都道府県議会における特別委員会の 設置状況と地域の政策課題
1Policymaking and Diversity in Japan’s Prefectural Assemblies
馬 渡 剛
要約
本論は、都道府県議会における特別委員会の設置状況から地域の政策課題について俯瞰するとと もに、歴史的な変遷について明らかにするものである。特別委員会は、常任委員会の所管に属さな い特定の案件や幾つかの常任委員会をまたぐ案件、早急な対応が必要な事件に応じて設置されてい る。またアドホックに設置される特別委員会は、各議会でほぼ画一的な所管で常設されている常任 委員会と異なり、臨機応変な設置が可能であり、地域の政策課題を把握する指標となりうる。
目次
1 .はじめに
2 .特別委員会の機能 3 .政策別の変遷 4 .政策課題と地域性 5 .結びにかえて
1.はじめに
これまで日本の政治学の分野において、よ り詳しく言えば地方自治研究では、地方政治 や地方議会に対する研究は未開拓であり、行 政学の観点から焦点が当てられてきた(曽 我・待鳥,2008;馬渡,2010;辻,2015)2。 その理由として、日本は画一的な行政の国だ から地方議会はどこでも同じである」という
認識がもととなり、地方議会は画一的な存在 として見立てられ、全国を網羅した研究はほ とんど着手されてこなかった(松下・村松,
1990:24)。当然のことであるが、地方政治 研究はそれ自体として、少なくとも国内的に も比較の視点を繰り込む必要がある。村松が 指摘するように、東京圏と関西圏ではいくつ かの点で大きな違いがある。これまで地方政 治や地方議会に関する認識は、詳細かつ深く
1 本論では、特別委員会の設置状況が網羅的に入手可能な1947年から2003年までのデータを基に論じて いる。データは、都道府県議会がそれぞれ公刊している議会史や全国都道府県議会議長会による『都道 府県議会提要』(各回)を基に作成した。資料の詳細については、馬渡(2010:291‐293)を参照のこと。
2 打越によれば、地方政治を分析の射程に含める研究には、大別して以下の4つの「スタンス」がある。
すなわち、①中央地方関係の分析を目的とする研究、②自治体内の政治構造や政策過程を目的とする 研究、③選挙研究・投票行動の研究としての地方政治研究、④政党研究あるいは代議士研究の一環と しての地方政治研究、となる(打越,2005:56‐62)。
分析する研究が少ないこともあって、極めて 一般的・概括的なものにとどまり、また地方 政治に対する理解も多様かつ曖昧であった。
例えば、東京の政治に関しては細かく理解し ていても、関西の政治に関してはよくわから ない、ましてや東北や九州の政治については 実は全く知らない、といったところが現実な のではなかろうか。地方議会に対して概して ネガティブな評価を下してきた諸研究は、国 内的に比較の作業を欠いたまま地方議会の一 般論を展開していることを否めない。分析に 際しては、地域性・地域圏に配慮した全体的 な視点が重要であり、極めて限定された複数 の地域の分析から地方政治や地方議会を一般 化することは避けるべきである。
本論は、55年体制期の都道府県議会にお ける特別委員会の設置状況から地域の政策課 題について俯瞰するとともに歴史的な変遷に ついて明らかにするものである。議会研究に あって、とりわけ委員会に着目した研究は、
委員会が立法過程の中心を占める米国議会に おいて最も進んでいる3。本研究分野におけ る関心は、少数に過ぎない委員会に実質的権 限があるのか、とりわけ集合的決定における 委員会の重要性を強調する合理的選択理論の 最前線となっている(福元,2000)。日本の 地方議会を巡る研究は、端緒についたばかり という状況であるとは言え、日本の地方議会 における委員会制度の政治的重要性に関する 研究は未だ着手されているとは言えない。
本稿が着目する特別委員会は、各議会でほ ぼ画一的な所管で常設されている常任委員会 と異なり、臨機応変な設置が可能であり、地 域の政策課題を把握する指標となりうる。換 言すれば、各自治体が抱えている特別な案件 を一部反映する形で議会に設置さる特別委員 会は、地方議会の多様性を明らかにするため の手掛かりとなりうる。
結論を先取りすれば、地域ブロックごとに 特別委員会の設置状況について観察した場 合、そこに地域的な特徴が反映されている。
また都道府県議会では、自民党が過半数の議 席を占め、正副議長はもとより正副常任委員 長ポストを独占するケースが多く見られる一 方で、正副特別委員長ポストについては各会 派間で分配されており、非常に民主的なポス ト配分が行われている。特別委員会の取り扱 う政策課題は、臨機応変に設置される性格上、
全会派のオール議会で対処する必要があり、
それが通常の役職ポストとは異なる配分形式 になっている。
2 .特別委員会の機能
ここでは、都道府県議会における特別委員 会に注目し、その設置状況を観察し、委員会 の機能・政策内容・時代的な変容・議会ごと の特徴についての考察を行う。まずは、特別 委員会を考察する意義を確認するために、都 道府県議会において設置される各種会議につ いて簡単に触れておくことにしよう。
2−1 特別委員会の意義
議会における最終的な意思決定は、全議員 で構成される「本会議」においてなされる。
本会議の議事は、議長が主宰し、地方自治法 及び各議会で個別に制定される会議規則等に 定められた詳細な手続き、ルールに従って運 営され、会議の内容は会議録の形で公開され る。議案は、ほとんどの場合、本会議におい て常設の「常任委員会」に付託され審査がな される。常任委員会は、専門分野別に分かれ ており、議案の審査機能のほかに特定の事 件の調査機能も担う。各議会における常任委 員会の設置状況について確認してみると、設 3 例えば、Davidson and Oleszek (1996: chap. 8.)やRieselbach (1995: chap. 4, 5.)などが挙げられる。
置数の最多は東京都議会の9委員会で、最 少は山梨・新潟・福井・鳥取・香川・高知・
佐賀・沖縄の各8県議会の4委員会である。
但し、常任委員会の数は、2000年に改正さ れた新地方自治法により人口段階別の制限が 廃止され、各議会が条例で自由に設置するこ とが可能となった。ちなみに、この法改正で 常任委員会の設置数を変更した議会は兵庫県 議会(8→7委員会)と和歌山県議会(5→ 6委員会)だけで、残りの議会は新地方自治 法施行前の設置数を踏襲している。なお、改 正以前の地方自治法(109条①)では、東 京都にあっては12委員会以内、北海道及び 人口250万人以上の府県では8委員会以内、
人口100万人以上250万人未満の府県では6 委員会以内、人口100万人未満の府県では4 委員会以内と定められていた。
常任委員会は、多くの議会において行政の 組織に対応した形で設置されている。表2− 1を参照すると、2005年現在およそ半数の 21の議会が6委員会制を採用している。委 員会の名称は、議会によってその組み合わせ は様々であるが、常任委員会は、総務・環境・ 厚生労働・商工・農林水産・建設土木・文教・
警察公安の各部門を組み合わせた構成となっ ていることがわかる。典型的には総務・環境 厚生・農林水産・商工労働・建設土木・文教 警察の構成が多く見られ、全国的にほぼ画一 的といえる設置状況が見てとれる。表では、
他の議会では扱っていない特定の個別の問題 を常任委員会の名称に組み込んでいた議会の 常任委員会に対して網掛けを施したが、それ らは青森県議会のむつ小川原地域の開発を所 管とする「建設むつ小川原企業」と滋賀県議 会の「琵琶湖環境・農林水産」の2例にとど まる。
他方、本稿で取り上げる特別委員会は、常 任委員会と異なり、特定の付議事件の審査の
ため設けられる。国会では、特別委員会は「必 要があると認めた案件、または常任委員会の 所管に属さない特定の案件を審査するために 設けることができる」(国会法第45条)と されているが、都道府県議会においても特別 委員会は、常任委員会の所管に属さない特定 の案件や幾つかの常任委員会をまたぐ案件、
早急な対応が必要な事件に応じて設置されて いる。アドホックに設置される特別委員会は、
各議会でほぼ画一的な所管で常設されている 常任委員会と異なり、臨機応変な設置が可能 である。
上述の会議は、地方自治法や条例によって 定められたものであるが、このほかに法定外 すなわち設置規定や設置要綱、申し合わせ等 の内規で設置された委員会もまた存在する。
法定外委員会の主なものとして議会史編纂関 係や図書室運営関係、広報関係等の委員会を 挙げることができるが、中には一般行政に関 する調査等を行ういわゆる特別委員会と同種 のものもある4。議会史編纂・図書室運営・
広報以外の法定外委員会の設置状況について は、特別委員会と同様の機能を有する法定外 委員会を数多く設置しているのは、福島・茨 城・愛知・大阪・鹿児島の各県議会であった
(馬渡,2008:参考資料編)5。
次に、法定外委員会の中には全員協議会が 存在する6。法定外の会議の中でも上述した 各種委員会のような議員の一部が委員として 参加する形態とは異なり、全員協議会は事実 上議員が全員集合して開かれる非公式の会議 である。全員協議会は、正規の会議ではない ことから議員相互または知事と議員との話し 合いの場となり、それゆえ複雑な利害の絡む 問題等の事前の調整や了解がつけやすい7。 常設の常任委員会とは異なり、各議会が抱 えている特別な案件を調査し問題に対処して いくタイプの特別委員会について、以下にお 4 『都道府県議会提要』各回、全国都道府県議会議長会事務局。
表 2 − 1 都道府県議会における常任委員会設置状況
1999年7月現在
北海道 総務 環境生活 保健福祉 経済 農政 水産林務 建設 文教
青森県 総務企画 環境厚生 農林 水産商工観光労働 文教公安 建設むつ小川原企業 岩手県 総務 環境福祉 商工文教 農林水産 土木
秋田県 総務企画 福祉環境 農林水産 商工労働 建設 教育公安 宮城県 総務企画 環境生活 保健福祉 産業経済 建設企業 文教警察 山形県 総務 文教公安 厚生文化 農林水産 商工労働観光 建設 福島県 総務 企画環境 福祉公安 商労文教 農林水産 土木
東京都 総務 財政 文教 都市・環境 厚生 経済・港湾 建設・住宅 公営企業 警察・消防 神奈川 総務・企画 防災警察 県民企業 環境農政 厚生 商工労働 建設 文教
千葉県 総務企画 農林水産 商工労働社会 衛生環境 都市水道 土木 文教 警察企業 茨城県 総務企画 環境商工 保健福祉 農林水産 土木 文教治安
栃木県 総務企画 厚生環境 農林 経済企業 土木 文教警察
埼玉県 総合政策 総務 環境生活農林 健康福祉 労働商工企業 土木住宅都市 文教 警察 群馬県 総務企画 保健福祉 環境土木 農林 産業経済 文教治安
山梨県 総務 教育厚生 農林商工 土木環境
長野県 総務警察 社会衛生 商工生活環境 農政林務 土木住宅 文教企業 新潟県 総務文教 厚生環境 産業経済 建設公安
愛知県 総務企画 民生労働 衛生環境 企業商工 農林水産 土木建築 文教 治安 三重県 総務企画 生活振興 健康福祉環境 農林水産商工 県土整備企業 教育警察
静岡県 総務 企画生活文化 環境厚生 農林水産 建設 商工労働企業 文教警察 岐阜県 総務 地域県民 厚生環境 県林商工 県土整備 教育警察
富山県 総務企画 教育警察 厚生環境 商工労働 建設企業 農林水産 石川県 総務企画 厚生環境 産業 土木企業 文教公安
福井県 総務教育 厚生警察 産業 土木
京都府 総務 厚生労働 文教 農林商工 建設 警察
大阪府 総務 文化労働 福祉保健 商工農林 土木建築 企業水道 文教 警察
兵庫県 総務 生活文化 厚生 商工労働 農林水産 建設 文教 警察
奈良県 総務警察 厚生 経済労働 建設 文教
和歌山 総務 福祉環境 農林水産 建設 文教
滋賀県 総務企業 企画県民土木 琵琶湖環境・農政水産 健康福祉・商工労働 文教警察
広島県 総務 生活福祉保健 農林 建設 文教 警察商工労働
岡山県 総務 生活環境保健福祉 商工労働警察 農林水産 土木 文教 鳥取県 総務教育 福祉環境警察 農林水産 土木商工
島根県 総務 環境厚生 農林水産 商工建設
山口県 総務企画 厚生 商工労働 農林水産 土木建築 文教警察
香川県 総務 文教厚生 経済 土木
徳島県 総務 経済 文教厚生 土木
高知県 総務 文化厚生 産業経済 企画建設
愛媛県 総務企画 生活保健福祉 農林水産 警察経済 建設 文教
福岡県 総務企画 厚生 商工労働 農林水産 土木 建築都市 文教 警察
大分県 総務企画文化警察 福祉保健生活環境 商工労働観光企業 農林水産 土木建築 文教
佐賀県 総務 文教厚生 産業 土木水産
長崎県 総務 文教 厚生 経済労働 農林水産 土木
宮崎県 総務企画 厚生 商工建設 農林水産 文教警察企業
熊本県 総務 厚生 経済 農政 建設 文教治安
鹿児島 総務警察 農林水産 企画建設 文教商工労働 生活厚生 沖縄県 総務企画 経済労働 文教厚生 土木
出所:『都道府県議会提要』第9回(全国都道府県議会議長会事務局、2000年)
いてその設置状況と委員会の機能、政策内容、
時代的な変容などを詳しく観察する。
2−2 特別委員会の機能
特別委員会が設置されるその目的について 観察した場合、特別委員会は様々な機能を有 することがわかる。すなわち条例等の議案に ついて審査を行うことを目的として、あるい は災害や事件等の突発的な事件に対して対応 を協議することを目的として、特別委員会が 設置されていることがわかる。戦後の都道府 県議会において地方自治法が施行されてから 現在までに至る、1947年から2003年までに 設置された特別委員会の果たす役割・機能に 着目した場合、大きく3つに分類することが 可能である。すなわち、知事主導で提案され
た議案等の審査を行うことを目的として設置 された場合の「知事政策審査型」、災害や行 政職員の汚職の綱紀粛正や事件への調査・対 処を目的として設置された「事件・問題対策 型」、そして具体的な議案として議会に提出 される前段階の総合計画や建設計画、あるい は財政再建への対応策を審議するための「政 策審議会型」である8。
「知事政策審査型」は、常任委員会と同様 に議案審査を目的に設置され、議案の可否に ついて審査する性格を有するため、政策の内 容によって党派間で意見が対立することがあ る。例えば、政治的活動の規制につながる ような屋外広告物条例案や示威行進・運動に 関する条例案は、党派間で可否に関して意見 が食い違うことが予想される。また、町村合
5 各議会とも法定外委員会をほぼ常設化させているがゆえに、設置数の総数が多くなっていることがわか る。この中でも突出して多いのが、愛知県議会と京都府議会で10近い法定外委員会が議員の任期中で ある4年の間に設置され、更に議員の任期をまたぐ形で常設化されている。ちなみに、愛知県議会にお いて設置された特別委員会のそのほとんどが決算関連の特別委員会であり、他議会とは異なり愛知県議 会において各種委員会は特別委員会に相応するという特殊事情があることを勘案し、愛知県議会に関し ては各種法定外委員会を例外的に特別委員会として見なすことにする 。大阪府議会でも、設置された 特別委員会の数は他の議会と比べて寡少ではあるが、愛知県議会のような決算関連以外の特別委員会が 設置されている。なお、この件について愛知県議会事務局の職員に照会したところ、法定外の各種委員 会が特別委員会としての機能を担っているとしている。
6 全員協議会において、具体的にいかなる内容の協議が行われているか確認してみると、議会運営、会議 で提案される諸議案の事前説明、特別案件の調査、議会内人事、県幹部職員挨拶、と様々な案件を取り扱っ ている。多くの議会において全員協議会は、議会運営を円滑にするための会議である(馬渡、2008:第3章)。
全国都道府県議長会による1971年以降に設置された全員協議会についての調査(『都道府県議会提要』
各回)では、未調査の年も存在する。全ての議会の全員協議会を戦後からさかのぼって協議内容にまで 踏み込んで把握するのは難しく、未調査の議会がどうしても残存することになる。
7 『地方議会用語辞典』(ぎょうせい、1976:314)。
8 設置数について見てみると、「事件・問題対策型」と「政策審議会型」が圧倒的多数を占める。その他に 少数のケースとして住民による直接請求議案や議員提出議案が特別委員会に付される場合があるが、北 海道と新潟県の各議会に限定される事例である。なお、特別委員会として、予算・決算関連の審査を目 的とした予算あるいは決算委員会が数多く設置され、それらは「知事政策審査型」の委員会に含まれる。
しかし、予算特別委や決算特別委は、全ての議会で定期的に等しく設置されている委員会である。それ ゆえ、本稿の関心である各地域の政治的な特徴を見ていく目的からは離れるため、ここでは除外した。
具体的な設置状況については、馬渡(2008:参考資料編)を参照のこと。
併のように地域の事情が密接に関連したイ シューは、党派性を超えた案件である。公共 料金や税金の値上げを目的とした増税関連の 条例案に対しては、議会は党派を超えてネガ ティブな意思表示をするであろう。行政の長 たる知事が財政難の中、税収確保のため増税 関連条例を議会に提出したとしても、住民を 代表する立場の議会は住民の負担増に直結す る議案に対しては、当然すんなりと可決させ るわけには行かない。各議会において修正な いし否決を受けた知事提出議案の事例につい て見てみると、公共料金や税金関連の増税関 連議案は、議会から値上げ幅の引下げや税目 を削除するといった修正や否決がなされてい るケースが数多く見られる。また非可決議案 のうち、数にしておよそ3分の1の議案が 徴税・公共料金関連のものであった(馬渡,
2010:第4章)9。
2−3 特別委員会の正副委員長人事
55年体制期の都道府県議会では、多くの 場合、自民党議席が3分の2以上の自民絶 対優位型議会あるいは過半数以上の相対優位 型にある(馬渡,2010:第2章)。自民党が 優位な状況で、特別委員会の正副委員長ポス トは、各会派に民主的に配分されてきた。正 副常任委員長が自民党に独占されるケースが 多い中、なぜ特別委員会では異なる配分がな されてきたのであろうか。
これまで見てきた、政策課題に役職人事の 配分状況を見ていくと興味深い知見が得られ る。すなわち、「事件・問題対策型」の特別 委員会は災害や事件の早急な対応のために設 置され、「政策審議会型」は総合計画等の前 議案段階の案件に対する調査がその主要な目
的となるので、双方とも公益的な性格を帯び ていると言えよう。興味深いことに、常任委 員会の役職人事で正副委員長ポストとも自民 党が一貫して独占している県議会であって も、特別委員会では、正副委員長ポストを各 党派間で割り振っている議会が多い。
表2−2は、都道府県議会の正副議長そ して常任委員会及び特別委員会における正副 委員長ポストについて調べたものである。こ れを参照すると、正副特別委員長ポストを独 占していたのは、群馬と愛媛県議会だけで、
残りの45議会は自民党が役職を独占するこ となく各党派間で分け合っていた。自民党が 37の議会において正副議長ポストを独占し、
また11の県議会において正副常任委員長ポ ストを決して他党に譲らなかったことを踏ま えると、特別委員会における正副委員長人事 は、それ自体として極めて特徴的である。
ちなみに、特別委員会の設置期間について 見ていくと、議員の任期限りで廃止される「臨 時型」の特別委員会と、議員の任期をまたい で長期にわたり設置される「準常設型」の特 別委員会が存在する。具体的にはで見ていく が、神奈川県や沖縄県の基地問題特別委、北 海道の北方領土問題特別委、産炭地を県内に 有する北海道・福岡・佐賀・長崎県議会の石 炭対策特別委などが代表的な例である。日本 炭鉱労働組合は社会党を支えてきた有力な団 体であり、正副常任委員長人事にもこの事情 が反映されていることが了解できる10。
3 .政策別の変遷
表3−1は、新地方自治法が施行された
9 その一方において、北海道議会の1951年の事例のように住民から改正請求のあった道税条例の廃止を 内容とした直接請求議案に対しては、議会は否決という議決を下しており、極端な住民からの廃止要求 には応じなかった事例も存在する。
10 政党と労組との関係については、久米(2005)を参照のこと。
1947年から2003年の統一地方選直前まで に、都道府県議会における特別委員会を各政 策分野別に分類したものである11。本表作成 にあたっては特別委員会の名称を第一の基準
にし、委員会で協議された事項がわかる場合 については、更に協議事項を参照しつつ振り 分けるという作業を行った12。というのも、
特別委員会につける会の名称は、議会が調査・
11 本表作成にあたっては、まずは一度全ての特別委員会の協議案件について書き出した上で、その中から
政策カテゴリーを設けていくという作業を何度か行い、表を作成した。本表の限界点について述べてお くと、各議会に関する調査は議会事務局が行っているが、特別委員会において協議されたその内容にま で踏み込んで記録している議会は少ない。最近の特別委員会の設置状況については一覧表にまとめてい たが、戦後直後までさかのぼって網羅している議会事務局は少なかった。特別委員会における協議事項 については、全国都道府県議会議長会事務局が発行している『都道府県議会提要』(各回)を参照した。
しかし、本資料は1967年以降の特別委員会における協議事項について掲載されているが、四年の任期 中に設置された全特別委員会の協議事項を網羅しているわけではなく、選挙後のある特定の年に設置さ れていた特別委員会を限定的にまとめたデータの一覧にすぎない。不明な点は各都道府県で発行してい る議会史等の資料によって補ったが、その全ての協議案件について調べ上げることはできなかった。
12 また、委員会によっては複数の政策区分をまたぐ特別委員会が存在する。例えば「公害・交通対策特別
委員会」(奈良県議会)のように「公害」と「交通」の区分をまたぐ委員会があり、しかも両方の案件を 扱う場合には、それぞれにカウントした。本稿では特別委員会の名称を第一の基準にし、委員会で協議 された事項がわかる場合は、更に協議事項を参照しつつ複数の区分(この場合は公害と交通の区分)に チェックを入れる作業を行った。なお、地域総合開発事業対策、交通対策、エネルギー対策、基幹交通 対策を含む多くの案件を取り扱う総合的な特別委員会は、「総合開発計画」の区分にのみ含めることにし た。
表 2 − 2 都道府県議会における正副議長・常任委員長・特別委員長の分配に着目した類型
正副議長
人事類型 独占型 振り分け型 混在型
正副常任 委員長 人事類型
自民 独占型
準分配型
分配型 自民 独占型
準分配型
分配型 自民 独占型
準分配型 自民準 分配型
占有型 中間的 分配型
党派間 準 分派型
自民準 占有型 中間的
分配型 党派間
準 分派型
自民準 占有型 中間的
分配型 党派間
準 分派型
正副 特別 委員 長人 事
自民 独占型 群馬
愛媛
自民 準分配型
青森 茨城 栃木 岐阜 石川 鳥取 熊本
新潟 福井 香川
滋賀 山口
埼玉 富山 和歌山
広島 岡山 大分 鹿児島
徳島 高知 島根 佐賀
山梨
分配型 福島 千葉
岩手 宮城
秋田 山形 愛知
三重 静岡 兵庫 奈良 長崎
北海道 神奈川 長野 京都 大阪 福岡
東京 沖縄
11 5 2 10 9 6 1 2
17 1
37 6 3
備考:宮崎県は正副議長人事類型が不明につき掲載していない。宮崎県の正副常任委員長人事は分配型、正副特別委員長人事は準分配型。
総合 開発 県土 利用 計画
行政 機構
・議 会制 度
税金 公共 料金
綱紀 粛正
・事 業適 正調 査
県有 財産 処分
施設 建設
治山 治水 水資 源
電源 開発
エネ ルギ ー
県出 資団 体調 査
公害 環境
災害 冷害 雪害
大会 博覧 会
企業 誘致 地場 産業 振興
公的 施設 誘致
産炭
・鉱 山
物価
︑消 費拡 大︑ 雇用 促進
交通 地 方分 権行 財政 改革
少子 高齢 化福 祉
教育
︑人 材育 成︑ 青少 年︑ 婦人
同和 ス ポー ツ文 化振 興
第一 次産 業振 興
過疎 地域 振興
観光 振興
国際 交流
市町 村合 併
その 他
その 他の 主な 内訳
北海道 14 11 3 10 4 1 1 6 1 5 28 6 13 3 3 4 1 1 15北方領土9 直接請求3
青森 6 1 4 2 9 1 3 4 17 1 5 4
岩手 8 3 1 3 5 3 12 1 4 1 11 3 2 3 1 6 1 2 4 1
秋田 3 5 3 1 2 1 6 1 1 1 1 1 3
宮城 1 2 1 9 1 1 1 1 11 4 3 4 3 7 5 5 1 2 5 2 1 3 山形 5 1 1 5 2 3 2 11 5 8 5 7 4 4 4 2 2 2 2 福島 1 2 1 7 1 1 3 3 1 6 6 3 7 2 5 7 3 3 4 4 2
東京 3 3 5 2 3 1 1 2 1 2 7 2 1 7 1 13 賀詞文案等起草10
神奈川 7 3 1 4 11 7 4 1 9 9 13 12 11 4 3 12 基地10
千葉 2 1 2 1 1 3 1 3 6 1 2 1 5 1 1 2 1
茨城 10 1 1 2 1 3 1 1 1 7 3 4 2 1 3 8 1 1 2 2 2 栃木 19 1 1 1 8 4 9 5 2 4 1 2 14 2 6 6 2 1 1 埼玉 9 2 2 4 11 1 7 8 6 11 1 2 17 7 9 6 1 5
群馬 5 3 3 15 1 8 4 3 2 1 17 2 4 1 2 1
山梨 1 4 3 1 1 1 1 4 1 1 4 2 1 1 4 1 1 1 5 北富士演習地3
長野 1 4 5 2 5 1 1 1 4 3
新潟 5 1 1 5 1 3 6 1 6 38 2 4 4 1 3 3 1 2 2 2 9直接請求6
愛知 6 7 1 5 5 9 11 3 6 7 4 18 16 14 10 2 1 4
三重 3 13 1 8 8 2 3 2 9 7 6 3 14 10 2 6 1
静岡 9 16 1 1 4 1 8 11 3 1 5 11 10 1 1 1
岐阜 3 2 4 1 9 3 7 2 3 3 4 9 12 3 5 2 8 3 1
富山 4 2 1 1 10 2 1 6 5 1 4 1 1
石川 12 1 2 2 9 1 2 3 13 5 4 5 3 1 1
福井 3 5 2 4 1 3 3 2 2 10 12 4 12 2 11 3 1 1 3 1 1
京都 5 1 1 4 1 1 8 4 3 14 6 1 1 11 2 2 1
大阪 1 3 2 2 1 2 2 4 4 3 4 1 2 2
兵庫 2 17 3 9 3 4 2 3 7 3 1 6 1 3 2 3
奈良 17 2 2 3 3 13 11 3 3 5 4 2 10 2 4 1 2 4 4 2 4 和歌山 3 7 2 3 2 10 2 3 8 2 2 5 1 1 14 3 1 12 10 2
滋賀 10 1 1 3 2 2 2 2 5 2 14 4 5 9 6 1 2
広島 5 7 3 3 6 2 4 8 5 2 16 4 16 11 12 11 1 2 4 5 9 3 3 8
岡山 11 1 1 1 7 8 5 1 2 2 3 17 3 1 1 6 3 1 鳥取 18 1 1 1 1 1 2 5 1 12 2 1 2 1
島根 31 2 1 2 1 5 3 3 2 10 2 8 3 1 1 2 7 1 1 3 山口 14 4 4 1 6 2 4 8 1 8 1 2 3 1 2 1 2 2
香川 6 6 5 6 8 9 1 2 10 4 4 4 26 11 4 4 3
徳島 7 5 7 1 1 4 9 2 2 9 1 16 2 2 8 1 1 1 2
高知 3 5 1 2 1 3 1 5 2 1 1
愛媛 4 4 3 5 1 2 5 2 4 2 3 3 4 3 1 1 1
福岡 1 3 7 6 4 2 4 3 3 2 7 12 4 7 4 3 1 1 大分 12 1 4 1 2 1 3 2 6 3 11 5 3 2 3 3 6 1 3
佐賀 6 1 1 1 11 1 4 1 5 3 6 2 2 1 3 1
長崎 12 3 3 4 2 5 1 4 10 2 4 4 6 5 12 6 1 14 1 2 4 宮崎 4 3 4 1 4 7 3 3 10 3 16 5 3 1 2 1 5 6 1 熊本 4 1 2 1 2 4 1 2 10 4 3 7 1 1 10 5 3 2 2 鹿児島 2 1 1 3 10 1 3 11 5 13 3 5 3 2 1 6 3 1 1
沖縄 1 3 1 2 1 3 1 6 2 2 8米軍基地8
315 157 31 124 47 84 154 20 99 53 267 257 122 191 45 37 88 450 224 131 117 37 39 52 77 58 22 31 備考:網掛けは、各都道府県議会における設置数上位3位を表す。
表 3 − 1 都道府県議会における特別委員会設置状況:1947 〜 2003 年
審査している実態を県民に明示する、広報機 能を担っていると考えられるからである。
まずは1947年から2003年までを総合し た場合の特別委員会の設置状況について見て いくことにしよう。表3−1にあるように もっと多いのが、道路・鉄道・空港・運輸等 の「交通」対策関連の特別委員会であった。
山梨・福岡の両県議会を除いた全ての議会が
「交通」関連の特別委員会を設置していて、
その設置数も他の政策区分と比べて突出して 多くなっている。次に多かったのが「総合開 発計画」対策の特別委員会で、この特別委員 会もまた長野・高知両県議会を除く全ての議 会で設置されている。以下、「公害・環境」、「災 害」、「地方分権・行財政改革」の特別委員会 と続く。
表3−1では、各議会において設置件数 上位3位に網掛けを施した。なるほど、全国 レベルで上位5位の「交通」「公害・環境」・
「災害」・「地方分権・行財政改革」の各特別 委員会は、各議会でもトップ3に位置してい る場合が多い。特に、「交通」関連対策の特 別委員会は、35の議会で上位3位以内に入っ ている。
次に、政策内容の時系列的な変容について 見てみる。表3−2は、4年の任期中に設置 された特別委員会について、政策区分ごとに その設置件数上位3位の推移を表わしてい る。戦後第1回目の統一地方選が実施された 時期区分の1947−51年期において最も多 く設置されているのは、「行政機構・議会制 度」対策関連の特別委員会(設置数36)であっ
表 3 − 2 都道府県議会における特別委員会の設置数・上位 3 位
第1位 第2位 第3位 第4位 第5位 1947-51年 行政機構・議会
制度 36 災害 33 地方分権・行財
政改革 22 綱紀粛正 16 県有財産処分取
得 16
51-55年 災害 38 行政機構・議会
制度 17 綱紀粛正 16 地方分権・行財
政改革 14 エネルギー 14 55-59年 地方分権・行財
政改革 40 行政機構・議会
制度 20 災害 18 総合開発・県土
利用計画 10 交通 9
59-63年 総合開発・県土
利用計画 33 災害 22 交通 19 治山治水水資源 14 企業誘致・地場 産業振興 14 63-67年 総合開発・県土
利用計画 48 交通 35 災害 18 治山治水水資源 16 企業誘致・地場 産業振興 13
67-71年 交通 47 公害 34 総合開発・県土
利用計画 33 災害 18 治山治水水資源 17
71-75年 交通 39 総合開発・県土
利用計画 36 公害 34 治山治水水資源 17 企業誘致・地場 産業振興 14
75-79年 交通 37 公害 32 総合開発・県土
利用計画 22 治山治水水資源 22 災害 19
79-83年 交通 41 公害 23 総合開発・県土
利用計画 21 治山治水水資源 21 災害 14
83-87年 交通 45 企業誘致・地場
産業育成 26 教育・人材育成 20 公害 19 総合開発・県土 利用計画 18
87-91年 交通 40 企業誘致・地場
産業育成 22 総合開発・県土
利用計画 21 公害 19 少子高齢化・福
祉 16
91-95年 交通 43 公害 26 少子高齢化福祉 20 総合開発・県土
利用計画 19 企業誘致・地場 産業振興 13
95-99年 交通 37 地方分権・行財
政改革 26 少子高齢化福祉 23 公害 23 総合開発・県土 利用計画 20 99-2003年 地方分権・行財
政改革 43 交通 28 少子高齢化福祉 26 公害 23 企業誘致・地場 産業振興 20 備考:数字は、特別委員会の設置された数