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日韓社会科教育比較考

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(1)

静岡大学教育学部研究報告 (教 科教育学篇 )第 36号

(2005。

3)67〜

88

日韓社会科教育比較考

(5)

一一韓国中高校生の日本と日本文化への意識・行動の特徴と相互理解教育の課題一一

A Comparative Thought of Social Studies in Japan and Korea (5)

馬 居 政 幸・李 明 熙・夫 伯 夫・関 根 英 行・宋 在 鴻

Masayuki UMAI,Myunghee LEE,Baek PoE,Hideyuki SEKINE,and,Jaehong SoNG

(平

16年 9月 29日 受理

)

1日

本調査研究の経緯 と概要

我々は

95年

度か ら科学研究費補助金

(研

究代表者馬居

)に

より韓国青少年の 日本 と日本文化への接 触状況や評価 に関する調査研究を次の 4期 にわた り実施 してきた。

I期

:95年 度

  (国

際学術研究 )「 韓国における日本の大衆文化についての調査研究」

第 Ⅱ期 :96〜 98年

(国

際学術研究 )「 韓国における日本の大衆文化についての調査研究」

第Ⅲ期 :99〜 01年

(基

盤 研 究 B2)「 韓国における日本文化開放 についての調査研究」

第Ⅳ期 :02〜 04年

(基

盤 研 究 B2)「 韓国における日本文化開放 と韓 日相互理解教育 についての 調査研究」

第 I期 では、ソウル市での調査 において、戦後

(解

放後 )50年 を経てもなお反 日意識が育成 され続 ける社会過程 を把握す る一方で、 日本の大衆文化が韓国青少年の 日常生活に広 く浸透 し、 しかも、初 等学校→ 中学校→高等学校 と成長するにしたがい接触頻度や関心・意欲が高まる傾向があることを確 認できた。

第 Ⅱ期では、調査地 を韓国全土 (ソ ウル市、大田市、釜山市、春川市、光州市 )に 広 げ、 3年 間の継 続調査 を実施することにより、 日本文化の青少年への浸透拡大 と反 日意識 に基づ く非難の減少傾向を 把握 した。その背後 に、社会意識的には

OECD加

盟 に象徴 される経済力や政治力への自信、社会構造 的には新中間層の定着 と日本文化に違和感のない若者

(新

世代 OX世 )の 増加があることを明 らか にした。加 えて

97年

末の経済危機 と大統領選挙 に伴 う日本文化の評価への影響調査か ら、次の二つの 社会過程の進行を明 らかにした。その一つは、経済成長 と民主化の流れが相互に補完 しつつ定着 し、

経済危機や選挙による変化を吸収する新中間層の拡大 と社会意識の成熟化が進行 していることである。

も う一つは、急激な情報化 と世界化

(国

際化 )に より、反 日意識の前提 にある自民族 中心主義的価値 意識の相対化の進行である。

第Ⅲ期では、

00年

度の時点で 日本文化開放政策実施前後の韓国社会の変化を次の三点 にま とめるこ とができた。第一 に青少年の世界に日本文化が リアルタイムで広がる社会的基盤が成立 していること。

第二に青少年の 日常経験 と結びつ く行動や文化の レベルで、 日本 と日本人に対す る肯定的・積極的な 興味や評価が高まる傾向があること。第三 に日本文化開放施策は開放方法や進行度の問題 とは別 に、

日本文化や 日本人への拒否感を和 らげる契機 になつていること。

67

(2)

68    0李 熙・夫 夫・関 根 行・宋

ところが

01年

2月 実施の質問紙調査で日本へのイメージがプラスからマイナスに大きく変化したこ とが明らかになった。いわゆる教科書問題の影響 と考えられ、より詳細な調査を実施。その結果、次 のような日本批半

Jの

三種の層と二種の問題点の指摘を把握 した。第 1の 層は、自己の経験をもとに日 本批判を展開できる中高年の男女

(I日

世代

)。

直接経験者の高齢者に加え、朝鮮戦争で荒廃した国土に 生まれ、復興の厳 しさとともに育つた

40〜 50代

も合まれ、教科書問題に対 して最も厳 しく反応 した 層である。第

2の

層は、経済成長後の韓国に育つた

20代

後半から

30代

にかけての新世代 と総称され る男女。旧世代に対抗 し日本文化を積極的に摂取。本来は教科書問題より自分の生活や子どもの進学 を優先させる層だが、親類縁者から過去の苦難を当事者の情感を伴って直接感得ができた世代。子ど も時代に獲得 した知識 と感情のセットが蘇える。第

3の

層は、急激に普及したインターネットの世界 から学ぶ 10代 の男女 (N世 代

)。

PCを 自在に操作する中学生を典型に、最も新 しい世代がインターネッ トを介 して最も古い旧世代の経験に基づ く知識 と感情を獲得する。インターネットの普及が却つてハ ングルでしか解せない閉じた言語空間の密度を高め、旧来の日本批判再生産の新たな社会過程が形成 されつつあることを明らかにした。他方、このような日本批判に対し、①感情的になつてはならない、

②韓国の教科書にも問題がある、との指摘がなされていることも確認した。

第Ⅳ期では、上記の調査結果をふまえ、次の観点から調査研究を実施 してきた。第一に、日本文化 開放政策の進行に伴 う韓国青少年の意識 と行動の変化把握のための継続・発展調査である。第二に、

日本理解・批判に関係する多様な学習機会等の青少年への影響とその社会的文化的基盤を解明する調 査である。第三に、日韓の相互理解教育のプログラムの開発である。

このような 4期 にわたる調査研究の最終年度にあたる本年 (04年 )は 、第Ⅳ期の最終年度の調査研 究とともに、

10年

間蓄積 してきたデータを総合的に検討する作業を進め、日本 と韓国双方の研究学会 等で発表に努めてきた。本稿は、その中から特に中高校生、の質問紙調査を中心にした 4期 10年 にわ たる継続調査 と

02年

W杯 共催や大統領選挙で顕著になつた変化を踏まえた新調査の分析に基づき、日 韓両国における相互理解教育推進のための新たな課題を提示することを目的に、日本教育社会学会第

56回

大会 (04年 9月 12日

 

東北大学 )に おいて発表 した「韓国中高校生の日本 と日本文化への意識・

行動の特徴 と相互理解教育の課題 ‑10年 間の継続調査をふまえて一」をもとに、発表時の論議を踏ま えて加筆修正 したものである。

なお、本稿は、日本教育社会学会第

56回

大会での発表時の表題からすれば、静岡大学教育学部研究 報告

(人

文・社会科学篇 )に 発表 してきた 「韓国における日本大衆文化の調査研究」のひとつ として 報告すべきテーマとみなされるかもしれない。 しかし、本調査研究全体の最終目的であり、特に第Ⅳ 期調査研究のテーマでもある韓国と日本の間における相互理解教育の推進は、両国とも歴史教育を中 心に社会科 とい う教科が担つてきた課題であった。このことをふまえ静岡大学教育学部研究報告

(教

科教育学篇 )で 発表 してきた「社会科教育比較考」の (5)と して報告するものである。

2.調 査対象者 (初 等学校生を含む )の 概要 (03年 度調査から

)

はじめに、現在の韓国社会で育つ子どもたちの特徴を知るために、

03年

度調査のファイシー トの質 問項目から代表的なデータを紹介 したい。

まず、図 1と

2を

みると、「一人つ子」を合めて、長男が 71%、 長女が 64%で ある。家族のなかに 子 どもは二人が定着し、それも男女二人の家庭が多いことを示している。韓国もまた日本 と同様に、

長男、長女の時代にある。また、図 3か ら、平均家族成員数は約 4人 、ここでは図示できないが祖父 母いずれかと同居する子ども

'ま

1割

である。かつて多世代が同居する大家族制が特徴とされた韓国

(3)

日韓社会科教育比較考 (5)

期 酬

家族 の人数

(平

)

自分 ひ と りの部屋 を持 つて いる

塾や習 い事

携 帯電話 の所有率

インターネ ッ ト利用者の割合

(―

日平均

)

図 8  インターネ ッ トの主な利用場所

(複

数回答

)

7

80.0 700 60.0 500 400

30.0 200 100

0.0

60.0

500 400

30.0

200

100

00

︑ ト

ス ち

´

ゆ 滸 滸 潔

(4)

70    馬 居 政 幸・李 明 熙・夫 伯 '夫 ・関 根 英 行・宋 在 鴻

の家族 においても、核家族化 と少産化が重な り、規模の縮小化が進行 していることを示す。 さらに図

4に

示す ように、 69%が 自分の部屋を持ち、個室文化の形成 も確認できる。

塾や習い事の教室 に通 う子 どもたちの割合を示す図 5か ら、初等学校

(6年

)57.3%、 中学校 (3年

)

38.5%、

高等学校 (2年 )30.6%、 平均 襲.2%が 専門塾

(英

・数・論述 )に 通 う。中学か ら高校へ と減 少するのは、日本 と異な り、高校では放課後 も学校 に残 り、場合によっては午後 12時 近 くまで教室で 先生の監視の下 に受験勉強をする習慣があるか らと思われる。 また、 ここでは図示できないが、すで に父親の 41.5%、 母親の

32.3%が

高等教育

(専

門大学 +大 学校 )卒 の学歴 をもつ高学歴社会 にな り、

02年

度の高等教育進学率は

79。

7%で ある。先の個室保有率の高 さも合めて、子 どもたちの 日常生活の なかに学校化 された世界が拡大 していることが確認できる。

加 えて、近年の特徴を示すのが図

6、 7、 8で

ある。携帯電話 を初等学校 (6年 )は 約

1割

、中学校

(3

年 )は 46%、 高等学校 (2年 )は

66.6%、

平均では

40。

7%が 所有 し、 自分専用のパ ソコン保有率の平 均は 42%、 専用はないが家にはあるが

54.5%、

あわせて 96.5%が 自宅にパ ソコンを持つている。しか も、インターネ ッ トを 41.1%が 自分専用の、

55。

6%が 自宅のパ ソコンにより、 78%が 宿題のために、78.5%

が趣味や関心のために毎 日利用 している。韓国の子 どもたちの間に広がる「情報化」の波は、ハー ド、

ソフ ト双方において、 日本の子 どもたちよりも大きい。

いずれの数値 も、韓国の子 どもたちが、 日本 と同等 もしくはそれ以上に「個人化」が進行した 豊 かな社会 "で 育つていることを示す。それは子 ども一人ひ とりの個性や欲求に応 じることが可能になっ た社会

(明

)で ある一方で、一人の人間 として社会的に自立するための新たな課題

(暗

)を 日韓両国 の子 どもたちが共有 していることを示唆 している。

そ して、 この両国の子 どもたちが共 に積極的に受け入れたのが、 日本の漫画やアニメである。いわ ば、韓国 と日本の子 どもたちは、社会的条件だけではな く、取得する情報 もまた共有 してきたわけで ある。その特徴 を日本文化への接触状況 に関する継続調査の結果か ら考察 したい。

3.日 本文化への接触状況の調査結果か ら

1)7回 (96、 97、 98、 99、 00、 01、

03)の 調査結果か ら

我々は冒頭で述べたよ うに、

95年

にソウル市で 日本文化に関する調査を開始 し以来、初等学校 (5年 生 Or6年 生

)、

中学校 (2年 生 Or3年 生

)、

高等学校 (2年 生 )を 対象に継続調査 を実施 してきた。その 中心の一つが 日本文化の接触状況に関する調査である。そのなか ら、

96、 97、 98、 99、 00、 01、

03の 各年 にソウル市、大田市、釜山市、春り │1市 (96年 のみ

)、

光州市で実施 した調査結果 に基づき、日常的 に日本文化に接触 している者 としていない者の割合の変化を折れ線 グラフで示 したのが図表

9‑1〜

7で

ある。このグラフ上の変化に 10年 間にわたるインタビュー調査の結果を加えなが ら、韓国青少年 の 日本文化指への接触状況の特徴を指摘 したい。

(1)翻 訳漫画、ゲーム

社会状況の変化や文化開放政策にかかゎ りなく子 どもたちの日常に浸透していることを示すのが、

図 971「 ① 日本の翻訳漫画」 と図 9‑3「 ③ 日本のゲーム」である。

特に、日本翻訳漫画は

96年

時点から接触者は

8割

を超え、その後も若干の増減はあるものの基本的 に

8割

前後を維持 している。また、日本ゲームも

96年

時で

6割

強であったのが

99年

8割

弱にまで あが り、その後、やや減少 し

03年

には

6割

強になったが、多数派であり続けていることは日本翻訳漫 画と同様の傾向である。

日本の青少年向けのマンガ雑誌に掲載された漫画が、

90年

代に東アジア全体に不法コピーによって

(5)

日韓社会科教 育 比較考

(5)

広がつたことはよく知 られて しる。韓国では既に

70年

代か ら日本の漫画はコピーされて販売 されてい た。しか し、

90年

代に入つて 日本の出版社 との正式契約 を結ぶ ことによつて、合法的に月刊雑誌や単 行本 として、多い ときは数十万部の単位で出版 されるようになつた。

したがって、図

9‑1は 98年

の金大中大統領就任 とともに開始 される日本文化開放政策以前か ら、

日本の青少年向けの漫画が、韓国の子 どもたちの手に渡るシステムは完成 していた ことを示すデータ といえよう。その意味で、漫画 に関する限 り、 日本文化開放の直接的な影響はない といえる。

ただ し、韓国社会 における日本漫画の歴史が長い とい うことは、 日本漫画によつて育つた子 どもた ちが既 に成人 し、韓国社会 を担 う世代 になつているとい うことで もある。またそれは、 日本漫画の翻 訳・出版を通 じて、韓国の漫画産業が育成 される過程でもあつた。現在、「韓流」 との総称 により、 日 本 も合めて東アジア全体 に広がる韓国文化の基盤の形成 に、違法 コピー期 も合めた長年 にわたる日本 漫画の翻訳・出版が寄与 していることを指摘 したい。その象徴的な出来事が、昨年来の大きなブーム となつている 「冬のソナタ」を支持す る人たちが、 日本の少女マンガ と共 に育った最初の世代である

40代

か ら

50代

の女性であるとい うことと考える。

同様のことは、ゲームにもあてはまる。漫画 と異な り、スター トは

90年

代 に入つてだが、本調査開 始時期 には、韓国青少年の大多数が 日本のゲームに接 していた。 もっとも、制作・流通 システムが漫 画 と異なるため、漫画ほ どの広が りはみえないが、現在、韓国産のゲームが 日本か ら自立 し、世界市 場で 日本のゲーム産業 と競争関係にあることは、漫画産業 と同 じである。

96年 97年 98年 99年 00年 01年 03年

9‑2 

②日本の映画 (ア ニメ

)

96年 97年 98年 99年 00年 01年 03年

(2) 

日本の映画

(ア

ニメ

)

漫画や ゲームの後 をおいなが ら、 日本文化開放政策 の も とで よ り積極的 に拡大 した ことを示す のが

図 9‑l  ①日本の翻訳漫画 図 9‑3  ③日本の大衆歌謡

図 9‑4  ④日本のゲーム

96年 97年 98年 99年 00年 01年 03年

(6)

72   

幸・李 熙・夫 夫・ 関 行・宋

図 9‑2「 ②映画

(ア

ニメ

)」

である。 日本製映画

(ア

ニメ )は 、文化開放以前では違法 にコピーされ た ビデオによって しか見ることができなかったが、文化開放政策の推進 とともに、合法的かかつ劇場 において接することが可能 になったか らである。ただ し、実質的に日本アニメは、開放前か ら韓国の 子 どもたちの生活に浸透 していた ことを指摘 しておきたい。韓国でテ レビ放映 されるアニメ番組の大 部分は、 日本アニメの翻訳であつた。 したがって、今後、韓国映画 と同様 に韓国アニメも日本アニメ を凌駕する可能性があることも指摘 したい。既に日本アニメを支える韓国アニメ産業 とアニメーター はかな りの数 になる。

(3)大 衆歌謡

日本文化開放の影響 を、その可能性 も合めて、もつとも強 く受けているのが図 9‑3「 ③ 日本の大衆 歌謡」である。

96年

では 29%で あった接触割合が、開放政策が発表 された

98年

37.9%、 99年

には 49.7%と

5割

に近づいた。その後、教科書問題 とともに文化開放が延期 された ことを反映 してか接触率 は減少するが、 ワール ドカ ップ後の

03年

に 55。

1%と 5割

を超 える。  

実は日本のポップ ミュージックや歌謡曲の CDが 、韓国の販売店の店頭に並ぶ ことを許可 されたのは、

04年

1月 か らである。したがって、ここに示すデータは、すべて違法 コピーもしくは、インターネ ッ トや 日本か ら直接持ち込まれた CDや テープが音源である。それにもかかわ らず

98年

か ら上昇傾向に あるとい うことは、 日本文化開放政策は、商品 としての 日本文化の流入ではな く、韓国の社会 と文化 に根強 く残る日本 とその文化への抵抗感を和 らげる機能を果たしていることを示唆するデータと考える。

したがって、全面開放 された

04年

以降は、漫画、ゲーム、アニメ以上に拡大する可能性がある。後 にデータとともに確認す るが、特 に女子中高生への拡大が予測 される。

(4)雑 誌・写真集 ,衛 星放送

図 9‑5  ⑤日本の雑誌、写真集 図 9‑6  ⑥日本の衛星放送

96年 97年 98年 99年 00年 01年 03年

96年 97年 98年 99年 00年 01年 03年

「日本歌謡」と同様 に文化開放を契機に増加 したものの、その後低下し、

03年

には増加傾向に転 じ たが、 30%代 と接触 した者が少数派 にとどまっているのが図 9‑5「 ⑤雑誌・写真集」 と図 9‑6「 ⑥ 衛星放送」である。 この二つ に共通 しているのは、韓国内における出版・メディアの成長 により、 日 本製商品・情報の価値が低下 した ことである。

「雑誌・写真集」の場合、 日本製の翻訳をまたず とも、ファッシ ョンをはじめ最新流行商品の情報 を満載 した韓国出版社 による雑誌が多数店頭に並ぶ ようになつた。ただ し、その情報源の多 くが、 日 本の出版社である。その意味で、 日本の子 どもや若者 とリアルタイムで情報 を共有する傾向は、 より 強まっていることは指摘 しておきたい。

「衛星放送」の場合はどうか。我々が調査を開始 した

90年

代前半では、日本の衛星放送の視聴者が

急激 に拡大 していた。高層アパー トの窓 には競ってパ ラバラアンテナが設置 され、ステータスシンボ

(7)

日韓社会科教育比較考 (5)

ル と化 していた。しか し、大都市を中心 に

CATVの

普及による多チャンネル時代を迎え、衛星放送の 需要は急減 した。 もっとも、韓国テ レビ局が制作する番組の何割かが、 日本の番組の影響 を強 く受け ていることも事実である。 しか し、韓国人のタレン トが韓国語で演ず る以上、 日本文化 とは言いがた い。その意味で、雑誌 0写 真集 と異な り、テ レビによる情報 として 日本文化が直接韓国の子 どもたち に届 く機会は縮小 しているとみなせ る。

なお、

04年

より、日本歌謡の全面解放 とともに、日本のテ レビ番組 を特定のケーブルテ レビによつ て提供することが許可 されたが、現時点での視聴率は低いようだ。今後、内容によつては大きなブー ムを呼び起 こす機会は用意 されている。

(5)イ ンターネッ ト

9‑7 

⑦インターネットを通じた日本文化接触

96年

 97年  98年  99年   00年   01年   03年

上記

6種

と異なる傾向を示すのが図 9‑7「 ⑦インターネ ッ トでの 日本文化接触」である。日本文化 開放 を契機 に増加 したかに見えたが、

99年

をピークに

4割

前後 に止まったままである。

97年

に韓国は国家経済が破産寸前 になる金融危機 に陥 り、 IMFの 指導下で経済の再建 に取 り組まざ るを得なかつた。その方法 として金大中大統領が取った政策が IT産 業の育成 と文化産業の振興である。

その結果、現在の韓国が、インターネ ッ ト普及率を代表 に、世界でもつとも IT化 の進んだ社会 になつ ていることは、本調査で も確認 した。 したがって、 ソフ ト、ハー ド両面 において、本調査の対象者で ある中高校生は 日常的にインターネ ッ トを活用 しているはずである。しか し、 「インターネ ッ トを通 じ た 日本文化接触」の割合は停滞 したままである。 この事実が示唆する意味は重い と考える。

冒頭の調査結果の概要 において紹介 したが、第Ⅲ期の調査時に生 じた教科書問題 とかかわつて中学 生をインタビューする過程で、インターネ ッ トの威力 とその特徴 を把握 した。急激に高まった 日本批 判の背後 に、インターネ ッ トのサイ トによる情報交換があつたか らである。この威力は、

02年

の W杯

におけるレッ ドで ビルスの拡大や慮武鉱大統領誕生でも確認 された。いずれ も韓国社会内部 における 情報伝達 と世論形成 にインターネ ッ トが巨大な力を発揮することによつて生 じた社会現象である。

この ことは、インターネ ッ トは世界同時的な情報交換の可能性 をもつ ものの、言語 と文化を共有す る者の間における情報 と価値の強化、拡大 に寄与す る傾向のほ うが表 に現れやすいことを示 している。

ボーダレス時代の象徴のように位置づ けられがちなインターネ ッ トの普及は、む しろ、言語 と文化に よつて閉 ざされた ドメステイックな世界を拡大 し、異文化 との相互理解を阻む壁 を高 くす るインフラ として機能する可能性が高い といわ ぎるをえない。

この点については、相互理解教育の課題 として改めて取 り上げたい。

73

(8)

74    居 政 幸 。李 明 熙・夫 伯 夫 0関 根 英 行・宋 在 鴻

2)03年 調査結果か ら

これまで

7度

10年 にわたる調査結果 に基づ く中高生全体の変化の特徴か ら考察を進めてきた。ここ では、

03年

調査か ら性 0年 齢別のクロス集計をもとに、現在の韓国の中高生の特徴 と今後の変化の方 向を考察 したい。

10、

11は 、

03年

調査での 日本文化への接触頻度 を男女学年別 に示 したグラフである。

まず男子の場合、いずれの項 目も初等学校→ 中学→高校の順 に増加 している。特に、高校生の場合、

翻訳漫画

85。9%、

映画

82.7%、

ゲーム 85。 2%と 非常に高い。この傾向は既に

95年

ソウル市調査でも確認 したが、10年 の年月をへて韓国社会で育つ男子の成長過程に日本文化が根付いていることを示 している。

女子の場合は どうか。全体的な接触率 に関 しては、 日本 と同様 にゲームが男子 よりかな り低いこと を除けば、男子 と比較 して、それほど大きな差は見 られない。 しか し、学年 による変化は異なる。翻 訳漫画、映画、大衆歌謡、雑誌 0写 真の 4種 は、中学生の接触率がもっとも高いか らである。 これは

03年

だけでな く、

00年

01年

の調査でも確認できる。また、図 13「 日本文化の所有率 〔 女子・学年 別〕 」でも、翻訳漫画、ブラン ド服、キャラクター商品の所有率は女子中学生がもっとも高い。少女漫 画を代表 に、 日本の子 どもや若者をターゲ ッ トにした商品は、性差 を強調す る文化を色濃 く反映 して いる。馬居はかってその点に注 目し、 日本の漫画文化は、男の子が男性に、女の子が女性へ と成長す る過程での「も うひ とつの教科書」としての役割 をはた していることを指摘 した

(『

なぜ子 どもは「少 年ジャンプ」力` すきなのか』明治図書

)。

また、日本の女子 中高生の広範な支持を得 る矢沢あいの漫画

「 NANA」 の 日本語版 と韓国語版の比較か ら、韓国の若い女性の世界にも日本 と同様の変化が生 じて いることを指摘 した

(「

韓国における日本大衆文化についての調査研究

(6)」)。

韓国社会 に育つ人た ちの自立への課題 を問 う上で、

04年

か ら開放 された 日本歌謡の動向も合め、日本の中高校生対象の商 品を求める韓国女子中高校生の動向に注 目する必要があることを示唆するデータと考 える。

①日本の翻訳漫面

②日本の映画

③日本の大衆歌謡

④日本のゲーム

⑤日本の雑誌、写真集

⑥日本の衛星放送

⑦インターネット

0        20       40       60       80       100

■初 等学 校 男子 国 中学校 男子 □高等学校 男子

図 10  日本に関連するもの総接触頻度 【 男子学年別】

①日本の翻訳漫画

②日本の映画

③日本の大衆歌謡

④日本のゲーム

⑤日本の雑誌、写真集

⑥日本の衛星放送

⑦インターネット

図 11  日本に関連するもの総接触頻度 【 女子学年別】

①日本の翻訳漫■

②日本歌鵬テープ

③日本軟鶴CD

④日本のアニメビデオ

⑤日本のテレビドラマ

⑥日本のフアッション経毬 0日 本の

=集

③日本のプランド腋

⑨日本のキャラクター商品

①日本の硼釈浸ロ

②日本歌田″―プ

③日本歌

ECD

O日本のアニメビデオ

⑤日本のテレビドラマ

⑥日本のファッション雑誌

⑦日本の写

③日本のプランド晨=集

◎日本のキャラタター商品 0    10    20    30

12 

日本 文化の所有率

40    50    60    70

〔 男子学年別〕

13 

日本 文化の所有率 〔女子学年別〕

(9)

日韓社会科教 育比較 考

(5)

なお、 このような韓国の子 どもたちの成長過程の変化に日本文化がかかわつていることを示唆する データを三点提示 したい。その一つは、日本の漫画の印象を質問 した結果の推移を示す図

14、

もう一 つは、図 15の 初めて見たアニメや漫画の年齢である。

まず、日本漫画の印象では、この 10年 間で減少傾向にあるのは 「暴力的」と「罪悪感」である。 日 本漫画へのステ レオタイプ的なマイナス評価が減少傾向にあることを示 している。他方、増加傾向に あるのは、「おもしろ」、「かつこいい」、「役 に立つ」である。いずれ もプラスイメージといえる。日本 漫画が韓国の子 どもたちの 日常に広 く浸透 し、積極的に受け入れ られていることを示唆 している。 こ の四種の印象 と異なる傾向を示すのが「いや らしい」である。「暴力的」とともに日本漫画批判のステ レオタイプとなつた レッテルである。

96年

か ら

01年

にかけて大き く減少 したが、

03年

は再び増加 し ている。具体的な作品をあげての質問ではないので断定できないが、

03年

の上昇は、日本の漫画、 と りわけ矢沢あいを代表 に女子中高生を読者 に想定 した女性の自立のス トー リーを最新のファッシ ョン と男女の華麗な性描写 とともに描いた作品を想定するな ら、現在の韓国社会 に育つ男女、 とりわけ女 性の側の変化を示す指標 とみなす ことができると考える。それはいまなお伝統的な儒教社会の規範が 力をもつ韓国社会 においても、工業化か ら情報化の段階に入 り、 日本 と同様 に子 ども二人が男女の差 な く高学歴を得 ることが可能 にな り、専業主婦ではな くキャ リアの道を選択することが少数派ではな くなつた女性 にとつての自立に向けての新たな課題 に応 じる情報源 として、 日本漫画が位置づけられ ることを意味する。

このことはすでに

8歳

前後 に韓国の子 どもたちが 日本のアニメや漫画 に接 していることを示す 「初 めて見たアニメや漫画年齢」によつても確認できる。図

12、

13か ら中高の男子の

5割

、女子

7割

以上 が 日本キャラクター商品を所有 していることも合めて、現代文化を共有する韓国の子 どもたちの世界 に、日本の子 どもたちと同様の課題 もまた共有 していることを読み取ることは、それほど困難ではない。

図 15  ①初めて見たアニメや漫画の年齢

(2001)

0ス ラムダンク

⑫セーラームーン OIバンゲリオン

0ア

タッアタッ

Oマ

ジンガーZ Oミンキーモモ 0千年女王 0ベルサイユのパラ

0と

根性ガエル

④銀河鉄道999 0鉄人28号

②ガッチャマン 0未来少輌 ナン

Ito.g I to.oc

la4

18̲33 84

859

― ①晏力的

      

Ctヽやらしい

      

③おもしろい

っこいい

    

― ⑤罪悪感

     

― ⑤役に立つ

14 

日本 漫画の印象

(10)

76    馬 居 政 幸・李 明 熙・夫 伯 夫・関 根 英 行・宋 在 鴻

4.日 本 0日 本人への意識の調査結果か ら

1)7回 (96、 97、 98、 99、 00、 01、

03)の 調査結果か ら

我々が実施 してきた継続調査のも う一つの中心が、中高校生を対象にした

26項

目にわたる「日本 と 日本人」に関する評価の質問である。 日本文化接触度 と同様 に

7度

の調査結果を 〔 肯定派〕 と 〔 否定 派〕に集計 し、その変化の傾向により 5種 に分類 したのが図 16で ある。また各項 目の変化を個別に図 示 したのが図表 17‑1〜

26で

ある。なお、本調査項 目は、その質問の性格か ら、初等学校生では回 答困難 と考え、中高等学校生のみを対象 に実施 した。

まず

26種

の質問項 目全体の傾向をみると、多 くの項 目において肯定派は

99年

をピークに

01年

に向 けて減少するが、

03年

には再び上昇に転 じている。日本文化接触度の変化の考察の過程で言及 した 98 年

(経

済危機後の金大中政権にょる日本文化開放政策

)、 01年 (教

科書問題

)、 03年

(W杯 共催

)と

う韓国社会の変化の節 目をここでも確認することができる。 しかし他方で、質問内容によって変化の パターンは一様ではなく、日本と日本人への判断基準の多様性を示唆している。そこで類似した変化 のパターを示す質問内容の特徴を、日本文化接触度 と同様に 10年 間にわたるインタビュー調査の結果 を踏まえながら考察 したい。

図 16  日本 と日本人に対する評価の変化

昔 申 派 化 画奪 要ドイ

L重 : 夢 イヒ画

5化

A肯

定→ 肯定 →肯定

19992=

2001奪

20024= 1999 2oo14= ,00,生

■曼2■本 に旅 行 に行 きたLヽ ‑11 4餞

J

65J 16̲5 349 84̲9 18』 ‑16.0

4フ.G =7蜀 47■ 632 365 86̲5 22』 ‑14̲,

9j m回

は将来日本と対等にたる 46̲日 44̲9 17■

22)日本 語 を 飩 壺 しF― Lヽ ‑1,7 41̲8 560

aB4

38.4 ‑17̲G

B肯

定→ 否 定 → 昔 宝 J999年 2001J 20024ニ 19994 2001盗 2001ι

46』 86.g ‑9̲4 36』 54浴 42.8 42Ю ‑0.8

=

‑16.9

47』 34■ ‑132 34■ 50■ 43■ 27̲7 ‑15̲6

49J ‑15■ 84̲1 46■ 382 38̲2 26■ ‑11̲J

46』 32.7 ‑142 32̲7 44J 408 25̲g

■0■ ■21■ 30』 42̲4 38』

38B

29″ ‑8̲G

40■ ‑9J 31J 41』 456 鍵 』 11

̲7 ‑11.1 32お 27̲6 89.0 29.0 ‑lC

o否

申 → 否 申 → 昔 中 1000盗 2001肇 ,001ぬ 20024ニ 1999a ,001盗

,oo14= ,00,4E

14)中

国人 よりも日本 人 が 好 書 1■ ‑3■ 172 42』 577 m̲4 4J

34』 24』 ‑100 24■ 42』 51■ 51■ m̲5 ‑17ロ

2)絡書 力 が童 遇 □ 力 が 弱 金 る 23̲2

84

31浴

5̲5

37過 37.6 30.8 ‑6̲g

D否

定→ 否 定 → 否定

19992=

2001奪 20014

2oo24=

19994 20014 2001塗F

2002年

32』 ‑102

4J

39̲9 J 53̲4 87■ ‑16̲1

13)百麟 人 よ り亀 日六 人 爺 解 多 13.3 ‑3■ 13』 2aJ 62■ 62̲6 402

2̲4

》日本 人 と一 悩 にI「富 洋0̲F‐■、 → 』 18■ 280 54■ ‑14̲0

19̲8 12■ =7』 12』 262 50̲5 62』 ‑4̲日

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27̲2

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34

13.8 47̲2 7J

(11)

日韓社会科教育比較考

(5)

(1)パ ター ン

A:肯

定→肯定→肯定⇒ 淡 い興味、

17‑9 9)韓

国は将来日本と対等になる

70

60 50 40 30 20

10

17‑18 18)日本 で しば ら く生活 してみ た い

肯定派

70 ̲否

定派

希望、実利 に基 づ く判断

17‑15 15)日

本に旅行に行きたい

e6s e7+ e8s ee+ oo+ 01 + 03fi

60 50 40 30 20

96年

 97年  98年  99年  00年  01年  03年

10年 間にわたる本調査の過程で生 じた

3度

にわたる韓国社会の 日本 に対する世論の大きな変化にも かかわ らず、肯定派が否定派を上回つた質問項 目の変化を図示 したのが図 17‑9「 将来対等」、

15「

旅 行に行 きたい」、 18「 生活 してみたい」、 22「 日本語勉強」である。

このなかで「将来対等」が常に肯定派が多いのは当然だが、

03年

5割

を超 えたことは注 目して よ いだろ う。数値で示 される客観的な指標 とは別 に、現在の韓国社会で育つ中高校生が、 日本 との差 を 大きいもの とはみな していない ことを示唆する。 この点は相互理解教育の課題にとつて重要な観点に なると考 える 6後 に改めて取 り上げたい

他方、 15「 旅行に行きたい」、 18「 生活 してみたい」、 22「 日本語勉強」の 3種 は、いずれ も調査開 始時の

96年

では否定派が肯定派を上回つていたが、その後は、増減があるものの肯定派が否定派 より 多い質問項 目である。そのなかで 「旅行 したい」 と「生活 してみたい」は、隣国である日本への淡い 興味や関心を示す と思われる。特 にこの 10年 で肯定派が多数派 になるだけではな く

03年

にともに

6割

を超 える中高生が 日本への旅行や 日本での生活を肯定 していることは、相互理解の基盤が築かれつつ あることを示唆 している。それに対 して、「日本語勉強」については、少 し事情が異なる。韓国の高等 学校の教育課程では第二外国語が課せ られ、入試科 目に取 り入れる大学 も少な くない。そのため、文 法的に学習 しやすい 日本語への中高校生の関心は高ま りやすい。また、漫画を代表 に、 日本文化への 関心が、日本語への関心 と重なる可能性 も指摘できる。このことは、韓国の中高生の 日本への関心が、

一定の実利を伴つた社会的基盤

(制

度 )に 支えられていることを示すが、 日本の場合は どうであろ う か。近年の 「韓流ブーム」 により、韓国語への関心が高まっているとはいえ、まさに流行の レベルに

とどま り、中高生の 日常に制度的に組み込まれた社会的基盤 になっているとはいえない。 このような 両国の差異は、互いに異なる像 を相手の国にラベ リングすることにより、相互理解を阻む新たな壁 と

肯定派

否定派

96年

 97年  98年  99年  00年 01年  02年

17‑22 22)日 本 語 を勉 強 した い

肯定派

96年

  97年   98年   99年  00年   01年  03年

(12)

78   

幸・李 熙・夫 夫 ・関 行・ 宋

もな りうる。 この点も後 に改めて考察 したい。

(2)パ ター ン B:肯 定→否定→肯定⇒積極的な興味・関心 0評価

(あ

るべ き方向 )に 基づ く判断

99年

に向けて肯定派が否定派を超 える増加傾向にあったにもかかわ らず、

01年

に反転 して否定派が 図 17二 1 1)国 民にバイタリティーがあり将来性のある国  

17‑4 4)韓

国の発展のために協力が必要な国

60 50 40 30 20

e6+ s7+ e8+ ee+ 00+ 01+ 03+ 96年

 97年  98年  99年  00年  01年 03年

17‑7 7)勤

勉 で優れ た資質 を持 つた国

17‑19 19)日

本人 と友達にな りたい 一 肯定派

60 50 40 30 20

96年 97年

 98年  99年  00年  01年  03年

96年

 97年  98年  99年  00年 01年  03年

17‑23

23)両 国の関係 を良 くするために努 力 したい

17‑24 24)日

本の文化を学びたい

肯定派 否定派

96年  97年  98年 96年  97年  98年  99年 00年  01年 03年

004平  011=  034再

17‑26 26)日

本文化や漫画や歌謡曲等 自由に接 したい

― 肯定派

J卜

否定派

50 40 30 20

55

50 45

40

35 30 25 20

肯定派 肯定派

否定派

肯定派

否定派

― 肯定派

一 否定派

96年 97年 98年 99年 00年 01年 03年

(13)

日韓社会科教育比較考 (5)

多数派 にな り、

03年

に再び肯定派が否定派を上回つた質問項 目が、図 17‑1「 将来性」、 4「 韓国発展 に協力必要」、

7「

勤勉な国民」、 19「 友達 に」、 23「 関係良 くする努力」、 24「 文化学びたい」、 26「 日本 文化 自由に」の

7種

である。

そのなかで 「将来性」 と「韓国発展 に協力必要」は調査開始時 に肯定派 と否定派が拮抗 していた こ とか らパターン Aに 近い傾向を示す項 目といえよ う。それに対 して他の

5項

目はいずれ も調査開始時 には否定派が肯定派をかな り上回つていた項 目である。言い換 えれば、この 10年 の変化を象徴する項 目である一方で、両国の関係を大き く反映するする質問 といえる。その内容をみると、

7「

勤勉な国民」、

19「 友達 に」、 23「 関係良 くする努力」、 24「 文化学びたい」、 26「 日本文化 自由に」といずれ も日本 と 日本人を積極的に評価 もしくは関係 をもつ ことを求める質問である。 このことは、一方で、韓国中高 校生の 日本人や 日本文化への関心の高 さを示すが、他方で、それは一方通行的なものではな く、 日本 の側のあ りかたによつて大きく変化す ることを忘れてはな らない。 このことの重要性 を示唆するのが

「両国の関係をよくするために努力 したい」の否定派の増減である。

96年

では 41.8%で あつたのが、

99年

に 23.6%ま で下が り、

01年

は 40.8%に まで戻るが、

03年

には 25.3%と 非常に少な くなる。

過去の歴史を理由に両国の相互理解の困難 さを指摘する意見は少な くない。 しか し、本調査の対象 となる中高校生は、調査開始時の時点でも日本の支配を直接経験 した男女ではない。まして現在の中 高生は、ファイスシー トか ら得たデータで確認 した ように、生活環境は 日本の子 どもたち と変わるわ けではない。 日本文化が組み込まれた生活を享受す る世代である。それ にもかかわ らず 「両国の関係 をよくする努力」を否定す る意識が大き く増減することは、韓国社会のなかに潜在す る日本への不信 感の根強 さを示 している。同時にその不信感の発現が、韓国側ではな く日本側のあ りかたによつて左 右 されることを示すデータであることも確認 しておきたい。ある時点で相互理解が進んだ ように見え ても、 日本の側が努力を怠れば、韓国の側の理解の高ま りがそのまま不信感に転化 し、理解への意欲 を阻む意識 を高める可能性がある。そ して、 この社会的意識の構造は、 日本文化の拡大 とは異なるレ ベルで存在することも確認 しておきたい。

ただ し他方で、「友達 に」、「文化学びたい」、「日本文化 自由に」 もまた類似 した変化を示す一方で、

確実に肯定派の割合が増加 し、「友達 に」と「日本文化 自由に」が多数派を占めるようになっているこ とは、相互理解教育の方向や方法の手がか りを示すデータとみな したい。

(3)パ ター ン

C:否

定→否定→肯定⇒判断の基準が変化

2)経 済が衰退 し国力が弱くなる

12)日 本や 日本人に強い関心を持つている

96年

 97年  98年  99年  00年

96年 97年 98年 99年 00年 01年 03年

17‑12

肯 定派

否 定派

肯定派

否定派

17‑2

01年 03年

(14)

80 幸 ・李 熙 。夫 夫 ・関 行・宋

17‑14 14)中 国人 よ りも 日本 人が 好 き

96年

 97年  98年  99年  00年  01年  03年

一貫 して否定派が多数派であつたものの、

03年

に逆転 して肯定派の割合が否定派を超 えた項 目が図

17‑2「 経済が衰退 し国力弱 くなる」、 12「 日本や 日本人に強い関心持つ」、 13「 中国人 より日本人が 好き」である。 これ らは韓国の中高生のみでな く、韓国全体の 日本 と日本人への評価の基準 自体が変 化 していること示すデータと考える。すなわち、「経済が衰退 し国力弱 くなる」は、明 らかに

90年

代 に入つて不況か ら抜 け出せないでいる日本経済を反映 した意識であろ う。同時に、経済危機を克服 し たかにみえる韓国経済への自信が重なっているかもしれない。少な くとも、中高校生の生活実感を基 準 にすれば、 日本 との差は見出せない以上、経済力を基準にした相互理解の推進 には限界があること を示唆するデータである。

他方、「日本や 日本人に強い関心持つ」の肯定派が

03年

に始めて否定派を上回つた ことには注 目し たい。一般 に、 日本では韓国人は 日本や 日本人に強い関心をもつが、 日本人は韓国や韓国人に関心を 持 つているわけではない、 といわれてきた。 しか し、 このデータでみれば、少な くとも中高校生の場 合、「強い関心」を持う人たちは

3割

前後の少数派であつた。それが

02年

W杯 を契機 にようや く

4割

以上になった と見るべ きであろ う。パターン Aや Bに み られた個別的な 日本 と日本文化や 日本人への 関心 と異な り、「強い関心」とい う価値基準にかかわる判断 に対 しては、肯定派が少数派であつたこと は、パターン Bで 指摘 した韓国社会の 日本への不信感の構造 を反映 したもの といえよう。個別的事象 への関心が意識の上層にあるとすれば、その下部に日本への関心を阻む不信感が存在することを示 し ている。その意味で、

03年

の変化が、韓国社会の構造的な変化を示すものか どうかについては、今後 の継続的な調査で検証する必要がある。

「中国人より日本人が好き」において、肯定派 と否定派が逆転 したことも興味深い。伝統的に韓国 の人々は中国に親近感をもってきた。また、

90年

代 に入つて経済交流が盛んになるにつれて、両国の 関係は深まっていた。 さらに、近年の中国の経済発展 に伴い、 日本では韓国の関心が 日本か ら中国に 移動 していると論 じられがちである。ところが、

03年

の時点で、中国人 より日本人を好きと答えた中 高生が否定派 より多 くなったわけである。交流の深ま りがかえつて中国 と日本の現実を比較 し判断す る基準を変化 させたのであろ うか。それ とも、脱北者

(北

朝鮮か ら中国国境を越 えて脱出した人たち

)

を取 りします中国政府への反感が影響 しているのか。現時点では、その原因を特定することができな い。このデータを韓国人の意識の基層に変化が生 じている兆 しと位置づけることができるか どうかは、

今後の継続調査 に託 さぎるを得ない。

(15)

日韓社会科教 育比較考

(5)

パ ター ン D:否 定→否定→否定⇒ 自尊心や直接的

5)一 般的に国民の考え方が韓国人と同 じ

 

図 17‑8

肯定派

否定派

96年

 97年  98年  99年  00年 01年 03年

17‑10 10)日 本 人 に対 して親 密感 を感 じる

100 80 60 40 20 0

17‑16 16)日本 の大学 や大学院 に行 きた い

96年

 97年  98年  99年  00年  01年  03年

17‑20 20)日

本人 を家に招待 したい

一 肯定派

70 50 30

10

(深 い )関 係 を要請す る判断

8)日 本国民の才能が韓国国民より優れている

96年

 97年  98年  99年 00年  01年  03年

(4)

17‑5

100 80 60 40 20

0

80 60 40 20 0

80 70 60 50 40 30 20

10

70 60 50 40 30 20

10

80 60 40 20 0

17‑13 13)西

洋 人 よ りも 日本 人が 好 き

e6+ s7+ e8+ ee+ 00+ 01

+

03+

17‑17 17)日

本企業に就職 して働 きたい

17‑21 21)日本 人 と一緒 に仕事 した い

肯定派

否定派

肯定派

否定派

96年

 97年  98年  99年  00年  01年  03年

96年

 97年  98年  99年  00年  01年  03年

96年

 97年  98年 99年  00年  01年  03年

96年

 97年  98年  99年  00年  01年  03年

(16)

82   

幸・李 熙 。夫 夫 ・関 行 ・宋

増減 はあるものの、

03年

にいたって もなお否定派が肯定派 よ り多い項 目が、図 17‑6「 一般的 に国 民 の考 え方が韓 国人 と同 じ」、

8「

日本 国民 の才能が韓 国人 よ り優れ る」、 10「 日本人 に親密感 を感 じる」、

13「 西洋人 よ り日本人が好 き」、 16「 日本 の大学や大学院 に行 きたい」、 17「 日本企業 に就職 したい」、

20「 日本人 を家 に招待 したい」、 21「 日本人 と一緒 に仕事 したい」である。いずれ も日本 と日本人 を積 極的 に肯定 も しくは直接的 に深 くかかわ る ことを求め る内容である。韓 国人の 自尊心 に触れ る質問 と もみなせ る。 その意味で、韓 国社会 に潜在す る 日本へ の不信感 あるいは拒否感 とい った感情 にかかわ る質問項 目とい える。 ただ、いずれ の項 目も否定派 が減少 し、肯定派が増加す る傾 向 にある ことには 注 目してお きたい。

特 に、「韓 国人 と同 じ」、「韓 国人 よ り優れ る」、「親密感」、「大学や大学院 に」、「日本企業 に就職」は、

03年

の時点で も否定派が

5割

を超 える。日本人 との同質性 を否定す る ともに、進学や就職 とい う人生 を左右す る意味 を合む質問 には、いまなお拒否感 が強 い。逆 に、大学問や企業 間の交流が、 よ り深 い 相互理解 につ なが る ことを示唆 してい る ともみな したい。

他方、「家 に招待 したい」 と 「西洋人 よ り日本人が好 き」 は否定派 と肯定派差が縮小 して きてい る。

パ ター ン Cに 近い傾 向 とい え よ う。

(5)パ

ター ン E:そ の他⇒不安感、不信感、拒否感 あるいは 自尊心 に基 づ く判断

17‑3 3)将

来、韓 国の存在 を脅か す国 17‑11 11)日 本 人 に対 して敵 対感 を感 じる

e6+ s7+ eBfi ee+ 00ft 01 s 03+ 96年

 97年  98年  99年

00年

 01年 03年

17‑25 25)日本 の技術 を学 びた い 肯 定派

17‑6 6)理

解 で きな い不 可解 な国

上記

4種

のパ ター ンに当てはま らない項 目をま とめたのが図表 17‑3「 将来、韓 国を脅かす 国」、 6

「理解で きない不可解 な国」、 11「 日本人 に対 して敵対感 を感 じる」、

25「

日本 の技術学びたい」である。

「脅かす国」は、

96年

の時点では否定派が多か った ものの、その後、肯定派 と否定派 がいずれ も 30%

か ら 40%の 間で推移 し、

03年

ではほ とん ど差がな くなつている。他 の項 目も変化のパ ター ンは異 な る

50

肯定派

否定派 肯定派

否定派

96年 97年

 98年  99年  00年  01年  03年

否定派

96年

 97年  98年  99年  00年 01年  03年

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