13/
〈研 究 ノ ー ト〉
政 治 的 義 務 と文 化 的 義 務
一R .ポ ランの政 治 哲学 二 四 一
白 石 正 樹
目 次
=は じめ に
誠 藩 禦 難 文化的。.ナキズム
四 政 治的義務 と文化的義務
は じめ に
レー モ ン ・ポ ラ ン に よれ ば 、政 治 的 義 務 は一 つ の 独 特 な(suigeneris)義 務 で あ る。 そ れ は個 人 を そ れ 自体 と して の 政 治 的 共 同体 に結 び つ け る特 定 的 な 義
D
務 で あ る。 そ れ は、 あ らゆ る形 式 の 道 徳 的義 務 か ら完 全 に 区 別 さ れ 、根本 的に 分 離 され て い る。 だ か ら と い っ て 、 そ れ は道 徳 的 義 務 か ら独 立 して い るの で は な い。 長 い間 、 伝統 は ロ ッ ク、 ル ソ ー 、 カ ン トに 至 る ま で 、政 治 的義務 が道徳 的 義 務 と結 びつ き、 それ に従 属 す る こ と を、 ま た誠 実 な人 々 の み が 善 き市 民 ま た は大 政 治 家 で あ りう る こ とを 望 ん だ。 しか しな が ら、 マキア ヴェ リは、 も し 政 治 的 義 務 の 行 使 が 実 際 に は一 般 に受 入 れ られ た 道 徳 的 義 務 に 最 大 の考 慮 を払
うほ うが よ い と して も、 それ は決 して 道 徳 的 義 務 に よ っ て そ うせ ね ば な らな い ので な い こ とを発 見 して い た。 彼 は そ れ か ら次 の よ うに結 論 づ けた 。一 政 治的 技 術 と使 用 さ れ た 政 治 的 手段 の 選 択 は 、 選 ば れ た 目的 の政 治 的 成 功 を 効 果 的 に 保 証 す るた め に 、 た とえ そ れ が 伝 統 的 に 最 も道 徳 的 で あ る と して も、一 般 に受 入 れ られ た 道 徳 性 の 義 務 を無 視 しえ る し、 必 要 な場 合 に は そ れ を無 視 せ ね ば な
z)
らな い。 さ ら に、 政 治 的 な もの の 性 質 は、 国 家 に お け る共 通 秩 序 の 維 持 の た め に、 また他 の諸 国家 と と もに一 つ の秩 序 を 一 場 合 に よ って は戦 争 に よ って 一
i32
確 立 す るた め に 、 公 的暴 力 を正 統 に 使 用 す る こ とに あ る、 とい う こ とを 思 い起 させ るだ け で十 分 で あ る。 政 治 的 な もの は倫 理 の 性 質 に属 さ な い こ とを確 信 す る た め に、 で あ る。
倫 理 的 な もの と政 治 的 な もの は 、 区 別 され る と同 時 に 依 存 して い る。 つ ま り、
両 者 の 間 に は 、 それ らを 分 離 す るの と同 じだ け、 そ れ ら を結 び つ け る弁 証 法 的 関係 が あ る 、 と い う こ とで あ る。 政 治 的 義 務 は道 徳 的 義 務 と弁 証 法 的 に 結 びつ い て い る。 一 どち ら も窃 実 上 、 また権 利 上 、 絶 対 的 な もの と して 現 わ れ る。 両 者 が 矛 盾 に 陥 る た び ご とに、 そ れ か ら帰 結 す る リス クの 正 統 性 を認 め つ つ 最 終 的 に 判 断 す るの は、 それ ぞれ の 人 に属 す る。 しか し、 こ う した 解 決 は 、 一 方 に お い て 、 ひ とが 政 治 的 義 務 の 必 要 性 と、 そ の 技 術 的 含 意 の 付 随 物 を伴 う一 定 の 政 治 的 義 務 の 正 統 性 を認 め る場 合 に しか 、 ま た他 方 に お い て 、 政 治 的 な もの が 倫 理 的 目的 を 己 に与 え る場 合 に しか 、意 味 を もた な い。 な ぜ な ら、 そ れ の み が 実 現 す べ き倫 理 と遂 行 す べ き政 治 との 、 歴 史 的総 合 を保 証 す る唯 一 の 手 段 で あ
ニ1)
るか らで あ る。
伝 統 的 に ポ リス的 動 物 と して の人 間(av6ponoS,ζ φovπoλmK6リ)の 主 題 に よ っ て 支 配 さ れ た 西 洋 文 明 に お い て 、 政 治 的 義 務 、 す な わ ち個 人 を もっ ぱ ら 特 定 的 仕 方 で 、彼 が 所 属 す る政 治 的 共 同 体 、 彼 が 所 属 しな い わ け に は い か な い 政 治 的 共 同体 に 結 び つ け る諸 義 務 は 、 彼 が ま さ し く人 間 的 な生 活 を送 る限 りに お い て 、 っ ね に 自明 の事 柄 と見 な され て い た 。 懐 疑 論 者 た ち で さ え、 政 治 的 義 務 を 一JE物の 自然 の な か に 刻 み 込 む の を拒 否 しつ つ も、 そ れ を功 利 主 義 的 約 定 に 基 礎 づ けつ つ も、 そ の 義 務 的 性 格 を認 め て い た 。 人 間 が 生 ま れ つ き政 治 的 存 在 で あ る こ とを 否 定 す るホ ッ ブ ズ とル ソー で さ え も、政 治 的義 務 が そ の 必 然 的一
4)
要 素 を な す 国 家 を組 み 立 て て い た 。
た ん に また は ほ とん どエ ピキ ュ ロ ス主 義 の み が 、 ポ ラ ンに よれ ば 、 賢 者 の よ う な例 外 的 存 在 は 、 都 市 国 家 に 対 す る 一 ま た ヘ ラス(ギ リシ ア)に 対 して す ら 一 あ らゆ る気 が か り とあ らゆ る義 務 か ら解 放 され て、 あ らゆ る都 市 の 外 で 、
らラ
完 全 な 生 活 を送 る こ とが で き るか も しれ な い と考 えて い た 。 ポ ラ ンが 「ほ とん どそれ の み が」 と言 った の は、 愛 徳(charite)の 哲 学 、 山上 の垂 訓 の 哲学 も ま た 、 政 治 を 欠 い た 道 徳 を提 出 して い るか らで あ り、 そ れ を聖 パ ウ ロ はや っ との
G)
こ とで 現 世 の要 請 に従 え た の で あ る。 しか し、 この 政 治 を欠 い た 、 政 治 的 義 務
政治的義務 と文化的義務 133
を 欠 い た道 徳 は 、 キ リス ト教 の表 面 に 現 れ な い ま まに な るだ ろ う。 一 隠者 の 生 活 の幾 つ か の形 態 が そ れ を 物 語 り、 また は現 代 で は、 世 俗 の 些 細 な 出 来 衷 を無 視 す る こ とを好 む 、 幾 つ か の 責 任 の な い 「美 しい魂 」(belles7times))の 憤 慨 や 声 明 が そ れ を物 語 る よ うに。
政 治 的 義 務 は、 西 洋 文 明 の歴 史 に お い て 、 非 常 に さ ま ざ ま な形 式 を と った 。 そ れ は ギ リシ ア人 の と こ ろ で非 常 に早 くに 、 都 市 国 家 の 只 中 で の 市 民 の務 め、 公 的生 活へ の そ の参 加 に お いて 、 一 つ の 完成 され た形 式 を見 出 した。 『クリ トン』
に お け る法 律 の 擬 人 法 が 、 その 普 遍 的 意 味 を 与 えて い る。政 治 的 義務 は、 モ ンH)
テ ス キ ュー が ロー マ の 市 民 の な か に 認 め る こ とを 好 ん だ あ の 政 治 的徳 、法律 と
9)
自 由 へ の 愛 、 の 内 容 の 本 質 を形 づ く る。 生 ま れ か けの 封 建 制 度 が 表 す 深 刻 な崩 壊 の 状 態 に お い て さえ 、 政 治 的 義 務 は 忠 義 の き ず な の 形 式 の も とで、 その保護 の 役 割 を 演 じて い る。 諸 国 民 の 近 代 的形 成 と と もに 、諸国家 の設 立 とともに、
政 治 的 義 務 は 、 法 律 へ の 服 従 に 、 体 制 に対 す る忠 誠 を つ け加 え る傾 向 が あ る。
そ れ は 国 民 感情 を摂 取 し、 愛 国 心 の なか に そ の 至 高 の形 式 を見 出 す だ ろ う。愛 国 心 は 、 法 律 と共 同 体 へ の 愛 に対 して 、 個 人 の あ ら ゆ る価 値 、 あ らゆ る財 を共 通 利 益 と公 安 に 捧 げ る可 能 性 の あ る義務 を、 結 び つ け る。 そ れ は市 民 の 義 務 の 一 覧 表 に 刻 まれ るで あ ろ う し
、 ま た そ こ に そ の 法 律 上 の決 定 を見 出 す こ とが で き るで あ ろ う。
近 代 国家 の 観 点 に お い て、 政 治 的 義 務 は そ う した もの で あ るの で 、 も し各個 人 が 自分 の所 属 す る特 殊 な国 家 の な か で 、 彼 の 権 利 と同 時 に、 彼 の 義 務 を つ ね に放 棄 しえ る と して も、 彼 は決 して 一 つ の 国 家 へ の帰 属 の 義 務 か ら、 ま た した が っ て 、 それ に伴 う政 治 的 義 務 か ら逃 れ る こ とは で き な い 。 そ う望 む こ とす ら 不 条 理 で あ る。 市 民 の 実 効 的 自 由 は 、彼 の 政 治 的 義 務 と一 体 化 して いin)o
そ う した もの と して の 政 治権 力 へ の 非 難 を通 して 、 政 治 的 義 務 が 根 本 的 な仕 方 で 問 題 と され る た め に は、 権 力 の 専 制 的 行 使 に対 して と同様 に、 ヘーゲルの 理 論 に対 す る、 ま た ジ ャ コバ ン派 の 実 践 に 対 す る反 発 で 、 ア ナ ー キ ズ ム の 教 説 が発 達 す る の を 、 事 実 上 、 待 た ね ば な ら な か っ た 。古典 的 なアナー キズムは、
ル ソー を受 け継 ぎ、 人 間 は 生 れ つ き 自分 だ け で 十 分 な、 自律 的 で完 全 な個 人 で あ る とい う原 理 か ら出 発 す る。 そ して 、 人 間 は 己 の 完 全 さ を 、 そ の他 者 との 関 係 に お け る己 の 無 垢(innocence)に よ って 証 明 す るの で あ る が 、 その関係 は
134
当 然 、 個 人 対 個 人 の 関 係 で あ る。 この最 初 の 原 理 か ら、 今 度 は ル ソー が 考 え た こ と と反 対 に、 次 の よ うな 結 論 が 生 じ る。 す な わ ち 、 あ らゆ る権 力 とあ らゆ る 権 威 の行 使 は、 そ れ が 諸 個 人 の 純 粋 な 自律 や 完 全 な 状 態 を 傷 つ け るか ら、 また それ が ま った く人 工 的 で 、 自然 に反 して さ え い る共 通 の 公 的 な制 度 に 由来 す る か ら、 人 間 を堕 落 させ 、 そ の 無 垢 を 失 わ せ 、彼 の な か に あ らゆ る悪 徳 を 引 き入
ロラ
れ 、彼 に悪 と と も に、 悲 惨 と不 幸 を も た らす の で あ る。
だ か ら、 ア ナ ー キ ス トた ち の見 る と ころ で は、 人 間 に とっ て 自然 な 自由 と平 等 の 、 自然 な 自発 的 な 行 使 に戻 らね ば な らず 、 そ れ らの 完 全 な 両 立 性 を み とめ な け れ ば な ら ない 。 一 自由 と平 等 は、 その 他 方 を欠 い た一 方 で は存 在 す る こ と さ え で きな い 。 各 人 は こ う して 、 自分 の 自然 的無 垢 と、 他 者 に対 す る 自発 的 親 切 心 を 回 復 す る。 近 代 社 会 の 事 実 上 の 存 在 に よっ て 提 起 され た 諸 問 題 を解 決 す る た め に 、 ひ とは 自然 的 人 間 能 力 の 自発 性 に訴 え るだ け に と どめ る。 ク ロ ポ ト キ ン(Kropotkine,1842‑1921)は 、 個 人 的諸 自由 の 自発 的戯 れ か ら生 じ る調 和 、 平 等 な人 々 の 間 に生 まれ る 自発 的 な均 衡(equilibrespontane)に 助 け を 求 め るだ ろ う。 そ の 背 景 で 、 彼 は 社 会 的諸 問 題 を解 決 す る た め に 「無 名 の 大 衆
iz)
の 建 設 的 な 才 能 」 を 呼 び 起 こす 。ヘ ー ゲ ル を 学 ん で い た バ ク ー ニ ン(Bakounine, 1814‑1876)は 、 強 制 的 で 圧 制 的 な 国 家 に 対 し て 、 自 発 的 社 会(uneSociete
・p・n・・ne・)を 対 置 す る ・ ・ う し た 社 会 は 渡 国 家 的 強 制 が 取 り 除 力)幡 ら ・ 一 度 国 家 の 課 す 規 則 か ら生 じ た疎 外 が 解 消 さ れ た ら、 と くに普 遍 的 な 収 用 の 適
14)
用 に よ って 諸 個 人 を か れ ら 自身 に 返 す の で あ る。 一 度 す べ て の 人 の 平 等 が 回 復 さ れ る と、 大 衆 の 社 会 的 自発 性 は 、 社 会 生 活 の 自 由 な 組 織 を保 証 す る の に 十 分 だ ろ う。 そ れ こ そ無 機 的 な大 衆 の 、 政 治 体 に対 す る勝 利 、 政 治 的 秩 序 とそ の合 理 性 に抗 して 、 は っ き り しな い 大 衆 の才 能 に ロ マ ンチ ッ クに 与 え られ た 特 権 で あ り、 そ の なか で 、 互 い の 間 に 確 立 され た あ らゆ る秩 序 か ら解 放 され た 諸 個 人 の 想 像 力 が 、 各 人 の 善 意 とす べ て の 人 の 調 和 的 一 致 を 、 義 務 も制 裁 も抑 圧 もな
しに 自発 的 に保 証 す る。
想 像 力 に よっ て そ の二 重 の 様 相 で もた ら され る解 放 感 に、 決 定 的 に信 頼 が お か れ る。 そ の 二 重 の様 相 とい うの は、 抑 圧 、 堕 落 、悪 を生 じ る、 一 般 に 受 入 れ られ た 秩 序 の 解 体 で あ る破 壊 的様 相 、 お よび 、 大 衆 の 想 像 力 と諸 個 人 の 想 像 力 の 、 強 制 も規 則 も紛 争 も な く、 お そ ら く努 力 も仕 事 も な い と言 わ れ る働 き の な
政治的義務 と文化的義務 13S
か で 、 定 ま っ た 秩 序 へ と決 して硬 化 され な い 調 和 が 、 そ の 只 中 で 自発 的 に 生 じ
15)
るで あ ろ う発 明 的 様 相 の こ とで あ る。
十 九 世 紀 の ア ナ ー キ ズ ム 、 古 典 的 ア ナ ー キ ズ ム は、 基 本 的 に政 治 的 ア ナ ー キ ズ ム 、 す な わ ち 、 政 治権 力 、 政 治 的 権 威 、 政 治 的 義 務 の批 判 、 拒 否 で あ り、政 治 的 な もの を 、 社 会 的 な もの の 還 元 しえ な い 一構 造 、 人 間 存 在 の あ ら ゆ る形 式 に 内在 す る独 特 な(suigenesis)本 質 、 と考 え る こ との 拒 絶 で あ り、 また 、偶 然 的 で さ らに 破 局 的 な歴 史 的 発 達 へ の 、 そ の還 元 な の で あ る。 真 の 自 由 とは 、
IG)
そ の と き 放 縦 で あ る 。
ニ ァ ー ナ キ ズ ム の 自 由
今 日の ア ナ ー キズ ム の 新 しさ は 、 ポ ラ ン に よれ ば、 そ れ が 古 典 的 な 政 治 的 ア ナ ー キ ズ ム か ら受 入 れ た 着 想 を敷 街 し、 そ して文 化 的 ア ナ ー キズ ム と して 現 れ る こ とで あ る。 ポ ラ ンの 見 る と こ ろ、基 本 的 主 題 は お そ ら く自 由 の主 題 で あ り、
そ れ は 人 間 個 人 の無 垢(innocence)の 主 題 に ま さ るが 、 しか しそ れ は無 垢 の 主 題 を 表 現 す る こ とを望 む 。 さ らに 、 へ 一 ゲ ル 的用 語 で い え ば 、 即 自的 自 由、
m
選 択 も熟 慮 もな い 、 気 ま ぐれ と同一 の 、 自発 性 と混 同 され た 自 由 が 問 題 で あ る。
へ 一ゲ ル は こ う述 べ て い た。 一 そ れ は情 念 と同一 で 、更 改 の 、最 初 の始 ま りの 、 能 力 と して 認 め られ 、 自発 的 な 、 っ ね に また 新 鮮 で 、 っ ね に また 新 し く、 つ ね
に ま た 己 自身 と異 な る、 無 限 の 変 化 の レベ ル に あ る。 つ ね に 変 化 し、 刷 新 す る こ の 自 由 を こ そ 、 い か な る代 償 を払 っ て も、 唯 一 の 聖 な る価 値 と して 、 人 々 の 世界 の至 高 の 価 値 と して 回復 す る こ とが 問 題 とな る。 それ は諸 個 人 の専 有 物 で あ る と とも に、大 衆 、 す な わ ち無 機 的集 合(rassemblementsinorganiques)
の 専 有 物 で あ っ て 、 そ こ で は諸 個 人 の唯 一 の 集 合 が 、 だ か ら とい って か れ らの 自律 性 や 創 造 的 自立 状 態 を失 う こ とな く、 か れ ら全 員 の 参 加 す る創 造 的 火 床 に
ゆ
火 を と もす の で あ る。
この 最 初 の 原 理 は 、 結 果 を通 じて 、 元 の状 態 の あ らゆ る保 存 、 あ らゆ る維 持 の 拒 絶 を含 意 す る。 徳(vertu)が その 形 式 に お い て、 す ぐれ た 活 動 の 実 現 にお け る揺 るぎ な さ 、永 続 性 、 固執 に よ って 、 要 す る にヘ クシ ス(ピ ξ1〜)の、 その 持 続 に よ って 著 しい習 性 の 、 現 前 に よ って 規 定 され る こ とは 、 た い そ う古 典 的 で
136
ゆ
あ っ た。 文 化 的 ア ナ ー キ ズ ム に とっ て 、 持 続 、 固 持 、 一 語 で 言 え ば 、 伝 統 は、
自 由 の更 改 に対 す る最 悪 の 障 害 、 過 去 の 堕 落 的 、 変 形 的 、 疎 外 的 支 配 、 受 動 性 と隷 属 へ の 還 元 を な す 。 過 去 は、 そ れ が 過 去 、 時 代 遅 れ 、 古 い こ とだ か ら非 難 さ れ るの で な く、 それ が 場 合 に よ っ て 新 しい こ と を妨 げ る所 与 で あ るか ら、 非 難 さ れ る。 す な わ ち、 そ れ は そ の現 前 の み に よ って 、 未 来 に対 す る障 害 で あ る か ら、 非 難 され る。 そ の 惰 性 に よ って 、 そ の 重 さ の み に よ っ て 、 そ の 志 向性 や そ の 意 味 ま た は その 善 意 が 何 で あ れ 、 それ は 自由 の 自発 性 を粉 砕 し、 抑 圧 し、
鎮 圧 す る。 伝 達 す る 力 と して の伝 統 は、 同 時 に 服 従 させ 、 順 応 させ る力 を 行 使 す る。 そ れ は 各 世 代 を 、 先 行 の世 代 が そ うで あ っ た もの で しか な い よ うに 追 い や る傾 向 が あ り、 こ う して 次 第 に 、 や っ て 来 る人 々 を 、 存 在 した 人 々 の 模 範 、 鋳 型 に閉 じ込 め 、 そ して 新 人 た ち が もは や そ れ を免 れ る こ とが で き な い よ うに す る。 伝 統 か らは 、均 質化 、 一 致 しか 生 じる こ とが で きず 、 それ は人 格 の 窒 息 、 差 異 の 粉 砕 と同 時 に 、 己 の 己 に よ る解 放 と形 成 の あ ら ゆ る能 力 の 除 去 を 伴 う、
隷 従 を もた らす もの で あ る。 伝統 とは服 従 で あ り、遺 産 とは隷 属 で あ る。
で は、 伝 統 が一 つ の 文 化 を伝 播 す る と き、 そ れ が た ん に政 治 体 制 の み で な く、
文 化 的 環 境 の全 体 を保 存 し維 持 す る傾 向 が あ る とき、 この こ とは何 を 表 す の か 。 価 値 の総 体 、 知 識 と技 術 の総 体 、 制 度 や 生 活 様 式 や 習 俗 の 総 体 は、 伝 統 の 力 と 権 威 に影 響 を受 け 、 伝 統 の配 分 す る成 功 と利 益 の 恩 恵 に浴 し、 か つ か か る総 体 の 利 益 の た め に保 存 の 基 礎 的 原 理 を 活用 す る の で あ る。 そ の とき 、 伝 統 は教 育 の形 式 を と り、 か つ 教 育 に よ っ て 、 そ れ は た ん に 存 在 の 外 的 様 式 の み な らず 、 最 も内 奥 の 確 信 や 、 普 通 な ら最 も 自発 的 で あ る気 力 、 思考 と行 動 の 方 法 に さえ 浸 透 す る。 よ り粗 野 な ドイ ッ語 は、 その とき教 養(Bildzcng)に つ いて 語 る こ と が で き るが 、教 育 が 形 の は っ き り しな い生 気 の な い素 材 の 型 作 りに な る こ とを 示 す の で あ り、 また は教 育 を 飼 育(Zuchtung)と して 表 しつ つ 、 いか に して 自 由 が 調 教 の な か で 消 滅 す るか を示 す の で あ る。 差 異 は 、 新 し さ と同様 に 、 自 由 と と も に 除 去 され る。 そ して 、聖 な る価 値 や 支 配 的価 値 、 あ の 思 考 や 行 為 を最 も普 遍 的 な仕 方 で 規 制 す る価 値 、 が 問 題 に な れ ば な る ほ ど、 支 配 が 、 そ して類
20)
似 へ の 、 また 従 属 へ の還 元 が 、 そ れ だ け 問題 に な る。
だ か ら、 文 化 的 ア ナ ー キ ズ ム の 主 張 に よれ ば、 次 の こ とは ま っ た く明 らか で あ る。 一 文 化 の 普及 の 表 現 に して 手 段 で あ る、 学 校 、 大 学 、 す な わ ち 自由 へ 、
政 治的義務 と文化的義務 i37
また 自律 的 思 考 へ と形 成 す る こ とに 向 け られ た い わ ゆ る教 育 の 諸 制 度 は 、 それ らが 教 育 の 、 ま た 伝 統 の 手 段 で あ る の で 、 す ぐれ て型 作 り、調 教 、 教 化 、 隷 従 の 手 段 で あ る。 こ う して そ の 保 守 的 マ キ ア ヴ ェ リズ ム を よ く示 しなが ら、 自 由 主 義 は 、 教 育 と教 職 の 自 由 を 、 諸 個 人 の 解 放 と解 放 的 諸 制 度 の 設 置 との 、 至 高 の 最 も効 果 的 な道 具 と して理 解 させ る手 段 を見 出 した の だ ろ う。 ひ とが よ く分 か るの は 、 そ の反 対 に、 過 去 へ の 、 そ れ につ い て な され う る 自覚 へ の 、 それ か ら出 て くる諸 事 由 の 秩 序 へ の 教 育 で しか 決 して な い教 育 が 、 いか に して 、 新 し い もの で あ るす べ て の こ と に課 され た 抑 圧 の 、 また 自 由 で 異 な っ て い るあ らゆ る もの に対 す る鎮 圧 の 、普 遍 的 な シ ス テ ム を な す の か とい う こ とで あ る。 自 由 主 義 的 教 育 は 、 その 開 放 性 とそ の寛 容 を 口実 とす る こ とを 望 む の だ ろ うか 。 そ れ は 、 それ を構 成 す る諸 要 素 の 多 様 性 に 対 して しか 一 そ の 構 成 の な か に入 ら な い もの を よ りよ く排 除 し無 視 し、 実 は よ り よ く削 滅 し抑 制 す る た め に 一 寛 容 で な い こ とを 、 ひ とは 理 解 しな い だ ろ うか 。 一 つ の 文 化 が 寛 容 で あ る権 利 を 己 に与 え る と き、 そ れ は そ の 文 化 が 、 己 の諸 矛盾 を抑 え て 、 穏 や か な 内 的 調 和 を整 え る に至 っ た とい う こ とで あ る。 そ の文 化 で な い あ らゆ る もの に とっ て 、 そ れ は よ り排 他 的 で よ り抑 圧 的 に しか な らな い 。 も しそ れ が 討 論 を認 め る とす れ ば 、 それ は 己 の 原 則 か ら発 し、 か つ 己 の基 準 に応 じて の こ とで あ る。 そ の 内 的成 功 を普 遍 性 の 証 拠 に 仕 立 て て 、 それ は 、 実 は 己 の 外側 に見 られ る もの を 、 誤 謬 、 野 蛮 、 そ して反 文 化 と して 扱 うの に有 利 な 立 場 に あ る の だ か ら。 寛 容 が
zu
実 現 され 、 仕 上 げ られ るほ ど、 そ れ だ け そ れ は 「抑 圧 的 」 で あ る。
この こ とは 、 すべ て の も のが 関連 して い る所 与 の文 化 に対 して 見 出 す こ との 可 能 な 、 妥 協 は存 在 しな い こ とを よ く示 して い る。 文 化 的 ア ナ ー キズ ム は根 本 的 な 文 化 的 革 命 を要 求 しな い わ け に は い か な い。 革 命 の この ア ナ ー キ ズ ム 的 考 え 方 を解 明 す るた め に、 ア ナ ー キ ズ ム の 自 由(且aliberteanarchists)の 主題 を再 び 取 上 げ ね ば な らな い、 とポ ラ ン は考 え る。 なぜ な ら、 革 命 は明 らか に こ こで は 、大 衆 の レベ ル にお い て と同 様 、 個 人 の レベ ル で 、 か か る 自 由 の行 使 と して 考 え られ て い るか らで あ る。 ア ナ ー キ ズ ムの 文 化 的 革 命 は 、 絶 え ず刷 新 さ
'l2)
れ る革 命 的 行 為 に お け る、 現 動 と して の ア ナ ー キ ズ ム 的 自 由 で あ る。
この 革 命 の 主 題 の 分 析 に お い て は、 た ん に それ が所 与 の 資 格 で 抑 圧 的 で あ る か ら とい っ て 、 そ の 意 味 が 何 で あ れ 、 あ らゆ る所 与 の 根 本 的 拒 絶 に ま で立 ち戻
i38
らな い よ うに し よ う。 か か る拒 絶 は 、 自発 的 力 、 先 導 的 力 、 最 初 の 始 ま りの 力 とい うそ の 働 き 自体 に還 元 され た 、 自 由の ア ナ ー キ ズ ム 的 な狭 い 考 え方 に対 応 す る 。 その 反 対 に 、 い っ そ う変 化 の 高 揚 、 永 続 的 変 形 の 高 揚 を 、 ま さ し く人 間 的 な 存 在 の適 切 な 様 態 と して 強 調 す る こ とに し よ う。 人 間 的 に生 き る とは 、 別 の もの に な る こ とで あ る。 古 代 風 の 思 考 に とっ て 、 堕 落 と破 壊 の様 態 で あ っ た 改 変 は 、 こ こで は遂 行 と享 受 の様 態 で あ る。 完 全 さ を 示 す た め に 、 完 成 、 目的 、 結 果 、 お よび成 功 さ え も連 想 させ た 、 す べ て の 観 念 を逆 さ ま に と ら な け れ ば な
らな い。 勝 利 は、 そ れ に 反 して 、 生 成 、 変 化 の 事 実 、永 続 的 な 変 化 の 状 態 に あ る事 実 の な か に あ る。 自由 は変 わ りや す さ(mobilite)と 混 同 され る。 あ ら ゆ る完 成 は 、直 ち に抑 圧 的 な 硬 直 化(sclerose)で あ る。 そ の成 功 の ゆ え に 、 あ らゆ る結 果 は 、強 制 の始 ま りで あ り、 鎮 圧 を 引 き起 こす 。 だ か ら、最 後 ま で行 っ て う ま くい くよ り も、 変 え る こ と、 変 形 す る こ とが 重 要 で あ る、 と言 わ な けれ ば な らな い 。 実 際 は 、 大 事 な こ と は、 結 果 、 成 功 で は な い。 お そ ら く、 こ う し た 結 果 の 意 味 は大 事 で は な い と さ え主 張 しな け れ ば な ら な い か も知 れ な い。 大 箏 な こ とは 、 それ が 存 在 して い た もの と別 なふ うに 、 ひ とが な して い た も の と 別 な ふ う に、 す る こ とで あ る。
か か る変 化 の た め の 変 化 の 熱 狂 の な か で 、 一 世 紀 半 前 か らそ の 哲 学 が 不 可 欠 の も の で あ っ た 、 歴 史 の 観 念 まで 一 歴 史 が 永 続 性 、 保 存 、 本 質 的 発 展 、 そ れ に ま た意 味 に つ い て 、 含 意 す る あ らゆ る こ との た め に 一 、再 び 問題 に さ れ な い もの は な い。 優 位 を 占 め るの は、 即 時 性 と非 連 続 で あ り、 そ れ ら と とも に 、
23)
あ らゆ る秩 序 の根 本 的 欠 如 と して の無 秩 序 で あ る。
あ らゆ る絆 の 欠 如 に お け る無 秩 序 、 意 味 の 欠 如 、 根 本 的 不 確 定 は 、 自 由 と同 等 の もの と見 な され る の で 、 生 成 の過 程 や 変 化 の 過 程 す ら を も、 そ れ らの始 ま りか ら と同様 、 そ れ らの 目的 か ら切 り離 さな け れ ば な らな い 。 一 変 化 また は生 成 は 、 潜 在 能 力 の 成 就 で な い と同様 、 目的 の実 現 で な い 。 い わ ゆ る現 動 に お け る 自由 、 変 化 は 、 解 放 の た め の解 放 で あ る。 す な わ ち 、 不 確 定 の た め の不 確 定 で あ る。 他 の あ ら ゆ る考 慮 は、 自由 に対 す る襲 撃 に して 脅 威 、 さ ら に隷 従 の 手 段 で あ る。 生 成 に お い て重 要 な こ とは 、 運 動 で あ り、実 行 で あ り、 様 式 で あ る。
様 式 は そ の うえ 、 ひ とが それ か ら受 け る享 楽 と切 り離 せ な い。 行 為 、 変 形 作 用 を 、 その 最 初 の 状 況 か ら、 ま た そ の 目 的 さ え か ら分 離 した お か げで 、 ひ と は少
政治的義務 と文化的義務
139
しず つ それ か ら行 動 の本 質 的 性 格 を奪 い 、 そ れ に 遊 戯 の性 格 を与 え る よ う に な る。 実 行 で え た 喜 び 、 己 の 力 の 使 用 か ら生 ま れ た 興 奮 、 生 成 の 感 銘 、 力 の た め の 力 の 陶 酔 が 、 遊 び の安 逸 の な か で 、 つ ま りあ らゆ る規 則 、 結 果 や 成 功 へ 向 か うあ ら ゆ る緊 張 、 の 崩 壊 に よ っ て保 証 され た 安 易 さの な か で 体 験 さ れ る。 真 の 結 果 は 、 実 行 の な か に あ り、 行 動 は もは や 遊 戯 と区 別 さ れ な い。 活 動 の た め の 活 動 、 変 化 の た め の 変 化 は 、 も う仕 事 で な くス ポ ー ッ に通 じ る。 革 命 は作nrinを 実 現 す る こ とを 求 め る の で な く、 手 柄 を求 め る。 何 らか の こ とを な す こ とが 問 題 で な く、 変 革 す る こ とが 問 題 で あ る。 そ の と きか ら、 す べ て は容 易 な もの と な り、 ひ とは す べ て が 容 易 で あ る こ とを願 う。 革 命 的 活動 は 安 易 さ と歓 呼 の な か で戯 れ る。 あ ら ゆ る真 面 目 さ とあ らゆ る真 面 目の 精 神 を 嘲 笑 しな が ら、 か か る 活動 は あ らゆ る努 力 とあ ら ゆ る苦 痛 を排 除 す る。 そ れ は 情 熱 的 で な い、 なぜ な ら情 念 は あ ま りに深 刻 だ か ら。 そ れ は最 も 自発 的 な もの の 解 放 に お いて 、本 能 、 欲 動 の は け1=1に位 置 す る。 そ れ は情 動 性 の 自発 性 の な か に最 も効 果 的 な実 践 を 見 出 す と主 張 す る。 そ れ は い わ ば 、 受 動 的 に 活 動 に 身 を ゆ だ ね る。 そ れ ゆ え に 、 それ は 直 接 性 の レベ ル に位 置 し、 そ こに 己 の 飛 躍 と、 点 状 の 衝 動 的 な 自 発 性 の ぎ く し ゃ く した動 き 一 己 に か く もふ さわ しい もの 一 を見 出 す。 瞬 間 と直 接 的 な もの の 思 い 上 が りか ら、 か か る活 動 は それ が願 う あ らゆ る正 当化 を 受 け と る。 なぜ な ら、 そ れ は そ れ が 現 に そ うで あ る もの の 彼 方 へ 遡 る こ とは な い か ら。 過 去 の 、 ま た未 来 の 、 あ ら ゆ る厳 しい 隷 属 よ り も、 それ は つ ね に一 時 的 な 現 在 の興 奮 を選 好 す る。 か か る現 在 の枠 組 み は、 あ らゆ る意 義 の 手 前 に 、 己 の 真 正 な 、 絶 対 的 な存 在 を見 出 した い、 自由 の つ ね に 新 しい遊 び に ふ さ わ し い。 この 自 由 に とっ て、 存 在 す るた め に は、 「解 放 す る」 こ とで 、 「自由 に な る」
こ とで 十 分 で あ る。 そ れ は 意 図 、意 味 を表 現 し、 ま た 作 品 を実 現 す る必 要 は な い し、 お そ ら くそ うす る こ とを恐 れ るだ ろ う。 しか し、 これ で は所 与 の な か に
'24)
は ま り込 み 、 その な か に 自分 の 自由 を放 棄 す る こ とで な い だ ろ うか 。
だ か ら、 ア ナ ー キ ス トた ち は政 治 に お い て 下 手 な戦 術 家 で あ り、 その 古 典 的 な 人 た ち も近 代 的 な人 た ち も、 挫 折 を繰 り返 した こ とに 、 ひ とは 驚 か な い だ ろ う。 それ は戦 術 の 要 請 が 、 か れ らの 願 い ご との邪 魔 を す るか らで あ る。 結 局 の と こ ろ、 か れ ら は戦 術 に 、 そ の規 則 と同 様 、 そ の 究 極 目的 に、 無 関 心 で あ る。
当 然 な が ら、 ほ とん ど、成 功 は か れ ら を楽 し ませ な い 、 と言 っ て も よ いか も知
/40
れ な い 。 か れ ら に は 、 自 由 に生 きた こ とで 、 す な わ ち 己 の 自 由 に した が っ て生 き た こ とで 、 そ して そ の 他 諸 々 に 異 議 を 唱 え た こ とで 十 分 で あ る。
か れ らを 楽 しませ る こ と、 か れ らの 成 功 の 代 りに な る こ とは 、 別 な 風 に な し う る こ と、 また それ 自体 以 外 の 意 図 を もた な い あ の 自発 性 、 か れ らが 自由 と取 り違 え る あ の 自発 性 、 を 行 使 した こ とで あ る。 それ を 乗越 え る計 画 を 欠 い た か か る変 化 は 、 そ れ 自体 に 閉 ざ さ れ た 否 定 の行 使 に帰 着 し、 こ こに ア ナ ー キ ズ ム は 己 の 革 命 的 な 真 正 性 を 見 出 す。 か れ らは 、 す ぐれ て 弁 証 法 的 な 原 理 で あ る、
創 造 的否 定(lanegationcreatrice)の ヘ ーゲ ル 的 主題 を、 除 去 、 解 体 、 破 壊 の手 段 と して考 え られ 、 また した が って 、 諸 カ ー そ の 自発 性 は こ う して 開 か れ た 空 虚 の な か の 最 初 の 始 ま り と して 示 さ れ る 一 の 解 放 、 自 由化 の 手 段 と し
'L5)
て考 え られ た 、 む き 出 しの 否 定(lanegationnue)に 還 元 す る。
否 定性 の 高 揚 は、 ポ ラ ンに よれ ば 、 多 少 とも近 くか ら結 び つ く可 能 性 の あ る、
等 し くア ナ ー キズ ム的 な二 つ の帰 結 を もた らす 。 最 初 の帰 結 は次 の よ うで あ る。
ひ とは 否 定 の遂 行 の な か に、 破 壊 、 解 体 の光 景 の なか に 、 最 も凡庸 な 人 々 や 最 も弱 い 人 々 に よ って す ら、 容 易 に 行 使 され た 力 の 証 拠 を 見 出 し う る。 ひ と は作 品 を や り遂 げ る よ り も、 それ を破 壊 す る こ とが どれ ほ ど易 しい か 知 っ て い る。
ひ とは た や す く正 当 化 す る理 論 に か こつ け て 、 攻 撃 の基 礎 的 本 能 や 最 も手 軽 な 意 地 悪 い喜 び(Schadenfreude)さ え も、安 価 で 満 足 させ る。 ひ とは、 粗 暴 で あ る こ とが どれ ほ ど易 し く励 ま し とな るか を発 見 し、 ま た 、 ひ とは 直 接 性 の 激 し さ、 現 在 へ の 閉 じ こ も り、 結 果 とあ らゆ る戦 術 の軽 蔑 とた い そ う よ く調 和 す る、
暴 力 を 楽 しむ こ とを学 ぶ 。 ひ とは 己 の な か に破 局 の趣 味 を、 ま た 根 絶 す る熱 意 と とも に、無 の魅 惑(lafascinationduneant)を 発 達 させ る。ひ とは そ こに 、 ひ とが 自 由 と称 す る もの の 特 権 的 な様 式 と固 有 の 場 所 を 見 出 す まで に い た る。
しか し、 世 の終 わ り(apocalypse)へ の こ う した傾 向 は 、 よ り厳 密 に は、 ニ ヒ リズ ム の ヒ トラー主 義 的逸 脱 に属 す る。 一 そ の逸 脱 は ア ナ ー キズ ム と姻戚 関 係 の あ るニ ヒ リズ ム に、 た い そ う遠 くか ら結 び つ い て い る にす ぎ な い の だ が 。 文 化 的 ア ナ ー キ ズ ム は、 歓 呼 の な か で 発 揮 され るの で あ っ て 、 悲 劇 の な か で 発 揮 さ れ るの で は な い 。 悲 劇 は む しろ そ の 犠 牲 者 た ち の 運 命 で あ る。 な ぜ な ら、 か れ らは 、 意 味 と準 拠 の何 もな い否 定 の な か に す っか り収 ま る ア ナ ー キ ズ ム 的 自
'L6)
由 の 、 す な わ ち 絶 対 的 自 由 の 、 真 の 意 味 を理 解 しよ う と は しな か った か ら。
政治的義務 と文化的義務
/4/
第 二 の 帰 結 は次 の よ うで あ る。 近 代 の ア ナ ー キ ズ ム は、 む しろ否 定 的 活 動 の なか に 、豊 か さ と創 造 の 十 分 な 手 段 を見 るか も知 れ な い。 革 命 は それ 自体 で 創 造 的 で あ る。 新 しい 作 品 の創 造 が、 受 取 った 作 品 を破壊 す るの で は な い。 受 取 っ た 作 品 の 革 命 的 破 壊 こ そ が 、 ひ とが 望 む とこ ろ で は 、 新 しい 作 品 を作 る。 われ わ れ は 、 だ か ら こ こ に、 革 命 そ れ 自体 に よ っ て解 放 され 、 あ お られ 、 擬 人 化 さ れ た 、 魔 法 の想 像 力 の 創 造 的 力 を再 び見 て い る。 革 命 は ま さ し く想 像 力 を 一 他 な らぬ 空 想 、 気 ま ぐれ を 一 権 力 の座 に つ け る。 今 日の ア ナ ー キ ズ ム は 、 と か く大 衆 に 対 して次 第 に距 離 を と り、 大 衆 に創 造 す る 自発 的権 力 を認 め て いた 人 々 を否 認 し、 か つ 、 こ う して 「あ らゆ る プ ロパ ガ ン ダ、 あ らゆ る教 化 、 あ ら ゆ る順 応 主 義 か ら解 放 され た 」 諸 個 人 の 、創 造 の 力 と決 定 力 を 強 調 す るで あ ろ
う。 こ う して 、 「本 質 的 に 新 しい歴 史 的 主 体 に よ って 刷 新 され た 、 自由 な社 会 」 が形 成 さ れ るだ ろ う。 そ して 、 ひ とは競 っ て 、 永 続 的 反 抗 とは 自由 で あ る こ と を 宣 言 す るだ ろ う。
三 政 治 的 アナ ー キ ズ ム と文 化 的 ア ー ナ キ ズム
文 化 的 ア ナ ー キ ズ ム は 、 逆 説 的 に 政 治 体 制 の 内 部 で 表 明 され う る し、 また そ れ を破 壊 す る こ とな しに 生 き 残 る こ とさ え で き る。 ポ ラ ン は そ れ を体 験 した と 感 じて い る。 この こ とか ら分 か るの はた ん に 、 か か る文 化 的 ア ナ ー キ ズ ム が 実 際 的 で あ る よ りも空 想 的 で あ る 、 と い う こ とで あ る。 そ の 有 効 性 は 、 そ の 内 的 矛盾 に よ っ て 抑 制 さ れ て いた 。 革 命 的 遊 戯 は 、 十 分 に 深 い 仕 方 で も十 分 に誠 実 な仕 方 で も、 習 俗 を は み 出 す こ とに 成 功 しな か っ た。 文 化 的 革 命 家 は 、 あ ま り に しば しば成 功 す る とは 思 え な い が 、 朝 は西 欧 文 化 の 消 費 者 、 昼 に は ブ ル ジ ョ ワ諸 技 術 の 消 費 者 、 夕方 は、 も し くは大 学 で は 、 文 化 の 革 命 家 、 そ して 週 末 も し くは 休 暇 中 は 、 資 本 主 義 的 消 費 者 で あ る。 こ う した 消費 社 会 を蔑 視 す る人 々 は、 実 際 は もっ ぱ ら消 費 者 で あ っ て 、 生産 者 で は な い。 かれ らの 労働 の 蔑 視 は、
2s)
仕 事 す る こ との 拒 絶 と同 等 で あ る。
どん な 主 人 も認 め ず 、 す べ て の 人 が そ の 自我 を 十 分 に実 現 して主 人 の よ うに 生 き る こ とを望 む 、 今 日の ア ナ ー キ ス トた ち に耳 を傾 け る とす れ ば 、 ヘ ー ゲ ル
29)
は もは や 主 人 の倫 理 も、 そ れ に奴 隷 の 倫 理 も、 認 め な い こ とだ ろ う。 労 働 の 価
142
値 を認 め な い奴 隷 の 倫 理 に つ いて 、 彼 は 何 と言 うだ ろ うか 。 ま た 、 他 の あ ら ゆ る価 値 の うえ に 、 生 命 の価 値 と生 命 の 享 受 の価 値 を お く主 人 に つ い て 、 彼 は 何
と言 うだ ろ うか 。
大 きな リス クの な い この 遊 戯 が 引 き起 こ す政 治 的 動 揺 は 、 どれ ほ ど文 化 的 ア ナ ー キズ ム は 政 治 的 ア ナ ー キズ ム ー そ もそ も理 論 で は 明 白で あ った こ と 一 を含 み 込 む か を よ く示 して い る。 も し今 日の ア ナ ー キ ズ ム が よ りは っ き り と価 値 、 習 俗 、文 化 的 制 度 に 戦 い を挑 む とす れ ば 、 それ は 文 明 の近 代 的 形 式 、 技 術 の拡 大 、 情 報 手 段 の 力 、 教 育 の ます ま す高 ま る形 式 の 普 及 が 、 今 日 の人 間 を、
そ して と くに 青 年 を 、 形 成 し情 報 を与 え 閉 じ込 め、 彼 を教 化 して お り、 政 治 権 力 が 以前 の 諸 体 制 一 そ れ らが どれ ほ ど専 制 的 な も の で あ りえ た と して も 一 の 臣民 た ち を強 制 し隷 属 させ る こ とに か つ て 成 功 しな か っ た ほ どに 、彼 を 内側 か ら強 制 して い る、 と見 え るか らで あ る。
こ う して 、 文 化 的 ア ナ ー キズ ム の や か ま しい 抗 議 に よっ て 、 文 化 的 総 体 とそ れ に よ って 生 き る諸 個 人 一 そ して 文 化 的 総 体 もか れ らに よ っ て生 き る 一 と の、 重 要 な 、 そ して お そ ら く本 質 的 な 関 係 が 明 らか に され る。 ア ナ ー キ ス トた ち は 、 こ の 関 係 を強 制 と屈 服 の 関 係 で あ る とす る、 す な わ ち、 そ の 関 係 は 臣 民 た ち を教 化 し、 疎 外 し、 服 従 させ 、 搾 取 し、 か れ らを あ る共 通 の 典 型 に 、 均 質 性 と い う た だ 一 つ の 側 面 に 、 順 応 さ せ る ビ ヒモ ス=文 化(leBehemoth‑
culture)で あ っ て 、 それ は リヴ ァイ ア サ ン=国 家(leLeviathan‑Etat)も 、 政 治 的 に そ の 臣 民 た ち を隷 属 させ る こ と にか つ て成 功 しな か った ほ どで あ る と す る。 文 化 の 全 体 主 義 は 、 か つ て 政 治 的 ア ナ ー キ ズ ムが 国 家 の 専 制 主 義 を告 発
30)
した の と同 じ程 度 の 力 を こめ て 告 発 され て い るの が 分 か る。
この 主 題 の簡 略 主 義 は 、 そ れ に成 功 の 外 見 を 付 与 して い る。 す べ て は先 ず何 よ り も、 諸 々 の 文 化 に依 存 す るが 、 しか し文 化 は す べ て で な い し、 本 質 的 に 全 体 主 義 的 で な い 。 ち ょ う ど、 すべ て は諸 々 の 国 家 に依 存 す る が 、 しか し国 家 は す べ て で な く、 本 質 的 に 専 制 主 義 的 で な い よ う に。 ポ ラ ン は 、 文 化 とそ れ を担 う人 々 との 関 係 は、 双務 関 係 で も、 単 純 な 強 制 の 関係 で もな い こ とを 示 した い と言 う。 相 互 的 関 係 の 総 体 の枠 組 み の な か で 、 この 関 係 は ポ ラ ン に は 、 文 化 的 義 務 の 名 称 の も とで は るか に よ く描 か れ る よ うに 見 え る。 そ して 、 政 治 的 義 務 は その 諸 要 素 の 一 つ で しか な い 。
政治的義務 と文化的義務
143
マ ル クス は 『ドイ ツ ・イ デ オ ロギ ー』 に お い て、 連 関(Zusammenhang)の
名 の も とに 、 社 会 の メ ンバ ー た ち を互 い の 間 で 、 か れ ら と全 体 との 間 で、 また か れ ら と諸 制 度 す な わ ち全 体 を構 成 す る二 次 的 な諸 々 の 総 体 との 間 で 結 び つ け る、 か か る相 互 的 関 係 の 総 体 を 明 らか に して い た 。 マ ル クス は そ の 総 体 の構 成 が どの よ うに して 、 全 体 の 歴 史 的発 展 の な か で そ の諸 構 造 相 互 の反 応 か ら帰 結 す るか を 示 しっ っ 、 か か る全 体 を 大 きな 審 級 、 大 き な構 造 に よっ て描 い て いた 。 しか し、 彼 の叙 述 の 公 準 は 、 そ の分 析 枠 組 み の使 用 を一 方 的 で 、貧 しいものに した。 彼 の 努 力 とエ ン ゲ ル ス の 努 力 に もか か わ らず 、 経 済 構 造 の 、 上 部構 造 と 呼 ば れ る他 の諸 構 造 に対 す る主 要 な 決定 の 教 説 は 、 相 互 的影 響 を最 小 限 に し、
そ の特 定性 、 つ ま り他 の諸 構 造 相 互 間 の 弁 証 法 的 な 独 立 性 を破 滅 させ た 。 こ う した 諸 分 析 をた ん な る イ デ オ ロ ギー で しか な い哲 学 的 解 釈 と して で な く、 歴 史 の 科 学 と して 認 め させ よ う とす る実 証 的 で政 治 的 な気 遣 い は 、 全 体 の 枠 組 み の な か で 行 使 され る諸 決 定 の厳 密 な 性 格 を強 調 し、 か つ 実 際 は諸 状 況 や 諸 条 件 の 分析 を因 果 関 係 の 図 式 に還 元 す る よ うに導 い た 。 同時 に 、 弁 証 法 の つ なが り、
そ の 諸個 人 の 自 由 との関 係 一 そ れ は歴 史 的 生 成 に とっ て本 質 的 で あ る 一 は 、 失 わ れ た 。 そ の 一 方 で 、 歴 史 の原 動 力 は諸 自 由 の 紛 争 で あ る こ とを や めて 、 少
しず つ 基 本 的 な 歴 史 的原 因 に変 え られ た 、 ま た あ らゆ る社 会 的 説 明 の 十 分 な原 理 に 変 え られ た 、 諸 階 級 の 紛 争 に な って しま っ た 。 マ ル クス が 諸 文 化 の いか ん と も し難 い複 数 性 の 発 見 や歴 史 的 諸 系 列 の い か ん とも し難 い 多 様 性 の 発 見 を吸 収 しなか った とい う事 実 、また ひ とが 何 と言 お う と も、彼 が 単 系 の(unilineaire) 歴 史 理 論 だ けで 満 足 して い た と い う事 実 は 、 彼 が 厳 密 で 決 定 的 な 科 学 の報 告 と
3q
して 提 示 した 図 式 を さ ら に 固 く し単 純 化 した 。
ポ ラ ンが その 只 中 に政 治 的義 務 を描 く とこ ろ の文 化 的連 関(Zusammenhang culturel)は 、 マ ル クスが 幾 つ か の仕 方 で 描 いた 社 会 的 連 関 か ら区 別 され る。 そ れ は 他 の 諸 文 化 、 他 の諸 歴 史 と対 照 的 に、 特 殊 な 一 つ の 文 化 とそ の 歴 史 に か か わ る。 他 の諸 文 化 ・諸 歴 史 は後 者 と根 本 的 に 異 な って お り、 しば しば 根 本 的 に 後 者 へ 還 元 しえ な い の で あ る。 文 化 的 連 関 は特 定 的 で 互 い に還 元 しえ な い諸 構 造 の 多様 性 を し まい 込 ん で い るが 、 そ れ ら の弁 証 法 的 つ な が りは、 相 互 依 存 に お け る独 立 を認 め 、 か つ 保 証 す る。 そ う した諸 構 造 の 間 に 、ポ ランは単 純 な因 果 関 係 の 存 在(そ れ は お お よそ 、 それ らの 関 係 を ビ リヤ ー ド台 の うえ で 衝 突 し
144
合 う ビ リヤ ー ドの 間 に あ る関 係 と同列 に お くだ ろ う)も 、 一 つ の下 部 構 造 か ら 諸 上 部 構 造 へ 進 む 、 主 要 な 方 向 を もつ 因 果 的作 用 の 体 系 の 存 在 も認 め な い 。 因 果 の型 の これ らの モ デ ル は 、 あ ま りに初 歩 的 で 抽 象 的(そ れ らの通 俗 的成 功 は こ こか ら来 る)な ので 、 人 間 の 社 会 関 係 総 体 を 理 解 す るの を可 能 に す る こ とは
3'L)
で きな い。
問 題 とな っ て い る す ぐれ て 相 互 的 な 弁 証 法 的 諸 リエ ゾ ン は、 実 際 上 動 か な い 因果 的 決 定 を 規 定 す るの で な く、 諸 個 人 が 被 りそれ か ら立 去 る こ とは で きな い が 、 そ の変 化 に貢 献 す る こ とは か れ らの本 性 と力 の な か に あ る とこ ろ の 、 存 在 の諸 状 況 、諸 条 件 を規 定 す る。 理 解 す る、 拒 絶 す る、 乗 越 え る、 そ れ は 結 局 、 人 間 の資 格 に お い て 人 間 が 行 使 し うる力 で あ る。 そ れ は彼 の存 在 で あ り、 そ れ は彼 の作 品(仕 事)で あ る。 彼 が 所 属 す る 一 だ が また 、 そ れ が 彼 に 属 して も い る 一 文 化 的総 体 との 、 彼 の 関 係 の弁 証 法 は 、 た しか に、 受 動 的保 存 、 同化 、 情 報 、 お よび教 育 か ら な る。 しか し、 そ れ は 同様 に、 能 動 的 保 存 、変 化 、 解 放 、 超 出 、 刷 新 、 創 造 か らな る。
か か る弁 証 法 は、 ポ ラ ン に よれ ば 、教 育 とい う平 凡 な名 前 を もつ 。 なぜ な ら、
教 育 は実 際 、 同 化 と刷 新 の 、 統 合 と超 出 の 、弁 証 法 で あ るか ら。 そ の 弁 証 法 に よっ て 、 弟 子 は 彼 が 受 取 るの と同 じ くら い 、 つ け加 え る。 教 育 の 過 程 は 、 教 育 され る者 が教 育 者 に変 わ る場 合 に しか 完 了 しな い。 そ の う え、 その 過 程 か ら交 互 に 両 者 が つ く られ るの は、 一 度 に決 定 的 に で な く、 無 限 の繰 返 しの連 続 にお い て で あ る。 要 す るに 、教 育 は真 の止 揚(Aufhebung)で あ る、 つ ま り、 教 育 は そ うで あ り う る し、 そ うで な けれ ば な らな い、 とい う こ とで あ る。 人 間 は た ん に、 また 特 定 的 に 、 存 在 と所 与 の面 で 生 存 す るの で な く、 力 と義 務 の 、 ま た 実 践 とな す こ との面 で 、 行 動 の 面 で生 存 す る の で あ る。 人 間 は た ん に 、 ま た特 定 的 に 、 一 つ の 存在 な の で は な い。 彼 は 自 由 に成 長 す る こ とが で き、 ま た そ う 義 務 づ け られ た 、 自 由 な存 在 な の で あ る。
た しか に 、各 人 は 自分 の 状 況 に沈 む ま ま に な り、 溺 れ さ え し、 出 口 な しに順 応 主 義 の な か に 閉 じ こ も る こ とが あ る。 しか し、 要 す る に、 彼 の 自由 の こ う し た腐 敗 は、 彼 な りの対 処 す る仕 方 一 投 げや りに生 活 す る 一 で あ る。 そ して 結局 、 この よ う に決 定 した の は 、 即 自的 また は対 自的 な、 彼 で あ る。 そ れ は な お も、 た と え それ が も はや 即 自的 自 由で しか な い と して も、 自由 に属 す る。 ま
政治的義務 と文化的義務 /45
さ し く人 間 的 な 存 在 、 大 人 の 人 間 存 在 は 、 あ の 弁 証 法 的止 揚 の全 体 を実 現 す る。
す な わ ち、 か か る存 在 は 、 それ が統 合 と保 存 へ 義 務 づ け られ て い る よ う に 、超 出 へ 義 務 づ け られ て い る。 文 化 的義 務 を な す の は 、 この 二 つ の 運 動 の 総 体 で あ
る 。
四 政 治 的 義 務 と文 化 的 義務
文 化 的 義 務 は そ の 基 礎 的表 現 を、 教 育 へ の 義 務 の なか に見 出 す 、 とポ ラ ン は 考 え る。 教 育 は 、 ひ とが そ の な か で 生 活 す る文 化 に 参 加 す る手 段 、 す な わ ち、
それ に寄 与 し、 そ の 何 らか の部 分 を変 え 、 そ して 、 そ こ で 己 の 役 割 を 演 じ る手 段 で あ る。 それ は 明 らか に 、 受 け取 り統 合 し同化 せ ね ば な らな い 遺 産 を 含 ん で お り、 そ れ な しで は 文 化 の保 存 も、 人 間 存 在 の可 能 性 も な い で あ ろ う。 人 間 は も との ま まの 自然 か ら始 ま るの で な く、 彼 は一 定 の 文 明 の 歴 史 的 状 態 か ら しか 人 間 と して 存 在 しな い 。 しか し、 自発 的 な 服 従 と同化 の こ の最 初 の 時 期 は 、 そ れ が 第 二 の 時 期 一 そ れ は解 放 と超 出 に属 す る 一 を 準 備 す る場 合 に しか 、 意 味 を も た な い し、 可 能 で さ え な い 。 一一の 時 期 は 、第 二 の 時 期 と同 じ く ら い能 動 的 で あ る。 す な わ ち 、 ど ち らの 場 合 に も、 ひ とは 、 も し自分 自身 に よ っ て 教 養 を身 につ けな い な らば 、 被 っ た所 与 に よっ て も、 他 の 人 々 に よ って も、 育成 され な い。 人 間 は教 師 を 必 要 とす るが 、 しか し教 師 は 、 他 人 を ま さ し く人 間 的 な存 在 に導 くこ とは で きな い 。 一 も し後 者 が彼 の教 師 の行 動 を受 け入 れ ず 、 ま た要 す る に 、彼 自身 、 自制 しな い な ら ば。 唯 一 決 定 的 な 、 最 後 の 歩 み は、 つ ね に ひ とが ま っ た く一 人 で な す 歩 み で あ る。 文 化 そ れ 自体 が 、 それ が被 る超 出 に よ っ て 、 そ の歴 史 的 生 命 で 生 き て い る。 す な わ ち 、 そ の歴 史 、 そ の価 値 は そ の
34)
恒 常 的 な変 化 に よ って 決 ま る。 教 育 の原 則 は、 それ な りに永 続 的 な 教 育 に あ る。
教 育 の こ う した 関 係 を た ん な る強 制 の 関 係 と して 描 く こ と は、 ポ ラ ン に よれ ば、 不 誠 実 な簡 略 主 義 に 引 き こ もる こ とで あ る。 な ぜ な ら、 ひ とは弁 証 法 的 過 程 の第 二 の 契 機 、 す な わ ち本 質 的 で 必 然 的 な契 機 で あ る、 否 定 的 に して 創 造 的 な 契 機 、 を 無 視 して い る か ら。 また 、 ひ とは あ らゆ る教 育 は結 局 、 自 己 に よ る 自己 の 教 育 で あ る とい う事 実 を 無 視 して い るか ら。 また 、 ひ とは 教 育 の戯 画 で あ る、 や り損 な っ た 、 し く じっ た 教 育 しか例 と して あ げ な い か ら。 こ う した 失
i46
敗 を 前 に して 、 非 難 しな けれ ばな らな い の は、 教 育 それ 自体 で は な い 。(自 発 的 な 自由 な存 在 の た め に 、 教 育 を廃 止 す る とい うの は 、 言 葉 遣 い に お い て 何 とい う不 条 理 で あ ろ うか。)非 難 し改 革 しな け れ ば な らな い の は 、粗 悪 な 教 育 、 全 体 主 義 的 調 教 で あ る。
ポ ラ ン に よれ ば、 教 育 は 自 由 の 作 品 で あ る。 そ れ は また 自 由 の 条 件 で あ る。
それ は教 養 の あ る人 間(1'hommecu且tive)に 、 自然 の 強制 を制 御 す る こ と を、
また 他 の 人 々 の強 制 を 免 れ る こ とを可 能 な ら しめ る。 な ぜ な ら、 自 由 の生 成 は 、 意識 の 生 成 で あ るか ら。 それ は各 人 に、 も し彼 が そ う し うる な ら、 即 自か ら対 自へ 、 実 際 の 体 験 か ら明 瞭 性 へ移 行 す る こ と を、 そ して 、 も し彼 が そ う望 む な ら、 それ を試 み る こ とを 可 能 な ら しめ る。
人 間 の 特 性 は 、 生 存 す る た め に 、 大 人 と して 生 存 す るた め に 、 自分 を 教 育 し な け れ ば な らな い こ と、 成 長 しな けれ ば な らな い こ とで あ る。 人 間 存 在 は 、 人 間存 在 へ の義 務 を含 意 す る。 ひ と は本 質 に よ り、 ま た は 本 性 に よ り、 人 間 と し て存 在 す る の で は な く、 義 務 に よ って 人 間 と して 存 在 す る。 文 化 的 義 務 は 、 人 間存 在 へ の か か る義 務 の な か に 刻 まれ て い る。 それ は 自分 に 対 す る義 務 で あ り、
大 人 の 人 間 の 一 つ ま り彼 の所 属 す る文 化 が 許 容 す る最 高 度 に まで 生 活 し う る、
また その 文 化 の 創 造 的変 化 に効 果 的 に参 加 し う る、 自分 自身 を 意 識 した 教 養 の あ る人 間 の 一 その 存 在 の 条 件 で あ る。 ま た 、 それ は 文 化 自体 に 対 す る義 務 で あ り、文 化 は それ を活 気 づ け る人 々 の 総 体 の 共 同作 品 で あ る。 文 化 そ れ 自体 は 、 厳 密 に言 っ て 、 人 々 の総 体 の 固有 の 作 品 、 す な わ ち、 各 文 明 に お け る人 々 を通
して の 、 人 間 性 の 固有 の 目的 で な い か 。 な ぜ な ら、 そ れ は 理 解 し、 理 解 し合 い 、 理 解 され る手 段 を提 供 す るか ら。 また それ は 、 それ が その 目 的 と そ の機 能 を果
た す と き、 秩 序 を構 成 し、 そ の秩 序 の 只 中 で 、 人 間 は 己 の 存 在 に 意 味 と価 値 を
75)
与 え る こ とが で き る か ら、 で あ る。
文 化 の 特 性 は 、 人 々 に 教 え る諸 価 値 を提 供 す る こ とで あ り、 文 化 は 、 乗越 え られ るべ き 、 また そ れ を 乗 越 え るべ き、 か れ らの 固有 の 文 化 を 培 っ て い る。 義 務 を 吹 き込 まな い文 化 、 それ 自身 の 超 出 と と も に、 そ の 擁 護 と その 例 証 を 義 務 づ け な い文 化 は な い。 天 才 的 な芸 術 家 、 大 哲 学 者 、偉 大 な活 動 家 は、 文 化 を高 め 、 か れ らの 作 品 は そ の 文 化 の超 出 に貢 献 す る。 ひ と は、 か れ らが 文 化 に 対 し て灯 台(phares)の 役 目を果 た す 、 と述 べ た。 文 化 的 義 務 は 、 そ れ を 育 成 す る
政治的義務 と文化的義務
/47
人 々 が 身 を捧 げ る と こ ろの 、 存 在 の 意 味 を表 明 す る。 そ れ は、 か れ ら の存 在 す る仕 方 に対 して 、 か れ らの 自 由 に依 存 す る と同 時 に、 か れ ら を超 え る一 つ の基 礎 を提 供 す る。 それ は 、 ひ とが 自分 に対 して 、 ま た他 の 人 々 に対 して 説 明 し う
る 、一 層 理 解 しや す い秩 序 の 建 設 へ と しば り義務 づ け る。 それ は 、 存 在 を 、意 義 深 い 仕 方 で存 在 す る義 務 に、 意 味 に満 ち た 義務 に す る。 文 化 的 義務 の お か げ で 、 存 在 す る事 実 は、 存 在 の 価 値 に 変形 され るの が 分 か る。
文 化 の 枠 組 み の なか で こ そ、 他 者 との コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ンが 可 能 に な る 、 と ポ ラ ン は言 う。 その 最 も基 礎 的 な意 味 で は、 文 化 は他 者 との コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ン の最 初 の 諸 手 段 を元 に して 構 成 さ れ る。 そ れ は 先 ず 第 一 に 言 語 で あ り、 そ の 言 語 が 含 む 諸 意 義 の あ らゆ る体 系 で あ る。 そ れ こ そが 幾 人 か の 人 々 の 共 存 を 、 ま た共 同 体 の存 在 を、 可 能 にす る。 そ れ ゆ え に 、 政 治 的 な もの は文 化 的 な もの の 主 要 な 要 素 の 一 つ で あ る。 政 治 的 義務 は そ れ 自体 、 特 殊 な 政 治 的枠 組 み に移 され た文 化 的 義 務 の 、 独 特 な(suigeneris)特 殊 な 一 要 素 で しか な い 。 政 治 的 義 務 は多 くの源 泉 を もつ が 、 そ の あ ま り特 定 的 で な い源 泉 で あ る文化 的 義 務 は、
そ の一 般 性 に よ っ て 、 そ の最 も包 括 的 な 、 最 もや む にや まれ ぬ 基 礎 で あ る。 そ の 基 礎 が 、 道 徳 的 義 務 の な か に 凝 縮 され る あ らゆ る価 値 論 的 義 務 に よ って 、 間
7f,)
接 的 に作 用 す る だ け に そ うで あ る。
一 度、 文 化 の 意 味 、 政 治 的 な もの の意 味 、 お よ び 自 由 と義務 の 本 質 的 関 係 が 想 起 さ れ るや 、 文 化 的 ア ナ ー キ ズ ム の偽 りの 威 信 は お の ず と崩 れ る。 そ れ は そ の 脈 絡 の な さ と まや か しの 中 に くず れ 去 る。 それ は ユ ー トピア を構 成 す る こ と さ えな い。 なぜ な ら、 ユ ー トピ ア は少 な く と も、一 貫性 の あ る体 系 で あ るか ら。
この 体 系 は 、 そ の測 りが た い 実 現 の 現 実 的条 件 を考 慮 に入 れ る こ とを諦 め 、 ま た 己 を実 現 す る こ とを諦 め るが 、 可 能 な社 会 の イ メ ー ジ を組 み 立 て る の で あ り、
そ の 喚 起 の 力 に よ っ て 、 お そ ら く現 実 社 会 の 効 果 的批 判 と社 会 に 対 す る戦 いの 危 険 な 道 具 を構 成 し う るの で あ る。 文 化 的 ア ナ ー キ ズ ム は各 人 に 、 彼 の諸 々 の 欲 望 を現 実 と見 な す こ と を提 案 す るだ け で あ って 、 そ れ ら の一 貫 性 、 両 立 性 、 そ れ に もち ろん 、 実 際 的 現 実 との 関 係 性 を考 慮 しな い 。 と りわ け 、 あ た か も絶 対 的 自 由が 実 地 に世 界 の なか で意 味 を も っ て い た か の よ う に す る こ とが 肝 要 で あ る。
そ の うえ、 ひ とが さ ら に実 現 す る こ とや 決 定 す る こ とに さ え ほ とん ど気 に か
/48
け な い こ と、 ま た 、 ひ とが 抽 象 的 に主 張 す る だ け に と どめ て 、 効 果 的 、 具 体 的 に実 現 し う るか も知 れ な い不 完 全 な正 義 、不 完 全 な幸 福 を気 にか け な い こ とは 、 所 与 の世 界 に対 して 絶 対 的正 義 、 絶 対 的 平 等 、 絶 対 的 幸 福 の イ メ ー ジ を 対 置 さ せ る 、絶 え ざ る論 争 の 手 段 で あ り、 ユ ー トピ ア 的 批 判 の普 通 の方 法 で あ る。 ひ とは 自由 を、 気 ま ぐれ や 空想 と、 また 情 念 の制 御 され な い あ らゆ る 自発 性 と、
混 同 す る こ とを好 み 混 同 す るふ りを す る。 そ して 、 完 全 な 自 由 は即 自的 自 由 、 元 の ま まの 自 由 、 カ ン トが 野 生 の 自由 と呼 ん だ あ の 自 由 で あ る と主 張 す る こ と
を好 む 。 カ ン トは い ず れ にせ よ、 そ れ に よ っ て 、 最 も洗 練 され て い な い 、他 者
37)
との共 存 と最 も両 立 しな い 自 由 の形 式 を意 味 して い た。
ポ ラ ン に よ れ ば 、 絶 対 的 自 由 の 観念 は、 特 殊 な 主 題 で あ る。 なぜ な ら、 絶 対 的 な 自然 的 孤 独 の 理 論 的 で 抽 象 的 な 状 態 に お け る場 合 を 除 き、 絶 対 的 自 由 は 自 由 の反 対 で あ るか ら。 そ れ は野 生 の 自 由で あ っ て 、 そ れ を 各 人 は他 の 人 々 の 自 由 の犠 牲 に お い て しか 決 して 行 使 しな い。 も しそれ が か つ て 何 らか の 永 続 性 を もっ て遂 行 さ れ る に至 っ た とすれ ば 、 それ は 非 人 間 的 で あ る と と も に、 不 条 理 で 一 時 的 な二 つ の状 態 を生 ぜ しめ た こ とで あ ろ う。 一 そ れ らは 、 一 つ の 自然 状 態 で あ る、 各 人 に対 す る各 人 の戦 争 、 お よ び 、 それ も また 一 つ の 自然 状 態 で あ る、 専 制 的 な 状 態 で あ る。 言 い換 えれ ば、 そ れ ら は疎 外 お よ び 隷 従 の二 つ の 限
aa)
界 状 態 で あ る。
た い そ う騒 々 し く引合 い に 出 され た 「絶 対 的 自 由」 にか こつ けて 、 ひ と は あ らゆ る監 視 、 あ ら ゆ る抑 制 、 あ ら ゆ る制 限 、 あ らゆ る反 省 、 の 拒 絶 に よっ て 特 徴 づ け られ た 、 い わ ゆ る 自 由 の魅 惑 に身 を 委 ね る。 そ の 自 由 は 、 い わ ゆ る根 本 的 な 非 決 定 性 と混 同 され る。 しか し、 も しか か る純 粋 な非 決 定 が 存 在 した とす れ ば 、 それ は た ん な る受 動 的 な 所 与 、 一 種 の素 材 ω λη)、決 定 性 を 欠 いて い る が 、 いか な る決 定 性 も受 入 れ が ち な物 質 で あ ろ う。 そ れ は 、 受 動 性 そ の も の、
す な わ ち 、 す ぐれ て 開始 、 行 動 、 形 成 の原 理 で あ る 自 由 の反 対 物 で あ ろ う。 絶 対 的 自 由 とは 、 瞬 間 へ の 服 従 、 内 的 衝 動 に 身 を委 ね る こ と、機 会 や 他 の 人 々 や 外 部 に対 す る情 念 で あ って 、 外部 に あ る もの が 恒 常性 、 規 則 、 お よ び秩 序 を わ き ま え た 外 観 の も とに 感 じ られ さ え しな けれ ば そ うな ので あ る。 恣 意 の 偶 像 崇 拝 で あ る 、 か か る空 想 の 偶 像 崇 拝 は、 政 治 的 隷 属 へ の 、 ま た 一 人 な い し悪 漢 グ ル ー プ(gang)の 専 制 政 治 へ の 、 道 を開 く。 そ れ はす で に 、道 徳 的 お よ び文 化