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中村 金子 福間 小林 毛和種は 120 日および 151 kg で導入した. 供試牛はイタリアンライグラス [ 品種 : さちあおば ( 極早生 ), 優春 ( 早生 ), ナガハヒカリ ( 中生 ), ヒタチヒカリ ( 晩生 ), ジャンボ ( 晩生 ) ならびにアキアオバ Ⅲ( 極晩生 ) の

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緒  言

 ‘ 周年放牧肥育技術 ’ を用いて生産される生産物の 特徴は,①生草由来の高濃度のβ - カロテンの蓄積に より枝肉および内臓脂肪の外観は黄色化すること(中 村ら 2010,2013),②慣行肥育(畜舎でウシを飼養し 多量の輸入穀物飼料を投入する現行の肉用牛生産方 法)牛肉と同程度の抗酸化力(oxygen radical absor-bance capacity:ORAC 値)および味(味覚センサー による評価)を有すること(中村ら 2011),③コレス テロール含量と n-6/n-3 比(脂肪酸組成の多価不飽和 比率)が低く,カルノシンなどの機能性成分含量が多 い傾向にあること(中村ら 2012)などである.一方, 周年放牧肥育牛肉は供試するウシの品種によって産肉 量や肉質に違いが出ることが明らかになった.例えば, 褐毛和種は黒毛和種に比べて周年放牧肥育後の産肉量 が多く,部分肉(胸最長筋および半腱様筋)中の脂質 含量が低い傾向にある.また,褐毛和種は黒毛和種に 比べて胸最長筋における脂肪融点が 5℃ほど有意(P < 0.05)に高く,遊離アミノ酸の中でもアルギニン含 量が有意(P < 0.05)に高かった.加えて,分析型パ ネルを用いた官能評価(半腱様筋を使用)では,肉色 について両品種に有意差(P < 0.05)が見られた(中 村ら 2013).飼養期間が 3 ヵ月間ほど短く産肉量も多 いことから周年放牧肥育技術に対する適性は黒毛和種 よりも褐毛和種で高いと推察される.しかし,褐毛和 種の肉質は黒毛和種に比べて脂の口溶けが悪い傾向に あり,加えて,苦味系の遊離アミノ酸であるアルギニ ンが多く含まれるなどの特徴があるため,流通段階で 熟成処理を行うなどの肉質の改良が必要と考えられ る.  一般的に牛肉は熟成処理により肉質が変化すること が明らかにされている.例えば,ホルスタイン種の最 長筋を冷蔵熟成して経時的に調査すると,肉の硬さの 改善,遊離アミノ酸含量の増加などに伴い官能評価に おける総合評価値が上昇した(Shimada ら 1992;柳 原ら 1995).また,肉の硬さの改善には筋線維構造 の脆弱化などの筋肉組織の変化を伴うが(Shibata と Yasuhara 1996),この変化は結合組織の主成分であ るコラーゲン含量が高い筋肉部位ほど進行が遅いこと が示唆されている(Negishi と Yoshikawa 1993).一 方,周年放牧肥育牛肉を用いて熟成による肉質の変化 を調査した報告は極めて少ない.前報では褐毛和種の 周年放牧肥育牛肉を用いて,冷蔵熟成が半腱様筋の肉 質に及ぼす影響を調査した.その結果,冷蔵熟成 3 週 間目では剪断力価の有意(P < 0.05)の低下や旨味の 向上(味覚センサーによる評価)が見られた(中村ら 2011).しかし,最長筋などの他の筋肉部位での検討 は行われていない.  本研究では離乳直後の褐毛和種および黒毛和種去勢 雄牛を用いた周年放牧肥育試験を行い,生産した周年 放牧肥育牛肉について品種による肉質の比較を行うと 共に,褐毛和種については熟成による肉質の変化を検 討する.

材料および方法

₁.供試牛および飼養方法  供試牛は 2011 年 11 ~ 12 月に熊本県内の農家で出 生した褐毛和種 [Japanese Brown (Kumamoto)] 雄子 牛 3 頭(種雄牛:菊光丸)および同年 10 月に熊本県 および福岡県内の農家で出生した黒毛和種(Japanese Black)雄子牛 3 頭(種雄牛:安茂勝)を用いた.離乳後, 褐毛和種は平均日齢 97 日および平均体重 109 kg,黒

要 約

   ‘ 周年放牧肥育技術 ’ で飼養した褐毛和種と黒毛和種去勢雄牛(各 3 頭)の肉質比較を行い,褐毛和 種については熟成による肉質の変化を調査した.リブロース(胸最長筋)における肉質(破断強度,pH,水分含量, 色調,過酸化物価,大腸菌群数,一般生菌数,遊離アミノ酸含量,タウリンならびにカルノシン含量)を調査した ところ,黒毛和種は褐毛和種に比べて過酸化物価が有意(P < 0.05)に低かった.また,褐毛和種について熟成方 法(冷蔵および氷温熟成)が肉質に及ぼす影響について調査したところ,遊離アミノ酸含量は冷蔵および氷温熟成 後に有意(P < 0.05)に増加したが,カルノシン含量は冷蔵熟成後のみ有意(P < 0.05)に減少した. 日本暖地畜産学会報 58(2):209-215, 2015

キーワード

:褐毛和種,黒毛和種,周年放牧肥育牛肉,熟成,肉質

一般論文

周年放牧肥育牛肉の特徴ならびに熟成による肉質の変化

中村好德・金子 真・福間康文

1

・小林良次

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 1株式会社 氷温研究所 (受付 2015 年 3 月 27 日:受理 2015 年 6 月 1 日)

(2)

毛和種は 120 日および 151 kg で導入した.供試牛は イタリアンライグラス [ 品種:さちあおば(極早生), 優春(早生),ナガハヒカリ(中生),ヒタチヒカリ(晩 生),ジャンボ(晩生)ならびにアキアオバⅢ(極晩 生)の混播 ] 放牧地(25 ~ 60 a を最大で 6 牧区)で の冬期放牧 1 回目 [107 ~ 134 日間(褐毛和種)およ び 141 日間(黒毛和種);2012 年 2 月から ],パリセー ドグラス(品種:MG5)放牧地(25 ~ 50 a を最大で 3 牧区)での夏期放牧 1 回目 [109 日間(褐毛和種お よび黒毛和種);2012 年 7 月から ],冬期放牧 2 回目 [246 日間(褐毛和種および黒毛和種);2012 年 11 月から ], 夏期放牧 2 回目 [138 日間(褐毛和種および黒毛和種); 2013 年 7 月から ],冬期放牧 3 回目 [126 日間(褐毛 和種)および 98 日間(黒毛和種);2013 年 11 月から ] の輪換放牧を経て,褐毛和種は 2014 年 4 月に平均体 重 747 kg および平均日齢 848 日(約 28 ヵ月齢)で, 黒毛和種は同年 3 月に平均体重 629 kg および平均日 齢 862 日(約 28 ヵ月齢)で出荷された. ₂.調査項目と調査方法 (1)と畜および材料筋肉の前処理  供試牛はゼンカイミート株式会社(熊本県球磨郡錦 町)でと畜後,公益社団法人 日本食肉格付協会の格 付専門員による牛枝肉格付評価を受けた.その後,日 本食肉流通センター編(2002)に準拠して部分肉に分 割(トリミング含む)し,秤量後,真空パック包装し て 0 ~ 2℃で冷蔵保存した.  真空パック包装された部分肉(リブロース)は,と 畜後 5 日目(熟成処理なし;褐毛和種および黒毛和種), と畜後 45 日目(熟成処理あり;褐毛和種のみ)に分 析に供した.また,熟成処理は真空パック包装された 部分肉の状態で行い,冷蔵熟成は 2.0℃で,氷温熟成 は -1.0℃でそれぞれ処理(湿度や風力などは制御して いない)した.冷蔵熟成はインキュベーター(MIR-153, 三洋電機,大阪)で,氷温熟成は株式会社 氷温研究 所(米子)のオリジナルタイプ(プレハブ型,日本軽 金属,東京)を用いた. (2)肉質調査  部分肉(リブロース)から胸最長筋(M. longissi-mus thoracis)を摘出し,筋膜などの表層部を約 1 cm 除去した後,分析に供した.肉質調査は家畜改良 センター編(2010)を参考にして行われた.また,と 畜から肉質調査までの間に材料筋肉の凍結は行わな かった. ① 氷結点  材料筋肉に温度センサーを挿入して,-25℃まで冷 却した際の温度変化を電子式記録計(SKR-100PB, 佐藤計量器製作所,東京)で測定して,得られた冷却 曲線より氷結点を求めた. ② 物性  材料筋肉を筋繊維に対して垂直に 1 cm 厚にカット しスライス肉を作製し,ホットプレートを用いて表裏 を 200℃でそれぞれ 1 分間加熱後,室温で 5 分間放冷 した.その後,レオメーター(RT-3002D,レオテック, 東京)を用いて円形プランジャー(直径 5 mm)を 6 cm/ 分の速度で挿入して得られた波形より破断強度 を算出した. ③ pH  卓上型 pH メータ(F-52,堀場製作所,京都)を用 いて,ホモジナイズした材料筋肉に電極を挿入して pH 値を測定した. ④ 水分含量  材料筋肉 3 g をアルミカップに入れ,135℃で 2 時 間加熱乾燥(常圧加熱乾燥法)して水分含量を測定し た. ⑤ 色調  ②で作製したスライス肉を用いて,測色色差計(Σ 80,日本電色工業,東京)を用いて表面色の L 値,a 値ならびに b 値を測定した. ⑥ 過酸化物価  材料脂肪から Folch 法を用いて脂質を抽出後(Folch ら 1957),日本油脂化学協会法で過酸化物価を測定し た(菅原と前川 2000). ⑦ 大腸菌群数および一般生菌数  寒天平板法で測定した(菅原と前川 2000).標準寒 天培地(極東製薬工業,東京)を用いて,培養条件は 大腸菌群数については 37℃で 24 時間,一方,一般生 菌数については 37℃で 48 時間とした. ⑧ 遊離アミノ酸,タウリンならびにカルノシン含量  遊離アミノ酸[アラニン(Ala),アルギニン(Arg), アスパラギン酸(Asp),システイン(Cys),グリシ ン(Gly), イソロイシン(Ile),ロイシン(Leu),リ ジン(Lys),メチオニン(Met),フェニルアラニン (Phe),プロリン(Pro),セリン(Ser),スレオニン (Thr),チロシン(Tyr)ならびにバリン(Val)]な らびにタウリン(Tau)は次の方法で測定溶液を作製 した.即ち,材料筋肉 2 g に 10%塩素酸溶液 10 mL を加えて 10,000 回転で 1 分間混合し,4℃で 30 分間 静置後に濾過した.さらに,濾紙上の残渣に 5%塩素 酸溶液 10 mL を加えて濾過し,この手順を 4 回繰り 返した.濾過溶液を水酸化カリウムで中和し 4℃で一 晩静置した.その後,100 mL に定容してマイクロフィ ルター(ポアサイズ 0.45 µm)で濾過したものを測 定溶液とした[オルトフタルアルデヒド(OPA)法 用測定溶液].一方,上記以外の遊離アミノ酸[グル タミン(Gln),グルタミン酸(Glu)]ならびにカル ノシン(Car)は次の方法で測定溶液を作製した.即 ち,材料筋肉 10 g に最終濃度が 80%になるようにエ タノール溶液 40 mL を加えて,85℃湯浴中にて還流 抽出を 20 分間行った.得られた溶液を 100 mL メス フラスコに濾過し,残渣に 80%エタノール溶液を 40 mL を加えて再び還流抽出後に濾過した.さらに残渣 を 80%エタノール溶液で洗浄しながら 100 mL に定 容した.抽出溶液に等量の 3%スルホサリチル酸溶液

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を加えて,除蛋白後,マイクロフィルター(ポアサイ ズ 0.45 µm)で濾過して測定溶液とした[フェニルチ オカルバミル(PITC)法用測定溶液].  PITC 法用試料溶液 20 µL を 1.5 mL マイクロチュー ブに分取して凍結乾燥した後,エタノール / 蒸留水 / トリエチルアミン混合液(2/2/1)20 µL を加えて 撹拌し凍結乾燥した.その後,エタノール / 蒸留水 / トリエチルアミン /PITC 混合液(7/1/1/1)20 µL を加えて撹拌して室温で 20 分間静置後,凍結乾燥 した.最後に,移動相溶液 A[Acetonitrile/60 mM Acetate buffer(pH 6.0)(6/94)]を 1 mL 加えてマ イクロフィルター(ポアサイズ 0.45 µm)で濾過して 分析に供した.分析操作条件は,OPA 法については 機 種(Shimadzu LC-20A), 検 出 器[Shimadzu RF-10AXL(Ex 348 nm,Em 450 nm)],カラム[Shim-Pack

ISC-07/S1504(Na)], カ ラ ム 温 度(55 ℃), 移 動 相 [Citric acid buffer(pH 3.22)],反応液(A:NaClO,

B:OPA),流量(0.3 mL/min)ならびにデータ処理 装置(Shimadzu C-R8A)とした.また,PITC 法に ついては機種(Shimadzu LC-10A),検出器[Shimadzu SPD-6AV(UV 254 nm)],カラム[Wakopack WS-PTC(直径 4.0 × 200 mm)],カラム温度(40℃), 移 動 相 A お よ び B[Acetonitrile/60 mM Acetate buffer(pH 6.0)(60/40)],流量(1.0 mL/min)なら びにデータ処理装置(Shimadzu C-R7A Plus)とした. (3)統計処理

 肉質データは品種および熟成による比較を行い,一 元配置分散分析と Bonferroni による多重比較を用い た.統計処理ソフトは IBM SPSS Statistic 10.0J for Windows(IBM,Chicago,USA)を用いた.  本研究は九州沖縄農業研究センターの動物実験委員 会の承認を得て,動物福祉に配慮し動物実験指針に 沿って行われた.

結果および考察

 周年放牧肥育牛(褐毛和種および黒毛和種)のリブ ロース(胸最長筋)における肉質の特徴について表 1 および 2 に示した.破断強度,pH,水分含量,色調, 大腸菌群数ならびに一般生菌数については褐毛和種と 黒毛和種の間で違いはなかったが,過酸化物価は褐毛 和種の方が有意(P < 0.05)に高かった(表 1).また, 褐毛和種について熟成処理の違いによる肉質の変化を 調べたところ,冷蔵熟成では 3 頭のうち 1 頭で大腸菌 が検出された(表 1).Car 含量が冷蔵熟成肉で有意 に減少し(P < 0.05)熟成処理方法による相違が見ら れた(表 2).  周年放牧肥育牛肉の品種差については,褐毛和種は 黒毛和種に比べて遊離アミノ酸(特に Arg)含量や 脂肪融点が高い傾向があるが,食感や色調などの調理 特性に関わる項目は同程度であることが明らかにさ れている(中村ら 2013).本研究では特に褐毛和種は 黒毛和種に比べて過酸化物価が有意(P < 0.05)に高 く,熟成処理によりさらに高くなる傾向があることが 明らかになった(表 1).過酸化物価とは油脂中に含 まれる過酸化物の量を示し油脂の劣化の程度を示す指 標として用いられる(今堀と山川 1998).褐毛和種の 過酸化物価(2.4 meq/kg)が黒毛和種(1.0 meq/kg) よりも熟成処理前にすでに有意(P < 0.05)に高かっ た(表 1)原因は不明だが,例えば脂肪融点や脂肪酸 組成の品種差が影響しているのかもしれない(中村ら 2013).一方,食品等の規格基準によると過酸化物価 については食肉製品における規制値はないが(厚生労 働省 1959),例えば他の食品(即席めん類)の規制値 である ‘30 meq/kg 以下 ’ と比べても本研究の結果(1.0 ~ 3.7 meq/kg)は明らかに低かった(表 1).また, 大腸菌群数については加工・調理前の原材料肉(部分 肉の状態)における規制値はない(食肉は流通後に加 熱調理されることを想定しているため)が,例えば非 加熱食肉製品で定められている ‘100 CFU/g 以下 ’ と 分析項目  破断強度 (g) 586.5 ±33.1 500.4 ± 80.0 441.8 ± 71.2 510.6 ±133.4  pH 5.40 ±0.01 5.46 ± 0.04 5.46 ± 0.01 5.44 ±0.04  水分含量 (%) 63.0 ±3.6 64.6 ± 2.0 63.0 ± 4.9 62.7 ±2.7  色調  L値 35.7 ±2.1 36.6 ± 2.5 37.4 ± 0.1 34.7 ±1.9  a値 16.6 ±0.2 16.2 ± 0.8 16.0 ± 0.2 17.4 ±0.6   b値 9.0 ±0.8 8.6 ± 0.9 8.9 ± 0.1 8.9 ±0.6

2.4 ±0.3a 3.7 ± 0.3a 3.2 ± 0.7a 1.0 ±0.4b

10 ±0 10 ±0 熟成なし 氷温熟成 陰性(2頭), 品種および熟成処理による比較(一元配置分散分析とBonferroniによる多重比較;a-b:P < 0.05). 陰性(3頭) 陰性(3頭) 熟成なし ~5.7×104 褐毛和種 冷蔵熟成 3頭の平均値 ± 標準偏差.  一般生菌数 (CFU/g)  大腸菌群数 (CFU/g)  過酸化物価 (meq/kg) 黒毛和種 陰性(3頭) 10(1頭) 2.0×103 1.5×103 ~3.8×104 表1.周年放牧肥育牛のリブロース(胸最長筋)における肉質の比較ならびに熟成による変化

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比べても本研究の結果(陰性~ 10 CFU/g)は明らか に低かった(表 1).従って,本研究における過酸化 物価および大腸菌群数の値は公衆衛生上の問題となる レベルではないと考えられる.  周年放牧肥育された褐毛和種および黒毛和種の肉の 調理特性(食感計測および色調分析)についても比較 検討されているが両者に明らかな違いは報告されてい ない(中村ら 2013).本研究では食感計測として破断 強度を測定したが,褐毛和種および黒毛和種は同程度 の値であり,色調分析についても違いは見られなかっ た.しかし,熟成処理により牛肉中の破断強度は低く なる傾向にあり,特に氷温熟成で低い傾向にあった (表 1).牛肉の硬さは脂肪含量と負の相関を,結合組 織の主成分であるコラーゲン含量と正の相関を有する ため(Nakamura ら 2010),筋肉組織中のコラーゲン 線維構造などの筋肉組織学的な変化が熟成処理方法に より異なる可能性がある.また,周年放牧肥育され た褐毛和種去勢雄牛(約 25 ヵ月齢)の半腱様筋(M. semitendinosus;ソトモモの一部)における剪断力 価は,3 週間の冷蔵熟成(0 ~ 2℃)処理後に有意(P < 0.05)に低下したことからも(中村ら 2011),放牧 肥育牛肉に懸念される肉の硬さは熟成処理によりある 程度は改善できるのかもしれない.  周年放牧肥育牛(褐毛和種)の胸最長筋における遊 離アミノ酸,タウリンならびにカルノシン含量の熟成 処理による肉質の変化を表 2 に示した.遊離アミノ 酸総量は熟成処理により 2 倍以上に有意(P < 0.05) に増加し,また,各アミノ酸では Ala,Arg,Asp, Glu,Gly,Ile,Leu,Lys,Met,Phe,Pro,Ser, Tyr,Val 含量が有意(P < 0.05)に増加した(表 2). しかし,Ala,Cys,Lys ならびに Car 含量は熟成処 理方法により増減量が異なり,特に Car 含量は冷蔵 熟成処理のみが有意(P < 0.05)に減少した(表 2). 周年放牧肥育牛の Car 含量は他の和牛肉に比べても 高い傾向にあり,周年放牧肥育牛肉の特徴の一つと 考えられている(中村ら 2012).動物の骨格筋に多 く含まれる Car の生理的機能については不明な部分 も多い(今堀と山川 1998;近藤ら 2005).ウシでは 筋肉部位によって含量に違いがある(渡辺ら 1989). また,放牧飼養により増加するため(常石ら 2006, 2008),ウシでは骨格筋の運動機能に関与するものと 考えられる.本研究では氷温熟成処理は冷蔵熟成処理 に比べて遊離アミノ酸総量が同程度であったにも関わ らず,Car 含量が有意(P < 0.05)に高かったことか らも,氷温熟成処理は熟成期間中の筋肉細胞の自己消 化の過程で Car の消費を抑制する効果があるのかも しれない.一方,周年放牧肥育牛の胸最長筋を用い て 0 ~ 2℃で 16 日間の冷蔵熟成処理を行ったところ, 褐毛和種は黒毛和種に比べて特に苦味を有する Arg 含量が高い傾向(23.6 mg/100g)にあった(中村ら 分析項目  遊離アミノ酸含量† (mg/100g)   総量 199.1 ± 37.6a 440.4 ± 45.0b 403.9 ± 31.3b  Ala 27.1 ± 4.4a 46.8 ± 8.9b 42.8 ± 2.8ab  Arg 6.0 ± 0.3a 13.8 ± 1.8b 12.0 ± 0.7b  Asp 0.6 ± 0.2a 4.2 ± 0.4b 3.9 ± 0.9b  Cys 3.2 ± 0.3 2.5 ± 1.5 3.4 ± 1.2  Gln 72.3 ± 25.6 116.4 ± 14.1 111.0 ± 21.7  Glu 4.6 ± 0.7a 16.0 ± 1.7b 12.9 ± 0.9b  Gly 7.0 ± 1.0a 14.1 ± 1.5b 12.8 ± 0.6b  Ile 5.2 ± 0.4a 19.5 ± 0.6b 18.1 ± 1.0b  Leu 9.8 ± 0.4a 35.8 ± 1.4b 33.5 ± 2.2b  Lys 6.5 ± 1.2a 22.4 ± 1.1b 18.8 ± 1.1c  Met 5.5 ± 0.4a 14.2 ± 1.2b 14.0 ± 0.3b  Phe 6.0 ± 0.4a 22.2 ± 1.0b 20.3 ± 1.1b  Pro 2.5 ± 0.4a 5.7 ± 0.8b 4.5 ± 0.4b  Ser 6.2 ± 1.1a 22.3 ± 2.7b 19.8 ± 1.4b  Thr 22.8 ± 6.9 38.1 ± 8.8 34.3 ± 3.6  Tyr 7.2 ± 0.5a 21.4 ± 1.8b 20.2 ± 1.4b  Val 6.8 ± 0.4a 24.8 ± 1.2b 21.6 ± 1.8b  Tau† (mg/100g) 8.6 ± 2.3 10.9 ± 2.7 10.7 ± 2.9  Car† (mg/100g) 425.8 ± 11.1a 357.1 ± 14.0b 405.0 ± 14.3a

熟成処理 † アラニン(Ala),アルギニン(Arg),アスパラギン酸(Asp),システイン (Cys),グルタミン(Gln),グルタミン酸(Glu),グリシン(Gly),イソ ロイシン(Ile),ロイシン(Leu),リジン(Lys),メチオニン(Met), フェニルアラニン(Phe),プロリン(Pro),セリン(Ser),スレオニン (Thr),チロシン(Tyr),バリン(Val),タウリン(Tau)ならびにカルノ シン(Car). 熟成処理による比較(一元配置分散分析とBonferroniによる多重比較;a-b-c:P < 0.05). なし 冷蔵 氷温 3頭の平均値 ± 標準偏差. 表₂.周年放牧肥育牛(褐毛和種)のリブロース(胸最長筋)における熟成処理による 肉質の変化

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2013).しかし,本研究の Arg 含量は熟成処理前(6.0 mg/100g)および熟成処理後(12.0 ~ 13.8 mg/100g) ともに前報(中村ら 2013)の結果よりも低い傾向に あり,周年放牧肥育牛肉の遊離アミノ酸組成は熟成処 理方法や熟成期間によっても変化する可能性があると 考えられた.また,遊離アミノ酸は個々のアミノ酸が それぞれの ‘ 基本味 ’ を有するが,アミノ酸の組み合 わせによっても味が変化するため(山野 2003),今後, 熟成処理に伴う物理化学的な肉質調査と官能評価を組 み合わせた品質評価を行い,最適な熟成処理期間など についても追究する必要がある.  本研究で用いた‘氷温’(登録商標番号:第1487248号) は株式会社氷温研究所(鳥取県米子市)が研究開発を 行っており,これまでに様々な食品について実用化さ れてきた(山根ら 1982).特に果物などについての報 告が多いが(加藤ら 2005;服部 2010),畜産物につ いては極めて少ない(山根ら 1980;東ら 2000).また, 氷温熟成処理を行うためには,初めに対象食品の氷結 点を求めてから温度設定を行うが,本研究で用いた供 試牛肉の氷結点は− 1.5 ~− 1.0℃の範囲であったた め設定温度を− 1.0℃とした.福間ら(2012)は豚肉 を用いて− 1.0℃で 5 日間の氷温熟成処理を行ったと ころ,熟成前に比べて各遊離アミノ酸および脂肪酸含 量の増加や脂肪融点の低下などを報告している.現在 のところ,牛肉の熟成期間は「期限表示のための試験 方法ガイドライン」に準拠して設定され,例えば真空 パック包装で熟成温度が 2.0℃であれば 45 日間の可食 期間となる(日本食肉加工協会編 2006).また,氷温 熟成(− 1.0℃)であれば 0℃で 61 日間の可食期間が 適用されると考えられる.本研究では冷蔵熟成処理を 氷温熟成処理に置き換えた場合を想定したため,熟成 期間を 40 日間として便宜上設定したが,冷蔵熟成処 理に比べて氷温熟成処理では熟成後の歩留りも同程度 (観察所見)であり,加えて大腸菌の繁殖が見られな かったことからも(表 1),今後,期間を延ばした氷 温熟成処理の効果についても検討する必要がある.

結  論

 周年放牧肥育技術を用いて肉用牛(褐毛和種および 黒毛和種)を飼養し生産された牛肉の品質を比較検討 した結果,褐毛和種は黒毛和種に比べて破断強度や過 酸化物価が高い傾向にあるなどの特徴を有するが,氷 温熟成処理等によりある程度肉質の改善は可能である ことが示唆された.

謝  辞

 供試牛の日常管理にご協力を頂いた,片山照幸氏, 窪田裕範氏ならびに山中信子氏,供試草地の造成なら びに飼料作物の生産にご協力を頂いた九州沖縄農業研 究センター 研究支援センターの皆様に感謝の意を表 します.  供試牛の購入は熊本県畜産農業協同組合連合会 春 日秀昭氏および宮崎寛和氏,岩根畜産 岩根孝明氏お よび岩根正俊氏,田尻牧場 田尻 亨氏,供試牛のと 畜はゼンカイミート株式会社 萩原新一氏および犬童 良行氏,周年放牧肥育牛肉の流通販売については株 式会社丸菱 吉田裕喜氏ならびに株式会社菊池農場 䑓  典子氏にそれぞれご協力を頂きました.また,肉質分 析については常石英作氏にご助言を頂きました.ここ に深甚な謝意を表します.

参考文献

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Abstract

Effect of Aging Methods for Meat Quality of Pasture-fed Beef

Yoshi-Nori NAKAMURA, Makoto KANEKO, Yasufumi FUKUMA

1

, Ryoji KOBAYASHI

NARO Kyushu Okinawa Agricultural Research Center, Japan 1Hyo-On Laboratories Incorporated, Japan

Correspondence: Yoshi-Nori NAKAMURA

(TEL: +81-(0)96-242-7757,FAX: +81-(0)96-249-1002, E-mail: [email protected])

  The objective of this study was to investigate the meat quality of Japanese Brown (Kumamoto) (JB-K, n = 3) and Japanese Black (JB, n = 3) steers fed by grazing year-round outdoors on pasture. The peroxide value of the rib loin (lon-gissimus thoracis muscle) for JB steers was lower (P < 0.05) than that of JB-K steers. Coliform numbers were be less than or equal to 10 CFU/g in any samples. The free amino acids content of the rib loin of JB-K steers increased (P < 0.05) by aging. On the other hand, the carnosine content of the rib loin decreased (P < 0.05) by only cold storage compared with Hyo-On treatment.

Journal of Warm Regional Society of Animal Science, Japan 58(2): 209-215, 2015 Keywords: aging, beef production system using grazed year-round outdoors on pasture, Japanese Black, Japanese Brown

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