• 検索結果がありません。

新潟県における高度外国人材としての 留学生定着に関する一検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "新潟県における高度外国人材としての 留学生定着に関する一検討"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

新潟県における高度外国人材としての 留学生定着に関する一検討

HA XUAN THAO

1 杉本 等2 要 旨

少子高齢化、企業展開の国際化拡大に伴い、高度人材の確保・育成が課題と なっており、その候補として外国人留学生に注目が集まっている。しかし、実際 に日本企業特に地域企業への就職する留学生は決して多くない。とくに、全国と 比較すると新潟県内企業への就職率が極めて低い。そのため、新潟県における留 学生を中心とした外国高度人材の定着が重要課題となっている。

本研究では新潟県を対象とし、留学生の就職状況および就職支援取り組みにつ いて把握した後、留学生の就職に関する実態調査を、新潟県在住の留学生と新潟 県内企業、双方に対してアンケート調査を行った。その結果を踏まえ、新潟県に おける外国人留学生向けの就職支援のあり方を検討した。

キーワード

高度外国人材、外国人留学生、就職支援、新潟県

1  はじめに

1 .1  研究の背景

日本において、少子高齢化に伴う労働人口の減少につながることが懸念されている。少 子高齢化、人口減少社会が本格的に到来する中で、日本の経済活力を高めるためには、少 子化対策はもとより、若者、女性および高齢者の積極的な登用等とともに、外国人材の活 用が重要課題となっている。一方、グローバル経済が進展する中で、グローバルに通用す る高度人材の獲得は課題となっている。今後の日本社会の活力を維持、増進させるために も、多様な価値観、経験、ノウハウや技術を持った高度外国人材1が日本を目指し、働き、

生活したいと思えるような仕組みや準備が必要である。

その一対応策として、第一ステージアベノミクス「

3

本の失」の「成長戦略」の中心 的政策「日本の中もグローバル」について、高度外国人材の受入の促進の方針が決定され、

日本政府は平成

24

年より「高度人材に関するポイント制」2を導入し、より質の高い人材

1 事業創造大学院大学 事業創造研究科

2 事業創造大学院大学 教授

(2)

の受入に力を入れ始めた。

高度外国人材の確保は、大きく海外からの高度外国人材誘致による受入と、日本に在留 している外国人留学生の活用に区分できるが、後者の外国人留学生の活用についての重要 性が高まっている。日本政府は外国人留学生を誘致するために、

2003

年度に目標を達成 した「留学生

10

万人計画」に続き、

2008

7

月には

2020

年を目処に「留学生

30

万人計画」

が推進されているところである。

さらに、外国人留学生が卒業後、日本で働いてもらうためには、日本の全国、とくに地 域で各機関は就職支援を実施している。

平成

30

10

月の厚生労働省の新潟県における外国人雇用状況の届出状況報告により、

平成

30

年度は新潟県において専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人は

1130

人の 状況で、全国(

276,770

)に比べると新潟県の外国人の就職率は決して高いとはいえない 状況である【

5

】。

1 .2  研究の目的

前述で述べた背景の中、新潟県へ就職する人数が少ない理由として、まずは希望そのも のが少ないと考えられるが、一方で、新潟県の外国人向けの効果的な就職促進制度が少な いのも要因と考えられる。

以上を踏まえ、本研究の目的は、新潟県における高度外国人材としての留学生定着を促 進するために、新潟県における外国人留学生向けの就職支援に必要な施策の検討に資する ものとすることである。

以下、本研究では次節において、留学生の就職活動の状況に対する先行研究を明確にす る。第

2

章では、新潟県における外国人受入の状況を明らかにする。第

3

章では、新潟 県と他県における留学生向けの就職支援に関する制度をまとめて、新潟県の就職支援制度 の弱点を明らかにする。第

4

章では、新潟在住留学生の就職状況と新潟県内企業の留学 生の採用状況を把握するために、アンケート調査を実施する。第

5

章では、本研究の目 的である、必要な就職支援取組について検討する。

1 .3  先行研究

近年、日本における留学生の就職に関する調査研究が様々に行われてきている。ここで は、外国人留学生就職意識と就職支援取組や企業の外国人留学生の採用制度に関するもの を、日本の全体的な対象と地域別の対象を分けており、発表された研究の中から主なもの を取り上げていく。

まずは、日本全体を対象として、大学関係者による調査は、留学生の就職支援という視 点から調査が多く、経済産業省(

2011

)では、外国人留学生の就職活動の問題点を明ら かにした。外国人留学生の就職活動の問題点として、就職活動に対する理解不足、就職活 動に関する情報量が少ない、ビジネスシーンでの日本語能力の不足、留学生向けの求人情

(3)

報が少ないことが指摘されている。一方、大学の問題点として、留学生支援を行う人材不 足、学内関係部署との連携不足、キャリアセンター利用率やガイダンスなどの出席率が低 いこと、留学生向けの求人情報が少ないといった課題があることを提示している。そのた め、就職支援の対策として、大学の状況に合わせた支援を行うこと、できる範囲から支援 を行うこと、民間企業・団体・自治体・他大学との連携・活用が求められること、相談窓 口の明確化・学生への継続的な啓蒙活動を挙げることの重要性を提示している。

大学における外国人留学生のキャリア支援のあり方に関する視点から、神谷(

2010

)は、

産官学連携による留学生就職支援の事例分析を通して、大学のキャリア教育の一環として ビジネス日本語教育の導入を提案し、産学官連携による就職支援の強化を指摘した。袴田

2008

)は、企業と留学生を対象に就職と採用に関する意識調査を行い、就職を希望する 留学生が多いものの、企業からの求人がないという状況を報告した。その結果、大学は地 域のニーズを把握し、戦略的に就職支援を行うと同時に、企業が求める高度な日本語力の 指導を行う必要があることを述べている。

地域別の就職支援制度の視点から発表された研究の結果について、土井(

2011

)は、

愛知県が実施した調査を元に、留学生・日本人・企業の

3

者を比較しながら、留学生の 労働市場について分析している。この調査では、留学生の約

6

割が地元である愛知県の 企業を志望していること、日本人学生に比べ外国人留学生の就職活動開始時期が遅いこと などを明らかにした。

末廣(

2013

)は、栃木県の大学に在籍する留学生を対象にした調査で、外国人留学生 は就職活動に活かせる能力として「日本語能力」「専門知識」などを挙げる一方で、「母語 の能力」「母国の事情についての理解や知識」を活かせると考えている割合は少ないと指 摘した。

以上で取り上げた例は、近年の地域別の留学生の就職意識や活動実態の調査である。残 念ながら、新潟県においては、今まで、新潟県に在住している外国人留学生を対象に、就 職やキャリア支援に関する調査は実施されておらず、外国人留学生がどの程度日本または 新潟県での就職を希望しているのか、また、就職活動のどのような点に困難を感じている のかといった現状を明らかにする研究がまだなされていない。

2  新潟県における外国人留学生の就職状況

2 .1  新潟県の外国人労働者の就職動向

1

に示すように、平成

24

年から平成

30

年までの累積値を見ると、「身分に基づく在留 資格」は

14,761

人で、最も多く、全体の

34.8

%を占めた。次は「技能実習」が

14,385

人(同

33.9

%)、「留学」(うち「就学」も含む)が

7,170

人(同

16.9

%)の順となっている。続い て、「専門的・技術的分野の在留資格」3

5,102

人で、全体の

12

%を占めたが、そのうち、

「技術・人文知識・国際業務」が

3,191

人で、同

7.5

%を占めた。一方で、「特定活動」は

(4)

0.9

%と極めて少なく、各在留資格の取得状況においてもその差は大きい。

新潟県の外国人労働者の在留資格の特徴を主要大都市と比べてみるために、平成

30

の外国人の在留資格の取得状況を東京都、大阪府、新潟県の

3

地域で比較し、表

2

にま とめた。

3

地域共に「特定活動」「身分に基づく在留資格」の割合がわずかしか違わない と見られるものの、その他の分野においては異なる傾向が見られる。具体的には、大阪は、

「留学」

28.9

%および「専門的・技術的分野の在留資格」

22.4

%の割合が比較的高い。

一方で、新潟県では、「技能実習」

36.8

%が上記の両地域より比較的高い割合を見せて いる。このことから、新潟県の外国人就職の動向は、「専門的・技術的分野の在留資格」

(うち技術・人文知識・国際業務)を目的とした在留資格取得より、東京と大阪に比べ、

「技能実習」の在留資格取得の割合が高い点が特徴であるといえる。

2 .2  新潟県の外国人留学生の就職動向

法務省の「留学生の日本企業等への就職状況について」の資料から、新潟県における就 職先企業等への在留資格変更許可人員数をまとめたものを図

1

に示す。これは、留学生 の在留資格を有する外国人、即ち外国人留学生が、新潟県に所在する企業等への就職を目

表 1  新潟県における外国人の在留資格の取得状況の推移

(出所)厚生労働省「新潟県における外国人雇用状況の届出状況」各年版より筆者作成 表 2  東京部、大阪府、新潟県における外国人の在留資格別割合

(出所)厚生労働省「新潟県における外国人雇用状況の届出状況」各年版より筆者作成

(5)

的として行った在留資格変更許可申請に対して処理した数である。

1

に示すように、新潟県では平成

21

年から、新潟県で就職している外国人留学生の 増加が続いている。とくに、平成

23

年から平成

24

年の間、人数が急増しているのが特徴

(平成

24

年は前年度に比べ

47.6

%増の

62

人)であるが、平成

24

年から平成

30

年までの間、

増加しない傾向で、毎年約

60

人の留学生が県内企業に就職していることがわかる。さら に、東京都と大阪府と比較すると、新潟県で就職している外国人留学生は極めて低いとわ かった。東京都と大阪府の人数が急増しているのが特徴(平成

24

年、東京都が前年度に 比べ

20.7

%、大阪府が同

16.6

%)であるが、これは全国における在留資格変更許可人員の 数が増加したことによるものと考えられる。

以下にまとめると、新潟県内の教育機関に在籍している外国人留学生数は、他地域に比 べて伸び悩み、県内企業に就職する留学生数は極めて少ない。今後は、県内の教育機関・

行政・団体が、外国人留学生の受入と就職支援にさらに力を入れて、新しい取り組みの構 築または実施している取り組みの改善の必要がある。この目的のために、新潟県が実施し ている留学生向けの就職支援の取り組みの内容と課題を明らかにすることが必要である。

次章では、新潟県と他県との外国人留学生向けの就職支援の取り組みを中心にまとめ、効 果的な取り組みがある他県と比較することにより、新潟県の取り組みの弱点と課題を明ら かにする。

3  新潟県の外国人留学生の就職支援の取り組み

3 .1  全国レベルでの留学生就職支援の取り組み

文部科学省は、成長戦略における「外国人材の我が国企業への就職の拡大」に向け、留 学生 就職促進プログラムを

2017

年度より

5

年間の時限で実施(最終年度

2021

年度)し ている。

27

機関から申請があり、平成

29

年度

6

月に

12

大学(北海道大学、東北大学、山

図 1  企業等への在留資格変更許可人員数の推移(新潟県・東京部・大阪府・全国)

(出所)「留学生の日本企業等への就職状況について(平成

21

年−

30

年)」より著者作成

(6)

形大学、群馬大学、東洋大学、横浜国立大学、金沢大学、静岡大学、名古屋大学、関西大 学、愛媛大学、熊本大学)が採択された。

留学生の国内就職率を

2021

年度末までに

50

%以上とすることを目標に、各大学が地域 の自治体や産業界と連携し、就職に必要な以下のスキルを一体として学ぶ環境を創設する ことが求められている。日本語能力試験

1

級(

JLPT N 1

)以上の日本語能力、日本での 企業文化等キャリア教育、中長期インターンシップ(

1

か月程度)の主な事業内容に基 づいて、採択された

12

大学は「ビジネス日本語教育」「キャリア教育」「インターンシップ」

のほぼ等しい取り組みを実施している。ここでは、先進的な事例として以下の大学の取り 組みを指摘していく。

1

)ふじのくに留学生就職促進プログラム(

SCDP

)【静岡大学】

留学生就職促進プログラムの推進により、連携大学留学生の教育プログラム参加支援、

民間団体とは、インターンシップ・見学受入れ、講師派遣、企業との交流の場の創出、留 学生の募集・採用・育成方法の検討において連携を進め、県内大学等に留学している優秀 な外国人材の日本国内、とくに静岡県内の企業等への就職の促進を目指す。平成

30

2

25

日現在、

SCDP

の受講者数は

134

人となった。そのうちには、静岡大学が

126

人、静 岡英和学院大学が

4

人、静岡県立大学が

1

人と、静岡理工科大学が

3

人である。

2

)山形大学留学生就職即プログラム【山形大学×東北公益文科大学】

活動実績報告により、平成

29

年度

EPPY

の正規生が

15

名と、聴講生が

6

名であった。こ のプログラムは高い「日本語力」、日本国内に就職するための「日本ビジネスの基礎とマ ナー」などの「キャリア教育」、「インターンシップ」を活用した細やかな支援の実施を通 して新たな留学生就職促進「山形モデル」を構築し、山形県内企業や日本企業へより多く の留学生が就職、地域定着することを目指す。平成

30

年度、

EPPY

の修了生は

25

名であっ た。その中では、内定をもらった人数は、県内企業が

9

名、県外が

9

名であった。

3

)北陸・信州留学生就職促進プログラム【金沢大学×信州大学】

北陸・信州留学生就職促進プログラムはプログラム事業を推進することで高度な専門知 識と技術を持ち、日本の企業文化に溶け込んで地域に根付き、北陸・信州地域の産業活性 化と日本の成長の原動力となる高度職業人材育成と輩出を目指し、また、国内企業、地元 企業の魅力を外国人留学生に伝え、企業と留学生の相互の結び付きを深めるための取り組 みを進めることで事業目標の達成を目指す。

3 .2  新潟県の留学生就職支援の取り組み

1

)新潟新卒応援ハローワーク

厚生労働省は、留学生等の高度外国人材の就職支援の拠点として東京、名古屋、大阪に

「外国人雇用サービスセンター」を設置した。それとは別に新潟労働省に同じ機能を担う

「新潟新卒応援ハローワーク」が設置された。

「新潟新卒応援ハローワーク」は当初、日本人で大学・大学院、短大、高専、専修学校(専

(7)

門課程)等の卒業予定者を対象に、就職情報提供やキャリア・コンサルティングを行って いたが、その後、その支援対象を留学生にまで拡大し、就職活動のノウハウや面接の受け 方、職業についての各種情報、合同企業説明会等を実施している。中でも、心理的なカウ ンセリングと職業適性検査の実施を担う「留学生コーナー」は、「新潟新卒応援ハローワー ク」独自のプログラムである。「新潟新卒応援ハローワーク」の取り組みは、就職支援に おいて留学生を日本人学生と同じ枠で対応している点が、新潟における国レベルの支援の 大きな特徴である。

2

)留学生就職支援セミナー

留学生就職支援セミナーは

2007

年度新潟県国際交流協会によって開始され、現在まで、

毎年

10

月頃に新潟市に行われている。

2012

年の

ERINA

(公益財団法人環日本海経済研究 所)レポートによると、

2011

年度留学生就職支援セミナーを参加者数の中には、留学生

31

名、企業・住民が

20

名、その他

20

名、合計で

71

名であった【

14

】。

留学生就職支援セミナーでは、日本での就職活動における留意事項や就業に際して必要 な知識などを提供するほか、県内企業の紹介や企業と留学生との交流会を行う。具体的に は、留学生の就職活動の基礎の提供、留学生の就職に伴う在留資格についての紹介、参加 企業の紹介、企業と留学生との交流会などの内容を実施する。

3

)国際人材フェア・にいがた

「国際人材フェア・にいがた」は、

ERINA

の主催で

2005

年から開催しており、新潟県 内企業と留学生に就職相談の場を提供することを目的としている。新潟県内に在籍する留 学生向け就職支援を行い、卒業後も県内にとどめるように、就職マッチングを行う目的で 開催されている。「国際人材フェア・にいがた」は、

2015

年から

2017

年までの参加企業数 は延べ

240

社、参加留学生数は延べ

968

名、内定人数は延べ

60

名に達した【

15

】。

4

NIIGATA COC

+地(知)の拠点大学による地方創生推進事業

新潟県全体の就職率向上と首都圏を中心とした国内からの人口流入の取組だけではな く、将来的な人口減少対策として環東アジア地域からの新潟県への人口流入体制整備まで を視野に入れることを目指し、

NIIGATA COC

+が開催された。

NIIGATA COC

+は新潟 に在住している日本人学生向けの取り組みとともに、国際化を意識した留学生と一緒に実 施するもの、または留学生向けの事業もある。

3 .3  新潟県の留学生就職支援の取り組みの課題

上記の新潟県と他県の就職支援制度内容のまとめた結果を踏まえ、表

3

に「新潟県と 他県の外国人留学生向けの就職支援取り組みの比較表」を示す。比較結果に踏まえ、新潟 県の留学生就職支援の取り組みの課題を

2

つ挙げていく。

一つ目は、新潟県には就職支援の取り組みはまだ少なく、今後高度外国人材として新潟 県で就職してもらう外国人を増やすために、更なる就職支援に力を入れる必要がある。

二つ目は、新潟県内大学と企業と行政との連携がまだ少ないといえる。

NIIGATA COC

(8)

+地(知)の拠点大学による地方創生推進事業において産官学連携があるが、就職支援を 中心に実施していない。

その他、新潟県は学生を対象とした就職支援事業は既存のものも含めていくつか機会を 提供できているものの、情報の集約を含め、十分な整理がなされていないということであ る。そのため、様々な発行元の数多くのチラシやメール等の中から留学生が必要な情報を 取れなかったり、どのような優先順位で何から参加すればよいのかわからなかったりする

表 3  新潟県と他県の外国人留学生向けの就職支援取り組みの比較表

(出所)筆者作成

(9)

ケースが多い。その結果、集客に結びつかず、参加者数が思うように伸びていないという 問題点がある。今後、留学生向けの就職支援事業をより展開するとともに、現在実施して いる事業に参加の目安となるように、わかりやすく情報を発信することが必要である。

4  新潟県における外国人留学生の就職/採用状況に関するアンケート調査

4 .1  調査概要

外国人留学生へ効果的な就職支援をもたらすためには、留学生の就職についての実態と 留学生の採用の状況を把握する必要がある。そのため、本研究では留学生の就職に関する 実態調査を、新潟県内の企業と新潟県在住の留学生双方に対して実施した。本調査は、ア ンケート調査の方法により以下の

2

つの調査を行った。

1

)新潟在住の外国人留学生を対象とするアンケート調査4

2

)新潟県内企業を対象とするアンケート調査5

外国人留学生の就職

/

採用に伴う課題に関して、外国人留学生側と企業側の認識や実 態・行動を把握し、それらの間に生じているギャップと、それが引き起こす課題の解決方 策について検討した。

4 .2  調査結果の分析のまとめ

4 .2 .1  新潟県における外国人留学生の就職状況

2

に示すように、新潟県内に在住している留学生のアンケートによると、留学生は 就職する企業を決める際には、企業の所在地にとくにこだわらないことがわかった。その ため、留学生に新潟県で就職してもらうためには、新潟県の生活環境を改善したり、満足 度向上に向けて就職先の福利厚生を強化したり、魅力ある街づくりを進めたりすることな ど留学生に新潟県での就職と生活の魅力とメリットを積極的に見せることが必要である。

図 2  就職先を決める際に重視している要素

(出所)アンケート調査結果をもとに筆者作成

(10)

また、図

3

に示すように、日本への留学目的については、日本文化や日本語教育の向上、

日本での生活体験への関心との回答が多く、必ずしも日本での就職を目的としているわけ ではない。そのため、留学生に対して、新潟県へ留学に来る前に、海外で留学説明会や

SNS

の情報発信などにより英語と母国語で、新潟県における就職に関する情報や新潟県の 企業の情報や新潟県の魅力を提供することも必要と考えられる。

就職する際には、あれば役に立つ取り組みに関して、留学生の希望を聞いた。図

4

示すように、一番多かったことは留学生のための街づくりであり、次いでは、日本で働い ている先輩との体験談と日本の企業文化・働き方、留学生向けの心理的なカウンセリング などであった。一方、新潟県内の企業のアンケートによると、企業と大学と連携して、ビ ジネス日本語、日本企業のマナーなどを提案し、企業でのインターシップが大学の単位を 認めるなどの制度を提案した。

しかしながら、就職に成功することは大学や行政や企業だけが努力しても成立しない。

留学生の側は自分自身が就職できるためには、努力することも必要である。本研究の調査 では、就職において留学生がどのぐらい努力しているか把握した。まずは、図

5

に示す ように日本語能力に関する努力としては、アンケート調査によれば、新潟県内の留学生は 全体的に日本能力試験の

N 1

程度と

N 2

程度が

60

%を占めることがわかった。

図 3  外国人留学生の留学目的

(出所)アンケート調査結果をもとに筆者作成

図 4  就職支援取り組みで役立ったもの・あれば良かったもの

(出所)アンケート調査結果をもとに筆者作成

(11)

しかし、図

6

に示すように企業・留学生アンケートによると、企業が留学生に求める 日本語能力は、留学生の現状(自己評価)より高い。また多くの企業は、英語能力があっ ても、日本語能力を有することを求めている。企業側が高い日本語能力を求め、留学生は それに苦労している状況である。このように、留学生の日本語能力と企業が求める日本語 能力がギャップがあっても、留学生が日本語能力向上に向けて努力することがわかった。

また、日本語能力を高めることだけではなく、留学生は英語能力試験や

SPI

試験や専門 に関する資格など就職に役に立つ資格も努力して取得している。とくに、調査によれば、

留学生は日本語能力と専門知識以外、就職するためには、自分で企業の情報を調べること や日本のニュースを新聞、テレビやインターネットで読むことを努力している。一方、新 潟県内の企業のアンケートによれば、留学生を採用する際には、日本語能力と専門知識以 外、外国語の能力と日本企業の仕組みの理解も求める。このように、留学生は企業が求め ることを理解して、自分自身で努力していることがわかった。

しかし、留学生に対する調査の結果によれば、インターネットなどの企業情報を入手す る留学生数が極めて高く、合同説明会、自社による会社説明会など参加する留学生数が少 ないことがわかった。留学生側が就職活動のための準備や実際の活動に対して積極的に取 り組み、参加することも必要である。

4 .2 .2  新潟県における外国人留学生の採用状況

留学生側は、企業を決める際には、企業の所在地に関係なく、仕事の内容や企業の将来 図 5  留学生の日本語能力に関する自己評価

(出所)アンケート調査結果をもとに筆者作成

図 6  留学生採用時に求める日本語能力

(出所)アンケート調査結果をもとに筆者作成

(12)

性や海外支店支社の有無を重視していることがわかった。世界的にブランド力の高い企業 で安心感を持っていることが主な理由と考えられる。また、将来帰国して転職しなくて も、就職した経験があった企業で働くことができることも理由と考えられる。

しかしながら、新潟県内の企業のアンケートによれば、図

7

に示すように、新潟県内 の企業が海外拠点、海外市場をほとんど開拓しておらず、このことも新潟県内の企業が外 国人留学生を積極的に採用しない一つの要因である。さらに、海外拠点がないことだけで なく、留学生の日本語能力や特質などを疑うことも外国人留学生を採用しない要因となっ ている。一方、留学生の側は、日本語能力の自己評価に関して、

N 1

程度と

N 2

程度が多 かった。このように、企業の多くは、留学生に関する情報が不足しており、留学生が日本 人学生とどのような点で異なる魅力を有するかという点を明確に意識できているわけでは ない。

そのため、新潟県における留学生の就職率が高めるためには、留学生向けの支援対策を 実施しながら、新潟県内における企業は外国人材を活用するメリットを認識させることが 必要と考えられる。また、外国人を採用する際の悩みを解消し、留学生がより日本や日本 企業を理解するためには、新潟県内の企業に留学生との交流を提供し、企業向けのカウン セリング、セミナーも必要である。

企業のアンケートによれば、新潟県における留学生を採用していない企業が多かった。

一方で、積極的に留学生を採用している企業もある。企業が留学生採用のために留学生を 対象とした合同説明会への参加、大学の求人、インターンシップなどを実施している。こ のように、新潟県内の企業は留学生の採用の面においても努力していることがわかった。

5  おわりに

ここまで、新潟県を対象とし、「留学生の就職状況」と「就職支援制度」について把握 した。その後、「留学生の就職に関する調査」、「外国人留学生の採用状況に関する調査」

を行い、特徴の把握を試みた。

図 7  外国人留学生を採用しない理由

(出所)アンケート調査結果をもとに筆者作成

(13)

その結果を踏まえ、本章では、新潟県における高度外国人材としての留学生定着を促進 するために新潟県における外国人留学生向けの就職支援のあり方を述べる。

5 .1  ビジネス日本語教育

ビジネス日本語教育に関しては、調査によると、留学生が希望する就職支援の取組は企 業での働き方や企業文化やビジネス日本語などが多かった。新潟県ではすでにビジネス日 本語の授業を実施している大学もあるが、単にスキル獲得だけではなく、企業との連携を 活用して、教室で学んだ知識を活かす場、日本人の考え方、企業文化を理解できる場など を提供することが必要である。また、ビジネス日本語だけではなく、日常会話・交流に必 須な日本語の講座も提供する必要がある。留学生のモチベーションを高め、授業の楽しさ を感じてもらうためには、新潟県内でも日本人学生が運営する日常会話の講座を実施する ことも案として挙げられる。

5 .2  キャリア支援活動

1

)情報発信

留学生の調査によると、新潟での就職情報の入手先として、「インターネット」との回 答が最も多かった。留学生が効果的に情報を取りやすくするためには、

SNS

で積極的な運 営するのも必要である。また、新潟県へ留学に来る前に、海外で留学説明会や

SNS

の情報 発信などにより留学生に新潟県における就職に関する情報や新潟県の企業の情報や新潟県 の魅力を提供することも有効であることが考えられる。主な内容は「留学生・元留学生の 就職体験共通の動画」と「新潟の

PR

動画」である。

2

)体験談の場を提供する

留学生の調査によると、留学生が希望する就職取組は先輩との体験談が最も多かった。

そのため、留学生向けの元留学生と交流できる場を提供することが必要である。新潟県内 の大学の連携を積極的に活用して、ゲストスピーカーとして各大学の新潟県に勤めている 元留学生を招待し、この活動では自らの就職経験を共有することが必要である。

5 .3  課題解決型インターンシップ(PBLインターンシップ)

PBL

とは、

30

年ほど前に北米カナダで始められた学習形態のことであり、「課題解決型 学習」と和訳されている。すなわち、

PBL

型インターンシップとは、産業界や地域団体等 のインターンシップ受け入れ先にある課題に対して、参加学生が主体的かつ自主的に解決 する方法を思考し、実践するインターンシップである【

13

】。

現下、インターンシップはキャリア教育の中に位置づけられ、新潟県内大学で一般的に 行われている。従来のインターンシップは、学生が企業・団体などにおいて設定した実習 期間にての就業体験を重ね、座学では不十分な学習成果を得ようとするものであった。し かし、それでは企業側と教育側の連携によって、事前に一定の就業体験プログラムが策定

(14)

されていることから、学生自身が課題を見つけ、その解決を考え、実行に移すというプロ セスを経験させる要素は希薄であった。

新潟大学は

2014

年度に「企業課題探究型長期・有償型インターンシップ」としてスター トした。

8

月〜

1

月の約半年間近く、学生は企業の一員として業務に取組み、実習の一 部は有給で行われている。またインターンシップ中の活動日報へのフィードバック・集合 研修等、実施期間中を通じて大学教職員・企業担当者が学生と密接に関わり、学びを振り 返って定着させる支援を行っているが、留学生に特化しているわけではない【

9

】。今後、

日本人学生だけではなく、留学生にも特化する取り組みを行うことが必要である。

ここで

PBL

型インターンシップという形式を提案し、留学生に特化する短期型インター ンシップを検討することとした。新潟県内企業と大学の連携を活用して、参加する留学生 と日本人学生が課題発見や問題解決の能力を養うことを目的としており、企業や地域自治 体等の受入先においても新たな知見や提案を得ることができるためには、

2

週間以内企 業と大学の担当教師と一緒にインターシップを実施する取り組みである(図

8

参照)。

PBL

型インターンシップを実施することにより、留学生が課題発見や問題解決の能力を 養うことを目的としており、企業や地域自治体等の受入先においても新たな知見や提案を 得ることができる双方にメリットがある取組である。そのうえ、企業の側も留学生の能力 や知識等の情報をより理解できるし、企業に求められる要素に適切な人材を見つけること がメリットである。

図 8  新潟県の課題解決型インターシップのイメージ図

(出所)筆者作成

(15)

5 .4  今後の課題

以上のように、新潟県における高度外国人材として留学生定着の促進に関する支援取り 組みを述べた。今後、本提案を実施するための組織づくりなど、産学官や産学官金の枠組 みでの定着支援体制の構築が急務といえる。

しかしながら、実施される留学生向けマッチングイベントや合同説明会などの支援取り 組み大学・企業・行政は、企業が集まらない、留学生が集まらないとの課題は常にある。

産官学側は力を入れても、留学生側が協力せず、参加数が少ないと、新潟県における留学 生定着に関して様々に実施した効果が得られない。事例としては、

ERINA

2012

年度の 報告によると、新潟県で行われる「国際人材フェア・にいがた」は長年にわたる継続開催 のため、県内企業の認知度が高まり、企業募集は容易になってきたが、学生の募集に苦労 している【

14

】。産官学が協力するとともに、留学生側が努力することも大切である。

今後は、産学官あるいは産学官金が定着支援のために取り組むとともに、就職における 主体である留学生自身が、就職活動ための準備や実際の活動に対して積極的に取り組むよ うに、就職した

OBOG

などからの意識改革を促す場も必要である。

【謝辞】

本研究を遂行するにあたり、趣旨を理解し快く協力して頂いた、アンケート調査に回答して頂いた企 業と留学生の皆様に感謝の念にたえません。ありがとうございました。

【注】

1 「専門的、技術的」な分野での就労を目的とした在留資格を有する外国人のことである。研究者や 弁護士などの専門職も含まれるが、大学等を卒業後、企業に勤める営業職や技術職なども含まれる

1

】。

2 高度人材に対するポイント制による優遇制度とは、現行の外国人受入れの範囲内で、高度な能力や 資質を有すると求められる外国人の受入れを促進するため、「学歴」「職歴」「年収」などの項目ご とにポイントを設け、ポイントの合計が一定点数(

70

点)に達した場合に、高度外国人材として出 入国管理上の優遇措置を与える制度である【

12

】。

3 専門的・技術的分野の在留資格に該当する主な在留資格は「教授」「高度専門職」「経営・管理」「法 律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」企業内転筋」「介護」「技能」

である【

4

】。

4 新潟県に在住している留学生を調査対象として、

Google

フォームで

2019

11

8

日から

30

日まで 実施し、

101

人からの回答を得た。

5 新潟県内企業を調査対象として、郵便調査で事業創造大学院大学の修了生が就職している新潟県内 企業、

NSG

に配属している企業を含め、

2019

12

6

日に新潟県内企業の

170

社を発送し、

12

25

日まで

91

社からの回答を得た。

そのうち、業種別(製造業

15

社、

IT

・情報通信

7

社、金融

1

社、商業・貿易

15

社、サービス

36

社、

その他

17

社)、従業員数別(

20

人未満

32

社、

20

人以上〜

50

人未満

15

社、

50

人以上〜

100

未満

14

社、

100

人以上〜

300

人未満

13

社、

300

人以上〜

500

人未満

5

社、

500

人以上

12

社)、海外拠点別(ある

12

社、現在はないが、今後設置予定

7

社、現在はなく、設置の予定もない

70

社)。

(16)

【参考文献】

1

.市來圭[

2011

]『グローバル時代の人材として外国人留学生を考える─外国高度人材の卵としての 外国人留学生─』共立総合研究所,

P.14

,参考

2019

12

2

.神谷順子[

2010

]「日本における外国人留学生の就業に関する研究:大学・企業・行政との連携に よる就職支援の効果」,『北海学園大学学園論集』,第

143

号,

P.67-69

,参考

2019

12

3

.経済産業省[

2011

『教育機関のための外国人留学生就職支援ガイド』アジア人財資金構想プロジェ クトサポートセンター,参考

2019

12

4

.厚生労働省『我が国で就労する外国人のカテゴリー』,参考

2019

12

5

.厚生労働省[

2018

]『新潟県における外国人雇用状況の届出状況』,参考

2019

12

6

.末廣啓子[

2013

]「地方圏における外国人留学生の就職に関する実態と課題:栃木県における外国 人留学生のキャリアデザインと企業のグローバル化をめぐって」,『宇都宮大学教育学部紀要』,第

1

63

,宇都宮大学,

P.279-295

,参考

2019

12

7

.土井康裕[

2011

]「愛知県における留学生労働市場の分析─愛知県の平成

22

年度「県内留学生就職 活動実態調査」を基に─」,『名古屋大学留学生センター紀要』,第

9

号,参考

2019

12

8

.日本学生支援機構[

2017

]『平成

29

年度外国人留学生在籍状況調査結果』,参考

2019

12

5

9

.新潟大学教育・学生支援機構キャリアセンター[

2014

]『教育的効果の高い─長期・有償型イン

ターンシップ─大学での実践報告』,参考

2019

12

  

https://www.career-center.niigata-u.ac.jp/img/long_jissen26.pdf

10

.袴田真理[

2008

]「静岡県における留学生の就職意識と企業(製造業)の留学生採用意識」『静岡 大学国際交流センター紀要』,第

3

号,

P.79-93

,参考

2019

12

5

11

.守屋貴司[

2012

]「日本企業の留学生などの外国人採用への一考察」『日本労働研究雑誌』,

No.623

P.29-36

,参考

2019

12

12

.文部科学省,『「留学生就職促進プログラム」選定大学の取組状況』,参考

2019

12

13

.法務省入国管理局,『高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度』,参考

2019

12

14

.山下裕司[

2015

]「自律的人材育成のための

PBL

型インターンシップ:

2013

2014

年度の千葉科

学大学薬学部における実施報告」,『千葉科学大学紀要』

8

P.155–163

,参考

2019

12

15

ERINA

2012

]「新潟県における外国人留学生就職支援の現状と課題─「国際人材フェア・にいが た」の事例分析」,『

ERINA REPORT

No.108

,参考

2019

12

16

ERINA

2018

]『国際人材フェア・にいがた

2018

開催報告』,参考

2019

12

参照

関連したドキュメント

日本人の留学生数は 2010 年度には 42,320 人のところ 2014 年度には 81,219 人と 5 年間でほぼ倍増している ( 図 1)

の 年ぐらい前に 就学生 という呼び名を変えて、

によると 2019 年 5 月 1 日現在の外国人留学生数 1

金沢大学短期留学プログラム(KUSEPKanazawaUmversityShortlemExchange

外国人留学生の就職に関する課題 38.5% 33.8% 32.2% 29.0% 25.5% 24.8% 22.7% 19.8% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0%

・卒業後の留学生の就職率や就職先 ・日本語だけで受験できる学部は ないか ・多文化社会学部に入学しアメリカ等に留学する場合大学か ら奨学金があるのか ・アルバイトとその時給

留学生別科における 10 年間の結果分析に基づく 日本語能力向上のためのー考察 片山 浩子 * ・西原 江里子 ** ・清水 一郎 *** *岡山理科大学留学生別科 **岡山理科大学学生支援部留学生別科担当 ***岡山理科大学工学部機械システム工学科 1.はじめに

り上げられることが多い 6