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目次 Ⅰ. はじめに Ⅱ. 日本の生命保険会社の歴史 Ⅲ. 生命保険業界の現状 Ⅳ. 日本の生命保険会社の戦略 1. 海外進出の方式 2. 海外進出の現状 3. 海外進出の課題 4. 海外進出の場所 1 タイ 2 インドネシア Ⅴ. おわりに参考文献 2

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日本の生命保険会社の

今後の戦略

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目次

. はじめに

. 日本の生命保険会社の歴史

. 生命保険業界の現状

. 日本の生命保険会社の戦略

1.海外進出の方式

2.海外進出の現状

3.海外進出の課題

4.海外進出の場所

① タイ

② インドネシア

. おわりに

参考文献

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Ⅰ はじめに

日本国内の経済を取り巻く環境は激変を続けている。保険業界においても、生損保と もに保険は成熟期を迎え、市場規模も縮小傾向にあり、国内保険業界必然的にグローバ ル保険企業との競争を余儀なくされ、業界再編や海外展開に活路を求め始めてきている。 特に損保においては、これまで大手六社体制だったものが「3メガグループ」に集約さ れるなど、淘汰の流れが一層加速している。生保においても、第一生命が先陣を切って、 相互会社から株式会社に転換し、機動的な資金調達や企業買収を可能にしながら、海外 戦略を加速させようとしている。保険業界はいままさに、生き残りをかけて、さらなる 業界再編が不可避な状況になってきている。 また、低成長経済への移行や高齢化の進行といった経済・社会的変化は、我が国の生 命保険業に構造的な変革を迫るものである。すなわち、個人保険市場の飽和化や団体年 金の急成長など市場の変質は生命保険会社の収益構造に影響を与える一方で、介護・医 療保険などの分野で市場を創造していく担い手として生命保険会社に対する期待は増 大している。今後は金融の自由化の進展や規制緩和による競争促進によって効率性の向 上が期待できる反面で、経営基盤が弱い生命保険会社の倒産が生じる可能性がある。生 命保険会社も他金融機関の例に漏れず、バブルによる含み益の減少や資産内容の悪化を 経験し、従来以上にリスク管理による財務健全性の確保が喫緊の課題となっている。生 命保険業の健全性をいかに維持するかが重要な問題である。そのような中で生命保険会 社がどのような戦略を打っていけば今後収益を伸ばしていけるかを考えていく。

Ⅱ 生命保険会社の歴史

明治時代の初期、外遊から帰国した福沢諭吉は「西洋旅案内」を著した。その中で、 「災難請合ノコト」と題して、保険の起源、概念、西洋事情を紹介したことが、日本の 生命保険事業発足の気運を一気に高めたとされている。1現に同著が広く知られるにつ れ、相次いで生命保険会社が設立されていった。明治13年に「共済五百名社」(後の安 田生命)が、翌14年には「明治生命」が、さらに同21年には帝国生命(現在の朝日生 命)が、翌22年には「日本生命」が誕生した。そして生命保険業はその後、順調な推移 を見た。昭和10年前後には、「銀行、信託と並ぶ三大金融機関」とまで称されるよう になり、相次ぐ戦時下で、大量の国債購入、軍需産業への投資といった形で国を支える 貴重な資金源の役割を果たすに至った。 そんな生保が一大転換期を迎えたのは、第二次世界大戦の敗北である。生保各社は、 大量の戦死傷者への膨大な保険金の支払いに直面した。戦後の経済混乱机(猛烈なイン フレの発生)のなか、解約も殺到した。さらに戦中・戦後直後の栄養・衛生状態の悪化で 1千葉明 『よくわかる生保・損保業界』2001年 34頁

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4 契約者の死亡率は急上昇した。一方、戦時下で資産運用の対象としてきた海外資産は、 敗戦により雲散霧消した。その額は、当時の金額で約17億円ともいわれている。2 生保各社は、どうしようもない状況に追い込まれ、結局、敗戦翌年の1946年8月 に相次いで発令された救済特例法「金融緊急措置例の改正」、「会社経理措置法」、「金融 機関再建整備法」の施行により、生保各社は8月11日午前0時をもって、従来の勘定 はいっさい凍結し、新勘定による第二会社設立で再出発となったのである。異例の特例 措置によって、旧勘定はいっさい凍結、まったくの白紙で再スタートとなったのは、為 政者側に、保険は必要不可欠な社会インフラという認識があったからであろう。そして 再スタートを切った生保各社は、女性営業部隊を販売の中軸に据えた。「生保営業を女 性外務員で」と最初に打ち出したのは、住友生命だといわれている。3「戦争未亡人がた くさんいる。彼女たちがこれからは家計を成り立たせていかなければならない。生保の 公共性を考えたら、そうした戦争未亡人に生きる糧を提供するという意味でも、外務員 の中軸として働いてもらおう」というのが、日本独特の生保営業のやり方セールスレデ ィの、そもそもの発端だったということである。 再出発となった生保の保有契約高が戦前の水準に戻ったのは約10年後のことだっ た。そして幸運にも、日本経済の高度成長期の流れに乗った。昭和40年には、保有契 約高は戦前の五倍以上に膨れ上がっていた。4また、40年代には、豊かな生活を手に した日本人は万が一、大黒柱を失った時の備えを視野に、高額の死亡保障に重点を置い た生保商品の契約に走り、さらには、50年代には長寿社会到来を睨んで個人年金保険、 終身保険に向かった。その後も生保各社は成長に次ぐ成長を続け、60年代後半から終 盤には、金利選考の高まりを背景に、貯蓄型商品でまさにバブルのように膨らんでいっ た。しかし、バブルの崩壊。経済成長の鈍化・低迷・悪化という長期不況の中で、既述 のとおり生保は、きわめて厳しい状況に陥った。

Ⅲ 生命保険業界の現状

国内の人口減少や人口構成の変化に合わせ、保険業界が対応すべき課題が対応すべき 課題が浮き彫りになっている。人口減少に伴い、保険契約高は縮小傾向にあるが、今後 は高齢者向けの生存保障となる商品などの新たな可能性もあり、時代に合わせた変化が 求められている。 生命保険の市場規模は、労働力人口と相関関係が高く、労働力人口の低下と共に縮小 傾向にある。労働力人口とは、十五歳以上の人口に労働参加率を掛けた数値で、日本の 労働力人口は1997年にピークを迎えた後、緩やかに減少している。それに伴い、個 人生命保険の保有契約高の推移も同じように、1996年をピークに年々減少している。 2千葉明 『よくわかる生保・損保業界』2001年 35頁 3 同上 4千葉明 『よくわかる生保・損保業界』2001年 36頁

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5 52030年ぐらいまでは、労働力人口比率は現在の水準が維持され、それ以降は再び 五〇%を下回る水準まで減少すると考えられている。同時に保険の保有契約高の落ち込 みも予想されている。 しかし、人口減少と保険業界の縮小は、イコールではないとの見方もある。それは、 保険契約高は減少していても、消費者の保険に対するニーズが多様化しているためであ る。人口構成比率に目を向けてみると、2005年に死亡数が出生率を上回り、総人口 が減少に転じ、以降、六〇歳以上の割合が増加し続けている。6今後は死亡したときの 家族に及ぼすリスクよりも生存リスクを意識し、医療費や入院費に備えた高齢者向けの 保険商品の増加が見込まれる。これらは保険料が高い傾向があり、保険料収入の増加の 可能性も見えてくる。 また、銀行窓販、インターネット販売や通販ダイレクトと並んで、新しい保険の販売 チャネルとして注目されているのが保険ショップの展開である。保険はこれまで営業員 が顧客のもとを訪れる訪問販売中心から、コンサル対応を重視した来店型販売に変わっ てきた。 1996年の保険業法改正によって乗合代理店という新しい代理店制度が誕生して から、様々な業態の保険代理店が営業を展開している。その中で、保険の新しい販売チ ャネルとして注目されているのが、他の小売業態のように、商店街などに出店し、コン サル中心の長時間営業で保険を販売する保険ショップという業態である。従来の保険販 売モデルを一新して、店舗でのコンサル販売を中心とし、顧客の来店を促し、多くの保 険会社の商品を品ぞろえして、顧客から選択してもらうというマーケティング手法を採 用している。7 保険ショップの先駆けと呼ばれている保険市場は、現在全国の主要都市に三一店舗を 構えている。同店を運営しているのは、1995年創立の株式会社アドバンスクリエイ トで、同社では、2003年に、日本最大級の保険比較サイト「保険市場」をリニュー アルオープンし、翌年一月より個人向けの保険ショップ「保険市場」を開設した。現在、 少額短期の七五社の商品を、「保険市場」という統一ブランドのウェブサイト、来店型 ショップで取り扱っているほか、テレマーケティング・コンサルティング営業も展開し ている。 現在、来店型の保険ショップの展開を行っている主要な会社は全国に三二社あり、こ の中で、直営・FC 店を含めて、一番店舗数が多いのが、「ほけんの窓口」をブランドと 5中村恵二 高橋洋子『図解入門業界研究 最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる 本』2014年 22頁 6中村恵二 高橋洋子『図解入門業界研究 最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる 本』2014年 22頁 7久保英也『生命保険ダイナミクス』2003年 財経詳報社 126頁

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6 するほけんの窓口グループ株式会社で、2014年5月時点で、四九一店舗ある。第二 位が、みつばち保険グループ株式会社が運営する「みつばちほけん」で、2014年5 月現在で一九八店舗ある。第三位が「保険クリニック」のブランドで展開するアイリッ クコーポレーションの一五九店舗になっている。8また、損保の募集人生保の募集人を 兼ねている代理店も五万店近くになり、これに銀行の保険カウンターが保険ショップの ような作りになっているところも多く、来店型の保険ショップ同士の競合が激化してき ている。 保険会社やネット専業の証券会社、銀行などによる生命保険商品のネット販売が活発 する中、ネット専業の新しい生命保険会社が相次いで開業し、生保業界に新風を吹き込 んでいる。 2008年5月に開業した、ライフネット生命保険は、インターネットを活用するこ とで経費を低く抑えられたことから、それを保険料に転嫁させ、従来の生保商品よりも 安い保険料を設定している。ライフネット生命保険は、既存の保険会社や金融機関に属 さない独立系保険会社としては、戦後初めて開業した会社になる。また、2010年4 月には、住友生命保険と三井生命保険が共同出資して設立した、インターネットなどで 保険を販売するメディケア生命保険が保険商品の販売を開始している。 ネット生保の第一号は、ライフネット生命保険の設立より一か月前の2008年4月 に開業したSBI アクサ生命であった。こちらは、総合金融グループの SBI ホールディ ングスとフランスの大手生保会社で日本にも進出しているアクサ生命との合弁会社で、 携帯電話サービスのソフトバンクも出資していた。しかし、SBI ホールディングスは、 「アクサと事業戦略に相違があった」とわずか二年で、保有する株式をすべてアクサ生 命に譲渡し、同社の経営から撤退したことから、同社は現在、社名をアクサダイレクト 生命株式会社へと変更している。9 かつて生保業界で問題となった保険金不払いは、商品内容のわかりにくさが一因と指 摘されてきた。また、長期にわたり景気の低迷が続いた頃から、消費者の間で、高額な 保障が果たして必要なのか、保険料の設定が妥当なのかといった、保険契約の見直しの 機運が消費者の間に高まり、シンプルでわかりやすく保険料が安いネット生保への注目 が高まってきたことが挙げられる。インターネットの普及とともに、他のインターネッ ト・ショッピングと同様に、保険商品もサラリーマンなど多忙な人や、生保の営業職員 とのやりとりにわずらわしさを感じる人などが増えて、これらの顧客ニーズをネット専 業会社が上手く取り込んできたことが考えられる。新規参入したメディケア生命でも、 販売ルートとして、ネットのほか、多数の会社の商品を扱う保険ショップを活用したり、 通信販売も手がけながら、従来の営業職員による販売と差別化を図る狙いがあるとされ 8中村恵二 高橋洋子『図解入門業界研究 最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる 本』2014年 35頁 9 アクサダイレクト生命 https://www.axa-direct-life.co.jp/corporate/history/index.html

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7 ている。10 前段のインターネット専業保険と並び、新しい販売チャネルをもった保険会社として、 最近、生損保の通販ダイレクト専門会社の動向に注目が集まっている。特に、市場が縮 小しつつある個人分野での商品だけに、競合は激化している。 若者の保険離れが進む中、これまでのテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの既存メディ アに加え、パソコンや携帯電話などのモバイル・ツールを通してインターネットなどで、 顧客にダイレクトに情報発信する方法で保険を販売する会社が人気を集めている。通販 ダイレクト保険と呼ばれるもので、保険料の安さや無事故割引などを武器に、外資系損 保会社や国内損保会社などが、子会社方式やメディア会社との合弁事業などを通して多 く参入し、市場規模も2012年度は二三〇〇億円を超えるまでに拡大、今後さらに成 長が見込まれている。11定期保険や医療保険の販売でも、携帯電話やパソコンによる資 料請求と手続き、契約までも完結させるサービスを導入している。ネクスティア生命と ライフネット生命がそれぞれシンプルな定期保険や医療保険のネット完結型での営業 を行っているほか、住友生命と三井生命が合弁で立ち上げたメディケア生命保険も同様 の取り組みを行っている。さらに、年金商品の通販ダイレクトが行われるのも時間の問 題で、生命保険業界では、今後ますます銀行窓販やネット販売、通販ダイレクトなど、 マルチチャネルによる販売が活発化すると予想されている。12 また生保業界では外資系保険会社が存在感を強めている。2004年9月期中間決算 では、ついに米国生保のアメリカンファミリー生命(アフラック)が、個人保険の契約件 数で首位の座に立った。1999年4月の金融ビックバン以降、自由化が進み、外資系 保険会社が自動車保険や第三分野でユニークな商品の販売を行ってきた。これまで保険 には、生命保険の第一分野と、損害保険の第二分野があった。これに対して、第一分野 と第二分野の中間に位置する、「がん保険」や「医療保険」「傷害保険」などの、第三分 野の保険ができた。保険業における規制緩和で生命保険業と損害保険業の相互参入が解 禁となってから、第三分野の市場も急拡大した。第三分野拡大の牽引役を果たしたのが 外資系の保険会社である。1973年にアリコ・ジャパンが、翌年にはアメリカンファ ミリー(アフラック)が設立され、両社とも最初からがん保険など第三分野に特化した事 業を開始した。店舗の拡大や商品の販売方法においても、積極的な代理店開拓や職域販 売など、これまでの国内保険会社にはなかったやり方を進め、保険業法で定められてい る募集人も短期間で確保した。日本とアメリカでは健康保険制度も異なることから、日 本の市場向けに独自の商品を設計している。外資系保険会社の戦略は、多彩なメディア の利用と代理店を通さずに電話やインターネットで直接保険を販売する、いわゆる直販 10 10中村恵二 高橋洋子『図解入門業界研究 最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわ かる本』2014年 31頁 11中村恵二 高橋洋子『図解入門業界研究 最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわか る本』2014年 32頁 12 同上

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8 にある。フランスを本拠とする世界最大級の保険グループ、アクサの日本の持ち株会社 であるアクサ保険ホールディングでは、アクサ生命保険とアクサ損害保険を展開してい るが、アクサ生命は日本団体生命を傘下に置いたことから、全国の商工会議所などをベ ースに営業を展開している。最近では、ネット特化戦略を展開し、保険比較サイトなど を経由しての契約も増えている。

Ⅳ 生命保険会社の経営戦略

前章の現状を整理すると、需要側では、主に国内の人口の減少、人口構成の変化によ る生命保険ニーズが変化していること。そして、供給側では、競争環境の変化として、 新規参入の増加、販売チャネルの多様化、グローバルな規制環境の変化等が挙げられる。 これらを踏まえて、国内生命保険会社は国内市場の変化に合わせた経営戦略、商品展開 やお客さまのニーズをくみ取った商品展開をしていこうとしている。しかし図1 を見て いただくと分かるように平成27年の国内の生命保険の世帯加入率は89.2%であり、 残りの数10%に可能性を見出すことは難しく、海外進出を視野に入れていくことが不 可避となっている。そこで、以下日本が海外進出をしていくための方式を述べていく。 http://media.lifenet-seimei.co.jp/2016/01/08/5652/ 1 海外進出の方式 海外進出の方式には大きく分けて三つある。一つ目に、無資本投資方法がある。無資 本投資方法は、さらにネットワークの構築、多国籍保険会社を通じたネットワーク形成、

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9 職員の常駐を通じたネットワーク、連絡事務所に分けられる。ネットワークの構築は、 企業顧客へのサービスのために現地の保険会社と公式的な協定を通じて、ネットワーク を構築する方法である。多国籍保険会社を通じたネットワーク形成は、多国籍保険会社 とパートナー関係を結んで、海外の子会社と国家別ネットワークを利用する方法である。 職員の常駐を通じたネットワークは、重要な企業顧客がいるネットワーク会社に自社の 職員(たとえば、アンダーライター、エンジニアー等)を常駐し、企業顧客により優れ たサービスを提供する方法である。連絡事務所は、市場が細分化されており、現地に適 切なサービスの提供者がなかったり、その国への進出を計画するとき有用な方法である。 二つ目に、有資本投資方法は、さらに少数持分出資、多数持分出資、単独支配、子会社 設立に分けられる。少数持分出資は、多数持分出資の初期段階に該当される方法であり、 一部の国で要求される投資方式で、自国の保険会社の参加規定を通じて一部の持分を出 資して合弁の形態で運営される保険会社である。多数持分出資は、自社が提携会社の経 営に全般的な責任を負う方法である。単独支配は、既存の現地会社の持分を100%買 収して運営する形態である。子会社設立は、現地で保険会社を買収したり、買収した会 社の組織や組織文化等を変えることが難しかったり、コストが大幅にかかる場合に好ま れる方法である。三つ目に再保険方法があり、これは再保険の受再を通じて海外の保険 会社と市場に関する情報およびネットワークを形成する方法である。13 2 海外進出の現状 日本の市場規模が大きいこと、またバブル崩壊前まで国内市場での成長を享受できて いたこともあって、日本の生命保険の海外進出はほとんど見られなかった。しかしなが ら、国内市場のマイナス成長が続く中、最近は、大手生保を中心に海外進出を進める動 きが出ている。 日本生命は、1991年12月に初めて、米国のニューヨークに「米国日生」を設立 した。発行済株式数の約97%を保有しており、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、 アトランタ等の拠点を通じて、米国の日系企業および米国企業に対して、団体健康保険 等の保険商品を提供している。1997年4月には、タイの大手生命保険会社である「バ ンコク・ライフ社」に発行済株式数の約25%を保有する筆頭株主となっている。20 03年9月には、中国の生命保険市場に進出し、2009年9月に中国4大国有金融資 産管理公司の一つである中国長城資産管理公司に合弁パートナーを変更し、持分50% を保有する「長生人寿」社を設立した。2011年10月には、インド有力財閥の一つ であるリライアンス・グループ傘下の生命保険会社「リライアンス・ライフ社」の発行 済株式数の26%を保有している。14 13軽森雄二『海外進出のしかたと実務知識』2015年 中央経済社 48頁 14 日本生命保険相互会社 https://www.nissay.co.jp/kaisha/annai/gyoseki/pdf/2011/p066_067.pdf

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10 第一生命は、1949年1月にタイのバンコクにある「オーシャンライフ」に24% 出資することにより、海外進出を行った。また、平成18年7月、オーシャンライフ社 と団体再保険協定を締結し、オーシャンライフ社による在タイ日系企業向けの団体保険 市場開拓を積極的に支援している。その後、2007年1月にベトナムのホーチミンに 持分100%の「第一生命ベトナム」を設立した。日本の生命保険会社がベトナムで生 命保険事業を展開するのは初めてのことであった。同年9月には、インドのムンバイに ある「スター・ユニオン・第一ライフ」に26%を出資している。2011年3月には、 オーストラリアのシドニーに「TAL」を設立した。15 明治安 田生命 は、19 76年 3月に 米国のハ ワイに ある「PacificGuardian Life Insurance Company」に100%出資することにより、海外進出を行った。アジア地域 には、2010年11月に、インドネシアのジャカルタにある「PT AVRIST Assurance」 に23%を出資しており、2010年12月には、中国の上海にある「北大方正人寿保 険有限公司」に29.2%を出資している。ヨーロッパ地域には、2012年6月に、 ポーランドのブロツワフにある「TU EUROPA S.A.」に33.5%を出資しており、20 12年7月には、同国の首都であるワルシャワにある「TUiR WARTA S.A.」に25%を 出資している。16 3 海外進出の課題 海外進出における課題は大きく分けて三つある。一つ目にアジア新興国における低い 占有率である。日本の生命保険会社はアジア新興国に積極的に進出しているとはいえ、 進出国におけるマーケットシェアはそれほど大きくはない。たとえば、図2をみると、 アジア主要生保市場における10大企業の中で、日本の生命保険会社は高い割合を占め ていない。タイでは、明治安田生命が15%を出資している「タイライフインシュアラ ンス」が12.1%を占めており、また日本生命が25%を出資している「バンコクラ イフ」が全体の9.8%を占めており、第一生命が24%出資している「オーシャンラ イフ」は3.3%を占めている。ベトナムでは、第一生命の100%子会社である「第 一生命ベトナム」が7.9%を占めている。アジア新興国市場での日本の生命保険会社 の占有率は低い半面、欧米の生命保険会社は高いマーケットシェアを確保している。た とえば、AIA はシンガポールとタイで、プルデンシャルはシンガポールとマレーシアと ベトナムで高いシェアを占めている。 15 第一生命保険株式会社 http://www.dai-ichi-life.co.jp/company/gyouseki/gyseki08/date/012.pdf 16 明治安田の現状2017 http://www.meijiyasuda.co.jp/profile/corporate_info/disclosure/data/status-2017/pdf/status_2017_01.pdf

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11 [図2] アセアン主要6か国の生保市場における上位10社のマーケットシェア(2014) http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=51501&more=1?site=nli 二つ目に、海外進出による収益限界の可能性が挙げられる。アジア新興国市場の特 徴は、欧米中心の外資系生命保険会社が生命保険市場の大半を占めていることであ る。たとえば、シンガポールでは60.4%、タイ60.2%、ベトナム56.7% のような状況で、50%をはるかに超えており、すでに「先発者利益」を享受してい る。(図2より)したがって、先発者利益を享受している欧米系の外資系生命保険会社が 進出している国と国営生命保険会社が高い割合を占めている国では、進出したとはい え、収益性に限界が生じる可能性が存在する。それに加えて、2008年の金融危機 を契機に生命保険市場の環境も厳しくなり、先進国(欧米)の生命保険会社は、飽和

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12 成熟市場を超える収益性の伸びを新興市場に期待しているため、アジア新興国市場で のグローバル競争はさらに激しくなると予想される。17 三つ目に、海外進出への障壁の高さが挙げられる。日本の生命保険会社は、欧米の 外資系生命保険会社に比べると、比較的海外進出について短い歴史をもっている。欧 米の外資系生命保険会社はアジア新興国市場の中で長い間営業を行っており、国や顧 客からも高い信頼を受けている。新しい市場に進出するときの障壁として、①規模の 経済、②製品の差別化、③要求される資本、④規模による費用の不利益、⑤チャネル へのアクセス、⑥政府の政策等が言われているが、どの要素も容易ではない。18しか も、自由化の進展とともに、海外市場での競争はさらに厳しくなると予想されてい る。上述の現状を踏まえると、海外進出において最も重要なのは、今までなかった 「新しい価値」を創出することができるのかである。海外事業では、現地保険会社の 販売網や主力商品を生かすことが重要であると認識されているが、その前に、日本の 生命保険会社がその国の国民や社会に対してどのような価値を提供することができる のかについて考慮することも重要であると考えられる。 4 海外進出の場所 ① タイ 日本の生命保険会社が海外進出をしていく国にタイが挙げられる。タイの人口はそ こそこ多く、1 人あたりGDPが高い。つまり内需が大きいのである。2016年時 点でシンガポール、ブルネイ、マレーシアに次いで4位の水準である。19少子高齢化 は進んでいるものの、中間層、富裕層は拡大している。また、図3を見ると分かるよ うに、タイ生命保険マーケットは、一貫した拡大傾向が続いている。市場拡大の要因 として所得税が高いことが挙げられる。タイの所得税の最高税率は35%程度だが、 所得控除が小さいために納税額は大きく、国民の潜在的な節税需要は多いだけに、政 府の保険料控除枠の設定は保険の普及に大きな役割を果たしている。20このほか、万 一の時に家族に残す保障や退職後の備えといった一般的な理由も市場拡大の要因とし て挙げられる。生命保険の普及率に関してみても、生命保険会社の正味収入保険料が 増加しているにもかかわらず、生命保険の保険密度、一人当たりの保険料が他国と比 べてみても低いことから分かるようにまだ普及していないことが分かる。これらから 分かるように、タイは、生保市場は拡大しているがまだまだ普及率が低いことから海 外進出しやすい場所といえる。 17茶野努『国際競争時代の日本の生命保険業』1997年 東洋経済新報社 175頁 18崔 桓碩「生命保険会社の海外進出に関する研究-日本と韓国の比較を中心に-」2 014年 http://www.jili.or.jp/research/search/pdf/D_186_5.pdf 137頁 19 https://blog.siteengine.co.jp/thailand/expand-thai.html 20 http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=52513

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13 [図3] http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=52513 続いて保険種類別のシェアについて見ていく。図4を見ていただくと分かるよう に、2014年時点において、団体保険が前年に比べて2.1%下がっており、逆に 個人保険が前年に比べ1.3%上がっている。しかし全体的な構図として個人保険が 多くを占めていることには変わりない。個人保険の商品別シェアの推移を見ると、養 老保険が全体の7割近くを占め、終身保険が約2割を占めている。定期保険やその他 の保険はシェアをほとんど占めていないことがよくわかる。販売チャネル別シェアの 推移を見てみると、2011年から2014年に連れてエージェントによるチャネル が減少し、銀行窓販によるチャネルが増加していることが見て取れる。その背景に は、アジア通貨危機(1997 年)を受けて貸出依存度の高かった銀行の収益源の多角化 が進むなか、2002 年に銀行窓販が解禁されたことがある。銀行が有する堅固な顧客ネ

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14 ットワークの活用や貯蓄機能を有する保険商品の販売が拡大したことがシェア拡大の 要因と考えられる。 [図4] http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=52513 以上から分かるように、タイの生命保険市場は近年、著しく成長している一方で、 まだまだ普及していないことが分かる。商品別に見ると養老保険を代表とする貯蓄性

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15 商品と、保障性の終身保険が中心になっている。また販売チャネル別に見ると、銀行 が有する堅固な顧客ネットワークを活用しつつ、貯蓄機能を有する保険商品の販売を 拡大する銀行窓販のシェアが一貫して拡大している。しかし、近年はタイ経済の伸び 悩み・金利低下傾向等もあり、更なる成長に向けてはより一層各社の戦略が試される と考えられる。 ② インドネシア 二つ目にインドネシアが挙げられる。インドネシアでは、中間所得層が拡大し続け ている。国内総生産(GDP)の 5 割強を個人消費が占めており、その個人消費が経済 成長をさらに後押しし、中間層がさらに拡大、それがさらなる消費の拡大につながる という正のスパイラルでの成長に期待できる。21インターネットの普及が高まるとと もにEC 市場も拡大している。日本国内では、人口減少や少子高齢化が進み市場が縮小 する中、インドネシアは2.55億の人口を有し、ASEAN で 1 位、世界でも 4 位であ り、潜在的にも巨大な消費市場であることは非常に大きな進出メリットである。22 生保市場においても成長している。図5を見ると分かるように、1999年には人 口1人当たり生命保険料が5.1ドルであったのに対して2015年には42.7ド ルと増加している。また生命保険料の対GDP比は1999年において0.8%だっ たのが、2015年には1.3%と増加している。 [図5] 人口1人あたり生命保険料と生命保険料の対 GDP 割合の推移 http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=55616&pno=2?site=nli またそれらに加え、人口が最大のインドネシアは、全体ボリュームとしての総生 21 http://www.yappango.com/special/indonesia.html 22 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/data.html

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16 命保険料でこそシンガポール、タイに次いでアセアン第3位であるが、生命保険普及 度合いの尺度である「人口1 人あたり生命保険料」では第4位、「生命保険料の対 GDP 割合」では第5位に沈む。しかも両指標では、シンガポール、マレーシア、タイ との差は大きく、フィリピンと接戦を演じている段階にある。23このことから、まだ まだインドネシアの生命保険市場は開拓の余地があり進出すべき国であるといえる。 5 外資系生保における事例 ここまで海外進出の方法、また進出先などを見てきたが、ここで実際に海外進出し て成功を収めている企業を挙げてその成功法を導いていく。 私が今回事例を挙げるのは、図2で生命保険市場のマーケットシェアがシンガポー ルとマレーシアで2位、またベトナムでは1位になっているプルデンシャルである。 プルデンシャルは、イギリス・ロンドンに本社を置く、生命保険・金融サービス企業 である。プルデンシャルがビジネスの急速な発展をし、1890年代の設立後、英国 の最大の生命保険会社となった。現在、プルデンシャルの最大の部門はアジア地域で あり、香港、シンガポールなどの東南アジア諸国、インドの市場を中心に、多数の顧 客を持っている。 またこのプルデンシャルがなぜ海外において成功できたのか、それには他社にない 独自の戦略がある。それは広告をほとんど使わないということである。広告にかける お金を、ライフプランナーと呼ばれる生命保険を消費者に売り込む人々に費やしてい るため、広告にかけるお金を抑えているのである。またプルデンシャルのライフプラ ンナーは生命保険の提供だけでなく、ライフプランナー1人1人が、消費者にプルデ ンシャルの考えやライフプランナーの価値を伝えているため、ある意味でライフプラ ンナー自身が広告の役割を担っていると言える。これらから分かるようにプルデンシ ャルはライフプランナーを一番の財産と考え、そのために優秀な人材の採用・育成・ モチベーションアップができる仕組みをとっている。また、ライフプランナーとして 採用される人材は全員、他業界からスカウトされた優秀なビジネスパーソンである。 そのような様々な知識を持ったライフプランナーが営業することで、消費者の心をつ かみ、他の人にも紹介したくなるような営業を行っているのである。それに加え、シ ステムは完全成果主義であるため、営業成績に連動した報酬もピンキリであり、それ ゆえライフプランナーが前向きに仕事に取り組める環境を作ることが企業側にも求め られているのである。 海外進出において成功した要因はもう一つある。それは海外進出において先見の明 があったということである。それを示しているのが、2013年において、グループ 責任者のTidjane Thiam 氏は、「アジア市場はスピード感のある、いわば『ホットスポ ット市場』。今後増えるますます裕福な中間層向けに貯蓄等の金融製品の需要を増や 23 http://www.nli-research.co.jp/files/topics/55616_ext_18_0.pdf?site=nli

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17 し、グループとしてアジア展開し2017年までにはこの市場を支えていく存在とな りたい。ただし、この『2017年までに累計100億ポンド』という目標値は、現 在の株価を勘案すれば全体的な真価では3分の1程度しかないので、慎重に進めてい く。」と語っている。24また、このプレゼンの中で、具体的な対象者としてはアジアの 中間層~富裕層、数値としては2017年までに少なくとも累計100億ポンドの売 上という目標を打ち出し、2012年時点での金融関連商品等の売上は4億8400 万ポンドとなっているが、2017年には9億~11億をグループ目標として掲げて いた。そして、プルデンシャルは以前にアジア地域最大の生命保険会社である、AIA グループ・リミテッド(本社香港)の買収に失敗した経緯があるものの、2010年 に示した目標値を達成している。また、今回の新目標設定に際してThiam 氏はプレゼ ンの中で、「財政危機に起因する混乱が生じても、プルデンシャルはこの2013年ま でにアジア展開の5つのプロジェクトでは利益を出してきた。2017年を過ぎれば アジアの中間層は若い世代にも拡大し、成熟した市場となって他地域にも転用するこ とができるようになるのだろう。」と語った。その言葉通り、現在ミャンマーを筆頭に カンボジア、ポーランド、ガーナでも初期投資を行い利益も出している。25 これらから分かるように、プルデンシャルは他社にない独自のマーケティング戦略 と海外進出における先見の明をもってここまでアジア地域で成功を収めているのであ る。

Ⅴ おわりに

国内の生命保険会社は様々な戦略を打ち出し新規顧客獲得を目指しているが、国内 市場はすでに飽和状態である。そのため、主に欧米の外資系生命保険会社によって行 われてきた海外進出は、今は、日本にとって必須不可欠な課題である。現在、日本の 生命保険会社は、徐々にアジア新興国市場への進出を展開している。しかし、すでに 高いマーケットシェアを確保している欧米の外資系生命保険会社と同じドメインの中 で競争することは、収益性に限界があるといえる。そこで重要なのは、どのようなポ ジションに位置するのかを把握し、そのポジションに最も適切な戦略を立案すること である。先に挙げたプルデンシャルの事例からも分かるように、他社にない日本独自 の戦略を立て他社との差別化を図ることが重要である。また、その海外進出先を見極 めることも重要である。それらを踏まえて、現在も生保市場が成長し続けており、ま だあまり生命保険が普及していないインドネシアやタイに、その土地にとって新しい 価値、そして他社との差別化を図った戦略を打ち出して、収益を出すことが重要であ ると考える。 24 http://myanmarbusinesstoday.jp/id/1235 25 http://myanmarbusinesstoday.jp/id/1235

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18 以上

参考文献

・軽森雄二『海外進出のしかたと実務知識』2015年 中央経済社 ・久保英也『生命保険ダイナミクス』2003年 財経詳報社 ・崔 桓碩「生命保険会社の海外進出に関する研究-日本と韓国の比較を中心に-」2 014年 http://www.jili.or.jp/research/search/pdf/D_186_5.pdf ・茶野努『国際競争時代の日本の生命保険業』1997年 東洋経済新報社 ・中村恵二 高橋洋子『図解入門業界研究 最新保険業界の動向とカラクリがよ~く わかる本』2014年 秀和システム ・千葉明『よくわかる生保・損保業界』2001年 日本実業出版社 ・第一生命保険株式会社 http://www.dai-ichi-life.co.jp/company/gyouseki/gyseki08/date/012.pdf ・ニッセイ基礎研究所 http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=55616&pno=1?site=nli ・ニッセイ基礎研究所 http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=52513 ・日本生命保険相互会社 https://www.nissay.co.jp/kaisha/annai/gyoseki/pdf/2011/p066_067.pdf ・明治安田の現状2017 http://www.meijiyasuda.co.jp/profile/corporate_info/disclosure/data/status-2017/pdf/status_2017_01.pdf

・Myanmar BUSINESS TODAY 英保険会社プルデンシャル 2017 年へのアジア展 開計画 http://myanmarbusinesstoday.jp/id/1235

参照

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