5
章 『健康な食生活を目指 して』〜食品添加物,機能性食品を中心に〜
は じめに
石黒 正恒
第 Ⅱ部では,か らだの中での くす りの動 き,薬膳,酒の功罪など健康な食生 垂 について記載 され る予定である。そ こでタイ トル中にある 「健康」‑健康に 生 きるとはどういうことかが問題になる。
ヒ トという生物である私たちの生活条件 として大切な ものは衣食住である。
その中で も食は生命の基礎をなす点か ら特に重要で,食物の取 り方になん らか の欠陥があれば, とういて完全な健康ひいては生命を維持す ることはで きな い。衣 と住は,寒い地方の人たちにとっては絶対に必要であるが,熱帯地方の 住民では,着物や家屋がな くて も生 きてはいける。 ところが,食物は地球上の あ らゆる人間にとって,否あ らゆる生物にとって,な くてはな らない必需品で あ る。食物を巡 っての闘争 は,何 も鳥獣やその他の動物 に限 った ことではな く,人間社会,特に昔の社会あるいは現代で もしば しば見 られることである。
即 ち私たちが生命を保つ最低線 は食べ ることである。
さて,それでは 「健康に生 きる」ということはどういうことであろうか ?罪 二次世界大戦後設立 された世界保健機構
( WHO)
では 《健康 とは,身体的, 精神的,並びに社会的に良好な状態であり,単に疾病または病弱が存在 しない ということだけではない。以下略》のように定義 された。以後5 0
年間に健康の 概念 も多様に変化 して きている。例えば,「老人は健康ではないのか ?」
「障害 を持つ人についてはどのような健康の定義をすればよいのか ?」「なん らかの 病気があれば,それだけで健康でないといえるのか?」など,健康に関す る議 論 は続 いている。また健康管理の理念 も, 「医学モデル」か ら 「成長モデル」‑ 175‑
死
O ‑
病気 一〇一 半病気 一〇一 鮭康 一一一〇建廉皮(%)
医 学 疾 病 の 医 学 健 康 増 進 の 医 学
鮭 康 状 態 病(病人)気 半(半病人)病 気 半(半鮭康人)鮭 康 健(鮭康人)康
d i s e a s e p r e ‑ d i s e a s e 叩 r ‑ h e a lt h h e a l t h
図1 病 気 と健康
に,また 「欠乏モデル」か ら 「充足モデル」に変化 しっっある。例えば図
1
に 病気 と健康の関係を示 しているが, ヒ トを健康( heal t h)
と病気(di seas e)
の二つの状態に分けたとき,当然半健康( poor‑heal t h)
と半病気( pr e ‑ di s e as e)
の状態が存在す る。病気 ・半病気 に対する医学的対策 として医療が存在 し,半 健康 ・健康に対す るもの は健康増進の医学である。半健康人 に於て,栄養素 (食事)の欠陥に伴 う身体的状況の変化は, まず食事中の栄養素のア ンバラン スによる栄養素利用の低下,代謝変動,呼吸不全, さらに生化学的には血液 中,尿中での酵素活性,代謝産物の変動があ り,生理的には不特異的不定愁訴 のような徴候があり, これ らの結果として特異的な臨床徴候を示す状態 ‑すな わち病気へ と変化す ると考え られる (表1
)0本講座では,健康 と食品について話をす るのであるが,本当に健康のために 良い食品 とは何であるかを判断す ることは大変難 しくなっている。 さらに第二 次世界大戦前
( 1 9 4 5
年以前),戦後( 1 9 4 5‑5 0
年),東京オ リンピック前後( 1 9
6 4
年前後),石油 ショック( 1 9 7 4
年代),そ して現在( 1 9 8 0‑9 0
年代)と,時代5
章 『健康な食生活を 目指 して』表 1 栄養素の欠陥 に伴 う身体状況の変化
1
初期状態栄養素の利用低下‑食事 中の栄養素のア ンバ ラ ンス 呼吸不全
代謝変動
利用冗進 (妊娠,授乳 など) 2 生科学的に変動のみ られ る状態
血液中の濃度の変動
完芸警芸冨雪雲 る琵嘉霧 ,の変動
3
生理的に変化のみ られ る状態不特異的な徴候 不定愁訴 4 臨床的に変化のみ られ る状態
特異的な徴候
と共に食に対す る日本人の考え方 と日本人を取 り巻 く社会環境が大 きく変化 し ている。即ちいずれの時代に生 きている日本人 も等 しく健康でありたいと願 っ ていたわけであるが,それぞれの時代における社会環境 と経済状況に応 じた食 生活をせ ざるを得なか った。即ち,終戦直後最 も食べたか った時に充分な食糧 のなか ったことを経験 している現在5
0‑6 0
才の方々か らす ると,現在の状況 は 驚異に値す ると思 う。 食べたいものが時期を選ばず手に入 る, この リッチなグ ルメ曙代,飽食の時代,料理番組の隆盛,健康食品の氾濫など,誰にとって も ある意味か ら言えば何を食べれば良いのか判断に迷 うであろう。わが国は男女 ともに世界一の長寿国になった。 しか し,感染症は減少 した も のの,ガ ン,心臓病,脳卒中などの成人病や,糖尿病などの慢性疾患の患者が 増加 している。成人病はかかった後の薬による治療 よりも予防の方が重要であ ることは自明の ことである。そ してそれは平素の規則正 しい日常生活,特に食 生活の改善が予防効果に及ぼす影響は大である。昔か ら衣食同源 という言葉が あるように, ヒ トの健康はその摂取す る食品によって大 きく左右 され る。言 う
まで もな く,食品は単なる栄養素の集合体ではな く,その中には異なる栄養素 の相互作用や,非栄養成分の作用などが複雑に関わ ってお り,各栄養素の重要 さを認めっっ も, トータルの食品 として考える必要がある。一方、食品を食べ
‑
1
77‑物 として受取 る側 も, これを単に栄養素の集 まりと言 うよりも社会的,文化的 背景を含めた ものとしての認識が大きいであろうし,少な くとも栄養素 として 説明す るよりは食品として説明する方が一般 にわか りやすい。では一体,何を 食べれば良いのか ?
現代は食と健康に関す る情報が巷に氾濫 している。 しか し,それ らの情報は 玉石混交で,中には企業が自社の商品を売 るための非科学的あるいは消費者に とっては有害な情報 もある。 このような情報を正 しく理解す るために,科学的 な根拠に基づいた,健康に関す る正確な情報の積極的な提供が必須 となる。 こ のような観点か ら,健康な食生活 一食品添加物 と機能性食品を中心に一につい て話を進める。
1
節 日本人の食生活の変遷わが国には ''国民栄養調査 ''と呼ばれる
4 0
年の歴史を誇 る調査がある。 この 調査は栄養改善法( 1 9 5 0
年施行)に基づいて実施 されるもので,国民の栄養改 善の方途を講ず る基礎資料 として,健康状態,栄養素摂取 と経済負担 との関係 を明 らかにす ることを意図 した ものである。年度 によって変動す るが約5 , 0 0 0
‑2
万世帯を選び出 し,連続 した5
日間に摂取 した食物の種類 と量を調べる。この資料から得 られる情報の一つ として,例えばわが国の米の‑人‑ 日当りの 摂取量がどの様に推移 したか知 ることがで きる。戦前では
1 91 1‑1 5
年平均3 5 0
g,1 9 21‑2 5
年3 9 0g,1 9 3 4‑3 8
年3 7 5g
であ ったのが, この調査の始 まった1 9 4 6
年 (終戟の翌年)は2 4 0g
しかとっていず,1 9 6 0
年 までは急激 に上昇 して3 5 8g
とほぼ戦前の レベルに戻 り,以後余 り変化 しなか った。 しか し,1 9 7 0
年 には3 0 0g
を きり,以後減少を続け,1 9 81
年には2 2 2g
までになった (表2
)0 この調査には国民栄養調査食品群別表があ り,食品群は1 9
食品群 (穀物,種実 類,い も類,砂糖類,菓子類,油脂類,豆類,果実類,緑黄色野菜類,その他 の野菜類,きのこ類,海藻類,調味 ・晴好飲料,魚介類,肉類,卵類,乳類, 加工食品)に大別 されている。食品群別にみたおおまかな食物摂取の経年変化 を1 9 61‑71
(昭和3 6‑4 6)
年で見てみ ると,魚介類 は少 しずつ増加傾向にあ り, 牛 乳, 肉類 は魚 介 類 よ り も増 加 率 は大 きい。果 実 類, 牛 乳, 油 脂5
章 『健康な食生活を 目指 して』表
2
日本人の食品のと り方の推移 (平均1
人1日当 り)
1 950 1 955 1 9 60 1 9 65 1 9 70 1 975 1 980 1 981
米小い油豆
魚肉卵乳野果そ
′くし 麦も脂介乳業実の 類類類類類類類類品項類他製
2 7 1 8 6 2 2 0 6 4 5 3 2 9 6 1 6 9 7 4 1 0 5 1 2 1 2 1 1
6 2 3 7 5 3 8 8 5 0 5 5 2 9 6 1 6 9 6 3 1 0 5 1 2 1 2 1 1
8 0 1 6 0 4 4 2 4 7 4 4 4 9 6 1 7 9 6 4 0 4 9 5 2 1 2 1 1
6 5 8 6 1 7 3 1 9 9 1 2 0 6 3 1 7 8 4 4 7 4 8 7 3 2 1
0 0 2 0 0 6 0 5 7 9 9 6 5 6 4 1 7 7 3 3 5 1 5 (ソ 一 3 2 1
8 5 4 6 1 7 9 9 3 4 8 1 5 6 6 7 7 1 1 3 1 7 8 3 2
7 0 1 4 7 7 2 2 4 6 4 7 4 6 8 6 7 1 1 1 4 4 4 3 2
9 9 7 3 4 1 8 6 7 2 2 6 3 6 2 5 6 4 4 3 3 1 2
表
3
日本人の栄養素の と り方の推移 (平均1
人1日当 り)
1 950 1 9 55 1 960 1 965 1 970 1 975 1 980 1 981
エ ネル ギ ー( kcal )
糖 質 (g)
脂 質 (蛋)
動 物 性 (g)
タンパク質 (g) 動 物 性 (g) カル シ ウム (mg)
&
( m g)
ビタミン
A (I U)
B l
(mg)B 2
(mg)C
(mg)2,098 2,1 0 4 2, 096 2,1 84 2, 21 0 2,1 88 2, 084 2,1 01 41 8 41 1 399 38 4 368 337 31 3 31 0 1 8 20.3 2 4. 7 3 6.0 46.7 5 2.0 5 2. 4 54.7 1 4.3 2 0. 9 27.4 27.2 28.6 68 69. 7 69. 7 71 . 3 77. 6 80. 0 77. 9 78. 8 1 7 2 2. 3 24.7 2 8.5 3 4.2 3 8.9 3 9.2 40.1 270 338 389 465 53 4 550 535 546
46 1 4 1 3 1 3.4 1 3.1 1 3. 4
‑ 1, 08 4 1,1 80 1, 324 1 , 53 6 1 , 602 1 , 576 1 ,730 1 .5 2 1 .1 6 1 .05 0.87 1 .1 3 1 .11 1 .1 6 1 .1 7 0.72 0.67 0.72 0.83 1 0 0 .96 1 .01 1 . 04 1 07 76 75 78 9 6 11 7 1 07 11 5
類が
10
年間で2
倍の摂取量 にな っていることは特筆に値す る。 さらに表3
には 日本人の栄養素のとり方の推移を示 してある。カロ リー摂取量は約2 ,000Kca
l/日で,ほぼ一定であるが,糖質摂取量 は年 と共に減少 し
( 418 g ‑ 31 0g)
,これに対 して脂質は
3
倍以上に増え,特 に動物性脂質 は2
倍になっている。 また 動物性 タンパ ク質の摂取量 も2
倍にな っている。 このように全般的にこの30
年1 1 79‑
間に食物のとり方が著 しく変化 していることが伺える。
その後の1
97 0
年代の食生活の特徴 は,某食品会社の調査か ら読み取 ることが 出来よう。 即 ち,子供の好 きな料理,若いお母さんの得意な料理,男性の好む 料理 として集計された ものを示す と次のようである。(子供の好 きな料理) (お母 さんの得意な料理)
1 9 7 6
年1 9 8 0
年1 9 7 6
年1 9 8 0
年1
カ レーライス1
カ レーライス1
ハ ンバーグ1
ハ ンバーグ2
ハ ンバーグ2
‑ ンバーグ2
カレーライス2
カ レーライス3
スパゲ ッティ3
ラーメン3
ギ ョウザ3
スパゲ ッティ4
ラーメン4
スパゲ ッティ4
目玉焼 き4
ギ ョウザ5
肉料理5
目玉焼 き5
肉料理5
煮物(男性の好 きな料理)1
9 7 6
年 と8 0
年変化無 し1
野菜煮つけ5
鍋物9
おでん2
す き焼 き6
茶碗む し1 0
シチュー3
焼肉7
ギ ョウザ4 テ ンプラ 8 酢豚
JH上源太郎氏の説によると, これは多少の皮肉を こめた言い方であるが,若い お母 さんので きる料理 はまず 《オカーサ ン,ヤスメ》即ちオム レツ,カ レー, サ ン ドイッチ,ヤキソバ,スパゲッティ,メダマヤキであり,その次に 《ハハ キ トク》すなわち‑ ンバーグ,ハムエ ッグ,ギ ョウザ, トース ト, クリームシ チューであると言 う
。
これ らの料理の特長は,いずれ も暖めればす ぐ出来上 り というイ ンスタン ト食品で, しか も子供の好 きな料理 という条件を満た してい る。子供の好 きな料理は以下, グラタン,チャー‑ ン,す し,サラダ,ヤキソ バ と続 くが,男性の好む料理 とは対照的である。即ち,19 7 0‑8 0
年代の食生活は,男性対子供そ して世代による好みのギ ャップが明 らかに出ている。
実際の食事の時の副菜料理の種類を1
9 6 8
(昭和43) ,1 9 7 6( 51 ) ,1 9 8 0( 5 5)
年に調査 した表である (表4)。対象地区は埼玉県坂戸市S地区で,埼玉県中 西部 に位置 し,都心か ら5 0k m
圏内,副都心か ら電車で1
時間以内の位置にあ る。昭和40
年代か ら今 日にかけ,近郊農村か ら新興住宅地,工業団地都市‑ と 急激な変貌を遂げて きた地域である。就業構造,食材料流通状況などの大 きな5
章 『健康な食生活を 目指 して』表4 副菜料理の種類
食 事
名篭
料 理名 「 芸 り 」 慧
数 23843 朝5199 5557 14390昼
5181 5548 14392 151夕
06 5560汁 経略汁 198 83 45 33 31 12 89 44 19
うどん汁 6 1 l l 3 2 1
す まし汁 3 2 4 3 3 9 5
豚
汁
など具の多い汁 2 4 1 1 1 1 6 5野
菜
スープイ ンスタ ン トスープ
*
1 2 lI l 1憤け物 ‑ クサイ .た くあんなど朝鮮 繍 166 741 42 120 55 33 日5 69l 38l
加 針 ,A ; 17 17 10 4 1 1 l i l
17 13 8 12 7 5 9 5 4
鉄火昧樹 など
*
3 1 3 1 2ふ りかけ * 4 1. i
工
塩ハム .ソーセー ジ辛 .ウニな ど*
* 22 31 2 3 1 11 1 2 4に 丁
l l n
禁讐書誓護官‑ ン職 吉.
*… l l1 11 1 2 1 1煮 野 25 13 3 27 16 10 24 15 11
煮マメ 6 5 43 3 2 5 3
卵 とじ 3 1
チクワ .吐揚煮 2 1
煮 魚 2 1 l l
‑ムカッEシチ ユウ類r煮 1 l l 3 1
鍋 もの 1 2 1
a おひた し 18 6 2 24 6 4 34 14 5
茄 卵
伎マメ塩茄 1 1
坐 野菜サラダ 7 6 4 101 4 4 14 26 15
納 豆 3 3 4 l l
トロロイモ 3 3 1 6 5 1
加地生野菜
野菜 ジ ュース 12 641 2 4 5 24 3 2 211 幣 fi)(カニ)
≡
和 おろ し和え 8 6 2 2 2 2 2 1
酢のもの 1 2 2 3 1 4 6 2 1
ポテ トサラダ 1 1 1 1 2 3 3
ゴマ和え 8 1 7 2
ぬ た
中華風サラダ 3 1 4 2 11
揚 精進揚げ野菜唐揚げコロッケ .メ ンチ類 * 731 41 117 33 23 174 36 51
妙 野菜妙めギ ョウザた くあん ソテー * 91 71 21 61 22 61 82 142 44 はんぺん ソテー
ハムソテー 1 1 1 1
焼 焼 魚 6 4 2 1 3 1
焼 きイモハ ンバーグ I 1 2
文 紺
計 苗
509 239 13ー 268 136 89 337 186 9936 32 15 31 20 23 38 59 37
化 545 271 14() 299 1r)6 日2
3 7
5 2′15 136紺 計 請 9.'i4 8g82 Hr)7 指9fi 汚72 795 H()9 759 72H 憎 (,:6 11.8 10∴i 10.4 12.8 2ー).5 lO.1 2日 27:2
JJJl ̲T. 食 .V. 67 52 29
28.2 52,2 5().9 31 23 18
17.9 28.1 37.5 21 22 24 12.5 2O.8 40.()
注 :*加工 食品 磯 田他 :食の科学6
0.81( 1 98
1)‑1 8 1 ‑
変化が見 られ 特に最下段の加工食品の項を見ればわかるように,加工食品の 導入度が最 も高い。
日常の食事が常 に新鮮 さな調理材料を調理 した料理であることは理想であ る。 しか し,上の例のように,近年における都市への人口の集中,核家族化, 女性の職場進出,外食需要の高まり,など食料品の消費の高度化,多様化の も
とで,国民に食料を計画的 ・安定的に供給す るために,新鮮な調理材料のみを 平均的に供給することは不可能に近い し,また個々の家庭の調理素材の保存面 積や機能,調理のための機能や時間の面か らも不可能に近い (冷蔵庫,冷凍 庫,電子 レンジなどの発達 と共稼 ぎ率の上昇 :図 2の調理時間の短縮化を参 照)。従 って,現在の 日常の食生活に於て, また集団給食の場合に於て,半加 工食品ろ加工食品が不可欠の ものとなって くると同時に,経済性,便利な こ と,合理化 された食料へのニ ーズが一層高 まって いるのが現状である (義
5)
。
食品加工は昔か ら生活の知恵を生か して種 々の方法が考案され 伝統的加工 法が主 として貯蔵性,輸送性を食品に付与 してきた。 しか し最近では製造の合 理化,大量生産,新食品の開発,創造まで行われ,今まで望めなか った品質あ るいは簡便性の高い合理化された加工食品が創造 されるようになった。 このよ
1 5 分未 満
・ 1 1 5 3 ‑ 0分 3 0‑45 分未 満 45‑‑ 6 0 分 未 満 6 0 分 以 上 ;
:
./I.4 ㌧
. . /
全
( 5, 62 0
仕 事 有
( 2, 8 07
人)仕 事 無
( 2, 81 3人
)レ0.9.,'' ..一′
: ,
〔昭和56年国民栄養調査〕
図 2 夕食の調理 に要す る時間 (全体 ,仕事 の有無別)
5
章 『健康 な食生活 を 目指 して』表
5
食料費支出の費 目別構成 (単位 :%)
年 度
費
目
昭和30
年4 0
年5 0
年51
年5 2
年5 3
年5 4
年 食 料 費1 0 0 .0 1 0 0 .0 1 0 0.0 1 0 0 .0 1 0 0. 0 1 0 0 .0 1 00 . 0
主 食35 . 8 2 2 .3 1 3 . 3 1 3 .3 1 3 .5 1 3 .5 1 3 . 3 副
食 品43 . 9 49 .6 5 2. 3 5 2 . 3 51 .5 50 .5 50 .3
時 好 食品 1 5 . 9 2 0 . 8 2 2. 7 21 .9 2 2 . 0 2 2 .4 22 . 0
外 食④ 4. 4 7 , 4 l l .9 1 2 . 4 1 3 . 0 1 3 .8 1 4. 8
加 工 食 品 ⑧3 9 .8 43 .7 46.0 44 .9 45 .2 45 .3 ‑
出所 :総理府 「家計調査 (全国 ・全世帯
) 」
うな状況の もとで昭和30年代の前半か ら食品添加物が登場 した。 さらに昭和50 年代にはコメを始めとする農産物,水産物などの食糧の外国か らの輸入が増え 始めると,ますます食の形態 と しての加工食品の割合が激増 した。そ して 日本 人の平均寿命 も大幅 に伸びて
,21
世紀には長寿者社会 となることが確実 となっ た。 ここに至 って, 「生 きるためには最低食べ ることである」 と言 う従来の考 え方か ら,む しろ積極的に 「食を通 じてヘル シーに生 きる」と言 う発想が出て きた (前出 :健康管理 「充足モデル」の由縁である)。その結果,巷 に健康食 品があふれ, さらには機能性食品などが誕生 した。2節 食品添加物 とくらし
私たちが食べている食物の成分 は,か らだの中に入 って血 となり肉 とな り, あるいは分解 しなが らエネルギーを出 し,私たちはそのエネルギーを使 って生 存 している。 こうして毎 日そ して毎年,一生を通 じてか らだに入 って くる物質 の量 は大変な量 にな る。食物成分 と して大 きな部分を占める糖質, タンパ ク 質,脂質はもとよりビタ ミン,微量元素のように,その検出 も容易でない微量 成分 も健康にとって大 きな影響を及ぼ している。 さらに昔の人間な らば決 して 口か らは入 らなかったであろう物質が,食品添加剤 として,あるいは残留農薬 と してか らだに入 り,そのあるものは明 らかに有害物 として,あるものはどん
I 1 8 3‑
な働 きがあるか未知のまま私たちを脅か している。
毎 日の食事が新鮮な材料を調理 した料理であることは理想であるが,近年に おける社会的環境や家庭状況の変化か ら,新鮮な材料のみを供給す ることは不 可能に近い。そこで調理材料の製造,食品加工における殺菌,保存性などに関
しての技術が発達すると共に食品添加物が登場 した。
食品添加物 とは,食品の品質を改良 し,保存性あるいは噂好性 (魅力)の向 上,さらに栄養的価値そのほか食品の実質的価値を増進する目的に用いられる もので,食品の製造過程 または加工の段階で添加 される物質と定義できる。現 在指定 されている化学的合成食品添加物は
3 4 7
品 目ある (食品衛生法施行規則別表第
2に記載)。化学的合成品以外の食品添加物,いわゆる天然物添加物の 中には,卵黄中に含まれているレシチンや トマ ト色素などの天然の着色料の様 な ものを含む。わが国では消費者の天然物指向もあり,天然物を原料 とした食 品添加物の開発研究が盛んであり,外国には見 られないほど多種類の化学合成 品以外の食品添加物が使用 されている。厚生省の昭和6 3
年の リス トには約1 , 0 0 0
品目が天然物食品添加物 としてあげられている。 この うち約5 0 0
品目はいわゆる着香料,即ち香料の基原物質 (動植物名)である。
食品添加物 はその用途か ら,おおよそ次の
5
群 に分類できる。く )で食品 添加物名を示す。( 1 )
食品の製造に必要な もの・‑‑‑‑数々の食品の製造や加工にな くてはなら ない食品添加物で,次のようなものがある。イ
豆腐の凝固剤 大豆を磨砕 し,おか らを除いた豆乳を豆腐に固めるため に,にが り (苦汁)やすま し粉が凝固剤 として使われている。 にが りは く塩化マグネシウム)を主成分として含有 しているものを指 し,すまし粉 は 〈硫酸カルシウム)である。他に く塩化カルシウム)や くグルコノデル タラク トン)なども使われる。ロ 炭酸ガス 炭酸飲料の爽快な清涼感は,吹 き込まれた く炭酸ガス)によ るものである。
ハ
かんすい ラーメンの弾力あるシコシコした食感や特有の風味と透明感 のある淡黄色は,小麦粉に くかんすい〉が作用 して得 られる。昔は植物灰 などを使 っていたが,今ではその成分である く炭酸塩〉や くリン酸塩〉を5
章 『健康な食生活を 目指 して』使用す る。
ニ 乳化剤 マヨネーズは酢の中に油が分散乳化 した もので,加 え られた (卵黄 レシチン)が乳化剤 として働いている。
ホ 膨張剤 ビスケ ッ ト,たい焼 き,カルメ焼 き,ホ ッ トケーキ等を作 ると き, く重曹)やベーキ ングパ ウダーを使 う。 小麦粉 に水を加えて練 った も のをそのまま焼いて も,ふ っくらとした ものが出来ないが,膨張剤を加え て焼 くと,ふ っくらと膨 らみ,柔 らか く,食感の優れた ものとす ることが 出来る。
へ 油脂の抽出溶剤 植物の種子か ら くヘキサ ン)を使 って油を抽出す る と,完全に抽出で きる,大量生産 に適 している,安価に植物油を製造でき るなどの利点がある。食品衛生法では製品の油か ら くヘキサ ン〉を完全に 除去す るよう義務づけ られている。
卜
酵素 みそ, しょうゆ, 日本酒, ビール,チーズ,パ ン等は発酵食品で あ り,すべて微生物,動植物 に含 まれている酵素の働 きによって行われ る。 さらに酵素には糖化用 くア ミラーゼ〉やタンパ ク分解用パイナ ップル(プロテアーゼ〉等 も食品製造の過程で使われている。
チ その他 植物樹液か らの くチクル〉はチューインガムのガム質 として, また食品の製造過程には (塩酸) (硫酸〉 (カセイソーダ) くイオン交換 樹脂) 〈活性炭) くケイソウ土)等種々の食品添加物が使われている。
(2) 食品の保存性の向上 と食中毒を予防するもの
食品衛生法の 目的の一つは,食中毒の予防にある。食品中の細菌の繁殖を抑 え,食品の変質や腐敗を防 ぎ,食品の保存性を向上 させ,食中毒を予防す るこ
とは,食品の安全性 と食糧資源の有効利用のためには必須のことである。その ために使用 され る食品添加物 と して,①微生物による食品の劣化防止に役立っ 保存料 と防かび剤と,②食品の酸化防止に役立っ酸化防止剤がある。
① 昔か ら食品を保存す る時,塩漬け,砂糖漬けなど食品中の水分を少な く して,また酸性,低温にすることによって微生物の繁殖を抑えていた。食品添 加物 としての保存料 とは,食品中の微生物の発育を止めて,増殖するのを遅 ら せ る,いわゆる静菌作用を利用 した ものである。食品の保存性を高めるには, 従来か らの保存法と保存料を組み合わせて使 うのか最 も効果的である。保存料
‑ 1 8 5 ‑
はほとん どが弱酸性の物質であ り,非解離型が抗菌力が強いので
,pH
により 効果が左右 される。食品が酸性に保たれていると効果が大である。 〈安息香酸(塩)〉は一般細菌には
pH5 . 5
以下,かび,酵母,乳酸菌にはpH4 . 5 ‑5 . 0
で有 効であるが,中性では無効である。(ソル ビン酸 (塩)〉の抗菌力は強 くないが 防ばい剤 として有用である。〈デ ヒ ドロ酢酸 (塩)〉は熱 に安定で,酸性か ら中 性付近 まで有効である。〈パ ラオキシ安息香酸エステル類)は多種の菌に対 し て有効で安定 した効果を示す。エステルであるか ら食品のpH
の影響を受 けな いが,水に溶けに くい欠点があ る。エチル, プロピル, イソプロピル, ブチ ル,イソブチルの5
種であるが, ブチルエステルが最 も効果が強い。(プロピ オ ン酸 (塩)〉は脂肪酸の持つ抗菌作用に基づ くものであ り,発カ ビ防止 に用 い られるが安全性は極めて高い。防カ ビ剤は特にカ ビの生え易い生鮮果物 (柑橘類 とバナナ)に限 って使用が 認め られている (くジフェニル :
DP
〉(オル トフェニルフェノール :OPP)
(チアベ ンダゾ‑ル:TBZ
))。② 食品の酸化防止 と品質劣化防止
油脂の変敗を防止す るためには脱気や遮光 と並んで酸化防止剤の添加が有効 である。抗酸化防止剤である くブチル ヒ ドロキシアニソール :
BHA
〉あるい は 〈ジブチル ヒ ドロキ シ トルエ ン :BHT
〉の併用, さらには (クエ ン酸〉, くリンゴ酸〉,くコ‑ ク酸〉などの共力剤 との併用で効果が増強 される。作用は 遊離基 と反応 して連鎖反応を防止 した り,過酸化物を還元 した りす ることによ る。従 って既に変敗 している油脂に添加 して も効果 はない。最近天然物抗酸化 剤である〈α‑
トコフェロール :ビタ ミンE)
を用いる傾向が強まっている。抗酸化力は
BHA
,BHT
にやや劣るが,毒性 はきわめて低い。( 3)
食品の品質を向上 させ るもの食品の品質を向上 させ る食品添加物には,乳化剤,増粘剤,安定剤,ゲル化 刺,糊料,軟化剤などがある。
乳化剤 は混 ざり合わない油 と水の乳化を可能 に し,安定化 させ るもので, マーガ リンやアイスクリームの乳化,チ ョコレー トの分散性の上昇, クリーム やケーキの起泡性を高めるために加え られている。そのために く卵黄 レシチ ン〉くグ リセ リン脂肪酸エステル〉く庶糖脂肪酸エステル)などが使用されてい
5
章 『健康な食生活を 目指 して』る。
果実中の くペ クチ ン),海藻か らの くアルギ ン酸),くカラギナ ン),樹液か ら の くアラ ビアガム〉や合成品の (カルボキ シメチルセル ロース :
CMC
〉,くメチルセル ロース :
MC)
があり, これ らは水溶液にすると粘度の高い溶液 となることか ら,糊料,増粘安定剤 と呼ばれている。 これ らは食品の安定性を 増 し,乳化の安定性を良 くし,ゲル状 とし食品の組織形成,食感の改良などの 特性があり広 く利用 されている。( 4)
食品の風味,外観を良 くするもの食品の特色は,変質することと消費者の受ける感 じにより品質が評価される ことが多い商品であるということである。前者を防止す るための ものが保存剤 や抗酸化剤な らば,後者があるが故に着色料,発色剤,着香料などの食品添加 物の必要性が出てきたと考え られる。不良食品の偽和などに用いることは禁止 されているが,時好的価値を増進 させ るための添加物は食欲や消化の助けにな ることであろう。
人工着色料 として,許可 されている食用色素はすべて酸性水溶性 タール色素 である。 これ らは く食用赤色
2
号)く食用赤色4
号)(銅 クロロフィリンナ トリウム)などである。わが国ではこれ ら化学合成品である鮮明な原色よりも,天 然の淡 い色調が好まれ,くクチナ シ黄色素)(カラメル〉く紅鮭色素〉などが広
く使われている。
(硝酸塩)く亜硝酸塩)は食肉,水産製品の色を赤色 に保つ発色剤 (と同時 に保存料)として使われている。また食品の色を きれいにす るために漂白剤が 使われることがある。く亜硫酸ナ トリウム)く次亜硫酸ナ トリウム)く二酸化硫 黄)などである。
甘味をつけるため (甘味料)に,砂糖などの糖質系とそれ以外の添加物があ る。糖質系の ものは摂取すればカロリー源になるが,その他の甘味料 は甘味度 が砂糖に比 して高い ものが多 く,少量で砂糖 と同 じ甘さが得 られるため,摂取 カロリーが少な くな り,ダイエ ッ ト食品,糖尿病患者用の甘味料 として, また 虫歯予防に もなる。砂糖の甘味度を1と した時,くアスパルテーム〉200:くグ リチル リチ ン)250:くステ ビオサイ ド)300:くサ ッカ リン〉:500ぐノーマチ ン)1,150:(モネ リン)3,000である。
‑ 187 ‑
呈味料 (調味料) として, 日本人の好みにあ ったうま味をっける物質 とし て, コンプダシ汁か ら 〈L‑グルタ ミン酸ナ トリウム〉,カツオブシの味成分
として
〈5'
‑イノシン酸ナ トリウム), シイタケの うま味成分 として く5
'‑グアニル酸ナ トリウム〉,貝の味の くコハ ク酸ナ トリウム〉,塩味の く塩化カ リ ウム〉などがある。
その他,光沢剤,酸味料,香料などがある。
( 5 )
食品の栄養価を補充強化す るもの天然の素材を原料 とする食品には,品種,原産地,収穫の時期,天候などに よって外観ばかりでな く,栄養上の品質にも著 しい差があり,また加工の際に 栄養素が失われたりすることがある。そこで必要な栄養素を確保 し, さらによ り強化す るために, ビタ ミン, ミネラル,ア ミノ酸を添加す る (約
6 5
品目)。 この栄養素強化の目的で食品に添加された場合,健康食品や機能性食品との区 別がつきに くい。( 6)
実際の食品中の食品添加物1
チューインガム・‑‑ ・‑・戟後 日本に入 って きて根強 く流行 している食品 としてチューインガムがある。現在の原料 とその製法についてまとめたの が下の図である。風船 ガムの原料 天然チクル樹脂 く酢酸 ビニル樹脂 >
合成 ゴム ワックス
<エステルガム >
<乳化剤 >
<炭酸 カルシウム>㌍
<着香料 >
<可塑剤 > <着色料 >
‑.‑>加熱溶解 ‑ ガムベ ース 一一混合機 一一 *
† 砂糖 ・水飴
ブ ドウ糖
<タルク>
<強化剤 > ・<人工甘味料 >
l
*‑‑切 断 ‑‑成型 ‑‑選別 一一製品 (風船 ガム)
この製造工程を見ると,チューインガムは食品ではあるが,化学合成食 品である。
2 ‑ 日の代表的献立についてその中に含まれている可能性のある食品添加 物の種類をあげてみた。
5
章 『健康な食生活を 目指 して』《 朝食》
ご飯 (米)
味噌汁 ( 味噌) 佃煮
海苔 醤油 調味料
《昼食》
パ
ン
バ ター
ノ\ム
〈夕食》
清酒
魚 の干物 た くあん
防虫剤 (ピベ ロニル ブ トキサ イ ド)
品質改良剤 ( 塩化 アル ミニ ウム):保存料 (デ ヒ ドロ酢酸) 甘味料,調味料,保存料,着色料,糊料
着 色料
保存料 ( 安息香酸 ナ トリウムなど) グル タ ミン酸ナ トリウムな ど
小麦改良 剤 ( 過 酸化 ベ ンゾイル,臭素酸 カ リウム) : イース トフー ド中の各種無機塩,膨張剤 ( 重曹, リン酸 カル シウム, ミョウバ ンな ど)
保存料 (デ ヒ ドロ酢酸 ):酸化防止剤
(BHA,
BHT, 没食子酸 イソア ミル):着色料,強化剤 ( Vi t .A , D) 発色剤 ( 亜硝酸) :保存料 (ソル ビン酸 ナ トリウム) : 殺菌料,酸化防止剤 ( エ リソル ビン酸):着色 ・着香料
保存料, 品質改良剤 ( 塩化 アル ミニ ウム,過 マ ンガ ン酸 K)
発色剤 ( 亜硝酸)
凝固創 ( 硫酸 カル シウム):消泡剤 (シ リコー ン樹脂 ):
殺菌料 酸化防止剤 甘味料,着色料
必ず しも代表的な一 日の献立 とは言 えないが,代表的 な食品 は入 って いる。
意外 に多種類 の食品添加物が我 々の体の中に取 り込 まれ るのであ る
。逆 に言え ば これ らの食品添加物無 しには,現代の食生活 は維持で きない と言え る。 もっ と もこの中のあ る もの は使用 しな くて も良 い ものがあ るだろ う
。そ うす ること によ って味が落 ちた り,色彩が汚 くな った り,水分がな くな って固 くな った り す ることがあ って も我慢で きないわけで はない。 しか し,病原菌が付着 ・繁殖 した り, 変性 ・酸敗 した りす る ことを防がね ばな らな い ことに同意 す るな ら
‑ 189‑
ば,ある種の食品添加物を使用す ることは生存す るために不可欠の条件 にな る。 この問題 は,最近 ますます重要視 されている食糧備蓄や外国か らの輸入 と 切 り放 して考えることはで きない。 さらに過去の食習慣,栄養学的知識,経済 的制約なども考慮 されねばな らない。
国民栄養調査食品別摂取量表か ら,食品添加物が入 っている主な食品の‑人
‑ 日当 りの摂取量が算出で きる。 これによると全食品の平均の摂取量の総和は 固形分
7 7 6g
と液体分1 01 ml
であ り,液休の比重を1 . 0
とす ると,計8 7 7g
にな る。わが国民 は毎 日はぼ1 , 5 0 0‑2 , 0 0 0 g
の食物を摂取 しているか ら,全摂取量 の約1/2
に当たる食品中に食品添加物が含 まれていることになる,最近の試 算によると,平均的家庭の一 日の食事に含まれる食品添加物を調べた ら8 . 4 6g
あった。 1年間で約3kgである。か くも多量の物質が体内に入 り,または蓄積 されることに危険はないのであろうか ? あるいは個々の添加物の毒性は低 く て も相乗作用でどうなるのか,まだ誰 もわか らない。3
節 機能性食品従来,食品の品質は主 として栄養特性 (一次機能)と晴好特性 (二次機能) の両面か ら評価 されて きた。即 ち,一次機能 は食品中の栄養素が生体に対 して 短期間かつ長期間果たす機能で,生命の維持に不可欠であ り,二次機能は食品 が ヒ トの感覚に訴える機能で, とりわけ味覚
,
嘆覚応答に関わ るので,食品と 言 うものの特徴をはっきりと表現すると考え られ る。 しか し最近 (1980年代後 辛)にな り,食品には第三の機能があ り, これは生体防御 (主 と して免疫), 体調 リズム (ホルモ ン系)の調節,精神の高揚 (覚醒)と鎮静 (誘眠)などに 関する生体調節機能があるのではないか,そ して このような食品の三次機能の 解明により, さらにこのような機能を保持 した食品を使 って,病気の予防,治 療の補助が出来な いか と言 う考 えが出て きた (前 出 :健康管理の成長モデ ル) 。
食糧不足の時代には, もっぱ ら食品の一次機能が重視 された。その後食料が 豊富になり,飽食の時代になると二次機能すなわち晴好特性が重視 されるよう になった。 さらに現代急速な高齢化や健康指向時代になると,生体調節機能を
5
章 『健康 な食生活を 目指 して』医薬品的 (厚生省新開発食品保健対策室)
図
3
機能性食品の位 置付 け持っ食品が注 目され,その必要性が高 まっている。マスコミを始め,産業界 も この新 しい食品機能 (三次機能)に注 目し,いわゆる機能性食品の開発研究に 力を入れている。厚生省の中間報告では,機能性食品を食品成分の持つ生体防 御,体調 リズム調節,疾病の防止 と回復などに関わる体調調節機能を生体に対 して十分に発揮できるように設計 ・加工 された食品であると定義 し,栄養改善 法 に則 って 「特定保健用食品」と して位置づけている (図
3
)。 また,農林省 は食品の生理機能の解明が進んだ結果,従来の栄養素以外の三次機能を示す成 分の含有量を食品に明示できないかと考えて,それ らの成分を含む食品を機能 性食品 と呼び始めた。そこで食品には一次,二次機能の他に第三の機能 (生体調節機能)が存在す ることになる.それでは食品の栄養 (一次)機能 と生体調節 (三次)機能の差 は何であろうか ? 三次機能は,一般にごく微量 (低濃度)で生理活性を発現 し得 るので,いわゆる栄養素 とは区別 され得 る。例えば,栄養素であるア ミノ 酸 は
1
日当 り約80g
摂取 され るタンパ ク質に由来す る もので,体内に取 り込‑ 1 91‑
まれる量 も
g
のオーダーできわめて多量であるが,後述のオ ピオイ ドペプチ ド の様な生理活性因子 は体内取 り込み量 はppbのオーダーの血中濃度であるにもかかわ らず,活性を現わすことが出来るし,従 ってこのオ ピオイ ドペプチ ド 分解によって生 じるア ミノ酸が栄養素として寄与す ることは有 り得ないのであ
る。
このような生休調節因子は,食品中に顕在的に存在する場合 と潜在的に存在 する場合がある。食品を摂取 した後、顕在的因子は一部がそのまま取 り込まれ て機能を発揮するのに対 して,潜在的因子は消化によって顕在化 し,吸収され て生体防御の活性化などと言 った多様な生理作用を発揮すると考え られる。休 内に取 り込まれた因子は,同類の内在性因子 と相互作用 したり,その生産 ・分 泌を促進することによって生体調節に関与す ることもある (表6)。乳汁 (ミ ルク)はその成分として, これ ら三次機能を示す多数の因子を含む,天然の機 能性食品であり,その潜在的因子であるオ ピオイ ドペプチ ドやカルシウム吸収 促進ペプチ ドは ミルクカゼイン由来である。
一方,食品には好ましい機能を持つ因子ばかりでな く,生体にとって好まし
表
6
食品中の生理 機能因子顕在的因子
甲状腺刺激ホルモ ン
( TSH)
‥‑‑‑‑礼 TSH放出因子 (TRH)‑‑ ・‑・‑‑・・〝 成長ホルモン放出因子( GR
H)・・・・‑l・・N副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)‑ ‑ 〟
乳腺刺激ホルモ ン (プロラクチン)‑‑〟
性腺刺激ホルモ ン (ゴナ ドトロピン)‑ 〟 ガス トリン放出ペプチ ド(ポムベ シン)‑ 〟 遇血ホルモン (エ リスロポエチン)‑‑〟
上皮成長因子 (EGF)‑ ・・‑・‑‑・‑‑〟
黄体形成ホルモ ン放出因子棟物質‑ ‑‑オオムギ ソマ トスタチン様因子・・ ・‑・・‑‑・・ ・・・‑‑・タバ コ
TRH捷因子‑ ‑‑ ‑‑‑‑‑‑ ・‑‑・‑・・アルファルファ ペルオキ シダーゼ (制癌)・‑‑ ・‑‑‑‑・乳 ・臓物 ア ミラーゼインヒビター (肥満防止)・‑勤 ・値 ・微生物
リパーゼインヒビター (肥満防 止)‑‑ 〝 プロテアーゼイ ンヒビター(身体調節)‑ 〝 トリプシンインヒビター(内皮成長因子)・ ・・・・・ p オ リザシスタチン(抗曲 ・抗ウイルス)・.・コメ ラク トフェリン (鉄泉空合 ・制曲).・・.・・‑礼
トランスフェリン ( 〝 )‑ ‑‑血液
コンアルブ ミン (鉄結合 ・静菌)・・‑‑‑卵白 免疫グロブリン (抗体提供)‑‑・‑ ‑‑初乳 シスタチン (抗菌 ・抗ウイルス)‑‑‑‑ 〝 レクチン (免疫活性化)‑‑ ・・‑‑‑‑・‑植物 βグルカン ( 〝 )・・‑‑‑・・‑ ‑‑ 〝 リポ多糖 ( 〝 )‑‑‑‑‑ =‑‑‑微生物 ヒビズス菌活性化オ リゴ糖・‑‑ ‑‑‑‑人乳 ガングリオシ ド(抗エ ンテロ トキシン)‑ 〝 潜在因子
オ ピオイ ドペプチ ド‑‑‑‑‑ ‑‑・‑‑・カゼイ ン 繊維芽細胞成長因子‥‑ ・‑・‑ ‑‑‑‑・‑ 〝
カルシウム呼吸促進ペプチ ド‑ ・‑‑ ‑ ‑ 〝
ファゴサイ トー促進ペプチ ド‑ ‑‑‑‑・・ 〝 血圧降下ペプチ ド‑ ‑‑‑‑‑‑‑・・‑ ・‑ 〝
血清 コレステロール低減化ペプチ ド‑・・・・ダイズタンパク質 血小板凝集阻害ペプチ ド‑・.・ ・・・ ・・・‑・・=・・・・カゼイン インシュリン梯因子・・‑‑・・・・・‑・‑・・・.・・・血fhE‑アルブ ミン リゾレシチン‑‑‑‑‑‑ ・‑・‑‑・・・‑‑‑軌 ・植 ・微生物 リゾホスフ・/チジルセリン(肥瀧細胞fX
・ 件化
)‑・・・ 〝ビヒズス因子 (糖鎖)・・‑I.・・・・・・・ ・・・・‑・..人乳カッパーカ ゼイン
5
章 『健康な食生活を 目指 して』くない機能を示す因子 も存在する。食品ア レルギーの原因 となる因子,先天性 代謝異常症障害 となる食物因子がその例である。穀物に起因するア レルギーは 比較的穏やかで, じんましんや皮膚炎を呈する場合が多い。生後2カ月か ら17 才 までの食物 ア レルギー患者は,牛乳や大豆 よりも,小麦, コメによるア ト
ピー性皮膚炎の陽性率が高いというデータもある。 コメのア レルゲンはアルブ ミン画分に存在す る分子量
1 4 ‑1 6 KDa
の3
種類のタンパ ク質群であることが 明 らかにされている。そこでコメ粒にプロテアーゼ処理を行 ってアルブ ミン画 分特に1 6 KDa
ア レルゲ ンをほぼ完全に分解 したが, コメ粒 タンパ ク質 グ リテ リン画分は殆 ど分解 していない,すなわちタンパ ク質栄養価に大きな影響を与 えず,通常のコメと同 じような噂好特性 (二次機能)を示す,ア レルゲ ン低減 化米が作 り出されている。同 じような例 として,フェニルケ トン尿症に於ける 脳障害の原因物質であるフェニルアラニ ンがあるが,これをタンパ ク質か ら酵 素的に除去す ることによって作成 した低フェニルアラニ ンペプチ ド食は有効で あった。このように食品に存在する生体調節因子を兄いだ し,分離 し,あるいは合成 し, これを食品素材に導入することによって,また逆に生体にとって好ま しく ない機能を示す因子 はこれを排除することによって,"機能性食品""特定保健 用食品"を創製することが可能 となる (図
4)
。以下,機能性食品の候補 とし て,不飽和脂肪酸(EPA
とDHA)
,食物繊維,オ リゴ糖,カルシウムとC
PP
,およびオ リゴペプチ ドについて概説する。1
)不飽和脂肪酸(EPA
とDHA)
H3C‑CH2‑CH‑CH‑CH2‑CH‑CH‑CH2‑CH‑CH‑
CH2‑CH‑CH‑(CH2 )3COOH
エイコサペ ンタエ ン酸 (EPA)(構造式は上に示 した)と ドコサヘキサエ ン酸
(DHA)
は共にW‑3
型長鎖多価不飽和脂肪酸であり,植物由来の不飽 和脂肪酸である リノール酸や リノレン酸 と異なった作用をするために注目を集 めている。エスキモー人が心臓病や脳梗塞にかか りにくい理由の一つ として, 彼 らがアザラシや魚を常食とすると言 うのがある。すなわち,アザラシとか魚 に含有 されるEPA
とDHA
は,血液中のコレステロールと中性脂肪が過度に 蓄積 されることを防 ぐ作用があるか らである。さらに悪玉LDL
コレステロ一一193‑