 す 活 動 」 が 減 る こ との影 響 で あ る 。 子 ど もの 抽 象 的 思 考 力,計 画 性,注 意 の 統 制 力,高 次 の判 断 力,問 題 解 決 能 力 の 発 達 に は 良 い 言 語 刺 激 を必 要 とす るが,「 良 い 言語 と は,子 ど もが 聞 く こ と と 同 時 に 話 す こ と もす る相 互 交 渉 的 な関 わ りか ら得 ら れ る」 も の で あ り,メ デ ィ ア ・ トー クの 一 方 向性 の 限 界 に も触 れ て い る 。 も う1点 は,テ レ ビ や テ レ ビ ゲ ー ム そ の もの が 脳 に与 え る影 響 で あ る。 人 間 の情 緒 ・知 性 ・社 会 性 の相 違 の 大 部 分 は大 脳 皮 質 の 両 側 半 球 の 複 雑 なバ ラ ンス と関 連 が あ るが,現 代 の生 活 様 式 は,た とえ ば,目 先 が ころ こ ろ 変 わ る テ レ ビ画 面,歌 詞 の 意 味 は 二 の 次 の音 楽 な ど に み られ る よ う に,言 語 や 分 析 的 思 考 を犠 牲 に し,よ り全 体 的 な観 点 や視 覚 的技 能 を重 視 して い る よ うに 思 わ れ る と指 摘 す る。 テ レ ビや テ レ ビゲ ー ム は,空 間や 時 間 を超 え た擬 似 体 験 を可 能 とす る。 日本 にい なが ら世 界 旅 行 を して い る気 分 に な っ た り,現 代 に い なが ら戦 国 時 代 を体 験 して い る気 分 に な る 。 自分 が 主 人 公 に な っ て 敵 を倒 した り,様 々 な仮 想 体 験 が 可 能 とな る 。 こ う した体 験 は 満 足 感 を 与 え て くれ るが,テ レビや コ ン ピュ ー タ技 術 が 精 巧 に な り,ま た,仮 想 体 験 の 頻 度 や 時 間が 増 す ほ ど, 仮 想 体 験 と現 実 体 験 の 区 別 が しに く くな っ て くる 。 死 ん で も再 び生 き返 る登 場 人 物 を み る うち に,人 間 の 生 や 死 に 関 す る捉 え方 が 歪 ん だ り,悪 を懲 ら しめ る た め な ら相 手 を殺 して も許 され る とい う価 値 観 が 強 化 され る危 険 性 もあ る。 現 実 的 な 死 に直 面 す る機 会 が 減 る一 方 で,非 現 実 的 な 死 が あ ふ れ て い る とい う点 が 現 代 の も う1つ の特 徴 で あ る。 4.科 学 技 術 の進 歩 と生 活 の変 化 科 学 技 術 の 進 歩 は,日 本 の 高 度 経 済 成 長 の 推 進 力 と な り,日 本 人 の 生 活 を 豊 か で 便 利 な も の に した 。 新 幹 線 ・高 速 道 路 ・空 路 も次 々 と整 備 され,流 通 が 良 くな る こ とで 通 信 販 売 や 宅 配 便 な どの 新 た な ス タ イ ル の ビジ ネ ス も誕 生 した。 最 近 で は携 帯 電 話 や ポ ケ ッ トベ ル な ど も普 及 し, 便 利 さ の追 求 は留 ま る と こ ろ を知 らな い 。 電 化 製 品 も開発 と改 良 が 重 ね られ,生 活 の 快 適 さ を 高 め て い る 。 しか し,科 学 技 術 の 進 歩 が もた ら した もの は 便 利 さ ば か りで は な い 。 急 速 な 産 業 開発 は 自然 破 壊 や 公 害 問 題 を もた ら し,近 年 で は,廃 棄 物 処 理 ・オ ゾ ン層 破 壊 ・酸 性 雨 ・地 球 温 暖化 ・ダ イ オ キ シ ン な どの 多 くの 環 境 問 題 が 注 目 され,国 際 的 な検 討 も始 め られ て い る 。 ま た,平 和 な時 代 に生 まれ,飽 食 や 便 利 さに慣 れ た現 代 人 は努 力 して 得 る こ との 喜 び も,忍 耐 す る こ と も知 る機 会 が 少 な くな っ て い る。 にゆ 小 此 木 は,テ レ ビ,飛 行 機,車,宇 宙 船,医 療 テ ク ノ ロ ジ ー の 急 速 な進 歩,電 化 製 品 な どの 夢 の 実 現 に よ り全 能 感 が み た さ れ て し ま っ た現 代 社 会 は 「悲 哀 の な い全 能 の 世 界 」 で あ り,ど ん な に人 間 が あ が い て も喪 失 した対 象 の 再 生 は で き な い とい う絶 対 的有 限 性 の 感 覚 す ら,私 た ちの 心 か ら排 除 して し ま っ た時 代 で あ る と述 べ て い る。 さ ら に,現 代 は 「モ ラ トリア ム 人 間 の 時 代 」 で あ り,モ ラ トリ ア ム 人 間 は 自分 自 身 を常 に仮 の 自分 と思 い,一 時 的,暫 定 的 な状 態 に 身 を お き,何 事 に対 して も当事 者 に な る こ と を避 け,親 子,夫 婦,男 女,師 弟,上 司 と部 下 な

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佛教大学大学院紀要 第28号(2000年3月) どあ らゆ る対 象 との 関 係 にお い て も,傷 つ く こ とや 自分 を失 う こ とを恐 れ て 深 い対 象 関 係 を避 け,モ ラ トリア ム人 間 のや さ しさ とつ め た さ,し らけ の心 理 的性 格 を生 み だ して い る とい う。 H日 本 人 の 死 生 観 1.日 本 の 自然環 境 と死 生 観 (1)日 本 人 の 受 容性 ・忍従 性 ・あ き らめ 人 間 は寒 さや 暑 さ や 湿 気 とい う よ う な風 土 の 諸 現 象 とか か わ りな が ら,衣 服,食 文化,家, くの 風 や 水 な どに対 す る堤 防 や排 水 路,芸 術,宗 教,風 習 な どを作 り出 して き た。 和 辻 は 風 土 を3 つ の 類 型(モ ンス ー ン ・砂 漠 ・牧 場)で 捉 え,そ の特 徴 と人 間存 在 につ い て論 じて い る。 日本 が 属 す る 「モ ンス ー ン」 域 の 風 土 は暑 熱 と湿 気 の 結 合 を特 性 とす る。 和 辻 は,湿 潤 は しば しば 大 雨 ・暴 風 ・洪 水 ・旱 魃 な ど の荒 々 しい 力 とな り,そ れ は 人 間 に対 抗 を 断念 させ る ほ どに 巨大 な力 で あ るが,日 本 人 は そ う した湿 潤 が ま た 人 間 に恵 み を も も た らす こ と を知 る た め に,こ の 厳 し さ を 「受 容 」 あ る い は 「あ き らめ 」,「忍 従 」 せ ざ る を得 な い と して い る。 こ う した 日本 の 自然 環 境 につ い て は,鈴 秉2も,地 球 上 に お け る 日本 列 島 の 位 置 は,中 緯 度 で,大 陸 との 位 置 関 係 に よ っ て,最 も恵 まれ た位 置 に あ る と し,日 本 民 族 の 特 性 は,こ の 恵 まれ た土 地 に や っ て き た こ と に よっ て 形 成 さ れ た もの で あ る と して い る 。 そ して,こ の 自然 の 脅 威 が 持 続 的 な も ので は な く,季 節 的 ・一 時 的 な も の で あ る こ とが,日 本 人 の 「い さ ぎ よい あ き らめ」,「忍 従 」 とい った 特 性 の 形 成 につ なが って い る と して い る。 和 茫 券 分 類 した 「砂 漠 」 の風 土 の本 質 は 乾燥 で あ る。 人 は 自然 の脅 威 と戦 い な が ら,砂 漠 の宝 玉 な る 草 地 と泉 を 求 め て 歩 か な け れ ば な らな い 。 草 地 や 泉 は争 い の種 と もな るた め,砂 漠 的 人 間 は対 抗 的 戦 闘 的 関 係 と して 存 在 す る こ とに な る。 「牧 場 」 とは 一般 的 に は 草 原 で あ り,和 辻 は これ を ヨ ー ロ ッパ の 風 土 の特 徴 と して い る。 夏 の乾 燥 と冬 の湿 潤 は,雑 草 を駆 逐 して全 土 を牧 場 た ら しめ る 。 つ ま り,ヨ ー ロ ッパ に お い て は雑 草 との 戦 い は不 必 要 で,農 人 は耕 した 土 地 に 小 麦 や 牧 草 の種 を蒔 い て 成 長 を待 ち さえ す れ ば よい 。 石 醗 ま和 辻 の 説 を 支 持 しなが ら,人 類 の歴 史 に 支 配 的 な 影 響 を与 え て きた宗 教 の 背 景 とな っ た世 界 観 を2つ に分 類 し,そ の 文 化 的 基 盤 につ い て 考 察 して い る 。 第 一 の 世 界 観 は,ユ ダ ヤ 教 ・キ リス ト教 ・イ ス ラ ム教 の グ ル ー プ に よる もの で,こ れ らの宗 教 に特 徴 的 な宇 宙 や 観 念 は, ① 唯 一 の超 越 神,② 創 造 され た 宇 宙,③ 不 寛 容 と非 妥 協 性,④ 男 性 原 理,⑤ 天 の思 想,⑥ 宇 宙 の 有 限性,⑦ 宇 宙 の 合 理 性,で あ る 。 第 二 の 世 界 観 は,ヒ ンズ ー教 ・仏 教 ・道 教,南 ユ ー ラ シ ア大 陸 の 多 くの 古 代 宗 教 や 民 間信 仰 の 中 にみ られ る も の で,① 所 与 の 存 在 と して の 宇 宙,② 宇 宙 の 中 の 神 々,③ 寛 容 と融 通 性,④ 女 性 原 理,⑤ 大 地 の思 想,⑥ 限 定 さ れ な い 宇 宙,⑦ 宇 宙 の 非 合 理 性,と い っ た 観 念 が 特 徴 で あ る。 第 一 の 一 神 教 的 な世 界 観 が 生 まれ う る 文 化 と して は, ユ ー ラ シ ア大 陸 の 乾 燥 した砂 漠 草 原 地 帯 に挑 ん だ 遊 牧 民 族 の 文 化 が 考 え られ,第 二 の世 界 観 が 一103一

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日本 の現代 の青年 の死生観 とその教育課題(小 松万喜子) 育 まれ た土 壌 は,水 に恵 まれ た 著 し く植 物 的 な世 界 で あ り,自 然 に 対 し て は受 動 的 一受 容 的 な 文 化,農 耕 民族 の 文化 で あ る と して い る。 (2)古 代 日本 人 の 死 生 観 前 述 の よ うな 自然 環 境 の も とに,日 本 人 に は どの よ うな 死 生 観 が育 まれ た の で あ ろ う。 古 代 日本 人 の死 生 観 は,『 古 事 記 』 に 記 され た イザ ナ ギ ・イザ ナ ミの 二 神 をめ ぐる黄 泉 の 国 の 物 語 か ゆ     ら検 討 され る こ とが 多 く,こ う した 神 話 か らは,古 代 日本 人 が 死 を 人 間 の 力 を超 え た もの と し て捉 え,現 世 と死 後 の 世 界 は行 き来 が 可 能 な完 全 な断 絶 が 無 い 世 界 と して い る こ とが うか が え る。 そ こ に は,あ の 世 の 霊 魂 が,現 世 に生 きる 人 を憎 み,仇 をす る とい う信 仰 が 潜 ん で い る 。 また,死 や 黄 泉 の 国 は穢 れ た もの で,そ の 穢 れ は禊 に よ り洗 い 清 め られ る と捉 え て い る 。 くふ ラ 佐 々 木 は,稲 作 以 前 の 基 層 文 化 の 形 成 過 程 を,民 族 学 や 考 古 学 ・生 態 学 な どの 視 点 か ら明 ら か に し,照 葉 樹 林 帯 に 住 む 民 族 の 間 で は,稲 作 文 化 以 前 の 雑 穀 栽 培 を主 と した 焼 畑 農 耕 段 階 に お い て,オ オ ゲ ツ ヒメ や ウケ モ チ ガ ミな どの 女 神 が殺 され,そ の 死 体 か らア ワや ヒエ や大 豆 や 稲 な どの作 物 が 生 ま れ た とい う死 体 化 生 型 神 話,あ るい は原 古 の 洪 水 に生 き残 っ た 兄 妹 神 が 世 界 を創 造 す る と い う洪 水 神 話 な どが広 が った こ とを報 告 し て い る 。 女 神 の死 体 か ら作 物 が 生 ま れ る 神 話 な どか らは,死 後 の 人 間 と 自然 の 一体 化 が うか が え る 。 神 話 に 登場 す る神 々 は 人 間 に非 常 に 類 似 した 姿 で描 か れ て お り,出 産 もす れ ば,死 ん で 黄 泉 の 国 に もい き,殺 し合 い もす れ ば,兄 妹 で 協 力 しあ い もす る。 死 別 の悲 しみ も深 い 。 そ れ は, 日本 の モ ンス ー ン型 の特 殊 な 風 土 の 中 で,太 陽 や 雨 の 恵 み な ど人 間 の 力 を超 え た 自然 の恵 み と 脅威 の も とに 山 地 を切 り開 き,死 と隣 り合 わ せ に生 きた,こ の 時 代 の 人 間 の姿 そ の も の とい え る 。 人 間 の死 は 自然 の驚 異 そ の も の で あ り,恐 ろ し く,悲 し く,明 日 は我 が 身 の で き ご とで あ くヨゆ る 。 関根 は,日 本 古 代 の 宗 教 は,ま っ た く純 粋 な太 陽 崇 拝 で あ っ た と して い る が,古 代 人 の 神 々 へ の 信 仰 は,太 陽 を 中心 とす る 自然 の 生 産 力 に対 す る 崇 拝 と生 命 を奪 い 去 る もの へ の 脅威 が一 体 とな っ た形 で,極 め て 自然 に う ま れ た もの と考 え る。 2.儒 教 と死 生 観 儒 教 思 想 が 造 り出 され た 東 北 ア ジ ア(中 国 ・朝 鮮 ・日本)は,南 ア ジ ア の イ ン ドに 比 べ る と, は る か に 住 み や す 国 で あ り,そ の 代 表 で あ る 中 国 人 は,こ の 世 を楽 しい と こ ろ と考 え た 。 楽 し い こ の 現 世 しか世 界 は な い と考 え る 中 国 人 に とっ て,死 は 大 変 な恐 怖 で あ った 。 儒 教 は,人 間 を精 神(魂)と 肉体(魄)に 分 け て 捉 え,こ れ が 一 致 して い る時 を生 きて い る状 態,分 離 す る くヨけ 時 を死 の 状 態 と した 。 そ して,分 離 し て い た魂 と魄 を呼 び戻 して 一 致 させ る と生 の状 態 に な る と した 。儒 教 は この招 魂 儀 礼 に よ り死 者 は現 世 に 帰 る こ とが で き る とい う考 え に よ り,死 の恐 怖 や 不 安 を解 決 しよ う と し たの で あ る。 孔 子(紀 元 前552∼479)は 幼 く して 父 を亡 く し,原 儒(シ ャー マ ン)で あ る母 の 教 え を受 け て 成 長 した。 礼 楽 の 一級 の 専 門 家 と な っ た孔 子 は,『 詩 』 や 『書 』 を再 編 纂 し,こ れ らが 儒 家 用

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佛教大学大学院紀要 第28号(2000年3月) の 教 科 書 ・教 典 と なっ て ゆ く。 孔 子 は 実 子 や 弟 子 の 死 後 に,死 を現 実 に 意 識 し,こ の こ とに よ り,生 命 観,死 の 恐 怖 や 不 安 を解 消 す る た め の死 の 説 明 と して の孝 を 自覚 した 。 招 魂 儀 礼 は,祖 先 崇 拝 ・祖 霊 信 仰 を根 核 と す るた め,そ こ に は祖 先 の 祭 祀 を続 け る一 族 が 必 要 とな る。 つ ま り,「祖 先 一祖 父 母 一父母 一 自 己 一子 一孫 一(一 族)」とい う 関係 で,儒 教 は この 関 係 を統 合 し,① 祖 先 の 祭 祀,② 父母 へ の敬 愛, ③ 子 孫 を生 む こ と,の 三 行 為 を ま とめ て 孝 と した 。 孝 を 行 う こ と に よ り,子 孫 を生 み,祖 先 ・ 祖 霊 を再 生 せ しめ,自 己 も ま た いつ の 日か 死 後 に 子 孫 ・一 族 の 祭 祀 に よ り この 世 に再 生 す る こ とが 可 能 に な る。 今 こ こ に あ る 自 己 の 生 命 は,実 は父 ・祖 父 の 生 命 で あ り,ま た,自 己 は 肉 体 の 死 後 も子 孫 の生 命 との 連 続 に お い て 生 き続 け る こ とが で きる 。 孝 の行 い を通 じて の,永 遠 の 生 命 の可 能 性 一こ れ こそ 現 世 の快 楽 を肯 定 す る 現 実 的 感 覚 の 中 国 人 が 望 む もの で あ っ た。 こ う して,古 来 か ら続 い て き た祖 先 崇 拝 ・親 へ の愛 ・子 孫 継 嗣 とい った 行 為 を孔 子 が 理 論 化 ・体 系 くむラ 化 した こ とに よ っ て,儒 教 は思 想 と して 歴 史 に残 る こ と に な った 。 3.仏 教 と死 生 観 仏 教 の 成 立 した イ ン ドは モ ンス ー ンの 最 も型 通 りに現 れ る土 地 で あ っ た 。 大 部 分 の 地方 が 常 に 凶作 ・飢 饉 とい う 自然 の驚 異 に さ ら さ れ,イ ン ドの 人 々 に と っ て この 世 は苦 しみ の 世界 で あ くヨけコ にの っ た 。 イ ン ド各 地 で 信 仰 さ れ て い た バ ラ モ ン教 は輪 廻 思 想 を中 心 と して お り,人 間 は 生 まれ 変 わ る こ とに よ り再 び この世 の苦 しみ を繰 り返 す と考 え られ て い た。 仏 教 の教 祖 ゴー タマ ・シ ッ ダル ダ(紀元 前5∼4世 紀)は,老 人 ・病 人 ・死 人 を み て人 間の 有 限 さ を感 じて 出 家 した 後,こ の 輪 廻 転 生 に対 し,修 行 を積 み 涅 槃 の境 地 を 目指 す こ とに よ り,輪 くヨの 廻 を超 越 す る こ と を説 い た 。 生 ・老 ・病 ・死 とい う四 苦 か ら の救 済 を解 脱 に求 め た の で あ る 。 仏 教 の 特 徴 は この 世 を苦 しみ の 世 界 と捉 え る世 界 観 に あ る。 輪 廻 転 生 す る生 は苦 しみ の 長 い 連 続 を意 味 す る が,死 後 に解 脱 す る こ とに よ り,こ の 連 関 を断 ち切 れ る な ら ば,死 は 苦 しみ か ら の 真 の解 放 と な る。 な お,仏 教 で は,死 後 の霊 魂 は 転 生 す るか,成 仏 す る か,ど ち らか で あ る た め,霊 魂 が 離 脱 した 死 者 の 肉 体 は,儒 教 の よ うに 重 視 さ れ る こ と は な い。 ま た,釈 迦 は あ く ま で もこ の 世 で 悟 りの境 地 に達 す る こ と を説 き,死 後 の 世 界 は説 い て い な い 。 死 後 の 世 界 が 仏 くヨの 教 に付 加 され たの は,釈 迦 の 死 後 に起 こっ た 大 乗 仏 教 にお い て で あ る 。 4.儒 教 と仏 教 ・道 教 後 漢 時代 か ら随 唐 時 代 と い う,7∼800年 の 中 国 に お い て は,儒 教 ・仏 教 ・道 教 が と もに盛 ん で あ っ た 。 儒 教 は 肉 体 の 死 が 訪 れ た の ち の招 魂 再 生 を説 くの に 対 し,道 教 は 種 々の 健 康 法 に よ り努 力 をす れ ば,永 遠 の生 命 を もつ 仙 人 に な れ る と い う不 老 長 生 を説 い た 。 仏 教 が 信 じ られ た 背 景 に は,輪 廻 転 生 を 「転 生 に伴 う苦 し み の 継 続 」 とい う前提 を 除 い て 考 え る とい う誤 解 が あ っ た 。 そ し て,死 後,苦 の世 界 で は な く,楽 の 世 界 へ とい う発 想 が つ きつ め られ て 浄 土 思 想 が 105

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日本の現代 の青年の死生 観 とその教 育課 題(小 松万喜 子) 流 行 した。 ま た,仏 教 が 中 国人 の祖 先 の 祭 祀 や 葬 儀 に食 い 込 む た め に は,本 来 の 思 想 か ら い え ば 無 関 係 な 祖 霊 信 仰 ・祖 先 崇 拝 を 取 り込 む必 要 が あ っ た。 そ こ で生 ま れ て きた もの が偽 経,た と えば,『 盂 蘭 盆 経 』 とい うい わ ゆ る盆 行 事 の 根 拠 と な る経 典 や,『父 母 恩 重 経 』 とい う現 世 の 孝 くお ラ を説 く経 典 な どで あ る。 5.日 本 に お け る儒 教 と仏 教 日本 の 精 神 的基 盤 に対 し,最 初 に伝 来 した 外 国 思 想 は儒 教 で あ る 。 歴 史 的 に は,応 神 天 皇 の 15年(284),百 済 か ら阿 直 岐 が 来 日 して漢 籍 を伝 え,翌 年 に は同 じ く百 済 か ら王 仁 が 来 日 して,論 くヨゆ 語 ・千 字 文 を伝 え た こ とか ら,わ が 国 に儒 教 が 入 っ た と され て い る 。 日本 に お い て も,祖 霊 信 仰 ・祖 先 崇 拝 は 古 くか らあ り,儒 教 の思 想 は 馴 染 み や す か っ た こ とが 推 察 し うる 。 仏 教(大 乗 くヨの のにの 仏 教)は,チ ベ ッ ト ・中 国 ・朝 鮮 な ど を 経 て,6世 紀 半 ば に 日 本 に 伝 来 し た と さ れ る 。 そ れ 以 くおラ くヨゆ 前 か ら伝 来 して い た とす る説 もあ るが 正 確 に は わか ら ない 。 こ の段 階 で の仏 教 は,中 国 に お い て祖 霊 信 仰 ・祖 先 崇 拝,輪 廻 ぬ き の再 生 とい う こ とが な くて は,東 北 ア ジ ア 人 に は 受 け 容 れ 難 い とい う経 験 を経 て きた の で,日 本 に お い て も,祖 先 崇 拝 を取 り込 み 融 合 し,独 自の 仏 教 を作 りつ つ 日本 に深 く浸 透 して い っ た。 な お,儒 教 が 仏 教 との住 み 分 け をす る た め に は,宗 教 性 の面 よ りは,家 族 や 諸 共 同体 を支 え る 家 族 理 論 や 政 治 思 想 とい った 礼 教 性 の 面 を強 く示 す 必 要 が あ っ た 。 こ とに,徳 川 幕 府 が 新 儒 学 と も言 わ れ る朱 子 学 を 官 学 と し,ま た,キ リス ト教 弾 圧 を 目的 と して仏 教(寺 院)が 葬 式 を 一 手 に握 る よ う に な っ て か ら は,儒 教 の 宗 教 性 は,一 層 み え に く くな っ て い った 。 現 代 に お い て は,こ う した 儒 教 の礼 教 性 の 面 も薄 れ が ち で あ り,宗 教 性 も仏 教 に 吸収 され て しま っ て い る が,祖 先 崇 拝 ・親 へ の敬 愛 ・子 孫 の存 在 とい う三 者 を一 つ に した 生 命 論 と して の 孝 は,日 本 人 ロゆ の 意 識 の 底 に脈 々 と流 れ て い る もの と考 え る。 一 方,「 死 後 の世 界 」 に 関 心 を向 け,葬 式 を 掌握 す る よ う に な っ た仏 教 は,「 死 の 儀 式 」 と密 接 に結 びつ い た た め に,現 代 の 日本 人 は 苦 し くて も, 生 きて い る 間 に仏 教 に救 い を求 め る こ と は少 ない 。 6.日 本 人 の 死 生 観 (1)断 絶 感 ・悲 哀 感 『古 事 記 』 に 記 され た イ ザ ナ ギ ・イザ ナ ミ を め ぐる 黄 泉 の 国 の物 語 は,日 本 人 の 死 生 観 を よ く現 して い る 。 この 神 話 か ら第 一 に読 み とれ る もの は,死 に際 して の 悲 哀 で あ る 。 イザ ナ ギ を して死 者 を連 れ戻 しに黄 泉 の 国 まで 行 か せ た もの は,何 よ り も別 離 に よ る激 しい 悲 哀 で あ った くむ の で は な い だ ろ うか 。 この 点 に 関 して は,相 良 も,『伊 勢 物 語 』 ・ 『歎 異 抄 』 ・ 『平 家 物 語 』 な どの 例 を 出 し なが ら,日 本 人 が 感 じて い た 生 と死 の 断 絶 感 と,そ こか ら生 じ る悲 哀 感 を 指 摘 し て い る。 こ の 断 絶 感 と悲 哀 感 は,他 者 との 別 れ,現 世 か らの 自己 の 消 滅,の2つ の 観 点 か ら捉 え られ る 。 死 の恐 怖 に 晒 され な が ら死 を見 つ め,「 死 とい うの は,人 間 に とっ て,大 きな,全 体

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佛 教 大学 大学 院 紀 要 第28号(2000年3月) のの 的 な 『別 れ 』 な の で は な い か 」 と記 した の は東 京 大 学 宗 教 学 教 授 で あ っ た岸 本 英 夫 で あ る 。 こ の 「別 れ 」 は,愛 す る 者 を失 っ た 「遺 され た 者 の 悲 しみ 」(他 者 の 死)と,愛 す る者 と別 れ て 「逝 く者 の悲 しみ 」(自 己 の 死)の2側 面 か ら整 理 す る こ とが で き よ う。 さ ら に,岸 本 が 死 の 別 れ の意 味 につ い て 述べ て い る部 分 に,「 自分 の 心 を一 杯 に して い る の は,い まい る 人 た ち に 別 れ を惜 しむ とい う こ とで あ り,自 分 の 生 きて きた 世 界 に,う し ろ髪 を ひ か れ るか ら こ そ」 とい う 一 節 が あ る。死 は,こ れ まで生 きて きた 自分の世界 との別離,「 この,今,意 識 して い る 自分 」 が 消 滅 す る こ と を も意 味 し,別 離 の 断 絶 感 や 悲 哀 感 に は,こ う した 人 生 との 別 れ,意 識 す る 自 己 の消 滅 とい っ た もの に対 す る苦 悩 が あ る 。 (2)死 の 恐 怖 一死 者 に対 す る穢 れ 感 と畏 敬 死 の 訪 れ に 対 す る恐 怖 は,死 者 へ の恐 怖 に 関連 して い るの で は な い か と考 え る 。 イ ザ ナ ギ が 見 た イザ ナ ミの 変 わ り果 て た 姿 は,神 話 が 生 ま れ た古 代 の 日本 人 が 目 に して い た 死 者 の 姿 で あ ろ う。 死 後 の 恐 ろ し く変 わ り果 て た 姿 は,自 分 に 祟 り ・障 り を もた らす 怖 い存 在 と し て恐 怖 を ほヨラ 与 え も し よ う。 加 地 は 死 者 を穢 れ とみ る死 生 観 は,儒 教 で も仏 教 で もな い,つ ま り,中 国 人 と も イ ン ド人 と も異 な る 日本 古 来 の 死 生 観 で あ り,そ れ は神 道 に つ なが る もの で あ る と して い る。 く  ラ   一 方,梅 原 は怨 霊 とそ の 鎮 魂 の思 想 こ そ,日 本 の 思 想 を貫 くも っ と も古 く,根 兀 的 な もの で あ る と して い る。 人 間 の 死 が 人 為 的 な権 力 闘 争 の 犠 牲 と して もた ら さ れ,そ の 無 念 が 怨 霊 に 姿 を 変 え,生 き残 る 人 間 に祟 り ・災 い を も た らす とい う考 え 方 で あ る。 また,怨 霊 の 思 想 の 前 提 に は,人 間 が 死 ん で も霊 は残 る とい う石 器 時 代 以 来 の 人 類 の 普 遍 的信 仰 が あ る こ と を指 摘 す る 。 粗 末 に扱 え ば,祖 先 霊 とい え ど も怨 霊 に転 化 す る可 能 性 を も ち,そ れ ゆ え に祀 りが大 事 に され た とす る 。筆 者 は,こ う した 思 想 が 生 まれ た背 景 に は 当 然 の こ とな が ら,前 述 した よ う な 日本 特 有 の 自 然 環 境 が あ る と考 え る。 人 々 は 人 知 を越 え た 自然 に対 して,畏 敬 の念 を もっ て 祈 りを 捧 げ,そ れ で も容 赦 な く続 く豪 雨 や 旱 魃 に対 して は,恵 み を もた らす 神 とは別 の 悪 意 に満 ち た も の の存 在 を感 じた で あ ろ う。 日本 人 は神 々 や 自然 に通 じる もの と して死 者 を捉 え,祟 りを も た ら され な い よ う に,畏 敬 の 念 を も って,死 者 を葬 り,祀 って きた の で あ ろ う。 (3)不 死 感(生 の 継 続性 の 象徴 化) 死 の悲 哀 を癒 や し,死 の恐 怖 か ら人 間 を解 放 させ る もの の1つ は,「人 は死 ん だ ら ど うな る の か」 くむ とい う問 い に対 す る答 え を み つ け る こ とで あ っ た。 ベ ッ カー は 日本 人 は 昔 か ら明 快 で 尊 敬 す べ き死 生 観 を もっ て い る と し,そ の1つ は 「先 祖 は 死 ん で も身 近 に い る」 とい う信 念 で あ り,「『死 は 怖 くな い 』 と い う発 想 の 裏 に は,身 体 は朽 ち果 て て も 自分 を 自分 た ら しめ て い る心 は何 らか の 形 で 存 続 す る とい う気 持 ち が 潜 ん で い る よ う で あ る 」 と説 明 して い る。 こ う した死 後 の 自 己 ゆ ラ の 連 続 につ い て加 藤 は 「不 死 感」 とい う語 を用 い て い る。 「不 死 感 は,決 して単 な る死 の 否 定 で は ない の で あ る 。(中 略)一 不 死 感 は む し ろ,有 限 で あ る われ われ の個 人 的 な生 と,前 に あ っ た も の お よ び こ の後 に 来 る もの との 間 に,継 続 的 ・象 徴 的 関係 を 強 い て う ち た て よ う とす る,普 遍 的 ・内 的 な欲 求 の 反 映 で あ る 。 そ れ は死 とい う非 継 続 性 に もか か わ らず,継 続 性 を象 徴 化 し 一107一

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日本の現代の青年の死生観 とその教育課題(小 松万喜 子) よ う とす る模 索 で あ る」 とす る 。 前 述 した,人 間 の 死 後 の 非 肉 体 的 生 命 は① 輪 廻 転 生 す る,② 仏 ・祖 霊 と な っ て 死 後 の 世 界 に生 きる,③ 生 物 学 的 な無 限 の くさ り 一 自分 の 子 孫 の うち に 生 き 続 け て ゆ く,と い っ た 死 生 観 は ま さに この 不 死 感 で あ り,こ の よ う な微 妙 に 異 な る 考 え 方 が 混 在 してい る点 が 日本 人 の 特 徴 と もい え よ う。 (4)受 容 性 ・忍従 性 ・あ き らめ く け 和 辻 は,日 本 人 に は 「受 容 性 」 や 「忍 従 性 」 が み られ,そ れ に は 日本 の モ ンス ー ン的 な 風 土 が 関与 して い る と した 。 自然 は 人 間 に 恵 み も もた らす が,災 い も もた らす 。 しか し,そ の 災 い は続 くもの で は な い の で,そ の 辛 い 時 期 を堪 え忍 び,自 然 と折 り合 い をつ け る とい う生 き方 が, くるの 日本 人 の 精 神 的 な特 性 と して 現 れ た とい う。 加 藤 は,「 一 般 に 日本 人 の死 に対 す る 態 度 は,感 情 的 に は 『宇 宙 』 の秩 序 の,知 的 に は 自然 の 秩 序 の,あ き らめ を もっ て の 受 け 入 れ と い う こ と に な る」 と述 べ て い る 。 この 「自然 」 とい う表 現 は お そ ら く,和 辻 の 「風 土 」 と同 義 語 で は な い か と考 え る 。「宇 宙 」 につ い て は,「共 同体 の 継 続 」 とい う表 現 が あ る こ と な どか ら,自 然 環境 の み で は な く,家 族 や 共 同体 の 時 間 を超 え た 生 の 連 関 を含 ん だ,広 く人 間 を 取 り巻 くもの と考 え る 。 つ ま り,個 人 の 死 を宇 宙 の生 の 連 関(不 死 感)の なか で捉 え る こ とに よ り,「 あ き らめ」 を もっ くぐユラ て 死 を受 け 入 れ る と い う こ とで あ ろ う。 一 方,相 良 は,あ き らめ に は不 如 意 さ が あ る とい う。 死 の 悲 しみ を安 定 させ る た め に,日 本 人 は あ き らめ る とい う の で あ る 。 相 良 と加 藤 の 説 を ま と め る と,個 人 の 死 の悲 し さ を,不 死 感 を も っ て安 定 に も ち込 ん だ感 情 が 「あ き らめ 」 で あ る と い う こ とが で き よ う。 皿 日 本 の 現 代 の 青 年 の 死 生 観 1.青 年 期 の理 解 青 年 期 に は リ ンパ 系 ・脳 神 経 系 ・全 身 系 ・生 殖 器 系 の す べ てが 成 長 し,20歳 位 まで に 身体 的 発 達 が 完 了 す る。 こ の 時期 に は,第2次 性 徴,性 成 熟 とい う身 体 的 変 化 に伴 っ て,児 童 期 と は 異 な る性 意 識 が 芽 生 え る な ど の特 徴 が み られ る。 青 年 期 の 自我 の 変 化 と して は,抽 象 的 思 考, ロおラ 自己 を対 象 化 し得 る思 考,創 造 的 思 考 な ど も急 速 に発 達 し,想 像 力 が 拡 大 す る 。 そ して,身 体 の 成 長,性 成熟,社 会 性 の 発 達 な ど と あ い ま っ て,対 象 と して の 自分 をあ る程 度 客 観 化 し う る ほの くらの よ う に な る。 シ ュ プ ラ ンガ ー は,青 年 期 を 「自我 の発 見 」 の 時 期 と し,気 分 の 激 し く揺 れ 動 く 自己 を見 つ め,他 の事 物 や 人 間 か ら切 り離 され た独 自の 世 界 と して 自己 を見 出 し,そ こ で捉 え た 自己 そ の もの を世 界 の 中 で 生 か す 方 向性 を探 し求 め,自 我 を形 成 し よ う とす る 時 期 と考 え て い る 。 青 年 期 の 入 格 形 成 は,自 己 の う ち に 理 想 目標 を形 成 し,そ れへ の 到 達 を 意 図 す る 自発 的 動 機 づ けが 成 立 して くる 点 を特 色 とす る 。 しか も,そ の 目標 が,さ ら に調 整 さ れ,創 造 され, 種 々 の理 想 目標 と と もに体 系 化 さ れ る。 こ れが 「価 値 観 」 と よ ばれ る も ので あ る。 子 ど もか ら大 人 へ の 過 渡 期 に あ る青 年 は,安 全 を保 証 され て い た子 ど もの 地位 を失 う一 方 で,

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佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第28号(2000年3月) くらけ 新 しい 自己 に相 応 しい 地 位 は 確 立 して お らず,青 年 期 に み られ る矛 盾 した 両 極 端 の行 動 や 情 緒 不 安 定 ・自己 不 確 実 感 ・過 敏 さ な どは,こ の 帰 属 す べ き 集 団 の 不 安 定 さや よ るべ な さに 起 因 す くリ バ うの る とこ ろ が 大 き い。 異 質 で 未 知 な もの で あ る性 的 成 熟 現 象 も また 青 年 に混 乱 と不 安 を 引 き起 こ しや す い が,こ の動 揺 を 相 互 に支 え あ う のが 同 性 の 仲 聞 との 親 密 な 関係 で あ る。 自分 の 中 で 起 き て い る 変 化 が,す べ て の 人 間が 共 有 しう る体 験 で あ る こ と を,仲 間 と確 認 しあ う こ とで 危 機 を乗 り越 え る こ とが で きる 。 現 代 の 青 年 にお い て は,い じめ や 不 登 校 ・受 験 戦 争 な どに よ って, 心 を許 せ る友 人 関 係,仲 間 との 連 帯 感 が 少 な くな って お り深 刻 な 問題 で あ る。 2.日 本 の 現 代 の 青 年 の 死 生 観 (1)断 絶 感 ・悲 哀 感 の 変化 他 者 と の別 れ の 悲 しみ は,他 者 との 一 体 性 を認 め る と こ ろ に あ る 。 しか し,現 代 の 日本 に お い て は 核 家 族 化 ・都 市 化 ・受 験 競 争 ・い じめ ・不 登 校 な ど青 年 を取 り巻 く人 間 関係 は 変 化 して い る 。 コ ン ピュ ー タ な ど機 械 を 相 手 に す る 時 間が 増 え,電 話 の普 及,通 信 機 器 の 変化 に よ り会 くうヨラ 話 の あ り方 も変 わ った 。 筆 者 らの調 査 で は,高 校 生 は 死 を 「悲 しい」 とす る もの の,「 別 れ 」 と くユヨラ 捉 え る 者 は少 なか った 。 竹 田 の調 査 に お い て も,「 悲 しい 」,「怖 い 」 とい った 情 緒 的反 応 は 高率 くロ で あ っ た が,「 別 れ 」 に 触 れ た 者 は1割 に 満 た な か っ た 。Noppe&Noppeは ア メ リ カ の 学 生 が 他 者 と の 別 れ を 心 配 し て い る と 報 告 し て い る が,日 本 の 現 代 の 青 年 は,死 を 悲 し い と 感 じ て も, くらヨラ 他 者 と の別 離 は あ ま り強 く意 識 し て い な い 。 別 れ と比 べ て 多 か っ た の は,死 は 「い な くな る ・ 無 に な る」 とい う捉 え方 で あ り,日 本 の 現 代 青 年 が感 じて い る死 の 悲 哀 は,自 己 の 存 在 の 消 滅 に 向 け られ た もの が 強 い よ うで あ る。 (2)不 死 感 の減 弱 一無 に な る ・終 わ り 過 去 に お い て 日本 人 は 死 の 断 絶 感 ・悲 哀 感 を不 死 感 に よ っ て癒 や して きた 。死 後 の 生 の 連 続 くらロ 性 につ い て,現 代 の 日本 の 青 年 は どの よ う に捉 え て い る の で あ ろ うか 。 山 内 の 看 護 学 生 対 象 の くらゆ 調 査 で は,死 後 の 世 界 が あ る とす る者 は26%で あ った 。 井 関 の 調 査 で も死 の 世 界 に触 れ た 者 は 1割 程 度 で あ り,日 本 の 青 年 は死 後 の 生 につ い て 深 く捉 え て い ない こ とが うか が え る。 ベ ッ カ くお ラ ー は,若 い 日本 人 の世 界 観 や 死 生 観 は珍 し く特 殊 で あ る こ とを指 摘 し,「目で 見 え る もの しか 存 在 しな い とか,死 ん だ ら人 間 は完 全 に 消 え て し ま う とか,神 も仏 も霊 魂 もな い とい う よ うな 物 の 見 方 は,世 界 の あ らゆ る時 代 や 文 明 を遡 っ て 探 して み て も,ご く まれ な,少 数 意 見 で あ っ た 」 むの と述 べ て い る 。 大 峯 も現 代 人 の 感 受 性 に は現 世 しか な い こ と を指 摘 して い る。 現 代 の 日本 の青 年 は 強 い 現 世 志 向 を も ち,死 を 無 ・消 滅 と して 捉 え,悲 しみ は感 じて い る も の の,そ れ を癒 や し得 る よ うな 考 え方 は充 分 に は もっ て い な い こ とが推 察 さ れ る。 (3)霊 魂 の否 定,宗 教 意 識 の 希 薄 化 科 学 万 能 の現 代 社 会 に お い て は,科 学 で 説 明 で き な い 霊 魂 を肯 定 す る発 想 は生 まれ が た い 。 くゆ 渕 井 の 調 査 で は,短 大 生 の89.0%が 魂(霊)が 「あ る 」 と答 え て い る が,そ の 多 く は,現 世 に 一109一

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日本の現代 の青年 の死生観 とその教 育課題(小 松万喜子) 生 き る も の の 「心 」 を 表 現 す る もの で,「 死 後 の 霊 魂 」 に触 れ た者 は1割 程 度 で あ った 。 また, おの 伊 藤 は,宗 教 が 死 に対 す る態 度 の発 展 に 対 し影 響 を与 え る こ と を 「積 極 的 に支 持 す る」 者 は1 くらむ 割 程 度 で あ り,「 現 代 高 校 生 は非 宗 教 的 世代 で あ る」 と述 べ て い る。 筆 者 の 調 査 で も,高 校 生 の 多 くが 死 を 目前 に した 癌 末 期 患 者 に と って 宗 教 は 必 要 な い と考 えて い た 。 これ ま で複 数 の 宗 教 を都 合 の 良 い よ う に取 り入 れ て きた 過 去 の 日本 人 に対 して,現 代 の青 年 が 「宗 教 は不 要 」 と考 え る に至 っ た の は何 故 な の だ ろ うか 。 第 一 に は,神 や 仏 とい う科 学 で説 明 しが た い もの は信 じ られ な い こ と,第 二 に は,第 二 次 世 界 大 戦 後 の 日本 で は 思 想 信 条 の 自 由 を 強 調 す る あ ま り,こ とに学 校 教 育 で は宗 教 色 の あ る教 育 が 排 除 され て き た こ と,第 三 に は,家 族 形 態 の 変化 ・地 域 共 同体 の 崩 壊 に よっ て,こ れ まで 家 庭 や 地 域 で 行 わ れ て い た 宗 教 儀 礼 が 実 践 さ れ る こ とが 少 な くな っ た こ とが あ げ られ るの で は な い だ ろ うか 。 死 を前 に した 不 安 は人 類 に 共 通 の もの で あ る。 か つ て の 日本 人 が も っ て い た よ う な不 死 感 が 薄 れ,死 に よ って 全 て が 無 に な る と考 え る現 代 青 年 は,虚 無 と い う苦 悩 に対 す る救 い を ど こ に求 め る の だ ろ うか 。 (4)生 の は か な さ ・有 限 性 の 意 識 の低 下 生 に対 す る考 え 方 は死 に対 す る考 え方 と裏 表 一 体 で あ る。 現 代 の 青 年 は生 を どの よ う に捉 え  らおラ て い る の で あ ろ うか 。 筆 者 らの調 査 で は,「 生 」 は 「与 え られ た もの 」 と受 け身 的 な捉 え 方 を し て い るが,「 生 きる」 の は 「自分 の 意 志 で 」「楽 し く」「目標 に 向 か って 」「困 難 を乗 り越 え る 」 の だ くの とい う積 極 的 な捉 え 方 を して い た 。 荒 木 の報 告 で も,「 生 」 は 「自 己 を 向 上 させ る」「つ ら く困 難 で あ る 」「日々 を楽 し く過 ごす こ と」 とい う積 極 的 な捉 え方 が み られ た 。 青 年 が,生 き る こ と を 輝 き と希 望 を もっ て 捉 え て い る こ とは 当然 で あ ろ うが,そ こ に,生 命 の は か な さ に触 れ る もの くお ラ の少 な い こ とが気 が か りで あ る 。 井 関 は看 護 学 生 の 死 生 観 と して 最 も多 か った の は,「今 の 自分 に くお ラ とっ て死 は遠 い存 在 で あ り実 感 で きな い」 で あ っ た と し,板 谷 も命 の 尊 さ に対 す る希 薄 感 や 現 実 感 の 欠 如 を報 告 し て い る 。 これ らか らは,医 学 や 科 学 が 進 歩 した 現 代 に お い て は,古 代 の よ うな死 と隣 り合 わ せ の生 とい う実 感 や,生 命 の絶 対 的 有 限性 ・は か な さ の 自覚 が 弱 くな っ て い る こ とが 推 察 され る。 か つ て の 日本 人 は死 を意 識 した 時 に,人 間 の 生 命 を宇 宙 や 自然 と の 調 和 とい う拡 が りの 中 で 捉 え よ う と した。 これ を 「自己 拡 散 型 死 生 観 」 と呼 ぶ な ら ば,自 己 の 生 命 を他 者 や 宇 宙 に 連 関 させ て 考 え る こ とが で きず,死 を 自 己 の消 滅 と捉 え る現 代 の 日本 の 青 年 の 死 生 観 は 「自己 終 結 型 死 生 観 」 とい うこ とが で き よ う。 N死 生 観 形 成 を 支 援 す る 教 育 の 課 題 1.生 命 の 有 限性 の 自覚 現 代 の 日本 人 に,い ま大 切 な こ とは 人 間 の有 限 性 を知 り,人 知 を超 え た もの へ の畏 敬 の 念 を 取 り戻 す こ とで は な い か と考 え る。 生 命 の 重 さ,人 生 を 自分 で 切 り開 く とい っ た教 育 の み に力 を注 ぐの で は な く,生 命 の はか な さ,人 間 の有 限 性 につ い て もバ ラ ンス 良 く教 育 す る こ とが 重

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佛 教 大 学 大 学 院紀 要 第28号(2000年3月) 要 で あ ろ う 。 そ の た め に は,日 常 の 中 で の 挫 折 ・喪 失 ・別 れ な ど の 体 験 を 通 し て 子 ど も が 何 を くゆ 学 ぶ か を大 切 に し な け れ ば な ら ない 。 河 合 は,一 人称 の 死 は体 験 で き ない が,死 と再 生 の象 徴 的体 験 の繰 り返 しが,自 分 の 死 へ の 準 備 に つ な が る と し,そ の 自覚 の重 要 性 を指 摘 し て い る。 他 者 との 別 れ は,卒 業 ・引 っ 越 し ・失 恋,そ して 死 別 とい っ た 様 々 な形 で起 こっ て い る。 そ の 体 験 を通 し,子 ど も は そ の 発 達 段 階 な りに,生 命 の は か な さや 尊 さ,生 命 に 対 す る 自 己 の 責 任 な ど を学 ん で い くの で あ る。 2.宇 宙 論 的 不 死 観 の す す め 現 代 社 会 にお い て 再 構築 が 求 め られ るの は,生 を,過 去 一現 在 一未 来 とい う時 間軸,自 己 一 他 者 一社 会 一自然 とい う空 問軸 の 連 蘭 の な か で 捉 え る不 死 感 の視 点 で あ る。 人 間 は 一 人 で は生 き られ な い 。 必 ず 人 間 と人 間,人 間 と社 会 ・自然 とい う関 係 を通 して 互 い に 影 響 を 与 え あ い, 時 間 軸 にそ っ て 螺 旋 状 に 成 長 して い く。 そ う した大 き な宇 宙 の 連 関 の 中 で 考 え た と き,個 人 の 生 は,個 人 の枠 の 中 で は 完 結 し な い。「私 」 と い う個 人 は他 者 や 環 境 と無 関係 に存 在 す る こ とは で きず,「私」 が 生 きた 痕 跡 は 意 識 す る と し ない に 関 わ らず,宇 宙 を構 成 す る。 そ こ に生 の 無 限 が あ る。 日本 人 は 第 二 次 世 界 大 戦 以 前 の 国 家 神 道,滅 私 奉 公 の 思 想 に対 す る反 省 か ら,戦 後 は, 「個 人 」 の 尊 重 に 重 き を お き,「 社 会 」 や 「国 」 の た め とい う言 葉 を使 う こ とに 慎 重 で あ っ た。 そ の結 果,核 家 族 化 ・都 市 化 な どの 変 化 と相 まっ て,青 年 は も とよ り成 人 の 意 識 か ら も国 や 社 会 とい う視 点 は薄 れ て し ま っ た 。 個 入 は尊 重 され るべ きで あ るが,文 化 や社 会 の視 点 を欠 い た 個 人 の 幸 せ は あ り得 ない 。 個 人 と社 会,過 去 一現 在 一未 来 の視 点 を もっ た 生 き方 を模 索 す る こ とが,家 庭 ・学 校 ・地 域 社 会 な どの あ らゆ る 場 で 求 め られ る教 育 課 題 で あ ろ う。 不 死 感 は現 代 の 日本 の 社 会 の なか で は,感 覚 的 で 非 常 に不 安 定 な もの とな っ て い る 。 死 を単 な る 終 わ りとす る の で は な く,人 問 の 生 涯 を,そ れ を超 え る 永 遠 の なか に位 置 づ け る こ とが で き る よ うに,「不 死 感」 を 自己 の哲 学 と して の 「不 死 観」 の レベ ル に まで深 め て い くこ とが重 要 で あ る。 3.宗 教 教 育 再 考 私 た ち 人 間 は,折 り に触 れ て,存 在根 拠 や 生 き る意 味,逃 れ られ ぬ 老 い や 死 な ど人 間 の根 源 的 な 問 い か け を し,よ り どこ ろ を求 め る。 こ れ は 人 類 に 共 通 す る人 間 の特 性 で あ ろ う。 人類 は こ う した 問 い か け に 対 す る教 え をい くつ か の 宗 教 と して体 系 化 して きた 。 英 国 で は宗 教 教 育 は 公 立 学 校 で必 置 とな っ て お り,そ れ は 『聖 書 』 の 物 語 や キ リス ト教 の 教 義 をそ の ま ま教 え る こ とで は な く,生 き る意 味 を探 求 させ る こ とで あ り,具 体 的 に は,「 私 自身 」「私 と他 者 」「自然 」 と い う よ う に 自己 理 解 ・他 者 理 解 ・自然 理 解 か ら次 第 に 社 会 的 問題,さ ら に宗 教 的世 界 に 視 点 を くゆ 展 開 させ る もの で あ る とい う。 日本 に お い て も,宗 教 教 育 の再 考 が 必 要 な時 期 に きて い る と考 え る。 -111一

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日本 の 現 代 の 青 年 の 死 生 観 とそ の 教 育 課 題(小 松 万 喜 子) お わ り に 人 間 の 存 在 根 拠 や 生 き る 意 味,逃 れ ら れ ぬ 老 い や 死 な ど に 関 す る 根 源 的 な 問 い か け は 人 類 に 共 通 す る 特 有 の も の で あ る 。 し か し,そ の 具 体 的 な 死 生 観 は 歴 史 や 文 化 ・個 人 の 発 達 段 階 に よ っ て 異 な っ て い る 。 こ と に,人 間 の 生 や 死 の あ り よ う は,近 年,急 速 に 変 化 し て お り,現 代 ほ ど 死 生 観 が 問 題 に さ れ る 時 代 は な い 。 本 稿 で は,過 去 か ら現 代 へ と 連 な る 日 本 人 の 死 生 観 を 概 観 し,同 時 に,現 代 社 会 の 特 徴 を 明 確 に して 両 者 を 照 ら し合 わ せ な が ら,現 代 の 日 本 の 青 年 の 死 生 観 と そ の 教 育 課 題 を 明 ら か に し よ う と 試 み た 。 従 来 の 日 本 人 の 死 生 観 に つ い て は,風 土 ・自 然 環 境 の 側 面 お よ び 仏 教 ・儒 教 な ど の 宗 教 的 側 面 か ら 検 討 し,生 と 死 の 断 絶 感 と 悲 哀 感,死 の 恐 怖 一 死 者 に 対 す る 穢 れ 感 と畏 敬,不 死 感,受 容 性 ・忍 従 性 ・あ き ら め と い う4点 を 整 理 し た 。 こ れ に 対 し て,現 代 の 日本 の 青 年 の 死 生 観 は, 断 絶 感 ・悲 哀 感 の 質 的 変 化,不 死 感 の 減 弱,霊 魂 の 否 定 一 宗 教 意 識 の 希 薄 化,生 の は か な さ ・ 有 限 性 の 意 識 の 低 下 と い う傾 向 が み ら れ た 。 つ ま り,死 生 観 を 構 成 す る 基 本 的 な 枠 組 み そ の も の に は 大 き な 変 化 は な く,変 化 は そ の 質 や 重 み 付 け に お い て み ら れ た 。 こ う し た 変 化 に 対 す る 教 育 課 題 を 明 ら か に す る こ と の 難 し さ は,価 値 観 が 多 様 化 す る 現 代 に お い て,そ も そ も ど の よ う な 死 生 観 を 形 成 す る こ とが の ぞ ま し い の か と い う 指 針 が 不 明 瞭 で あ る 点 に あ る 。 現 在 お よ び 未 来 の 日 本 人 が ど の よ う に 生 や 死 と 向 か い 合 っ て い くべ き で あ る の か,社 会 と し て も真 剣 に 模 索 し て い か な く て は な ら な い 。 注 (1)中 西 信 男:人 間形 成 の 心 理 学,P.60-66,ナ カ ニ シヤ 出 版,1989. (2)厚 生 統 計 協 会:国 民 衛 生 の 動 向,44(9),P.51,1997. (3)荒 木 恵 津 子:終 末 期 看 護 に お け る学 生 の認 識 調 査 看 護 教 育 の 手 が か りを求 め て,看 護,35(10), P.55-65,1983. (4)渡 辺 美 千 代:看 護 学 生 に お け る 死 生 観 の 形 成 過程 を 考 察 す る 一3年 間 の 過程 を経 て,タ ー ミナ ル ケ ア, 7(6),P.470-476,1997. (5)井 関 智 美:死 の 認 識 と看 護 教 育 に 関 す る研 究,新 見 女子 短期 大 学 紀 要,5,P.43-57,1985. (6)菊 地 登 喜 子 他:死 の イ メー ジ とそ の 関連 要 因 につ い て の 因子 分 析 一看 護学 生 を対 象 と した 質 問 紙 調 査 に よる 研 究,看 護展 望,11(6),P.34-44,1986. (7)藤 原 宰 江 他:死 をめ ぐる認 識 と教 育 へ の展 望(そ の1)一 短期 大学 学生 の態 度 とそ の解 析 一,岡 山県 立 短 期 大 学 紀 要,32(2),P.72-80,1988. (8)渡 邊 ふ み 子 他:看 護 学 生 の 生 命 観 に関 す る調 査 研 究(第 一 報)一 入 学 時 の生 命 に対 す る 考 え 方 一,川 崎 医療 短 大 紀 要,8,P.41-47,1988. (9)今 井 考 太 郎:死 別体 験 の 意義 一 「死 」 の心 理 と教 育(IV)一,龍 谷大 学 論 集,441,P.2-20,1991. (10)渕 井 喜 美 恵 ・前 田博 子:「 死 」 の イ メー ジ につ い て 一短 大 生 の入 学 時 に お け る 意識 一,北 海 道 女 子 短 期大 学 研 究紀 要,26,P.65-73,1990. ⑳ 水 戸 美 津子 ・渡会 近 代:死 に 関す る意 識 調 査 一短 大 ・大 学 生 を対 象 と して 一,日 本 看 護研 究 学 会 雑 誌, 11(1,2),P.54-55,1988.

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佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第28号(2000年3月) (12)小 松 万 喜 子:死 別 体 験 時 の 感 情 と そ の 感 じ 方 に 影 響 す る 要 因 に 関 す る 検 討 一看 護 学 生 の 過 去 の 死 別 体 験 調 査 よ り 一,死 の 臨 床,18(2),P.206,1995. (13)竹 田 由 美 子 ・太 田 重 二 郎:養 護 教 諭 志 望 学 生 に 対 す る 死 へ の 準 備 教 育,メ デ ィ カ ル ・七 ユ ー マ ニ テ ィ, 3(4),P.88-94,1988. (14)井 関 智 美:学 生 と そ の 両 親 の 老 人 意 識,終 末 期 看 護 に 対 す る 意 識,及 び 老 人 自 身 の 死 に 対 す る 意 識 に つ い て の 調 査,新 見 女 子 短 期 大 学 紀 要,10,P.37-49,1989. (15)厚 生 統 計 協 会:国 民 衛 生 の 動 向,44(19),P.41,1997. ⑯ 前 掲(15),P.68. ⑳ 田 村 健:二:家 族 一社 会 の 鎖 ・夫 婦 親 子 の 鎖,P.34,金 子 書 房,1989. (is)櫛 田 磐 ・土 橋 美 歩:視 聴 覚 教 育,P.39-42,学 芸 図 書,1989. (19)ジ ェ ー ン ・ハ ー リ ー:滅 び ゆ く 思 考 カ ー 子 ど も た ち の 脳 が 変 わ る,P.72-77,P.123-176,大 修 館 書 店,1992. 2◎ 小 此 木 啓 吾:対 象 喪 失 一悲 し む と い う こ と,P.196-198,中 公 新 書,1986. ⑳ 和 辻 哲 郎:風 土 一 入 間 学 的 考 察,P.7-24,岩 波 書 店,1969. (22)鈴 木 秀 夫:自 然 環 境 と 日 本 人(江 上 波 夫 編:日 本 民 族 と 日 本 文 化,P.4-11,山 川 出 版 社,1989.所 収) ㈲ 前 掲 ⑳,P.63-120. (24)石 田 英 一 郎:東 西 抄 日本 ・西 洋 ・入 間,P.47-56,筑 摩 書 房,1967. ㈱ 湯 浅 泰 雄:古 代 日 本 人 の 生 と 死(田 村 芳 朗,源 了 圓 編:日 本 に お け る 生 と 死 の 思 想 一 日本 人 の 精 神 史 入 門 一,P.5-6,有 斐 閣,1977.所 収) (26)山 本 俊 一:死 生 学 一他 者 の 死 と 自 己 の 死,P.32-33,医 学 書 院,1996. 吻 大 峯 顯:往 相 還 相 の 生 死 学 一 イ ザ ナ ギ か ら 親 鸞 へ 一,仏 教,27,P.145-153,1994. 衂 上 田 賢 治:日 本 神 話 に み る 生 と 死,歴 史 読 本,40(8),P.96-106,1995. ㈲ 佐 々 木 高 明:日 本 文 化 の 基 層 を 探 る 一 ナ ラ 林 文 化 と 照 葉 樹 林 文 化 一,P.1-38,日 本 放 送 出 版 協 会, 1993. (30)関 根 文 之 助:日 本 人 の 精 神 史 と 宗 教,P.52-71,川 島 書 店,1978. ⑳ 加 地 伸 行:儒 教 と は 何 か,P.12,中 公 新 書,1990. (32)前 掲(31),P.54-69. (33)前 掲(21),P.29-43. 図 小 松 奈 美 子:新 版 生 命 倫 理 の 扉 一生 と 死 を 考 え る 一,P.131-144,北 樹 出 版,1998. (35)前 掲(31),P.170-177. (36)申 村 雄 二 郎:日 本 文 化 に お け る 罪 と罰,P.28,新 潮 社,1998. ㈱ 由 木 義 文:日 本 仏 教 思 想 史,P.8,世 界 聖 典 刊 行 協 会,1979. (38)前 掲(30),P.92。 (39)速 水 侑:歴 史 に み る 日 本 人 と 仏 教,P.17,放 送 大 学 教 育 振 興 会,1990. ㈹ 前 掲(31),P.220-224. ㈹ 相 良 亨:日 本 人 の 死 生 観,P.16-19,ぺ り か ん 社,1984. (42)岸 本 英 夫:死 を 見 つ め る 心 一 ガ ン と た た か っ た 十 年 間 一,P.28-34,講 談 社,1973. (43)前 掲(31),P.6. 幽)梅 原 猛:怨 霊 と鎮 魂 の 思 想(田 村 芳 朗,源 了 圓 編:日 本 に お け る 生 と 死 の 思 想,P.17-45,有 斐 閣, 1977.所 収) (45)カ ー ル ・ベ ッ カ ー:死 の 質(ク オ リ テ ィ ・オ ブ ・デ ス)と は 何 か,仏 教,27,P.154-166,1994. (46)加 藤 周 一,M.ラ イ シ ュ,RJ.リ フ ト ン:日 本 人 の 死 生 観P.2-26,岩 波 書 店,1977. -113一

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日 本 の 現 代 の 青 年 の 死 生 観 と そ の 教 育 課 題(小 松 万 喜 子) ㈲ 前 掲(46),P.209-215. (48)坂 田 一 ・岡 本 夏 木 ・一 谷 彊 ・神 戸 忠 夫:青 年 期 の 理 解 一 人 格 形 成 の 心 理 学 一,P.3,福 村 出 版,1967. (49)鈴 木 康 平 ・松 田 惺 編:現 代 青 年 心 理 学,P.11,有 斐 閣,1987. ㈹ シ ュ プ ラ ン ガ ー,E著,原 田 茂 訳:青 年 の 心 理,P.26-45,協 同 出 版,1963. (51)久 世 敏 夫:青 年 の 心 理 と 教 育,P.20,放 送 大 学 教 育 振 興 会,1992. (52)前 掲(48),P.165-168. ㈹ 小 林 美 佐 恵 ・小 松 万 喜 子 ・西 垣 信 吾:末 期 医 療 に 関 す る 意 識 調 査 一 一 般 社 会 人 と 高 校 生 の 比 較 一,死 の 臨 床,20(2),P.168,1997. (54)IlleneC.Noppe,IloydD.Noppe:Evolvingmeaningofdeathduringearly,middle,andlateradolescence, DeathStudies,21,253-275,1997. (55)山 内 多 恵 子 ・小 田 正 枝:看 護 基 礎 教 育 に お け る 死 生 観 育 成 の 一 考 察 一 タ ー ミ ナ ル ケ ア に つ い て の 意 識 調 査 一,看 護 展 望,15(4),P.491-497,1990.・ ⑯ 井 関 智 美:死 の 認 識 と看 護 教 育 に 関 す る 研 究(2),新 見 女 子 短 期 大 学 紀 要,9,P.81..,1988. ㈱ 伊 藤 孝 治 他:高 校 生 に お け る 死 生 観 の 実 態,愛 媛 県 立 医 療 技 術 短 期 大 学 紀 要,1,P.127-140, ... 働 小 松 万 喜 子 ・小 林 美 佐 恵 ・西 垣 信 吾:高 校 生 と一般 社 会 人 の 「生 」 と 「死 」 に 関す る意 識,死 の 臨床, 21(2),P.183,1998. (59)板 谷 裕 子:介 護 福 祉 士 養 成 教 育 にお け る生 命 倫 理 に 関 す る 意 識 調 査,死 の 臨床,21(1),P.55-63, 1998. ㈹ 河 合 隼 雄:「 死 生観 」 の危 機,世 界,623,P.135-144,1996. (61)柴 沼 晶 子:宗 教 教 育 と心 の教 育 一宗教 教 育 再 考,教 育 と医学,46(4),P.53-59,1988. (こ ま つ ま き ご 教 育 学 研 究 科 生 涯 教 育 専 攻 修 士 課 程 修 了 ・山 形 大 学 医 学 部 看 護 学 科) 1999年10月15日 受 理

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