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第 0 報 停滞する核軍縮に希望の灯がともるか(2013.4.21)

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第 0 報 停滞する核軍縮に希望の灯がともるか(2013.4.21)

※下線部はリンク部分です。

( 会議が開かれる国連欧州本部 )

昨年の第 1 回準備委員会(ウィーン)に引き続いて、2015 年核不拡散条約(NPT)再検討会議の 第 2 回準備委員会が、2013 年 4 月 22 日(月)~5 月 3 日(金)にスイスのジュネーブで開催さ れる。会議場は国際連合(UN)欧州本部である。この場所は国際連盟の本部として 1938 年に完 成したもので仏語でパレ・デ・ナシオンと呼ばれる。後述するように、 「核兵器の非人道性」の原 理が最近の核兵器廃絶への国際的気運を牽引してきたが、それには赤十字国際委員会(ICRC)が 大きな貢献をした。その ICRC は道路を隔ててパレ・デ・ナシオンと対面する場所にある。また スイス政府は ICRC を代弁する政府として、その主張を支援する役割を果たしてきた。昨年 10 月 22 日、国連総会において(34+1)か国を代表して「核軍縮の人道的側面に関する共同声明」

を発表したのはスイス政府であった。その意味では、今回の準備委員会がジュネーブで開催され ることは、会議を包み込む良好な環境を醸成するのに一役買うと期待される。

会議スケジュール

第 2 回準備委員会の議長はルーマニアのコーネル・フェルーツァ大使(CORNEL FERUŢĂ、カ タカナ表記は在日ルーマニア大使館による)と予定されている。

公表された暫定プログラムによると以下のような日程が想定されている。午前のセッションは 10 時~午後 1 時、午後のセッションは午後 3 時~午後 6 時である。

4 月 22 日(月) 午前:開会、一般討論 / 午後:一般討論 4 月 23 日(火) 午前:一般討論 / 午後:一般討論

4 月 24 日(水) 午前:NGO の意見発表 / 午後:クラスター1 議題(後述)

4 月 25 日(木) 午前:クラスター1 議題 / 午後:クラスター1 特定問題(核軍縮、安全の保証)

4 月 26 日(金) 午前:クラスター1 特定問題(核軍縮、安全の保証)

午後:クラスター2 議題(後述)

4 月 29 日(月) 午前:クラスター2 議題

午後:クラスター2 特定問題(中東及び 1995 年中東決議の履行など地域問題)

4 月 30 日(火) 午前:クラスター2 特定問題(中東及び 1995 年中東決議の履行など地域問題)

午後:クラスター3 議題(後述)

5 月 1 日(水) 午前:クラスター3 議題

午後:クラスター3 特定問題(核エネルギー平和利用、条約のその他の条項)

5 月 2 日(木) 午前:強化された再検討プロセスの効率向上

(2)

NPT 再検討会議は、条約のすべての条項や過去の合意文書(1995 年、2000 年、2010 年におけ る決定、決議、合意)に照らして現状を検討し、改善策を議論する会議であるが、諸問題を次の ような 3 つの問題群(クラスター)に分けている。この分け方は、2010 年の NPT 再検討会議に おける主要委員会 I、II、III への議題の配分に従ったものである。

【クラスター1 議題】

核不拡散、核軍縮、並びに国際安全保障に関連する条項の履行問題、及び安全の保証問題

【クラスター2 議題】

核不拡散、保障措置、並びに非核兵器地帯に関連する条項の履行問題

【クラスター3 議題】

平和目的の核エネルギーの開発研究、生産、並びに利用への条約締約国の奪い得ない権利に関連 する条項の履行問題、及びその他の条項の問題

第 2 回準備委員会の注目点

第 2 回準備委員会の注目点は何だろうか?

それを考えるために今回の会議に至る流れを振り返っておきたい。 2005 年の再検討会議が何の成 果もなく失敗に終わったのに反して、 2010 年再検討会議はいくつかの前進を勝ちとった。なかで も 64 項目の行動計画を含む全会一致の最終文書が採択されたことは重要な前進であった。その背 景には米国にオバマ政権が登場し「核兵器のない世界」への世界的潮流が生まれたことあった。

2010 年合意には次の 3 点の新しい要素があった。

①核兵器禁止条約の交渉、あるいは相互に補強しあう「別々の条約の枠組み」に関する合意を検 討するべきとの国連事務総長の提案に初めて言及した。

②核兵器の非人道的性格について、NPT 合意文書として初めて言及した。その内容は 1996 年の 国際司法裁判所の勧告的意見よりも強いものであり、例外を許さない表現となった。

③1995 年の NPT 再検討・延長会議で採択された中東決議の履行について、 2012 年中の中東非核・

非大量破壊兵器地帯設立のための関係国すべてが参加する国際会議の開催など、具体的な次の一 歩が決定された。

残念ながら、昨年の第 1 回準備委員会を含め、その後の経過を踏まえたとき、核軍縮の動きは総 じて停滞していると言わざるを得ない。その停滞を打ち破る動きがどのようにして生まれるのだ ろうか?私たちは第 2 回準備委員会において次のような点に着目して監視したい。

(1)コスタリカと「オープン参加国作業グループ」の行方

上記の①の核兵器禁止条約あるいは「条約の枠組み」は、長崎の私たちにとって極めて関心の強 いものであるが、残念ながら直接的な進展は極めて乏しい。しかし、昨年の 12 月 3 日に採択され た国連総会決議で、国連加盟国すべてが参加できる、核軍縮のための「オープン参加国作業グル ープ」(OEWG)の開催を決定したのは、せめてもの前進であった。今年の OEWG の会合は 15 日間ジュネーブで開催される。この流れはオーストリア、メキシコ、ノルウェーがイニシャチブ をとり、16 か国が決議の提案国となった。3 月 14 日にその準備会合が開かれ、コスタリカのマ ニュエル・デンゴ国連大使が議長を務めることとなった。会議は今年の 5 月、 6 月、 8 月に開催さ れる。したがって、上記 3 か国や議長となったコスタリカ政府が、この会議に関してどのように 発言するかが注目される。

「核兵器のない世界」に向かうためには、核兵器禁止の法的枠組みに関する交渉のテーブルが生

まれることが不可欠であり、そのためには OEWG に限らず大胆なイニシャチブが生まれること

が必要であり、この点に関する NGO の動向をつねに注視する必要がある。

(3)

(2)メキシコと「核兵器の人道的側面」の動向

②に関しては、昨年の第 1 回準備委員会で 16 か国共同声明が出され、秋には冒頭に掲げた(34

+1)か国共同声明に発展した。さらに、ノルウェー政府のイニシャチブによって今年 3 月 4~5 日「核兵器の人道的影響に関する国際会議」がオスロで開催された。オスロ会議は影響の科学的 知見を共有することに焦点が当てられたが、会議を終えるに当たって、メキシコがフォローアッ プ会議を開催すると申し出た。

このような経過から、今回の準備委員会においてオスロ会議の発展がいかに企図されるかが注目 される。共同声明の賛同者の拡大が図られる可能性とともに、ノルウェーやメキシコの動向に注 目したい。

(3)中東決議履行の行き詰まりの打開と北東アジア

2012 年中の開催を決定していた中東決議履行のための国際会議が実現していないことは、第 2 回 準備委員会に暗い影を投げかけている。場合によっては議事進行に深刻な障害が生まれる可能性 もある。2011 年 10 月にフィンランドが開催国を引き受け、フィンランドのヤッコ・ラーヤバ同 国国務次官がファシリテーターに決定した。フィンランドの努力にもかかわらず、昨年の 11 月に 招集者(米、ロ、英、国連)は現状では開催が不可能であると発表した。これに対してエジプト など中東諸国が強く反発をしている。

この状況の打開がいかに図られるかが、ジュネーブ会議の一つの重要な焦点となる。単に中東問 題に留まらず、NPT 条約体制の信頼性に関わる問題になりかねないからである。

脱退宣言によって北朝鮮が参加していない会議ではあるが、朝鮮半島を含む北東アジアの非核化 問題は中東と同じように強い関心が集る問題である。モンゴルを初め他の非核兵器地帯の参加国 がどのようにこれに言及するかについて、私たちの関心を注ぎたい。

(4)日本政府の動向

当然のこととして私たちは日本政府の動きにたえず関心を払うことになる。被爆国日本が核兵器 廃絶のために果たすことのできる役割は大きい。上記の 3 つの注目点において日本政府がどのよ うな立場で行動するかを私たちは注視したい。たとえば、人道的側面についての共同声明の署名 国拡大が図られたとき、日本政府がそれに参加する姿勢に転じるかどうかが問題となる。

また、日本政府は、日本政府のイニシャチブで生まれた 10 か国のグループ「核軍縮・不拡散イニ シャチブ」(NPDI)を活用して準備委員会に臨んでいる。このグループに含まれているメキシコ などの積極的な動きを、グループ全体の動きにするためには日本政府がどういう働きをするのか を注視したい。

今回のブログは第 0 報を初めとする正規の日報の他に、随時のライブな短信も盛り込んで発信す

る予定である。日報は、梅林宏道、広瀬訓、中村桂子が協働して取り組む。

(4)

【短信 1】中国の発言にも注目したい(2013.4.21)

雨のジュネーブから写真が届いたので掲載します。

(会議が開かれる国連欧州本部。2013 年 4 月 19 日午後。撮影:RECNA)

今回の会議で中国の代表が、これまで繰り返してきた核兵器の無条件の「先行不使用」 (ノー・フ ァースト・ユース)政策について、どのような説明をするかについて注目したい。

というのは、 4 月 16 日に発表された中国の国防白書が、最新であった 2 年前の国防白書まで欠か さず強調してきた「先行不使用」や「非核国への絶対的不使用」について述べていないからだ。

これが重要な政策変更を意味するという憶測を呼んでいる。 「軍縮・軍備管理」という章自身が無

くなっているためにこうなったのかも知れないし、逆に変更したので章を無くしたのかも知れな

い。(梅林)

(5)

第 1 報 「軍縮分野では、前進しないときは後退する」 (2013.4.22)

※下線部はリンク部分です。

(再検討準備委員会の会議場(国連欧州本部内)。2013 年 4 月 22 日。撮影:RECNA)

よく分からない理由のために議長席周辺が慌ただしかったが、開会が遅れ、10 時開会の予定のと ころ会議は 10 時 55 分に始まった。新旧議長の交代があって、予定通りルーマニアのコーネル・

フェルーツァ大使が第 2 回準備委員会の議長に就任した。アンジェラ・ケイン国連軍縮局高等代 表の開会あいさつ(英語)の後、いくつかの議事事項を決定したのち、第 1 日目の一般討論が始 まった。午前の部に 8 か国・グループの一般討論、午後の部に 17 か国・グループと 1 国際機関 の一般討論があった。この日のうちに米・ロ・英・仏・中のすべての核兵器国が発言した。有力 な国家グループである新アジェンダ連合、非同盟運動の発言もあった。日本政府の一般討論も行 われた。

いくつかの決定事項を伝えておこう。

①第 3 回準備委員会は 2014 年 4 月 28 日(月)~5 月 9 日(金)にニューヨークで開催される。

②第 3 回準備委員会議長はペルーのロマン-モレー大使とする。

③2015 年再検討会議は 2015 年 4 月 27 日(月)~5 月 22 日(金)にニューヨークで開催する。

停滞状況を反映したケイン高等代表の演説

昨年の開会演説(和訳)と比較したとき、アンジェラ・ケイン高等代表の開会発言は慎重なもの であった。昨年の演説は「軍縮に法の支配を」と訴えた国連事務総長の 5 項目提案にも触れなが ら、 2010 年再検討会議の合意文書に登場した核兵器禁止条約や国際人道法の話題を積極的にとり あげた。国際人道法については「NPT 再検討プロセスに国際人道法が到来し、留まっている」と 高揚した口調で述べた。しかし、今年の演説には核兵器禁止条約や国際人道法への言及は一切無 かった。また、昨年には核保有を目指す新しい国についての憂慮を示すと同時に、核兵器国が核 兵器の近代化を進めていることへの憂慮を述べることを忘れなかったが、今年は前者を強調する に留まった。

ノルウェーが 127 か国を集めた「核兵器の人道的影響」の国際会議を 3 月に開催した直後の時期

に、ケイン高等代表が国際人道法について触れなかったのは何故だろうか?そこにはさまざまな

意味を読み取ることが可能であろう。一番の理由はノルウェーの動きが、国連の外に有志国家に

よる条約交渉の場を生み出す可能性が出てきていることへの配慮ではないかと思われる。国連加

盟国全体を代表するケイン代表の立場としては、NPT合意の文脈だけで語ることのできない局面

を迎えているという認識を反映せざるを得ないであろう。だとすれば長崎の私たちにとって変化

は悪いことではない。とはいえ、第 0 報で述べたノルウェーからメキシコへのバトンタッチがそ

のような展開になるという見通しについて、私たちはまだ何の情報も持っていない。

(6)

も否定できない。2012 年中の開催を決定した中東会議について、ケイン代表が「早ければ今年中 に開くことができる」としか演説の中で言えなかったのは、招請者の一つである国連にとっては 大きな痛手である。たとえ小さくても合意したことについて前進を勝ちとらなければNPTプロセ スそのものの信頼性が損なわれるであろう。そのような小さな前進をいくつか示したものの、

「NPT の場でいま最も必要とされているものは、いかにのろく、いかに困難であっても、前に進 むという感覚を取り戻すことである」というのがケイン代表の基本認識であった。そして、ダグ・

ハマーショルド元国連事務総長の 1960 年の次の言葉を彼女は引用した。 「この(軍縮の)分野に おいては、停止は存在し得ない。前に進まなければ、すなわち後退するのである。」

5 核兵器国の発言が出揃う

午前中に米国が、そして午後に他の 4 核兵器国が発言し、5 核兵器国(P5)の冒頭の一般演説が 出揃った。概して言えば P5 各国の発言に新味はなかった。NGO や積極的な国々は、2015 年再 検討会議に向かう準備委員会の役割について、繰り返し次のように言っている。 「準備委員会は、

単に 2010 年合意の履行を点検することではなくて、将来に向かう実質的な新しい合意を形成す ることが必要である。」しかし、P5 の発言の共通の特徴は 2010 年の行動計画を自国が忠実に実 行していることを強調することであった。彼らが特に重視しているのは、 「核兵器国は上記(注:

a~g の 7 項目がある)の履行状況について 2014 年の準備委員会に報告するよう求められる」 (行

動 5)、「すべての核兵器国は、信頼醸成措置として報告の標準様式について可能な限り早期に合

意する」(行動 21)という約束の履行である。

イギリス以外の 4 か国は発言の中で、そのような合意を履行するための P5 会議が継続されてい ることに触れた。実際、今回の会議の直前、 4 月 18~19 日に第 4 回のそのような会議がジュネー ブにおいて開催され、共同声明も出されている。中国の演説(英語)は、 P5 会議で設置された「核 に関する重要用語の定義集」作業グループ(議長:中国)が 2015 年再検討会議に結果を報告す る予定であると述べている。このような作業が信頼醸成上必要なことは認めるが、それを 5 年間 の成果とするのでは話にならない。上記の行動 5 の 7 項目にしても、履行達成に関する基準が極 めてあいまいであり、いくらでもお茶を濁すことができる。 P5 会合が保守的な場ではなくて積極 的な場になるためには、もっとオープンな場になる必要がある。

P5 の発言のなかで注目点をいくつか拾っておきたい。まず、ロシア(英語)が中東会議延期につ いて強い怒りを述べているのは印象的であった。まず、米・ロ・英・国連という共同招請国に「延 期する権限はない」と断言し、「ロシアは同意していない」と述べた。そして、「我々も延期に同 意したかも知れないが、全ての中東諸国の同意を得た後であり、新しい日付の発表を伴うもので なければならない」と主張し、 「すぐにも日付を決めることを主張する」と述べた。今回の再検討 会議で注目点の一つとなろう。

フランス(英語)が暗にオスロ会議を批判していると思われる強い言葉を発した。 「このような(核 兵器のない)世界を達成する条件は、具体的な手段によって導かれた段階的で集団的な努力の結 果でなくてはならない。最近のとあるイニシャチブ(複数)が企てているような、今回の会議の ような既存の場を傷つけ、2010 年行動計画のステップ・バイ・ステップのアプローチに疑問を投 げかけることは、核軍縮を前進させないであろう。」

本ブログの【短信 1】で中国の「先行不使用」政策に変化があるかどうかに注意を喚起したが、

中国の一般演説(英語)ではそのような変化はまったく見られなかった。 「中国はいかなる時にお

いても、いかなる状況下でも、核兵器の先行不使用の政策を順守する。また、非核国や非核兵器

地帯に対して、無条件に中国は、核兵器を使用したり使用の威嚇を行なわない」と述べた。余り

にも同語反復なので、もう少しフォローする必要を感じているが、重要な外交の場における明確

な発言である。

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第 2 報 市民が活用できる多くのヒントがある(2013.4.23)

※下線部はリンク部分です。

会議 2 日目も一般討論が続いた。午前中に 15 か国・グループ、午後に 18 か国・グループと 1 国 際機関が発言した。まだ発言希望国が残っており、明日の午後にも一般討論が続くことになった。

今日の午前の発言国の中には、日本とオーストラリア主導で結成された 10 か国グループ「核軍 縮・不拡散イニシャチブ」 (NPDI)を代表したオランダがあった。午後の会議では、第 0 報で掲 げた注目国であるメキシコ、コスタリカ、ノルウェーの発言があった。会議周辺では、 「核兵器の 人道的影響に関する共同声明」が新しく出されることを巡って NGO の活動が活発化している。

重みを増す NPDI の存在と責任

NPDI を構成するのは、日本、オーストラリア、ポーランド、オランダ、ドイツ、カナダ、メキ シコ、チリ、トルコ、アラブ首長国連邦の 10 か国である。NPDI は今回の準備委員会のために 4 月 9 日のオランダのハーグで第 6 回外相会議を開催した。それは、オスロで「核兵器の人道的影 響」国際会議が開かれた約 1 か月後でもあった。そのときの共同声明(英文、和訳)が NPDI の 今回の行動の基礎となっている。昨年の準備委員会においては、NPDI を代表する演説はトルコ が行ったが、今回はハーグ会議を開催したオランダが行った。昨日の会議で日本政府を代表して 北野充大使(軍縮不拡散・科学部長)が発言(英語)したが、その中で NPDI は会議に 6 個の新 しい作業文書の提出を準備していると明らかにした。

オランダ代表の今日の演説(英語)は、昨年の作業文書「軍縮・不拡散教育」のアップデートを 含めると 7 個になる作業文書の中味を説明するものであった。当然のことながら、内容は上記共 同声明の域をほとんど出るものではなかったが、その内容には市民が活用して政府に働きかける べき多くのヒントが含まれていることを指摘しておきたい。出された作業文書は、①包括的核実 験禁止条約(WP.1)、②輸出管理(WP.2)、③非戦略核兵器(WP.3)、④核兵器の役割削減(WP.4)、

⑤核軍縮不拡散教育(WP.12)、⑥核兵器国における保障措置の適用拡大(WP.23)、⑦非核兵器 地帯と消極的安全保証(WP.24)。括弧内は会議における公式の文書番号である。

現在までのところ全体で 27 個の作業文書が提出されているが、国家グループで 7 個の作業文書を 出しているのは、非同盟運動が同じ 7 個を出している他にはない。数が多ければ好いというわけ ではないが、NPDI の存在感が増していることは否めない。しかも、日本、オーストラリア、ド イツ、カナダといった西側の影響力のある大国が含まれているから、その言動は重みを増して行 かざるを得ないであろう。被爆国日本がそのなかで背負う責任を日本政府は強く自覚して欲しい し、市民は強い関心と監視の目を注ぐべきであろう。

NPDI は全会一致の方針で運営されている。今日の NPDI 演説の中には、メキシコのような積極 的な国が正論を主張することによってもたらされていると思われる好い結果を窺うことができる。

メキシコがイニシャチブをとっている「核兵器の非人道性」の主張を核軍縮の原理として強めよ うとする動きや、 「オープン参加作業グループ」 (OEWG)によって停滞しているジュネーブ軍縮 会議(CD)の行き詰まりを打開して核軍縮会議を前進させようとする動きについて、NPDI がい ずれも肯定的に表現している。

活用すべき例の一つは、作業文書「核兵器の役割削減」(WP.4)に書かれている次のような一節 である。

「(核兵器の)量的削減は安全保障戦略や軍事ドクトリンにおける核兵器の役割や重要性を削減す

る措置を伴わなければならない。このような措置は完全核軍縮の目標に重要な貢献をし、また更

なる量的削減へと相互に強めあうことになる。 」

(8)

の傘に依存するという安全保障戦略をとっている。しかし、核兵器を削減し廃絶するためには、

核兵器の役割を減らせる努力をせよと、NPDI は言っているのである。言行一致するためには核 の傘に依存する現状を変えてゆく日本自身の努力が問われることになる。たとえば、北東アジア 非核兵器地帯の設置へと前進することが、そのような努力の有力な方法となる。

場外で動く「核兵器の人道的影響」に関する共同声明

NPDI に注ぐべきもう一つの関心は、 「核兵器の非人道性」を巡って、このグループがどのような 役割を果たすかであろう。今日の NPDI 演説は「NPDI メンバー国は、2013 年 3 月 4 日から 5 日までノルウェーのオスロで開催された『核兵器の人道的影響に関する会議』に参加した」と述 べた。調べてみると、確かに 10 か国全てが出席している。何らかの意思一致があったと考えられ る。上記の作業文書はこの問題についてのグループの一致点について表現に苦心をしたことを窺 わせている。この表現は、市民が十分に吟味し活用すべきものだ。

「いかなる核兵器の使用も破滅的な人道的結果をもたらすことを考えれば、 65 年間以上核兵器が 使用されなかった記録が永遠に延長されるべきことが至上命令となる」 (第 6 節)。 「この道を確実 に進め、核兵器が今後ふたたび使用されることを防止するため、核兵器の使用の可能性が今日よ りもさらに遠のくように具体的な努力がされなければならない」(第 7 節)。

この内容は歯切れが悪いし前後自己撞着にも見える。NPDI は「メキシコがこの問題についてフ ォローアップ会議を招集すると申し出たことを歓迎する」と演説の中で表明した。日本政府が歓 迎した理由を、作業文書の真意とともに質されてゆくことが大切であろう。国会でも議論される べき問題である。

このことと関連して、会議場の外で進んでいる大切な動きが伝えられている。オスロ会議に積極 的に関わった国際市民運動 ICAN の情報によると、オスロ会議を踏まえて新しく出されようとし ている「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に 63 か国が賛同しているとのことである。名簿 を見ると、NPDI でこの中に含まれているのは、チリ、メキシコだけであり、昨年 10 月の 35 か 国のときと変わらない。現在、署名国を増やす努力が続けられている。因みにメキシコも所属し ている新アジェンダ連合(NAC)という現在で 6 か国の国家グループがあるが、この 6 か国は昨 年 10 月と同様にすべてが賛同国として名前を連ねている。

(NGO ルームでワークショップを終えたユース代表団。2013 年 4 月 23 日午後。撮影:RECNA)

(9)

【短信 2】74 か国が核兵器非人道性声明を発表(2013.4.24)

※下線部はリンク部分です。

4 月 24 日(水)午後の一般討論の終わり近く、74 か国(77 か国という情報もあり、確認中)を 代表した南アフリカが、 「核兵器の人道的影響に関する共同声明」 (英文・和訳*)を発表した。 2012 年 5 月の第一回準備委員会(ウィーン)での 16 か国声明(「核軍縮の人道的側面に関する共同声 明」)(英文・和訳)、10 月の国連総会第一委員会(ニューヨーク)での 34+1 か国声明(英文・

和訳)に続くものである。

昨年出された 2 回の声明がほぼ同一の内容であったことに対し、今回の声明はタイトルを含め内 容面で大きな変更を加えたものとなった。もっとも重要な点は、核兵器の「非合法化」の文言が 消えたことであった。核兵器のもたらす「壊滅的な人道的結果」のみに焦点を置くことにより、

より多くの署名国を獲得することを狙ったものである。禁止条約の制定へと議論が発展すること を嫌う国々をも巻き込み、非人道性を基盤とした国際的な共通認識を拡大させようとの考え方は、

3 月 4-5 日に開催されたオスロ会議とも軌を一にしている。

「核の傘」依存政策との整合性から昨年の声明への署名を拒否していた日本政府の去就が注目さ れていたが、今回も 74 か国に名を連ねることはなかった。日本政府が最後まで修正を要求してい たのは「核兵器が二度とふたたび、いかなる状況下においても、使用されないことに人類の生存 がかかっている」の一文のなかの、 「いかなる状況下においても」の文言であったとみられている。

(中村)

(10)

2015 年核不拡散条約(NPT)再検討会議第 2 回準備委員会 核兵器の人道的影響に関する共同声明

アブドゥル・ミンティ在ジュネーブ国際連合南アフリカ政府常駐代表 2013 年 4 月 24 日

<暫定訳>

議長、

私は、核不拡散条約(NPT)加盟国であるところのアルジェリア、アルゼンチン、オーストリア、ベラルー シ、バングラデシュ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ボツワナ、ブラジル、カンボジア、チリ、コロンビア、コスタ リカ、コートジボワール、キプロス、デンマーク、ジブチ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、エチオピア、

ガーナ、グルジア、グレナダ、グアテマラ、バチカン、ホンジュラス、アイスランド、インドネシア、イラン、ア イルランド、ヨルダン、カザフスタン、ケニア、クウェート、レバノン、レソト、リヒテンシュタイン、ルクセンブ ルグ、マレーシア、モルジブ、マルタ、モーリシャス、メキシコ、モロッコ、モザンビーク、ナミビア、ネパー ル、ニュージーランド、ニカラグア、ニジェール、ナイジェリア、ノルウェー、パラオ、パナマ、パプアニュー ギニア、パラグアイ、ペルー、フィリピン、カタール、サモア、シンガポール、スワジランド、スイス、タンザ ニア、タイ、トンガ、トリニダードトバゴ、チュニジア、ウガンダ、ウクライナ、ウルグアイ、イエメン、ザンビア、

そして我が国南アフリカを代表し、発言しています。

私たちは、核兵器使用のもたらす壊滅的な人道的結果について深く懸念しています。このことは、核兵 器が最初に開発されて以来認知され、さまざまな国連決議ならびに多国間条約に反映されてきた一 方で、長年にわたって核軍縮及び核不拡散の協議の中心に据えられることはありませんでした。それ はまさに NPT の存在理由であり、NPT がそのなかで「核戦争が全人類に惨害をもたらすものであり、した がって、このような戦争の危険を回避するためにあらゆる努力を払い、及び人民の安全を保障するた めの措置をとることが必要であること」と警告を発しているにもかかわらず、この問題は核兵器をめぐる 言説のなかで一貫して黙殺されてきました。

しかし、核兵器の実際の使用ならびに実験は、これらの兵器の持つ甚大かつ制御不能な破壊力、そし てその無差別性がもたらす受け入れがたい惨害を十分に示しています。核兵器爆発のもたらす影響は 国境で食い止められず、よってこれは誰しもにとっての重大な懸念事項です。爆発による即死や破壊 のみならず、それは社会経済的な発展を阻害し、環境を破壊し、次世代から彼らの健康、食料、水、

その他死活的なリソースを奪うものとなります。

近年、核兵器のもたらす人道的影響は、核軍縮・核不拡散をめぐるすべての協議の中心に据えられる べき根源的かつグローバルな懸念としてますます認知されています。 この問題はいまやグローバル・

アジェンダにしっかりと位置付けられています。2010 年の NPT 再検討会議は、「核兵器のいかなる使 用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念」を表明しました。同様に、国際赤十字及び赤新 月社運動代表者会議の 2011 年決議は、核兵器の使用に起因する計り知れない人間の苦痛と、国際 人道法との関係を強調しました。

2013 年 3 月にオスロで開催された核兵器の人道的影響に関する会議は、核兵器爆発のもたらす影 響についての事実情報を基盤とする議論のプラットフォームを提供しました。会議における広範な参加 は、一発の爆発のもたらす壊滅的影響が誰しもにとっての懸念事項であり、関係しているという認識を 反映しています。専門家及び国際機関が発した主たるメッセージは、いかなる国家あるいは国際機関 であっても、核兵器爆発がもたらす短期的な人道上の危機に対処しえず、被害を受けた人々に十分な 支援を提供できないというものです。この問題に対する理解を広め、深めるためのフォローアップ会議を 開催するとのメキシコの発表と、核兵器の人道的影響の問題を取り上げることへの国際社会の決意を 私たちは心より歓迎します。

核兵器が二度とふたたび、いかなる状況下においても、使用されないことに人類の生存がかかってい

(11)

ます。核兵器爆発の壊滅的影響は、それが偶発的であれ、計算違いによってであれ、あるいは計画的 であれ、十分な対応を行うことは不可能です。すべての努力はこの脅威を取り除くことに割かれなけれ ばなりません。核兵器が二度とふたたび使用されないことを保証する唯一の方法は、それらを全面廃 棄することでしかありえないのです。NPT の目的を満たし、その普遍性を達成することを通じたものを含 め、核兵器の使用を防止し、それらの垂直的・水平的拡散を防止し、核軍縮を達成することはすべて の加盟国に課された共通の責務です。よって 2010 年行動計画ならびに NPT の目標達成をめざした 過去の成果の完全な履行がこれ以上先延ばしされることがあってはなりません。

核兵器の人道的影響の問題を取り上げることにはまったくの妥当性があります。NPT の基礎を支える要 素の一つとして、今回及び今後の再検討サイクルにおいて、人道的結果が私たちの作業や行動を特 徴づけるものとなることがきわめて重要です。

これは政府に対してのみならず、この相互連関した世界において一人一人、すべての市民に影響を与 える問題です。政府がその責務を果たすと同時に、市民社会は、政府と連携しながら核兵器の壊滅的 な人道的結果についての意識を啓発するという死活的役割を担います。核兵器が呈する脅威を取り 除くために協働するという責務を、私たちは次世代に対して負っているのです。

ご清聴有難うございました。

(暫定訳:長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA))

(12)

第 3 報 深刻に問われる日本政府の核兵器認識(2013.4.24)

※下線部はリンク部分です。

(非人道性の声明を発表する南ア代表。2013 年 4 月 24 日午後。撮影:RECNA)

会議 3 日目の午前中は、 NGO の意見を聴く公式セッションに当てられた。午後には一般討論にも どって積み残しの発言が行われた。そこにおいては、 8 か国・グループと 2 国際機関が発言した。

国家グループの中では南アフリカが賛同 77 か国(あるいは 74 か国)を代表して「核兵器の人道 的影響に関する共同声明」を発表したのがハイライトであった。その内容と経緯の速報は、 【短信 2】で報告された。また、発言の中には赤十字国際委員会(ICRC)の発言もあった。一般討論は 午後 4 時 25 分に終了した。その後クラスター1 議題(核不拡散、核軍縮、並びに国際安全保障に 関連する条項の履行問題、及び安全の保証問題)に関する討論に入った。クラスター1 議題に関 しては 11 か国・グループが発言をした。NGO セッションの報告は第 4 報に委ねて、第 3 報では 24 日の午後のセッションを中心に報告する。

新アジェンダ連合の存在意義を再確認

クラスター1 の討論において、新アジェンダ連合(NAC)(アイルランド、メキシコ、ブラジル、

ニュージーランド、エジプト、南アフリカの 6 か国)を代表してブラジルが、提出した作業文書

「核軍縮」(WP.27)(英語)と「核軍縮における透明性の原則の適用」(WP.26)(英語)につい て説明を行った。1998 年に結成されたこの国家連合は、今年 15 周年を迎える。設立声明には 8 か国が名を連ねたが、NATO 加盟を目指すスロベニアが時を経ずして脱退し、長く 7 か国グルー プとして活動した。2000 年再検討会議において全会一致の 13 項目合意を勝ちとった立役者とし て評価されている。しかし、今回スウェーデンが現在の右派政権の意思によって脱退し 6 か国に なった。設立声明は現在もなお輝きを失っておらず、非同盟運動とは異なるリベラル中堅国家の 連合として核軍縮に重要な役割を担っている。 NAC に注目する意義の一つは、メキシコがこのグ ループに下支えされることによって核軍縮・不拡散イニシャチブ(NPDI)でも役割を発揮できる 構造が見えるからである。

NAC の「核軍縮」作業文書は 2010 年合意以来の進展について整理しながら、2015 年への課題

を述べている点で有益である。2010 年以来の進展については、米ロが新 START 条約によって戦

略兵器の数が削減されたことを評価する一方で、 「保有核兵器の近代化を継続し高性能で新型の核

兵器を開発し、その目的のために巨額の投資を行っていることは、核兵器国が行った約束に違反

している」と述べている。また、昨日の本ブログで日本がリードする核軍縮・不拡散イニシャチ

ブ(NPDI)に関連して述べた「核兵器の役割の低減」に関しては、核兵器国がこれを進めていな

いと指摘した。そして「残念なことに、核抑止政策が核兵器国およびその軍事同盟国の軍事ドク

トリンを決定づける特徴であり続けている」と述べた。このように、NAC は、日本や NATO の

安全保障政策が変わっていないことも指摘している。また、 2010 年合意で核兵器国が核軍縮につ

いて報告する義務(標準形式の追求や各国に課せられた NPT 履行報告)を負ったことについても、

(13)

今のところに何の前進もないと評価している。CTBT の発効についても、要件国であるインドネ シアの批准があったもののその他の前進がないと指摘した。ここではすべてを紹介できないが、

2010 年合意の履行状況に点数をつけるさまざまな NGO の試みがある中で、この作業文書は国家 グループによる核軍縮に関する 2010-12 年の評価書の性格をもっている。

このような評価を踏まえて、 NAC は次のような提案を行った。まず当然のこととして、第 1 報で 核兵器国も意識していることを伝えたが、2010 年合意の行動 5 の完全履行を要求した。行動 5 には「あらゆる種類の核兵器の備蓄の総体的削減に速やかに向かう」という約束があるが、NAC は米ロに対して、配備兵器と非配備兵器、戦略兵器と非戦略兵器、の区別無く新 START よりも 前進した措置を講じるように求めている。また、核兵器国が行動 21 で約束した通り、報告の標準 様式と頻度について優先的に合意するように要求し、報告頻度については年 1 回の報告が妥当で あると述べた。また、注目すべき提案として、核兵器国と軍事同盟を結んでいるすべての国に対 して、 「集団的安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割の低減そして除去のために取られた、あ るいは今後取られる措置に関して、重要な透明性と信頼醸成措置として、報告すべきである」と 述べた。これは、NPDI が昨年の作業文書において述べたことを、非核兵器国に適用した点にお いて注目されるものである。日米安保体制は集団的安全保障体制ではないが、同じ議論になるは ずであろう。

「人道的影響」:配慮を加えた声明にも日本は不参加

【短信 2】で伝えたように、3 月のオスロ会議(127 か国が参加)を踏まえて、核兵器の非人道性

を訴えて核兵器廃絶を要求する新しい「核兵器の人道的影響に関する共同声明」が、午後の一般 討論で発表された。賛同した国の数は発表文書(英文、和訳)では 74 か国であるが、77 か国と いう情報もあり、未確認である。発表の直前まで、発表者であるアブダル・サマド・ミンティ南 アフリカ大使と日本政府代表が談合している姿が見られるほど、日本政府の参加については紆余 曲折があった模様である。

昨年 10 月の 35 か国(34+バチカン)共同声明(英文、和訳)と比較したときの重要な変化は、

冒頭においてこの声明と核不拡散条約(NPT)との関連を明確に位置づけたことであろう。NPT の前文は「核戦争が全人類に惨害をもたらすものであり、したがって、このような戦争の危険を 回避するためにあらゆる努力を払い、及び人民の安全を保障するための措置をとることが必要で あること」という文章で始まるが、この警告こそ、壊滅的な人道的影響を自覚していた証である と声明は説いた。これによって、2010 年合意文書のみならず、NPT そのものが再検討会議にお いて人道的側面を考慮の対象にしなければならないことの根拠を与えるものとなる。

オスロ会議に 127 か国が参加したのは、会議が人道的結果の科学的知見を共有する場として厳し く限定的に定義されていたからであるとされる。日本政府が参加できた理由はまさにそうであっ たであろう。また、前の共同声明にあった「核兵器を非合法化する努力を強めなければならない」

という文言が無くなったことで、今回の声明は日本政府などが受け入れやすくなる側面があった であろう。しかし、十分に非人道的側面が露わになったオスロ会議の後において、如何にして核 兵器廃絶への道を描くかという次の議論は避けることのできない議論である。そして、そこに入 り込むとこれまでの分岐した議論が再燃することになる。第 1 報で伝えた、フランスのオスロ会 議に反発する激しい言説がそれを示している。

日本が賛同しなかった理由も同じような議論に行き着かざるを得ない。日本が「核兵器が二度と

ふたたび、使用されないことに人類の生存がかかっています」という今回の宣言の一文の、 「いか

なる状況下においても」に異議を唱えたと伝えられることは間違いないであろうが、言葉をいじ

って済む問題ではないと考えられる。 「いかに非人道的あっても、日本にとっては核兵器に役割が

ある」という日本政府の認識が露わになったのである。これは、かくも非人道的と認識される核

兵器に依存しなくても、より安全な安全保障への道があるのになぜその方向に進もうとしないの

か、という問題とつながって問われ続けることになる。

(14)

第 4 報 NGO の関与を「セレモニー」から実質に変える挑戦(2013.4.24)

※下線部はリンク部分です。

4 月 24 日午前のセッションは、予定通り 3 時間すべてが NGO 意見発表にあてられた。これは、

準備委員会(あるいは 5 年毎の再検討会議)の公式プログラムの一環として、 NGO が各国政府代 表の前で意見を述べるというものである。NPT 再検討プロセスにおける関与拡大を求めた NGO の働きかけによって始まり、 2000 年再検討会議以降、政府と市民社会をつなぐ重要な接点の一つ として取り組まれている。

意見発表に先立ち、議長からは今準備委員会の登録 NGO 数が 53、NGO 主催の並行イベント数 が 37 にのぼることが紹介され、市民社会の積極参加を歓迎する旨が述べられた。しかしそうした 言葉の一方で、例年概して NGO 意見発表への各国政府代表の参加態度は芳しいものではない。

今年も例外でなく、国名のプラカードがずらりと並んだ本会議場の机は 3 分の 2 以上が空席であ った。5 つの核兵器国の参加があったことは救いであったと言えるが、NGO の意見表明セッショ ンを「毎年恒例のセレモニー」として軽んじる傾向があることは否めない。また、 NGO の中から もセッションの形骸化を懸念し、その在り様を見直そうとの声があがっていた。

今年の意見表明セッションで目を引いたのは、 NGO 側によるそうした「マンネリ打開」の努力で あった。例年においては、10 余の課題についてそれぞれその分野を専門とする NGO 代表者が問 題認識を示し、各国政府に勧告を行うという形がとられてきた。しかし、「NPT における双方向 性と創造性を活性化させる」(レイ・アチソン)ことを今回の目的に掲げた NGO 側は、3 時間の 構成を一変させてセッションに臨んだ。各テーマの発言者にほぼ平等な時間配分を行うというや り方を変更し、全体を①基調講演、②パネル・ディスカッション、③キーパーソンの訴え、の 3 つの部分に分け、より的確かつ魅力的なプレゼンテーションを目指したのである。

こうした企画立案や具体的な起草作業には、実際ジュネーブには来ていない NGO も含め、世界 各国のさまざまな NGO 関係者の関与があった。起草作業はメーリングリスト(ML)を通じて主 に準備され、そこは常に誰でも参加可能なオープンな場として機能していた。調整役として活躍 したのは今年も「平和と自由のための国際婦人連盟(WILPF)の一プログラムである「リーチン グ・クリティカル・ウィル」(RCW。レイ・アチソン代表) であった。RCW は、国際機関への NGO 窓口として、また、国連本部が所在するニューヨークやジュネーブの情報拠点として、核軍 縮・不拡散問題を中心に精力的な活動を続けている NGO として知られている。

以下がそのプログラムである。

■イントロダクション レイ・アチソン(リーチング・クリティカル・ウィル)

■基調講演

・「核兵器を再考する」 ワード・ウィルソン(英米安全保障情報センター(BASIC)上級研究 員及び核兵器再考プロジェクト長)

■市民社会パネル

・ティム・ライト(核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN))(議長)

・ボブ・ムトンガ(核戦争防止国際医師会議)

・ビアトリス・フィン(リーチング・クリティカル・ウィル)

・キャサリン・プライズマン(核戦争防止地球行動)

・セザール・ハラミジョ(プロジェクト・プラウシェアズ)

■キーパーソン発言

・広島市長の訴え 松井一實(広島市長、平和市長会議会長)

・長崎市長の訴え 田上富久(長崎市長、平和市長会議副会長)

(15)

・被ばく者の訴え 藤森俊希(日本被団協事務局次長)

・若者の訴え マイラ・カストロ(核兵器禁止若者ネットワーク(BANg))

クリスチャン・N・チョバヌ(核時代平和財団)

全体を通しての NGO の一貫したメッセージは、核兵器使用がもたらす「壊滅的な人道的結果」

を根拠に、国際社会が直ちにこの兵器の「非合法化」に向かうべきであること、とりわけ非核兵 器国がその潮流において指導力を発揮する必要性があることであった。

基調講演を行ったウィルソン氏は、核兵器に対する人々の考え方がいかに不正確な情報や思い込 みにとらわれているかを具体的な事例を挙げて説明した。 「核兵器は戦略的に有効な兵器である」

「核兵器は安全であり信頼性がある」 「一度発明されてしまった核兵器を廃絶することは不可能で ある」等々の言説は「神話」に過ぎないと述べたうえで、ウィルソン氏は、多くの国が依存する 核抑止政策が非人道的結果を招きかねないことを歴史的観点から指摘した。

5 人の NGO 専門家によるパネル討論は、核兵器の非人道性と非合法化をめぐる議論を「一問一答」

形式で多角的に、かつ、わかりやすく提示する、というユ ニークなものであった。議長のライト 氏が質問を投げかけ、4 人のパネリストの一人がそれに回答する、という形である。議論された テーマにはたとえば以下のようなものがあった。

「核兵器使用は環境、あるいは社会経済発展にどのような影響を与えるのか。」

「核兵器の非合法化はどのようにして達成可能なのか」

「核兵器近代化をめぐる問題点は何か」

「安全保障上の核兵器の役割を低下するとは何を意味するのか」

「多国間の核軍縮交渉の前進を妨げているものは何か。どのような改善策が必要か」

「市民社会はどのような役割を担うことができるのか」

パネルの最後に議長が会場の政府代表に質問を募ったが、手は上がらなかった。

続いてのキーパーソンの発言においては、広島、長崎両市長、被爆者、ユースがそれぞれの立場 から核兵器の非人道性と非合法化の必要性を訴えた。長崎市長は、3 月に開かれた核兵器の非人 道性に関するオスロ会議に言及する中で、核兵器を「遺伝子標的兵器」と断じた。これは日本政 府代表団の一員として同会議に出席した朝長万左男長崎原爆病院長がその発表で述べていたもの である。

また、ユース代表として 2 名の欧州の若者が発言をしたが、そのスピーチの起草段階には「ナガ サキ・ユース代表団」もかかわっていたことを紹介しておきたい。 「私たちは被爆者と同じ苦しみ を経験したわけではない。しかし彼らの証言を聴くことで、核兵器の非人道性に想像力を働かせ ることはできる」というスピーチの箇所は、被爆地の若者の声を世界に伝えたいと起草に参画し た「ユース代表団」の提案を受けて盛り込まれたものである。

セッションの最後は各国政府代表との質疑にあてられた。アイルランドが NPT サイクルにおける 市民社会の関与拡大に向けた具体策について質問し、NGO 側からは現在の「3 時間の意見表明セ ッション」の枠を超えたより広範な市民社会との接点を目指したい旨、回答があった。草の根の 運動だけではなく、専門家、アカデミアといったさまざまな層における関与が可能であり、また、

NGO が本会議中に実際にプラカードを持って発言するということも提案された。

NGO の期待に反し各国政府からの質問はその後出ず、時間を 30 分ほど残してセッションは終了

した。3 時間という貴重な枠を「毎年恒例のセレモニー」ではなく、実質的な議論の場として機

能させるべく、市民社会の挑戦は今後も続いてゆくであろう。

(16)

(NGO セッションの様子。2013 年 4 月 24 日午前。撮影:RECNA)

(17)

【短信 3】再び中国の先行不使用政策について(2013.4.26)

※下線部はリンク部分です。

中国が、いかなる場合においても核兵器を先に使うことはないという、最初の核実験の当時から の「先行不使用」 (ノー・ファースト・ユース)政策を変更したかも知れないという憶測について、

ブログの【短信 1】で紹介した。そして、 「第 1 報」において、今回の中国の一般討論を聴く限り、

政策に変化があるとは考えにくいことを述べた。

同じ問題が「ニューヨークタイムズ」紙上で論じられている。4 月 18 日付で、カーネギー平和財

団のジェイムス・アクトン氏が上記の憶測のオピニオン記事を書いたのに対して、 「憂慮する科学

者連盟」(UCS)の中国問題専門家グレゴリー・カラーキー氏が投稿(4 月 24 日付)して「政策

変更は考えにくい」と述べている。彼が根拠として引用したのは、4 月 8 日のジュネーブにおけ

る中国軍縮大使の公式発言である。本ブログの第 1 報の情報は本国外務省軍備管理・軍縮部門ト

ップ(NPT 準備委員会中国代表団長)による、より新しい公式発言となる。(梅林)

(18)

第 5 報 包括的な要求と一歩一歩の要求は両立する(2013.4.25)

※下線部はリンク部分です。

会議 4 日目の午前は、昨日に引き続いてクラス ター1 議題(核不拡散、核軍縮、並びに国際安 全保障に関連する条項の履行問題、及び安全の 保証問題)についての意見発表があり、19 か 国・グループが発言した。この議題は午前中に 終了する予定であったが終わらず、午後に入っ て追加して 10 か国・グループが発言した。午 後 4 時過ぎになってクラスター1 特定問題(核 軍縮、安全の保証)へと議事が移り、10 か国・

グループが発言した。前回の準備委員会にも同 じ印象を受けたが、この 2 つに議題を分けるこ とに余り有用性が感じられない。特定問題で発 言希望国は多くなく、会議は 30 分の時間を残 したまま閉会となった。明日も午前は同じ議題 に当てられているが、次の議題へ移る可能性が ある。

非人道的影響の共同声明についての余波

会議は概して一方通行の演説であったが、昨日の「核兵器の非人道的影響に関する共同声明」に 関して日本政府の弁明や発表国である南アフリカの発言など、興味深い余波があった。日本政府 は午前のセッションの 6 番目に予定の順序で発言し、南アフリカは 19 番目に予定外の発言を求め たように見えた。

聴きながらのメモであるが、日本政府は共同声明に賛同しなかったことについて、 「日本は真剣に、

真摯に南アが発表した声明を検討した。唯一の被爆国として核兵器使用の被害を理解している。

声明の基本的内容や、そこで言われている核使用の短期的影響、社会経済的影響についての内容 を支持する。しかし日本の置かれている状況を考慮すると賛同できない。日本は声明の修正につ いて協議をしたが合意には至らなかった。将来、同じテーマの声明が出た際は賛同する可能性を 追求したい」というような説明を行った。相手があることなので南アなど他国との協議の内容を すべて明らかにできるとは思わないが、 「置かれている状況」や「修正」と述べていることの内容 について、日本の市民、とりわけ被ばく者、そして広く世界の市民に説明する必要がある。 「状況 によっては核兵器の使用が許される」という立場が説得力もつとは考えにくいが、そのような立 場は、日本政府の意に反して、北朝鮮の核兵器開発を許さないという国際世論を弱めることにな るだろう。

同じように聴き取りのメモであるが、南アフリカ代表は、直接的に日本に反論する形ではなく次 のような趣旨を述べた。 「核兵器の人道的側面の問題はグローバルな問題であって、すべての国家 が取るべき方向性を示すものであり、特定の国が置かれている個別の環境の問題を持ち込むべき ではない。」この発言は、日本政府が修正協議の中で日本の「置かれている状況」という論理を展 開しながら文言の修正を強く求めたことに反論する意味があったと推察される。

午前の会議の発言国にスイスが含まれていた。スイスは第 0 報で述べたように、赤十字国際委員 会を擁し、核兵器の非人道的側面における国際世論を先導してきた。この日の発言(英語)にお いても、前日の 77 か国共同宣言や 3 月のオスロ会議を引用しながら基本的な立場を強調した。

「私たちは、昨日、77 か国を代表して南アフリカが発表した共同声明を全面的に支持します。ス イスは、核兵器は安全を生み出すものではなく、国際社会、そして人間社会への脅威であると確 (会議後に談笑する議長フェルーツァ・ルーマニ ア大使(左)。2013 年 4 月 25 日午後。撮影:

RECNA)

(19)

信します」 「核兵器のいかなる使用も防止すること、したがって核の惨害を防止することは、みん なの責任です。実際、 NPT 第 6 条はすべての締約国が核軍縮を進めることを要求しています」 「核 兵器の使用を防止するとともに禁止し、究極的には他の大量破壊兵器と同様に核兵器を廃絶する ためには、より具体的な手段と道具を開発することが必要です。スイスは核兵器のない世界とい う共通の最終目標への道を拓くために、核兵器の漸進的な非正統化の努力に貢献し続けます」。

「ステップ・バイ・ステップ」の硬直を乗りこえる

核兵器の使用を絶対的に否定するという原則的な立場と、それを実現するために具体的な措置を 講じてゆくこととは、決して矛盾することではない。それを、ことさらに対立的に説明し続けて いるのは、日本政府や米国やフランスであるように見受けられる。スイスは発言の中で、スイス が力を入れている 2 つの具体的措置について説明した。

一つは、未だに数分の中に核兵器を発射できる態勢を維持している高度の警戒体制を緩和させる、

いわゆる「警戒体制の解除」 (ディ・アラーティング)の問題である。スイスはチリ、マレーシア、

ニュージーランド、ナイジェリアと 5 か国で「ディ・アラーティング・グループ」を形成してこ の問題に取り組んできた。2010 年合意の行動計画の中でも、行動 5e(和訳)として「核兵器シ ステムの作戦態勢をいっそう緩和すること」が求められ、核兵器国はその努力の結果を 2014 年 準備委員会で報告することが義務づけられている。グループは昨日の午後のクラスター1 会議で この問題で共同声明(英語)を出している。スイスは発言の中で、米ロが最低限の取り組みとし て 2015 年までに警戒体制を緩和するように求めた。

スイスのもう一つの取り組みは、核軍縮を逆戻りさせないという「不可逆性の原則」をいかに守 らせるかという問題である。これについては、スイスは今回の会議に単独で作業文書「2015 年再 検討会議における不可逆性原則の効果の強化」(WP.32)(英語)を提出した。作業文書は、不可 逆性の順守を明らかにするために、保有核兵器に関する包括的で正確な情報を定期的に提出する という核兵器国の誓約、核兵器国が原子力平和利用と説明している分野における査察の拡大、核 兵器計画から外された核物質の恒久的な保障措置が確実にできるように国際原子力機関(IAEA)

の検証制度を強化すること、などを課題として掲げている。

このようなステップ・バイ・ステップの措置と非人道性を基調とする核兵器禁止への包括的なア プローチに関して、 2 つは対立するものでないことを、午後のクラスター1 会議でブラジルが発言 した。「主に核兵器国が主張する段階的アプローチと核兵器禁止条約(NWC)の作成により核軍 縮を達成しようとするアプローチは対立するものではなく、その違いを論じることはあまり意味 はない。仮に NWC を作成するにしても、条約の交渉にはやはり行程表が必要であり、順を追っ て進めるという意味では段階的アプローチと本質的に異なることはない。本当に重要なのは、ど ちらのアプローチを選択するかということではなく、核兵器の廃絶へ向けて明確な行程表を作成 し、ある程度の柔軟性はあっても良いが、具体的なタイムフレームを打ち出すべきである。 CTBT の次のステップが FMCT であるとするなら、いつまでに FMCT を成立させ、その次に何を実施 するという行程を示すべきである」というような趣旨であった。

これに対し、それまでほとんど個人の意見を出さずに機械的に議事を運営してきた議長が「各国 間の意見の交換を促す建設的な意見であり、議論を活性化するために歓迎する」と発言したのが 印象的であった。

この種の議論は、 NPT 再検討会議はもう卒業していなければならないはずだとの感想を強くした。

記憶に鮮明に残っているが、 2005 年再検討会議においてマレーシアなど 6 か国が作業文書「核兵 器 の な い 世 界 の 確 立 と 維 持 の た め に 要 求 さ れ る 法 的 、 技 術 的 、 政 治 的 諸 要 素 」

(NPT/CONF2005/WP.41)(英語)を提出した。その中で、核軍縮への道筋について、「ステッ

プ・バイ・ステップ」「包括的」「段階かつ包括的」と類型しながら、それぞれが有用である局面

を述べているのである。 NGO が開発したモデル核兵器禁止条約も、そのような考え方に立ってい

(20)

【短信 4】非人道声明「拒否」に関する日本政府の弁明文書(2013.4.27)

※下線部はリンク部分です。

第 5 報で書いたように、 25 日午前のクラスター1 の議論なかで、日本政府は、24 日の「核兵器の 非人道的影響に関する共同声明」に賛同しなかった理由について声明の最後で言及した。関連部 分の抜粋訳を紹介する(英語、和訳*)。(中村)

天野万利軍縮大使の演説 クラスターⅠ 核軍縮

2013 年 4 月 25 日

<抜粋・暫定訳>

(前略)

日本は共同声明の内容について、慎重かつ真摯に検討を行いました。

原子爆弾の惨禍を知る唯一の国として、日本は核兵器使用がもたらす人道的影響についての懸念を共有 しています。核兵器使用がもたらす短期的被害、さらには耐え難い社会経済的、世代を超えた損失につい て、共同声明が言及しておりました諸点を含めまして、日本は核兵器の人道的影響に関する基本的な訴え に賛同いたします。

しかし他方、日本をとりまく安全保障環境を念頭に置きながら、私たちは声明の性格とそれとの整合性を慎 重かつ真摯に検討し、声明の修正をめぐって協議を行いました。残念ながら、相互に納得できる結果は生 み出せず、日本は声明への賛同を見送ることといたしました。しかし、日本は将来、同じテーマの声明に対し 賛同する可能性を真剣に検討したいと考えております。

日本は、他のいかなる国よりも、核兵器使用の非人道的結果を理解しております。私たちは今後も、世界に 対し、また、将来の世代に対し、核兵器使用のもたらす惨禍の実相を伝えていくという重大な責務を果たし てゆく所存です。

(暫定訳:長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA))

(21)

第 6 報 不拡散へ高まる IAEA の役割への期待(2013.4.26)

開会 から 5 日が過ぎ、ちょうど会議スケジュ ールの半分を終えたところで、週末を控え、準 備委もやや「中休み」 ( 「中だるみ」ではないこ とを切望する)という感じで、予定よりも議事 が先行しているために、「時間調整」として、

会議は午前中のみであった。

NPT の三本柱のバランス

しかし、これは決して単純に「することが無い」

わけではなく、実はなかなか厄介な事情も絡ん での決定である。NPT では、「核軍縮」、 「核不 拡散」、 「原子力の平和利用」の三つの条約の目 的が、しばしば「三本柱」と呼ばれ、いずれも 同じく重要であり、この「三本柱」は対等に扱 われなければならないというコンセンサスが 締約国の間で共有されている。そのため、会議

においても、 「核軍縮」(クラスター1 議題)、「核不拡散」(クラスター2 議題)、「原子力の平和利 用」 (クラスター3 議題)には、それぞれまったく同じだけの時間が割り当てられている。そして、

いずれかの議題の検討において、議論が出尽くし、発言を求める参加国が無くなった場合に、今 回のように予定より早く議事を終了させることはできるが、その分余った時間を、他の議題の検 討時間の延長に充てることは、 「三本柱」の公平の原則に反するとみなされかねないのである。そ れだけこの「三本柱」の間のバランスは重要視されていると言わなければならない。このブログ は核軍縮に関心を集中して報告してきたが、今回の会議の一般演説においては、実際には、原子 力の平和利用の促進と、原子力分野での技術協力の拡大強化に力点を置いた国が少なくなかった。

多くの開発途上国にとっては、安心して原子力の平和利用を進めることが最大の関心かもしれな い。

第 5 報にクラスター1 でのブラジルの発言を取り上げたが 、それは具体的措置を行程表の下に置 くよう主張するものであった。実はその前に、25 日の午前にロシアが具体的措置について発言し ていたので取り上げておきたい。要約すると次のような内容であった。核兵器が非人道的な兵器 であることは分かりきったことであり、今さらそれを改めて指摘するために時間を費やすべきで はない。現実に核兵器を削減するために必要な具体的な方策についてこそ議論すべきである。特 に財政面での制約をどのように克服するかという重要な問題については、ほとんど協議が進んで いないので、むしろ現実に核軍縮の促進に必要な技術的、経済的な裏付けの確保に議論の力点を 移すべきである。また、これに対し、イランが、技術的な議論を先行させようとするのは、核兵 器国が核軍縮の実施を遅らせるための隠ぺい工作に過ぎないという批判を行った。イランの批判 はともかくとして、核軍縮の推進に必要な、財政的、制度的な問題も含めて、技術的な側面にも 国際社会がきっちり対応してゆくことは、それ自体は重要なことである。

IAEA の役割への共通した評価

26 日の午前中には、クラスター2(核不拡散、保障措置、並びに非核兵器地帯)の議論が始まっ た。ここまでの議論では、非同盟諸国と EU を含め、発言したほとんどの国が非核兵器国の原子 力関連施設を監視する国際原子力機関(IAEA)の保障措置(セーフガード)の強化と、IAEA に より広い権限を与える追加議定書の重要性を指摘した。また、非同盟諸国は、核兵器保有国も、

(国連欧州本部前の国際連盟時代の遺産モニュ

メント、軍備の無い世界を象徴。2013 年 4 月

26 日。撮影:RECNA)

参照

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