持久 的 トレーニ ングラ ッ トの 急性寒冷暴露 時代謝特性
樫 村 修 生
Charaeteristics of Metabolisms to Acute ColdExposure in Physical Trained Rats
OSAMU KASHIMURA
Abstract: Thisstudysuggestedtheeffectsofphysicalendurancetrain‑
1ng On themetabolismsto acutecold exposurein rats.Decreaseof glucoseconcentration afteraclltecold exposure in trained rats was smallerthanthatincontrolrats.Incrementofthemetabolic responses afternoradrenalineadministration in trained ratswassmaller than thatincontrolrats.Itappearedthatthethermogenicfactors,suchas theglucosemetabolism,otherthan noradrenaline‑dependentnonshiver‑ 1ng thermogenesismay contribute to the enhanced thermogenesis to coldintrainedrats.
緒 言
ラットの場合,寒冷馴化は慢性的寒冷暴露 により約
4週間で成立 し,寒冷時 の
Noradrenaline(NA)感受性の増大が生 じるとともに
,Adrenaline(A), 副腎皮質
hormoneおよび 甲状線
hormone等は寒冷馴化 にともない増大か
ら減少へと移行 し
,馴化前の レベルへともどる。1 )
すでに,比較的長期間つまり
2‑4か月程度の持久的 トレーニングにおいて,
153ラットの耐寒性は改善 され,正の
Cross‑Adaptationが成立することは報告 されている
。2)また,この
Cross‑Adaptationは, トレーニ ング
皇40km以上 ランニングスピー ド
30m/minを兼ね設えている条件
3)に満たない場合,とく に トレーニング初期において,寒冷暴露に対する生体反応の報告は皆無である。
そこで,比較的 トレーニ ング初期にある急性寒冷暴露時の耐寒性機序について 検討する。
実態方法
ラッ トは
,Wistar系雄 ラット
5過令
30匹を
3条件に分け飼育 した。 各条件 は次に示すとおりである。
1.温暖馴化対照群
(W群) :気温
25℃で安静飼育 した。
2.
寒冷馴化群
(C群) :気温
5℃で飼育 した。
3.
温暖馴化 トレーニング群
(T群) :気温
25℃で飼育 し,持久的 トレーニン グを実施させた。 トレーニ ングは,小動物用 トレッドミルを用い,走行ス ピー ド
30m/minで
1日
1時間,週
5回実施 した。総走行距離 は,約
20 kmであった。餌 ( オ リエンタル
,MF)および水 は自由摂取 とした。各 条件下で ラッ トは
,3週間飼育 した後
,18‑24時間の絶食および
25℃暴露
し,次の実験に供 した。
Ⅰ,急性寒冷暴露 時 の熱産 生 お よび体温測定
ラットは,気温
0℃に
3時間急性暴露 し,酸素摂取量 ( VO2 ) および結腸温
(Tcol )を測定 した。また,この測定に先立ち,気温
25℃において同様 に V
O 2および
Tcolを測定 し,急性寒冷暴露時の変化量を算出 した。
Ⅱ,生化学的分析
Ⅰの実験後,気温
0℃に
3時間急性暴露後,エーテル麻酔 によ り脱血 し,血
中
Glucose(Glu. ),血清遊離脂肪酸
(FFA)および血菜 カテコールア ミン
(cA)
を測定 した。血中
Glu.は,発色法,血清
FFAは
Itaya変法 4) および血
祭CAは,高速液体 クロマ トグラフィ
,ECD法 によ り測定 した
。5)なお
,CA測定のための前処理法 は,活性アル ミナ吸着法 を用 いた。6)また, 排腹筋,肝臓および褐色脂肪組織 ( BAT) の
Glycogen含有量
(Gly.) は,
Anthoron法 7) により定量 した。
Ⅲ, 組 織 重量
ラット解剖後 ,BAT および心臓重量を測定 した。
結果および考察
飼育終了時の体重 は
、W群
190.9±13.9g,C群
184.5±6.7g,および
T群
178.0±16.8gであり,各群間に有意差がなか った。寒冷馴化および トレーニ ン グのそれぞれ完成期には
、W群に比較 して体重 の減少が報告 されてお り
,2・3)(B o o t/ B u
)IL16 !a ^
IJOaH
0050/叫/叫300
又 + ̲sD
Cont .Co 一 d Tr o.
図
1 各群における単位休重あたりの心重量
**p<0.01
Cont
∴対照群
,Cold:寒冷馴化群
Tra.:持久的 トレーニング群
本研究の結果か ら,休重 の 面か らみた寒冷暴露および 運動負荷の効果はみ られず, それぞれへの適応途中であ ることがうかがわれる。
図 1 は,各群 にお ける単 位体重 あた りの心重量を示 し
た。 この心重量 は
,W群 に比較 し
,C群および
T群 でそれぞれ危険率
1および
5%で有意差が認められた。
すでに,単位体重あた りの
心重量の増加 は,寒冷馴化
や トレーニ ングによって明 らかにされてお り
2・3)体重に比べ,比較 的適応 の初
(ubJ+d∈a‑
U !
uo一OU 「Ii(U!uJ/晋\一∈︼.d∈n
suo3
Ua 6^ ×
o 8733 0086 00/J2 =●S。♂T+‑lX /
Control Cold Tmined
図2
気温
25℃および
0℃における急性寒冷暴露時の
VO2およ
び Tcol変化**p<0.01
期段階でそれぞれの効果があらわれた。
図
2は,気温
25℃および 0 ℃急性暴露時の
VO2および
Tcolを示 したo そ れぞれ
VO2および
Tcolは,急性寒冷暴露 により有意な増大を示 した。 また, 0 ℃時の
V02は
,W群 より
C群が有意 に大 きか った。寒冷暴露時の熱産生 は, 全身耐寒性の基礎 となる指標であり
8), その元進が大 きいほど増 強を示す もの である 。C 群におけるその熱産生は ,W 群のそれよ り有意に大 き く,すで に全 身耐寒性の増強が獲得 されているのに対 し
,T群ではその増強が
C群 に比べ小
156
0001
\b
山 )
VjjO E S 〇
一d(JP/ B uJ
)a s o u
nIBpoo1皿図3
00006/〜 0086 00/‑2
ControL Cold Troined
急性寒冷暴露前後 の血中Glucoseおよび血清FFA濃度
**p<0.01:暴露前後 の有意差
さか った。つ まり, トレーニ ングによる全身耐寒性増強の獲得には,さ らに ト レーニングを積むことが必要 と考え る. この ことは,VO,と同時 に測定 した
Tcolの変化か らも言える。
図
3は,各群における急性寒冷暴露前後の血中
Glucose(Glu.)および血清 FFA ( FFA) 濃度を示 した。Gl u. は,寒冷暴露後 ,W 群 に比較 し C お よび
・T
群で有意 に高 く,これは
,Kur。sbimaetal .の報告
9)によれば,
Glu.の利 用の促進を示す ものであ り,肝で の
Gluconeogenesisの冗進 によ り生ず ると し た 。FFA は,寒冷暴露時にはぼ低下量が各群 とも同程度であり,脂肪敢利用
157
(6/6u)ua60
0
ゝ一6La
^コ( 6
/B ∈ ︼
ua6o u
J(一61V皿/‑ 2 0 il rHr.H Ll
80 0 0 5 1
Cont r oI Col d Tmi ned
図4 急性寒冷暴露前後の肝および褐色脂肪組紋Glycogen含有 量
**p<
0
.01 ,*p<0
.05:暴露前後の有意差にはほぼ差異がないと思 われる。つまり,寒冷馴化 により一般に脂肪酸 の利用 は促進 されるはずであるが,本研究においては馴化完成前の状態 にあ り,熱産 生冗進 は糖利用の促進 によって補われてお り,これまでの報告 と一致 した
。9)図
4,5は,急性寒冷暴露前後 の肝,筋 および
BAT中
Glycogen含有量 を 示 した。肝中
Gly.は
,C群において寒冷時に増大 を示 し
,Gluconegenesisの増 大
9)が示 された。 また,筋中
Gly.は
,W群で寒冷時に有意 に減少 が示 され
,W群での筋 における
Gly.利用 と同時に,筋 における
Gluconegenesisの低下が推
158
(6
/ Bu J︼ u a B o u
ゝ一6a p s n ∑
86/120×±SD
Cont r oI Col d Tr oi ned
図5
急性寒冷暴露前後の誹腹筋
Glycogen含有量
**p<0.01
:暴露前後の有意
差測された。 また
,Cおよび T 群 において も,筋中
Gly.は,利用 されて い ること か ら,血中か ら筋への
Gly.の補充が促進 されているのであろう。 さらに BAT 内
Gly.は
,C群で有意 に増加 しているのに対 し
,T群では有意 に減少 している。
っま り,すでに
Depocasetal .により報告
10)されているよ うに,寒冷馴化 に より寒冷暴露時の BAT 中
Gly.利用 は,促進 し, さ らに BAT 中
Gly.代謝回転 も促進す るとした。つまり , C群において寒冷暴露時 BAT 中
Gly.は減少 しな いのは,その代謝回転の促進が寄与 す ると思 われ る。 また ,T 群 の BAT 中
Gly.は,寒冷暴露により低下を示 し,
Gl
y.利用がW群 よりは顕著 に増大 して い
るであろう。
図 6 は,急性寒冷暴露前後の血 祭NA および A 濃度を示 した。寒冷暴露時 の NAば,W 群および C 群で有意 に増大を示 したが ,T 群では差がなか った。 ま た,寒冷暴露時の
Aは
,Wおよび
T群で有意に高 く
,C群で は有意 な上昇 はな かった 。CA 分泌か らみて,寒冷暴露時の代謝特性 は , C群で NA による脂肪 酸の利用促進 ,T 群で A による糖質を中心 とす る利用促進,および W 群 で は脂 肪酸および糖質両方 の利用が考え られる。 しか し,すでに報告
11) されて いるよ うに
,W群のように分泌 は増大 しているが,その感受性 は元進 しない とい うこ
159
∈\Bu
) a
uニDUaJPDJON
∈\6U)auニOUaJPV 00.06/‑つム 0008.6 00/‑2ControLTrQined Cold
図6 急性寒冷暴露前後の血焚NAおよびA濃度
**p<0.01:暴露前後の有意差
ともあり
,T群における
CAの感受性 も検討することにより
,NSTの促進の 有無が問題にされるべきであろう。
図 7 は,単位体重あたり BAT 重量を示 した 。BAT は ,C 群が有意に他群 より増大 した。急性寒冷暴露時の熱産生冗進に BAT 重量 は関係があり
,C群 における BAT の増大は,耐寒性の改善の一指槙 とされている
.12)しか し ,T 群の BAT は ,W 群のそれより減少傾向にあり ,BAT 重量その ものを耐寒性
の指標にすることはできないが ,BAT 中
Gly.は他群より高 く,その利用 も促 進 していることか ら,無関係とは言いがたい。
160
(B o o L/ 6 2
LJ6!aJVt
トV皿0 0 0 0 3 2
Cont .Col d Tr o.
図7
単位体重あたりの褐色脂肪組総重量
**P<0.01
T
群 における急性寒冷暴露時 の熱産生冗進,つ まり全身耐寒性 の増 強 は, 糖質 の利用促進 によ り生 じ, これまでの報告 と考 え合 わせ る と, 骨 格 筋 で の
Shiveringの冗進っまり
,ATPの分解 の際,糖の酸化 を生 じ,筋 で は
Glu.の 酸化物である乳酸が肝に送 られ,グルコースに再生 され,筋での
ATP分解 は 増強 され熱発生 は大 となる
13)ことが推測された。
結 論
短期間の持久的 トレーニ ングによるラットの急性寒冷暴露時の代謝特性を検 討す るため,主 に血中および組織における糖質代謝 を測定 した。
1
.T群 における血中
Glu.の利用 は寒冷暴露時に促進 した。
2.T
群 における肝中
Gly.は増大せず
,Gluconeogenesisの促進 はなか った。
3.T
群 における
BAT中
Gly.は減少を示 し,利用促進が明 らか にな った。
4.
以上のことか ら
,T群 における急性寒冷暴露時の熱産生冗進 つま り全身
耐寒性の改善は,すでに短期間の持久的 トレーニングにより増強される傾向に
あり,その増強 は糖質利用つまり慢性寒冷暴露初期の代謝特性 と頬似す る反応
である。
文 献
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