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在宅医療現場に潜在する閉塞性換気障害患者の検出に関する検討

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Academic year: 2021

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(1)

─ 215 ─

炎は非常に予後が悪いため、誤嚥性肺炎のハイリス ク群の患者に潜在する閉塞性換気障害患者の実態を 把握することは重要であると考えられる

3)

。また、

在宅医療を希望する患者は喫煙率の非常に高い世代 でもある。したがって、在宅療養の原因となった原 疾患

4)

に加えて、たばこに起因する生活習慣病が潜 在している可能性が高いと推測される。肺の生活習 慣病である COPD の潜在的患者数は 600 万人とも いわれている。特に地域医療の現場には、潜在患者

は じ め に

我が国は、未曾有の超高齢化社会を迎えている。

この社会を支える仕組みの一つとして、在宅医療が 普及していくと考えられる

1)

。在宅医療を希望する 患者は主に高齢者である。特に認知症や脳血管疾患、

骨折などにより寝たきりとなった患者が多い。この ような患者群は一般的に誤嚥性肺炎のハイリスク群 と考えられている

2)

。COPD 患者における誤嚥性肺

在宅医療現場に潜在する閉塞性換気障害患者の検出に関する検討

髙 瀬 義 昌

1)

   大 石 修 司

1)

   根 本 健 司

1) 

中 村 博 幸

1)

   市 来 真 彦

2)

   片 山 成 仁

3) 

英   裕 雄

4)

   五十嵐   中

5)

1)東京医科大学内科学第五講座

2)東京医科大学茨城医療センターメンタルヘルス科

3)東京医科大学精神医学講座

4)医療法人社団三育会 新宿ヒロクリニック

5)東京大学大学院薬学系研究科・医薬政策学

【要旨】 在宅医療が主に対象とする高齢者患者は喫煙に起因する生活習慣病の罹患率が高く、COPD患 者が多く潜在していると考えられる。そのため呼吸機能評価の実施が重要と思われるが、通常、呼吸機 能を評価するのに用いられるスパイロメトリー(SM)は呼吸努力を必要とし、高齢者や認知機能が低 下した対象者などには実施困難なことが多い。そのため、今回、我々は、SMに加えて高齢者にも実施 がより容易と思われる強制オシレーション法(FOT)を用い在宅医療現場に潜在する閉塞性換気障害患 者の検出に関して検討した。

 在宅医療患者

212

名に対し

Mini

-

Mental State Examination(MMSE)を用い認知機能を評価し、SM・

FOT

を実施した。両検査が実施できた患者に対し

FOT

各変数と

SM

の評価を比較した。SM・FOTと もに

MMSE

の平均値は実施可能群が有意に高く、FOTは

SM

に比較して

MMSE

がより低値の患者にも 実施できた。さらに、気流制限について

FOT

による共振周波数(Fres)の値が指標となる可能性が示 唆された。以上より

FOT

は在宅医療対象者の呼吸機能評価法として

SM

を補完できる可能性があり、

潜在する閉塞性換気障害患者の把握に有用であることが示唆された。

東医大誌 70(2)

: 215

-

225, 2012

平成

23

12

5

日受付、平成

24

3

27

日受理

キーワード

:

在 宅 医 療、 慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease : COPD)、 ス パ イ ロ メ ト リ ー

(Spirometry : SM)、強制オシレーション法(Forced Oscillation Technique : FOT)

(別冊請求先

:

146

-

0092 東京都大田区下丸子 1

-

16

-

6

-

1F たかせクリニック 髙瀬 義昌)

TEL : 03

-

5732

-

2525 FAX : 03

-

5732

-

2526

(2)

が多数存在していると考えられる

5)

。 COPD は治療 せずに放置すると著しく QOL が損なわれてしまう が、早期発見して治療を実施すれば、 QOL の低下 を効果的に防止することが期待される。上記より、

在宅医療現場での呼吸器疾患の診断法の確立は今後 その重要性が増すものと思われる。しかしながら、

現在、在宅医療を受診している患者は高齢や認知機 能の低下などのため、一般的に検査で用いられるス パイロメトリー Spirometry (以下 SM と略す)など の呼吸努力を必要とする検査の実施が困難であるこ とが多い。

近年、呼吸抵抗の測定法として強制オシレーショ ン法 Forced Oscillation Technique(以下 FOT と略す)

による臨床応用が可能となっている

6-10)

。 FOT は、

SM と異なり、安静呼吸下に最小限の協力で実施可 能であり、安静呼吸での呼吸抵抗などを測定し、そ の周波数解析により呼吸抵抗の周波数依存性を明ら かにできるという特徴がある

6-10)

。上記の特徴から、

高齢者や認知機能低下者など在宅医療の対象となる 患者にも実施できることが期待される。そこで、我々 は、従来の SM に加えて、移動性を確保するように 工夫した FOT 装置を用いて在宅医療現場に潜在す

る閉塞性換気障害患者の検出の可能性を検討した。

研究対象と方法

1.

 対象

たかせクリニックおよび新宿ヒロクリニックの往 診を受診する居宅または高齢者施設の患者 212 名が 研究に参加した。 212 名の平均年齢は 80.9 歳(男性 76 名、女性 136 名)であった。上記対象者および その介護者たる家族には、訪問診察時に、ヘルシン キ宣言に基づき、研究目的と方法を十分に説明した うえで、書面により研究の参加同意を得た。対象の プロファイルおよび SM 、 FOT の測定項目を Table 1 に、 ま た 原 疾 患・ 併 存 症 の 罹 患 数・ 罹 患 率 を

Table 2 に示す。なお、検査は全ての症例について

固定した医師 1 名、助手 1 名にて実施した。

2.

 評価項目

1 ) スパイロメトリー

SM は、オートスパイロ AS407(ミナト医科学株 式 会 社 製  日 本 ) を 用 い て 測 定 し、 FVC ( L )、

FEV

1

( L )、 FEV

1

/FVC を求めた。各検査ともに 3 回 行い最も良い値を評価に用いた。

Table 1 Patients Characteristics

Number of participants : total

(%)

212

(100)

: male/female

(%)

76/136

(35.9/64.2)

Age : male/female

(mean±SD)

81.3±10.2/80.1±8.6

Body weight

(kg)(mean±SD)

49.4±12.3

MMSE Score

(mean±SD)

20.4±8.3

Smoking status : number of male/female

(%)

  Non-

smoker 18/113

(8.5/53.3)

  Ex-

smoker 49/20

(23.1/9.4)

  Current smoker

9/3

(4.3/1.4)

Living status : number

(%)

  living alone

30

(14.2)

  living with caregiver

112

(52.8)

  nursing home

70

(33.0)

Spirometry : SM

FVC

(L)

1.94±1.09

FEV

1(L)

1.42±0.79

FEV

1

/FVC 74.4±38.2

Forced Oscillation Technique : FOT

R5

(kPa/L/s)

0.35±0.21 R20

(kPa/L/s)

0.25±0.13 R5

-

R20

(kPa/L/s)

0.10±0.10 X5

(kPa/L/s) −0.17±0.10

Fres

(Hz)

17.7±8.3

(3)

髙瀬 他

7

:

在宅医療現場に潜在する閉塞性換気障害患者の検出に関する検討

─ 217 ─ 2012

4

2) 強制オシレーション法

FOT は、安静呼吸時における肺や気道の状態を、

努力を必要とせずに測定可能であり

6-10)

、今回の検 討ではマスタースクリーン IOS

-

J(Impulse Oscil- lometry System )( CareFusion Germany 234 GmbH 、 Germany )を用いて実施した。以下に FOT の概略 を記し、測定項目を Table 1 に記載した。

FOT は、スピーカーから多周波数を含んだイン パルス波(周波数 5〜35 Hz)を被検者の気道に与え、

生じる「フロー」( V )と「口腔内圧」( P )を検出し、

それらを高速フーリエ変換して周波数毎の粘性抵抗

(R)とリアクタンス(X)を算出する。周波数が 5 Hz での粘性抵抗( R5 )は全気道にわたる病変を 反映し、20 Hz での粘性抵抗(R20)は中枢気道抵 抗を示すとされ、その差である R5

-

R20 は末梢気道 抵抗を反映するといわれている。一方、周波数が 5 Hz でのリアクタンス(X5)は末梢容量性リアク タンスを示し、末梢の肺病変(過膨張、虚脱、硬化 など)を示唆すると言われている

9)

。また、リアク タンス( X )は低周波数でのみ負の値を示し高周波 数では正の値となる。弾性抵抗と慣性抵抗が釣り合 う周波数、すなわち X がゼロとなるときの周波数 を共振周波数( resonance frequency : Fres )と称する。

本装置は一般的には据え置き型なので移動性に問 題があったが、本研究においては、在宅医療現場で 実施できるように車載可能な形態に加工したものを 使用した(Fig. 6

-

b)。

3 ) 認知機能の評価

認知機能の評価には、 MMSE ( Mini

-

Mental State Examination)を使用した

11)12)

。MMSE は、認知症

の疑いがある患者に対し口頭で行う 11 項目(記憶 力、計算力、言語力、見当識など) 30 点満点の簡 便な検査方法である。

4) IPAG

-

COPD 質問票

IPAG ( International Primary Care Airways Group ) の作成した、 COPD の簡易スクリーニングに有用な 問診票である。8 項目の質問から得られたポイント を基に、 COPD の可能性が高いかどうかを判断す る

13)14)

5 ) 統計学的検討

 記述統計データは、平均値±標準偏差で示した全 症例について、SM と FOT それぞれの実施の可否 と MMSE スコアとの関係を、二標本 t 検定により 評価した。男女間の群間比較には、Mann

-

Whitney の U 検定を用いた。

続いて、 SM と FOT 両方が実施可能であった症 例については、FEV

1

/FVC と FOT で得られる各種 パラメータとの相関を Pearson の相関係数をもとに 評価するとともに、気流制限の有無の FOT パラメー タへの影響を Mann

-

Whitney の U 検定で評価した。

さらに、 FOT のパラメータから FEV

1

/FVC を予 測する重回帰分析と、FOT のパラメータから気流 制限の有無( FEV

1

/FVC <70% を気流制限ありと定 義)を予測するロジスティック回帰分析を行った。

同時に、カットオフ値を変動させたときの ROC 曲 線を描画して感度・特異度を評価し、最適なカット オフ値を探索した。

統計解析は、 JMP9.0 ( SAS インスティテュート)

ならびに SPSS statistic 19 ( IBM )を用いて実施した。

Table 2 Prevalence of physical and mental Illnesses in patients

Illness numbers %

dementia 146 68.9%

hypertension 104 49.1%

cerebrovascular disease 32 15.1%

coronary heart disease 28 13.2%

malignancy 22 10.4%

hyperlipidemia 21 9.9%

orthopedic disability 18 8.5%

diabetes mellitus 10 4.7%

other neurological and mental disorder 10 4.7%

(4)

結   果

1.

MMSE

と呼吸機能検査の比較検討

本研究対象者において、男女間での MMSE の値 を比較したが、男性 21.0±6.6(n=71)、女性 19.7±7.2

(n=128 ) で、 Mann

-

Whitney の U 検 定 で は p=0.22 となり性別による統計的な差異は認められなかっ た。また、MMSE への年齢の影響を単回帰分析に て検討したが、相関は見られなかった( r

2

=0.058 )。

両検査の実施の可否により Table 3 のように分類 し、それぞれの群の MMSE スコアを示した。各検 査の実施率にて検討したところ、 SM 可能群での MMSE の平均値は 24.1±5.6 で、SM 不可能群では 18.6 ± 8.5 であった。一方、 FOT に関しては、可能 群の MMSE は 21.6±6.9、不可能群は 12.1±7.5 で あった。 SM ・ FOT 両検査ともに、 MMSE の平均値 はそれぞれ実施可能群が実施不可能群よりも有意に 高かった(p<0.01)。また SM・FOT 実施可能群間 で比較すると、 MMSE の平均値は SM 実施可能群

( 24.1 ± 4.7 )が FOT 実施可能群( 21.6 ± 6.1 )に比し て 有 意 に 高 か っ た(p<0.01)。 な お、SM お よ び FOT の 実 施 率 を 男 女 別 に 見 る と、 SM で は 男 性 24.0%、 女 性 26.4%、FOT で は 男 性 84.0%、 女 性 80.8% が実施できたが、リスク比の 95% 信頼区間は、

それぞれ SM が 0.55 〜 1.48 、 FOT が 0.91 〜 1.18 であ

り、統計的には男女間に実施率での差は認められな かった。

2.

SM

および

FOT

の解析結果

1 ) 全対象 212 名のうち SM では、指示に従い信 頼 性・ 再 現 性 の あ る 結 果 が 得 ら れ た の は 57 名

( 26.9% )であった。 FOT では 212 名中 173 名( 81.6% ) で実施可能であった。 SM と FOT の両方の検査が 実施可能であった患者群(以下 I 群とする)54 名

( 25.5% )のうち、気流制限を示した患者は、 15 名(男 性 7 名、女性 8 名)、平均年齢は 78.93±5.36 歳(68

〜 89 歳)であった。

2 )  I 群について、 FEV

1

/FVC と FOT 各パラメー タとの相関および気流制限の予測因子としての有用

Table 3 Classification by the feasibility of SM and/or FOT and MMSE scores

SM FOT Done Failed Total

Done

(I)

24.4±4.5 54

16.5±8.3

3

24.1±5.6

57 Failed 20.2±7.2

119 11.8±7.4

36 18.6±8.5

155 Total 21.6±6.9

173 12.1±7.5

39 20.1±8.3

212

 upper figures = MMSE score

 lower figures = numbers of patients

Fig.1‐a Fig.1‐b

point

estimation Standard

error t value p value point

estimation Standard

error t value p value

intercept 89.037 4.503 19.77 <0.01 intercept 78.435 2.259 34.72 <0.01

Fres. -0.840 0.238 -3.53 <0.01 R5-R20 -48.489 18.420 -2.63 =0.01

Fig. 1 Single linear regression plot of Fres

(a)

and R5

-

R20

(b)

to FEV

1

/FVC. (a) Correlation between FEV

1

/FVC and Fres

(n=54)

, and

(b)

Correlation between FEV

1

/FVC and R5

-

R20

(n=54)

.

a b

(5)

髙瀬 他

7

:

在宅医療現場に潜在する閉塞性換気障害患者の検出に関する検討

─ 219 ─ 2012

4

性について検討した。

(1) I 群での FEV

1

/FVC と Fres、R5

-

R20 の関係 を散布図により示した( Fig. 1

-

a 、 Fig. 1

-

b )。 FEV

1

/ FVC と Fres 、および FEV

1

/FVC と R5

-

R20 の r

2

値は それぞれ 0.193、0.118 で、弱い負の相関が認められ た。なお、 R5 および R20 に関しては、 FEV

1

/FVC との相関は、 r

2

値がそれぞれ 0.076 および 0.026 で あり、相関は見られなかった。

( 2 ) 気流制限の有無で層別化した R5

-

R20 およ び Fres の値を比較検討した結果を Fig. 2 に示す。な お、気流制限の有無の指標とする応答変数の閾値は FEV

1

/FVC が 70% 未 満 と し た。 気 流 制 限 あ り 群

(n=15)では、R5

-

R20 および Fres の値はそれぞれ 0.117 ± 0.021 、 21.1 ± 1.50 ( Mean ± SD ) で あ っ た。

気流制限なし群(n=39)では、それぞれ 0.082±0.013、

16.7 ± 0.92 ( Mean ± SD )であった。気流制限の有 無により、 R5

-

R20 では平均値で 0.034 の差、 Fres では 4.36 の差があったが、Mann

-

Whitney の U 検定

では有意ではなかった( R5

-

R20 : p=0.258 、 Fres : p=0.068)(Fig. 2)。

( 3 )  Fres ・ R5

-

R20 ・ X5 の三変数から、気流制限 の有無を予測する目的でロジスティック回帰を実施 した。Fres・R5

-

R20・X5 の各変数を説明変数とし、

気流制限の有無を応答変数に設定し、強制投入法を 用いて三変数を全て組み込んだロジスティック回帰 を実施したが、いずれの変数においても有意な結果 は確認されなかった。ステップワイズ法を用いた分 析結果では、X5 および R5

-

R20 が除外され、Fres の み が 有 意 な 偏 回 帰 係 数 と し て 検 出 さ れ た

( Table 4 )。

(4) FEV

1

/FVC を連続変数として応答変数に設 定し、 Fres ・ R5

-

R20 ・ X5 の三変数を説明変数とし て予測する線形重回帰を実施した。重回帰式は、

FEV

1

/FVC=89.4

-

2.23 × X5

-

0.90 × Fres+3.40 ×( R5

-

R20 )となった。三変数それぞれに対応する偏回帰 係数のうち、有意であったのは Fres のみ(p=0.04)

Fig.2‐a Fig.2‐b

Fig. 2 Comparison of Fres

(a)

and R5

-

R20

(b)

with and without airflow limitation.

    (a)

The distribution of Fres scores with airflow limitation(+)(n=15) and

(−)(n=39)

.

    (b)

The distribution of R5

-

R20 with airflow limitation

(+)(n=15)

and

(−)(n=39)

.

Table 4 Parameters of logistic regression.

     Parameters of logistic regression are shown in Fig. 3 among three parameters,

only coefficient of Fres was statistically significant.

point estimation standard error χ

2

p value

intercept 4.45 1.62 7.54 <0.01

X5

−0.841

6.323 0.02 >0.05

Fres.

−0.237

0.114 4.35 <0.05

R5

-

R20

−13.904

9.507 2.14 >0.05

Fres×(R5

-

R20)

−1.407

0.891 2.49 >0.05

b

a

(6)

であった( Fig. 3 )。

(5) Fig. 4 に、 FOT から得られた 3 つのパラメー タ( Fres 、 X5 、 R5

-

R20 )について、気流制限を応 答変数とした際の受信者操作特性( receiver operat- ing characteristic : ROC)曲線を示した。AUC(Area under the Curve 、 曲 線 下 面 積 ) は、 Fres が 0.662 、 X5 が 0.589、R5

-

R20 が 0.600 であった。例数に限

界があり、十分な精度があるとは言いがたいものの、

FOT のパラメータの中では気流制限の予測因子と しては Fres が最も有用であることが示唆された。

Fres スコアのカットオフ値[カットオフ値以上であ れば気流制限ありと判定]を設定し、その値と感度・

特異度の関係を Fig. 4 の表に示す。カットオフ値 17 で感度 66.7% ・特異度 61.5% 、 19 で感度 60.0% ・ 特異度 71.8% であった(Fig. 4)。

3.

IPAG

-

COPD

質問票と

Fres

の回帰曲線

IPAG

-

COPD 質問票から得られたスコアと Fres と の 関 係 に つ い て の 分 析 を 実 施 し た。 そ の 結 果 r

2

=0.034 となり相関が認められないことが確認され た。併せて Fres の IPAG スコアへの回帰分析を実施 したが、回帰係数は有意でなかった( Fig. 5 )。また、

I 群 54 例での SM による閉塞性換気障害の有無での IPAG スコアを比較したところ、閉塞性換気障害群 15 例の IPAG スコアは 24.3 ± 4.1 で、閉塞性換気障 害を認めない群 39 例のスコアは 21.6±3.8 であり、

Mann

-

Whitney の U 検定では p=0.049 で統計的には 有意差が認められた。一方、 IPAG スコア原法の基 準である 17 点をカットオフ値とすると I 群の 54 例 中 49 人( 90.7% )、 全 212 例 中 202 人( 95.3% ) が 候補者となり、基準を 20 点に設定した場合には I

point estimation standard error t value p value

intercept 89.585 5.641 15.88 <0.01

X5 -1.775 26.748 -0.07 >0.05

Fres. -0.912 0.440 -2.07 <0.05

R5-R20 4.894 32.890 0.15 >0.05

Fig. 3 Multiple regression analysis of FOT parameters using logistic regression model.

    Explanatory variables = Fres, R5-

R20 and X5 ; response variable = airflow limitation. Among three parameters, only Fres has statistically significant coefficient

(p<0.05)

.

Fig.4

cut-off point sensitivity 1

specificity specificity 16 66.7% 64.1% 35.9%

17 66.7% 38.5% 61.5%

18 60.0% 38.5% 61.5%

19 60.0% 28.2% 71.8%

Fig. 4 Receiver operating characteristic

(ROC)

curves of airflow limitation for Fres, X5, and R5

-

R20.

(7)

髙瀬 他

7

:

在宅医療現場に潜在する閉塞性換気障害患者の検出に関する検討

─ 221 ─ 2012

4

群の 54 例中 43 人(79.6%)、全 212 例中 182 人(84.9%)

が候補者となった。

考   察

わが国の在宅医療における診療形態は、様々な理 由により通院不能な患者に対し自宅または施設に定 期的に訪問し診療する形式である。今回、我々は在 宅医療受診者に対する閉塞性換気障害の検出を目的

に SM・FOT の有用性について検討を行った。その

結果、 MMSE の平均値はそれぞれの検査において 実施可能群が不可能群を有意に上まわり、さらに FOT 実施可能群は SM 実施可能群よりも MMSE が 低値であり、 FOT は SM と比較して認知機能が低 下した患者にも使用できる可能性が高いことが明ら かになった。 FEV

1

/FVC と FOT のパラメータの検 討から FOT のパラメータのうち、もっとも気流制 限と相関する可能性が高いのは Fres であると考え

られた。一方、 SM にて閉塞性換気障害を認めなかっ た群に比して、閉塞性換気障害を認めた群で IPAG

-

COPD 質問票のスコアが有意に高かったが、 17 点 以上の COPD 候補者が 95.3% になり、スクリーニ ング検査としては適切でないと考えられた。

我が国では、平成 17 年の高齢化率は、 21% で世 界一位であり、平均寿命( 0 歳児の平均余命)は女 性 85.6 歳と世界一位、男性 78.6 歳で世界 4 位(2004 年)であるが、両方合わせると世界一位である。ま た、高齢化のスピード(65 歳以上人口が全人口の 7% を超えると高齢化社会、 14% を超えると高齢社 会といい、高齢化のスピードとは 7% から 14% に なるまでにかかった年数をさす)は、1970 年から 1994 年までの 24 年間で、これも世界一の速さであ る。増え続ける高齢者の中に閉塞性換気障害をもつ 患者が潜在する可能性は高く、呼吸機能検査は重要 であると考えられる。近年、 FOT として臨床への 応用が可能となっているインパルス波を用いた呼吸 抵抗の測定法

6-10)

は、安静呼吸下で短時間のうちに 測定可能であり再現性がよいという特徴がある。患 者の協力が最小限に抑えられる点と、周波数解析に より呼吸抵抗の周波数依存性を明らかにして、気道 メカニクスの詳細を推定できるという点で SM と比 較して臨床的に優位性があることから、在宅医療現 場での有用性が期待される。

SM には小型の機器がすでにあり、在宅でも使用 可能であるが、 FOT の測定に使用する検査機器は 比較的大型であり、在宅医療現場での使用は困難で あった( Fig. 6

-

a )。本研究では、在宅医療現場で実 施できるように車載可能な形態に加工したものを使 用した(Fig. 6

-

b)。

Fig. 5 Correlation between Fres and IPAG.

Fig. 6

6

-

a Standard model of IOS

-

J

    6-

b The model of IOS

-

J newly designed for HMC use.

Fig.5

point

estimation standard error t value pvalue

intercept 11.779 4.627 2.55 <0.05

IPAG 0.274 0.204 1.35 >0.05

a b

(8)

患者の検査協力可能性を検討するために、各症例 について質問形式の認知機能検査の一つである MMSE を実施した

11)12)

。 Table 3 に示したように、

在宅医療現場においては、 SM 実施不可能群が多数 存在していることが確認された。また、SM 実施不 可能群においても、多くの症例で FOT の実施が可 能であることが確認された。ただし、 SM は実施可 能 で FOT が 実 施 不 可 能 だ っ た 症 例 が 3 例

( MMSE=16.5 ± 8.3 )存在した。これは、 FOT 機器 からの音と口腔内圧の変化を計測する検査であると いうことが理解できず不安を感じてしまい、安静換 気が保てなかった症例と考えられた。これも認知機 能の低下によるものと考えられ、このような症例の 存在にも留意する必要がある。なお、 MMSE につ いては年齢と性別の影響が知られており

15)

、本研究 においても年齢・性別の影響を検討したが、今回の 対象者においてはどちらも有意な影響は見られな かった。これは、今回の対象者が高齢者が主体で年 齢の偏りが大きいことが一因と思われた。

老人肺の特徴として、 Janssens ら

16)

は、老化に伴 い肺胞の拡大、呼吸表面の減少、末梢気道を支持し ている組織の減少、肺弾性コイルの減少、肺気量の 増大などを挙げている。上記の特徴により、健常者 でも老化に伴い FEV

1

の減少が認められるが、同時 に肺活量も低下する

17)

。一方、日本呼吸器学会によ る日本人の呼吸機能予測式は、18 歳から 95 歳まで の健常者を対象にして求められたものであり、これ によると老化とともに FEV

1

/FVC は低下するが、老 化だけでは FEV

1

/FVC は概ね 70% 前後までの低下 にとどまるようである。上記を考慮し、閉塞性換気 障害の指標としては、一般的な指標として日本呼吸 器学会の COPD のガイドライン

18)

でも採用されて いる FEV

1

/FVC<70% を採用した。本研究において、

在宅医療現場では予想以上に SM が実施不可能で あった症例が多く認められ、相対的に SM と FOT の両検査が実施可能であった患者数が限定された

(n=54 )。両検査を実施できた群において、 SM およ び FOT の各パラメータの相関関係および回帰分析 を検討したところ、Fig. 1 にみられるように FEV

1

/ FVC と Fres との間に r

2

=0.193 と弱いながらも相関 がみられた。さらに、 FEV

1

/FVC と FOT の各パラメー タに関するロジスティック回帰分析および ROC 曲 線の解析結果より、 FOT のパラメータの中では気 流制限の予測因子としては Fres が最も有用である

と考えられた。鈴木ら

19)

の術前呼吸機能検査症例 の検討においても、Fres と 1 秒量および 1 秒率との 有意な相関が示されており、上記結果と併せて、在 宅医療受診者においても適用できることが示唆され た。なお、老人肺では前述の特徴より肺のコンプラ イアンスが高くなっていると考えられる。今回の検 討では若年者との直接比較はできないが、Shiota ら

20)

の健常者を対象とした検討の結果では非喫煙 者(平均年齢 38.6±17.2)で X5=−0.11±0.04、喫 煙者(平均年齢 47.9±17.6)で X5=−0.10±0.03 で あり、今回の X5=−0.17±0.10 との比較では老人肺 では X5 が低下しているように思われる。これは、

老人肺の特性を示唆している可能性があると思われ るが、同一条件での比較検討ではないため、今後症 例をさらに蓄積し検討する必要があると思われた。

 本研究において、両検査を実施できた I 群 54 名 のうち、気流制限が認められたのは 15 名(27.8%)

であった。I 群の症例に対して気流制限の有無で 2 群を比較検討したところ、統計的には有意にはなら なかったが、FOT のパラメータである Fres が閉塞 性換気障害の検出のためのスクリーニングに有用で ある可能性が示唆された(p=0.068)。また、ROC 曲線より、Fres スコアと気流制限に対する感度・特 異度との関係性を求めると、カットオフ値を 17 に 設定した場合は感度 66.7%・特異度 61.5% で、19 に設定した場合は感度 60.0%・特異度 71.8% であっ た。最大感度はカットオフ値 17 に設定した場合の 66.7% であり、これを今回の FOT 実施群 173 名に 適用すると 72 名(47.4%)が閉塞性換気障害の候 補者と推測される。Fres のカットオフ値を 17 とし た場合、I 群のうち陽性と判断される症例が 25 例 あり、そのうち SM で気流制限が存在したのは 10 例 と 40% で、偽陽性は 15 例で偽陽性率が高くなる。

しかし、SM で閉塞性換気障害ありとされた 15 名 のうち Fres が 17 未満である症例は 5 例であり、偽

陰性率は 33.3% であった。FOT によるスクリーニ

ングでは、偽陰性率を下げることが重要であると思 われ、今回の検討ではこのカットオフ値が適切では ないかと考えられた。これまでの FEV

1

/FVC<70%

を閉塞性換気障害の指標としたプライマリ・ケア医 受診者での検討では、閉塞性換気障害が疑われる患 者が 16.3〜30% に認められたと報告

21-23)

されてお り、古賀ら

21)

の調査では 70 歳以上の対象者では

26.9% であったとしている。今回の検討では、SM

(9)

髙瀬 他

7

:

在宅医療現場に潜在する閉塞性換気障害患者の検出に関する検討

─ 223 ─ 2012

4

実施群 54 例中で気流制限が 15 例(27.8%)に認め られ、古賀らの報告に近いものであった。したがっ て、SM 実施不可能群にもこれと同程度の割合で閉 塞性換気障害をもつ患者が潜在していることが予想 される。一方、今回の検討結果に Fres のカットオ フ値として 17 を用いた場合、47.4% が閉塞性換気 障害を持っている候補者となり、在宅医療現場での スクリーニング検査として SM を補完することが期 待される。

プライマリ・ケア医で使用される IPAG

-

COPD 質 問票の感度を検討したところ、閉塞性換気障害群の IPAG スコアは閉塞性換気障害を認めない群より有 意に高かったが(p=0.049)、IPAG スコア原法の基 準 で あ る 17 点 を カ ッ ト オ フ 値 と す る と 全 体 の 95.3% が候補者となる。Kawayama らの日本人の検 討

24)

では 20 点で特異度が最大になったとの報告が あり、今回の検討で 20 点に設定すると 84.9% が候 補者となり、在宅医療現場に存在する高齢者の実態 が正確に反映されないことが予想され、スクリーニ ング検査としては適切ではないと考えられた。その 理由として IPAG

-

COPD 質問票の元データは比較的 若年層中心であり(対象 8 万症例の平均年齢は 53 歳、

65 歳以下が 90%)、年齢のスコアづけが重いことが

挙げられる。そのため、今回のような超高齢者集団

(平均 81 歳)の場合、年齢の影響が大きく反映され すぎることから IPAG

-

COPD 質問票の調査の適応は 困難であると考えられ、在宅医療現場に相応しい質 問票の開発が待たれる。

本研究において、在宅医療現場において潜在する 呼吸器疾患を評価するためには、 SM 等の従来法の みでは十分ではないことが示唆された。更なる精度 の向上のため、 FOT や質問票を用いた調査を組み 合わせて総合的な判断をする必要があると考えられ た。

結   論

  1 : SM を用いた評価では、今回の対象となった

在宅医療現場において閉塞性換気障害のある患者は 約 27% 程度存在し、プライマリ・ケア現場におけ る SM による検討報告とほぼ同程度であった。

 2 : FOT の各種パラメータと 1 秒率の検討におい て、 Fres と 1 秒率との間に相関が認められた。

  3 : Fres のロジスティック解析の結果、カットオ フ値を 17 とすると約 47% が閉塞性換気障害を持っ

ている候補者となり、 SM の実施困難な在宅医療受 診者へのスクリーニング検査としての有用性が期待 される。

  4 : 上記より、閉塞性換気障害の検出において、

FOT は SM を補完できる可能性が示唆された。

謝   辞

 本研究に使用した FOT に関して、東北大学環境・

安全推進センター、産業医学分野 黒澤一教授には、

貴重な御意見および御助言をいただき心より感謝申 し上げます。

文   献

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14) 有村保次、

山崎 新、白濱知広、松倉 茂、千

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健康診断にお ける

COPD

質問票の有用性の検討。日本呼吸器 学会雑誌

46

(9)

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-

699, 2008

15) 牧 徳彦,池田 学,鉾石和彦,根布昭彦,博

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日 本 語 版

Short

-

Memory Questionnaire

と日本語版

Mini

-

Mental State Exam-

ination

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の効果の検討─中山町における高齢者調査から

─。脳と神経

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7

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2008

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COPD

研究会肺機能 検査実施の動機が異なる

3

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COPD

の疫学調査─人間ドック、プライマ リ・ケア、術前評価での比較─。呼吸

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-

806, 2006

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based COPD

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-

426, 2008

(11)

髙瀬 他

7

:

在宅医療現場に潜在する閉塞性換気障害患者の検出に関する検討

─ 225 ─ 2012

4

Clinical evaluation of screening methods for detecting airflow obstruction in patients with home medical care

Yoshimasa TAKASE

1)

, Shuji OH-ISHI

1)

, Kenji NEMOTO

1)

, Hiroyuki NAKAMURA

1)

Masahiko ICHIKI

2)

, Shigemasa KATAYAMA

3)

, Hiroo HANABUSA

4)

, Ataru IGARASHI

5)

1)

Tokyo Medical University, Ibaraki Medical Center, Internal Medicine, The Fifth

2)

Tokyo Medical University, Ibaraki Medical Center, Mental Health Medicine

3)

Tokyo Medical University, Dept. of Psychiatry

4)

Shinjuku Hiro Clinic

5)

Dept. of Drug Policy and Management, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, The University of Tokyo

Summary

  Many of patients with home medical care (HMC-

patients) are elderly people, and some of them have a smoking history, often developing tobacco

-

associated diseases like chronic obstructive pulmonary disease

(COPD)

. Therefore, the evaluation of respiratory function seems to be important for them. Spirometry

(SM)

is a conventional way to examine respiratory function. However, HMC

-

patients often fail to carry out SM, because it requires their maximum efforts. In the current study, we studied whether forced oscillation technique

(FOT)

, which can be easily done in HMC

-

patients, is useful to evaluate airflow limitation.

  212 HMC-

patients were enrolled in the current study. Their cognitive function was assessed with the Mini

-

Mental State Examination

(MMSE)

, and their respiratory function was evaluated with SM and FOT. Patients who had good SM scores had higher MMSE scores than patients with poor SM results, and patients with good FOT scores had higher MMSE scores than patients who had poor FOT. Patients who did well on both SM and FOT well had the highest MMSE scores. Compared to SM, FOT was feasible even in patients with lower MMSE scores. The analysis of the relationship among parameters from SM and FOT suggested that resonant frequency

(Fres)

could be a useful index related to airflow limitation. As mentioned above, FOT was suggested to be an effective way to detect airflow limitations in HME

-

patients, and it is be expected to be a comple- mentary

(or substitute)

method for SM in the field of home medical care.

〈Key words〉

: Home Care Medicine, Chronic Obstructive Pulmonary Disease

(COPD)

, Spirometry

(SM)

, Forced Oscillation

Technique

(FOT)

Table 1 Patients Characteristics
Table 2 Prevalence of physical and mental Illnesses in patients
Fig. 1 Single linear regression plot of Fres  (a)  and R5 - R20  (b)  to FEV 1 /FVC. (a)   Correlation between FEV 1 /FVC and Fres
Fig. 2 Comparison of Fres  (a)  and R5 - R20  (b)  with and without airflow limitation.
+3

参照

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