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メモランダム・クローズの生成発展

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(1)

メモランダム・クローズの生成発展

その他のタイトル Development of Memorandum Clause

著者 亀井 利明

雑誌名 關西大學商學論集

巻 2

号 6

ページ 571‑594

発行年 1958‑02‑28

URL http://hdl.handle.net/10112/00021816

(2)

571 

原則の例外を規定する免責条項である︒

メ モ ラ ン ダ ム

︵ 亀

井 ︶ クローズの生成発展

海上保険における分損不担保および小損害不担保の慣行は十六世紀の中頃より生成発展し︑英国においては一七

四九年にかかる慣行がメモランダム・クローズの下に統合された︒

その後このメモランダム・クローズの各条項が分解し次第に分損不担保および分損担保の特約へ制度的に発展し

ていった︒この歴史的変遷の過程は必ずしも系統的ではないが︑損害填補範囲なる制度の理論的背景をなすもので

ある︒そこで︑本稿はこの歴史的変遷の問題について若干の考察を行おうとするものである︒

メモランダム・クローズは周知の如く分損不担保条項︵第一条項︶︑五彩未満の小損害不担保条項︵第二条項︶お

よび三彩未満の小損害不担保条項︵第三条項︶より成り立っている︒これらの三つの条項は何れも直接損害填補の

しかし︑この三つの条項は多くの共通点を有しているが︑その内容に至ってはかなりの相異がある︒すなわち︑

第一条項は共同海損と坐礁の場合を除いて分損を担保しない条件を規定するものであり︑第二条項は分損は担保す

るが共同海損と坐礁の湯合を除いて五%未満の小損害不担保を規定するものであり︑第三条項は免責歩合が一=%な

メ モ ラ ン ダ ム

・ ク ロ ー ズ の 生 成 発 展

. 

亀 井 利

(3)

者の損害填補責任を各別に規定しているのである︒

メ モ ラ ン ダ ム

・ ク ロ ー ズ の 生 成 発 展

換言すれば第一条項は単独海損不担保

(F PA )

であり︑第二条項は五彩の免責歩合付の単独海損担保

(W A)

であり︑第三条項は三彩の免責歩合付の単独海損担保

(W A)

で あ る ︒

しかして︑第一条項の適用されるものは穀類︑魚類︑塩︑果実︑穀粉および種子であり︑第二条項の適用される

ものほ砂糖︑煙草︑大麻︑亜麻および皮革であり︑第三条項の適用されるものは船舶︑運賃およびその他一切の貨

物である︒このように︑

従 っ て ︑

メモランダム・クローズの煎芽を何に求めるべきであるかという場合︑このような易損性の度合いに応

じて保険者の損害填補責任に区別を設けたのは何時頃かということまで遡及しなければならない︒そのためには海

上保険の地中海時代にまで遡及して考えなければならないことになる︒

結論的にいえば︑ メモランダム・クローズは保険の目的の性質如何すなわち易損性の度合いに応じて︑保険

︵ 嘩 ー ︶

メモランダム・クローズの煎芽は一五二六年のフローレンスの法令の中に見出されるそれ以

前の法令の下においては保険の目的を個別的に表示する必要がなく︑商品という一般的名称を以ってあらゆる貨物

を付保することができた︒しかしながら︑このように保険の目的の表示を不特定にしておくことは保険者にとって

極めて不利であった︒すなわち︑保険の目的の種類によって易損性の度合いが異っており︑あるものは他のものに

比して特に易損性が大であるという湯合がある︒このような場合において︑保険者が保険の目的の性質を正確に知

っていたならば︑契約の引受を拒否するとか︑高額の保険料を要求するとか或いは担保危険を制限するとかの方策

がとり得たはずであった︒しかるに︑保険の目的の表示を不特定にしておき︑且つその性質について何等の告知が るもその他は第二条項に等しい内容を規定するものである︒

︵ 亀 井 ︶

(4)

確かに︑この両者の根抵に流れている思想的基礎は同一であり︑その他になおフローレンスの海上保険と英国の

海上保険とは特別の関係があったものとされている︒すなわち︑

証券の雛形が制定されており︑この保険証券と古い英国の保険証券は勿論のこと現行の保険証券とも著しく似通っ

︵ 註 4 )

ているのである︒これは畢覚フローレンスの慣行が英国に伝わったことに由来するもので︑後者が前者に則ったと

メ モ ラ ン ダ ム

・ ク ロ ー ズ の 生 成 発 展

クローズとフローレソスの法令との関係を強調している︒

行われないとすれば︑保険者は保険の目的それ自体から生ずる危険を測定することが困難となる︒若し︑この危険測

定を誤ったり︑易損性の大なる物品を普通の物品と誤認したりすれば︑保険者は予想外の大損害を蒙ることになる︒

一五二六年のフローレンスの法令は︑奴隷︑果実︑穀類︑葡萄酒︑塩肉︑硫酸︑牧草︑明蓉︑

宝石︑油︑鉄鉱︑陶器︑地金銀︑加工又は鋳造の金銀は商品という一般的名称の中に包含されないものとし︑若し

これらのものが付保される湯合には保険証券に特に表示することを要求するようになった︒そうして︑若しこの表

︵ 註

2)

示を怠ったときは契約が無効とせられたのである︒

このようにフローレンスの法令は易損性物品を特別に表示することを要求し︑保険者が保険の目的の性質に即応

して料率とか契約条件を加減する便宜を与え︑且つ法令に違反する場合は契約を無効として保険者の保護を規定し

ているのである︒かかる規定はフローレンス以前の法令には存在しなかった︒

ステイブンスの如きは﹁メモランダム・クローズは航海中において特に消耗し︑腐敗し︑漏出または損傷し易い

商品や価額が大なるも容積の小なる商品を何れも

G o

o d

s

なる一般的名称を用いて保険するものとすれば︑保険者

︵ 註

3)

は予想外に大なる危険を冒すことになるのでこれを防止するために発生したものである﹂と述べ︑メモランダム・ かかるところから︑

一五二三年のフローレンスの法令には公式の保険

(5)

Gu id on   de  l a   me r 

はフランスにおける海上保険の特異な法源をなすものであって︑

メ モ ラ ン ダ ム

・ ク ロ ー ズ の 生 成 発 展

︵ 註 5 )

考えることは見易い道理である︒このように︑

と考えられ︑且つロンバード商人がロンドンで海上保険業を経営していたという事実よりして易損性物品を特別に

表示して契約をするという慣行も英国に伝わっていたことは間違いのないものと思われる︒易損性物品を特別に保

険証券上に表示して契約しなければならないという慣行は一五三八年のブルゴスの法令や一五五六年のセビリアの

︵ 註 6 )

法令の中にも見られる︒

し か し ︑

一五五六年ないし一五八 フローレンスの法令を始めこれらの法令の規定では易損性物品を特別表示することを要求し︑それによ

って保険者が各自の損害填補責任を加減するという効果を有していたのであって︑具体的に損害填補責任を制限す

る規定ではなかった︒従って︑

で あ る ︒ し か し ︑ フローレンスの法令とメモランダム・クローズとが密接な関係にあったとしても︑

あくまで萌芽がその中に見出されるという程度のことであってその起源とはいえない︒しかして︑

クローズそれ自体の起源が何であるかを明らかにすることは極めて困難である︒何故ならばこの約款は一七四九年

に従来の各種の慣行を一約款に整理したものであって︑その内容は多種多様の諸外国の慣行を受け入れているから

メモランダム・クローズそれ自体の起源ではなく︑同約款を構成している分損不担保条項と小損

害不担保条項の各別にその起源を求めることは可能であって︑既に加藤由作博士の﹁ロイズ保険証券の生成﹂第十

一章によって明らかにされている︒その見解によれば︑分損不担保条項の起源はかのセビリアの法令第四十六条で

︵ 註 7 )

あり︑小損害不担保条項の起源は

Gu id on de  l a   m e r , C   h.

 XX 

A r t .   9 .

である︒前者については若干の異説もあ

って必ずしも通説とはなっていないようであるが︑後者については完全に通説となっている︒

︵ 亀 井 ︶

フローレンスの海上保険と英国の海上保険とは密接な関係にあった 五 四

メ モ ラ ン ダ ム ・

(6)

メ モ ラ ン ダ ム

・ ク ロ ー ズ の 生 成 発 展

︵ 註

2)

︵ 註

1)

︵ 亀 井 ︶

あってその後にメモランダム・クローズが登場したのである︒ 海損法

(H am bu rg is ch e As se ku ra nz un d  Ha ve re yo rd nu ng  v on  1 73 1)

にもかかる慣行を規定するに至った︒

海上保険の国際的性格よりしても英国の海上保険がこれら諸外国の影響を受けていたことは間違いのないところで

S te v e ns ,   R. ,

  An 

Es sa y  o n  A ve ra ge ,  5 th   e d . ,   1 8 3 5 .   p .   21 8 

! ,

; !

お い

て は

︑ ︱

'T he me mo ra nd um   it s e l f   f i r s t   appe ar ed   at   th e  f o o t   o f   o

ur o l   p i c e s   i n t   he   ye

ar 7 4   1 9 .   Bu t  al mo st l l   a   t he   f o r e ig n o u   c n tr i e s  t ha t  h ad   a  co de   o f   i ns ur an ce   l a w s ,   h ad   long e   b fo re   ma de   a  p ro v i si o o f n     s im i l ar   na tu re   in   fa vo ur   of   th e  i n s u r e r .   Th e 

s t i ns t a nc e   wh ic

h  w

e fi n d  

on r e   c o r d i s   ,   i n   th e  p o l i c i e s   o f   th e  c i t y   o f  F lo re nc e  i n   1 5 3 0 . "

とある︒一五

1 1 1 0

年という年代は一五二六年の誤りであることはいうまでもない︒

な お

Wr ig ht , C .  

F ay l e ,  C . E . ,

 

Hi st or y  o f   L l o yd ' s ̀1 9 2 8.   p .   1 4 4 .

では一五二六年のフローレソスの法令

( Fl o r en t i ne   or di na nc e  o f   1 5 2 6 )  

! , ; ! そ の 曲

R

芽が見られるとしている︒

R ea t z ,  C . F ・ , G   es ch ic ht e  d es   E u r op i i is c h en   Se ev er si ch er un gs re ch ts ,  1 8 7 0 .   S .   1 9 2 .  

加藤由作﹁欧洲海上保険法史﹂昭和十九年・︱︱

1 1 0 │

‑ ︱

︱ ︱

︱ 頁

ma ri ne ,  1681)

 

ルプルグ法令第十八条︑ 四年の間において︑当時の海事慣行をとりまとめ︑

五 五

︵ 註 8 )

ルーアンで公刊されたものである︒しかして︑この

Gu id on de

︵ 註 9 )

l a 

me r

においては一んの小損害不担保︑五彩の小損害不担保ならびに分損不担保の規定が行われていたのである︒

かかる

Gu id on de

  la   m

er

の規定は従来において見られなかった新しい慣行を規定したものであって︑

年のオラソダ皇帝フイリップニ世の法令

(L

̀O rd on na nc e  d e  Ph il li pp e 

I I  

po ur e s   l   P ay ,B as e  d   1570 ) 

五条にも一%の小損害不担保が規定され︑更にかかる慣行は一五九八年のアムステルダムの法令第廿六条︑ミッデ

ロッテルダム法令第十七条ならびに一六八一年のフランス海事勅令

(O rd on na nc e de   la  

︵ 註

1 0 )

へと引継がれていった︒また︑バルト海の海事慣行を法文化した一七三一年のハンブルグ保険及び 第廿

一 五

七 〇

(7)

︵ 註

7)

︵ 註

4)

︵ 註

5)

︵ 註

6)

︵ 註

3)

メモラソダム・クローズの生成発展

S te v e ns , i b   i d . ,   p . 2 1 9 .   Be ne ck e, W  .̀ Tr ea ti se   on h   t e  P r in c i pl e o f s     In de mn it y  i n   M ar in e  I n su r a nc e 1 8 ,   2 4 .   v o l .   6 .   p .  

4 6 5 .  

r d . お い

てほ﹁このようにある種の貨物の自然的性質ほ保険者の危険を必然的に増大させる効果を有するために︑そしてまたす

べての種類の貨物を同一の基礎

( an eq ua l  f o o t i n g )

の上におくために種々の約款や特約がすぺての商業国において

採用されている﹂と述べている︒ ベネッケの著書の引用の仕方について問題があるが、

Gow~

ベネッケの見解を次の如く解説している。すなわち、

Ma ri ne   In s u ra n c e,   5t h  e d . ,  

1 9 3 1 .   p . 1 7 8 .

 

I.!おいては﹁これ商品の性質が必然的に保険者の責任に及ぽす影響を平均

し以って各種商品を均等なる地位に置かんとする意図に帰せしめているのである﹂と述べ︑

Se aI n s ur a n ce ,   p. p . 1 5 3  

4 .  

I.!おいては﹁これらの原則ほ易損性物品と同じ立湯に置くことであり︑そのため保険者の危険がある種の物につ

いても他のものより大でなくなり︑且つ貨物の種類を考えることなくして保険料を固定することができるということで

ある﹂と述べている︒

Go ẁ W. ,  M ar in e  I ns ur an ce

̀5 th

 ed••1931.

p . 2 7 .   Wr ig ht

 

F ay l e ,  i b i d . ,   p .p . 1 35 6 .  

すなわち︑プルゴスの法令第一条は葡萄酒︑乾萄葡︑油︑砂糖︑糖密︑塩︑柑橘類︑穀類および梱包さ h た羊毛につい

ては一般的名称を以って保険し得ざるものとし︑これに違反する場合は保険金額より十分の一を差引き︑その残額の一︱︱

分の二に対してのみ保険者が責任を負うことになっていたのである

(R ea tz

̀a .a . 0 .  S .   2 2 8 .

加 藤 博 士

・ 前 掲 書

・ ︱

︱ ︱

五七頁︶︒しかし︑この規定は同法令第廿九条によって改変され︑保険者は︑原則として海上危険によって生じた一切

の損害を填補する責任を有するが︑羊毛︑塩︑葡萄酒︑魚類︑小麦︑裸麦︑大麦および果実の如き易損性物品は例外と

された

( R e a t z , a . a . 0 .     S .   20 4   u .  

2 3 6

.

加藤博士・前掲書・三二六頁および

1 11

六八頁︶︒セビリアの法令第五九条におい

ても奴隷および動物については保険証券上に特別に表示し︑その種類および性質に関して詳細なる記載を必要とし︑若

し︑これに違反する場合は保険者が損害填補責任を免れることになっていた

( R e a t z , a . a . 0 .     S.   2 8 9 .

加藤博士・前掲 書•四三四頁)。

加藤由作﹁ロイズ保険証券の生成﹂昭和二八年・一八六頁︑および一九二頁︒

︵ 亀 井 ︶

五 六

(8)

頭に

メモランダム・クローズの生成発展︵亀井︶

R i p e ,   r t G . ,   D ro i t   Ma ri ti me ,  4 8   e d .   1953`t•国,

N °   2 3 4 8 . ;   La y,   H. G

. ,   A 

Te xt bo ok   of   th e  Hi st or y  o f   M ar in e  I n su r a nc e .  1 9 2 5 .   p .   9 5 . ;   G ow ,  M ar in e,   p .   4.

D ov er , V ・ ,  

Ha nd bo ok   to   Ma ri ne   In su ra nc è 2n d  e d .   1 9 2 4 .   p .   2 5

! 1

G ui do n de   la   Me r

定を一六五六年とし︑同書5th

e d .   1 9 5 7 ,   p . 1 5 .  

l s !

Cl ei ra c

Q J  

Le s  U s  e t   Co ut um es   de   la   Merに基礎をおくものとしている︒しかし︑これは誤りである︒

Gu id on   de   la   Me r, h   C

.  XX 

A r t .   9. C .h

t . A r   8 . 

(この邦訳については加藤博士・ロイズ保険証券の生成

•一九二頁および一九五頁参照)。

Da nj on ,  D . ,   Tr i a te   de   Dr o i t  M ar it im e, 2 8     e d .   1 93 0. t. V, N° 17 31 . 00

り︑ロッテルダムの法令は一六0(Gow,

Ma ri ne

"

p.   5. ;   Lay`ibid••p.

2 4 7 .

;   D ov er ,  H an db oo k,   5t h  e d . ,   p . 1 6

. )

メモランダム・クローズのMemorandumは覚え書き又は注意書きという程度の意味であって︑その約款の冒

と書かれているところからそのように呼ばれているのである︒メモランダ

N. B.  ( No ta   be ne ,  no te   we ll ) 

ム・クローズが制定される以前においても︑これに酷似している約款が存在していたものと想像されるが︑現存す

る史料によればブリストルで使用された一七四六年十月八日附の

︵ 註

1)

のものであって︑その文言は次の如くである︒

6

Me mo ra nd um

I t  

,

i s   Ag re ed   by n a d  be tw ee n  th e  Lo ss ,  th er e  sh al l  be

  an

 

︵ 註

1 0 )

︵ 註

9)

︵ 註

8)

Ab at me en t  of  

Du ke   of   Be df or d  As

su re d  T

opo

nd s pe r  C en t. A  nd   th at   in  C as e  o

f  a

ny  

an d  As su re rs , 

Av er ag e 

Th at   in   Ca se   of   an

y 

号積荷保険証券がその最初

(9)

さ れ

メ モ ラ ソ ダ ム ・ ク ロ ー ズ の 生 成 発 展

L o

s s

  n o t   e x c e

e d

i n

g   F

i v

e  

P o

u n

d s

  p e r   C e n t .   T h e   A

s s

u r

e r

s   b y   A

g r

e e

m e

n t

,  

a r

e  

n o

t   t o   p

a y

r   o l   a

l o

w  

この約款は損害の精算に当って二%の控除をなすことならびに五%の免責歩合を規定している︒当時ブリストル で一般にこのような約款が採用されていたかどうか疑問であるが︑二形の控除を行う慣習は確かに存在していたと

︵ 註

2)

のことである︒一七四六年といえばメモランダム・クローズ制定の三年前であるから︑メモランダム・クローズ制

D u

k e

  o f

  B

e d

f o

r d

号積荷保険証券に挿入されたような約款が相当広く採 用せられていたのではないかと想像される︒この約款は一種の小損害不担保約款であるが︑分損不担保約款の方も それより古くから使用されていたに相違ない︒すなわち︑英国においてはメモランダム・クローズ制定以前におい

︵ 註

3)

て分損不担保約款と小損害不担保約款とが取引の必要に応じて別々に使用されていたのである︒

しかして︑このように別々に使用されていた両約款を一七四九年五月に至ってメモランダムなる標題の下に統合

︵ 註

4)

ロイズ様式保険証券の末段に追加されるに至ったのである︒

一七四九年といえば今日の

L l o y d ' s

C o

r p

o r

a t

i o

n 組成以前の時代であるが︑既にロイズ珈琲店がロンドンにお ける海上保険取引の中心市場として特別の意義を有していた時代であった︒

メモランダム・クローズに類似した約款が特定の保険者によって個別的に使用されていたとしても︑

一七四九年

に至って普通の印刷様式の保険証券へ恒久的に重要な約款を追加印刷することは相当な改革である︒これがために はロイズ珈琲店の全保険者が協力することが必要であって︑おそらく全員の賛成を得てロイズ様式保険証券の本文

︵ 註

5)

中の一条項として採用されたものと思われる︒当時︑勅許会社として海上保険を営んでいた

R o

y a

l

E x

c h

a n

g e

定の由来に照らしても大体この頃には a

n y

h   t

i n

g   t

o w

a r

d s

  s u

c h

  L o s s . "  

︵ 亀 井 ︶

五八

(10)

579 

メ モ ラ ン ダ ム

・ ク ロ ー ズ の 生 成 発 展

不担保条項に

r i c e

五 九

一七九五年現在においては は分損

r u m  

が追加されていたが︑

L o

n d

o n

  A s

s u

r a

n c

e

もロイズ保険者の決定に従ったのである︒しかしながら︑その採用せるメモランダム・クロ

︵ 註 6 )

ーズはロイズのそれとは若干相違していた︒しかし︑次第にロイズ様式のそれに同化するような変更を行っていっ

た よ う で あ る ︒

一 七 五 四 年 に お い て ︑

かの有名な

C a n t i l l o

n v .  

L o

n d

o n

  A s

s u

r a

n c

e

事件が発生した︒この事件はメモランダ

ム・クローズを考察するに当って絶体に無視することのできない事件である︒この事件は保険者が坐礁に基因した

損害だけを支払えばよいのか︑或いは坐礁が発生すればそれと無関係に航海中生じた損害全部を支払わねばならな

いかが争われたのである︒すなわち坐礁と損害との間に因果関係を必要とするか否かが争われたのである︒その判

反するものとして︑そのメモランダム・クローズから

o r

t h

e   s

h i

p   s

t r

a n

d e

d  

決においてほ因果関係を必要としないとされ︑保険者に不利に判決された︒そのため︑二大勅許会社は事の予想に

︵ 註 7 )

なる文言を一時削除していた︒

その代りに

R o

y a

l

E x

c h

a n

g e

のメモランダム・クローズは削除した箇所へ

o r

o t

h e

r w

i s

e   s p e c i a l l y   a g

r e

e d

︵ 註 8 )

る文言を挿入したのである︒この出来事はいうまでもなくメモランダム・クローズの使用文言が曖昧であったため

の︱つの悲刷である︒しかし︑その悲劇の原因となった判決はその後の事件において確認され︑それが法制化され︑

︵ 註

9)

今日においては英国海上保険の常識とされている︒

なお︑その当時の二大勅許会社のメモランダム・クローズの五彩条項には等しく

三劣条項には

f r e i g h t

が列挙されていなかった︒しかし︑その後

L o

n d

o n

A s

s u

r a

n c

e  

~

f r e i g h t を 追 加 し た ︒

︵ 註

1 0 )

ま た

R o

y a

l

E x

c h

a n

g e

tobacco hides London   ~分損不担保条項に

を追加した。更に

A s

s u

r a

n c

e  

︵ 註

1 1 )

s a l t p e t r e

を追加したが︑間もなくこれを廃止した︒かくて︑

(11)

そ の 後 ︑

su nk o r   bu rn t

が追加され︑且つ

メ モ ラ ン ダ ム

・ ク ロ ー

ズ の

生 成 発 展

︵ 註

1 2 )

ロイズ・ボリツイと比較して二三の出入りがあるに過ぎないようになった︒以上のように二大勅許会社はそのメモ

一七七九年のロイズ・サプスクライバー総会で従来より使用して来た海上保険証券を爾今ロイズ保険者の 正式の海上保険証券とすることが確認され︑そのメモランダム・クローズも証券本文の不動条項となった︒また︑

一七九五年の印紙税法の附則においても個人保険者の則るべき標準的海上保険証券としてロイズ・ボリシイを採用 し︑且つ一九〇六年に海上保険法が制定されるや標準的海上保険証券としてロイズ・ポリシイがその附則として掲 げられるに至ったのである︒かくて︑このメモランダム・クローズは完全に不動的な存在となったのである︒勿論︑

ロイズ様式のメモランダム・クローズは一つの標準であって︑これを

Co mm on Me mo ra nd um   Cl a u s e

と称する

︵ 註

1 3 )

のであるが︑これ以外の様式も若干存在していた︒しかし︑その多くは坐礁の後に

su nk o r   b u r n t

の文言を追加

︵ 註

1 4 )

している様式のものである︒

su nk o r   b ur nt

が追加されたのは大体一八六 0 年頃であると推定され︑坐礁に匹敵

︵ 註

1 5 )

する沈没や火災も坐礁の場合と同列に取扱う必要が生じたためである︒

メモランダム・クローズはその制定当時においては比較的貿易界の実状に適していたが何分その第一条項および 第二条項に列挙されている商品が限定されていたため︑大多数の商品は第三条項が適用される結果となった︒この ことは商業社会の発展と共に取引の実情に添わない結果を産み︑そのために適用条項を自由に変更することが行わ れるようになり︑新たに特別約款を挿入するようになった︒その特別約款の︱つが分損不担保約款

( F. P . A. C l a u s e )  

である︒最初の

F. P. A. C l a u s e

はメモランダム・クローズの第一条項をそのま

4

独立させ模写したものであった︒

av er ag e  u n l e s s   g e n e r a l  

に代えて同意語の

p a r t i c u l a r a v e r a g e  

そ の 上 ︑

ランダム・クローズを絶えず改変していたのであるが︑ ロイズは一七四九年の挿入以来一度も改変を行っていない︒

0

(12)

船舶保険においてほ

︵ 亀 井 ︶

というような約款を挿入し︑ 任を自由に加減しようという点にあったと思われる︒ が用いられるようになった︒更に︑絆に関する文言︑衛突に関する文言︑特別費用に関する文言などが追加され︑ 非常に複雑な約款となって行った︒そして︑ で統一的

F . P . A . C l a u s e

が作成され︑それを母体としてロンドン保険業者協会が一九︱二年に

I n s t i t u t e C a r g o  

︵ 註

1 6 )

C l a u s e s   ( F . P . A . )

を作成した︒従って︑

F . P . A . C l a u s e

はメモランダム・クローズが変化発展したものであって︑

メモランダム・クローズが分離し︑その条項が独立の約款となっていくという現象は単に第一条項のみに止らず︑

第二条項および第三条項にまで及んだ︒すなわち︑第二条項および第三条項が変化して︑

︵ 註 1 7 )

のである︒元来︑第二条項は五彩の免責歩合付の分損担保条項であり︑第三条項は三彩の免責歩合付の分損担保条

項であって︑その各々に免責歩合が定められており︑これを特別約款によって自由に協定し変更することが行われ

るようになり︑次第に

W. A.   Cl a u s e  

一八八三年七月十七日にロイズで開催された英国海上保険業者の総会

W. A.   Cl a u s e

となった

へと発展していったのである︒その理由はやはりメモランダム・クローズ

に列挙物品が少なかったためにそれが時代の要求に添わなかったことや保険料の額に応じて保険者の損害填補の責

メモランダム・クローズの下においては五彩とか三彩とかいう免責歩合が付加されているので︑保険価額が大と

なるに従って︑この条件が厳格なものと考えられるようになってきた︒そこで︑この五彩或いは三彩という条件の

厳格さを和らげるために

Av er ag C e l a u s e

と呼ばれる特別約款を挿入することが行われた︒

︵ 註

1 8 )

その目的は結局︑保険の目的を細分化し免責歩合計算の上において被保険者に有利に取扱わんがためである︒

"

Av er ag e  o n  e a c h   v a l u a t i o n   a s   i f  

s e p a r a t e l y   i n s a ‑ r e d ・

̀

` 

メ モ ラ ン ダ ム

・ ク ロ ー ズ の 生 成 発 展

その第一条項が分離し独立したものということができる︒

(13)

︵ 註

7)

︵ 註

5)

︵ 註

6)

︵ 註

1)

︵ 註

2)

︵ 註

3)

︵ 註

4)

船体と機関を別個に評価することが行われ︑場合によってはこの分割が船体から分離して

"

Ma st s, sp ar ts ,  r ig g,   in g, o  b at   an d  m at er ia ls

"

と一層細分割されることが行われた︒貨物保険についても例えば

^^ Av er ag pe ay ab le  

︵ 註

1 9 ) on e  ac h  t en  b al es f  o   c ott n o ,  ru nn in g  l an di ng u   n mb er s.

"

というよ 5

な 約 互 那 が 挿

5

入されたのである︒

このように既存の免責歩合を前提として︑各種の慣習的な

Av er ag e Cl au se

が生成して来たのである︒ところ

が︑商品交通の発展に伴って商品の種類が増加し︑既存の免責歩合に拘束されず自由に免責歩合を協定するように

なり︑このことが特約されるようになってきた︒他方

F. P. . A Cl au se

が次第に発達して来ていたので︑

調節を行う必要もあり︑且つメモランダム・クローズの第二および第三条項の適用を遮断し︑免責歩合は特約で協

定する約款を作成しようとする気運がおこった︒かくて一九ニ︱年にロンドン保険業者協会によって︑

In st it ut e Ca rg o  C la us es   (W .A .)

が制定されたのである︒

Wr ig ht

 

F ay l e ,  i b i d . ,   p . 1 4 4 .   Wr ig ht

 

F ay l e ,  i b i d . ,   p . 1 6 1 . f .     ) . ( 1   S te v e ns ,   ib i d . ,   p .   2 2 0 .

;   G ow ,  M ar in e,   p . 1 7 8 .  

メモランダムの追加を一七四九年とするのが普通である︒しかし同年の何月に行われたかについては問題がある︒本文

において五月としたのは

Go w, Ma ri ne ,  p . 1 3 1 .  

1 1 . よ る

Wr ig ht

 

F ay l e ,  i b i d . ,   p .   1 4 5 .  

例えば︑一七五四年のロソドン・アシュアランスのメモランダム・クローズは

To ba cc o

Hi de

が分損不担保条項に

列挙されており︑五%条項には

Ru m

が追加されており︑

l t S a , F r u i t ,   F lo u   r , S ee d ,  S k i n s ,   F re ig ht

が全然列挙さ

れていなかった︒そしてまた

av er ag e

なる語に形容詞が冠せられ

a l l av er ag e

となっており且つ

ex ce pt G en e r al ,   or h   t e  Si p  s t r, a e d n d

となっていた︒

S te v e ns ,  i b i d . ,   p .   2 1 9 .

;   B en ec ke ,  i b i d . ,   p .   6 . 4 6

;   P ar k ,  

J . A .

,   A 

Sy st em   of   th e  La w  o f   M ar in e  I n su r a nc e ,  

メモラソダム・クローズの生成発展︵亀井︶

‑ 」 '

これとの

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