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ベル リンの公共交通 と交通環境 - その特徴の素描-

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Academic year: 2021

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(1)

ベル リンの公共交通 と交通環境

‑ その特徴の素描‑

菊 池 悦 朗

● ●

Of f e nt l i c he rVe r ke hrundVe r ke hr s k l i mai nBe r l i n

‑Ski Z Z : eS e i ne rBe s o nde r he i t e n

Et s ur oK【 KUC

HI

はじめに

ベル リンはわが国の東京 に当たる都市だか ら、ベル リンの公共交通 を論ず る場合 、 どうい う視 点か ら論ず るのか とか 「交通参加者

( V e r k e h r s t e i l n e h m e r) 」

(歩行者

[ F u B g a n g e r ]

,自転車利用者

[ R a d f a h r e r ]

,公共交通

[ 6 f f e n t l i c h e rV e r k e h r

,

O v ]

の電車やバ ス,自家用 自動車運転者 な どを指 す)の どれ に焦点を当て るかな ど、焦点 を絞 らない と収拾がつかな くなる恐れがある。 そ こで本 稿ではベル リンの公共交通の特異性 に焦点を当てて レポー トす る。

ハ ンブル クやブ レー メンもそ うだが、州であると同時 に都市で もあ り、都市州 とも呼ばれ るベ ル リンの公共交通は、都心部 か ら郊外の町村 に延びるS‑バー ン、地下鉄、路面電車 (市 内電車/

市街電車 [以下、随時 「市電」 と略す

] )

、バス、列車 、フェ リーか ら成 る。 この うち、フェ リー はベル リン南西部 の

Wa m s e e

(ヴァンゼ‑) とい う湖 を遊覧船 として航行す るものが有名だが、

一般市民が 日常的に利用す るものではな く、二階立ての観光バスな どもベル リン名物の一つ と言 えるのか も知れ ないが、公共交通 とは青 い難 く、これ らは本稿では省略す る。 (一般 に観光バスや タクシーなどは公共交通 には入れない)。また、 ドイツ鉄道株式会社

( D e u t s c h eB a h nA G

,

D B )

経 営の列車 も市内交通 としては特筆すべ きものはあま りな く、 この交通機 関に関 しては、JRの普 通電車 に相 当す る

RB( R e g i o n a l b a h n )

や快速 に当たる

RE( R e g i o n a l ‑ E x p r e B )

がすべ ての駅 に止 ま る訳ではない分、

S‑

バー ンよ りも速 く快適 で、追加料金 もな く、車内に トイ レも付いているな ど とい うことだけに とどめたい。

ベル リンの主要な市内公共交通は、したがって、S‑バー ン、地 下鉄 、市電、市バス (路線バス) とい うことになるが、その うち、ベル リンを代表す るものは以前か ら、S‑バー ンと地下鉄だった。

しか しなが ら、前身の馬車軌道が始めてベル リンの町を走った 日とされ る1881年5月16日以来、

幾多の変遷 を経て今 日に至 る市電 も特筆すべ きこと、ユニー クな ことが多い。以下、公共交通の 各機 関や運賃制度な どに分 け、ベル リンの公共交通の特徴 を書いてい く。

筆者 :外 国語教育研 究セ ンター教授 受理 :平成18年9月29日

(2)

1.交通機関

S‑ バーン ( S B a l m)

最近、地下鉄な どと比べて利用者が増 えつつあるのが、路面電車

( S t r a 鮎n b a h n )

と同 じよ うに 長い歴史をもつS‑バー ンで、昔か ら質素ではあるが車内も広 く、快適 と言 える。南西部で境 を接 す るブランデンブル ク州の州都ポツダム (中央駅)な ど‑ も走 り、 自転車を車内に搬入す る老若 男女 の姿 もよ く目にす る。東京 の 山手線や大阪環状線 の よ うな内回 りと外 回 りのある全長約 37,5kmの環状線

( Ri n g b a h n

と呼ばれ る) も、東西ベル リン‑の分断な ど幾多の変遷 を経て2006 年5月28日以来、一周60分、5‑ 10分間隔、ラッシュ時は3‑5分間隔の運行 を行なっている。

この環状線は系統S41とS42で、環状の矢印のマー クが印象的だ。

◎ 地下鉄

( U ‑ B a h n )

前述の

S‑

バーンと並んでベル リンを代表す る公共交通が地下鉄。特 に旧西ベル リンでは最 も 主要な公共交通だった し、現在 も旧西ベル リン地区ではそ うであると言 える。現在でも旧東ベル

リン地区を通過す る地下鉄の路線は系統2,5,6,8の4路線 のみである。ただ、ベル リンの 地下鉄 もホームまで駅構 内を比較的長 く歩か され ることがあるとい う難点はある。また、

S‑

バー ン車内に特に当てはまることだが、地下鉄で も落書きが跡 を絶たず 、交通会社 も手を焼いている。

S‑バーン車内では最近、一部の車両の窓に、落書きは乗客の運賃 にはね返 る旨の警告文が付いた 大きなイラス トを貼 った りして、乗客の節度 を呼びかけている。 また、落書きの 目撃者 には報奨 金 を出すな どといった貼 り紙 も目にす る。落書きはず っ と以前か ら他の町、例えば ミュン‑ ンの S‑バーンな どで も見 られ、収益 との関係か らも交通会社 の最大の悩み と言 って も過言ではない。

乗客‑のサー ビス とは無縁な (テープによる)マナー放送 を矢継 ぎ早に浴びせ られても (品行方 正な)乗客は何 とも感 じない よ うに見えるわが国 とは事情がだいぶ異なる。

さて、地下鉄交通のための トンネル工事や軌道敷 とか架線 な どの工事 には例えば路面電車敷設 のための工事 に比べて数倍の経費がかかると言われているか ら、ベル リン州政府 も地下鉄工事に は消極的だ とい う。それでも2006年 にはブランデンブル ク門の ところにある地下鉄の駅 「ウン ター ・デ ン ・リンデ ン」か ら連邦議事堂がある 「ブンデスプラッツ」駅までの短い距離区間を走 る地下鉄のための トンネル工事が始まった。 このあた りは政治の中枢 を成す建物がある ところだ か ら、この建設工事は例外的措置 と思われ る。

◎ 路面電車

( S

t

r a 1 3 e n b a h n )

他 の大都市、中都市で も路面電車 (市電)の歴史は一般 に長いが、ベル リンの市電は前身 の馬 車軌道か ら数 えると140年 を優 に越 える歴史を誇 る。 同市電は、1967年 の10月2日に旧西ベル リンにおいて最後に残 っていた市電の路線が廃止 されて西ベル リンか らは消えたが、旧東ベル リ ンではバスをはるかに凌 ぐ最 も主要な公共交通であった。その旧西ベル リン地区でも、1995年の 10月に市電の二つの路線が復活、開通 している。また、ベル リンの壁 が開いて2年 と数 カ月経 っ た1992年1月には旧東ベル リンの交通企業である

Berli nerVerkehrs betri ebe

(略称 :

BVB)

が旧西ベル リンの交通企業

( Berli nerVerkehrsgesellschaft

,略称

: BVG

ベル リン交通会社)に移管 され 、この両企業は合併 し、

BVG

に統合 された。それで も、旧東ベル リン 地区では依然 として市電が

BVG

の主要な交通機 関に とどまっている0

1997年12月20日には旧東ベル リン地区の 「フ リー ドリヒ通 り」

( F r i e d ri c h s t r a Be )

釈‑のア

‑ 30

(3)

クセス としての市電 の新 しい区間750mが開通 し、これ また 旧東ベル リンの都 心部 にあるア レキサ ンダー広場 にも1998年 に31年ぶ りに市電が復活 し、2006年 には延伸 工事 も行 われ てい る。

ベル リンの市電は2005年 12月31日の時点で22の路線 (系統) と夜 間の路線 として5系統が ある。 同時点における路線距離 (Linienkilometer)と区間距離 (Streckenkilometer)とを記 し てお く。 (単位 はキロメー トル でカ ッコ内は夜 間の距離)

路線距離 ‑ 297.5 (59.7) 区間距離 ‑ 187.7 (57.2)

◎ バス

([Auto]Bus)

ベル リンのバス交通は路線 は多いが主要な市 内公共交通 とは言 いがたい。特 に都 心部 ではそ う で あ る。 ドイ ツの他 の大都 市 、 中都 市 同様 、バ スは電 車 路線 や 鉄 道 路 線 な ど‑ の連 絡路線

(Zubringer)の役割 を果 た してい る。 バス交通 の難点 は 自家用 自動車 との競合 に よる渋滞で あ り、デ ィーゼル の排気ガス を出す ことだ。もちろん、ベル リンのテ‑ ゲル (Tegel)空港へ のバ ス 路線 な どは特別 で、主 として一部の航 空機利 用客のため とはいえ、公共交通 としての重要な役割 を果 た してい る。

2.ベル リン交通会社

( B V G )

と運賃制度

BVGはベル リンや ポツダムな どの都 市 を含む ブランデ ンブル ク州 の地域 の公営企業 と私企業 を 合わせ て45の交通事業者 のひ とつであ り、これ らの公共交通 を統括 ・管理 し乗 客、交通企業、政 治 的 諸 団 体 との 間 の橋 渡 しをす る行 政 組 織 で あ るベ ル リン ・ブ ラ ンデ ン ブル ク運 輸 連 合 (VerkehrsverbundBerlin‑Brandenburg,略称 :VBB)と協 同 して、同地域 の公共交通 を担 う公 営企業である。 このBVGは路面電車 の他 に、地下鉄、バ ス、 フェ リー を管轄 してきた。

大 きな独 占企業で あるBVGを経費節約 と競争原理の導入 とい う見地か ら分割 して小規模 の事業 者 にチ ャンスを与えよ うとい う論議 もあ り、 この種の論議 はBVGに とどま らず 、 ヨー ロッパ レベ ルでな されてきた とい う。

ベル リンの近距離公共旅客運輸

( OpNV)

の運賃制度 は他 の都市交通圏 同様 、ゾー ン制 を敷 い ていて、そのゾー ンはA,B,Cに分 かれてい る。Aゾー ンはベル リン中心部及びその周辺部 、 Bゾー ンは さらにまたその周 囲の地域 、Cゾー ンはBゾー ンの外側 の周辺部 でベル リンを囲むブ ランデ ンブル ク州 (州都 はポ ツダム市) の一部 を包括す る.乗車券 は様 々な ものが発行 されてい るが、いずれ もABかBCかABCの組合わせ であ り、A

,

B

,

Cの各 ゾー ン単独 の ものはない。

他 の都 市交通圏 と共通 してい るこ とだが、長 めの乗車 、ま とまった 日数 の乗車 になるほ ど割安 にな る。 (例 えばABC乗車券や1日乗車券、7日間乗車券 [ただ し、これ は7日間連続 して使 わね ばな らない とい う制約がある]な ど) 6‑ 16歳 の子供な ど‑ の割 引乗車券 もある。

ベル リンの このA,B,Cとい う運賃 ゾー ンをBVGが管轄す る。BVGは有 限会社組織 の公 営企業で、財源 の 41%を運賃収入 (Tarifer16se)で、59%を補助金 (Subvention)で賄 ってい て、補助金 の うち約20%は国 (連邦)が負担 し、残 りの約80%は都 市州で あるベル リン市 の負担 となっている。

(4)

3.交通行動 (VerkehrSVerhalten)

旧東ベル リン地区出身の人たちの交通行動[Verkehrsverhalten]と旧西ベル リンの人たちの交 通行動 (の違い)な どとい う言い方は紋切型で、 どこに住んできたか、また現在 どこに住んでい るか、 どうい う人たちかな どで異なって くる。そ うい うことをふまえた上で、裕福な人たちの交 通行動が大筋において変化 していないのに対 し、ベル リンの郊外 に移 り住んだ人たちのS‑バー ン の利用は増えていると言 える。地下鉄の利用が逆に減 る傾 向にある一方、市電の利用率は さほど 変わっていない。

自転車利用に関しては、旧東 ドイツの人たちの利用が意外に多 くない ことが 目につ く。 これは 自転車が貧 しい人々の乗 り物 とい うイメージと結びついている。一方、旧西ベル リン地区では自 転車の利用が増えている。 これは道路の状態な どとも関連 している。ただ、旧東 ドイツ地区でも 例 えばローザ ・ルクセンブル ク広場か らハ ウザ‑ア レ一にかけての一帯は 自転車が走 りやすい と い う条件や、車をもたない若者が多 くいた りし、また当市街地の雰囲気 も人気があった りして旧 西 ドイツの人たちも含めて自転車交通で活気がある。 また、市内公共交通ではないが、低料金の ために飛行機 の利用 も増 えている。

ベル リン、特に旧西ベル リン地区の中心部な どでは 自動車交通が飽和状態なために、 自動車交 通を抑制する政策が とられてきたが、例えばベル リンをとり囲むブランデンブル ク州では、州都 ポツダムは別 としても、より自動車中心になっている状態は大筋では変わっていない。

なお、統一後続いた交通事故 (死)増には歯止めがかかっている.

‑ 3 2‑

(5)

あ と が き

現 地調 査 は直 近 で は

2 0 0 6

年 の夏 に行 った が 、そ の際 、 ドイ ツ都 会 学研 究所 (ベ ル リン)

[ D e ut s c h e sl n s ti t utf t i rU r b a ni s t i k

]のテ イルマン ・ブ ラ ッ‑ ‑

( Ti l m a nB r a c h e r )

氏か ら資 料 や 情 報 な どの提 供 を 受 け た 。 書 物 の 資 料 と して は 、

A GS t r a 1 3 e n b a h n

: T r a( u ) m ‑ s t a d t B e rl i n( 1 9 91

年),

s t a d t v e r k e h r

誌,

n a h ‑ v e r k e h r

誌,

V E R K E H R S Z EI C H E N

誌 の他 に、筆者 の交通環 境 ・文化 の調査研究 の大 きな きっかけ となった

Al t e r n a t i v eK o mu n al p o l i ti k( A K P )

の交通特別 号

( S o n d e r h e f tVe r k e h r )( 1 9 8 5

年) [菊池悦朗編訳,「第三 の道、第

7

」1 9 8 7

年,人智学 出版社], その他 を参照 した。

また、以前、金沢大学教養部論集 人文科学篇

3 0‑2( 1 9 9 3

年)、

31 ‑2( 1 9 9 4

年)、

3 3‑1( 1 9 9 5

午)、金沢大学大学教育開放セ ンター紀要 第

1 7

( 1 9 9 7

年) に載せ た拙稿 「環境保全 に関わ る 交通 用語 の ドイ ツ語 ・日本 語 リス ト

」 ( D e ut s c h ‑ J a p a ni s c h e sGl o s s a rY o nF a c h b e g ri f f e nz u

V e r k e h ru n dU m we l t )

を初 め とす るその他 の拙論 も参照 した。

参照

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