電気情報工学科新教育用電子計算機システム
工学部電気情報工学科 中村千秋
E‑mail: [email protected]‑u.ac.jp
1
はじめに
本学科では、この
3月に教育用電算機シろテムのリプレースを行なっている(この原稿 はリプレースの最中に執筆している)。本稿では、この新しい教育用電算機システムの基本 的な考え方や、その他筆者が思うことについて述べる。
2 システムの基本構想
2.1システムの目的
これまで、本学科では平成
3年
3月より旧教育用電算機システム(以下、
NEECSsystem, また,新システムを
NEECSsystem2と便宜的に呼ぶこととする)を運用してきた。この NEECSsystemは学科の情報処理教育を担う基幹システムとして、また事実上の学科のコ
ミュニケーションシステムとしての位置付けがなされている。
NEECSsystem
はこれまでに(特にこの
2年ほど)電子メール、電子ニュース、 www な ど多くのサーピスを学科の内外に問わず提供してきた。また、教育、研究においても成果 を上げてきている。しかしながら、このシステムを利用した一つの講義あたりの学生の収 容人数に関する問題を抱えていた。本学科のー学年あたりの定員は
120名程度である。こ れに対し、
NEECSsystemでまかなうことができる
1講義あたりの人数は、
24人、ないし 48 人程度であった。この収容能力でも選択科目等の講義は可能であり、卒論・修論等の教 育に関しては使用に耐え得るものであり、必要不可欠なものとなっている。しかし、プロ グラミング演習等の必修科目に関しては、学科定員がその収容能力を著しく越えてしまっ ていた。講義をいくつかに分割して行なうことも現在のカリキュラムでは時聞が足りない などの理由から実現は難しく、機器面で総合情報処理センターに頼っていた。
我々のような(情報系の、あるいは工学系の)学科にとって情報処理は重要な基礎的学問 である。コンピュータを道具として使用できなければ研究が進まないのが現状である。こ のため我々にとっての急務は,我々か噺究に使用しているコンピュータの利用環境下で学生 の情報リテラシ教育を行なうことであった。また、我々が使用する環境を学生にも提供し、
それを利用して教育することは意味があることである。大学における教育・研究系のシス テムはそれを利用・運営していく者たちが育てていくものであると我々は考える。このよ うな技術の移り変わりの激しい分野では、現状を維持していても相対的にどんどん遅れた
︒ ︒
ものとなり陳腐化してしまう。システムは運用毎に育つ方向が異なる。このため、我々が 育てたシステムを使って教育を行なうことは非常に重要である。
この課題を果たすために次のことを第一目的とした。
・少なくとも
70人の学生が同時に我々のコンピュータ利用環境と同じ環境下で情報教 育を受けることができるようにする。
70
人という人数は、学科定員の半分強という数字である。
70人の学生の教育を同時に行 なえれば、
2回で一学年の講義を行なうことができる。この目的を達成するには、
70人分 のコンソールとそれを収容するだけの部屋を用意しなければならないといった問題があっ た。我々はこの問題を解決する一つの解として,通常の講義室に後に述べる可搬型の
X端 末を持ち込むという方法をとった。
3
システムの概要
3.1 NEECSsystem
(l日システム)の構成
NEECSsystem
の構成を簡単に紹介する。図
1に示すように,
NEECSsystemは大きく分 けて,次の二つのシステムに分けることができる。
学内
FDDI}レープ
r‑e心・ec neecsl
ファイルサーバ U.
U‑Eルータ133.45.128 neecs
メール、ニュース、
ネームサーバ n a
w 用
時 雌
像 画
白ハードディスク 基礎教育用WS 2
5台
制 制 問 10bωe5図
1 NEECSsystemの構成
29一
‑基礎教育用システム
基礎教育用システムの目的は、主に小人数での講義および講義の時間ばかりでなく、
学生の空いた時間にコンピュータを利用できる環境の提供である。このため、基礎教 育用システムのワークステーション(以下、
WS)は一部屋に配置されている。このシ ステムのハードウェア構成は次のようになっている。
一教官用
WS1台
富士通
S‑4/2,モノクロ
19インチディスプレイ,主記憶48MB,二次記憶1.
5GBーサーバ
WS9台
富士通
S‑4/LC,モノクロ
17インチディスプレイ,主記憶
16MB,二次記憶
660MBーディスクレスクライアント
WS16台
富士通
S‑4/LC,モノクロ
17イン4チディスプレイ,主記憶
16MB・専門教育用システム
専門教育用システムでは、各
WSは研究室に配置され、卒論・修論等のより専門的な 教育を行なうことを目的としている。その、ハードウェア構成は次に挙げる。
‑専門教育
WS用サーバ
1台
富士通
S‑4/2,カラー
21インチディスプレイ,主記憶48MB,二次記憶1.
5GBーメール,ニュース,ネームサーバ
1台
富士通
S‑4/IP,モノクロ
17インチディスプレイ,主記憶
24MB,二次記憶1.
3GB‑専門教育
WS(モノクロ)1
9台
富士通
S・4/IP,モノクロ
17インチディスプレイ,主記憶8MB,二次記憶
660MB‑専門教育
WS(カラー)5 台
富士通
S‑4/IP,カラ‑1
7インチディスプレイ,主記憶 12MB,二次記憶
660MB‑画像処理用
WS1台
富士通
FIVIS/VWS,カラー
20インチディスプレイ,主記憶 16MB,二次記憶
400MB,
U・maticVTR,フルカラープリンタ
また、
NEECSsystem内のネットワークは、
Ethernetを使用しており、研究室毎のサブネットワークカ雪存在する。
‑30‑
3.2 NEECSsystem
の問題点とその解決法
NEECSsystem
の問題点としては、次の事柄が挙げられる。
1.一度に
24人ないし
48人(この場合には、
2人で
lWSである)の講義しかできない。
2.5
年の月日を得ているため、現在使用しているアプリケーションを
NEECSsystemの
WSで動作きせるには負荷が重くなってきていた。
3.
専門教育用システムでは、各
WSが
Xwindow等のバイナリファイルをファイルサー パ上に共有していたため、ファイルサーバの処理能力が限界が見えてきていた。また、
ファイルのネットワーク上での共有によって、学科の幹線のトラフイックが増大して きていた。
4. MBONE
等のマルチメディアデータの送受信実験等によるトラフイツクが増大してき ていた。
これらの問題を解決するために、我々は次のようなアプローチをとった。
1.一度に
70人の講義を行なうために、通常の講義室を使用し、そこへ可搬型の
X端末を持ち込むこととした。講義室は床をパネルブロックを敷き詰めフリーアクセスとし た。また、各机に
10baseT用のモジューラジャックを付設した。フリーアクセスにす るための工事の方法、機材はこれまで長崎大学で行なわれてきた施工法と異なるため に安価に行なえた。また、持ち込むコンソールに可搬型の X端末としたのは次のよう な理由である。選択肢としてはノートパソコンが考えられたが、
•
X
Windowのような環境の下で使うには:液晶パネルの解像度が低い。
・
70台の管理となると、普通の利用者と管理者との権限の区別のない
OSではフア イルの消去、利用者の勝手な設定の変更などのトラブルを回避できないために非 常に手聞がかかってしまう。その結果、講義の際に動作しないマシンが出てきて
しまい、その対処にかなりの時聞がとられてしまう怖れがある。
などの理由から選択しなかった。
2.アプリケーションの負荷の問題は、現在販売きれている WS
のミドルクラスのものを 入れることで解決する。実際にどの程度のものを導入するかは当然ながら予算との兼 ね合いである。
3.ファイルサーバの負荷の増大に関する解決するには、ファイルサーバとネットワーク
に関して二つの選択肢が考えられた。一つはファイルサービス専用に作られたマシン を各ネットワークセグメント毎にインターフェースを持たせ、各々にサーピスを行な わせる方法である(図
2)。もう一つは、高速な
WSにファイルサーピスを行なわせ、パックボーンネットワークを高速化し、この高速化したネットワ}クに直接にファイ ルサーバを接続することによりネットワークのトラフイツクとファイルサーバの負荷 の問題を回避する方法である(図
3)。我々は、将来的なマルチメディアネットワーク への対応等を考え、学科の高速なパックボーンネットワークとして ATM(転送レート は
155Mbps)を選んだ。我々がシステムを設計した時点では、ファイルサーバ専用機 で ATMへ対応した製品はまだなかったために
W Sを用いてファイルサーピスを行なう方法をとった。
‑31
図
2セグメン ト分けによるネットワークトラフイ ツクの軽減
図
3高速ネットワークによるトラフ イ ッ クの軽減
3.3
新システム
(NEECSsystem2)の憎成
3.2
で挙げた問題とその解決方法をふまえ、新たなシステムである
NEECSsystem2では 次のような構成をとる。
1.システムは次の
3つの部分から構成する。
(a)
大講義用システム ( b )小講義用システム
(c)
専門教育用システム
基本的には、
NEECSsystemの基礎教育用システムを大講義用システムと小講義用シ ステムに分け、大講義用システムでは
70台の可搬型
X端末を導入し、
70人の講義を 可能とした。また、小講義用システムは、従来の基礎教育用システムを引き継ぐ形と なっており、小人数での講義、自由時間での計算機使用環境の提供を行なう。また、専 門教育用システムも従来の形態を引き継ぐ形となっており、その中には画像処理シス テムも含まれる。
32
2
ネットワークは、学科の基幹ネットワークとして
ATMを採用し、ファイルサーバ、CPU
サーバ等のサーバ類は直接
ATMに接続するものとした。また、研究室等の
WSや
X端末、小講義用WS等の接続には
Etherスイッチを用いている。
以下に、
NEECSsystem2の構成図を示す。
̲ ATM(15馴岡叫
圏
ATM山 子 医 習 ル
Ethom.t (1個叫同施}
専門教育用システム
図
4 NEECSsystem2 3.3.1ネットワーク
図
4からわかるように学科のパックボーンネットワークを
ATMスグ ッ チ
(3comCELLplex 7000)で高速化し、
Etherスイッチ
(3comLinkSwitch 2700,
CELLplex 7200)を用いることにより、末端のホストへのlO
Mbpsの容量を保証している。また、ファイルサーバ等のサー バ類は直接
ATMに接続することでネットワークがボトルネックとなることを避けている。
Ether
スイッチのポートには、マシンのみだけでなく、
HUB等を接続できるために、これ までの研究室サブネットを収容可能となった。これにより、研究室ではゲートウェイとなる マシン(ネットワークインタフェースを二つ以上持ったマシン)を持つことなく独自のネッ トワークを構築できる。これには、
ATMスイッチが持つ LANEmulation機能と
Virtual LAN機能を用いて実現している。
LANEmulationとは簡単にいうと、 ATMにあたかも Ethernetであるかのような振舞いをさせる機能である。
VirtualLANとは、物理的な実際の接続に関わらず論理的なネットワークを構築する機能である。学科外へは, )レータ
(3com Netbuilder II)を介して、 FDDIにより学内LANのルータ(富士通
R550)へ接続すること で通信可能となる。
33
ATM
スイッチ
Ether
スイッチ
3.3.2
大橋義周システム
図 5
VirtualLAN
̲ ATM (155M句s)
一ーー
Ethemet(10Mbps)園 川 ス イ ツ チ 園
E叫 イ ツ チ
可搬型X端末 図 6 大講義用システム
大講義用システムの基本構成を図
6に示す。
このシステムは、
10台の
CPUサーバ(日本電算機
J85/110主記憶 128MB,ディスク
1GB)で 、
70台の可搬型
X端末(高岳製作所 XMiNTnote)の処理能力を受け持つことに なる。 X
window等の共通的なソフトウェア、各利用者のホームディレクトリはファイル サーバから供給される。これら
CPUサーバ、ファイルサーバ等は直接
ATMに接続され、
可搬型
X端末はEtherスイッチで接続される。
34ー
可搬型
X端末は機材を使用した講義の時のみに講義室に持ち込んで使用し、使用きれない時は収納して置くこととした。また、講義室は床をフリーアクセスにし、配線を行なった。
3.3.3
小講義周システム
小講義用システムの基本構成を図
7に示す。
小講義用 ws
ATM
スイッ
図
7小講義用システム
小講義用システムの
WS(日本電算機
JS5/85主記憶
32MB, ディスク
1GB)24台は
Etherスイッチでネットワークに接続され、
ATMで接続された
1台のファイルサーパよりファイ ルサーピスを受ける。このシステムにおいて利用者のホームディレクトリは、
1~ 3年生 の分は大講義用ファイルサーパからサーピスされ、それ以外の利用者のものは各研究室の 専門教育用システムからサーピスされることとなる。
3 ふ 4 専門教育用システム
専門教育用システムの基本構成を図
8に示す。このシステムは、研究室に配置する
WS(日 本電算機
JS20/M61主記憶
32MBディスクlG
B)26台を中心とじ、画像処理教育用シス テムの
WS(SGIIndy Webforce主記憶
64MBディスク
1GB)2台、フルカラープリンタ
(FUJI XEROX Acolor 935)1台、データベースサーバ
(NECEWS4800主記憶
64MBディ スク
6GB)1台、ファイルサーバ(日本電算機
JS20/M71主記憶
64MBディスク
10GB)か らなる。また、ニュースサーパ、メー J レサーパ、
wwwサーバ等のいろいろなネ ットワー ク上のサーパ機能を提供するために運用サーパ(日本電算機
JS20/M61主記憶
32MBディ スク
1GB)を持っている。
画像処理教育用システムは、専門的な画像処理を行なう処理能力と表示能力を持つばか りでなく、
Photoshop,
Illustratorといった一般的な画像加工のためのツーJレも備えている。
データベースサーパは、
Oracleによるリレーショナルデータベース環境を提供することで、研究上のデータベースから学科の事務的なデータベースまでさまざまなデータペース の構築カ可能となる。
‑35ー
ファイルサーバ
A1Mスイ ッチ
民herスイッチ
図
8専門教育用システム
4
おわりに
本稿では、
NEECSsystem2の概略とシステム構築にあたっての方針等について述べた。実際の運用はこれからのために、このシステムを使用してどのような教育を行なうか等は 述べるに至っていない。これについては今後述べることができると思う。
今回のリプレースでは、 ATMというまだ標準化が進行中の新しい技術を導入した。こ れに関する評価もこれからである。
今回導入したようなシステムがすぐに直面する問題は運用担当者の確保、教育の問題で ある。これはシステムの大小に関わらず、多かれ少なかれどこのシステムでも直面する問 題であると恩われる。本学科のシステムは運用担当者と呼ばれる助手
2名と筆者とで技術 的な面を担当しているが、この運用に関するシステムがうまく機能しているかどうかは疑 問である。おそらく今後、何らかの形で学生をとり入れた運用システムを構築して行かな ければシステムの崩捜は免れないだろうというのが私見である。
本学は現在、一般情報処理教育を如何に行なっていくかという大きな課題を抱えている。
2.1のシステムの目的で述べたように、このようなシステムはどのように使われるか、何
のために使われるかによって育っていく方向が異なってくる。これは大きなシステムに関 わらず、個々が使用しているパソコン等まで同じことが考えられる。この方向性は学部や 学科毎に異なるはずである。だとすれば、その方向性にあった教育を行なわなければその 学科、学部にとって意味のない教育となってしまうのではなかろうか。このような観点か
‑36
ら見ると、学科や学部の内容に即した情報処理教育を行なうには、その学科、学部に属す る者が実際に教育することが必要となると筆者は考える。本システムはこの考え方に即し て構築したものである。
また、情報処理教育は未だ操作を覚えることに重点が置かれているような印象を受ける。
しかしながら、インターネットが急速に一般化してきている現在、そのような段階から既 に次の利用にあたってのモラルやエチケットを教育して行かなければならない段階に来て いる(実はこのようなものは実生活のものと何ら変わりないものであるはずだが、相手が 直接には見えないということからなおざりにされがちである)。これも、専門の人がという 類のものではないと思う。このようなモラルやエチケット等はインターネットを利用して
いる誰もが身につけなければならないことであるからである。
語気の強きや言葉の不足のために誤解等を招いたかも知れない。しかし、このような誤 解を解消するためにもネットワーク上でオープンな議論が行なわれることを期待したい。
これに関しては、センターレポート第
13号で森山先生が先に述べられている
(1)。情報発 信、あるいはインターネットは
Netscapeと等価ではないことを自覚しなければならない。
参考文献
( 1 ) 森山雅雄,一般情報処理教育のありかた ネットワーク上での討論べ長崎大学総合情 報処理センターセンターレポート,第
13号 ,
pp. 50‑53,
1994.← 37