• 検索結果がありません。

仮 名 は ど こ まで 音 を表 せ るか

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "仮 名 は ど こ まで 音 を表 せ るか"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

仮 名 は ど こ まで 音 を表 せ るか

山 本 忠 行

旨】

日本 語 の 音 声 を観 察 す る と、 仮 名 表 記 と一 致 しな い部 分 が 少 な くな い こ とが わ か る。 この 仮 名 と音 の ず れ の考 察 をふ ま え、 正 確 な 音 を仮 名 で 表 記 す る方 法 を検 討 し、 外 国 語 音 の 表 記 法 、 音 声 教 育 へ の応 用 な ど を さ

ぐっ た。

【キ ー ワ ー ド】 表 記 ・ロ ー マ 字 ・表 音 文 字 ・発 音 指 導

1.は じめ に

日本 語 表 記 の 複 雑 さ を 問 題 視 し、 特 に漢 字 使 用 を制 限 、 あ るい は廃 止 し よ う とい う意 見 は前 島 密 の 「=漢字 御 廃 止 之 儀 」(1866)以 来 、i数多 く示 され て きた 。 中 に は漢 字 廃 止 に と ど ま らず 、 仮 名 も廃 止 して ロ ー マ字 化 す べ し とい う主 張 さ え あ っ た 。 国 語 審 議 会 の 目標 も設 立 当初 か ら 「文 字 ハ 音 韻 文 字(フ ォ ノ グ ラム)ヲ 採用 スル コ ト」(1902)と され 、 これ が1963

・年 まで そ の ま ま に な っ て い た の で あ る

日本 語 の ロ ー マ 字 化 は実 現 しな か っ た が 、 漢 字 仮 名 交 じ り表 記 を維 持 した 点 、 特 に仮 名 を使 い続 け て い る の に は そ れ な りの 理 由 が あ る。 本 稿 で は仮 名 に 焦 点 を 当 て 、 ロ ー マ 字 表 記 と対 比 しな が ら、 表 音 文 字 と して の仮 名 の特 性 を明 らか に し、仮 名 表 記 の さ らな る可 能 性 につ い て論 じ る。

(2)

2.仮 名 の 特 性

仮 名 は 音 節 単 位 、 ロ ー マ字 は 音 素 単位 の 文 字 で あ る とい う点 が 根 本 的 な 相 違 点 で あ る こ とは 自明 で あ る。 これ を も とに仮 名 は遅 れ た 文 字 で あ

る とい う よ うな 主 張 も̲̲̲.部に あ る が 、 そ の 裏 付 け とな る証 拠 は な い 。 ま た 、 過 去 に ロ ー マ 字 推 進 派 が 唱 え た 、 ロ ー マ字 に切 り替 えれ ば、 識 字 率 が 高 ま り、 文 化 の発 展 、 民 主 主 義 の 発展 につ な が る とい う意 見 に同 調 す

る人 は 、 今 の 日本 に は い な い で あ ろ う。

一 部 の 科 学 的 根 拠 の な い 主 張 は別 と して も、 仮 名 の 弱 点 と利 便 性 を、

まず 明 らか に して お か ね ば な る まい 。

2.1.仮 名 の 弱 点

ロ ー マ 字 推 進 派 か ら利 点 と して挙 げ られ る もの は、 第 一 に海 外 で 広 く 使 わ れ て い る こ と、 第 二 に文 字 数 が 少 な く字 形 も単 純 な の で 漢 字 の よ う な 学 習 負 担 が な い とい う点 で あ る。

日本 語 の 標 準 的 な 表 記 は・漢 字 仮 名 交 じ り文 とされ て い る。 日本 以 外 に 仮 名 を用 い る国 は な く、 日本 語 学 習 者 は母 語 の表 記 シ ス テ ム(ロ ー マ字 とは 限 らな い)と は別 に新 た に仮 名 の学 習 をせ ざ る を え な い が 、 平 仮 名 ・ 片 仮 名 だ け で も それ ぞれ 約50文 字 ず っ あ る。 表 記 の馴 染 み の な さ、複 雑

さ は学 習 者 に とっ て 負 担 で あ り、 学 習 意 欲 を そ い で しま うの で 、 日本 語 普 及 の 大 きな 障 害 とな って い る。

2.1.1.lT時 代 に お け る ロ ー マ 字 の優 位 性

近 年 コ ン ピ ュー タ の 普 及 と と もに、 ロ ー マ 字 の 優 位 性 が 高 ま っ て きて い る。 パ ソ コ ンで 日本 語 文 書 を 作 成 す る 際 の入 力 方 式 は大 半 が ロ ー マ字=

入 力 だ とい う。 ワー プ ロ の初 期 に は親 指 シ フ ト方 式 を は じめ 、 仮 名 入 力 の シ ス テ ム が い くつ か 開 発 され た こ と もあ っ た が 、 それ も今 で は廃 れ て

(3)

仮 名 は ど こまで音 を表せ るか

しま い、 限 られ た利 用 者 しか い な い。

キ ー ボ ー ドそ の もの が 欧 米 で 考 案 され た タ イ プ ラ イ タ ー が も とに な っ て い る。 ロー マ字 入 力 で あれ ば使 用 す るキ ー も少 な く、3段 で 済 む の で 、 ブ ライ ン ド ・タ ッチ も容 易 で あ る。 仮 名 で 入 力 す るに は ど う して も4段 使 う こ とに な り、 指 の 動 く範 囲 が 広 が っ て し ま う。 また 、 普 段 ロ ー マ字

で 日本 語 を入 力 して い れ ぼ 、 パ ス ワ ー ドや メ ー ル ・ア ドレス の 入 力 時 、 あ る い は 文 書 の 一 部 に ロ ー マ 字 を入 力 す る とき な どに 、 日本 語 入 力 を切 るだ けで よ く、 キ ー の位 置 の 違 い を意 識 しな くて も よい 。 も う一 つ 忘 れ て な らな い の が 、 電 子 辞 書 の 普 及 で あ る。 ポ ケ ッ トサ イ ズ の 小 さ な 電 子 辞 書 一 つ で、 英 和 、 和 英 、 国 語 、 漢 和 な ど多 くの辞 書 を使 い こ な す に は 、 使 用 す る キ ー の 数 が 少 な い ロ ー マ 字 入 力 の ほ うが ふ さわ し い。 以 前 は 留 学 生 に ワ ー プ ロ で 文 書 を作 らせ よ う とす る と、 最 初 に ロ ー マ 字 入 力 方 式 の 指 導 を しな け れ ば な らな か っ た が 、 今 で は電 子 辞 書 を使 う こ と に よ っ て ロ ー マ 字 入 力 方 式 を 自然 に身 にっ け るの で 、 わ ざ わ ざ指 導 す る まで も な くな っ た。

ロ ー マ 字 を 日常 生 活 で 目 にす る機 会 は そ れ ほ どな い に もか か わ らず 、 入 力 方 式 と して の ロ ー マ 字 の 重 要 性 は か つ て な い ほ ど高 ま り、 小 学 生 か

ら老 人 まで 、 そ して 日本 語 学 習 者 に至 る まで 広 く普 及 して い る。IT時 代 を迎 え て 、 ロ ー マ 字 は圧 倒 的 優 位 性 を確 立 した と言 え る。

21.2.外 国 語 な ど の 表 記

仮 名 で最 も困 るの は 、 外 国 語 の音 を表 記 し よ う とす る ときで あ る。 日 本 語 教 育 の 現 場 で も片 仮 名 で 名 簿 を作 ろ う と学 生 に 名 前 を 聞 い て も、 う ま く書 き表 せ な い こ とが 多 い 。̲̲̲̲.方で、 片 仮 名 か ら元 の 語 を推 測 す る こ とが で きな い た め に、 意 味 が よ く分 か らな い とい う こ ともあ る。人 に よ っ て 異 な る書 き方 を して い る こ とも多 い の で 、 デ ー タベ ー ス を検 索 して も

(4)

求 め る資 料 が 出 て こな い こ と もあ る。 なぜ こ う した こ とが 起 き るの か と い う と、 日本 語 は 音 素 の種 類 が 少 な い 上 に原 則 と して 開 音 節 で あ るた め に、 日本 語 の拍 に は わ ず か100あ ま り しか 種 類 が な く、 そ の 音 韻 体 系 に 基 づ い て 生 まれ た の が 仮 名 だ か らで あ る。 した が っ て 、 子 音 が 連 続 す る 音 節 や 子 音 で 終 わ る音 節 に は母 音 を挿 入 せ ざ るを え な い の で 原 音 よ り も 長 くな り、 か な り違 っ た もの とな っ て し ま う。

しか し、 仮 名 表 記 は 平 安 時 代 の ま ま受 け継 が れ て きた わ けで は な い 。 これ まで も伝 統 的 な 五 十 音 図 に は な い ス ィ」 「テ ィ」 「トゥ」 の よ うな 表 記 を考 案 して シ 」 「チ 」 「ツ」 と区 別 した り、 「フ ァ」 「ヴ ァ」 に よ っ て[fa」[va]で あ る こ とを示 す な どの工 夫 を して きた歴 史 が あ る。 これ は音 節 単 位 の仮 名 を音 素 文 字 的 に活 用 した例 と言 っ て よ い 。 国 際 化 時 代 に合 わ せ て さ ら に改 良 を加 えれ ぼ、 仮 名 に も新 ーた な 可 能 性 が 生 まれ るで あ ろ う。 さ らに は外 国 語 教 育 に生 か す 道 も出 て くる。

2.2.仮 名 の 利 便 性

で は、 日本 で しか 使 わ れ な い仮 名 を なぜ 使 い続 けて い る の か とい う こ とを 考 えて み よ う。

こ の命 題 は言 い 換 えれ ば、 なぜ 日本 語 の 表 記 に ロー マ字 が 適 さな い か

2)

とい う こ とに もな る。 こ こで 参 考 に な るの が 、 韓 国 語 や タイ 語 を は じめ 固 有 の音 素 文 字 を使 う多 くの ア ジ アの 言 語 は、 単 純 に母 音 と子 音 を順 に 横 に並 べ て い くの で は な く、 音 節 単 位 の 表 記 が基 本 とな って い る こ とで あ る(中 国 語 も音 節 ご とに漢 字 で 表 記 され る)。 「イ チ 」 「。図 」 「翻 な ど と、 「ichi」を比 べ る とロ ー マ 字 は音 節 が 視 覚 的 に っ か み に くい こ と が わ か る。

日本 語 の場 合 は、 さ ら に拍 が 関 係 して くる。 特 殊 拍 と呼 ば れ る長 音 、 促 音 、 擾 音 は、 自立 拍 で は な い た め 、 語 頭 に 立 て な い な どの 制 約 は あ る

(5)

仮 名 は どこまで音 を表 せ るか

もの の 、 弁 別 素 性 と して 重 要 な働 き を持 つ 。 ロー マ字 で は 母 音 だ けの 拍 、

3)

促 音 、 擾 音 は1文 字 、 そ れ 以 外 の 音 節 は2文 字 以 上 に な る。 母 音 連 続 や 長 音 が わ か りづ ら くな る。擾 音 の あ とに母 音 や ヤ 行 音 が 続 くとき に も 「'」

「一」 に よ っ て切 る工 夫 を しな い と正 し く読 め な くな る。 仮 名 書 きの 場 合 は特 殊 拍 も含 め て 、1拍 は原 則 と して す べ て1文 字 で 表 さ れ るの で 、 拍 が と らえや す く視 認 性 が 高 くな る。

ま た 、 日本 語 に は連 濁 とい う現 象 が あ るが 、 ロ ー マ 字 表 記 か ら は連 濁 で あ る こ とをっ か む こ とは難 しい。 「honbako」 か ら 「ほ ん 」 と 「は こ」、

「ippon」 か ら 「い ち 」 と 「ほん 」 に分 析 す るの は 、 仮 名 か らの ほ うが は るか に容 易 で あ る。

以 上 の こ とか ら言 え るの は、 日本 語 の 音 韻 体 系 に は 拍 が 重 要 な機 能 を 持 っ て お り、 そ れ を示 す に は仮 名 が 適 して い る とい う こ とで あ る。 さ ら に付 言 す れ ば 、 音 節 単 位 、 拍 単 位 が 表 記 の基 本 とな っ て い るた め 、 縦 に も書 け る し、 右 か ら書 く こ とさ え もで き る。 本 の 背 表 紙 の 見 や す さ とい う点 で は、 漢 字 仮 名 交 じ り表 記 の ほ うが 優 れ て い る こ とはだ れ し も認 め る と こ ろで あ ろ う。 ロ ー マ 字 で 書 か れ た 背 表 紙 を 見 るた め に首 を傾 け る よ うな こ とは、 日本 語 で は無 用 の こ とで あ る。

3.表 音 文 字 と して の 仮 名 の 問題

平 仮 名 や 片 仮 名 は表 音 文 字 で あ るが 、 必 ず し も音 を正 確 に表 記 して い るわ け で は な い 。 だ か ら こそ、 助 詞 や 長 音 な どの表 記 を定 め た 仮 名 遣 い 」 とい う もの が必 要 に な る の だ が 、 音 と表 記 の ず れ は、 そ う単 純 な も の で は な い 。

(6)

3.1.異

意 味 の 弁 別 に は関 係 な い もの の 、 実 際 の 日本 語 の 音 声 に は さ ま ざ ま な 異 音 が 観 察 され る。 そ の 中 に は 日本 人 の 意 識 に上 る もの と、 上 らな い も の が あ る。

a1.1.ガ 行 子 音

日本 人 が あ る程 度 意 識 され る異 音 の代 表 的 な もの と して は 、 語 中 や 助 詞 の発 音 に見 られ るガ行 鼻 音(鼻 濁 音)[η]が 挙 げ られ る。 最 近 は鼻 濁 音 は失 わ れ つ つ あ り、NHKの アナ ウ ンサ ー で も正 し く発 音 で きな い人 が 増 え て い る とい わ れ るが 、 や は りきれ い な 日本 語 の 使 い 手 に な る に は鼻 濁 音 が 不 可 欠 で あ る こ とは間 違 い な い。 そ の た め さ ま ざ まな発 音 指 導 書 で は ガ 行 鼻 音 の表 記 と して ガ 」 の よ うに半 濁 点 をつ けて 表 す 方 式 が 広 く使 わ れ て い る。 た とえ ば、 「戦 後 」 は 「セ ン ゴ」、 「1005」 は 「セ ン ゴ」

とな る。 こ う した ガ行 鼻 音 の存 在 を知 らな い 学 習 者 の 中 に は、 聞 き取 り で ガ 行 鼻 音 を ナ行 と混 同 した りす る こ と もあ る。 日本 語 教 科 書 で も この 表 記 法 が 使 わ れ れ ば、 学 習 者 の気 づ き を うなが す こ とに もつ なが る。[η]

を 音 素 とす る言 語 は 少 な くな い の で 、 こ う した ガ行 鼻 音 表 記 が0般 化 す る と日本 語 の発 音 指 導 だ け で な く、 仮 名 に よ る外 国 語 表 記 に も有 効 で あ ろ う。

語 中 の ガ行 子 音 は軟 口蓋 摩 擦 音[Y]で 発 音 され る こ とも あ るが 、 日本 語 学 習 上 問 題 に な る こ とは あ ま りな く、 外 国 語 の 発 音 を示 す の に不 可 欠 とい うわ け で もな い 。 脚 本 や オ ノ マ トペ で ど う して も必 要 な とき はハ 行 を 小 文 字 で 添 え て摩 擦 音 で あ る こ とを 示 して は ど うだ ろ うか 。

(7)

仮 名 は ど こまで音 を表 せ るか

3.1.2.撲

日本 語 で 異 音 の 多 い の が 撲 音 で あ る。 擾 音 に は 「ン」1文 字 しか 当 て られ て い な い が 、 逆 行 同 化 に よ って 両 唇 音 か ら口蓋 垂 音 まで さ ま ざ ま な 調 音 点 で 発 音 され る。 学 習 上 は 、 い ず れ も無 理 に[n]で 発 音 しよ う とせ ず 、 自然 に発 音 しや す い よ う に舌 を動 か せ ば よ い の だ が 、 句 末 、 文 末 で 口蓋 垂 音[N]に な る こ と と、 母 音 が後 続 す る場 合 に鼻母 音 に な る こ とに は注 意 が 必 要 で あ る。

ロー マ 字 表 記 で は両 唇 音 で あ る こ とを意 識 して、 「sempai」 な ど と記 され る こ とも あ る。逆 に片 仮 名 表 記 で は 「シ ム ポ ジ ウム 」 や オ リム ピ ッ ク」 とい う よ うに元 の 語 の 表 記 を反 映 させ て 書 こ う とす る人 も い るが 、 こ う した 書 き方 の 方 が 母 音 が 挿 入 され る可 能 性 が あ り、 か え っ て 元 の 語 との 乖離 が大 き くな る。 ど う して も[m]で あ る こ とを示 した い とき は小 さ く 「ム」 と書 くな どの 配 慮 が 求 め られ る。

外 国 語(た とえ ば韓 国 語 や 中 国 語 、 タ イ語 な ど)で は音 節 末 の[n]と [η]が 区別 され る こ とが あ るの で 、 「ング」 「ン ゥ」 「ジ」 な どの表 記 に よ っ て[D]を 表 す こ とが で き る よ うにす れ ば、 仮 名 の 利 便 性 を高 め る こ とが で き よ う。 「ン ゥ」 とい う表 記 は筆 者 の考 案 した もの で あ るが 、 か つ て 日

  ラ

本 人 は中 国語 の軟 口蓋 鼻 音[u]を 「ウ」 で 取 り入 れ た こ とを踏 まえ た も の で あ る。 「ン グ」 よ りも コ ン ピュ ー タへ の 入 力 は容 易 に な る上 、 小 さ く

ウ」 を添 え る こ とで舌 が後 ろに移 動 し、 自然 に[η]に 近 い発 音 が で き る の で はな い だ ろ うか 。 「ジ」 も筆 者 の考 案 で あ る。1文 字 で す む の で 、 広

く認 知 され れ ば この ほ うが 実 用 的 だ と思 わ れ る。 濁 点 で軟 口蓋 鼻 音 の 聴 覚 印 象 を表 せ る の で は な か ろ うか 。

日常 の 発 話 の 中 に は 「ウ」 で 書 か れ る もの の 中 に、 実 際 は[m]で 発 音

ら ラ

され る も の が あ る。 た と え ぼ 、 「ウ ン」 「ウ ウ ン」 「ウ ー ン 」 な どが 口 を 開

け て 発 話 され る可 能 性 は低 い 。 「う ま い 」 とい う と き に 「 ウ 」 で 発 音 し て

(8)

い る人 は ほ とん どお ら ず 、[mmai]が 最 も近 い 表 記 だ と思 わ れ る 。 「 馬 」 や 「 梅 」 に して も 元 の 中 国 語 の 子 音[m]の 持 続 時 間 が 長 い た め に 、 日本 人 が 「ウ マ 」 「ウ メ 」 と聞 き と っ た 可 能 性 が あ る 。

「フ ー ン」 あ る い は 「ブ ー ム 」 とシ ナ リオ に 書 い て あ っ た と して も、 こ の 通 り に 発 音 す る俳 優 は い な い で あ ろ う 。 口 を 閉 じ て 鼻 か ら 息 を 出 す に 違 い な い 。 とす れ ば 、 この 「フ」 は両 唇 摩 擦 音[Φ]で は な く、 唇 を 閉 じ た 状 態 で 無 声 の ま ま 鼻 息 を 出 す の で あ る か ら[m]と 記 述 さ れ る 音 で あ る 。 「フ ー ン 」 の 「ン 」 は 口 を 開 け な い で あ ろ う し、 「フ ー ム 」 の 「 ム 」 に し て も母 音 は 発 音 し な い は ず で あ る 。 し た が っ て 、 ど ち ら も[mm]

か[㎜:]が 実 際 の 音 と言 っ て よ い 。 「 ム ム 」 「 ム ッ 」 な ど も ロ を 開 け な い か ら[mm][m]な ど に な ろ う。 しか し、 「 ハ ー ン 」 とな る と 口 を 開 け て 発 音 さ れ る の で 、[has][haao][haaN]と な り、 両 唇 鼻 音 に は な ら な い 。

3.1.3.促

促 音 に もさ ま ざ ま な異 音 が あ る。 言 い換 えれ ば定 ま った 音 が な い と言 っ て も よ い 。 そ れ は 「っ 」 で 表 され るの は、 後 続 の 音 節 の 子 音 を1拍 分 伸 ば す とい う記 号 に す ぎず 、 特 定 の 音 を 表 して い る わ けで は な い か らで あ る。 ロ ー マ 字 表 記 で は それ を反 映 して 、r・ に促 音 専 用 の 文 字 は 当 て ら れ ず 、 子 音 字 を重 ね る こ とで 示 され 、 「atta∬ippai」 「hakken」 とい う よ うに記 され る。 しか し、 こ う書 い た か ら とい っ て 英 語 話 者 の 発 音 が 日 本 語 の 促 音 に近 くな るわ けで は な い。 「atta」と書 い て あ って も読 ませ れ ば 「ア タ」 とほ とん ど同 じ に な っ て し ま う。 子 音 を 伸 ば す 習 慣 の な い学 習 者 に は 「at‑ta」と して 、 まず2音 節 に分 けた 上 で3拍 で発 音 させ る よ う に す る必 要 が あ る。 この た め 日本 語 教 科 書 の 中 に は、 促 音 用 に 「Q」

を用 い て 「aQta」 「iQpai」 「haQken」 とい う表 記 を とって い る もの も

(9)

仮名 は どこまで音 を表 せ るか

あ る。 一 拍 で あ る こ とを意 識 させ る た め の 手 段 の 一 つ で あ る。

,rに 「つ ま る音 」 と定 義 され るが 、 す べ て つ ま っ て い るわ け で は な い。 破 裂 音 で は 「つ ま る音 」 とい って も よい が 、 摩 擦 音 の 場 合 は 音 が 出 て お り、 つ ま って は い な い 。 「あ っ さ り」 「ひ っ し」 「マ ッハ 」 な ど発 音 し て み れ ば す ぐに確 認 で き る。

有 声 子 音 が 促 音 に な るの は 「ベ ッ ド」 「バ ッグ」 「ハ ッ ブ ル 」 とい っ た 外 来 語 、 あ る い は 「す っ げ え」 の よ うな 口語 や 方 言 な どに 限 られ るが 、 発 音 上 注 意 が 必 要 な の はザ 行 で あ る。 現 代 語 の ザ 行 音 は語 頭 は破 擦 音 、 語 中 で は 嬢 音 や 促 音 の後 を 除 い て摩 擦 音 とな る こ とが 多 い 。 た とえ ぼ 、

火 事 」 の 「ジ 」 は摩 擦 音 陳]で あ る が 、 「カ レ ッジ 」 の場 合 は破 擦 音 とな るの で[kαfed砺i]と な り、[kαfe麗i]と は な らな い 。

と こ ろで 、 オ ノマ トペ で は 「ギ ャ ー ッ」 「カ チ ッ」 「ブル ッ」 とい う よ う に語 末 に促 音 が 来 る こ とが珍 し くな い が 、 これ は伸 ば す べ き子 音 が 後 続 して い な い 。 よ く観 察 して み る と、 先 行 母 音 の 影 響 が 大 きい よ うで あ る。 「ア ッ」 や エ ッ」 の よ うな広 母 音 や 中母 音 の あ との促 音 は舌 に よ る 声 道 の閉 鎖 が な く、 声 門 閉 鎖 音[P]に な る。 「アー ッ」 「エ ー ッ」 の よ う に長 音 化 す る と、 閉 鎖 せ ず に有 声 摩 擦 音[丘]に な る可 能 性 も出 て くる。

これ に対 して 「ドキ ッ」 「プチ ッ」 の よ うに前 舌狭 母 音 の あ とで は、 舌 が 歯 茎 に触 れ るので[t]と な る こ とが 多 い よ うで あ る。で は後 舌 狭 母 音 「ウ ッ」

ウ ー ッ」 は ど うか とい う と、[?]も あ るが 、本 当 に苦 しそ うな 場 合 は軟 口蓋 の 閉 鎖[k]が 使 わ れ るで あ ろ う。 吐 き気 の 場 合 は[P]の 可 能 性 も あ る。 そ うす れ ば 「ウ ク」 「ウ プ」 な ど と して書 き分 け られ る。 この ほ う 「ウ ップ」 な ど よ りも実 際 の音 に近 くな る。 「フ ッ」 は母 音 が 伴 わ な い

[Φ]だ けの 場 合 、 無 声 化 した[Φ 咽 、 あ る い は 舌 で 息 を 止 め る[Φ ㎎t]

が あ る と思 わ れ るが 、 声 門 や 軟 口蓋 で の 閉 鎖 を伴 う可 能 性 は低 い。

こ う した 語 末 の 促 音 を もっ と詳 し く表 記 す る方 法 を考 案 す れ ば、 オ ノ

(10)

マ トペ の 表 現 力 も高 ま り、 ひ い て は 外 国 語 の 閉 音 節 を うま く表 記 す る こ とに もっ な が るで あ ろ う。

3.1.4.長

長 音 は直 前 の 母 音 を伸 ばす だ けで 、促 音 と同 じ く特 定 の 音 を持 た な い 。 片 仮 名 で は 「一 」 で 示 され るが 、 平 仮 名 に は長 音 専 用 の 文 字 は な い。 そ

の た め、1946年 に制 定 され た 「現 代 か な つ か い 」 で は平 仮 名 表 記 を す る と き は 同 音 の仮 名 を繰 り返 す こ とを原 則 と した 。 と こ ろが 、 オ 列 長 音 だ け は 「う」 で 記 す こ とに な った 。 この こ とに よっ て 同 じ平 仮 名 で あ りな が ら、 異 な る読 み 方 を す る とい う こ とが 生 じた 。 「十 日」 「投 下 」 は発 音 上 の 区別 は な い が 、 「とお か 」 「と うか 」 と違 う仮 名 で 表 記 され る。 「お う い」 「お お い 」 に、 呼 び声 「オ ー イ」 を加 え る と3種 類 の 書 き方 とな る。

小 売 り」 は長 音 で は な く、 連 母 音 で あ るが 仮 名 書 きで は 「高 利 」 と区 別 で き な い。 「子 牛 」 と 「格 子 」 も同様 で あ る。 場 合 に よ って は外 来 語 で も

「ボ ウ リン グ」 と 「ボ ー リン グ」 の よ うに表 記 の 違 い で 意 味 の違 い を示 す こ と もあ る。

ま た 「けい え い 」 「とけ い」 「て い ね い」 の よ うに 「い」 と書 い て あ っ て も実 際 は 工 列 長 音 で発 音 され る こ とが 多 い もの が あ る。 こ う した例 は 漢 字 の 音 読 み と して は 「い 」 で あ るが 、 ロー マ 字 で 書 く場 合 に ど うす る か が課 題 とな る。 「経 路/毛 色 」 や 営 利/絵 入 り」 は仮 名 書 きで は 区別 で き な い が 、 発 音 は異 な る。 一 部 の 外 来 語 に は、 発 音 の 区 別 は な い が 、

バ レー 」 と 「バ レエ 」 の よ うに書 き分 け るの が 慣 習 と して定 着 して い る もの も あ る。

外 来 語 の長 音 は発 音 上 も表 記 上 も揺 れ て い る もの が あ る。 最 近 よ く取 り上 げ られ るのが 「マ ネ ジ ャー」 「マ ネ ジ ャ」で あ る。従 来 は 「マネ ー ジ ャー」

と呼 ば れ て い た が 、 短 くす る人 が 増 えて きた 。 特 に工 業 技 術 用 語 は語 末

(11)

仮名 は どこまで 音 を表 せ るか

6)

の 長 音 符 号 を 省 略 す るの がJIS用 語 の慣 例 とな っ て い る た め 、 「コ ン ピ ュ ー タ ー 」 「エ レベ ー ター 」 な ど に長 音 符 号 をつ け な い だ け で な く、 発 音 で も語 末 を伸 ば さ な い人 が増 加 傾 向 に あ る 。

長 音 の ロ ー マ字 表 記 は大 き な課 題 で あ る。 訓 令 式 で は[〈]を つ け る こ とに な っ て い るが 、 パ ソ コン 入 力 に は不 向 きで あ る。 同 音 を繰 り返 し て も よい が 「00」 で は[U:]と 間 違 え や す い 。仮 名 表 記 と同 じ に して お

くの が 、 入 力 に はい い が 、 音 との ず れ が 大 き くな る。

3、1.5.拗 音

ア ナ ウ ン サ ー が 苦 手 とす る 言 葉 の 代 表 と し て 、 よ く 「 手 術 中 」 「 火 星 探 査 車 」 「 貨 客 船 」 な どが 挙 げ られ るが 、 特 に 「し ゅ 」 や 「じ ゅ 」 の 発 音 が 苦 手 な 人 は 少 な くな く、 直 音 化 して 「し じ つ 」 「し ん じ く」 「し くだ い 」

な ど と発 音 さ れ る こ とが 多 い 。 これ も 表 記 と発 音 の ず れ と言 え る。

7)

日本 語 学 習 者 に も拗 音 が 上 手 に発 音 で きな い人 が い る。多 くの 場 合[‑U]

で はそれ ほ ど問題 にな らず、[‑a][‑o]の ほ うが発 音 しに くい よ うで あ る。

その た め 「客 」が 「キヤ ク」 とな った り、 「病 院 」が 「ビ ヨウ イ ン」 とな っ た りす る。 拗 音 は仮 名 の 中 で例 外 的 に2文 字 で1拍 を示 す の で 、1拍 あ る こ とを意 識 して 発 音 させ る こ とが 求 め られ る。

3,1.6.i無i声 イヒ

日本 語 の 発 音 教 育 で よ く取 り上 げ られ るの が 無 声 化 で あ る。 入 門 期 の 学 習者 の ノ ー トを見 る と、 「kirnas」 「ksa」 「ski」な ど と書 い て あ る こ と が あ る。 無 声 化 した 母 音 を省 い て そ の ま ま ロ ー マ 字 化 した 結 果 で あ る。

ロ ー マ 字 表 記 の 場 合 は仮 名 以 上 に母 音 が 意 識 さ れ るた め に無 声 化 の表 示 が 重 要 に な る。

仮 名 と音 声 の ず れ とい う こ とで見 た場 合 、 「せ ん た くき」 「さ ん か くけ

(12)

い 」 「し ょ うが くきん」 な どは無 声化 に と ど ま らず 、 母 音 が脱 落 して しま い促 音 化 して 発 音 され る こ とが 多 い。 こ う した 語 を ロ ー マ字 で書 く場 合 、

「sentakuki」 「sankakukei」 とす る と実 際 の 発 音 との 隔 た りが 大 き くな る可 能 性 が あ る。 仮 名 で も 「っ 」 は認 め られ て い な い の で 「sentakki」

「sankakkei」 とす るわ け に も いか な い し、 これ で は語 構 成 も と らえ に く く辞 書 も引 けな くな る。教 材 に は母 音 を記 した 上 で無 声 化 す る部 分 にIPA と同 じ よ うに[。]を つ け るか 、[一]を つ け て[司 にす る こ とで 発 音 し な くて よい こ とを示 して お きた い。仮 名表 記 の場 合 も[。]の ほ うがNHK の 『日本 語 発 音 ア クセ ン ト辞 典 』 の破 線 の 円 で 囲 む 表 示 法 よ りも手軽 で わ か りや す い と思 わ れ る。

外 来 語 で は有 声 子 音 と無 声 子 音 が 入 れ 替 わ る こ とが あ る。 一 番 多 い の は促 音 の あ との有 声 音 の無 声 化 で あ る。 「バ ッ グ」 「ベ ッ ド」 が バ ッ ク」

ペ ッ ト」 と発 音 され る こ とが あ る。 促 音 の後 で な くて も無 声 化 す る例 と して は 「ブ ロ マ イ ド」 が 「ブ ロ マ イ ド」 とな る例 が あ る。 逆 に無 声 子 音 が 有 声 子 音 に な る こ と も あ る。 た とえ ば 「ア ボ カ ド」 をス ー パ ー な どで

ア ボ ガ ド」 と書 い て い るの を見 か け る。 正確 な外 国語 の知 識 が な く、 耳 で 聞 い た ま ま を話 した り、 書 い た りす るか らで あ ろ うが 、 日本 人 に とっ て 楽 な 発 音 に な っ て い る こ とも見 逃 せ な い 。

3.2.音 の 区 別 が な い も の

片 仮 名 で 書 か れ た 外 来 語 の 中 に は表 記 と実 際 の発 音 が 一 致 しな い もの が 珍 し くな い 。 そ の 多 くは唇 を使 う[v]や[w]で あ る。

外 国 語 の 唇 歯 摩 擦 音[v]を 「ヴ」 で 書 く人 は増 え て き た が 、 「ヴ ァイ オ リン」 と書 い た か ら とい って 、 実 際 に下 唇 を上 歯 に あ て て 発 音 して い る人 は ほ とん どい な い 。 同音 語 の書 き分 けの 一 種 と見 て も よい で あ ろ う。

DVDを 片仮 名 で書 いた もの を見 た こ とが な いが 、若 者 で も多 くは 「デ ィー

(13)

仮 名 は ど こまで音 を表 せ るか

ブ イ デ ィ ー 」 で あ り 、 「ヴ ィ ー 」 と い う 発 音 を 耳 に す る こ と は ま れ で あ る 。

「ノ ル ウ ェ ー 」 「ス ウ ェ ー デ ン 」 「ク ウ ェ ー ト 」 は 「ノ ル エ ー 」 「ス エ ー

S)

デ ン」 「ク エ.̲..̲.ト 」 と発 音 さ れ る こ とが 少 な くな い 。 「ウ ィ ス キ ー 」 と い う表 記 が 普 及 して き た が 、 テ レ ビ や ラ ジ オ な ど で 耳 に す る発 音 は た い て い 「ウ イ ス キ ー 」 で あ る。 「ス ク ェ ア 」 とい う書 き 方 も増 え た が 、 多 くの 日 本 人 の 発 音 は 「ス ク エ ア 」 で あ る 。 最 近 の 広 告 な どで は 「 ス ウ ィ ミ ン グ ・ス ー ツ 」 や 「ス ウ ィ ミ ン グ ・ク ラ ブ 」 書 か れ た もの を よ く見 か け る が 、 これ も実 際 は た い て い 「ス イ ミ ン グ 」 と発 音 さ れ て い る。 「 サ ン ドイ ッ チ 」 「 ス イ ッ チ 」 も 「 サ ン ドウ ィ ッ チ 」 「 ス ウ ィ ッ チ 」 と書 く人 が 出 て き た が 、 実 際 に こ の よ う に 発 音 して い る の だ ろ う か 。

あ ま り発 音 さ れ な い の に 使 わ れ る 表 記 が あ る 一 方 で 、[kwa][gwa]

[kwo]を 含 む 音 節 は 、 地 名 も外 来 語 も 日本 人 の 一 般 的 な 発 音 ど お り 「ア 」

「 オ 」 を 大 き く書 く こ と に な っ て い る 。 「グ ア ム 」 「グ ア テ マ ラ」 「 ア ク ア 」

「ク オ リ テ ィ」 な どが そ の 例 で 、 原 音 に 近 づ け て 「 グ ァ ム 」 「グ ァ テ マ ラ 」

「 ア ク ァ 」 「ク ォ リ テ ィ 」 と書 く こ と は あ ま り な い よ うで あ る 。 以 前 は 時 計 の 広 告 に 「ク オ ー ツ 」 と書 か れ て い た の に 、 最 近 は 「ク ォ ー ツ 」 が 増 え て き て い る 。 しか し、 発 音 の 変 化 は ま だ 伴 っ て い な い と思 わ れ る 。 ち な み に 「 ウ オ ッ チ 」 と な る と き わ め て 少 な く、 現 在 は 「ウ ォ ッ チ 」 と書 くの が 一 般 的 で あ る 。 後 舌 母 音 の ほ うが 円 唇 化 させ や す い の で 、 発 音 の 負 担 が 少 な い こ と も影 響 して い る の で あ ろ う。

[ti][di]は 「 テ ィ 」 「 デ ィ」 と書 か れ る こ とが 多 くな っ た 。以 前 は 「 チ ー ム ・テ ィ,̲̲̲チン グ 」 が 一 般 的 だ っ た が 、 最 近 は 「 テ ィ ー ム ・テ ィ ー チ ン グ 」 が 多 く な っ た 。 日本 人 が そ れ だ け 外 国 語 音 に 馴 染 み 、 発 音 で き る よ う に な っ て き た と い う こ と も あ る の だ ろ う が 、 学 会 な ど の 発 表 で 聞 い て い て も 多 くは 「 チ ー ム 」 とい う発 音 で あ る。 「デ ジ タ ル 」 も 「 デ ィ ジ タ ル 」

と書 い た も の が 目立 っ が 、 発 音 は そ の ま ま の よ うで あ る し、 「 デ ィ ジ カ メ 」

(14)

とい う表 記 は まだ 見 か け な い 。

3.3.半 母 音 の 挿 入 と 弱 化

表 記 と発 音 が ず れ る も の の 一 つ に 渡 り音 と呼 ば れ る も の が あ る 。 母 音 連 続 は 発 音 が 不 鮮 明 に な っ た り、 言 い ブ ら か っ た りす る こ とが あ り、 そ こ に 半 母 音 が 挿 入 さ れ る こ と を い う。 「 ば あ い 」 「お み あ い 」 が 「ば わ い 」

「お み や い 」 に な る例 が よ く挙 げ られ る 。 「 み や げ 」 な ど完 全 に 語 形 が 定 着 して 、 元 の 「み あ げ 」 とい う形 が あ っ た こ と す ら意Rさ れ な くな っ て

い る 。[aa][ua][uo]は[w]が 挿 入 さ れ て[awa][uwa][uwo]

に 、[ia][io]は[ija][ijo]に な りや す くな る。前 項 の 「ク ァ」が[kwa]

と発 音 で き る の は こ う し た 現 象 を 前 提 と し た も の で あ る 。[iu]は 渡 り音 と い う よ り、 融 合 して し ま い[ju:]に な っ て し ま う。 「 い う」 「キ ウ イ 」 は 「ゆ う」 「キ ュ ー イ 」 と書 い た 方 が い い ぐ ら い で あ る 。 現 に マ ン ガ や 広 告 な ど で 「 〜 とゆ う … 」 とあ る の を 見 か け る こ とが あ る。 こ う し た 現 象 の 一 方 で 、 半 母 音 は 弱 くな っ て し ま い 、 ほ と ん ど発 音 さ れ な い こ と も あ る。 「し あ わ せ 」 が 「シ ァ ー セ 」 に 、 「 か わ い い 」 が 「カ ー イ ー 」 に な っ た りす る 。 学 習 者 に こ う い う発 音 を 身 に っ け させ る必 要 も な く、 わ ざ わ ざ 特 別 の 表 記 を 用 意 す る こ と は な い が 、 日本 人 の 発 話 を 理 解 す る た め に は 知 っ て お くべ き 事 柄 で あ る 。

外 国 地 名 の 表 記 に も影 響 が 見 られ る。 以 前 は 「ロ シ ヤ 」 「 イ タ リ ヤ 」 と

書 か れ た が 、 今 は 「ロ シ ア 」 「 イ タ リ ァ」 と書 くよ う に な っ た 。 と こ ろ が 、

Kenyaは 「ケ ニ ヤ 」 あ る い は 「 ケ ニ ャ」 で い い は ず な の に 、 『 地 名 表 記 の

手 引 』 で は 「 語 末 の(y)aの 、 そ の 前 が 子 音 の と き は 『ア 』 と書 く」 と定

め 、 「 ケ ニ ア 」 と す る こ と に な っ て い る 。 こ れ は 過 剰 な 修 正 と 言 え る 。 こ

の 一 方 で 「ギ リ シ ャ 」 は 、 共 同 通 信 社 な ど の マ ス コ ミの ハ ン ド ブ ッ ク を

見 る と今 で も そ の ま ま で あ る 。 実 際 に新 聞 記 事 を 見 て も そ う な っ て い る 。

(15)

仮 名 は どこまで音 を表 せ るか

しか し、 「ギ リシ ア」 と書 い た本 が 徐 々 に増 えつつ あ る。 『広 辞 苑 』 は1969 年 の 第 二 版 か ら 「ペ ル シ ア 」 な ど と と もに 「ギ リシ ア」 に して い る。 こ

う した 傾 向 が続 く と原 音 に か か わ らず 、 日本 語 で 同 じ よ うな語 尾 を持 つ 地 名 は どれ も 「〜 ア 」 にな って しま うか も しれ な い 。 た だ し、 表 記 が ア」 に な っ た か ら とい って 、 発 音 に大 き な変 化 が 起 きて い る とは 思 え な

い 。

3.4.揺

発 音 や 語 形 に は揺 れ が観 察 され るが 、 それ が 仮 名 に も反 映 され る こ と が あ る。 よ く取 り上 げ られ るの が 「じっ ぽ ん 」 と 「じ ゅ っ ぽ ん 」 で あ る。

歴 史 的 に見 れ ば 「十 本 」 は 「じっ ぽ ん 」 と読 むべ き で あ るが 、 これ を 一 種 の詑 の よ う に誤 解 して 「じ ゅ っ ぽ ん 」 が 正 しい と考 え る人 が 増 え て き た 。 た だ し 「五 十 歩 百 歩 」 「十 把 一 絡 げ」 の よ うな慣 用 句 で は こ う した 揺 れ は あ ま り見 られ な い よ うで あ る。

また む っ か しい 」 は一 種 の 無 声 化 現 象 と も言 え るが 、 辞 書 は 「む ず か しい 」 と とも に認 め て い る。 夏 目漱 石 の 作 品 の 中 に は 六 か しい 」 と い う当 て 字 す ら使 わ れ て い る。

漢 字 の読 み も 「情 緒 」 「消 耗 」 な ど依 然 と違 っ て きて い る もの が 増 え つ つ あ る。 仮 名 書 き を重 視 す る と、 こ う した 発 音 の 変 化 も無 視 で き な くな る。

3.5.新 し い仮 名 表 記

マ ン ガ や 若 者 向 け雑 誌 に は新 しい用 語 や 表 現 と とも に 、 新 しい表 記 が 使 われ る こ とが あ る。 その 一 つ が 驚 い た ときの声 ブ ー」 「ご 一 」 な どで 、 本 来 濁 点 が 付 くは ず が な い文 字 に も濁 点 を 付 け る表 記 で あ る。 仮 名 の 表 現 力 を高 め るた め の 一 つ の工 夫 だ と思 わ れ る。 「アー 」 「エ ー 」 が す で に

(16)

有 声 音 で あ るか ら、 それ に 濁 音 を つ け て ど う発 音 す れ ば よい の か 不 明 で あ る。 「ウ」 に濁 点 を付 けれ ば[v]と い う こ とに な って い るが 、 「ア」 や

エ 」 に濁 点 を付 けて 示 す べ き特 別 な子 音 はな い はず で あ る。 強 い て発 音 す れ ば 有 声 声 門 摩 擦 音 に して[fia:][且el]と で もな ろ う。

上 記 の例 が 応 用 で き るの は小 説 や 脚 本 ぐ ら い しか な い と思 わ れ る が 、 こ う した 自然 発 生 的 な 仮 名 表 記 の 中 に は語 学 教 育 に生 かせ る もの が あ る か も しれ な い の で 、 継 続 的 な観 察 が 求 め られ る。

4.新 仮 名 表 記 の た め に

パ ソ コ ン な どへ の 入 力 シ ス テ ム を除 き、 今 後 、 日本 語 の ロ ー マ 字 化 が 進 む 可 能 性 は きわ め て 低 い 。 しか し、 外 国 との 交 流 が 拡 大 して い け ば 、 外 国 語 音 を仮 名 で 適 切 に書 け る よ うに工 夫 して い く必 要 が 出 て こ よ う。

外 国 人 が 自分 の 名 前 、 学 校 や 町 の 名 前 を仮 名 で 書 こ う とす る と、 適 切 な 表 記 法 が 確 立 して い な い た め に、 悩 ま され る。 無 理 矢 理 日本 的 な 書 き方 に合 わ せ る こ と もで き な くは な い が 、 そ うす る と ど う も 自分 の名 前 と思 え な くな る よ うで あ る。 た とえ ば、Danielと い う学 生 の 名 前 の書 き方 に は これ まで 「ダニ エ ル 」 「ダ ン」 「ダニ ー 」 な どい ろ い ろ あ っ た が 、 中 に は 「ダ ニ ア」 と書 く学 生 もい た 。Emilと い う学 生 は 「エ モ 」 と書 い て い た 。 どち らも最後 の[1]の 発 音 が 「ル 」 で は しっ く りこなか っ た た め に、

自分 の 名 前 の発 音 に一 番 近 い仮 名 の 書 き方 を考 案 した の だ と思 わ れ る。

最 近 の 英 語 の絵 本 が リ ン ゴ の 絵 に 「ア ポ ー」 や 「ア プ ウ」 な ど と仮 名 を つ けて い る の に通 じ る。 中 国語 話 者 や 韓 国 語 話 者 の場 合 は発 音 どお りに 仮 名 書 き を す る と、 日本 語 で は非 常 に ま ぎ らわ し く、 混 乱 を生 じ る こ と もあ る。 こ う した 学 習 者 の た め に も何 らか の表 記 上 の工 夫 が 求 め られ る。

(17)

仮 名 は ど こまで音 を表せ るか

4.1.RとL

発 音 で は ほ とん どの人 が[b]と 区別 して い な い[v]に 「ヴ」 とい う 仮 名 を与 え た の で あ るか ら、[r]と[1]を 区 別 す る仮 名 もあ っ て も よ い で あ ろ う。 ラ行 音 は歯 茎 は じ き音 で あ るか ら、 どち らか と言 え ぼ[1]に 近 い 発 音 で あ る。 特 に擾 音 や 促 音 の 後 で は 舌 が 歯 茎 に触 れ る時 間 が 長 く

g}

な る。 し た が っ て 、[la]を 「ラ」 で 表 す こ と に す れ ば 、[ra]を 「ラ.」 と し て は ど うで あ ろ う。 定 義 と し て は 「 軽 く ウ を 付 け る 感 じ で 発 音 す る 」 とで も し て 、 練 習 用 に 「ウ ラ 」 「ウ リ」 「ウ ル 」 と い う よ う な 表 を 作 る こ とが 考 え られ る 。 これ に よ っ て 舌 は 歯 茎 に 触 れ に く くな る。

問 題 は 語 末 の[1]で あ る が 、 ほ とん ど 「ウ 」 や 「 オ 」 に 近 く聞 こ え る も の は 「ダ ニ エ ゥ」 の よ う に す る か 、 「ダ ニ エ ル」 と し て 、 口 の 奥 の ほ うで 「ル 」 を 軽 く発 音 す る とい う よ う な 説 明 を つ け れ ば よ い で あ ろ う。

4、2.閉 音 節

外 国 語 の 表 記 で や っ か い な の が 閉 音 節 で あ る 。 特 に ア ジ ア の 言 語 に は [p][t][k]や[m][n][u]で 終 わ る音 節 が よ く使 わ れ る。 これ ら の 音 を 促 音 「ッ 」 と擾 音 「ン 」 だ け で 表 記 す る の は 限 界 が あ る。 ア イ ヌ 語 の 仮 名 表 記 で は 「ッ」 とな ら ん で 「 プ 」 「ク」 「 ム 」、 さ ら に 「 シ 」 や 「 ル 」 な ど多 くの 小 文 字 が 使 わ れ る。 これ に3.1.2.で 示 し た 「ン グ」 か 「ン ゥ」

を 加 え て[弱 を 示 す こ とが で き れ ぼ 便 利 に な る 。[n]に 対 し て 「ン 」 で は 不 十 分 だ と感 じ る な ら、 「ヌ 」 を使 っ て も よ い 。

4、3.円 唇 化

五 十 音 図 に は 元 々 「 ヰ 」 「ヱ 」 「ヲ 」 と い う 片 仮 名 が 存 在 す る 。 今 は こ

れ を 使 う こ と な く 「ウ ィ 」 「ウ ェ 」 「ウ ォ 」 と書 く こ と に な っ て い る が 、

せ っ か くあ る文 字 の 活 用 を考 え た ほ うが よ い 。 ま た 、 か っ て は 「く わ じ 」

(18)

とい う よ うな書 き方 が行 わ れ て いた が 、 「か 」 と 「くわ」 の 発 音 上 の 区 別 が な くな っ た こ と もあ っ て、 「現 代 か なつ か い 」 で 使 用 で き る小 文 字 が 制 限 さ れ た た め に使 え な くな っ て し まっ た。 現 在 は外 国 語 の 表 記 で は 「グ ア」 「グ ァ」 が 使 わ れ て い るが 、 「ア」 よ り も 「ワ」 の ほ うが 発 音 か ら言 え ばふ さ わ しい。 「クイ ー ン」 も 「ク ィ ー ン」 に した だ けで は 円唇 化 の 印 象 が 薄 い 。 円 唇 化 を強 調 す るに は 「ク ヰー ン」 を認 めた 方 が い い の で は な い か 。

4、4.有 気 音 ・無 気 音

中 国 語 や 韓 国 語 を は じめ 、 ア ジ アの 言 語 の多 くで は息 の有 無 が 重 要 な 役 割 を 持 つ 。 これ を仮 名 書 きで 示 す こ とが で きれ ば 、 人 名 や 地 名 の 区別 で 非 常 に便 利 に な る はず で あ る。 τ]一マ字 な ら有 気 音 に 「h」 を添 え る

と ころで あ るが 、 同 じ よ うに 「パ ハ」 「ケ へ」 「トホ」 な ど同 じ段 のハ 行 音 を小 文 字 で 添 え る こ とで 有 気 音 を 示 す こ とが で き るで あ ろ う。 現 に オ ノ マ トペ で は 「プハ ー 」 とい う よ うな 書 き方 も見 られ るの だ か ら、 小 文 字 化 し、 使 用 範 囲 を広 げ て もそ れ ほ ど違 和 感 な く受 け入 れ られ るの で はな か ろ うか 。

4.5.母

主 に本 稿 で は子 音 を 中 心 に論 じた が 、 母 音 の 表 記 は大 きな 問題 で あ る。

日本 語 は5母 音 しか な い が 、 言 語 に よっ て は10以 上 の母 音 を 区別 しな け れ ば な らな い 。[田]は 工 段 に 「ア」 をつ けて 「ケ ァ」 と した もの を時 折 見 か け る。 鼻 母 音 を示 した い と き は仮 名 の 上 に[〜]を つ けれ ば何 とか な るだ ろ う。従 来 に な い仮 名 表 記 と して 、 半 広 母 音[ε][っ]に つ い て は ア段 に 「エ 」 「オ」 をっ けた カ ェ」 「カ ォ」 で[kε][ko]を 示 し、[o]

10)

の 扱 い は 課 題 と して 残 る が 、 「コ ァ 」 で[ka]を 示 し て は ど う だ ろ う。

(19)

仮 名 は どこまで音 を表 せ るか

5.外 国 語 教 育 に お け る 仮 名 の 利 用

英 語 教 育 で は最 近 仮 名 に注 目す る人 が 増 え て い る。 中 で も島 岡丘 は早 くか ら仮 名 に注 目 し英 語 教 育 に取 り入 れ よ う とす る運 動 を行 っ て い る。

ア ル フ ァベ ッ トの発 音 を覚 え た か ら と言 っ て 、 英 語 や フ ラ ン ス語 の 発 音 が よ くな る わ けで は な い 。 ア ル フ ァベ ッ トは 同 ーじで も、 一 つ一 つ の 文 字 が 表 す 音 は 同 じで は な い 。 そ れ な ら、 日本 人 の耳 に は ど う聞 こえ る か 、 日本 語 の発 音 か ら見 た とき、 ど うい うふ う に発 音 し よ う とす る と正 しい 発 音 に近 づ くの か を考 え る必 要 が 出 て く る。 そ こに仮 名 の効 用 が あ る の だ が 、 そ の た め に は綴 りに と らわ れ ず 、 虚 心 坦 懐 に ど う聞 こ え るか 、 ど

う仮 名 書 きす れ ば 元 の音 に近 くな るか を追 求 して い か な けれ ば な らな い 。 こ こで取 り上 げ た の は ほ ん の 一 例 で あ り、 言 語 に よ っ て どの よ うな 仮

11)

名表 記 が適切 かが違 って くる。言語 ご との詳 細 な研 究 は今 後 の課題 で あ るが、小 文字 や濁 点 ・半 濁 点、 お よび新 た な補 助 記号 を工夫 すれ ばか な

りの音 を表記 で きる ようにな るで あろ う。

6,お わ りに

各 言 語 は そ れ ぞ れ の正 書 法 を持 っ が 、 それ は必 ず し も発 音 を正 確 に反 映 した も の で は な い 。 な ぜ な ら、 意 味 を伝 え る こ とは文 字 に とっ て 音 を 示 す こ と以 上 に重 要 な役 割 だ か らで あ る。 英 単 語 の綴 りの 複 雑 さ 、 発 音 との 結 び つ き の 弱 さが よ く指 摘 され るが 、 そ れ は 古 い 書 き方 、 伝 統 的 な 書 き方 を 守 る こ とで 、 語 構 成 や 意 味 の 違 い を と ら えや す く して い る か ら で あ る。 「現 代 か なつ か い 」 が戦 後 定 め られ た とき、 表 音 式 を基 本 とす る こ とに した もの の 、 助 詞 「は」 「へ 」 「を 」 の 書 き方 を わ 」 「え 」 「お 」

と しなか っ た の は、 同様 の 理 由 に よ る。

表 記 を考 え る場 合 は伝 統 ・慣 習 を尊 重 しな けれ ぼ な らな い が 、 グ ロ ー バ ル 時 代 、IT時 代 を迎 え、 英 語 とロ ー マ 字 が さ らに 影 響 力 を強 め つ つ

(20)

あ る。 しか し、 仮 名 表 記 に は 、 ロ ー マ 字 に な い特 有 の利 便 性 が あ る。 そ の仮 名 の可 能 性 を高 め る こ とに よ って 、 従 来 の 仮 名 遣 い で は 書 き に くい 音 を何 とか 共 通 の ル ー ル に基 づ い て 記 述 で き る よ うに して い く こ とが 求 め られ て い る。 本 稿 で は この 問 題 を解 決 す る糸 口 を探 る た め に 、仮 名 と 音 の ず れ の考 察 を も とに して 新 た な 仮 名 表 記 の 試 案 を提 示 した 。

これ は言 いi喚え れ ぼ 、 余 剰 素 性 に す ぎ な い もの(日 本 語 で は 余 剰 素性 にす らな らな い もの も含 まれ る)を 仮 名 表 記 で 示 す こ とが で き な い か と い う試 み で あ る。 か つ て[ti]の 音 は 「チ 」 あ るい は 「テ」 で す ま され て い た もの が 、今 で は 「テ ィ」 と して 日本 語 の 音 と して認 知 され る まで に な っ た の で あ るか ら、 決 して 無 意 味 な こ と とは言 え な い 。

日本 人 に は 区別 が 難 しい音 、 ほ とん ど意 識 も され て い な い 音 の 違 い を ど こ まで 表 記 に反 映 させ るべ きか につ い て は、 異 論 が あ るに ちが い な い 。 しか しな が ら、 こ こ に示 した 仮 名 を す べ て 日常 生 活 で使 わ れ る よ うに普 及 し よ う とい うわ け で は な い 。 外 国 語 の 表 記 や 外 国 語 教 育 、 あ るい は朗 読 や 演 劇 な どの 日本 語 の 発 音 指 導 に仮 名 を工 夫 して 使 っ て い こ う とい う

こ とで あ る。 この 中 か ら実 用 的 だ と多 くの 人 が 受 け 入 れ る もの が 出 て く れ ば 、 そ れ が 新 しい仮 名 表 記 の誕 生 とな る。

こ う した試 み は、 日本 文 化 の素 晴 ら しい財 産 で あ る仮 名 の可 能 性 を拡 大 し、 有 効 利 用 へ の道 を 開 くこ とに な る と考 え る もの で あ る。

【 注 】

1)Gelb(1952)が 、 文 字 は必 ず表 語 文 字 か ら音 節 文字 の段 階 を経 て アル フ ァ ベ ッ トに行 き着 く、 と した説 の 影 響 が今 で も残 って い る。 か つ て ア ラ ビ ア文 字 を使 用 して い た トル コ語 や ス ワ ヒ リ語 、 あ る い は イ ン ドネ シ ア語 が ロ ー マ 字 化 され た こ とを賞 賛 す る一 方 で 、 タイ の少 数 民 族 の 言 語 を タ イ文 字 で 表 記 す る こ とを偏 屈 ・狭 量 な民 族 主 義 と批 判 す る学 者 が い る。

2)ハ ン グル は さ らに徹 底 して お り、 音 節 末 の子 音 は下 に付 け て 書 け るの で 便

(21)

仮名 は どこまで音 を表 せ るか

利 で あ る。

3)日 本 語 の教 科 書 の 中 に は特 殊 拍 で あ る こ とを際 立 たせ るた め に長 音 を 「R」、

促 音 を 「Q」、 撲 音 を 「N」 で 表 記 して い る もの も あ る。

4)た とえ ば 「 康kang」 「 将yang」 はfH仮 名 で 「 か う」 「しゃ う」 とな る。

5)大 川(1999)は 「 ウ ン」 「 ウ ウ ン」 を[NN][N:N]で あ る と して い るが 、 口蓋 垂 鼻 音 で あ る とす る と、 口 を 開 けて 発 音 しな けれ ば な らな い。 口 を開 け て 発 音 す れ ば 、 肯 定 ・否 定 の返 事 で はな く、 相 手 に 「そ うな の か 」 と問 い か け る とき の言 い 方 に な り、 「ア ー ン」 「 エ ー ン」 とで も仮 名 書 きす る こ と に な ろ う。

6)JISの 「 用 語 規 格 の ま とめ 方 」 の 附 属 書 「 外 来 語 の表 記 」 で は 、 長 音 符 号 を省 く場 合 の原 則 と して 、 「 そ の言 葉 が3音 以 上 の場 合 に は、 語 尾 に長 音 符 号 を付 け な い」 を 挙 げ て い る。 しか し、 統 一 は 困 難 な の で 各 専 門 分 野 の 慣 習 を 尊 重 す る こ とに な っ て い る。

7)ザ 行 が 「 ジ ャ ・ジ ュ ・ジ ェ ・ジ ョ」 とな って し ま う学 習 者 も多 い。

8)一 般 の 外 来 語 は国語 審 議 会 の報 告 で 、原 音 に お け る 「ウ ィ」 「 ウ ェ」 「ウ ォ」

の 音 は、 な るべ く 「ウイ 」 「ウエ 」 「ウオ 」 と書 く と して い るが 、 これ は実 際 の 発 音 を反 映 して い る。 しか し、 教 科書 研 究 セ ン ター が ま とめ た 『 新 地 名 表 記 の 手 引 』 で は 、 「ウ ィ」 「ウ ェ」 「ウ ォ」 の 音 は、 「ウ イ 」 「ウエ 」 「ウオ 」 と

しな いで 書 く、 こ とに な っ て い る。

9)濁 点 は子 音 が 声 帯 振 動 に よ って 強 く聞 こえ る印 象 を与 え る の で 、 ふ るえ 音 に あ て る の が 適 当 で あ ろ う。

10)島 岡(1998)は[田]を[エ ア]、[θ]を[エ ァ]と して い るが 紛 らわ しい。

ll)た とえ ぼ、[θ]や[6]を 使 う言 語 は英 語 に限 らず い ろ い ろ あ るが 、 これ を ど う表 記 す るか も問 題 で あ る。 英 語 の 「the」 を[da]で 発 音 す る ピ ジ ン も多 い。 なぜ そ れ が 可 能 なの か とい う と、 英 語 の[d]は 後 ろ寄 りの[d]で あ り、 これ と歯 裏 音[d]が 区 別 で き れ ば よい か らで あ る。 この こ とを応 用 す る と、 「ダ」(下 線 は歯 の 部 分 で 発 音 す る こ と を示 す)と した ほ うが 「 ザ 」

よ り発 音 指 導 に は い い ので は な い か 。 同様 に 「think」 も 「 ス ィ ン ク」 や 「シ

ン ク 」 で は通 じ に くい の で 、 思 い 切 っ て 「 テ ィ ン ク」 と し て 、 外 国 人 に 通 じ

る 「Japalish」 を 目指 す の も一 案 で あ る。

(22)

【 参 考 文 献 】

大 川 英 明(1999)「 日本 語 に お け る文 字 と発 音 の多 様 性 」 『関 西 外 国語 大 学 留 学 生 別 科 日本 語 教 育 論 集 』 第9号

教 科 書 研 究 セ ン タ ー編(1978)『 地 名 表 記 の 手 引 』 ぎ ょ うせ い 共 同通 信 社 編(1973)『 記 者 ハ ン ドブ ッ ク』 共 同通 信 社,2002

島 岡 丘(1998)『 中 間 言 語 の 音 声 学 』 小 学 館 プ ロ ダ クシ ョ ン

武 部 良 明(1980)「 日本 語 教 育 に お け る片 仮 名 の 問 題 」 『日本 語 教 育 』42号 日本 語 教 育 学 会

中川 裕(1995)『 カ ム イ ユ カ ラ』 片 山 言 語 文 化 研 究 所

日本 規 格 協 会 編(1988)『JISハ ン ドブ ッ ク標 準 化 』 日本 規 格 協 会

山 本 忠 行(1997)「 日本 語 教 育 に お け る ロ ー マ 字 問 題 」 『 創 価 大 学 別 科 紀 要 』 第ll号

Gelb,1.J.(1952)Astudy()fwriting.・thefoundationsof

9η 〃2〃2認0109ア.UniversityofChicagoPress.

参照

関連したドキュメント

 2020 年度の反転授業内容も変更した。2018 年 度と 2019 年度の授業のなかで提示した映像資料 は 2020 年度では提示しなかった。理由は,授業

[r]

15

研究目的

5 時間で ある。短い時間の中でより

あろう OSS の DBMS

La forma ~ます [–MASU] sirve para hablar tanto del presente como del futuro, por lo que se utiliza también para hablar y preguntar sobre lo que se va a hacer a

3) Frank O’Connor, The Lonely Voice: A Study of the Short Story (Cleveland: The Lonely Voice: A Study of the Short Story (Cleveland: The Lonely Voice: A Study of the Short Story