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二つの物象化 とその連続化

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二つの物象化 とその連続化

高 倉 拳 夫

Abstract

GeorgLuk孟cstriedtocombineMarx'sreificationandWeber'sration‑

alityin "verdinglichung"inhisHistoryandClassConsciousness (GeschichteundKh2SSenbewuBtsein)in1922.0ntheotherhand,Marx describedwageasreificationofaproductionrelationinhisearliertext

(1862)ofCapital.

ReificationofproductionrelationsistheimportantnotionofMarx's politicaleconomy.Byexploringreificationofproductionrelationsinthe contemporarycapitalism,itcanbefoundthatthecloserrelationbe tweenthelatestdevelopmentbetweenwageasareificationofproduc tionrelationandreificationofproductionrelationsinthemoneymarket.

Keywords:financeledgrowthregime,reficationofproductionrela tions,informationandcommunicationtechnology,fairvalueaccounting

はじめに

ルカ‑チはその著書 『歴史 と階級意識』での物象化論では,『資本論』第 1部の物象化論 を基軸 にヴ ェ‑バーの合理化論 を援用 しつつ叙述 している が,それは商品交換における物神性 と資本制的生産過程 とくには労働過程で の 「計算 または計算可能性 を 目的 とす る合理化の原理」 (Georg Lukacs, GeschichteundKlassenbeu)uBtsein:StudientibermarxistisheDialektik, Luchterhand:Literaturverlag,1970,S.177.城塚登 ・古 田光訳,白水社,

1968年 〔ルカ‑チ著作集9,170ページ) とを関連づけている。

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そのルカ‑チの物象化論では,資本論』第3部の 「三位一体的範式 の生産諸関係の物象化の総括にも言及 されてはいるが,資本 一利潤そして資 本 一利子 という物象化 に対する考察は生産過程のそれに比べて理論的に深化 させ られていない。すなわち,G‑G′での生産過程の労働 における物象化あ るいは計算可能性による合理化までが論 じられるのであ り,G‑G′について はその外部での資本 一利子範式の成立 として言及されることになる。

しかし,現在起 こっている 「逆流する資本主義」 (伊藤誠)1)の復活には, 技術の変化のみでな く 『資本論』で想定 された物象化のいっそうの進展 一 物象化の構造が構造的に全面的に変化 したのではないが ‑ が作用 している

と考 えられる。すなわち,金融主導 (浸透)型成長体制においては技術の変 化の寄与 も重要であるが,G‑G'が G‑G′の内部 に対 して直接的な作用を 一 会計制度だけではな く 一 及ぼす ようになって きている。そのことは資 本 一利潤 という関係を変容させてはいないのであるが,むしろ資本 一利子範 式が資本市場をつうじて資本 ‑利潤範式を強化 しつつそれに接近するように なって きているのである。

なお,ルカ‑チのい う物象化 (Verdinglichung)は 「物化」ではな く,坐 産過程での数量化あるいは合理的計算 に即 して とらえられている2)。他方, 本稿でい う物象化 (Versachlichung)は 「生産諸関係の物象化」であって, 総過程 における資本制的な合理的計算の 「根拠」を示 している。両者はその 基盤は共通であ り,資本の運動の内部で見 るかまたは資本の運動の外部で見 るかの違いがある。 ここでは両者を関連 させてみるとき,そこには金融主導

(浸透)型成長体制の一つの特徴を見 ることがで きる。

なお,19世紀か ら20世紀の前半では,労働力商品の価値 との関連でいえば, 時間払い賃金や出来高払い賃金で も労働者個人の成果を賃金 とかかわ らせる 賃金形態ではあるが,それ 自身は利潤率をどの ように高めるか という経営戦 略 と密接 にかかわ りなが ら最初か ら計算 され管理 されているのではない3)0 すなわち,G‑G′において,出発点 (G)と終点 (G′)との比較での収益の

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増大 と,その中間の生産過程での労働者の個別の労働 とその評価そ して労働 力商品の価値 とAG/G の測定 との関連 については不連続面 を残 していた と いえる。つま り,生産過程での労働の物象化あるいは数量化 と,生産諸関係 の物象化 とは距離があった といえる。その差は20世紀の20年代以降,管理会 計の発展にみ られるようにアメ リカ合州国では埋め られていった。そ して, 次には1970年代以降では金融市場 における G‑G′に即 しての G‑G'の評価 すなわち金融市場での生産諸関係の物象化の表現 に,G・G′としての実物面 に即 した資本の運動の表現がさや よせ されるなかで,生産過程 での労働者の 労働の個別的評価そ してその労働の物象化 と金融市場での生産諸関係の物象 化 とが直接的に関連付 け られて表現 されるようになって きた。

1)「仮説的私見 によれば,現代の大不況の発生 と進行の過程 をつ うじ,資本主義の運動 原理 が,その作用 を統御 し緩和 しよう とす る国家政策や社会的諸制度 よ り強力 にみず か らを貫徹 す る傾 向が再現 して きてい る。/資本主義 は,いわば歴史のフ イルムを逆 転 し,一世紀 にわた る歴史の継続的な発展傾 向を溶融 し,い くつかの側面で,勝手の 自由主義段階やそれに先立 つ重商主義段階 をさえ想起 させ る様相を表 して きているよ うに思われ る。まさに逆流す る資本主義であ る ‑・経済危機 を介 しての先端的な技 術の発展 に ともな う資本主義の現代的展開の特性 が,資本主義の基本的原理の回復 に ある とすれば,それはある意味で きわめて逆説的な事態 といわなければな らない」 ( 藤誠 『逆流する資本主義』東洋経済新報社,1990,14‑5ページ)0

2)ル カ‑チは次の ようにもいっている。「他方では この ような合理化のなかで,また合 理化の結果,合理的計算の基礎である社会的 に必要な労働時間,は じめはたんに経験 的に とらえ られ る平均的労働時間にす ぎなかったが,のちには,労働過程 はますます 機械化 され合理化 されるために,で きあがった完結 した客観性 を もって労働者 に対す るような客観的に計算で きる労働課業 とな るのである。 この ような合理的機械化 は, (テイラーシステムの ように)労働過程が近代的 に 「心理学的 に」分解 されてい くと ともに,労働者の 「魂」 にまで くい込 んで くる。すなわち,労働者の心理学的な特性 さえ も,かれの全人格 に対立 して客体化 され,その結果,合理的な専門体系のなかに 組み入れ られて,そ こで計算で きるもの として把接 され ることになるのである」(a.a.

O.S.177,前掲書,168‑9ページ)。 あ るいはまた,次の ように も述べている。「とこ ろで,この ことが意味 しているのは,〔物象化のためには〕合理的機械化 と計算可能性 とい う原理が,生活の現象形態全体を とらえねばな らない, とい うことである」〔a.a.

0.S.182,前掲書,174ページ)0

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3)テーラー‑フォード・システムの成立によって,資本制賃労働の原理形態はほぼで きあがったといってもよいだろう」(内山節 『労働の哲学 一 労働過程史の方法 ‑ 』 田畑書店,1982,137ページ)0

なお,テイラー ・システムの導入による工場管理の変貌については,塩見治人 『 代大量生産体制論』森山書店,1978年,第4葦,を参照。

1 『資本論』での生産諸関係の物象化 と擬制資本について

マル クスは 『資本論』第 3部 草稿 の,現行版 『資本論』第 3部 「第29 銀行資本の諸成分」 にあた る部分 で次の ように述 べてい る。「国債証券で あろうと株式であろうと, これ らの所有権原の価値 の 自立的な運動は, これ らの所有権原が,それ らを権限 た らしめている資本 または請求権のほかに, 現実の資本を形成 しているかの ような生壁 を確認す る。つま りこれ らの所有 権原は重畳 になるのであ って,それ らの価格 は独特 な運動及び決 ま り方 をす るのであ る.それ らの市場価値 は,現実の資本の煙塵 が変化 しな くて も (と い って も価値増殖 は変化す るか もしれないが),それ らの名 目価値 とは違 っ た規定 を与 え られ る」 (KⅢ.Ms.S.336,S.523,訳は大谷禎之介による)0

「これ らの有価証券の下落 (減価) または上昇 (増価)が, これ らの証券が 表 してい る現実の資本の運動 にかかわ りのない ものであ るかぎ り,一国民の 富 の大 きさは,減価 お よび増価 の前 もあ ともま った く同 じであ る」 (KⅢ.

Ms.S.336,S.524,)0

これは,擬制資本価格の形成 に基づ く実物資本か ら禾離 した資本評価 につ いての言及であ る。それは,金融市場 での有価証券 の価格 と実物資本の価格 との乗離の指摘である。た とえば擬制資本 としての有価証券の価格は,利潤 あ るいは収益 を Qそ して利子率 を iとすれば Q/(1+i)n としてあ らわされ る。

この実物資本額 と擬制資本額 との差額 はヒルフ ァデ ィソグによって創業者 利得 として支配株主 に よって取得 され ることが示 された。そ して,それは支

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配株主 による 「配当の一括先取 り」 として想定 されてお り,そこでの基準は 利潤率 と利子率の差がその ことを可能に していた。

他方でヒルフ ァデ ィングの設例 にみ られるように, この金融市場での企業 価値の評価が逆 に産業資本の運動の評価の会計 に持ち込 まれるこ とは想定 さ れていない。両者は別個の世界 にあ り,生産過程で生み出された利潤がその 両者 を架橋 している。 また,擬制資本の総額 と G‑G′における資本 とは別 個の次元 に存在 し,G‑G'での評価 あるいは会計 が GG′に干渉 し変化 さ せてい くとい うことは,19世紀末か ら20世紀初頭のアメ リカ合州国や ドイツ では起 こらなかった。

2 資本市場における GG′の評価に対応 した G・G′につい ての会計の変化。そ して,物象化 と疎外

1970年代以降,利潤率の水準 を尺度 とし,その金融市場での表現 (株価) に基づいての G‑・G′内部への交渉が生 じるようになって きている。 ここで, ル カ‑チが注 目した生産過程 における技術 に即 した合理性 と物象化 との関連

とは別の要因が生産過程で付加 され ることになる。 また,尺度 としての利潤 率あるいは企業収益の高 さは企業経営を通 じてその全体の基準 としてあては め られるが,その際に会計制度は重要な役割を果たす。

ところで, もともとは原価計算あるいは管理会計は生産過程の合理的計算 の貫徹の手段 として機能 していた。それは,金融市場での企業価値 を高める

ことあ るいは株価の高 さを維持することとは直接 にあるいは相互 には結びつ いてはいなか った4)。 この G‑・G′での会計 と,利潤率 を介 しての金融市場 (G‑G′)での評価 とが より一層結びつけ られた ものがキ ャッシ ュフロー会 計や時価会計である。ただ し,G‑G′に即 した会計 と実物資本か ら出発する 会計 とが矛盾 な く整合的であるわけではない5)6)。それは,金融主導 (浸透)塗 成長体制においてバブルの ような現象が起 こった ときに齢齢をもた らしうる。

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ところで,資本市場での企業価値の評価を基準 とする,すなわちより高い 株価 に帰結する高利潤率を 目指す経営が会計 (制度)の発展 ともあいまちな が ら生産過程あるいは労働現場 に貫徹 してい くり と同時に,ICTの発展 と

もあいまった変化の速い技術革新は労働者の位置を不安定にし,またその労 働が対象化 されてい く内容を絶えず消失 させてい く7)0

マルクスあるいはルカ‑チの見ていた生産過程あるいは労働過程での合理 性あるいは物象化の貫徹 には,労働過程での技術的な合理性 とともに G‑G′

での より多 くのAGを獲得で きることがその要因 として挙げ られる。 これに 対 して,金融主導 (浸透)型成長体制の もとでは,G‑G′という運動の中で AGの表現つま りは株価の高 さに主導 されつつ G・G'での生産過程での 合理性が測 られまた貫かれる。

この意味で1970年代以降,生産諸関係の物象化 と生産過程での物象化 とは より一貫 した もの として関連づけ られるようにな り,またより進化 した表現 を持つ ようになった といえる。その点で,「23冊のノー ト」で賃金を物象化 した 「一つの生産関係」 と規定 していたりであるが,その物象化がさらに進 んだ地点に来ているといえよう

4)19世紀後半か ら20世紀前半のアメ リカ合州国における,技術者の会計 と会計士の会 計の相違 とその接触 と統合 という視点か らの歴史的な研究 として,辻厚生 『管理会計 発達史論』有斐閣,1971年,を参照。

また,1920年代以降の管理会計の発展については,鹿本敏郎 『米国管理会計発達史』

森山書店,1993年,を参照。

5)門田安弘はその著 『原価計算』 (税務経理協会,2001,〔2〕2002年) ととも に刊行 した 『管理会計』の 「はしがき」で次のように述べている。「製造業におけるコ ス ト情報の計算機構や,その減価情報 をコス トマネジメン ト目的 と予算管理 目的に用 いるための計算機構について」は 『原価計算』で述べた。そ して,「とくに本書で力を 入れて分析 したのは,分権的組織論での社内資本金制度や社内金利制度 と,経営戦略 論での企業価値重視経営における 「経済的利益」の評価 システム との,ファイナンス 理論 から見た一貫性である」 (税務経理協会,2001,iiページ) としている。

6)次の評価 も参照。「多 くの批判的な見解 もみ られるが,実証研究によって原価主義会

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計の結果は,株価 との相関性が高 くとくに連結財務諸表は優れていると言われている。

/利益額重視の立場か ら見て,21世紀への最大の贈 り物 は,時価主義会計の導入であ り, とくに連結財務諸表への全面的導入である。 しか し経済学的利益の測定可 能性は,現実にはそq)測定がほ とん ど不可能であ り,予測要田に確実性を持たせた り, 会計情報を利用する意味がないほ どの完全 ・完備市場を前提 としなければな らな くな

る。 /確かにこの贈 り物は,理論界では意味のあるもの と思われる。/ しかし 制度化 し,その会計が有用性あるもの と評価 されるには重過 ぎる代物 か もしれない」

(高田正淳 「環境の変化 と会計研究成果の制度化」『企業会計』53 1号,20011月)0

7)ICT革命が労働現場 にもた らした影響については,た とえばジル A・フレイザ‑

(森 岡孝二監訳)『窒息するオフィス一仕事 に強迫 され るアメ リカ人‑』岩波書店 , 2003年,を参照。

また, 日本での e‑ビジネスの労働現場の記録 として,横田増生 『潜入ルポ アマゾ ン ・ドット ・コムの光 と影 一 躍進するIT企業 ・階層化する労働現場 ‑ 』情報セン

ター出版局,2005年, も参照。

むすび 一 市 民社会 と金融主導 (浸透)型成長体制 一

資本はその共 同存在 (Gemeinwesen)としての側面8)を弱めつつ,そ して 企業の商品化をいっそ う進めつつ,同時に労働者の個へのいっそ うの解体あ るいはその労働力の商品化のいっそ うの貫徹を進めなが ら,外延的蓄積体制 においての資本制経済の存続を可能 とする方向へ進 んでいる。

この ような金融主導 (浸透)型成長体制の もとでの物象化のい っそ うの進 展は,同時にいっそ うの疎外の進展 を もた らす ことにもなってい る。あるい は,今 日の疎外現象をみる ときには,金融市場あ るいは G‑G′として表現 される貨幣資本の運動の優越性をも視野に入れることが必要 となっている。

他方で,これまでの W ‑G‑W に基礎 をおいて考 え られる市民社会 か ら 考 える とき,G‑G′の もとでの格差拡大 によってその市民社会が脆弱化す る とすれば,金融主導 (浸透)型成長体制の もとでの市民社会の再生 につなが る成長体制を見出してい くことが必要であろう9)10)0

(8)

8)小著 『生産諸関係論 としての経済学の成立』九州大学出版会,1989,276ページ, を参照。

9)た とえば,ミシェル ・アグ リエ ッグ (坂 口明義訳)「フ ォー ド主義か ら年金資本主義 へ 【勤労者社会は統合失調症に陥ったのか ?】」『環』別冊9,2004年12月,を参照。

10)ア メ リカ合州国のサービス経済での低賃金労働 については,BarbaraEhrenreich, NickelandDimed:On(Not)Getting砂 inAmerica,NewYork:HenryHolt&C0,,2002,

を参照。また,イギ リスでの所得格差拡大の もとでの低賃金労働の体験例 として,ポ リー ・トインビー (椋 田直子訳)『ハー ドワーク‑低賃金で働 くとい うこと‑』東洋経 済新報社,2005年,がある。

また,ア メ リカ合 州 国な どでの所 得格差拡大 とその影響 については,Samuel Bowles,HerbertGintisandMelissaOsborneGroves(eds.),UnequalChances:Family Backgy10undandEconomicSuccess,PrincetonU.P.,2005,あるいは,SamuelBowles, RichardEdwardsandFrankRoosevelt,UnderstandingCapitalism:Competition,Com‑

mandandChance,3rded.,oxfordU.P.,2005,chap.14およびchap.15,を参照.

日本については,山田昌弘 『希望格差社会』筑摩書房,2004年,あるいは,斎藤貴 男 『機会不平等』文垂春秋 〔文庫〕,2004年,を参照o

参照

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