• 検索結果がありません。

農業保護の展開過程 と構造変化

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "農業保護の展開過程 と構造変化"

Copied!
18
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

農業保護の展開過程 と構造変化

本 間 正 義

1.は じ め に

経済発展の プロセスで農業 は重負担 を課 される産業か ら保護 され る産業へ と 転化 してい く。産業構造 の変化 は国民経済 における農業の役割 を変化 させ,政 策決定 における政治市場 の条件 も変わってい く.国際的に農業政策 のパ ター ン

をみるとき,発展途上国の農業 は低価格政策 や過大 な為替 レー ト等 を通 じて負 担 を強 い られ,一方,先進国では関税 や補助金 によって農業 を手厚 く保護 して いるのが一般的である。例外 と しては,発展途上国の中で も急速 な経済成長 に 伴 って農業保護水準 も急上昇 している韓国や台湾等 の中進 国 (

NICs)

と,先 進 国の中で も広大 な土地 を持 ち, 保護水準の低 い新大陸の農産物輸 出国がある。

経済発展の段階や経済の比較優位構造の違 いによって農業保護の水準が異 な ることに着 目 し,筆者 は農業保護の政治経済構造 に関する一連の研究 を行 なっ て きた( 1 ) 。小稿 ではそれ らの研究 をふ まえ, まず,農業保護水準 の計測結果 に基づいて農業保護成長 のパ ターンを レビューする.次に,先の研究ではクロ スセクシ ョンデータの多時点 にわたるプー リングによって統計的分析 を行 なっ たが,それ を再検討 し,時間によって農業保護の構造 に変化 がなか ったか どう か を考察する。すなわち, クロスセクシ ョンデータのプー リングの妥当性 を統 計的に検定 した上 で,農業保護 の構造 を再検討することになる。最後 に今後の 研究 の発展方向が示 される。

(1)

速水 ・本間

〔3

〕,本 間

〔4

〕,本間

〔5

〕,

HonmaandHayami 〔7

,Ander son,HayamiandHonma 〔1

〕,

HonmaandHayami 〔6

〕を参照。

〔151

(2)

152

37巻

1 ・2 ・3

2. 農業保護成長のパ ターン ( 1 ) 農業保護水準 の国際比較 /

農業保 護 の程度 を国際的 に比較 す ることは容易 で はない。農業保護 の手段 は 貿易制限 や価格 支持 に限 らず,各種 の補助金 や,税 負担 の軽減,低金利 融資 な ど多 岐 にわ たって お り, それ らを総 合 して国際比 較 す る ことは資料 の制 限 も あ って不可能 に近 い。通常用 い られ る保護 の程度 を表 わす指標 は内外価格差 で ある。す なわ ち,市場介入 の程度 を もって,保護水準 の尺 度 と し,他 の手段 に よる保護 の程度 もこれ に高 い相 関 を もつ もの と想定 され る。内外 の価格 差 を指 標 に保護 の程度 をみ る場合,生産物 の価格差 だ けでな く,投入財 の価格 差 をも 考慮 に入 れ,付加価値 への保護効果 を測定 す る実効保護率 の概念 を用 い ること が望 ま しい

(2)

。 しか し,実効 保 護率 を得 る ため に は農産物 ごとの投入 産 出構 造 と生産物 な らびに投入財 の内外価格差 に関す るデー タが必要 で あ り,現段 階 で は整合 的 な資料 が得 られない以上 ,国際比較 の可能性 は限 られて しま う。

多国間 お よび異 時点 間で比較 を行 な うために最 も多 く採用 されている指標 は 名 目保護率 で ある。 これ は生産物価格 の国内価格 と国際価格 の差 を国際価格 で 除 した比率 と して定義 され る。 この指標 に基 いて

12

品 目にわたる農産物 の名 目 保護率 を測定 し, さ らにそれ らを国際価格評価 に よる生産額 の シェアで ウエ イ トして加重平均 を求 め, 盲の値 によって国全体 の農業保護 の程度 を測 る尺度 と み なす こ とに しよ う

(3)

。第 1表 に は過 去 の研 究 で行 な った総 合 名 目保 護率 の 計測 の結 果が

,1955

年 か ら

1980

年 にわたって

5

ヵ年 ごとに,韓 国 お よび台湾 を 含 む先進 工業 国 につ いて掲 げ られて いる

(4)

。経 済 発展 の プ ロセ ス と農 業保 護 の対応 関係 を示 す ため にはもっと多 くの発展 途上 国 につ いて総合名 目保 護率 を 測 定 す る必要 が あるが,整合 的 なデー タの欠如 の ため に制 限 され る。 しか し,

(2)

内外価格差 を基準 と して保 護水準 を測定 す る種 々の方法 は

ScandizzoandBruce

〔8

〕 に詳 しい。

( 3) 名 目保護率 を用 いて保護水準 を測定する際の問題点 は本間 〔5〕で議論 されている。

(4)

用 い られたデー タお よびその説 明 は,

Anderson,HayamiandHonma 〔1

〕 とそ

Appendix

を参照。

(3)

農業保護の展 開過程 と構造変化

153

第 1 表 農業の総合名 目保護率の国際比較

(%)

1955 1960 1965 1970 1975 1980

CE

本 国 湾

フ ラ ンス 西 ドイ ツ イ タ リア オ ラ ンダ イギ リス デ ンマ ー ク

非 同盟 ヨー ロ ッパ : ス ウ ェー デ ン ス イス

新大陸 :

オー ス トラ リア カナ ダ

ニ ュー ジー ラ ン ド アメ リカ

18 41 69 74 76 85

146 ‑15 ‑ 4 29 30 117

17 3 ‑ 1 2 20 52

35740533414 4036 5

0

68017324523 4446 7421 05650535632 0357 52

0

9 709177456421 5669 7551日H 99826923331 3649 5744 047755345232 9652日U

荏)総合名 目保護率 は農産物

12

品 目 ( 栄,小麦,大麦, ライ麦, とうもろこし, えんぱ く,砂糖, 牛肉,豚肉,鶏肉,鶏卵,牛乳) の名 目保護率 を,国際価格 で評価 した生産額 シェアでウエ

イ トした加重平均。

出所 :

Anderson,K.,Y. Hayamiand M. Honma 〔1〕.

以下でみるように

,1955

年か ら

1980

年 にか けての韓国,台湾および日本の経験 は,経済発展 と農業保護 を対応づ けるに十分 な資料 を提供 しているように思 わ れ る。

第 1表 に したが って農業の総合名 目保護率 の国際間の差異 と異時点間の変動 をみてい くことにする。まず近年の

1980

年時点 では,スイスの

126%

が最 も高 く, 次 いで韓 国の

117%

, 日本 の

85%

が続 いている。ス イスは安全保障 と観光資源 維持 の目的か ら農業 を手厚 く保護 していることで知 られる。 日本の農業保護水 準 はそのスイスにさほど劣 らず,世界で最 も保護率の高 いグ) i , ‑プを形成 する.

一員 であるが,近年工業化 によってめ ざま しい成長 をとげた韓国がその グルー

(4)

154

37

1 ・2・3

プに含 まれていることは注 目に値する。 これ らの国に続 いて農業保護水準が高 い国はスウェーデン, イタリア,台湾である。スウェーデ ンはヨーロッパの中 でスイスと並んでアメ リカと軍事同盟関係 にないため,安全保障の見地か ら農 業保護への傾斜 がみ られる

イタリアは

EC

の中でも農業 の生産性 が低 い国 である.台湾 は韓国と同様,近年急速 に工業化が進んだ

NIC

弓の一員である。

一方,新大陸諸国 はいずれ も農業の保護水準が低 く,また

EC

の中で も農業 生産の効率が高 いといわれているデンマークやオランダは保護率が 20% 台と他 に比べて低水準 にある。 こうした農業保護水準のスペ ク トルは,土地資源 に恵 まれた新大陸諸国と,土地資源 に乏 しく工業立国で経済成長 をとげてきた韓国 や日本 を両極 とする,農業の比較優位性の強弱 に対応 していることがわかる。

農業保護水準 と農業の比較優位性 との対応 は農業保護率の時間的推移 に着 目 するときより明 らかなものとなる。第 1 表 に示 された国の中で急速 に経済の比 較優位構造 を変化 させていった地域 は東アジア諸国の日本,韓国および台湾で ある。日本が高度成長 を開始 した頃の

1955

年 には日本の農業保護率 は

18%

に過 ぎず,これはオランダ並みの水準であ り,フランス,西 ドイツ, イタリアより はるかに低い水準であった。それが,高度成長 につれて急上昇 し

,1965

年まで には一貫 して保護率の高いスイスに匹敵する水準 に到達 し,以後 この高 い保護 水準 を維持 し続 けることになる。

韓国お よび台湾の推移 はさらに興味深い展開を示 している。この両国の

1955

年の農業保護率 は負の値 を示 してお り,国内農産物価格 が国際価格 より低 く抑 制 されていたことを意味する。経済発展の初期段階の低所得国においてこのよ

うな負の農業保護,すなわち農業搾取政策 は一般的な現象である。韓国および 台湾の負の農業保護率 は

1965

年 まで続 く。 しか しなが ら, 日本 に遅れること約

10

年,その後 に急速な経済成長 をみせた両国の農業保護率 は正の値 に転 じたば か りでな く,多 くの先進国の水準 をとびこえ,世界で最 も高い農業保護水準 を 示すに至 った。

(2)

経済発展 と農業保護水準

(5)

農業保護の展開過程 と構造変化

165

日本, 韓国および台湾の経済の高度成長 は, 工業生産力の飛躍的な向上 によっ てもたらされたものであ り,その過程 で農業 は急速 に比較優位性 を失 っていっ た。 このような経済発展 に伴 う比較優位構造の変化 と農業保護水準の変動の対 応 はどのように理解すればよいのであろうか。

経済発展の初期段階では資本蓄積が少なく,多 くの労働者 は農業 に従事 して いる。開放経済 を想定すれば農産物 を輸出 し,獲得 した外貨で工業製品を輸入 す るのが この段階での貿易パ ターンとなる。しか し,資本蓄積が進 むにつれて, 農業 より資本集約的な工業部門が拡大 し,農業か らの労働移動が生 じる。比較 的労働集約的な工業製品の輸出が始 ま り,やがて資本集約的な工業製品 も国際 競争力をつ けるようにな り,農産物の斡出シェアは後退する。農業生産のため の労働者当 りの土地資源が少ないほど,また工業資本の蓄積が速いほどこうし た貿易パ ターンの変化 は急速 に生 じ,やがて農産物 は輸入 に転 じることになる。

特 に,工業部門における技術進歩が農業部門 より急速な場合,農業が輸入産業 に転化する可能性 はより大 きい。

このような経済発展 と農業の比較劣位化の過程で政府が農産物市場 に介入す る誘因も変化する。経済発展の初期 には輸入産業である工業の育成 を計 るべ く 賃金財 たる農産物の価格 を抑制する政策がとられる。すなわち,エ ンゲル係数 の高 いこの段階での労働者 の生活費 を低 くす るために. 農産物価格 を抑制 すれ ば,賃金水準 を低 く抑えることができ,利潤 は増加 し, したがって投資 も増大 する。工業化 を軸 に経済成長 を計 る政府 は農業搾取政策の誘因をもつ ことにな る。一方,工業化 ・経済発展 に成功 し;経済成長 を享受できる段階になると農 業への政府介入の誘因も一変する。農業の比較劣位化 に伴 って資源 をいかに農 業か ら非農業へ移動 させるかという産業調整問題が この段階での政策課題 とな

I

る。農業 に投下 された資源 は土地であれ資本であれ,農業 に特殊化 されたもの

が多 く,また農業者が持つ技術 も他産業で活用できる道 は限 られている。 した

がって,農業資源の産業間移動 は,農業の比較劣位化の速度 ほど遠 くは行 なわ

れない。特 に急速 な経済発展 を遂 げた日本や韓国 ・台湾で この調整問題 は深刻

である。 自由貿易が示すであろう農業の比較劣位化の速度 をそのままに し,市

(6)

156

37

1 ・2・3

場 メカニズムに産業調整 を任せたとしたな らば,農業者の移動 は大 きな苦痛 を 伴 い,農村の過疎,都市の過密 を通 して社会的 ・政治的不安 を引き起 こす こと になろう。 こうした情況 にあたって,政府 は農業の産業調整速度 を遅 らせるべ く,国境保護措置や農産物の価格支持 を通 じて農業所得 を維持する保護政策へ の誘因をもつ ことになる。

ところで,農業資源の他産業への移動 という調整問題 は急速な工業化 の過程 においてばか りではな く,成熟 した先進国経済 においても存在 しつづ けること になる。成熟 した経済の特徴 のひとつは食糧消費が飽和 に近 いことである。エ ンゲル法則 に したがい,所得が上昇するほど消費支出に占める食糧比の割合 は 低下する。これは経済が成長する限 り農業が他産業 に比べて相対的に縮小せ ざ るを得 ないことを意味する。一方,先進国の農業 は技術進歩 と人的資本 の蓄積 を通 じて絶 え間な く生産性 を向上 させている。 このような需要の停滞 と生産力 の増大 という需給の不均等成長の下で,農業の生産要素の報酬率 を他産業のそ れと同 じに維持 してい くためには農業か ら非農業への資源移動が必要 となる。

この産業間調整問題が先進国における農業保護政策への誘因となっている。工 業部門に比べて高 い農業の労働生産性成長率 を示 し,比較優位 をむ しろ農業へ 転 じているヨーロッパ諸国の農業保護率が低下 しない理由がここにある。

経済が成長するにつれて農業が相対的縮小産業 になっていくという事実 は, 農業保護 をめ ぐる政治市場 を想定するとき,興味深 い洞察 を与える。この政治 市場では農業保護政策か ら利益 を受 ける集団が農業保護の需要者であ り,為政 者が供給者 となる。農業保護の供給曲線 は,保護水準 を 1 単位高めるときに為 政者が被 る限界的な政治的損失 を表 わ し,それは農業保護 に反対するグルーフ が為政者 を支持 しなくなる政治的効果の大 きさで測 られる。一方,需要曲線 は, 農業保護の受益者が為政者 に保護水準の増加 とひきかえに与える支持の限界的 増分 を政治的に評価 したものとなる。

経済発展の初期段階では大半の労働者が農業 に従事する。 しか し,その多 く

は教育水準 も低 く,まだ情報や交通の未発達 な地域 に分散 してお り,農業保護

への政治運動などを展開することはできない. したがって,保護o j見返 りとし

(7)

農業保護の展開過程 と構造変化

157

て為政者が享受できる政治的効果は小 さなものにすぎない。他方,工業部門に 従事する人々は少数であ り,都市 に集中 して住み,集団行為におけるフリーラ イダーの問題 も少 ないことか ら政治的 に強い影響 をもちうる。農業保護 に対 し ては,食糧支出割合の高 い労働者 も,利潤 をおびやか される資本家 も強固に反 対するであろう。 したがって, この段階の政治市場では農業保護の需要 も供給 も少なく保護 を実現 しえないばか りでな く,工業部門の政治的圧力は農業搾取 政策へと向うことになる。

経済発展が進み産業構造が変化するにつれて政治市場の構造 も変化する。先 進国段階に至 った経済では農業 と工業の比重が逆転する。 この段階での農業者 は教育水準 も高 く,また,交通 ・通信の発達で地理的条件 にかかわ らず政治運 動が可能 となる。少数 となった農業者 グループでは効率的な政治組織 を作 るこ

とができるし, したがって為政者への政治的影響力 も大 きくなる。一方,非農 業人口は経済の大半 を占めるが彼 らの所得 は高 く食糧費の比重 も小 さくなって いる。彼 らの生活 にとって食糧価格の上昇 はさほど大 きな影響 をもたず,農業 保護への抵抗 は薄れる。また少数の農業者 を支えるに十分多数 となった非農業 者の一人当 り農業保護費用 は以前 に比べて大 きく低下 し,それだけ農業保護へ の抵抗が弱まることになる。 こうして,先進国段階では農業保護 に対する需要 も供給 も大きくな り,政治市場 を通 じても農業保護水準 は高ま りをみせること になる。

3 .農業保護水準の回帰分析

( 1 ) クロスセクション ・データによる回帰分析

農業保護水準の変動パ ターンは農業保護の構造 を解明するのに多 くの示唆 を 与 えている。前節の考察か ら農業保護水準の変動 に関 して言えることは,農業 の比較優位が低下すればするほど,また,農業の経済に占める比重が小 さくな ればなるほど,農業保護の水準 は上昇するであろうということである。そこで,

この仮説 を統計的に検証するために,農業保護水準の変動 を説明する回帰分析

(8)

158

商 学 討 究 第

37巻

1 ・2 ・3

を行 なってみ よう。

推定 される回帰式 モデルは次の通 りである。

InP

P.

+ P.ln

C + C

2lnS+P 3

(

lnS)2+ e

( 1 )

こ こで

P

は農業 名 目保護係数, Cは農業 の比較優位性指数,

S

は農業 の経済 に占める比重, Eは誤差項 で ある。

被説 明変数 で ある農業名 目保護係 数 ( P) とは,国内価格 で評価 した農業 生産額 の国際価格 で評価 した農業生産 額 に対す る比率 であ り,第 1表 の名 目保 護率 に

1 (100%)

を加 えた もの にな る。名 目保護率 を名 目保護係数 に直 して 用 いる理 由は変数 の対数変換 を可能 にす るためである。

説 明変数の うち,農業 の比較優位性指数 ( C) と して用 いた具体的 な変数 は, 農業 の実質労働生産性 の全経済 の実質労働生産性 に対 する比率 である。工業 の 実 質労働生産性 のデ‑ 夕が得 られないので,全経済 に対 す る農業 の実質労働生 産性比率 が用 い られ る。

農業 の比重 ( S) と して は,男子総労働 人 口 に占める男子農業労働 人 口の 比率 を採用 した。労働人 口の うち男子 のみ を対象 と したの は女子労働人 口統計 の国際比較性 が低 いか らである。回帰式 にはこの農業 の比重 に関す る変数 (

lnS

)の

2

乗項 が含 まれているが, これ は農業部 門の比重 が低下 してい くにつれて 農業保護水準 は単調 に増加 す るので はな く, ある範囲 を超 えて農業 の比重 が低 下 すれ ば農業保 護水準 は逆 に低 下 す るとい う可能性 を考慮 に入 れ るためで あ る。先 に議論 したように,農業 の比重 の低下 は保護 に対す る抵抗 を弱 め,農業 者 の政治活動 をよ り効率的 な もの とす る効果 をもつが,そ う したプロセスの効 果 は農業人 口が限 りな くゼロに近づ いて も持続 され るわけではない。 ある臨界 点 を越 えれば農業 の政治力が低下 す ることを想定 す ることは自然 である。

これ らの デ‑ 夕を用 いて

(5)

,第

1

表 で示 した

1955

年 か ら

1980

年 にか けての

6

時点 につ いて, クロスセ クシ ョンによる回帰分析 を行 な ってみた結果 が第

2

表 にまとめ てある。 クロスセ クシ ョンと同時 にタイムシリーズで各国の農業保

(5)

回帰式 に用 い られたデータの詳 しい解説 は

HonmaandHayami 〔6

〕 とその

Appendix

を参照。

(9)

農業保護の展 開過程 と構造変化

2

表 農業名 目保護係数 の クロスセ クション ・デー タによる回帰分析

159

対 象 年

1955 1960 1965 1970 1975 1980

サ ン プ ル 数

14 15 15 15 15 15

説明変数 :

労働生産性比率

‑ 0.184 ‑0.264*** ‑0.327*** ‑0.3'75*** ‑0.360*** ‑0.399***

( I n°) ( ‑

1.39) .ト 3.77) (‑5.70) (‑7.55) (「9.08) (‑6.47)

労働力比率

1.287* 0.690* 0.700** 0.470 0.457** 0.014

( l nS)

(1.88) (1.83) (2.50)

(

1

.

7

8 )

(2.63) (0.04)

労働力比率の

2

乗項

‑0.265** ‑0.159** ‑0.169*** ‑0.135** ‑0.134*** ‑0.029

( 1 ̲ nS)

2 (‑2.34) (‑2.42) (‑3.30) (‑2.63) (‑3.65) (‑0.41)‑

定 数 項

3.979*+* 5.127*** 5.440*** 6.009*** 5.927*** 6.618*** ( 3.68) ( 8.89) (12.43) (15.99) (23.84) (16.2.3)

自由度修正済決定係数 (

豆 2)

回帰の標準語差 ( SEE)

0.485 0.585 0.7i5 0.805 0.854 0.770 0.199 0.127 0.110 0.098 0.079 0.131

・1 . 11‑ .‑ 1

2

3

注 * 串 , ***はそれぞれ

,10%, 5

%

, 1

%水準で統計的 に有意 であることを示す。

推定 されたパ ラメー タの下の カッコの中の数値 は

t

一値。

S の臨界値 は他 の変数 を一定 として名 目保護係数 を最大 にす るSの値0

護水準 について同様 に検討 してみることが望 ましいが,

6

時点 とサ ンプル数が 少 ないことか ら, ここではクロスセクションでの分析 にとどめざるをえない。

第 2 表で回帰モデルの計測結果をみてみると,農業の比較優位指標である労

働生産性比率の係数 はいずれも負であ り

,1955

年 を除 く他の

5

時点では統計的

に 1 %水準で有意 にゼロと異 なることを示 している。興味深 い事実 は,年 を追

うにしたがってこの係数の絶対値が大 きくなってきていることである。 この係

数の絶対値 は農業名目保護係数の労働生産性比率 に対する弾力性 を表わ してお

り,それが年 々大 きくなってきているということは,比較優位性の変化 に世界

の農業保護政策が以前 より敏感 に対応する構造 になってきたことを意味するO

労働力比率およびその

2

乗項の推定 された係数 をみると,

1

次の項 はすべて

正,

2

次の項 はすべて負の値 を示 し,対数で表わ した保護係数が対数で表 わ し

た労働力比率の凹関数 となっていることがわかる。すなわち,先に想定 したよ

(10)

160

商 学 討 究 第

37

巻 第

1 ・2 ・3

うに,農業の比重が低下するにしたがって,他の条件 を一定 とすれば農業保護 水準 は上昇するが,その上昇率 は鈍化 し,やがてある臨界値 を越 えると農業保 護水準 は逆 に低下 し始 めることを意味する。そこで農業の比重 に関するこの臨 界値 を各年 について求 めてみよう。臨界値 は労働力比率の

1

次項および

2

次項 の推定 された係数 をそれぞれ b 2, b 3とするとき,次の式 を解 くことで得 られ る。

言霊

‑ b2・2b3

lnS

‑0

( 2)

推定 された係数の値 を用いて求めた農業の比重の臨界値 は第 2 表の最下段 に掲 げてある。ただ し,係数の推定値の うち

,1980

年 は労働力比率の

1

次項,

2

次 項 いずれ もゼロと有意差がな く,また1

970

年の

1

次項 は1.

78

の t 値 をもつが,

10%

水準 ではゼロと有意差がないことに注意 しておく必要がある。

農業の比重の臨界値 は

1955

年で1

1.3%,1965

年 で7.

9%,1975

年で5.

5%と低

下 を続 け

,1980

年 には

1.3%まで低下 した。1980

年 の係数 は統計的に有意では ないので,1

980

年の臨界値 は信頼性が低 いが,いずれに しても農業の比重の臨 界値 は一貫 して低下 してきたと言える。 これは,農業の比重が経済発展のどの 段階にあるかにかかわ らずいずれの国でも減少する傾向があり,調査対象国が 同 じ場合 には農業の比重 と保護水準の関係 を示す曲線の位置が左方へ年 々シフ トしてい くためと考え られるが,交通や情報網の発達な らびに農業者組織の整 備 と彼 らの政治意識の向上などが,最 も政治的に効率的 と思われる農業 の産業 規模 を年 々縮小 させてきたと解釈することもできる。第 2 表の労働力比率の係 数 をみると,1

960

年か ら

1975

年 にか けての

2

次項の係数値 に大 きな変化 はみ ら れず, この期闇の臨界値の減少 は‑様 な農業の比重の減少 による曲線の位置の シフ トとみなされよう。 しか し

,1955

年および1

980

年 と

1960‑1975

年の期間と の間では

1

次項 のみな らず

2

次項の係数値 に大きな差がみ られ, したがって, これ らの期間の間では農業保護 に関わる政治市場の世界的構造 に変化があった とみるべ きである。

以上の

3

変数で農業名目保護係数の変動 をどの程度説明 しているかを自由度

(11)

農業保護の展開過程 と構造変化

161

修正済決定係数 (

R‑2)

でみておこう

.1955

年 では保護係数の変動 のおよそ

50%

を説明す るにすぎないが,その他の年 は

60‑85%

程度の説明力 をもっている。

農業保護水準 は複雑 な政治 プロセスの産物であることを考 えれば, この説明力 はかな り高 いといえよう。ただ し, ここでの回帰分析 は,農業保護水準 な らび にそれに関わると思 われる変数 の関係 の強 さをみているにすぎない。説明変数 と被説明変数 との間には一定方向の因果関係 だけが成立す るのではな く,被説 明変数である農業保護水準が同時に労働生産性比率や労働力比率 に影響 を与 え ているはずである。 したがって, ここでの推定値 にはいわゆる同時方程式バ イ アスを含 んでいる可能性 があることは否定できない。

( 2) チャウ ・テス トによる構造変化 の検定

2

表 ではクロスセクシ ョン ・データによって農業保護水準 とその決定要因 との関係 をさぐってみたが,推定 されたパ ラメータの値 は年 によって似 か よっ ていた りかな り異 なっていた りしていた。異時点間で推定 されたパ ラメータの 構造 に統計的 にみて有意 な差が認 め られないと した ら,それ らのデータをプ‑

ルすることによってパ ラメータ推計の効率性 を上 げることができる。そこで, 異時点間で推定 された回帰式 の構造 に変化があるか どうか をチ ャウ ・テス トに

よって統計的 に検討 してみよう。

チ ャウ ・テス トはチ ャウ

(Chow 〔2〕)

によって提示 された手法で,時系 列 デー タを構造 変化 が あった とみ られ る時点 をは さんで

2

分割 し,前半 の

n

個 の観測値 によって推定 され たパ ラメー タと後半 の m 個 の観測値 によって得 られたパ ラメー タがすべて等 しいか どうか を F 一検定 す るものである.具体 的なチ ャウの検定統計量 は次の ように表 わされる。

F‑ [ % m ( 9 号 ‑

yt)2

一七 t 81 ( 9

1t‑yt)2

償( 1 9

.t2‑yt)21]/ (k・ 1)

(9t1‑ yt)2

・ t n = q l ( b t 2 ‑

yt)2 1 /

i n

・ ‑ ‑2(k

' 1 )

ここで 9 0 t, 9 T t, 窮 はそれ ぞれ通期,前期,後期 の推定 された回帰式 によ

る被説 明変数の推定値 であ り, y tは実績値 である。また kは説明変数 の個数

(12)

162

学 討 究 第

37巻

1・2・3

である

.

このチ ャウの検定統 計量 は自由度 ( A+ 1 , a+m ‑ 2 (k 十 1)) の F ‑分布 に したが う.検定 の手続 きは所与 の有意水準 と自由度 に対 して定 ま る F +に比 べ て ( 3 ) 式 の F 値 が大 きけれ ば,前期 と後期 の間で回帰式 の構造 係数 に変化がないとす る帰無仮説 ( Ho ) は棄却 される。

このチ ャウ ・テス トを第 2 表 の回帰分析 のデータに適用 して異時点間の農業 保護の構造変化 をさぐってみることにする。構造変化の検定 は以下のプロセス で行 なわれる。まず第

1

ステ ップと して,隣合 った

2

時点の観測値 をプール し て,それ らの 2 時点の間に構造変化 があったかどうかを検定する。次 に,第 2 ステ ップとして連続 した 3時点の観測値のプール を考 え, ‑その 3時点の間に構 造変化が あったかどうかを,前

1

年対後

2

年 な らびに前

2

年対後

1

年のすべて の組合わせにつ いてテス トする。ただ し,第 1ステ ップで棄却 された時点間の 組合 わせ はは じめか ら除かれる。第

2

ステ ップで前 1年対後

2

年 な らびに前

2

年対後

1

年 の双方 のテス トで棄却 されなか った組合 わせ につ いては,第

3

ス テ ップと して, さらに連続 した

4

時点 にわたるデータ ・プー リングを行 ない, その

4

時点 を

2

分するすべての場合 についてチ ャウ ・テス トを行 なう0

4

時点 の間のいずれを区切 っても構造変化 がみ られなか った組合 わせにつ いては, さ

らに,

1

時点 を加 えたデ‑夕 ・プ‑ リングを考えて同様のテス トを施す.最終 的 に

6

時点のデータ ・プール をいずれの時点で区切 って も構造変化が託 め られ ない (H oを棄却 できない)場合 には,すべ てのデ‑夕をプール した回帰分析 が妥 当な もの となる

(6)

。 ここで は帰無仮説 を棄却 する有意水準 と して

10%

水 準 をとることにする。

これ らの手続 きに したがったチャウ ・テス トの結果 が第

3

表 に示 されてい る。まず第

1

ステ ップでは

1955

年か ら

1975

年 にか けて隣合 ったペ アのいずれ も 低 い F 値 を示 し, これ らのペ アにつ いて は観測値 の プ‑ルが妥当であること を示 している。 しか し

,1975

年 と

1980

年の間では

F

値 が

3.2

と大 き く, この

2

時点間で有意 な構造変化があったことを示 している。そこで第

2

ステ ップでは,

( 6) 過去 の研究 では構造変化のテス トをせずに 6時点のデータすべてをプール した回帰

分析を行なっている。

(13)

農 業 保 護 の展 開過 程 と構 造 変 化

3

表 チ ャウ ・テ ス トに よ る農 業保護 の構 造 変化 の検 定

163

1

ス テ ッ プ 第

2

ス テ ッ プ 第

3

ス テ ッ プ

2

時 点 プー ル 、F ‑値

3

時 点 プー ル F ‑値

4

時点 プー ル F‑ 値

1955/60 0.636 1955/60 65

p

l.459 1955/60 65 70 2.684** 1960/65 0.268 1955 60/65 d.726 1955 ‑60/65 70 2.353*

1965/70 .0.588 1960/65 70 1.048 1955 60 65/70 1.761 1975/80 3.231** 1965/70 75 0.457 1960 65/70 75 1.231

1

)チ ャウ ・テス トに用 いられた回帰モデルは第

2

表 と同 じ。

2)

1

ステ ップで

2

時点,第

2

ステ ップで

3

時点,第

3

ステ ップで

4

時点のデータ ・プー リングを行 か 、 ,各 グループをスラッシュ (/)で区切 った場合, その前後で回帰式の 構造 に変化 があるかどうかをチャウ ・テス トで検定。F一値 はその検定統計量 である。

3) *, * * はそれぞれ

10%

, 5 %水準で統計的 に有意であることを示す。

1980

年 を除 く

5

時点 を対象 に連続 した

3

時点 のデータ ・プールをテス トしてみ た。結果 はいずれの場合 にも

10%

水準 で有意 なものはな く,想定 される

3

時点 のデータ ・プー リングは妥当なものである。第

3

ステ ップではさらに

1

時点 を 追加 して,1955 年か ら

1975

年 の間の連続 した

4

時点のデー タ ・プールについて 検討 した。 ここでは1955 年か ら

1970

年 までの

4

時点 プールが,1955 年 と1960 年 の間お よび196

0

年 と1965 年 の間 で高 い

F値 を示 し, この期 間の4

時点 プール は妥当ではないことを表 わ している。 一万,1960 年か ら

1975

年 までの

4

時点 プー ルについては,いずれの時点で区切 ってみて もその前後で構造変化があったこ とは認め られず, この

4

時点 についてのプー リングは妥当なものであることを 示 している。

以上の検定結果か ら得 られる結論 は,1960 年か ら

1975

年 にか けての農業保護 水準 を説明する回帰式の構造 は同一 とみな して差支えないが,その前後すなわ ち,1955 年 および19

80

年 とは回帰式 の構造が異 なっているとみなすべ きである ということである。そ こで,1960 年か ら

1975

年 にか けての観測値 をプール して 回帰式 を推定 してみると次のようになる。

InP ‑5.743‑0.333lnC+0.504lnSl0.137 (lnS)2

(32.02) (‑12.88) (4.36) (‑6.21)

R 7 5

2‑0.767,SEE‑0.101,S

の臨界値

‑6.3

(14)

164

37

1 ・2・3

ここで記号 はすべて第 2表 の定義 と同 じである。 この回帰式 と第 2表 における

1955

年 お よび1980 年 の回帰式 の

3

本 が,1955 年か ら

1980

年 にか けての農業保護 の構造 とその変化 を表 わ していることになる。 ちなみに,上記 の

4

時点 プール による回帰式 の計測結果 を,第

2

表 の1960 年か ら

1975

年 の クロスセ クシ ョン ・ データによる計測 と比べてみ ると, いずれのパ ラメ‑ 夕も

4

時点の プー リング によって大 き く t ‑値 を改善 してお り,単年度 デー タによる推定値 よ り高 い安 定性 が得 られ ることを示 している。

( 3) ダ ミー変数 を用 いた回帰分析

第 1表 の農業 の総合名 目保護率 の国際比較 をもう一度 ふ りかえってみると, 農業保護水準 の変動 を説明す る要因 と して,比較優位性 や農業 の比重 の他 に地 域 と しての特色 によって他地域 とは異 なる保護水準 を示 している例 があ げられ た.その ひとつ はアメ リカと軍事的同盟 関係 にないスイスお よびスウェーデ ン の安全 保 障上 の理 由か らの農業 保護政策 であった。同様 に,

EC

諸 国 の保護 水準 の時間的推移 をみてみ ると, い くつ かの国で は

EC

の共通 農業政策 の開 始 または共通農業政策 への移行 の時期の前後 で農業保護水準 に明 らかな上方 シ フ トが み られ る。 そ こで,非 同盟 お よび

EC

とい う

2

つ の要因 を回帰分析 に ダ ミー変数 と して導入 してみ よう。すなわ ち,非 同盟 ダ ミ‑はスイスお よびス ウェーデ ンのみが

1

の値 をと り,他 の地域 は

0

となる変数 であ り,

EC

ダ ミー はフランス,西 ドイツ, イタ リアが1

965

年以後 , イギ リスとデ ンマー クは1975 年以後 の値 が

1

であ り,その他 は

0

となる変数であるが, これ らを説明変数 と

して加 える. さらに, 日本 だ けが

1

の値 をと り他 が 0となる日本 ダ ミー を導入 して, 日本の農業保護水準 が,比較優位性 や農業 の比重 で共通 に説明 される世 界の保護構造 による水準 を超 えて高 いものであるかどうか をテス トしてみるこ

とに しよう。

以上 の

3

つの ダ ミー変数 を先の( 1) 式 の右辺 に加 えて行 なった回帰分析 の結果

が第

4

表 に示 されている。ただ し, ここでは前節 の分析結果 に基 いて1960 年 か

1975

年 までの観測値 をプール して回帰 を行 ない,1955 年 と1980 年 の クロスセ

(15)

農業保 護 の展 開過程 と構 造 変化

4

表 ダ ミー変数 を用 いた場 合 の農 業名 目保 護係数 の回帰分析 対 象 年

1955 1960‑75 1980

サ シ プ ル 数

14 60 15

説明変数 :

労働 生産性 比率

‑0.165 ‑0.263*** ‑0.273**

(lhC) (‑0.81)

(

‑7.23) (‑2.44)

労働 力比 率

1.273 0.408*** ‑0.253

(lnS) (1.45) (3.63) (‑0.69)

労働 力比率 の

2

乗項

‑0.260 ‑0.108*** 0.064

(lnS)2

( ‑1.

73) (‑4.74) (64)

EC

ダ ミ‑

0.118*** 0.142

(E) (3.51)

(

1.45)

非同盟 ダ ミー

‑0.053 0.140*** 0.370*

(N)

(ら.22) (2.69) (2.26)

日本 ダ ミ

‑0.051 0.084 0.138

(∫)

(‑0.19)

(

1.29) (0.55)

定 数 項

3.908** 5.477*** 6.125***

(3.22) (28.42) (13.73)

自由度修 正済決定係数

0.368 0.806 0.856

( R

2)

凹帰 の標 準誤差

0.221 0.092 0.104

(SEE)

165

1)

辛,料,* * *はそれぞれ

10%, 5

%

, 1

%水準で統計的 に有意である ことを示す。

2) 推定 されたパ ラメータの下のカッコの中の数値は

t

一値。

3) S の臨界値は他の変数 を一定 として名目保護係数 を最大にする S の値。

クシ ョン ・デ‑夕による もの と合 わせて掲 げ られている( 7 ) 0

ダ ミー変数 を導入 した

1955

年 の計測結果 は第

2

表 の結果 を何 ら改善す るもの ( 7) 過去 の分析 で も同様 に ダ ミー変 数 を導 入 した回帰 を行 な って い るが, すべ ての期 間

が プール され た デー タに よって い る。 また説 明変数 と して, すべ ての 国 に共通 な農 業 と工 業 の国際交易条件 が導入 され て い るが, ここでの分析 は クロス セ ク シ ョン ・

デー タに塞 いて い るの でその効 果 は定 数項 に含 め られ る ことに な るo

(16)

166

37

1・2 ・3

ではな く,いずれの ダ ミー変数の係数 もゼ ロと有意差 はない。 自由度修正済 の 決定係数 はむ しろ低下 して しまうことに注意 してお こう。

1960‑75

年 の プール ・デー タによる回帰 は興味 ある結果 を提示 している。労 働生産性比率 お よび労働力比率 に関す るパ ラメー タの値 をいずれ も有意 にとど

めなが ら,

EC

ダ ミー と非 同盟 ダ ミーの係 数 が

1%

水準 で有意 にゼ ロ と異 っ てい る ことを示 して い る。 す なわ ち ; この期 間 で は

EC

の共通 農業政策 が明

らかに農業保護水準 を高める効果 をもち, またス イスお よびス ウェーデ ンの保 護水準 も明 らか に他 の地域 よ り構造 的 に高 か った ことを意味す る。一方 , 日本 ダ ミーは正の値 を示 してはいるものの,ゼ ロとの有意差 は認 め られない。 この 期間中 に日本 は

41%

か ら

76%

へ と名 目保護率 の急上昇 をみせたが,それ は, 冒 本 に特有 な農本主義や食糧安全保障 といった農業保護 を強 める特殊要因があっ たわ けで はな く,急速 な工業化 に伴 う農業 の比較優位性 の低下 や農業の比重 の 縮少 といった,先進国 に共通 な農業 の調整 問題 の構遇 の中で説明 され うるもの である ことを示 している。

1980

年 のデー タによるダ ミー変数 の導入 の結果 は,労働生産性比率 の t‑ 値 を下 げなが らも

5%

水準 で有意 に保 ち,非 同盟 ダ ミーの効果が

10%

水準 で有意 で あった ことを示 してい る。

EC

ダ ミー は正 の値 を もっているが

,10%

水準 ではゼ ロと有意差 がない。日本 ダ ミーはここで も有意差が認 め られない。なお, 労働力比率 の

1

次項 と

2

次項 の係数 の符号 が逆転 しているが, いずれ もゼ ロと 有意差 はない。

4. お わ り に

先進地域 の農産物輸入 国に共 通 にみ られ る農業保護政策 は,世界農産物市場

に歪 み を与 えるだ けでな く,国際収 支の不均衡問題 とも絡 まって国際経済摩擦

を引 きお こす主要因の ひとつ となっている。 しか しなが ら,農業保護 をめ ぐる

議論 は政治的問題 と して処理 されが ちであ り,経済学 の立場か ら分析 されるこ

とは少 なか った。実際,各国の農業保護の程度 につ いて さえ共通 の認識 がある

わけで はな く,様 々な視点か らの異 なる主張 が議論 を混迷 させている。

(17)

農業保護の展開過程 と構造変化

167

小稿 では生産物の内外価格差 をひとつの尺度 と して農業保護水準 を考察 し た。多様 な農業保護手段の一面 をとらえた古 , こすぎないが,国際比較 と畢時点間 の比較 という

2

元的な観察 を通 じて農業保護の構造 をさぐることができた。農 業保護水準の変動 を説明する回帰分析 では,農業の調整問題が農業保護 を理解 する鍵であるという仮説 を支持 し,比較優位性指標や農業の比重 に関わる変数 の説明力が高いことを示 した。また,そのような変数 と農業保護水準 との回帰 構造 は必ず しも一定ではなく時間的に変化 してし , 1くものであることが確認 され

た 。

最後 に,農業保護 をめぐる今後の経済学的分析のために,残 された課題 を整 理 しておこう。 くりかえ し述べているように, ここでの分析 は農業保護の一面 をとらえているにすぎない。各種の農業保護政策の費用 と便益 を総合 して農業 保護水準 を定義する必要がある。そのための作業 として決定的に重要なのは各 国の農業予算の分析である。政策遂行の基礎 をなすのは政府予算である

貿易 制限による内外価格の帝離 は消費者負担の保護費用であ、 り,補助金や国家によ る食糧管理費用 は納税者負担の保護費用である。予算の分額 は国によって制度 や定義が異な り,多 くの困難 を伴 うが, より包括的な農業保護分析 のためには 欠かせな・ い作業のひとつである。

内外の価格差のみに限定 したとしても,特定の産業の保護水準 をみるのに名 目保護率 だけでは不十分である。生産物 ばか りでなく投入物の保護水準 を考慮 に入れなければ,その産業の要素報酬が保護 によってどれだけ高め られている かを知 ることができない。特 に畜産物の場合,例 えば飼料穀物 に保護のない日 本 と保護 のある

EC

とでは,名 目保護率 は同 じで も投入財保護水準 を折 り込 んだ実効保護率 で大 きな差がでてくることになる。実効保護率の国際比較 は容 易ではないが,投入産出構造 を単純化 し,投入財保護のい くつかの シナ リオに 塞 く分析 は可能であろう。

以上の農業保護水準の定量化分析 と平行 して進め られるべき作業 は農業保護

水準 を決定する政治経済 プロセスをモデル化することである。ここでの単純 な

回帰分析 にみ られるようない くつかの政治経済変数 と保護水準の関連性 を検証

(18)

168

商 学 討 究 第

37

巻 第

1・2・3

しなが ら,理論モデルとのフイ‑ ドバ ックをくりかえす必要がある.政治市場 の体系的なモデル化や国際経済学 における特殊要素理論および産業調整モデル との結合 は展望 を開 くことになるか もしれない。

このような課題が数多 く残 されている農業保護 をめぐる経済分析 は,まだ開 始 されたばか りであ り,小稿 での議論 も体系的な研究 にむけた予備的作業 とし て位置づ けられよう。

引用文献

(1) Anderson

,K. ,

Y.Hayami,andM.Honma

,

"TheGrowthofAgriculturalProtec‑

tion,"in

K

.Andersonand

Y

.Hayamiwithassociates,ThePoliticalEconomyof AgriculturalProtection,LondonandSydney:AllenandUnwin,1986,Chapter 2.

〔2〕 Chow,G.C.

,

"TestsofEqualityBetweenSetsofCoefficientsinTwoLinear Regressions,

"

Econometrica,Vol.28(1960),No.3,pp.591‑605̲

〔3

〕速水佑次郎 ・本間正義 『 国際比較 か らみた日本農業の保護水準』政策構想 フォー ラム

,1983

年。

〔4

〕本 間正義 「 農産物価格支持水準の国際比較 ‑ その方法 と資料 お よび計測結果

東京都立大学 『 経済 と経済学』第

54

(1984

3

月 )

,115‑137

頁。

〔5

〕本間正義 「 先進国における農業保護水準の変動 」 経済研究』第

37

巻第

1

(1986

1

月 )

,24‑33

頁。

[6] Honma,M.,and

Y

.Hayami

,

"DeterminantsofAgriculturalProtectionLevels:

AnEconometricApproac

l l

,

"

in

K

.Andersonand

Y

.Hayamiwithassociates

,

ThePoliticalEconomyofAg

r

iculturalProtection,LondonandSydney:Allenand Unwin,1986,Chapter4.

〔7〕 Ⅱonma,M.and

Y

.Hayami

,

"StructureofAgricultural Protectioninlndustrial Countries",JournalofInternationalEconomics,Vol.20,No.1/2(1986),pp.

115‑129.

(8] Scandizzo,P.

L

.,andC.Bruce

,

"MethodologiesforMeasuringAgricultural PricelnterventionEffects

, "Wo

rhiBankStaff WorkingPaperNo.394(1980)

,

Wasllington,D.C∴WorldBan

k.

[ 付記] 本研究 の遂行 にあた り,昭和

61

年度文部省科学研究費補助金 ( 奨励研究

A )

の助成 を受 けた。

参照

関連したドキュメント

 富の生産という側面から人間の経済活動を考えると,農業,漁業ばかりでは

遺伝子異常 によって生ずるタ ンパ ク質の機能異常は, 構 造 と機能 との関係 によ く対応 している.... 正 常者 に比較

 良渚文化の経済的基盤は、稲作を主体とする農耕生

これに加えて、農業者の自由な経営判断に基づき、収益性の高い作物の導入や新たな販

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

本稿で取り上げる関西社会経済研究所の自治 体評価では、 以上のような観点を踏まえて評価 を試みている。 関西社会経済研究所は、 年

平成28年度の日本経済は、緩やかな回復軌道を描いてきましたが、米国の保護主義的な政

民間経済 活動の 鈍化を招くリスクである。 国内政治情勢と旱魃については、 今後 の展開を正 確 に言い