立正大学古書資料館蔵
奈良絵本『大織冠』中巻
―影印と翻刻―
伊藤 善隆
【目次】
冊子本『太しよくはん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
立正大学古書資料館蔵『大織冠』冊子本(中巻)翻刻
・ 注
・ 校異
立正大学古書資料館蔵
奈良絵本『大織冠』中巻
―影印と翻刻―
冊子本『太しよくはん』中巻影印
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(中巻表紙)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(中巻表紙見返し)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(遊紙オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(遊紙ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(三オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(三ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(四オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(四ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(五オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(五ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(六オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(六ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(七オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(七ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(八オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(八ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(九オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(九ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一〇オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一〇ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一一オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一一ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一二オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一二ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一三オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一三ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一四オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一四ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一五オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一五ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一六オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一六ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一七オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一七ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一八オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一八ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一九オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(一九ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二〇オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二〇ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二一オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二一ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二二オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二二ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二三オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二三ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二四オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二四ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二五オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二五ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二六オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二六ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二七オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二七ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二八オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二八ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二九オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(二九ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(三〇オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(三〇ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(三一オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(三一ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(三二オ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(三二ウ)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(中巻裏表紙見返し)
冊子本『太しよくはん』中巻影印
(中巻裏表紙)
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
巻子本『太しよくわん』中巻影印
立正大学古書資料館蔵『大織冠』 冊子本 (中巻) 翻刻
・ 注
・ 校異
『大織冠』冊子本(中巻)翻刻・注・校異
立正大学古書資料館蔵『大織冠』冊子本(中巻)翻刻
・ 注
・ 校異
※冊子本と巻子本の書誌と、翻刻
・ 注
・ 校異の凡例は、
本書上巻に掲載。
〈冊子本翻刻〉太しよくはん 中 」(題簽)ま 万戸んこ、これをみ 見て、か 敵なふへきやうあらされは、ふ 船底なそこにつつと入て、し 装束やうそくをそき 着たりける。ま 万ん子 戸かその日のし 装束やうそくには、し 神んつ 通
うゆ 遊戯けのう 腕金てかね、さはんやかんのす 脛当ねあてし、め 妙法蓮華うほうれんけのつ 綱貫なぬきは 履き、に 忍辱慈悲んにくじひのよ 鎧ろいを草す 摺長りなかにき 着く 下たして、あ 阿耨多羅のくたらさ 三藐んみやく三ほ 菩提たいの五ま 枚いか 甲ふとをゐ 猪首くひにき 着、し 忍のひのお 緒をそし 締め 」(一オ)たりける。か 降魔利剣うまりけんの大か 刀たなを ま 真十も 文字んじにさ 差すまゝに、大たうれんといふつ 剣るき、あ 足緒長しをなかにむ 結すんてさ 提け、けんみやうれんといふほ 鉾
こも 持つて、ふ 船ねのへ 舳板いたにつつた 立ちあ 上
かる。百よ 余人のつ 兵はものとも、お 思もひお 思
もひにい 出てた 立ちて、は 端舟しふねお 降ろしお 押しう 浮かへ、すてにか 駆けんとしたりけり。た 唐うのい 戦くさのな 習らひにて、み 乱たんにか 駆くる事はなし。て 調子うしをと 取つてか 楽」(一ウ)くをう 打つて、ひ 拍子ようしにあ 合はせか 駆けひ 引き、せ 勢いそ 揃ろへのた 太鼓いこは、ら 乱んし 序
よ〳〵しよつててうし、か 駆けよとう 打つた 太鼓いこは、さそう〳〵とうつ也。ひ 引けよとう 打つた 太鼓いこは、おんてうこつとう 打
つなり。く 組んてく 首ひをと 取れとは、つるてうこつとう 打つなり。か 叶なはぬと 時きのせ 詮んには、し 四方はうて 鉄炮つはうは 放なし、み 乱たれひ 拍子ようし、きりひ 拍子やうし、き 急うにを 及よふと 時きには、ち 血をはた 滝きとな 流かして 」(二オ)
『大織冠』冊子本(中巻)翻刻・注・校異 か 首うへをつるにつ 詰めよとう 打つ。し 修羅ゆらた 唐うし 人んのた 戦ゝかひは、む 昔かしもい 今まもた 例めしなし。そのう 上へ、し 修羅ゆらかた 戦ゝかいにく 火焔はえんのあ 雨めをふ 降らし、あ 悪風くふうをふ 吹きと 飛はせ、は 磐石んしやくをふ 降らする事は、雪の花のち 散ることく、つ 剣るきをと 飛
はせ、ほ 鉾こをな 投け、と 毒くの矢をは 放なす事は、ま 真砂なこをま 撒くかことし。身をか 隠くさんとお 思もふと 時き、け 芥子しのな 中かへわ 分けてい 入り、あ 現らはれんとお 思もふと 時き、 」(二ウ)し 須弥ゆみにもた 丈けをく 比らふへし。かゝるし 神通んつうめ 名誉いよをま 目のま 前へにけ 現んし、こゝをせ 先途んとゝた 戦ゝかへは、すてにはやた 唐人うしん、心はた 猛けくい 勇さめとも、此い 勢きほいにお 押されて、の 逃かれかたくそ見えにける。さるあ 間いた、ま 万
んこ 戸はみ 味方かたのく 軍兵んひやうともをち 近かつ 付けて、とてもか 叶なはぬものならは、し 修羅ゆらか大し 将やう四五人、そ 底このみ 水屑くつ となしてこそ、い 異国こくの聞へもし 然かる」(三オ)へけれ。わ 我れとお 思もはん人々はと 供もをしてた 給へやとて、こ 金剛界んかうかいのま 曼荼羅んたら、た 胎蔵界いさうかいのま 曼荼羅んたら、り 両界やうかいのし 諸尊よそん一千二百よ 余そ 尊んのま 曼荼羅んたらを、ほ 母衣ろにか 掛けてふ 吹きそ 反らし、ふ 船底なそこよりも、め 名馬いはとも、そのか 数すあまたひ 引きい 出たす。ま 万戸んこかひ 秘蔵さうのめ 名馬いはに、じ 神
んつ 通うあ 葦毛しげとな 名つ 付けて、七き 寸八ふ 分んあ 明け六さ 歳い、お 尾髪かみあくまてあ 厚つうして、お 追様つさまむ 向かふよ 横端こはたは 張り、 」(三ウ)お 尾口くち、そ 承鐙うとう、つ 爪根まねのくさり、し 肉ゝあ 合
ひ、ほ 骨並ねなみ、よ 夜目めのふ 節し、あふ、つ 作くりつ 付
けたることくなり。ら 螺鈿んてんのく 鞍らをを 置き、し 蜀江よつかうのに 錦しきのう 上敷はしき、こ 金ん〳 銀〵ぬ 塗つたる 瑠璃りのあ 鐙ふみ、りきしゆのち 力革からかはをは、し 猩やう〳〵のち 血にて そ 染めたりけり。
お 同なしきおもか 繫い
『大織冠』冊子本(中巻)翻刻・注・校異 をか 掛けさせ こ 金かねの 」(四オ)
く 轡つわ かんじと か 噛ませ、
に 錦しきの た 手綱つな ゑ 縒つてか 掛け、
ま 万戸んこゆらりと うちの 乗つて な 波みにし 沈つまぬ う 浮沓くくつを、四つの 」(四ウ)
あ 足しにか 掛けたれは、
な 波みのう 上へを は 走しる事 は、へ 平路いろを つ 伝たふ
ことくなり。 」(五オ) (第六図 騎馬で切り込む運宗たち)
」(六オ)三百よ 余に 人んのつ 兵わものとも、いつれもむ 馬まにの 乗つたれとも、み 皆な〳 々〵う 浮くく 沓つか 掛けたれは、く 雲居もゐにか 雁りのと 飛ふやうに、一む 群らかりにさつとち 散らし、し 修羅ゆらかち 陣んへき 切つてい 入る。し 修羅ゆらともこ 是れをみ 見て、一ひ 疋き二ひ 疋きのみならす、三百ひ 疋きのむ 馬まともか、いつれもな 波みをは 走しる事はふ 不思議しきなりと、き 肝もをけ 消し、かほとにい 勇さむし 修羅ゆらともも、に 逃けま 眼なこにそなりたりける。 」(六ウ)た 大将いしやうのう 大人しあ 阿修羅しゆら、す 進ゝみ出てい 言ひけるは、なふこ 爰ゝさ 候うそ。かねてより申せし事のち 違かはぬなふ。め 目た 垂れか 顔ほのすくやかし、お 面もてか 顔ほくせめ 目にす 角みた 立て、い 要らんあ 争らそひ、あ 諍らかふぎ 儀
には、に 似ましき事にて候そや。手をく 砕
たかては、いかにとして、か 高名うみやうふ 不覚か
『大織冠』冊子本(中巻)翻刻・注・校異 くみ 見えはこそ、一か 合戦つせんせん、とて出た 立つたりしあ 有様りさまは、あ 悪業くこうし 瞋むい 恚のよ 鎧ろいをき 着、む 無み 明堅固やうけんこのか 甲ふ」(七オ)とのお 緒をし 締め、と 闘諍無慚うじやうむさんのほついて、し 瞋恚愚痴んいくちのは 旗たさ 差ゝせ、百せ 千
んに 若干やつかんのけ 眷属んそくともをあ 相ひし 従たかへ、しきりにと 鬨きをつ 作くれは、へ 碧
きて 天んや 破ふれは 波上しやうにお 落ち、か 海いて 底いをう 動こかしな 波みをあ 上け、こ 虚空くうさなからと 動揺うようして、月のひ 光かりもう 埋つもれて、ひ 偏とへにち 長夜やうやとなりたりけり。このほとを 音とにう 承けたまはるま 万戸んこし 将軍やうくんう 運宗んそうに、け 見ん 」(七ウ)さ 参んをせん、とい 言ふまゝに、ま 万戸ん子をはな 中かにと 取りこ 籠めたり。ま 万戸んこかつ 兵わものとも、こゝをせ 先途んとゝき 切つたりけり。ら 羅睺阿修羅こあしゆら三百人、からこんらあしゆら五百人、手をく 砕たいてそき 切つたりける。ま 万戸んこはめ 名誉いよのむ 馬まの 乗り、 う 海みのう 上へにての 乗るた 手綱つな、さ 滄海浮うかいふとりうかいふ、の 乗りう 浮かめたる馬のあ 足し。ゆ 弓
んて 手のも 者のをつ 突くと 時き、あ 横行ふきやうのた 手綱つなきつとひ 引く、め 馬手てのも 者のを 」(八オ)つ 突くと 時きに、ふきやうのむ 鞭ちをちやうとう 打つ。に 逃くるも 者のをお 追ふと 時きには、せ 善んき 巧やうあ 障泥をりのあ 鐙ふみのむ 鞭ちを、き 曲よくし 進退んたいにの 乗つたりけり。に 西しからひ 東かしへう 打つてと 通をると 時きには、三百よ 余人かあ 後とにつ 付きて、こゝをせ 先途んとゝき 切つたりけり。い 入れか 替へ〳〵た 戦ゝかへは、し 修羅ゆらかい 戦くさはこたれかゝつて、か 叶なふつへしとも見えさりけり。そ 総う大将のま 摩醯けいし 首羅ゆら、八め 面んは 八臂つひをふ 振りた 立てゝ、八つ 」(八ウ)し 舌たのほ 鉾こをうちふ 振り、う 討死ちしにこゝ也と、 喚おめきさ 叫けんてか 駆けにけり。ま 万んこ 戸、是をみ 見て、か 叶なふへきやうあらされは、う 潮しほをむ 結すひて 手水うづとして、し 諸天よてんにふ 深かくき 祈誓せいする。しかるへく
『大織冠』冊子本(中巻)翻刻・注・校異 は、く 観世音はんせをん、ひ 悲願くはんた 違かへた 給まふな。ふ 怖畏軍陣中ひくんしんちう、ね 念彼観音力ひくはんをんりき、し 衆
お 怨悉退散んしつたいさん。ち 誓かいい 今まならては、し 修羅ゆらかお 恐そるゝけ 華鬘まんのは 幡たを、たゝさ 差しか 掛けよ。いや、さ 差しか 掛けよと、け 下知ちす」(九オ)れは、け 華鬘まんら 鸞鳳んはう玉のは 幡たをま 真
つさ 先きにさ 差ゝせ、わ 我れを 劣とらしとせ 攻
めかゝる。ま 万戸んこかつ 兵はものか 勝つにの 乗りて、を 追つふ 伏せ〳〵き 切つたりけり。し 神んり 力
きもつ 尽きは 果て、つ 通力うりきひ 飛行きやうもか 叶
なはすし、そ 底このみ 水屑くつとなりにけり。い 生きの 残こるし 修羅ゆらとも、す 住家みか〳〵にか 隠くれたり。ま 万戸んこか 勝鬨ちときつ 作くりかけ、もとのふ 船ねにとりの 乗り、し 修羅ゆらた 唐人うしんのた 戦ゝかひに、か 勝ちぬや〳〵と、い 勇さみをなし、」(九ウ)た 唐土うと、か 高麗うらいは 走しりす 過き、日ほ 本んち 近
かふそなりにける。さるあ 間いた、り 竜王うわうたち、これをは、さていかゝはせんと、せ 僉
んき 議せられけり。その中にとつても、 な 難陀竜王んたりうわうの 宣たまはく、それに 人んけ 間んのち 智恵ゑをた 謀はからんには、み 見目めよきを 女んなによもしかし。こゝをもつてあ 案
んするに、り 竜女うによをもつて、このた 玉まをた 謀はかつてと 取るへきなり。り 竜宮うくうのを 乙と姫に、こひさいに 女よと申て、 」(一〇オ)な 並らひなきひ 美人じんたりしを、み 見目めいつくしくか 飾さりた 立て、う 空舟つほふねにつ 作くりこ 籠め、な 波みのう 上へにを 押しあ 上くる。これをはし 知らて、ま 万戸んこ、し 順風ゆんふうにほ 帆をあ 上けて、こ 心ゝろにま 任かせてふ 吹かせゆ 行くに、か 海いま 漫
ん〳〵としては、又は 波上しやうちゝむたり。へ 碧天きてんのお 沖きぬく風、く 浩はう〳〵としては、又いつれのほ 木草くさうにかこ 声ゑや 宿とさん。か 頭しらなし、お 大河原ほかはら、きとのし 島ま、も 諸見ろみのし 島ま、もめい島、さ 薩摩つまのく 国にゝ 」(一〇ウ)き 鬼界かいかし 島ま、ゆ 壱岐きのもとなり、つ 対馬しまのな 内院い、こ 事故とゆへなくは 走しりす 過き、九国の地をはゆ 弓ん手にみ 見て、さ 讃岐ぬきのく 国に
『大織冠』冊子本(中巻)翻刻・注・校異 に聞へたる、ふ 房崎さゝきのお 沖きをと 通をりけり。な 流かれ木一ほ 本んう 浮かんてあり。す 水いし 手ゆ、か 楫取ちとり、これをみ 見て、此ほ 程とのた 大いふ 風うに、て 天竺んちくた 唐土うとのち 沈香んかうはし、ふ 吹かれてな 流かるゝやらんと、人々あ 怪やしめたりけれは、ま 万戸ん子、此よ 由しき 聞くよりも、な 何んのあ 怪やしめ事そ。たゝと 取りあ 上」(一一オ)けよと、け 下知ちをなす。御で 諚うにし 従たかい、は 端しふ 舟ねお 降ろしと 取りみ 見るに、ち 沈香んかうにてはなし。あ 怪やしや。わ 割つてみ 見よとて、此木をわ 割つてみ 見るに、な 何にとこ 言葉とはにの 述へか 難たきひ 美人しん一人おはします。す 水いし 手ゆ、か 楫取んとり、これをみ 見て、を 斧の、ま 鉞さかり
をな 投け
す 捨てゝ あつとはかり
申ける。 」(一一ウ) (第七図 こひさい女の出現)
」(一二オ)ま 万戸んこ、此よ 由しみ 見るよりも、い 如何様かさまにも御身はて 天魔んまは 波旬しゆんのけ 化現けんにて、し 障碍やうけをなさんそのためな。あ 怪やしや、いかにと、い 言ひけれと、な 何にとも 物のをはい 言はすして、た 只ゝな 涙みたくみたるはかりなり。ま 万戸んこ、か 重さねてい 言ひけるは、いや、な 何にとたるませた 給まふとも、せ 是非ひにつ 付けてお 覚束ほつかなし。た 只ゝか 海底いていにし 沈つめ、み 水屑くつになせと、い 勇さみをなせは、あ 荒らけなきつ 兵わもの、御手にす 縋かりて、 」(一二ウ)う 海みへい 入れんとす。り 竜う女はいとゝあこかれて、あら、う 恨らめしの人のこ 言葉とはや。野にふ 伏し、山を家とする、こ 虎狼らうや 野干かんのた 類くいたにも、な 情さけはあ 有りとこそき 聞け。み 自つからと申は、け 契丹国いたんこくの大わ 王うの、いつきの姫にてさ 候ふらふなるか、あるき 后さきのさ 讒んにより、う 空舟つほふねにつ 作くりこ 籠め、
『大織冠』冊子本(中巻)翻刻・注・校異 さ 滄波万里うはまんりへな 流かさるゝ。たま〳〵き 奇
と 特くふ 不思議しきにし 人倫んりんにあ 会いたれは、さりともとこそお 思もひしに、な 何にのつ 罪」(一三オ)みに、う 憂きか 海底いていにし 沈つむへきそ。う 恨らめしさよと、かきく 口説とく。み 乱たれか 髪みをつ 伝たいて、な 涙みたの露のこほるゝは、つ 貫らぬくた 玉まのことくなり。し 霜もをお 置ひたるを 女みな 郎花へし、し 下た葉し 萎ほるゝふ 風情せいし、せ 西いし 施かやさうにす 捨てられて、ひ 引敷物しきものにはそ 袖てしぬ 濡れ、ほ 干す日もなしと、わ 侘ひけるも、い 今まこそお 思もひし 知られたり。か 桂つらをかきしま 黛ゆすみ、は 蓮ちすをふ 含くむく 口ちひる、も 百ゝのこ 媚ひますあ 愛敬いきやう、 」(一三ウ)な 波みとな 涙みたにう 打ちぬ 濡れ、ものお 思もふ人のふ 風情せいかや。うちむつけたる御あ 有りさ 様ま、よ 余所そのみ 見るめ 目もいたはしや。さしもか 賢しこきま 万戸んことは申せとも、やかてたるまかされ、けに〳〵それはさそあるらん。それ〳〵と 同船うせん申せとて、お 同なしふ 船ねに の 乗する。り 竜宮うくうのわ 業さなれは、む 向かふさ 様まに風ふ 吹きて、ふ 房さ崎のお 沖きに十日はかりと 逗留うりうす。さなきたに、り 旅泊よはくはこ 殊とに物う 憂きに、ま 万戸んこあまりに 」(一四オ)た 堪へかねて、風のた 便よりにか 通よひき 来て、い 寝
ねか 仮初りそめのうたゝね 寝は、な 何にとな 鳴子るこのを 音とた 高かく、世にもす 雀ゝめのす 住みう 憂きに、お 驚とろかさんかいたはしさに、あ 扇ふきのか 風せをいさめつゝ、月て 重うさ 山んにか 隠くれぬれは、あ 扇ふきをあ 挙けてこれをたとへ、か 風せた 太虚いきよにや 止みぬれは、木をう 動こかしてこれをお 教しゆ。あひみ 見る人をこ 恋ふるには、ふ 文みか 通よはねとこ 恋ふるな 習らひ、き 君
みかこ 心ゝろをと 取りにく 来る。なふ、いかに〳〵」(一四ウ)と、お 驚とろかす。り 竜う女はもとよりね 寝もい 入らす。さりなから、うたゝね 寝い 入りたるふ 風情せいにて、た 誰そや、夢みるお 折りからに、う 現つゝともなきこ 言との葉は、ゆ 夢めのう 憂き世のあ 仇たなれは、人のこ 言葉とはもた 頼のまれす。よ 夜
『大織冠』冊子本(中巻)翻刻・注・校異 のま 間にか 変はるあ 飛鳥河すかゝは、み 水粒つほのあ 泡はのか 仮初りそめに、風にき 消えぬるこ 言とのは 葉の、す 末ゑもと 通をらぬ物ゆへに、あ 徒名たなた 立ちてはな 何にかせん。なか〳〵人には、は 始しめよりと 問はれぬは、う 恨らみあらはこ」(一五オ)そ。そのう 上へ、わ 我れは生れてより此かた、か 戒文いもんをあ 過やまたす、む 無始しよりい 今まにい 至たるまて、お 多ほくの生をう 受けし事、あるひは六よ 欲く四し 生やうにむ 生まれ、ごす八く 苦のく 苦をう 受け、あるひは三つ 途し 四悪やくにお 堕ち、し 四大物たいもつの火にあへり。かゝるさ 罪
いこ 業うをふ 経り、い 今まに 人間んけんとむ 生まるゝことも、か 戒力いりきによつてなり。た 第い一せ 殺つし 生やうか 戒いをた 保もつては、し 心んのさ 臓うと成。ち 偸盗戒うたうかいをた 保もつて、か 肝んのさ 臓うと 」(一五ウ)なる。し 邪淫戒やゐんかいをた 保もつて、ひ 脾のさ 臓うとなる。ま 妄語戒うこかいをた 保もつて、は 肺いのさ 臓うとなる。お 飲酒戒んしゆかいをた 保もつては、し 腎んのさ 臓うとこれなる。これに五を 音んし 七 つせ 声いあり。いはゆるき 宮うせ 商うか 角くち 徴う 羽、そ 双うわ 黄うひ 平やうは 盤んい 一ちこ 越つ、これ又み 微妙めうの御の 法りとし、こ 五智ちのお 音声んせいこれなり。これに五つのた 魂ましゐあ 有り。こ 魂んし 志は 魄くい 意し 神んなりき。此五つのか 形たちをく 具足そくするを、仏と申。五つのか 形たちか 欠けぬれは、」(一六オ)く 愚痴暗蔽ちあんへいのち 畜類くるいたり。いかにほ 仏とけをね 念んする人は、まつ五か 戒いをよくた 保もつへし。ひ 一とつもか 戒いをや 破ふりなは、む 無
そ 足くた 多そ 足くのも 者のとなりて、な 長かくほ 仏とけになるまし。お 仰ほせはお 重もくさ 候ふらへと、第三のか 戒文いもんを、い 如何かにとしてや 破ふらんと、な 涙みたくみたるはかりにて、お 思もひ入てそおはしける。ま 万戸んこもた 大唐いたうそ 育
たち、ふ 仏法流布つほうるふのく 国になれは、あら〳〵か 語たり申。あら、し 殊勝ゆせうや。さては後生 」(一六ウ)の御ために、き 禁戒んかいをた 保もたせ給ふか。そのか 戒文いもんのな 中かに、六は 波羅蜜らみつのき 行やうあり。その中にとつても、に 忍ん