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改正民法における法定代位権者間の負担調整

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改正民法における法定代位権者間の負担調整

吉 原 知 志

一.本稿の目的

年 月 日に成立した「民法の一部を改正する法律」(平成 年 法律第 号)に基づく民法の改正(以下,「今回の改正」と称する)によ り,弁済による代位の効果を定める 条も従来の判例と議論の蓄積を踏 まえて改正された(以下,今回の改正前の条文を「改正前○条」,改正後 の新法条文を「改正法○条」と表記する)。改正前 条は,柱書で弁済 による代位の効果を定め,各号で代位権行使の相手方が債務者でなく他の 代位権者である場合のルールを定めていた。本稿の主題となる「法定代位 権者間の負担調整」は,この後者・各号のルールに当たる。各号に規定さ れる保証人,第三取得者,物上保証人は,代位について正当な利益を有す る法定代位権者( 条)であって,これらの者が債務者を相手方として 代位による権利行使をする限り,「債権の効力及び担保としてその債権者 が有していた一切の権利を行使することができる」。これに対し,相手方 が原債権を担保する他の保証人,第三取得者,物上保証人である場合,

条が代位の可否,追加的な要件,代位の割合を定める。改正前 条の定 める規律内容には様々な批判があり,今回の改正で同条は つの項に分け られた上,判例・学説を踏まえて修正・補充が行われた。しかし, 条

(2)

の定める法定代位権者間の負担調整のルールは元々難解な上に,今回の改 正で従来懸案とされてきた問題が全て解決されたわけでないので,ある意 味では従来に増して見通しが悪くなっている。本稿は,改正法 条の定 める法定代位権者間の負担調整の規律内容を検討し,同条にはどのような 解釈が必要かを明らかにする。

本稿の考察の進め方を示す。法定代位権者間の負担調整問題を扱うのは もっぱら 条であり,二では 条各号ごとの改正内容を概観しつつ,

同条の定める負担調整,特に代位割合の意義を明らかにする。三では,代 位制度に密接な関係をもつ共同保証の制度について検討する。従来,共同 保証人間の代位は 条が明示的に規定せず,その可否・内容について議 論があったが,今回の改正で改正法 条 項が共同保証人間の代位を明 文化した。本稿は 条の共同保証人間の求償権に関する議論まで見るこ とで,共同保証を含めて負担調整問題を考察する。四では,今回の改正で ルールの明文化が見送られた,保証人と物上保証人の資格を兼務する者

(以下,「資格兼務者」と称する)の扱いを検討する。資格兼務者の扱いに ついては,今回の改正審議で判例の頭数 人説(後述)の当否をめぐって 激しく議論が交わされた。結果的に頭数 人説による規定も,反対提案に よる規定も置かれなかったが,激論の末あえて規定の新設が見送られた経 緯は,改正民法を解釈運用するための重要な指針となる。本稿は,資格兼 務者の扱いをめぐる学説,判例,改正審議の内容を検討し,それを踏まえ て 条の定める法定代位権者間の負担調整に関する規律内容の解明を試 みる。以上, つの領域相互の関連性を意識しながら改正法の体系的な解 釈を模索し,五で本稿の考察の結論を示す。

今回の改正の結論から言えば, 条の改正は法定代位権者間の負担 調整の意義を根底から変えるものとはならなかった。したがって,本稿の 考察も同様に,同条の解釈を根底から変えるものとはならない。しかしな がら,今回の改正審議を経たことで同条に関する議論は深まりを見せ,従 来明確でなかった議論の軸が浮き彫りになった。本稿の目的は,この議論

(3)

の軸を示し,今後の議論の指針を作ることである

二.法定代位権者の競合− 条の解釈

⑴ 法定代位権者間の負担調整の意義

保証人が保証債務を履行したり,物上保証人が担保権の実行を受けた 場合には,当該保証人や物上保証人は(主たる)債務者に対して求償権を 取得する。しかし,債務者が無資力であれば求償権は有名無実となる。

保証人や物上保証人が債権者に支払っても債務者に求償できないリスクを 本稿では「求償リスク」と呼ぶことにする。ある債権について保証人

B

と物上保証人

E

がいた場合,Bと

E

の間に負担調整に関する定めがない と,Bが先に保証債務の履行請求を受ければ弁済による代位によって担保 権を実行し

E

に求償リスクを押し付けることができ,Eが先に担保権実行 を受ければ反対の事態が生じる。B,E以外にも法定代位権者がいれば,

再代位によってさらに求償リスクがババ抜きのように循環することにな る。求償リスクの負担ルールがないと,保証人や物上保証人は最終的な負 担額の見通しが立たず就任をためらってしまい金融の阻害要因ともなる。

そこで, 条が法定代位権者間の求償リスクの分配を定めている。

⑵ 改正法 条 項各号の定める代位者間の調整

改正法 条 項各号は,改正前 条各号を引き継ぎ,法定代位権者 間の代位割合を法定代位権者の種類ごとに分けて規定している。以下,本 稿の考察に必要な範囲で各号を見ていく。

!

本稿は,並行して執筆を進めている堀竹学=吉原知志『新民法の分析Ⅲ 債権総則 編』(成文堂,近刊)の吉原担当部分の内容を基礎に,考察を深めたものに当たる。

"

保証人の第三取得者に対する代位に関する付記登記要件(改正前 号)の廃止も重

要な改正であるが,本稿は主として代位割合の意義に焦点を合わせ,付記登記要件廃 止の問題は扱わないこととする。付記登記要件の問題は第三取得者の扱いを検討する 上で重要であるが,その検討は今後の課題とする。

(4)

条 項 号は,「第三取得者」は他の法定代位権者に代位しないと 定める。第三取得者とは「債務者から担保の目的となっている財産を譲り 受けた者」(括弧書)のことであり,第三取得者は物的負担を覚悟の上で 財産を譲り受けたからと説明される。すなわち,第三者

X

は抵当不動産・

甲を買い受ける際,抵当権の存在を登記簿で確認し,被担保債権の額と担保 権実行の蓋然性を考慮して代金を安く取り決めることができる。さらに,

実質的にも,「物上保証人」と「第三取得者」とでは,「第三取得者」は買 受けの際に抵当権消滅請求( 条)を利用して担保権実行のリスクに対 処できる点が異なる。

号は,第三取得者は他の第三取得者に対しては代位できると定める。

ただし,それだけではどの第三取得者が先に担保権実行を受けたかによっ て求償リスクの負担が変わり公平でないので,「各財産の価格に応じて」

負担が決まるとされる。そして,この負担決定の方法は 号で物上保証人 同士の代位でも用いられる。

号は,保証人と物上保証人がいる場合,「その数に応じて」,つまり頭 数割りで負担額が決まる。ただし,物上保証人がさらに複数いる場合には,

物上保証人では「各財産の価格に応じて」負担割合が決まる(同号ただし 書)。

号は,第三取得者からの譲受人は 号の第三取得者として扱い,物上 保証人からの譲受人は 号の物上保証人として扱うことを定める。

条 項の基礎にある考え方

条 項の各号を見返すと,代位割合の決定方法として,担保財産の 価値に比例させる方法( 号, 号, 号ただし書)と頭数で割る方法(

号)があることがわかる。本稿では,前者を「財産価値比例ルール」,後 者を「頭数ルール」と呼ぶことにする。財産価値比例ルールは「第三取得 者」と「第三取得者」の間( 号),「物上保証人」と「物上保証人」の間

( 号, 号ただし書)という物的責任負担者同士の間で用いられる。頭

(5)

数ルールは「保証人」と「物上保証人」という異質な責任の負担者同士で 用いられる( 号)。「保証人」と「保証人」の間の代位割合は明文がない が,これも原則として頭数ルールと解釈されている。共同保証人間の関係 は三で詳しく論じる。

条 項の基礎にあるのは財産価値比例ルールと頭数ルールのどちら だろうか。頭数ルールが「保証人」と「物上保証人」という異質な責任の 負担者同士で用いられることからは,頭数ルールの方が原則のようにも思 われる。しかし,改正法 号に相当する改正前 条 号は明治時代の法 典調査会の審議過程で突発的に入れられた規定であって,それほど練られ た規定ではない。頭数ルールが必ずしも公平な負担分配を帰結しない弱み は,物上保証人の提供財産の価値が相対的に小さい場合に露呈する。すな わち,Gが

S

に , 万円を貸し付けて

B

が保証人となり,Eが 万円 の甲に抵当権を設定して物上保証人になると,それぞれの負担額は頭数 ルールで各 万円となる。

E

G

に , 万円を第三者弁済した場合,

B

に対しては 万円の保証債務を履行請求できる。しかし,Bが

G

, 万円を支払って代位しても,物上保証人の負担は物的有限責任であ るので,Eは 万円の限度でしか責任を負わない

。したがって,どちら かと言えば財産価値比例ルールの方が,引き受けた担保負担と求償リスク の負担割合が相応する点で公平に適い,また負担を引き受けた当事者の予

"

我妻榮『新訂債権総論』(岩波書店, 年) 頁,中田裕康『債権総論[第

版]』(岩波書店, 年) 頁,潮見佳男『新債権総論Ⅱ』(信山社, 年)

頁注!。

#

前田達明編『史料債権総則』(成文堂, 年) 頁[高橋眞],小野秀誠「判批

[最判平成 年 日判時 頁]」金商 頁( 年), 頁,

松岡久和「保証人と物上保証人の地位を兼ねる者の責任」金融財政事情研究会編『現 代民事法の実務と理論 上巻』 頁(金融財政事情研究会, 年), 頁。

$

高橋眞「判批[仙台高決平成 年 月 日判時 頁]」金商 頁( 年), 頁,松岡・前掲注⑷ 頁。山下孝之「保証人の代位請求」

法時 巻 号 頁( 年), 頁,林良平[安永正昭補訂]ほか『債権総論[第 版]』(青林書院, 年) 頁[石田喜久夫]は,物上保証人の財産額を超える 部分は保証人が平等に負担するとの解釈を示す。

(6)

測にも適うと評価できる。ただ,異質な責任の負担者間では,相互に引き 受けたリスクを比較し算定する基礎を欠く問題が残る。

⑷ 代位割合変更特約の位置付け

)昭和 年判決

条 項各号から決まる代位割合を代位権者間の合意によって変更す ることが可能かは, 条を読むだけでは明らかでない。最判昭和 年 月 日民集 巻 号 頁はこれを肯定する。同判決は弁済による代 位の原債権移転構成を示したリーディングケースであるが,同時に代位割 合変更特約のリーディングケースでもある。事案は,銀行

A

B

に貸し 付けるに際し,信用保証協会

X

が保証人となって

A

に弁済したので,A に代位して物上保証人

Y

に対する根抵当権を実行してきたものである。

保証人

X

と物上保証人

Y(B

社の代表取締役でもある)の間では,Xが

A

に弁済した場合に 割の代位をできるとする代位割合変更特約が締結 されていた。ただし,本件で

X

と争った相手方は,Bでも

Y

でもなく,

Y

の不動産の後順位根抵当権者

Z

である。代位割合変更特約の効力を認 めると

X

が 割を代位して

Z

の配当が減るので,特約を合意当事者では ない

Z

にも対抗できるか否かが争点となったのである。最高裁は次のよ うに判示した。「弁済による代位の制度は,すでに説示したとおり,その 効果として,債権者の有していた原債権及びその担保権をそのまま代位弁 済者に移転させるのであり,決してそれ以上の権利を移転させるなどして 右の原債権及びその担保権の内容に変動をもたらすものではないのであつ て,代位弁済者はその求償権の範囲内で右の移転を受けた原債権及びその 担保権自体を行使するにすぎないのであるから,弁済による代位が生ずる ことによつて,物上保証人所有の担保不動産について右の原債権を担保す る根抵当権等の担保権の存在を前提として抵当権等の担保権その他の権利

!

連帯保証人も兼務していたが,資格兼務者の問題はここではいったんおく。

(7)

関係を設定した利害関係人に対し,その権利を侵害するなどの不当な影響 を及ぼすことはありえず,それゆえ,代位弁済者は,代位によつて原債権 を担保する根抵当権等の担保権を取得することについて,右の利害関係人 との間で物権的な対抗問題を生ずる関係に立つことはないというべきであ る。そして,同条但書 号〔改正法 項 号〕は,右のような代位の効果 を前提として,物上保証人及び保証人相互間において,先に代位弁済した 者が不当な利益を得たり,代位弁済が際限なく循環して行われたりする事 態の生ずることを避けるため,右の代位者相互間における代位の割合を定 めるなど一定の制限を設けているのであるが,その窮極の趣旨・目的とす るところは代位者相互間の利害を公平かつ合理的に調節することにあるも のというべきであるから,物上保証人及び保証人が代位の割合について同 号の定める割合と異なる特約をし,これによつてみずからその間の利害を 具体的に調節している場合にまで,同号の定める割合によらなければなら ないものと解すべき理由はなく,同号が保証人と物上保証人の代位につい てその頭数ないし担保不動産の価格の割合によつて代位するものと規定し ているのは,特約その他の特別な事情がない一般的な場合について規定し ているにすぎず,同号はいわゆる補充規定であると解するのが相当である。

したがつて,物上保証人との間で同号の定める割合と異なる特約をした保 証人は,後順位抵当権者等の利害関係人に対しても右特約の効力を主張す ることができ,その求償権の範囲内で右特約の割合に応じ抵当権等の担保 権を行使することができるものというべきである。このように解すると,

物上保証人(根抵当権設定者)及び保証人間に本件のように保証人が全部 代位できる旨の特約がある場合には,保証人が代位弁済したときに,保証 人が同号所定の割合と異なり債権者の有していた根抵当権の全部を行使す ることになり,後順位抵当権者その他の利害関係人は右のような特約がな い場合に比較して不利益な立場におかれることになるが,同号は,共同抵 当に関する同法 条のように,担保不動産についての後順位抵当権者そ の他の第三者のためにその権利を積極的に認めたうえで,代位の割合を規

(8)

定していると解することはできず,また代位弁済をした保証人が行使する 根抵当権は,その存在及び極度額が登記されているのであり,特約がある 場合であつても,保証人が行使しうる根抵当権は右の極度額の範囲を超え ることはありえないのであつて,もともと,後順位の抵当権者その他の利 害関係人は,債権者が右の根抵当権の被担保債権の全部につき極度額の範 囲内で優先弁済を主張した場合には,それを承認せざるをえない立場にあ り,右の特約によつて受ける不利益はみずから処分権限を有しない他人間 の法律関係によつて事実上反射的にもたらされるものにすぎず,右の特約 そのものについて公示の方法がとられていなくても,その効果を甘受せざ るをえない立場にあるものというべきである。」(下線部は判決の引用,

〔 〕は引用者による補充。以下同じ)。

本件では,(改正法) 条 項 号に従えば代位割合は 割にすぎず,

それを超える分の配当は後順位根抵当権者

Z

が期待できたのに

Z

も特約 の内容に拘束されるとするとその期待を覆されることになる。判決は,Z は

XY

と「物権的な対抗問題を生ずる関係」に立たず,そもそも後順位担 保権者

Z

の地位は「みずから処分権限を有しない他人間の法律関係によ つて事実上反射的にもたらされるものにすぎず,右の特約そのものについ て公示の方法がとられていなくても,その効果を甘受せざるをえない立 場」だとする。判決の前提には,代位割合が公示の対象とすべき物的負担 を表すものではないとの理解がある。

)特約の公示に関する改正提案

昭和 年判決に対しては,本件で代位されたのは根抵当権であったか ら後順位抵当権者は設定された極度額内での変更は甘受すべき地位にある と言えるが,普通抵当の場合には被担保債権の額に合わせて抵当権の内容 が決まるのであって,代位の範囲を変更する特約は,少なくとも公示され て第三者に知る機会が保障されていたわけでない場合には,第三者効を認 めるべきではない,として射程を区切る見解も主張されていた

(9)

今回の改正の当初には,代位割合の任意規定性を一部修正し代位割合変 更特約の効力はその旨の登記がされないと第三者に対抗できないとする改 正提案が存在したが採用されなかった。現行不動産登記法上はそのような 登記ができないが,登記法の改正提言も同提案は含む。この提案が採用さ れていれば,代位割合の意義は変容していただろう。なぜなら,後順位抵 当権者

Z

は,自らの担保権設定時に登記簿に先順位担保権について代位 割合変更特約が記載されていなければ 条 項に従った代位割合の負担 にとどまることを期待してよく,特約当事者との間で「物権的な対抗問題 を生ずる関係」が生じる可能性があったからである。

)昭和 年判決の射程−「信用保証協会」

当事者の性質も考える必要がある。本件の事案の特徴の つとして,X が「信用保証協会」という公的な役割を担った存在であることがある。信 用保証協会は信用保証協会法を根拠法として設立される認可法人であっ て,「中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるについて その貸付金等の債務を保証すること」を主たる業務とする(同法 条)。

信用保証協会

X

が主たる債務者

B

の将来性を査定して保証を承諾した場

!

鎌田薫「求償と代位」磯村保ほか『民法トライアル教室』 頁(有斐閣, 年),

頁。

"

民法(債権法)改正検討委員会編『詳解・債権法改正の基本方針Ⅲ』(商事法務,

年) 頁では次の項を置く提案がされていた。

【 . . . 】(弁済による代位)

〔〈 〉,〈 〉,〈 〉は省略〕

〈 〉代位者は,債務者に対して取得する求償権の範囲内において,原債権を被担保債 権とする担保物権,原債権を主たる債権とする保証債権その他の担保として債権者が 有していた権利を行使することができる。この場合においては,以下の定めるところ に従う。

〔〈ア〉−〈サ〉は省略〕

〈シ〉〈オ〉または〈カ〉の場合において,保証人または物上保証人による〈オ〉ま たは〈カ〉に定める代位の割合を変更する旨の合意があるときは,その合意に従う。

その旨の登記がある場合に限り,合意の効力を第三者に対抗することができる。

#

民法(債権法)改正検討委員会編・前掲注⑻ 頁。

(10)

合,Bが支払をできなくなれば金融機関

A

の請求に対して

X

はほぼ無条 件に満額の弁済を行う。そのため,金融機関

A

B

に対して安心して貸 し付けることができ,金融を促進する。信用保証協会の査定を通って保証 を得られるかは中小企業が融資を受けるための死活問題であり,信用保証 協会が中小企業経済で担う役割は重要である。そして,その運営資金は自 治体からの補助金などで賄われるので,信用保証協会は無闇に公金が流出 しないよう求償権を厳格に行使して協会の収支を安定させる

以上のように信用保証協会は公金で運営され公的な役割を果たすので,

その求償権を政策的に保護することは立法上の選択肢としては排除されな い。実際は,信用保証協会は代位割合変更特約を用いて求償権の確保を目 指している。Xが 割の代位を認められるというのは,それだけを取り 出すと他の代位権者に対して不公平にも見えるが,信用保証協会である

X

が保証を引き受けたからこそ

A

B

に対する融資そのものが成立したと いう実質を捉えれば,Xは他の利害関係者よりは一段上に位置するとも言 える。信用保証協会保証の実質は融資者の地位が

A

から

X

に置き換わる だけとも言え

,特約の効力の判断における

X

の優遇は政策的な配慮と見 えなくもない。そのように見れば,昭和 年判決の射程は事案の特質に よって区切ることも考えられる。ただし,信用保証協会の求償権の保護に 法律上の根拠があるわけでもなく,そもそも求償権の確保は抵当権設定に よって図るのが本則との考え方もできる。判決理由自体は非常に一般的な 書き方がされており,基本的には弁済による代位一般に妥当する理論とし て示されたものだろう。それでも,代位割合の任意規定性について必然的 な解釈かは疑う余地がある。

!

安永正昭「協会と他の保証人及び物的担保」金融法資料編⑺ 頁( 年)参照。

"

林良平「総論」金融法資料編⑺ 頁( 年), − 頁,山田誠一「保証関係」

頁, − 頁,安永正昭ほか「〈シンポジウム〉金融変革期における信用保証協 会保証」金融法 号 頁( 年), − 頁[山田誠一報告]。

#

鎌田・前掲注⑺ 頁。

(11)

条概観のまとめと考察

改正法 条 項各号をざっと見渡したところ,負担調整の考え方とし て財産価値比例ルールと頭数ルールがあることがわかった。 つのルール のどちらが同項の基礎にあるかは定かでないが,頭数ルールが物的有限責 任を扱うのに適切でないことは明治の立法当初から指摘があった。財産価 値比例ルールは担保提供者が引き受けた担保意思を比例的に代位割合に反 映させるのに対し,頭数ルールはそのような考慮ができないことが原因で ある。各代位権者は,任意の債権を担保して余剰した手持ちの価値(物上 保証人であれば担保財産の余剰価値であり,保証人であれば自らの信用余 力)は他の信用を担保するために用いたいと考えるのが合理的である。

条 項の代位割合を,求償リスクをあらかじめ代位権者間で公平に分配し ておくための制度と捉えるならば,各代位権者が引き受けた担保意思に比 例して代位割合が決定され,余剰価値を使える幅も比例的に決まるとする 方が公平に適う。そして,この考え方を貫くと,後順位担保権者は代位権 者のもつ余剰価値を信用した者として,その期待が法的な保護に値するこ とになる。財産価値比例ルールは担保に供された特定財産に着目するので 物的責任負担者(第三取得者,物上保証人)相互間でしか用いられないが,

仮に人的責任負担者(保証人)についても何らかの基準によって,引き受 けた担保額と比例的に負担割合を決定することができれば,法定代位権者 全体についてそれぞれが引き受けた担保意思を反映させた代位割合を決め ることができる。そのような負担割合を決定できれば,代位権者はそれぞ れ公平に他の金融機会を享受することが可能である。

しかし,仮にそれだけ精緻かつ公平に代位割合を決定したとしても,代 位権者間の限りで結ばれた代位割合変更特約が,後順位担保権者を始めと する利害関係者に対してもその効力を対抗できるとしてしまうのなら,後 順位担保権者の期待は容易に覆され,制度として一貫しない。現行の代位 割合制度は,そもそも財産価値比例ルールと頭数ルールを併用しており必 ずしも代位権者の余剰価値利用可能性が公平に分配されているわけでな

(12)

い。その上,判例が代位割合変更特約の利害関係者への対抗を認めたこと によって,代位割合に対する期待はほとんど法的な保護を受けないことと なっている。規定と判例は一貫して代位割合の固定性を否定してきたと言 える。今回の改正審議の当初には,登記を特約の対抗要件とする提案がさ れ,後順位担保権者の代位割合に対する期待を保護することで,代位割合 に対する従来の捉え方が大きく変わる可能性があった。しかし,当該提案 は採用されなかったので,代位割合の捉え方の根本は改正法においても変 わらないこととなる。

三.共同保証人間の求償と代位− 条の解釈

⑴ 問題の所在

条の共同保証人間の求償権は,「主たる債務者の資力が十分でない ときに出捐をした保証人だけが損失を負担しなければならなくなっては,

共同保証人間の公平に反すると考えたため」定められたとされる

。すなわ ち,求償リスクの公平な分担が制度趣旨であり

,これはまさしく 条 項の代位割合の趣旨と同様である。そうだとすれば, 条と 条の関 係が問題となり,仮に代位割合をいかに精緻な形で決定できたとしても,

求償制度の方で違った求償リスクの分配を定めていれば制度として矛盾が あることになる。そこで,二の 条の考察に続けて三では 条の考察 を行う。

以下では,⑵で求償と代位の関係の観点から見た 条の解釈問題を示 し,現在主張されている解釈の内容を明らかにする。⑶では,さらに掘り 下げた検討を行うため,共同保証人間の求償権の性質について共同保証の

!

我妻・前掲注⑶ 頁。西村信雄編『注釈民法⑾ 債権⑵』(有斐閣, 年) 頁[西村信雄]も同様。

"

松岡久和「求償関係における無資力危険の配分(下)」龍法 巻 号 頁(

年), − 頁。

(13)

基本的理解を確認した上で重要判例から考察を深める。以上に見る 条 の解釈問題につき現在の学説・判例からは決定的な手がかりがつかめない ため,⑷で 条の起草に重要な影響を与えたフランス民法の解釈と,

条が制定された過程を追う。最後に,⑸で総括的な検討を行う。

⑵ 共同保証人間の求償と代位の不整合

)不整合問題の内容

共同保証人間の求償については,改正前には,そもそも 条の求償権 に加えて共同保証人間の代位を認める必要があるのか否かが議論されてい た。この問題につき,債権者が既に保証人の 人に対して債務名義を取得 している場合や保証債務自体に担保が設定されている場合などに代位の効 用はあり,求償と代位は併用されるとの解釈が有力であった。しかし,併 用できるとすると,求償権と代位取得された(原債権に随伴する)保証債 権の関係をどう考えるか,とりわけ求償権の額と代位できる額に差がある 場合にどう考えたらよいか,という問題が浮上する。共同保証人間の求償 と代位の双方とも頭数ルールが妥当するならばズレは生じないようにも見 えるが,その前提の下でも求償権と原債権とで利率に差を設けることはで きるし, 条の求償権は保証人が「負担部分を超える額を弁済したとき」

にのみ超過額につき発生するので,共同保証人が一部弁済をした時点で見 ると代位できる額の方が求償額より大きくなる可能性がある。改正法 条 項括弧書は,保証人間の代位に言及することで求償と代位の方法が併 用可能であることを明示するとともに, 条の求償権の範囲によって代 位の範囲を制限する立場を明示した。

改正法が一定の規律を置いたことで共同保証人間の求償と代位の関係の 不明確さは一部解消されたが,全てに及ぶわけではない。重要な問題とし

!

安永・前掲注⑽ 頁, 頁。反対,潮見佳男「判批[最判平成 年 月 日民 巻 号 頁]」銀法 頁( 年), 頁。ただし,同反対説の前提と する代位制度の理解につき後記。

(14)

て残されたのが,共同保証人に加えて物上保証人など他の法定代位権者が いる場合の求償と代位の不整合である。共同保証人

B

,B と物上保証人

E

の 人がいる単純な事例で考えても, 条の共同保証人間の「負担部 分」が共同保証人の頭数 人で決まるのに対し, 条の代位割合は

E

も 含めた頭数 人で決まることになりそうである。これをどう解すべきかは 今回の改正で残された問題のままである

以上に見た共同保証人間における求償と代位の不整合問題(以下,単に

「不整合問題」と呼ぶ)は,同じ趣旨をもつ制度が違うリスク分配を定め ている点で法定代位権者間の負担調整の見通しを悪くしており,本稿の関 心の対象である。しかし,今回の改正審議では,不整合問題の解消も課題 として意識されつつ,必ずしも代位制度のあり方を考える上で理論的に不 可欠の前提問題とされていたわけではない。したがって,本稿がここでこ の問題を扱うことに対しては,余分な言及であるとの批判も考えられる。

しかし,四で見る資格兼務者の項目では,人的責任負担者と物的責任負担 者という違う性質の責任負担者を同列に扱ってよいのか,という問題が意 識され,この問題は,不整合問題で求償の論理を優先させるか,それとも 代位の論理を優先させるか,という問いと関連性をもつ。求償の論理の優 先は人的責任負担者間での求償リスク負担に終始すべきだとの主張を志向 するのに対し,代位の論理の優先は人的・物的の性質を問わず代位権者間 の求償リスク負担を考えるべきだとする主張を志向するからである。そこ で,次に不整合問題の解釈を見る。

"

安永ほか・前掲注⑾ 頁[高橋眞報告],山田誠一「求償と代位」民商 巻 号

頁 ( 年), 頁,潮見・前掲注⑶ 頁,法制審議会民法 (債権関係)

部会第 回議事録 頁[松岡委員発言]。なお,法制審議会に関する資料は法務省

HP

(http://www.moj.go.jp/shingi /shingikai_saiken.html〔最終閲覧日: 年 月 日〕)

掲載のものを参照している。以下同様。

#

潮見・前掲注⑶ 頁注!。

$

法制審議会民法(債権関係)部会第 回議事録 頁[潮見幹事発言]。

(15)

)不整合問題の解釈

不整合問題については,これを放置すると, 万円の主たる債務につ いて共同保証人

B

,B と物上保証人

E

の 人がいる状況で,B が 万 円を債権者に支払った場合に, 万円の「求償」を受けて支払った

B

が 万円分を

E

に対して「代位」としての抵当権実行によって回収す るなど代位権者間の調整回数が 段階になってしまい,「一般に二段階の 調整を予定していない求償や弁済による代位の規律にとって,異質な解決 となる」,との指摘がある。この指摘をした論者は 条の「負担部分」

を計算する頭数を

E

も含めた 人で計算すべきとの解釈を示すが,その 他の解釈として,共同保証人以外の法定代位権者が存在する場面では 条の適用は排除され代位制度で一元的に処理されるとする見解もある。結 論は変わらないが,前者の見解が 条の求償の論理と 条の代位の論 理の接合を図るのに対し,後者の見解は「求償制度としての弁済者代位の 規律の排他的適用」と自身の立場を銘打って代位の論理を優先させる点に 違いがある。両者でやや違いが出そうな局面として,法定代位権者間に 代位割合変更特約がある場合が考えられる。後者の見解ではそもそも 条は妥当場面を失うので共同保証人間の代位も代位割合変更特約の効力に よって定まると解されるのに対し,前者の見解では「代位」割合変更特約 が直ちに共同保証人間の「求償」の内容に影響するかはわからないように 思われる。「二段階の調整」を回避する考慮からすると求償範囲と代位割 合を揃える必要はあるだろうが,代位割合変更特約によって求償権の内容 が定まると解するならば,その根拠については明確にする必要がある。す なわち,根本的には共同保証人間の求償と代位の関係が明らかにされなけ ればならない。

!

山田・前掲注⒃ 頁。

"

山田・前掲注⒃ 頁。

#

潮見・前掲注⑶ 頁。

$

潮見・前掲注⑶ 頁。法制審議会民法(債権関係)部会第 回議事録 頁[潮 見幹事発言]も参照。

(16)

そこで,上記の論者の見解を手掛かりに考えてみたい。代位の論理を優 先する見解が用いる「求償制度としての弁済者代位」との表現は,通説の 採用する弁済による代位の「主従的競合」構成が平成 年以降の判例法理 上は崩れており,「弁済者代位制度が求償権を確保するための弁済者代位 という本来の姿から,求償問題を取り込んだ弁済者代位制度へと変質し,

弁済者代位制度が固有の論理で求償のために用いられている場面がある」

との認識が前提とされている。しかし,不整合問題で「求償制度としての 弁済者代位」の考え方を貫くためには,ここで現れる 条の共同保証人 間の「求償権」が主たる債務者に対する求償権と同質であることを前提と しなければならない。主従的競合が問題となるのは主たる債務者に対する 求償権についてだからである。そこで,共同保証人間の求償と代位の関係 を明らかにするための前提問題として, 条の求償権の性質について考 える必要がある。

⑶ 共同保証人間の求償権の性質

以下ではまず,共同保証における対外関係と内部関係の捉え方を整理 し,次に,そこで得られた理解を踏まえて最高裁判例を分析する。

)共同保証における対外関係と内部関係

条の定める共同保証人の分別の利益が債権者の請求に共同保証人ら が対抗する「対外関係」の問題であるのに対し, 条の定める共同保証 人間の求償権は債権者に保証債務を履行した共同保証人の 人が他の共同 保証人に対して求償できるかという共同保証人の「内部関係」の問題であ る。共同保証人間の求償権は,共同保証人の「負担部分を超える額を弁済 したとき」に行使できる。 条は求償の範囲を 項と 項に分けて規定 しており,通説はこれを分別の利益のない場合( 項)とある場合( 項)

!

潮見・前掲注⑶ 頁。

(17)

の区別と解釈するが,有力説は共同保証人相互間に債権者に対する全部の 履行義務がある場合( 項)とない場合( 項)の区別と解釈する。規定 を見ると, 項は共同保証人が負担部分にかかわらず債権者に全部につき 保証債務を負う場合であり,連帯債務の求償権を定める 条から 条 までが準用されている。 項は各共同保証人が負担部分の限りで履行すれ ば足りる(のに,わざわざ超過して支払った)場合であり,委託を受けな い保証人の求償権を定める 条を準用している。通説が分別の利益を区 別の標準とするのは当事者間に何らの特約のない通常共同保証の状況をデ フォルトと想定するからであると解され,規定の読み方の精確さにおいて は有力説に分があると解する。

判例の読み方も有力説に分があると思われる。最判昭和 年 月 日 民集 巻 号 頁は,Gから金銭の貸渡しを受けていた主たる債務者

S

G

に対しては自分は連帯保証人だと表示しており,実質的には連帯 保証人である

B

が主たる債務者と表示して

G

に全額を支払い共同連帯保 証人

B

に対し求償したのに対し,B は

B

は主たる債務者だとして争っ たものである。判決は,「分別の利益は,数人の共同保証人がある場合に,

保証人の債権者に対する関係における問題であつて,保証人と債務者,な いしは保証人相互の内部関係については,なんらかかわりのない問題であ る」として,原審が

B

は連帯保証人であって分別の利益がないとの認定 を介して直ちに

G

への弁済額全額の求償請求を認容したのを破棄し,

B

らの間で 条の負担部分の特約があるか否かを審理させるため事件を差 し戻している。判決は,共同保証人の「対外関係」と「内部関係」は区別 しなければならず,求償権の発生は「内部関係」次第であるとしたことに なる。

!

西村編・前掲注⒀ 頁[西村],沢井裕『テキストブック債権総論』(有斐閣,

年) 頁,尾島茂樹「分別の利益・再考」金沢 巻 号 頁( 年),

頁。

"

そもそも

B

が連帯保証人なのか,それとも主たる債務者なのかということも審理

を尽くすよう命じられている。

(18)

以上から,共同保証人間の求償権は 条の分別の利益と関わりなく純 粋に共同保証人間の内部関係に従って決まるものと理解できる。すなわ ち,主たる債務者に対する求償権の内容は主たる債務者と保証人の間の関 係(委託の有無)によって決まるが,共同保証人間の求償権の内容は共同 保証人間の内部関係によって決まることになる。次に,主たる債務者に対 する求償権

α

と共同保証人間の求償権

β

の関係を扱った判例を見る。

)平成 年判決と平成 年判決

最判平成 年 月 日民集 巻 号 頁は,債権者

G

に全額を 弁済した連帯保証人

B

が,主たる債務者

S

に対して訴訟を提起して

S

に 対する求償権

α

の時効を中断させていたところ(その後判決も確定),S が支払えないのでその後に共同連帯保証人

B

に対して 条 項に基づ く求償権

β

を行使したが,B は

β

債権に関する消滅時効の抗弁を提出し たというものである。B は,求償権

α

S

に求める訴訟提起によって

B

に対する

β

求償権も時効が中断したと再抗弁して争った。最高裁は,「民 法 条に規定する共同保証人間の求償権は,主たる債務者の資力が不十 分な場合に,弁済をした保証人のみが損失を負担しなければならないとす ると共同保証人間の公平に反することから,共同保証人間の負担を最終的 に調整するためのものであり,保証人が主たる債務者に対して取得した求 償権を担保するためのものではないと解される。」「したがって,保証人が 主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合で あっても,共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じな いものと解するのが相当である。」とした。すなわち,

S

に対する求償権

α

と共同保証人間の求償権

β

は別個の債権であって,少なくとも

α

債権 の行使は

β

債権に影響しないと判断されたのである。主たる債務者への 求償権と共同保証人間の求償権が本質的に異なるとの理解が前提にあると 見るのが素直である。共同保証人間の求償権

β

は,古くは主たる債務者 に対する求償権

α

と請求権競合の関係にあると説明され,その性質につ

(19)

いても,あくまで失った財産の補塡・精算の請求権であると捉えて主たる 債務者に対する通常の求償権に引きつけて理解する見解が有力に主張され ていたが,本判決は少なくとも両求償権の同質性は否定したと読めるだろ う。また,古い学説には,保証人保護の考慮を念頭に, 条の求償権行 使には主たる債務者に対する求償権行使を先行させる必要があるとして,

補充性の原則を説くものもあったが,この見解も平成 年判決の判示内 容と直ちには整合しないだろう。判決は,β債権は「保証人が主たる債務 者〔S〕に対して取得した求償権〔α〕を担保するためのものではない」

としているからである。仮に

β

α

を保証する債権であるとされていれ ば,主たる債務の時効障害効の保証債務への波及を定める 条 項が類 推適用される可能性もあったが,これが否定されたことになる。

通常の求償権

α

の趣旨が他人の債務を免責させたことによる帰属割当 ての調整であるのに対し, 条の求償権

β

の趣旨は冒頭に示したように 共同保証人間での主たる債務者の求償リスクの分担である。 条は 項, 項とも「負担部分を超える額を弁済したとき」に初めて求償権を認 めている。この扱いは連帯債務の求償権とも( 条 項。「負担部分に 応じた額」),保証の扱いとも異なるが(保証人にはそもそも負担部分がな い),これは共同保証人間の求償リスク分担の性質から導かれる制限とさ れ,保証人は「負担部分」に相当する求償リスクは自ら引き受けなければ

!

齋藤毅「判解」『平成 年度最判解』 頁(法曹会, 年), 頁。

"

大判大正元年 日民録 頁(「保証人間ノ求償権ハ未タ主債務者ノ側

ヨリ弁済ヲ受ケサル自己ノ出捐額ニ付キ存在スルモノナリ」)が引用された上で,鳩 山秀夫『日本債権法総論 総論[改訂増補]』(岩波書店, 年) 頁,勝本 正晃『債権総論 中巻之一』(巌松堂書店, 年) 頁,於保不二雄『債権総論

[新版]』(有斐閣, 年) 頁が示す。

#

大阪高判平成 日金法 頁は,SB 間の求償特約上の利率が

B B

間の求償権の内容をも決定すると判示するが,本文のような理解を前提とする だろう。佐久間弘道「判批」金法 頁( 年), 頁。

$

嘉山幹一『債権総論[改版]』(敬文堂書店, 年) 頁,岡村玄治『債権法要 論』(中大出版社, 年) 頁。

%

潮見・前掲注⑶ 頁。

(20)

ならない。以上によると, 条の求償権の趣旨は求償リスクの分担であっ て,弁済による代位の趣旨と共通し,通常の求償権とは異なる。

共同保証人間の求償権の性質を以上のように解すると,従来の評価に変 化が生じる判例がある。最判平成 年 月 日民集 巻 号 頁は,共 同連帯保証人

A,B,Y

の内,Yに和議手続が開始し和議認可決定が確定 し,さらに

B

が無資力である状況で

A

が保証債務を履行し,Aを相続し た

X

,X が

Y

に求償をした事案の下で,「和議開始決定の後に弁済した ことにより,和議債務者に対して求償権を有するに至った連帯保証人は,

債権者が債権全部の弁済を受けたときに限り,右弁済による代位によって 取得する債権者の和議債権(和議条件により変更されたもの)の限度で,

右求償権を行使し得るにすぎないと解すべきである。けだし,債権者は,

債権全部の弁済を受けない限り,和議債務者に対し,和議開始決定当時に おける和議債権全額について和議条件に従った権利行使ができる地位にあ ること(最高裁昭和 年(オ)第 号同 年 月 日第三小法廷判決・

民集 巻 号 頁参照)からすれば,連帯保証人は,債権者が債権全 部の弁済を受けるまでの間は,一部の弁済を理由として和議債務者に求償 することはできないというべきであり,また,和議制度の趣旨にかんがみ ても,和議債務者に対し,和議条件により変更された和議債権以上の権利 行使を認めるのは,不合理だからである。」とした。すなわち,代位取得 される保証債権に和議手続の拘束がかかっていた場合,求償権の行使もそ の範囲に制約されると判断されたのである。この判決は,弁済による代位 において原債権は求償権に付従するとされてきた従来の判例・通説を覆す 可能性を秘めるものとして注目され,原債権と求償権の間には一定の範囲 で「相互性アプローチ」が妥当することを示すものとする評価や,判例・

!

我妻・前掲注⑶ 頁,野田恵司=横田典子「共同保証人の弁済と求償,代位の要 件」佐々木茂美編『民事実務研究Ⅰ』 頁(判例タイムズ社, 年[初出 年]),

頁。

"

八木良一「判解」『平成 年度最判解(上)』 頁(法曹会, 年), 頁,山野

目章夫「求償債権と原債権の関係」ジュリ 頁( 年)。

(21)

通説の「主従的競合」がほころびを見せているとする評価が存在した。し かし,同判決が上の引用の前に「連帯保証人は,自己の負担部分を超える 額を弁済した場合は,民法 条 項, 条に基づき,他の連帯保証人 に対し,右負担部分を超える部分についてのみ,求償権を行使し得るにと どまり(最高裁昭和 年(オ)第 号同 年 月 日第三小法廷判決・

民集 巻 号 頁),弁済した全額について負担部分の割合に応じて求 償することができるものではない。そして,〔…〕」と続けたように,本件 で問題となった求償権はあくまで 条に基づくものである。共同保証人 間の求償権は主たる債務者の求償リスクを公平に分担するものであるが,

本件で

A

が和議手続開始後に弁済した時点では

Y

は和議条件による変更 を受けた保証債務しか債権者に対して負っていなかったのであるから,Y が負担していた主たる債務者の求償リスクもその範囲にとどまるのであっ て,Aが債権者に主たる債務の全額を弁済したとしても,Yが分担すべき 求償リスクもまた和議条件で変更された保証債務の範囲にとどまると解さ れる。したがって,A(X,X)が

Y

に対して求めることのできる求償リ スクの分担としての負担部分もまたその範囲にとどまることになる。この ような分担のあり方は, 条 項が 条を準用することで無資力者の 負担部分を他の共同保証人で分配すると定める規律の発想と連続的であ る。そして,以上の関係は共同保証人間で主たる債務者の求償リスクを分 担する「内部関係」の性質として理解できる。もとより,本判決は和議手 続の拘束をかける倒産手続法上の考慮が働いた判断であることが多数の文 献で指摘されているが,第三者弁済により代位取得された財団債権,共益

!

潮見佳男「求償制度と代位制度」中田裕康ほか編『金融取引と民法法理』 頁(有 斐閣, 年), 頁。

"

平林美紀「判批」名法 頁( 年), 頁, 頁,同「判批[東

京高判 平 成 日 判 時 頁]」金 沢 巻 号 頁( 年),

頁は本稿と考察内容は異なるが,平成 年判決を共同保証人間の求償権に関 する先例として検討する点で共通する。

#

田原睦夫「判批」金法 頁( 年), 頁。

$

平林・前掲注"名法 頁。

(22)

債権の行使による随意弁済を認めた最判平成 年 月 日民集 巻 号 頁,最判平成 年 月 日民集 巻 号 頁が存在するよ うに,原債権と求償権との間の手続拘束の相互性はあらゆる場面で常に働 くわけではなく,平成 年判決を倒産手続の性質に即した判例と読むとし ても,原債権に付随する連帯保証債権に和議手続が開始した事案として射 程は相応に狭く読む必要がある。したがって,平成 年判決は内部関係に 即した共同保証人間の求償権に関する判例と読むことができる。

条の沿革とフランス民法 条の比較法的考察

⑶の検討から,現在の判例法理に照らせば,主たる債務者に対する求償 権の性質と共同保証人間の求償権の性質は異なるとの解釈が導かれた。こ のような解釈は 条の解釈として可能なのか,そもそも 条の求償権 はどのような性質の権利として法定されたのか,を次に考える必要があ る。本稿はこれを 条の沿革を通じて考察する。その過程で,民法起草 時に参照されたフランス民法の条文とその解釈も参照する。今回はフラン スの学説・判例の網羅的な調査まではできなかったが,本稿の行う解釈に 示唆を得る分には十分と考え,独立した項目として取り上げることとした。

詳細な調査は今後継続的に行っていきたいと考えている。

条の沿革とフランス民法

まず 条とフランス民法の関係を示す。法典調査会の 条の審議で はフランス民法の他に各国法が参照条文として掲げられていたが,梅謙次

"

八木・前掲注! 頁,山野目・前掲注! 頁など。

#

フランスの共同保証を扱う先行研究としては,辻博明「共同保証人間における求償 と代位」名城 巻 号 頁( 年),福田誠治「担保者相互間における求償とそ の求償期待の保護」西村重雄ほか編『日本民法典と西欧法伝統』 頁(九州大学出 版会, 年)がある。前者はフランス民法の制定過程と解釈学説を取り上げ,後 者はポティエの見解を取り上げる点で,本稿の扱う資料と一部ずつ重複する。本稿は,

共同保証人間の内部関係の解明を目的とし,取り上げ方を異にしている。

(23)

郎は草案の起草に際して旧民法債権担保編 条から 条を,字句を修正 の上用いたことを明示しており,法典調査会では特に議論無く草案が採用 されている。旧民法債権担保編 条から 条までは,ボワソナード草案 の 条から 条までを訳出したものに対応している。ボワソナード 草案は,ボワソナードの独創が大幅に加わっているものの,同人の注釈で は共同保証人間の求償権を定めるフランス民法 条が明示的に参照さ れている。したがって,フランス民法 条が現行民法に対して強い影 響を与えたことは間違いない。法典調査会ではドイツ民法草案も参照され たが,現 条, 条 項は共同保証人間の求償関係について連帯債務 の求償規定( 条)を準用しており,求償権の性質についての議論は乏 しく,本稿での検討は省く。以下,フランス民法の条文とその解釈を確認 した後,ボワソナード草案,旧民法の内容を見ていくこととする。

年のフランス民法改正で 条の内容は 条に移ったが,内 容に変更は見られない。条文は以下のとおりである。

フランス民法 条 共同保証人間の求償権

① 数人の者が同一の負債について同一の債務者を保証したときは,

その負債を弁済した保証人は,他の保証人に対して,それぞれの負 担部分について求償権を有する。

② ただし,この求償権は,保証人が前条に挙げる場合の一つにおい て支払ったときでなければ,生じない。

!

前田編・前掲注⑷ 頁[潮見佳男]。

" Motive zu dem Eutwurfe eines BGB, Bd. , , S. f ; Staudinger/Horn, Neu., , , Rn. f ; Soergel/Gröschler, . Aufl., , , Rn. ; Münch/Habersack, . Aufl., , , Rn. ; Juris PK-BGB/J. Prütting, . Aufl., , , Rn. .

だし,共同保証人間の関係が連帯債務とされたことの基礎は検討されるべきであり,

今後の課題とする。

#

フランス民法の訳は,法務大臣官房司法法制調査部『法務資料 号 フランス民 法典−物権・債権関係−』( 年)に依拠した。

(24)

比較法的観点から,以下での検討事項を 点示す。まず, 項の内容は 日本民法 条に似ているが, 条が項を分けて共同保証人の義務の範 囲を区別するのに対し,フランス民法にはそれがない。このことをどう考 えるべきか。もう つは, 項では 条の掲げる場面で支払ったこと が求償の要件として定められていることである。 条は事前求償権の 規定であって次に掲げるとおりである。

フランス民法 条 事前の求償

保証人は,〔以下の場合には,〕支払う前であっても,債務者に補償 させるために請求することができる。

一 保証人が支払いについて裁判上追行されるとき 二 債務者が破産し,又は支払不能にあるとき

三 債務者が一定の期間内に保証人に免責を与える義務を負うとき 四 負債が,締結された期限の経過によって請求可能となったとき 五 主たる債務が定まった履行期限をなんら有しないときは, 年

たったとき ただし,主たる債務が,後見のように一定の時期前に は消滅することができない性質のものである場合には,その限りで ない。

つまり,共同保証人間の求償権を行使するためには,事前求償権の行使 が認められる各号の場面において支払をしたことが要件とされる。このよ うに,フランス民法の定める共同保証人間の求償権は,一方で,共同保証 人の義務の範囲に応じた区別がなく,他方で,追加的な要件が定められて いる点が日本民法と異なる。本稿では,この つの点をやや立ち入って見

! déconfiture

の訳語は,法務大臣官房司法法制調査部・前掲注 頁で「家資分散」

とされていたのを,山口俊夫編『フランス法辞典』(東京大学出版会, 年)

頁,中村紘一ほか監訳『フランス法律用語辞典[第 版]』(三省堂, 年) を参照して変更した。

(25)

ていく。

)フランス民法における共同保証人間の内部関係

点目につき,日本民法が求償範囲を 段階に規定するのは,⑶で見た ように共同保証人間の内部関係を反映させる趣旨である。したがって,

点目の検討事項は,共同保証人間の内部関係をどのように捉えるのかとい うことと関連する。そこで,フランス民法 条は共同保証人間の内部 関係をどう捉えているのか,ということを解明する必要がある。フランス 民法典の制定過程では,同条(旧 条。以下,こちらの条数で表記す る)の起草趣旨につき護民院で次のように説明されていた。「ローマ法に 従うと,共同保証人の 人が債務を支払っても,債権者の権利に任意の代 位がされない限り,他の共同保証人に対して求償権を取得しなかった。ロ ーマ法は,同一の債務の 保 証 人 を 引 き 受 け た 複 数 人 間 で は 債 務 関 係

(obligation)が合意されておらず,各人とも債務者の事務(affaire)の他 に共同保証人の事務をすることまでは意図していなかったことを根拠とし ていた。」「しかし,共同保証人の 人は支払によって全員に共通する債務 から自身を解放し,それによって共同保証人をも解放しているのだから,

共同保証人の 人が債務を支払ったのは,他の共同保証人の事務でもあっ て同時に自身の事務でも債務者の事務でもある,というのが実際のところ である。したがって,支払は全員の利益となるのだから,各共同保証人が 自らの負担部分(part)については負担するというのが公平に適う。」。ロ ーマ法への言及で念頭に置かれているのは,弁済による代位制度の前身で ある訴権譲渡による弁済者の求償確保の制度であると見られる。続く立法 院の議論では上記のローマ法の状況が「どれほど度重ねても我々がローマ

!

フランス民法の制定過程については,野田良之『フランス法概論 上巻[再版]』(有 斐閣, 年) 頁,滝沢正『フランス法[第 版]』(三省堂, 年) −

頁を参照した。

" Pierre-Antonie Fenet, Recueil complet des travaux préparatoires du code civil, t. ,

, p. .

(26)

法の中で見つけることを後悔する難解な問題(subtilité)の つ」と酷評 され,草案が共同保証人間の求償権を創設したことは「大層賢明(beaucoup

plus sage)である」と評価されていた。以上の立法理由に見られるローマ

法に対する認識と,共同保証人の弁済が共同保証人全体の利益になる実質 から共同保証人間の求償権を認める見解は,ポティエの学説に由来する。

ポティエによれば,フランス古法の法実務では,共同保証人間の求償権の 存否が代位の可否に委ねられた結果ほとんど否定されていたローマ法は

「あまりにも厳格(trop dure)」と捉えられ,代位によらない求償権が認め られていたという。ポティエは,そのような求償権は「衡平(équité)」の 見地から「事務管理に準じる訴権(action

utilis negotiorum gestorum)」と

して付与されたものだと主張する。民法制定後, 条の求償権の性質 については,代位の論理には解消されない共同保証人間の特別の人的関係 に基づく人的訴権(action personnelle)と捉える見解(人的訴権説)と,

共同保証人間にそのような人的訴権の基礎は存在せず法定代位の特則にす ぎないと捉える見解(法定代位説)が対立した。後者の法定代位説は,ポ ティエが代位の論理に解消されない求償権の根拠として依拠した「衡平」

の主張を法理論上のものでなく慣習法の精神を語るものにすぎないと捉 え,共同保証人間の求償関係はあくまで代位の論理でしか正当化できない

!

訴権譲渡の利益に関する研究として,寺田正春「弁済者代位制度論序説⑵」法雑 巻 号 頁( 年),森永淑子「保証人の「弁済による代位」に関する一考察

⑴」法学 巻 号 頁( 年), 頁以下,福田誠治「一九世紀フランス法にお ける連帯債務と保証⑴」北法 巻 号 頁( 年), 頁以下など。

" Fenet, op. ct. , p. .

# Paul Pont , Commentaire-traité des petits contrats, t. . éd., , p. ; François Laurent, Principes de droit civil français, t. , éd., , p. s ; Louis-Vincent Guillouard , Traité du cautionnement et des transactions, , pp.

.

ポティエに ついては,大川四郎「ヨーゼフ・ジョゼフ・ポティエ」勝田有恒ほか編『近世・近代 ヨーロッパの法学者たち』(ミネルヴァ書房, 年) 頁参照。

$ Robert-Joseph Pothier, Traité des obligations,

(Èdition Dalloz,

, p. .

% Pothier, op. ct. , p. .

ポティエの「衡平」法理につき,大川・前掲注

参照。

(27)

とし, 条は代位の要件を定めたものと解釈する。これに対し,人的訴 権説は, 条の求償権は人的訴権であると主張するが,その基礎となる 人的関係をどう捉えるかをめぐって対立がある。まず,いずれの学説も,

ローマ法ではアプレイアの法の下で誓約保証人(sponsor)と信約保証人

(fideipromissor)の間に当然の組合関係が認められ,組合訴権により求償 ができたことに言及はするが,これは誓約保証人と信約保証人という特殊 な資格者の間の関係にすぎないこと,共同保証人間には共通の利益が存在 するとは限らないことから 条の解釈に採用することは否定されてい る。次に,共同保証人間に法定連帯関係を認めることも考えられるが,分 別の利益が原則として存在する共同保証人間の関係においては,連帯関係 の非推定を定める 条(現 条)の下で連帯関係を認めることは困 難であり,明示的に 条の解釈として述べる者は少ない。結局,一種 の事務管理訴権であるとする見解が現在に至るまで多数説であるが,共同

! Pont, op. ct. , pp. s ; Laurent, op. ct. , pp. s.

他に,特段の根拠付けなく 条を代位の規定として記述を進めるものとして,

Charles Aubry et Frédéric-Charles Rau, Cours de droit civil français d’après la méthode de Zachariæ, t. , éd, , p.

; Marcel Planiol et Georges Ripert, Traité pratique de droit français, t. , éd.,

, p.

がある。

" Gaius, Institutiones commentarii , .

ローマ法上の保証の各種については,船 田享二『ローマ法 第 巻[改版]』(岩波書店, 年) 頁以下参照。

# Raymond-Théodore Troplong , Le droit civil, t. , du cautionnement et des transactions, , p. .

$ Marie-Paul-Gabriel Baudry-Lacantinerie et Albert Wahl , Traté théorique et pratique de droit civil, des contrats aléatoires, du mandat, du cautionnement, de la transaction, éd.,

, p. .

% Troplong , op. ct. , p. ; Aubry et Rau, op. ct. , p. , note .

ただし,この 論者らは法定連帯関係の認定から 条の解釈を導いているわけではない。

& Laurent, op. ct. , p. ; Robert Beudant et Paul Lerebours-Pigeonnière, Cours de droit civil français, t. , éd., , p. .

例外として,D. A. Ponsot, Traité du

cautionnement, , p.

がある。

' Troplong , op. ct. , p. ; Louis Josserand , Cours de droit civil positif français, t. ,

éd., , p. ; Ambroise Colin et Heinri Capitant et Léon Julliot de la Morandiére,

Cour élémentaire de droit civil français, t. , éd., , p. ; Heinri et Léon

Mazeaud et Jean Mazeaud , Leçon de droit civil, t. , éd., , p. .

参照

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