レースに関する基礎研究 ( 1 )
伊 沢 政 枝 *
A F u n d a m e n t a l S t u d y o f t h e L a c e ( 1 )
Masae I z a w a
要 旨 現在ではレースは非常に多種にわたって生産されており,名称もあいまいなものがある。そ こでレースについてその歴史,数多くあるレースの種類の分類・整理,日本のレース工業の現状把握,
主にエンブロイダリーレースの製造工程の調査等を行なった。手工レースの歴史から機械レースの変遷 と,日本のレース工業の現状把握については,明治 5 年から現在までを概観した。調査は現在のレース 工業について,エンブロイダリーレース工場 3 社,編レース工場 l 社を見学し 製造工程を知ること が,構成上の技術に必要なことの認識を新たにすることが出来た。またケミカルレースに使用されてい る,水溶性ピニロン(ソルブロン)を用いて,スペアカラーを試作し,基布の溶解について体験した。
レースの用途については,昭和4 0 年代の総レースのドレスはやや影を潜め,現在では部分使いが多くな り,また機械のコンビュータ化による高速度生産のレースはアウトウエアからインナーウエアの方向に も向けられ,今や季節商品から年間商品となっている。
I は じ め に
繊細‑優雅・華麗など布地自身がし、ろいろな 表情を演出する素材の一つにレースがある。学 生の製作する礼服・社交服の素材としてレース を選択することが多くあり, 1 9 8 9 年度の被服専 攻科の学生の 25% は 何らかの形でレースを使 用している。現在のレースは機械の発達と技術 の進歩により,非常に多くの種類にわたって生 産されており,中には正確な種別が判別しにく いものも数多い。また判別についての資料も甚 だ少ない現状である。そこで学生に指導するた めの基礎資料を整えたし、と考えた。
手工レースの歴史は古く,数多くの名称や分 類 , 歴 史 的 資 料 1 ) 2 ) 3 ) はかなり見受けられるが,
今日では手工レースはごく一部で,大半は機械 レースとなっている。しかし機械レースは種類 も多く,また名称も判別しにくいものが多い。
*本学助教授被服構成学
そこで主として機械レースについて, ・歴史と 種類の分類, ・日本のレース工業の現状につい ての把握, ・現在使用されているレースの傾向 について, ・布地とデザインの関係, ・適した 縫製方法についてまとめたし、と考えた。
本報告は歴史的変遷をまとめ, レースの製作 工程など現状について工場見学をし, レースと し、う名称に含まれる多くの種類を分類したいと 考えた。
E レースの起源と変遷
1 . レース ( L a c e ) とは
日常日本語として使っている「レース」とい う 言 葉 は , 英 語 の Lace か ら き た 言 葉 で あ る が,これは古代フランス語のラシ(1 a c i s ) (編物
・網の意)から出たものである。またラテン語 のラク(1 a q u e u e ) ( 結 び 目 , わ な , 縄 を 引 き 結 びにした輪の意)にも通じ幾種もの意味がある。
レースの定義として辞典などでみると,次の ような定義がみられる。
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文化女子大学研究紀要第 2 2 集
‑糸を編み,組み合わせ,より合わせるなどし て,種々の透かし模様を作った布地や編地 ( 1 )
0・糸を撚り合わせたり,編合わせたりして,透 し目の多い飾模様を作り,布状にしたもの。ま た,このような透模様を一部分または全体に表 わした織物・編物のこともいう ( 2 ) 。
・すき間模様で装飾した布地の総称。方法には 糸のからみ,結び,組み,編み,抜き,刺繍な
ど様々あり,ネットもこの一変形である ( 3 ) 。
・糸をより合わせたり,組み合わせたりして,
網状の透かし模様につくられた布。針,ボピン あるいは編棒などを用い,手によってつくられ たものと,機械によってつくられたものがあ る ( 4 ) 。
実際には種類が多く,手工レースと機械レー スからなり,手づくりではじめられたものであ るが,現在の衣料の大半は機械レースである。
2 . 手工レースの歴史 1 ) 2 ) 3 ) 4 )
1 3 世紀の初期,イギリスの尼僧院の規約に,
はじめてレースとし、う語が使われたといわれ,
これがこの語の文献上にみられる最初の記述で あるとされている 1 ) 。
遺物その他から,さらにさかのぼって古代の 中にもみいだされる。それらは布地の補強と装 飾を兼ねた刺繍や刺しこの技法が用いられ,ま た布地やネットに刺繍したり,布地の経糸,緯 糸を抜きとってかがったり,衣服の縁の装飾を 兼ねて組紐ふうのものをつけたりしたのも, レ
ースのように透孔状を備えることになる。これ らの技術はのちにドロンワーク,カットワーグ を生み,ニ一ドルポイントレースやボどンレー スへと発達件た。したがってレースふうのもの は,人類が繊維を利用しはじめた当初から存在 したといえる。現に三ジプトの古墳から,ピラ ミット時代の遺物としてレースふうのミイラク ロスなどが出されている 1 ) 。 ま た コ プ ト の 墓 陵,インカ帝国の史跡からもボビンレースの原 型ともいうべき相当高度なネットがボビンとと
もに発堀されたといわれている。
ヨーロッパでは紀元 1世紀にはいると,聖書 物語が刺繍の絵模様にとりし、れられて,僧衣に
( 5 6 )
配されたり,教会の内部装飾に用いられるよう になった。貴族や富豪も身辺や室内を刺繍で飾 るようになり豪華な装飾様式に発達した。中世 紀以後は一般に針仕事や手芸の技術が大いに進 歩した。シルクロードを通じ中国からヨーロッ パへ魅惑の繊維,絹などももたらされるように なった。こうして刺繍,ダーンドネッティング (かがり網目地),カットワーク(切り抜き刺 繍), ドロンワーク(抜きかがり細工),などの 技法がかなり発達するとともにこれらを併用す る技法も発達し, レティチェラを誘導するにい たった。レティチェラはギリシャで発達したも ので,布地のカットや糸抜きを大きくして土台 にほとんど布地の使われていることがわからな いようなレースである。レティチェラからプン トインアリア(糸かがりレース)が生まれ, 1 5 世紀は全盛時代であった。 1 6 世紀の中頃イタリ アのヴェネチアでニ一ドルポイントレース(糸 を縫針でかがって作るレース)が生まれた。ボ ビンレースは組紐から発達し,糸巻きを使って 作るレースで,フランドル(現在のベルギー) で、栄えた。手工レースは「織物の貴族」ともい わ れ , イ ギ リ ス の 文 豪 ラ ス キ ン ( J ohn Ruskin , 1819~1900) は「それは時間と労力 を超越した最高の手芸品である。」と評したと いわれ,風合いとデザインの美しさ,繊細さ,
優雅さにより一種の美術品とみる観念が人々の 頭にしみ込んでいたようである。求めるには同 じ広さの金貨を敷き詰めるだけ必要だったと か,宝石以上のものといわれ,王候貴族や一部 の貴婦人だけにしか使用されなかったようであ る 。 1 7 世紀に入っても盛んで襟,カフス,袖飾 り,ズボンの裾までにもつけられていた。この 頃の肖像画(図 1)に見られるものの中にレー スで縁取りしたフレーズ(円型の襲襟)がある。
針金入りの大きな襟や 3~4 枚重ねてつけたも のなど,男性も女性も使い豪華なレースの襟飾 りは宝石のような賛沢品であったといわれる。
図 2 の絵は 1 7 世紀中頃のレースの流行を示して いる。召使以外のすべての人が白レースと金・
銀レースをつけている。絵の中の男性はニード
図 1 パルマ公アレクサ ンドル・ファルネーズ の肖象 1580~90年頃 の襲襟
レースに関する基礎研究 ( 1 )
図 2 ヴィレム・ヴァン・ルーンとマルガレータ・バスの結婚 1 6 3 7年
ルポイントレースの大きな襟をつけていて,女 性はボビンレースの二重襟をつけている。当時 の資料によるとニ一ドルポイントレースの襟は ボビンレースの襟よりも高価であり,男性は女 性よりも豪華に飾っている。
イタリアのレースをフランスに導入し,以後 フランスはレースの中心地となりヨーロッパ全 域に広がった。レースの模様も動物模様から,
花鳥模様,風俗模様など糸も亜麻糸や絹糸,金 糸や銀糸まで使用されていた。ヨーロッパ各地 の博物館や宮廷,教会などでみられる 1 7 " ' ‑ '1 8 世 紀のレースはその精巧さと美しさには驚くばか りである。人の手でー針ー針編まれたものであ ることはまさに「時間と労力を超越した」もの である。 1 8 世紀はレースの黄金時代といわれ,
この時代のレースをしのぐものはもう決して作 られないだろうといわれている。一枚のレース のハンカチを作るのに一週間もかかり, ドレス にいたっては 1 0 年の歳月がかかったものもあっ たといわれている。
ブリュッセル王立美術歴史博物館には,数え きれない程の装飾芸術の数々が, ヨーロッパの 歴史を物語っていて,中でも図 3 はアルベール 大公とイザベル大公妃の婚礼を祝して, 1 5 9 9 年 に献納された装飾用寝台掛け 1 7 1 c r n x 1 3 1 c r n
図 3 装飾用寝台掛け(部分) 1 5 9 9 年フランドルの ボビンレース
図 4 ブルージュのボビンレース 1 9 8 3 年
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文化女子大学研究紀要第2 2 集 のレースである。ブラパン公家にちなんだ 1 2 0
個のモチーフを配列し,周囲にローマ皇帝や天 使の像を並列させた,フランドル地方のボビン レースの圧巻ともいわれている。その後 1 8 世紀 から機械レースが発明されて現在にし、たるが,
手工レースは伝統ある国々では,美術工芸とし てその技法は各地に残っている(図的。
3 . 機械レースの発展 1 )2 ) 3 ) 5 ) 6 ) ( 表 1) 機械レースは 1 8 世紀後半に英国で産業革命を 機に,靴下編機を利用することからはじめられ た 。 1 7 7 0 " ‑ '1 7 7 1 年にかけて,ノッティンガムの ロパート・フロスト ( R o b e r tF r o s t ) が六角形 のメッシュの上に一つの形象を作りだすことに 成功。これは編レースとして今日知られている ところでは最初のものであり,今でもノッティ ンガム博物館に所蔵されている。 1 8 0 8 年には,
ジョン・ヒースコート(J o h n H e a t h c o a t ) が ボビンネット機の発明により,ツィスト・ネ ット ( T w i s tN e t ) が作られることになった。
1 8 1 3 年ジョン・リバー(J o h n L e a v e r ) によっ て,現在のリーパーレース機の原型が誕生す る 。 1804 年 に は フ ラ ン ス 人 の ジ ャ カ ー ル ( J o s e p h M a r i e J a c q u a r d ) によってジャカード 装置が完成されて, 1 8 3 4 年ジャカードの原理が リーパーマシンに取り入れられ模様レースが作 られるようになる。エンブロイ夕、、リーレースは ホセ・ハイルマン ( J o s e 'He i 1 m a n ) が 1 8 2 8 年 に刺繍機械を発明した時から始まっている。ハ イルマンは 1 8 3 4 年にパリ博覧会でレジオン・ド ヌール勲章(ナポレオン 1世が創始した)を受 け,一躍全世界の注目をあびる。 1 8 7 8 年スイス の機械メーカー,サウラ一社が横行式の糸の引 き出し装置のついた, 1分間に 3 2 本のステッチ を縫う,新エングロイダリー機を製造した。
1 8 8 3 年に重要な新しい技法がドイツで開発され た。ケミカルレースである。絹の布地にモチー フを木綿糸で機械によって刺繍し,次にその絹 地を強アルカリ性溶液で溶かす方法である。
2 0 世紀に入り機械レース工業はアメリカをは じめ世界各地に広がり,ほとんどの手工レース の機械生産が可能になり,安価に美しいレース
( 58 )
が出来るようになり高嶺の花であったレース が,一般の人々にも容易に手に入るようになった。
現在ではフォーマルウェアから, 日常着まで 用途は広範囲である。
4 . 日本のレース工業の発展 1 ) 5 ) 6 ) 8 ) ( 表 2) 日本の衣服は,きものであったので欧米に比 べて, レースの歴史は浅い。わが国で手工レー スがはじめて作られたのは,明治 5 年(1 8 7 2 ) で横浜居留の外国商が,日本の婦女子が手芸に 秀でており,しかもその工賃が安いということ で , ドロンワークの製造を伝えた。明治 1 3 年 ( 1 8 8 0 ) 日本政府と東京府によって,京橋に官 立レース教場が設立された。イギリス人教師の 教えたボビンレース(ホニトンレース)はヨー ロッパでも話題を呼んだ。鹿鳴館時代の洋装と ともに需要は高まり,明治 2 1 年(1 8 8 8 ) には横 浜に手工レース工場が作られ,日本のレース産 業は順調に発達し,大正時代の初期には,全盛 時代を迎えるが,大正 1 2 年の関東大震災で工場 は壊滅し,再び手工レースは盛んになることは なかった。当時の農商務省が,明治 4 5 年 ( 1 9 1 2 ) にプレーンネット機を,大正 3 年(1 9 1 4 ) には,
ボビン式カーテンレース機を,英国のジョン・
ジャーダイン社から輸入し,大阪の門田レース
工場に貸与され試作研究が行われたと記録にあ
る。ラッシェル機(編レース機)は,明治 4 5 年
に輸入されている。大正 6 年(1 9 1 7 ) にはパン
タグラフ刺繍機が輸入され,機械による刺繍レ
ースの生産がはじめられたといわれている。大
正 1 3 年(1 9 2 4 ) にはドイツからシィフリー刺繍
機とパンチング機を日本製紐が輸入し,エンプ
ロイダリーレースの生産をはじめる。昭和 2 年
( 1 9 2 7 ) にドイツのホマッグ社製のジャカード
っき自動エンプロイダリー機が京都の日本レー
スに於いて運転される。その後スイスのサウラ
一社のものも採用され,東京はじめ全国で生産
も増え,昭和 5 年(1 9 3 0 ) 頃には, 日本の機械
レース産業はほとんど輸入品を駆遂し,逆に製
品を輸出するようになる。リーパーレースは昭
和の初め,当時の桐生高等工業学校教授堀越勇
次郎氏が,英国のノッティンガムでレースを学
表 1 世界にみる機械レースの発展 1 5 8 6 年 l 英 国│ノッティンガムで,ウィリアム・リーが靴下編械を発明
1 7 6 8 年 │ 英 国│ノッティンガムのハモンドが,靴下編機を改良して絹ネットを作ることに成功。
1770 │ 英 国│ノッティンガムのロパート・フロストが六角形のメッシュの上に形象を作る。編レース 1 7 7 1 年 1 の最初のもの。
1 7 7 4 年 │フランス│リヨンで、ボナールがポイントネットマシンで絹ネットを作る。フランスの機械レースの はじまりで、ある。
1 8 0 4 年 │フランス│ジャカールが,ジャカード装置の完成。
1 8 0 8 年 │ 英 国│・ジョン・ヒースコートが今日のプレーンネット機と原理においてほとんど変らないボ
目 白
ピンネット機を発明。これによってツィストネットが作られる。
・ジ司ン・ヒースコートの第一のパテント,経糸と移動ボビン糸とが円錐形の回転筒に よ二て撚組され ダイヤモンド型の網目のネットが作られる。
1 8 0 9 年 ・ジ司ン・ヒースコートの第二のパテント,広幅レースを作るのに糸を実際に作るもの と向じ密度にするビームを改良し,ボビンを平型なものとする。
1 8 1 3 年 │ 英 国│ジョン・リバーが今日のリーパーマシンの原型を誕生させる。
1 8 1 5 年 │ 英 国 1 1 6 9 5 年 . 1 7 1 8 年機械の海外輸出を禁ずる法律が出来,機械輸出の特別許可制がとられる。
1 8 1 6 年 │ 英 国│ネット機は部品に解体され,フランス,ベルギー,米固までも密輸出された。
1 8 1 7 年 │フランス│ジェームス・クラークが密輸入された機械を購入し,カレーではじめてボビンネット工 1 8 1 8 年
1 8 2 1 年 1 8 2 6 年 1 8 2 8 年 1 8 3 4 年
業を興した。
フランス│ヒースコートもパリに自分の工場を建てる。
フランス│リパーもフランスに工場を設置
フランス l ヒースコートは工場をサン・クウエンタンに移す スイス│ホセ・ハイルマンが刺繍機械を発明。
ホセ・ハイルマンの刺繍機がパリ博覧会に出品され,ナポレオンの制定したフランスの 最高賞レジオン・ドヌール勲章を受賞,一躍全世界の注目をあびる。
1 8 3 8 年 │フランス│ファーグソンがボビンネット機にジャカード装置をとりつける。
1 8 4 6 年 │ 英 国│ジョン・リパーシーがストレートダウンネットを作ることを考案。今日のカーテンレー ス機のもとである。
1 8 5 3 年 │スイス│ホセ・ハイルマンがサン・ガーレンで非のうちどころのないハイルマン刺繍機を作り,
米国にも供給される。
1 8 5 5 年 │フランス│ボビンネット工業は絹,綿レースを中心にウールやラマ・レースなどにも幅を広げ 1 8 3 5 年の倍の生産高をあげる。
1 8 5 8 年 │ドイツ│ハイルマン刺繍機の改良型がドイツにとり入れられた。
1 8 6 0 年 │フランス│ドイツ人アイザック・グレーブリがハイルマン刺繍機の研究をし,シィフリーエンブロ イダリー機を試作, 1 8 6 7 年完成。
1 8 6 5 年 │ 英 国│ボビンネット機(サーキュラーマシン 1 7 9 7 台,リーパーマシン 1 5 8 8 台など)計 3 5 5 2 台 , 経編レース機 4 0 0 台 。
1 8 7 0 年 │スイス│ハイルマン刺繍機に穿孔装置が設備される。
1 8 7 3 年 │ 米 国│スイスから 1 2 台の手動エンブロイダリ一機を輸入し,ニューヨークで機械刺繍レースの 生産を開始する。
1 8 7 5 年 │イタリア│スイス人によって,最初の手動エンブロイダリー機がもたらされた。
1 8 7 8 年 │スイス│サウラ一社,横行式の糸の引き出し装置の長さ 4 . 5 ヤード 1 分間 3 2 回転刺繍速度の新
I エンブロイダリー機製造。
1 8 8 3 年 │ドイツ│ケミカルレースの技法が開発される。
1 8 9 5 年 │スイス│サウラ一社,穿孔機っき, 1 分 間 9 0 ステッチの新機械開発。
1 8 9 6 年 アイザックの息子アーノルド・グレーブリによって,自動式刺繍レース機が作られる。
1 9 0 7 年 │ 英 国│ノッティンガム地方のリーパーレース,プレーンネット,カーテンレース工業の最盛期 4 0 , 0 0 0 人が携わる。
フランス│カレー周辺のリーパーレース工業は上記のノッティンガムとともに,世界のレースの二
│大供給源となる。
1 9 1 0 年 │スイス│サン・ガーレンでは, 6 , 0 0 0 台のジャカード装置付自動エンブロイダリーレース機の本 格的な生産開始,工業人員 8 7 , 0 0 0 人 。 ドイツのプラウエンで、も上記同様の機械により本 格的生産開始。
1 9 1 2 年 │ 日 本│ドイツからニ一ドル式刺繍機)農商務省が輸入している。
(明治 4 5 年)
1英国からプレーンネット機 j
1 9 2 3 年 │ 米 国│第一次世界大戦により生産下降, 1 3 1 企業, 1 , 3 7 3 台のリーパーレース機。
1 9 3 1 年 │フランス│カレー, リーパーレース機, 1 2 ポイント・ゲージのもの 2 , 9 0 0 台保有。
│スイス│エンブロイダリー機 1 , 5 8 4 台と第一次世界大戦,世界経済恐慌により減少する。
1 9 3 7 年 │ 英 国 1 8 5 企業 8 9 7 台とリーパーレース機縮少, 9 ・ 1 0 ポイント・ゲージのもの。
1 9 5 3 年 │イタリア│ブストアルスでブラウエン型自動エンブロイダリ一機製造開始。
1 9 5 5 年 │イタリア│メタルニカ社,コメリオ社も自動エンブロイダリー機製造開始。
I スイス・日本でもシィフリー機製造開始。
1 9 5 6 年 │ 米 国│ニュージャジィ州に多く生産され,シィフリー地区ともいわれる。 5 3 4 企業, 1 , 3 0 0 台 。 1958~ 刺繍市場好景気 ドイツ・サングス社,スイス・サウラ一社,イタリア・メタルニカ,
1 9 5 9 年 I I コメリオ社,日本・日立精機,平岡工業などで機械の製造をする。
( 5 9 )
明治 5 年 1 8 7 2 年 1 3 1 8 8 0 年 2 1 1 8 8 8 年 2 4 1 8 9 1 年 2 7 1 8 9 4 年 3 3 ' " ' ‑ ' 1 9 0 0 ' " ' ‑ '
3 4 1 9 0 1 年 4 2 1 9 0 9 年 4 5 1 9 1 2 年
大正 3 年 1 9 1 4 年 5 1 9 1 6 年 6 ' " ' ‑ ' 1 9 1 7 8 年
7 1 9 1 8 1 9 1 9 年 1 2
1 3 1 9 2 4 年 1 4 1 9 2 5 年 昭和 2 年 1 9 2 7 年 5 1 9 3 0 年 7 1 9 3 2 年 9 1 9 3 4 年 1 0 ' " ' ‑ ' 1 9 3 5 ' " ' ‑ '
1 5 1 9 4 0 年 1 3 1 9 3 8 年 2 3 1 9 4 8 年 2 6 1 9 5 1 年
3 0 1 1 9 5 5 年 3 1 1 1 9 5 6 年
3 2 1 1 9 5 7 年 3 3 1 1 9 5 8 年 3 5 1 9 6 0 年 3 7 1 9 6 2 年 3 8 ' " ' ‑ ' 1 9 6 3 ' " ' ‑ '
4 2 1 9 6 7 年 4 2 1 9 6 7 年 3 7 ' " ' ‑ '
4 6 1 9 7 1 年 4 5 1 9 7 0 年 5 1
5 4 1 9 7 9 年 6 3 1 9 8 8 年 平成元年 1 1 9 8 9 年
文 化 女 子 大 学 研 究 紀 要 第 2 2 集 表 2 日本におけるレース工業の発展
横浜居留の外国商がドロンワークの製造を伝えた。手工レースのはじまりである。
京橋に官立レース教場が設立。英国人教師によりボビンレースが伝えられた。
横浜に手工レース工場がつくられ, ドロンワーク,パテンレースが作られた。
海外からも注文が来て輸出をするようになる。
新潟の柴田慶次郎氏,米国で研究して来たトーションレースを主として,高田市にレース 製作所を設け,輸出を開始する。
高田市で木戸信次郎氏がパテンレースの製造をはじめる。
輸出増大。
ドイツから ニ一ドル式刺繍機械を農商務省が輸入し,横浜輸出織物加工同業組合に貸与 し,製造を開始。英国ジョン・ジャーダイン社からプレーンネット機を農商務省が輸入し,
大阪の門田レース工場に貸与され試作される。
英国ジョン・ジャーダイン社からカーテンレース機を農商務省が輸入し,大阪の門田レー ス工場に貸与され試作される。
ラヴシェルレースの研究が明治末期から行われ,門田氏が国産編機でショールの房を編む。
大正 3 年には細幅レースが作られ,大正 5 年には亀甲紗が考案される。
京都の高木喜八氏,手動エンブロイダリ一機によって,刺繍レースの生産をはじめる。
相生高等学校にメリヤス分科が設けられ, ドイツ製ダブ、ルラッシェル機,ジャカードラッ シェル機が設置される。
関東大震災で手工レース工場壊滅する。
東京の日本製紐株式会社は,ドイツからシャットル式エンブロイダリーマシンを購入して,
レースの生産をはじめる。
日本各地でエンブロイダリーレース機を据えて,刺繍レースが作られた。
ドイツのホマッグ社製のジャカードっき自動エンブロイダリー機が京都の日本レースに於 いて運転される。
日本の機械レース産業は,ほとんど輸入品を駆逐し,逆に製品を輸出する。
桐生高等学校教授堀越勇次郎氏,英国ノッティンガムにレースを学び,帰国後リーパーレ ースを紹介する。
堀越氏は鐘淵紡績株式会社の山科工場に,リーパーレース機を据えて,試作を開始させる。
各地にリーバーレース機が設置されたが,エンブロイダリーレースに比べ,大きな発展を みることがなかった。
エンブロイダリーレース機の設備総数 2 3 6 台 。 第二次大戦後操業度 2 ' " ' ‑ ' 3 割 。
操業度 3 ' " ' ‑ ' 4 割。輸出するまでになる。女性の下着が京都の和江(現在のワコール)で開 発される。
ラッシェルレース第一発展期。
スイス・サウラ一社, ドイツ・ホマッグ社,イタリア・コメリオ社でエンブロイダリー機 が生産開始され,輸入する。
東邦レース株式会社の指導研究に基づき,目立精機に於いてエンブロイダリーレース機が 国産化する。
1 0 ヤード機, 1 3 ヤード機, 1 5 ヤード機。
西ドイツのカールマイヤ一社の多歳ラッシェル機(1 8 枚銭)を輸入。日本でも 2 5 枚歳機が 開発。
エンブロイダリーレース機設備総数 2 8 9 台,三菱レイヨンに依頼し,ニチピと平岡の共同 開発による。水溶性ビニロンの開発。
平岡工業がパンチング機と本機を合体した,ハンドル式 1 0 ヤード機 ( P E 1 0 型)を開発。
平岡工業がジャカード機のエンブロイダリーレース機 (AE10 型) (AE15 型)を開発。
ラッシェルレース第二発展期,多銭高速機の開発。合成繊維登場。細幅レースやショール からアウトウェアやファウンデーションへ。輸出も伸びる。(インドネシア)
エンブロイダリー機設備総数 7 0 3 台 。
自動車用装飾布(シートやシートカバー及び床敷内装布)にラッシェル機を使用。
レースカーテンの需要が急速に伸びる。ラッシェルレース機 4 4 年に設備総数 3 , 0 3 8 台 。 ラッシェルレースの第三発展期。マイヤーの高速ジャカードラッシェル機の開発で、レース カーテン,インテリア小物,寝装分野に広がる。
平岡工業が織り幅 1 2 0cm を持つエンブロイダリーレース機 (CG15 型)を開発。
平岡工業が世界最長のエンブロイダリ一機 ( L G 2 1 型)を開発している。
平岡工業がコンピュータ制御エンブロイダリーレース機 (XE15 型)を開発。 5 8 年 iCEDJ を開発。
平岡工業が新しい作動 休止切り替え機構の SNC を塔載した新型コンビュータ制御エン ブロイダリーレース機 iVEJ シリーズ開発。
( 6 0 )
レースに関する基礎研究 ( 1 )
図 5 ー 1 ミセス 図 5 ‑ 2 ミセス
1 9 6 4 年 6 月号 1 9 6 5 年 6 月号
図 5 ‑ 3 L ' O F F I C I E L 図 5 ‑ 4 ヴァンサン力ン
MARS 1 9 9 0 HANAE 2 5 a n s 1 9 9 0 年 5 月号
.MORI 作 ジャン・フランコフヱレ作
図 5 ‑ : ‑ 5 インナーウエア 図 5 ‑ 6 インナーウエア
W a c o a l 力タロゲ ' 9 0 L o v a b l e 力タログ ' 9 0
び,帰国後紹介した。昭和 9 年(1 9 3 4 ) に鐘淵 紡績株式会社の山科工場で, リーパーレースの 試作を開始している。昭和 1 3 年(1 9 3 8 ) には全
C 6 1 )
国のエンプロイダリー機は 2 3 6 台と, リーパー レース機・編レース機も稼働するが,その後太 平洋戦争を機に輸出どころではなく,設備を縮 少するようになる。
昭和 2 7 年(1 9 5 2 ) には,平岡工業がエンブロ イダリー機を国産化するようになり,刺繍レー ス業界も昭和 3 0 年代には, 1 5 ヤード機が入荷し 大増設が行われる。 3 0 年代の後半では一般消費 者の間でも,高級品に目が向けられ,量より質 へ転換する。昭和 3 8 年(1 9 6 3 )' " ' ‑ ' 4 5 年(1 9 7 0 )
頃には,全身使いのエンプロイダリーレースの 服を誰もが着用する位に流行したが(図 5 ‑ 1 ・
5 ‑ 2 ) ,最近では他の布との組み合わせによる扱 い方が多く ( 図 5 ‑ 3 ・ 5 ‑ 4 ) ,アウトウエアだけ でなく,インナーウエアにも多く使われるよう になった(図 5 ‑ 5 ・ 5 ‑ 6 ) 。またエンブロイダリ ーレースは襟など部分的に,服のアクセントと して使う使い方も多くなっている。コンビュー タ化が進み 1 9 9 0 年現在,エンプロイダリーレー ス機は全国で約 8 0 0 台で 2 0 0 0 万 m 2 が生産され ていて,工場出荷額は 3 6 0 億円の産業である。
リーパーレースは,昭和 1 0 年 ' " ' ‑ ' 1 5 年に各地で 生産された。しかしリーパーマシンが高価で、あ ったこと,その操作に高度な技術を要するこ と , リーバーレースとしての真の価値を一般に 認識されることがなく,使用範囲もエンブロイ
ダリーレースに比べて狭かったことなどがあっ て,わが国では大きな発展をみることがなかっ た。現在でも広幅のものの生産は少なく,フラ ンス製(カレー社, コードリ一社)のものに頼 ることが多く高価で機械レースとして最高のも のである。
ラッシェル機で、編んだ編地を「編みレース」
といい,ラッシェル機の種類によって,模様編
みレースやそれ以外のネット,パイル,織物ラ
イクの生地なども幅広く生産可能で製品も多様
である。柄出しの範囲が広くなり,カーテンや
テーブルクロスなどから,衣料用のアウトウェ
ア,インナーウェア,その他附属まで用途が広
がり,またインテリア資材,産業資材,寝装資
材,農漁業資材にまで幅広く使用されている。
文化女子大学研究紀要第 2 2 集 以前は季節商品であったカーテンは,現在年間
商品化し,また昭和 2 5 年 " ‑ ' 2 6 年頃から女性の下 着にレースが使用されるようになり需要の定着 をみている。ラッシェルレースは柄出しの笈枚
オサ
数によるもので多銭化,コンビュータ化の方向 でスピードアップされ,生産効率がよく低コス
トの生産が可能である。
現在組合組織は 5 グループに分かれていて
① 東日本編レース工業組合 9 3 社 7 5 0 台
② 関西編レース工業組合 8 0 社 5 1 1 台
③ 福井県編レース工業組合 1 9 9 社 1 4 3 0 台
④ 中部日本編レース工業組合 2 3 6 社 1 5 1 2 台
⑤ 西日本編レース工業組合 9 1 社 4 5 1 台
1 9 8 9 年 1 2 月現在 合計 6 9 9 社 4 6 5 4 台 以上のような企業数と機械台数である。
E エンブ口イダリーレースの製造工程
1 . 工場におけるエンブ口イダリーの工程 レースの種類の多い中で,現在の衣料用レー ス工業の大半を占めているエンプロイダリーレ ースについて,製造工程を調査した。表 3 はそ の流れ図である。
日本エンプロイダリーレース工業会には,会 員企業数 1 0 8 社(下請けを含むと 2 0 0 社)エンプ ロイダリ一機設備総数は 8 0 0 台といわれている。
表 3 エンブロイダリーレース 製造工程
1 ) I パンチングカード準備│ 訪 │ 刺 繍 糸 準 備 I 3 ) I 刺 繍 基 布 準 備 │
1 0 )
分 │ 検 査 │
。 │ 補 修 │
( 6 2 )
レースに関する基礎研究 見 学 し た 3 社 は ス イ ス の サ ウ ラ 一 社 , 日 本 の 平
岡工業の機械が使用されていた。
れ て い る 。 シ ィ フ リ ー " と し づ 言 葉 は 小 さ な 舟のような形をしたシャットルから由来したも の で あ り , そ の 意 味 は ド イ ツ 語 , ス イ ス 語 で は 小 さ な ボ ー ト と い う こ と で あ る 。 シ ャ ッ ト ル は シ ィ フ リ ー 機 ( 日 本 で は エ ン グ ロ イ ダ リ ー 機
と呼ばれている)はシャットノレ機としても知ら
図 6 ‑ 1 1 ) ー 1 図案作成
図 6‑4 1 ) ‑ 3 CED 装 置
図 6 ‑ 7 4 ) エンブ口イダリー マシン刺繍部分
図 6 ‑ 1 0 6 ) 補修
図 6 エンブ口イダリーレースの製造工程
図 6 ‑ 2 1 ) ‑ 2 6 倍拡大製図
図 6 ‑ 5 2 ) ‑ 3 裏糸シャッ卜ル
‑コップ糸
図 6‑8 4 ) エンブ口イダリー マシン キリの出た状態
図 6 ‑ 1 1 7)浮糸除去 ( 63 )
図 6 ‑ 3 1 ) ‑ 3 カード・パンチ ンゲ
図 6 ‑ 6 4 ) エンブロイダリー マシン全景
図 6 ‑ 9 5 ) 検 査
図 6 ‑ 1 2 1 0 ) 細幅裁断
文 化 女 子 大 学 研 究 紀 要 第 2 2 集 裏糸を入れるボビンケースの役目をする。
( 図 6 ‑ 5 )
刺繍レース機で、各種の布地に糸で、刺繍をする のには,次のような工程を経ている。
1 ) パンチングカード準備 1 ) ‑ 1 図案作成(図 6 ‑ 1 )
用途・素材などを考慮して柄を原寸大の刺繍 デザインとして製作する。レースのデザインと し て は , イ ン チ ( 1 仏 i n " ' 2 .7 7 cm) 単位で描 く必要がある。一般に 1 i n は 4 / 4 と表示する習 慣があり, 2 i n は 8 / 4 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 0 / 4 になると 1 0i n の 大柄になる。刺繍糸のー縫いの動きまでも,克 明に描き分け,価格はステッチの量で計算され る 。
1 ) ‑ 2 6 倍拡大製図(図 6 ‑ 2 )
刺繍のデザインが決まると投影機で,原寸の 6 倍の大きさに拡大製図をし,人手によって刺 繍の細部を詳しく指示をする。
1 ) ‑ 3 カード・パンチング(図 6 ‑ 3 ) 出来上がった製図の模様に従って,パンチン グ機でカードに穴をあける。パンチング機の片 側では実物通りの大きさの見本が刺繍され,カ ードにはー縫い毎の運針量が自動的に計算され パ ン チ ン グ さ れ る 。 現 在 で は コ ン ビ ュ ー タ
CCED) で、パンチングされている。
CED 装置(コンビュータ・エンプロイダリ ー・デザイン・システム) C 図 6 ‑ 4 ) は次のよ
うなものである。
手動式のパンチング機と違い,コンビュータ システムでの製図の大きさは 6 倍でも原寸でも パンチは可能である。ただし原寸では繊細さが 表現しにくい難点がある。 CED に記憶された 模様(ソフト)は図板上のカーソール操作で、テ レビの画面に表示され,その模様は何度でも簡 単に変更,修正が可能で,より完全な模様が得 られる。この柄をコンビュータに送ると,自動 的にパンチングカード,テープが作成される。
CED の記憶によりいつでも再利用が可能であ る 。
1 ) ‑ 4 パンチングカード複成
パンチングカードは 1 0 0 回位使用可能だが,
( 64 )
傷んだりした時はノミンチングカードをコピーす ることが出来る。コピーマシンも電子化されて いる。
2 ) 刺繍糸準備 2 ) ‑ 1 刺繍糸
刺繍糸はまずかせの状態からコーンチーズワ インダーにかけてコーンチーズ巻にする。
2)‑2 表糸の準備
表糸はコーンチーズ巻からボビンワインダー によってボビン巻にする。一般的に刺繍に用い
られる糸は
・レーヨン糸 75D/2 1 0 0 / 2 1 2 0 / 2 1 5 0 / 2
‑綿糸 2 0 / 2 S 4 0 / 2 6 0 / 2 8 0 / 2 1 1 0 / 2
その他 ・ポリエステル糸 ・ウール糸 シルク糸 ・ラメ糸 などであるが主にレーヨ ン糸と綿糸が使われる。
2 ) ‑ 3 裏糸の準備(図 6 ‑ 5 )
コーンチーズ巻の刺繍糸からコップワインダ ー に よ っ て コ ッ プ 巻 に し , シ ャ ッ ト ル に つ め て,シャットルボックスに装置する。
シ ャ ッ ト ル の サ イ ズ は メ ー カ ー に よ り 異 な り,次のような種類がある。
F 6 130m 巻 } }平岡工業
F 1 2 260m 巻(キングシャットル) J
# 8 1 4 0 m 巻 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ サ ウ ラ 一 社
3 ) 刺繍基布準備 3 ) ‑ 1 刺繍基布
ほとんどの生地を用いることが出来る。
3)‑2 検 反
一般の検反と同じく,織り傷その他をチェッ クする。
3 ) ‑ 3 裁 断
機械の大きさによって生地の長さ,幅が決ま る。実際に刺繍される面積の他にロス分を見込 まなければならない。
3)‑4 導布作成
布はステッチされる際に縮まないように,し っかりと枠に張られるため,布の周囲に導布と いう別布を必要とする。
3)‑5 縫い合わせ
レースに関する基礎研究 ( 1 ) 導布と基布を環縫いミシンで接ぐ。
4 ) 刺 繍 ( 図 6 ‑ 6 ) ( 図 6 ‑ 7 )
エンブロイダリーレース機は, 9.1m ( 1 0 ヤ ード), 1 2 . 5 m ( 1 3 ヤード), 13.7m ( 1 5 ヤー ド ) , 2 0 m ( 2 1 ヤード)機などがあるが, 1 5 ヤ ード機が最も多く使われている。布を横にして 垂直は張り, 1 5 ヤード機では 13.7m の長さの レースが仕上がる。上・下 2 段同時に刺繍が出 来る。 1 5 ヤード機は幅 18m ,高さ 3 . 5m ' " " 4 . 5 m もある大型のもので,針が 1i n 間隔に 5 1 2 ' " "
5 2 0 本ついていて,通常の縫製用のミシンが横 に 5 2 0 台並んでいるようなものである。針の下 に各々キリがあり,穴をあけることも出来る。
上・下段合わせて 1 0 0 0 本以上の針が一斉に作動 し柄や模様を作る。裏側はミシンの下糸の役割 をするシャットルが,針の数だけ一列に並んで いる。機械の片側に柄出しオートマチックジャ カード機の自動運転のための装置があり,パン チングカードがつけられる。上下 2 段しっかり と布を張った枠はパンチングカードに従って,
上下左右に運動をする。運針は 1 分間 1 2 0 ' " " 2 0 0 針のスピードで模様を作る。穴をあける時は針 の動きが止まり,キリで布に穴があけられ(図 6 ‑ 8 ) ,切り口を針でかがりこんでゆく。大柄 な刺繍をする時は,図案の大きさに合わせ針を 何本か休めることになる。また多色の刺繍レー スが出来る自動切替え装置を備えた,カラーチ
ェンジ機もある。
5 ) 検査(図 6 ‑ 9 )
刺繍が終ると生地は機械から外され,一反ご とに縫い合わせを解いて検査を行なう。刺繍さ れた模様に糸切れや柄抜けがないか,その他厳 密に検査し,しるしをつける。
6 ) 補修(図 6 ‑ 1 0 )
検査のしるしに従つて押え金を外した動力ミ シンで
でで、丁寧に補修される。この作業は熟練を要し,
人手によるものである。
7 ) 浮糸除去(図 6 ‑ 1 1 )
生地に残った不要な浮糸をシャーリングマシ ンで除去する。
( 6 5 )
8 ) 染色・整理
ソーピング加工をして汚れや油おとしをす る。水溶性ビニロン布のあるものは溶解し,必 要に応じて晒加工,染色加工をする。染色され た生地は幅出機(テンター)にかけられ,樹脂 加工をする。外註,整理工場へ出すことが多い。
9 ) 検 査
再度検査・補修を行なう。
1 0 ) 細幅裁断(図 6 ‑ 1 2 )
細幅レースも広幅の状態で刺繍されているの で,用途に合わせて裁断する。スカラップのも のは裁断機又はヒートカットされるが,モチー フなどは人手で行なう。
1 1 ) 包装・出荷
反物別に包装され出荷される。
2 . 水溶性ビニロン基布の溶解
エンプロイダリーレースをケミカルレースに するためには,ビニロン基布を溶解させる工程 があるが,今回はここの部分は,スペアカラー を材料にして実験的に行なった。
熱水,温水,冷水で溶解する性質をもった繊 維が水溶性ビニロンで,株式会社ニチピの特殊 合成繊維で,商品名はソルブロンである。
1 ) 実験試料
ケミカルレース,チュールレースに使用され ている基布の主なものは,表 4 に示すようなも のである。これは 1 反が 112cm 幅,長さ 58m と 1 5 ヤードレースが 4 反どり出来るようになっ ていて,糸密度,溶解温度などにより種々ある が,現在多く使われているのが,表 4 に示した ものである。用途によって表中に示したように 使い分ける。今回実験に用いた試料は基布とし て GF400 ,ステッチは絹穴糸,スペアカラー の縁とり用に綿糸レース,図案用にレーヨンの プレード,綿レースのモチーフを用いた。基布 以外は9TC に耐えられる材料のものとした。
2 ) スペアカラーの製作順序
① 基布に鉛筆などで下図を描く。全部の縫 い糸が互いに交差するようにデザインする。縫 し、縮みするため下図の寸法は出来上がり寸法よ
り一割程度大きめに描く。
文化女子大学研究紀要第2 2 集 表 4 水溶'性ビニロンの諸元
タ イ プ ( 糸 本 密 / c 度 m) 理 溶 解 温 処 度 用 途 GF 3 0 0 3 6 x28 9 5
0C 以 上 ス テ チ 密 度
一 の小さツ いもの
GF 4 0 0 40x38 9 5
0C 以 上 般 GF 5 0 0 4 4 x40 9 5
0C 以 上 糸
用 ステ チ 密 も度 GF 6 0 0 4 4 x44 9 5
0C 以 上 の大きツ い の GFL 4 0 0 4 0 x 3 8 7 0
0C 以 上 ウ l 先 染 ステ チ 密 も度 の小さツ い の GFL 6 0 0 44x44 7 0
0C 以 上 用 糸 ル 糸 用 め ステ チ 密 も度 の大きツ い の
図 7 ‑ 1 下図に従ってミシンがけをする
図 7‑2 9 7
0C の熱湯の中で撹持する
図 7‑3 出来上がり
( 66 )
② 下図に従ってミシンがけをする。その時 ハトロン紙を敷いてかけた(図 7 ‑ 1 ) 。
③ 9TC の熱湯に軽く撹持しながら 3 ' " ' ‑ ' 4分 浸け,水溶性ビニロンの溶解が完了したら引き 上げる(図 7 ‑ 2 ) 。
④ 新しい温水で充分洗浄し,陰干しにして 半乾きの状態でアイロン仕上げをする(図 7 ‑
3 ) 。
3 ) 考 察
基布は薬品を使用せず温湯で溶解されるの で,縫い糸,添加する装飾材料は, 9 7
0C に耐え られる素材であれば どんな素材でも使用可能 である。洗浄時に水溶性ビニロンを完全に取り 除くことが大切で,溶解後に水溶性ビニロンが 溶け残った状態で乾燥した場合,再溶解は困難 である。基布が溶け去り,縫った糸または載せ た材料のみが残り,織ったものでなく,編んだ ものでもないアイディア次第で独創性のある作 品が出来る。手工芸的にはスペアカラーのみで なく部分使いや全体使い ストールなどにも利 用することが出来 水溶性ビニロンの上にモチ ーフなどを並べ,水溶性ビニロンでサンドイツ チにしてもミシンがかけ易いなども考えられ る。ケミカルレースなどの工場見学が出来なか ったが,実験により基布の溶解の状態を知るこ とが出来た。
N レースの分類・用途
1 . 分類・用途
レースの名称は, 1 8 0 種類もの名称があり,
作られた国名,地方名,発明者名などによる名 称,技法や材料を名称にしたもの,あるいは形 がそのまま名称となったものなど,多種にわた っている。またその分類方法も次のようないく つかのものがある。製法による分類や, レース 機の種類による分類 使用する織物や糸の種類 による分類, レースの出来上がり幅や用途など による分類など,多種に分類がされている。
ここではまず手工レースと機械レースに大別
するものとして,今回は機械レースについて,
表 5 レースの分類と名称 (製法による分類) (素材による分類) (技法による分類) (機械による分類)
レース
手工レース
( 名 称)
布レース一一刺繍する一一一一一エンブロイダリーレース機一一 ①エンブロイダリーレース
(シイフリー梯 .オールオーバーレース ・スポットレース
‑ボーダーレース ・パネルレース
‑附属子襟・カフス・袖¥
L モチーフ・細幅 j
‑ケミカルレース(加工品)
・チュールレース(加工品)
「リーパーレース機一一一一一一②リーパーレース
「撚り合わせる一一十プレーンネット勝一一ーっ③チュール・ネット
I (ボビンレース櫛│ 一 . m . ;/
I , " , . ̲ .
Y "Ir...L * ' ンカーテンレース機ー‑/1‑
7カーテンレース 糸レース→組み合わせる一一一トーシヨンレ-;惜~γ ④トーションレース
(ボピンレース櫛 ぷグ
r ラ ッ シ : r . . ル , ‑ " ̲ . . . 乙ヂ一一一一⑤ラッシェルレース
L 編み合わせる一一十 ν 一人慌 / (編ゾ梯 L トリコットレース機 J
機械レース
混合レース コードレース
⑥リボンレース
レ ー ス 機 の 種 類 に よ る 分 類 ・ 名 称 を 軸 に し て 整 理した。
表 5 は 製 法 に よ る 分 類 , 素 材 に よ る 分 類 , 技 法 に よ る 分 類 , 機 械 に よ る 分 類 を 一 覧 に ま と め た も の で あ る 。 素 材 ‑ 技 法 ・ 機 械 に よ る 分 類 を み る と , 布 に エ ン プ ロ イ ダ リ ー 機 で 刺 繍 す る エ ン ブ ロ イ ダ リ ー レ ー ス , 糸 を ボ ビ ン レ ー ス 機 に よ っ て 撚 り 合 わ せ る リ ー バ ー レ ー ス , 組 み 合 わ せ る ト ー シ ョ ン レ ー ス , ま た 糸 の 編 み 合 わ せ に よ る ラ ッ シ ェ ル レ ー ス に 分 類 さ れ る 。 さ ら に ラ ッ シ ェ ル 機 は 表 6 の よ う に 多 種 の 機 械 に 分 類 さ れる。
表 7 の よ う に レ ー ス の 幅 ・ 大 き さ に よ る 分 類 も さ れ る が , 多 く は 広 幅 レ ー ス , 細 幅 レ ー ス , モ チ ー フ レ ー ス で 製 品 幅 も デ ザ イ ン に よ り 多 種 に わ た っ て い る 。 特 殊 幅 レ ー ス と し て 和 装 用 に 用 い ら れ る , 袖 幅 レ ー ス や シ ョ ー ル 幅 レ ー ス , ベ ッ チ コ ー ト 幅 レ ー ス が あ る 。
表 8 の レ ー ス の 用 途 別 に よ る 分 類 で は , 衣 料 用 に は ア ウ ト ウ エ ア , イ ン ナ ー ウ エ ア , そ の 他 附 属 に 用 い ら れ , エ ン プ ロ イ ダ リ ー レ ー ス , リ ーパーレース, ラッシェノレレース, ト ー シ ョ ン レ ー ス が 使 用 さ れ る 。 非 衣 料 用 と し て は イ ン テ リ ア 用 品 か ら 産 業 用 品 ま で 幅 広 く 使 用 さ れ , ラ
表 6 ラッシェル機の分類 フレンチ機
r (6 枚箆ラッシェル市均
ーシングル 卜多械ラツシェ峨
│ ラッシェル機トヨコ糸挿入ラツシェル機 ラッシェル機‑l L ジ、ヤカードラッシェル機
L ダフ 、 、 ル 「両面ラッシェル機 ー、ごエレ機 L 両面ジ、ヤカード
ラッシェル機 表 7 レースの幅・大きさによる分類と用途 ( 品 目 )
・広幅レース .細幅レース
( 製 品 幅 ) ( 用 途 ) 36 インチ、 42 インチ 和洋服地 3 / 4 インチ、 3 インチ、/各種禄飾り用 ¥ 6 インチ ¥ . ¥ボディウエア用ノ ~'=',
,.,̲,~...,.I+I)
用 装
円HH
イ京刈I
﹁││十│﹂ し わ
掛 口 ま 肩 袖 裾
‑ショール幅レース 1 8 インチ
・袖幅レース 1 2 インチ .ベッチコート
中富レース 2 9 インチ
/ 、アクセサリー・
・モチーフレース/ひとつの柄や樹栄を ¥
¥切り離してデザインしたものノ月間制す属用 ッ シ ェ ル レ ー ス や ネ ッ ト な ど が 大 半 を 占 め て い る 。
表 9 ‑ 1 の 素 材 や 組 織 に よ る 名 称 は , 綿 の 基
布 に 綿 糸 で 刺 繍 し た も の は 一 般 的 に は 綿 レ ー ス
と 呼 ば れ て 親 し ま れ て い る 。 そ れ ぞ れ の 基 布 や
刺 繍 し た 糸 に よ る 名 称 が あ る 。 ま た 加 工 法 に よ
( 6 7 )
文化女子大学研究紀要第 2 2 集
表 8 レースの用途別による分類 図 9 ‑ 1 素材や組織・加工法 による名称
「礼服・社交服用生地
ト婦人服、紳士服、子供服用生地 アウトウエア‑‑1
※綿レース
トレジャー・スポーツウエアー用生地 ※シルクレース
ウールレース
※ラマレース
」アップリケ用、縁飾り用
「ファウンデーション用生地、ランジエリー用生地 トアンダーウエア用生地
素材・組織 ※ポリエステルレース
※ナイロンレース チュールレース
※ジョーゼットレース
※サテンレース 衣 料 用 インナーウエアー→
ト水着用エラスティック生地
」縁飾り用 ※揚柳レース
「襟・カフス・ショール・スカーフ
「※プリントレース トコードレース 加 工 法 → トリボンレース その他附属 ー斗ーハンカチ・扇子・ストッキング・手袋
」帽子・日傘・アップリケ用・縁飾り用
」※フロッキーレース 図 9 ‑ 2 柄や模様構成による
「カーテン・のれん・テーブルクロス・テーブルセンター 名称
「インテリア用品一→
F