介護福祉専門職育成における専門職団体の役割と課題
〜新潟県介護福祉士会会員の研修ニーズに関する意識調査から〜
岡田 史1)
[原著論文]
キーワード:介護福祉士,介護保険制度,専門職団体,生涯研修
The Rol e a nd Cha l l e nge s of Pr of e s s i ona l Or ga ni z a t i ons i n Ca r e Wor k Spe c i a l i s t Tr a i ni ng
― From theSurvey ofMembersoftheNiigataAssociation ofCertified Care Workers AwarenessofTraining Needs―
Keywords : certified care worker, long-term care insurance system, professional organization, life long learning
In 1987, certified care workers were introduced pursuant to provisions of Certified Social Workers and Certified Care Workers Act, which was followed by Long-Term Care Insurance Act enforced in 2000. Then research was carried out on certified care workers to reveal how their working conditions have changed since the introduction of the act, and also to see what kind of training should be provided to improve their knowledge and skills for the future.
A cross-sectional study was conducted on 1,544 members of the Niigata Association of Certified Care Workers from August to September in 2009, and 389 workers (25.2%)
answered. The result showed that there was no significant change in a type of workplace before and after the introduction of the Long-Term Care Insurance Act. It was also found that after the introduction of the Long-Term Care Insurance Act the major concerns were Caring for demented patients (65.8%, 256people), care skill (58.9%, 229people), and medical knowledge (43.2%, 168people). As for a lifelong training program, the workers who took a first-step training showed more considerable concern to establish the program than those who have not been trained, and there was a significant difference between them
(p <0.001).
It was concluded that a need to establish a lifelong training program with a first-step training for certified care workers should be included.
FumiOkada1)
Abstract
2010年4月7日受付、2010年5月6日受理 1) 新潟医療福祉大学社会福祉学部社会福祉学科
[連絡先] 岡田 史
〒950-3198 新潟市北区島見町1398番地 TEL・FAX:025-257-4462
E-mail:fumi- [email protected]
要旨
介護福祉士は1987年に施行された社会福祉士及び介護 福祉士法の規定に基づき導入された。その後2000年には 介護保険法が施行された。本研究では、この経過の中で 介護福祉士の職場環境はいかなる変化を来たしのか、そ の実態を調査した。また、これからの新たな時代の中で の介護福祉士としての知識・技術を向上させるために は、どのような研修が必要であるか、介護福祉士を対象 に調査をした。
調査対象者は新潟県介護福祉士会会員1,544人で、調査 の型は横断研究である。調査は郵送による無記名自記式 の調査票を用いた。調査期間は2009年8月〜9月の約1 か月間で、389人(25.2%)から回答を得た。調査の結果、
勤務する事業所の種別は、介護保険導入前後で格別の差 を認めなかった。介護保険導入後特に高める必要がある 課題を複数回答で求めたところ、「認知症の人の介護」が 65.8%(256人)、そのための「介護技術研修」が58.9%
(229人)、「医学的知識」が43.2%(168人)と上位を占 めた。介護福祉士としての生涯研修制度については、
ファーストステップ研修受講の有無によって意識につい て統計的に有意な差が見られた(p<0.001)。つまり、
ファーストスッテップ研修の受講経験がある者は、無い ものに比べて生涯研修制度の確立に関心が高かった。
この調査結果から、介護保険導入後の介護福祉士に求 められる課題は、ファーストステップ研修を第一段階と する生涯研修制度の確立の必要性である。研修内容とし ては、特に「認知症の人の介護法」、そのための「介護技 術」、「医学的知識」等の研修が最重要課題となると思わ れる。
Ⅰ 研究の背景と目的
介護福祉士は、1987年政府から第108国会に提案され,
同年5月21日成立(法律第30号)、同年5月26日公布され た「社会福祉士及び介護福祉士法」により、社会福祉士 とともに誕生してから20年以上を経過した社会福祉の分 野における最初の国家資格である。当時、高齢化が進展 し介護需要の拡大が予測される中、シルバーサービスの 参入も見込まれ、多様なサービス提供主体のなかで、
サービスの質を保障するものとして、社会福祉分野にお ける資格職として登場した。法律が成立し資格は誕生し たが、名称独占であり社会的な認知を受けるには更に年 月を要した。そして、2004年社会保障審議会介護保険部 会の『介護保険制度見直しに関する意見』において「介 護職員については、まず、資格要件の観点からは、将来 的には、任用資格は「介護福祉士」を基本とすべきであ る」と報告された。さらに、2006年「介護福祉士のあり 方及び養成プロセスの見直しに関する検討会報告」にお
いては、介護の専門職像としての「求められる介護福祉 士像」が示された。
介護保険制度に関する研究においても、従事する専門 職として必要なことは専門的な知識と技術を持っている ことであり、わが国の介護福祉士の教育は、世界的に見 ても最高水準にある1)と言われている。
近年の認知症等の新たな介護ニーズの顕在化によっ て、2007年の「社会福祉士及び介護福祉士法」改正にお いて、これまで「食事・入浴・排泄等の介護」とされて きた定義規定が「心身の状況に応じた介護」と見直され た。また、同法において資質向上の責務が新たに規定さ れた。
介護福祉士登録者数は、1989年では3,073人であった が、2009年には812,152人と大きく伸長した。保健医療福 祉の連携する専門職の中では後進であるが、高齢化の進 展やそれに伴う要介護者の増加を想定した時、今後果た すべき役割は大きい。
介護福祉士資格取得者を束ねる専門職団体としての社 団法人日本介護福祉士会は、1994年2月に設立され、専 門職団体として倫理綱領を定め、介護福祉士の知識や技 術の向上を目的とした活動を展開している。新潟県介護 福祉士会はその支部として、全国の介護福祉士会の中で も2番目に社団法人化を果たすなど、全国の中でも先駆 的に研修や社会貢献などの事業に取り組んできた。
本研究においては、新潟県介護福祉士会会員を対象と して、介護保険導入により、介護福祉士の職場環境はど のような変化したか、新たな時代の中での介護福祉士と しての知識技術を向上させるためにはどのような研修が 必要であるかを、会員を対象としたアンケート調査によ り明確化し、専門職団体が介護福祉士の生涯研修に対し て果たす役割について考察することが目的である。
Ⅱ 研究方法
1 調査対象者及び調査方法
新潟県介護福祉士会会員1,544人に対し、新潟県介護福 祉士会事務局より質問票を発送し、無記名自記式質問紙 調査を実施した。
主な調査内容は、①介護保険制度開始時の介護福祉士 の職域と現在の職域について、②新潟県介護福祉士会に おいて実施してきた研修事業についての評価、③今後、
介護専門職としての力量を付けていくためには、どのよ うな活動や研修が必要かについてである。なお、実際の 調査票は22項目の設問を行った。
期間は、2009年8月17日〜2009年9月15日である。郵 送での回答の提出を求めた。統計学的検定には、統計解 析ソフトウエアExcel Statcel2 for Windows 2 )を用い た。
2 倫理的配慮
新潟医療福祉大学倫理委員会審査を経て、調査質問を 郵送する際、調査票とともに調査依頼書を同封した。調 査依頼書においては、本調査の趣旨及び個人情報が特定 されることがないよう個人情報の保護は厳守することを 説明した。
Ⅲ 調査結果
1 回答率及び回答者の属性
質問票を配布した1,544人のうち389人から回答があっ た。回答率は25.2%であった。回答者の男女比は男性51 人(13.1%)、女性338人(86.9%)となっており、今回の 調査における回答者の割合は女性が多くを占めていた
(表1)。回答者の平均年齢は、男性では39.9歳±12.21歳、
女性では46.2歳±11.12歳であった。年齢層及び男女の構 成については、40〜50歳代の年齢層の女性が多く、次い で30歳代の女性であった。回答者の居住地域は、新潟 市、佐渡市、上越市、長岡市を中心として県内ほとんどの 市町村に居住する介護福祉士会会員からの回答を得た。
2 資格取得方法
表1に、資格取得方法についてまとめた。実務経験3 年を経て国家試験合格により資格取得が287人(73.8%)
であった。続いて介護福祉士養成施設2年課程の卒業者 が71人(18.3%)であった。
3 現在及び介護保険創設時の職場
表2に、介護保険創設時に働いていた311人の職場を 示す。特別養護老人ホーム、老人保健施設、訪問介護事 業所が上位を占めており、通所介護事業所と続いてい た。
現在勤務する職場では、特別養護老人ホーム、老人保 健施設、訪問介護事業所の上位3事業に大きな変化は見 られなかった。居宅介護支援事業所勤務では16人から42
人に増加し、現在勤務する事業所の4番目となってい る。また、介護保険制度によって介護報酬給付対象と なった認知症対応グループホームは1人から17人に、介 護保険法改正によって2006年に新たに登場した地域密着 型小規模多機能サービスには8人が従事していた。
4 介護福祉士以外に持っている資格
表 3は、介 護 福 祉 士 以 外 の 資 格 の 所 有 状 況 を 示 し て い る(延 べ 人 数)。介 護 支 援 専 門 員 が389人 中183人
(47.0%)、次いでホームヘルパー163人(41.8%)、社会 福祉士17人(4.4%)、社会福祉主事122人(31.4%)であっ た。また、住環境コーディネーターが57人(14.7%)、保 育士48人(12.3%)、レクリエーション関係資格(レクリ エーションインストラクター・福祉レクワーカー・レク リ エ ー シ ョ ン コ ー デ ィ ネ ー タ ー を 合 わ せ る)67人
(17.2%)、その他少数ではあるが、管理栄養士の資格保 持者も見られた。
5 介護福祉士会会員としての活動
表4は、介護福祉士会会員としての活動を示す。介護 福祉士会会員としての活動は、回答者の全てが何らかの 活 動 に 参 加 し て い た。研 修 へ の 参 加 は389人 中306人
(78.8%)、研修会スタッフとして参加は86人(22.1%)、 日本介護福祉士会の全国大会への参加は73人(18.8%)
となっている。
また、講師としての活動も111人(28.5%)、さらに、
社会貢献活動への参加として災害時のボランティア活動 が39人(10.0%)、街頭アンケートや集会参加活動となっ ている。その他、介護福祉士会が実施する相談活動への 参加も見られている。
6 専門職団体として意義ある活動
新潟県介護福祉士会の活動の中で、「専門職団体とし ての意義のある活動」という質問には、230人(59.1%)
が「研修会活動」と答えている。次に、意義ある活動と して「災害時介護ボランティア活動」を153人(39.3%)
が選択していた。
7 今後高める必要がある知識や技術
表5には、今後高める必要がある知識や技術について まとめた結果(複数回答)を示す。特に顕著な回答は、
認知症の人の介護を選んだ人は256人(65.8%)であった。
また、介護技術が229人(58.9%)や医学的知識が168人
(43.2%)であった。介護技術や医学的知識等の身体介 護において必要な項目を選択した回答者が多くみられ た。次に「介護における心理的支援」、「コミュニケー ション」、「ターミナルケア」という順になっている。
8 介護福祉士としての生涯研修制度についての意識 表6は、ファーストステップ研修受講と生涯研修体系 の確立への意識との関連性を示している。介護福祉士と しての生涯研修制度については、ファーストステップ研 表1 調査回答者の特性
51人(13.1%)
男性 性別
338人(86.9%)
女性
39.9±12.2歳 男性
年齢
46.2±11.1歳 女性
介護福祉士の取得方法
287人(73.8%)
実務経験3年後、国家試験合格
71人(18.3%)
養成施設(2年過程)卒業
20人( 5.1%)
NHK学園通信教育終了後、国家試 験合格
2人( 0.5%)
保育士養成施設卒業後1年課程卒 業
1人( 0.3%)
高校福祉課卒業後、国家試験合格
7人( 1.8%)
その他
表2 介護保険開始時と現在の職場の内訳
現在(2009年)
介護保険開始時(2001年)
勤務先
66人(17.0%)
71人(18.3%)
特別養護老人ホーム
52人(13.4%)
51人(13.1%)
老人保健施設
46人(11.8%)
42人(10.8%)
訪問介護事業所
39人(10.0%)
28人( 7.2%)
通所介護事業所
28人( 7.2%)
21人( 5.4%)
療養型病床群
42人(10.8%)
16人( 4.1%)
居宅介護支援事業所
4人( 1.0%)
8人( 2.1%)
養護老人ホーム
5人( 1.3%)
6人( 1.5%)
一般病院
6人( 1.5%)
5人( 1.3%)
身体障害者・児関係の入所施設
2人( 0.5%)
4人( 1.0%)
通所リハビリテーション
4人( 1.0%)
3人( 0.8%)
教育・研究機関
0人( 0.0%)
3人( 0.8%)
その他の病院
5人( 1.3%)
3人( 0.8%)
有料老人ホーム
0人( 0.0%)
1人( 0.3%)
訪問看護事業所
0人( 0.0%)
1人( 0.3%)
児童福祉施設
0人( 0.0%)
1人( 0.3%)
救護施設
17人( 4.4%)
1人( 0.3%)
認知症対応グループホーム
3人( 0.8%)
1人( 0.3%)
ケアハウス
3人( 2.1%)
0人( 0.0%)
地域密着型小規模多機能サービス事業所
1人( 0.3%)
0人( 0.0%)
作業所等の通所施設
1人( 0.3%)
0人( 0.0%)
知的障害者・児関係の入所施設
1人( 0.3%)
0人( 0.0%)
軽費老人ホーム
9人( 2.3%)
45人(11.6%)
その他
21人( 5.4%)
78人(20.1%)
働いていない
表3 介護福祉士以外の資格の所有状況(複数回答)
人数 (%)
183(47.0%)
介護支援専門員
163(41.9%)
ホームヘルパー
122(31.4%)
社会福祉主事
57(14.7%)
福祉住環境コーディネーター
48(12.3%)
レクリエーションインストラクター
48(12.3%)
保育士
18( 4.6%)
調理師
17( 4.4%)
社会福祉士
13( 3.3%)
福祉レクワーカー
12( 3.1%)
学校教員免許
6( 1.5%)
レクリエーションコーディネーター
5( 1.3%)
管理栄養士・栄養士
1( 0.3%)
精神保健福祉士
*389人より回答。
表4 介護福祉士会としての活動(複数回答)
人数 (%)
306(78.8%)
新潟県の研修会に参加
86(22.1%)
新潟県介護福祉会の研修会にスタッフ として参加
73(18.8%)
全国大会へ参加
111(28.5%)
介護福祉会の研修会の講師としての活 動
45(11.6%)
運営委員として参加
39(10.0%)
災害時介護ボランティアとして参加
25( 6.4%)
街頭アンケート活動
24( 6.2%)
介護サービスの情報の公表調査員とし ての活動
22( 5.2%)
社会的地位向上を目指す集会に参加
19( 4.9%)
理事として参加
13( 3.3%)
介護相談の相談員
11( 2.8%)
福祉の職場相談会へ相談員として参加
11( 2.8%)
全国一斉介護相談のスタッフ
8( 2.1%)
全国大会で事例発表
5( 1.3%)
新潟県大会で事例発表
7( 1.8%)
その他
修受講の有無によって生涯研修制度への意識に対する統 計的に有意な差が見られた(p<0.001)。つまり、ファー ストステップ研修を受講したものは、受講経験の無いも のに比べて生涯研修体系の確立に対する意識が高いこと が示唆された。
表7に、専門職団体に求める活動内容を示す。資質向 上のための研修活動が389人中233人(59.9%)、生涯学習 体系の確立195人(50.1%)、参加しやすい研修体制の整備 191人(49.1%)、社会的地位向上のための政治活動134人
(34.4%)、賃金向上のための署名活動102人(26.2%)の 順となっていた。
Ⅳ 考察
本研究は、介護保険法導入後における介護福祉士の職 場環境の実態を、新潟県介護福祉士会会員(389人)を対 象に調査した横断研究である。特に新たな時代の中での 介護福祉士としての知識・技術を向上させるためにはど のような研修が必要かについて焦点を当てた。しかし調 査結果の解釈に当たっては、以下の点が問題となる。第 一に新潟県介護福祉士会員の問題意識が、全国の介護福 祉士の考え方を代表するか否かである。第二に新潟県介 護 福 祉 士 の 全 会 員1,544人 の う ち389人 で、回 答 率 は
25.2%に過ぎず、今回の結果が新潟の介護福祉士の実態 を表すものとは言い難いことである。第三に調査方法が 郵送・無記名・自記式調査票であったため、インター ビュー方式等の他の効率的調査法に比べ、得られる情報 の質に問題があることは如何ともしがたい。従って、今 回の調査結果の解釈に当たっては、新潟における介護福 祉士の一部の意見として、過大な考察(over discussion)
を避けるべきであろう。
しかし今回の調査結果には、我が国の他の地域又は全 国調査で行われた先行研究の結果と一致する傾向も確認 された。まず回答者の男女別年齢別属性であるが、日本 介護福祉士会で定期的に実施する「介護福祉士の就労実 態と専門性の意識に関する調査」の直近の報告書の回答 者の割合と同様の傾向がみられた3 )。
回答結果では、介護福祉士の中で介護支援専門員の資 格保持者は183人(47.0%)であった。日本介護福祉士会 における「介護福祉士の就労実態と専門性の意識に関す る調査報告書」においても、介護支援専門員資格保持者 と答えた人が44.9%になっており同様の調査結果を示し ている。また、厚生労働省の「第12回介護支援専門員実 務研修受講試験の実施状況について」では、介護支援専 門員実務研修受講試験の合格者数累計4)は、介護福祉士
表5 今後高める必要がある知識や技術(複数回答)
人数 (%)
256(65.8%)
認知症の人の介護
229(58.9%)
介護技術
168(43.2%)
医学的知識
150(38.6%)
介護における心理的支援
118(30.3%)
コミュニケーション
114(29.3%)
ターミナルケア
112(28.8%)
介護福祉士の倫理
104(26.7%)
リスクマネージメント
102(26.2%)
介護保険制度
66(17.0%)
記録方法
56(14.4%)
リハビリテーション知識
54(13.9%)
ケアマネジメント
50(12.9%)
福祉制度
41(10.5%)
介護過程
40(10.3%)
障害者自立支援法
39(10.0%)
介護技術の教授法
34( 8.7%)
福祉用具や機器及び環境
27( 6.9%)
権利擁護棟
25( 6.4%)
カウンセリング
20( 5.1%)
第3者評価制度
19( 4.9%)
介護研究方法
17( 4.4%)
栄養と調理
5( 1.3%)
介護サービス事業経営
表6 ファーストステップ研修受講と生涯研修体系の 確率への意識との関連
生涯研修体系の確率 その他 必要
ファーストステップ研修
p<0.001 27人
(30.3%)
62人
(69.7%)
受講者
156人
(54.2%)
132人
(45.8%)
未受講者
表7 専門職団体に求める活動内容(複数回答)
人数 (%)
233(59.9%)
資質向上のための研修活動
195(50.1%)
生涯学習体系の確率
191(49.1%)
参加しやすい研修体制の整備
134(34.4%)
後継者育成のための事業
134(34.4%)
社会的地位向上のための政治活動
102(26.2%)
資金向上のための署名活動
80(20.6%)
介護福祉士業務実態の調査
32( 8.2%)
会員拡大のための啓発活動
17( 4.4%)
介護技術向上のための調査研究活動
6( 1.5%)
その他
は169,182人(34.2%)となり他の専門職と比較してトッ プを占めている。いずれの研究においても共通するもの は、介護支援専門員の資格をもつ介護福祉士の割合は トップとなっていることである。
本調査において特徴的であったのが、アンケート回答 者389人の内、89人(22.9%)がファーストステップ研修 を受講した人たちであった。ファーストステップ研修を 受講したことで、介護福祉士の研修への関心が高まった のか、また、もともと関心のある人が、ファーストス テップ研修を受講したのか、双方の可能性が考えられる が、ファーストステップ研修のような総学習時間が200 時間にも及ぶ研修を希望する介護福祉士がこのように存 在していることは事実である。本研究者が知る限り、介 護福祉士のファーストステップ研修と生涯学習との関係 性についての研究はなされていない。
さ ら に、今 後 高 め る 必 要 が あ る 知 識 や 技 術 に つ い ては、認知症の人の介護256人(65%)、介護技術229人
(58.9%)、医学知識168人(43.2%)となっているが、認 知症の介護は、今後の国民的な課題としてあげられてお り、生活支援の現場実践に従事する介護福祉士にとって も大きな課題となっていることの表れではないかと考え られる。医療行為については、要介護者の日常的な生活 支援の業務の中で、医学的な知識を求められることが多 くなってきたことや、健康状態の確認や介護行為の適切 さを判断するにも医学的知識は不可欠であり、介護保険 制度においても「ターミナルケア・看取り加算」が設け られ、介護職であっても医療的な観察や配慮が求められ ることが、医学知識を学びたいとする理由ではないかと 考えられる。さらに、法律では介護職は医療行為をして はならないことになっているが、夜間や休日の医療職の 不在時において、やむを得ず吸引や経管栄養注入等の医 療行為を行っている現実が報告されており6 )、それらの 安全を確保したい切実な気持ちが、医学知識を高めたい 動機となっていることが推測できる。
今後の課題として、介護福祉士は制度創設より、22年 の経過の中で80万人以上の資格取得者数を数えるに至っ た。その間、専門職団体としての日本介護福祉士会を設 立し、介護福祉士の研修体系の確立に着手した。他の看 護師等の専門職団体の中では後進であり、生涯研修制度 はまだ緒についたばかりである。本調査において明確化 されたように、介護福祉士の研修に関する意識や意欲は 高い。その意欲が、これからの社会における介護の質を 決定すると言っても過言ではない。
専門職団体としては、資格取得者が、その生涯にわた り研修を続けることのできるシステムを構築することが 急務であるが、会員のニーズはその職域と共に多様化し ておりそのための体系化も必要なことである。
また、介護福祉士の職場環境やキャリアパス等7)の人 材育成制度の改善は、資質向上のためのインセンティブ となり、介護福祉士の研修意欲を支えるものになるので はないかと考えられる。そのためには、生涯研修制度へ の第一歩として始まった「ファーストステップ研修」等 の認定される研修を受講修了した介護福祉士を評価する 制度を確立することが、重要である。
Ⅴ 結語
介護保険法導入後における介護福祉士の職場環境の実 態を、新潟県介護福祉士会会員(389人)を対象に調査し た。特に新たな時代の中での介護福祉士としての知識・
技術を向上させるためにはどのような研修が必要かにつ いて焦点を当てた。介護保険導入後、特に高める必要が ある課題を複数回答で求めたところ、「認知症の人の介 護」が256人(65.8%)、そのための「介護技術」研修が 229人(58.9%)、「医学的知識」が168人(43.2%)と続 いた。介護保険導入後の介護福祉士に求められる課題と して、生涯研修制度への第一歩として始まった「ファー ストステップ研修」等の認定される研修を受講修了した 介護福祉士を評価する制度の確立が重要である。
参考文献
1)二木立: 21世紀初頭の医療と介護,勁草社.2001.
2)柳井久江:エクセル統計Statcel2,オーエムエス出 版.2009.
3)社団法人日本介護福祉士会:第8回介護福祉士の就 労実態と専門性の意識に関する調査報告書,日本介 護福祉士会.2009.
4)厚生労働省:第12回介護支援専門員実務研修受講試 験の実施状況について,厚生労働省,2010.
5)社団法人日本介護福祉士会:生活7領域から考える 自立支援アセスメント・ケアプラン作成マニュアル,
中央法規,2000.
6)篠崎良勝編著:ホームヘルパーの医療行為,一ツ橋 出版,2002.
7)全国社会福祉協議会:介護サービス従事者の研修体 系のあり方について(最終まとめ),全国社会福祉協 議会,2006.