研究ノート
所謂﹁カール大帝御料地令﹂第七〇条瞥見
遠山 茂樹
はじめに ― 問題の所在
所謂﹁カール大帝御料地令﹂︵Capitulare de villis vel curtis imperii︶は︑わが国でもよく知られた基本的史料のひとつ
といってよかろう︒本稿は︑これを真正面からとりあげて考察しようというものではない︒なにぶんにも筆者はフラン
ク史に関してはまったくの門外漢である︒それゆえ︑当勅令の全般的な考察は筆者の能力をはるかに超えるものであり︑とうてい能わざるところである︒ここではもっぱら当令第七〇条に焦点を絞り︑若干検討を加えてみたい︒
御料地令第七〇条には︑本稿でみるように草本︵七三種︶・樹木︵一六種︶あわせて八九種類の植物が列挙されているが︑従来の研究においては︑紙幅の都合によるものか︑植物名の比定が煩瑣な作業を伴うせいか︑植物名の大半がブランク
のままになっている︒この小稿の課題は︑その空隙を埋めると同時に︑同条をめぐる問題を一瞥してみることにある︒
一︑カール大帝御料地令第七〇条
カール大帝御料地令の邦訳は︑管見の限りでは︑碩学上原專祿氏によって一九四八年︵昭和二三年︶に発表されたも のが最初である︒問題の第七〇条では︑﹁庭園には一切の草本︵herba︶を備へんことを余は欲す︑即ちリリウム︵lilium︶︑ロサ︵rosa ︶︑フェニグレクム︵fenigrecum ︶︑コストゥム︵costum ︶︑サルウィア︵salvia ︶︑ルタ︵ruta ︶︑アブロタヌ
ム︵abrotanum︶︑ククミス︵cucumis︶︑︹以下︑略︺﹂といったぐあいに︑史料のラテン語をカタカナ表記し︑和名に
ついては史料の註に記されている学名をもとに︑比定可能なものを訳註であげている︒こうして上原氏は総計七三種類の草本のうち四三種類について︑その和名を註記している︒また樹木の和名については︑一六種すべてを訳文中であげ
ている ︵1︶︒ 周知の﹃西洋史料集成﹄︵一九五六年︶では︑草本については二種類︵百合︑薔薇︶︑樹木については二種類︵林檎︑梨︶︑
計四種類の植物名があげられているにすぎず︑他はすべて省略されている︒また︑﹃西洋中世史料集﹄︵二〇〇〇年︶では︑
草本一一種︑樹木八種︑計一九種類の名前があげられているが︑他は﹃西洋史料集成﹄同様︑省略されている︒さらに︑比較的最近刊行された﹃世界史史料五 ヨーロッパ世界の成立と膨張﹄︵二〇〇七年︶では︑六種類の草本と三種類の
樹木の計九種類があげられているのみである ︵2︶︒このように︑カール大帝御料地令第七〇条に列挙されている植物名については︑少なくともこれまで公刊されたおもな史料集では︑その一部ないしは大部分が空白になっていることが明らか
である︒また︑それらの史料集では植物名以外の箇所も大幅に割愛されており︑同条全体が訳出されているわけではない︒
それゆえ︑本稿ではこの空隙を埋めるべく︑周知のMGHに収録されている七〇条全体の原文と試訳をあげてみたい︒
原文にみられる植物名の比定にさいしては︑最近ドイツにおいて刊行されたカール・ヨーゼフ・シュトランクならびに
ユッタ・モイラー=バルケ編著Obst, Gemüse und Kräuter Karls des Großenに準拠した ︵3︶︒なお︑史料のラテン名から唯一
の植物を特定し得ない場合は︑推定され得る他の植物名辞を亀甲パーレンにおさめ附記した︒邦訳では和名を第一に心
がけたが︑該当する和名がない場合は英名をカタカナ表記で示した︒ブラケット内は筆者による補足である︒
カール大帝御料地令第七〇条Volumus quod in horto omnes herbas habeant : id est lilium, rosas, fenigrecum, costum, salviam, rutam, abotanum, cucumeres, pepones, cucurbitas, fasiolum, ciminum, ros marinum, careium, cicerum italicum, squillam, gladiolum, dragantea, anesum, coloquentidas, solsequiam, ameum, silum, lactucas, git, eruca alba, nasturtium, parduna, puledium, olisatum, petresilinum, apium, levisticum, savinam, anetum, fenicolum, intubas, diptamnum, sinape, satureiam, sisimbrium, mentam, mentastrum, tanazitam, neptam, febrefugiam, papaver, betas, vulgigina, mismalvas, malvas, carvitas, pastenacas, adripias, blidas, ravacaulos, caulos, unions, britlas, porros, radices, ascalonicas, cepas, alia, warentiam, cardones, fabas maiores, pisos Mauriscos, coriandrum, cerfolium, lacteridas, sclareiam. Et ille hortulanus habeat super domum suam Iovis barbam. De arboribus volumus quod habeant pomarios diversi generis, pirarios diversi generis, prunarios diversi generis, sorbarios, mespilarios, castanearios, persicarios diversi generis, cotoniarios, avellanarios, amandalarios, morarios, lauros, pinos, ficus, nucarios, ceresarios diversi generis. Malorum nomina: gozmaringa, geroldinga, crevedella, spirauca, dulcia, acriores, omnia servatoria ; et subito comessura; primitiva. Perariciis servatoria trium et quartum genus, dulciores et cocciores et serotina. (
4)
︵試訳︶ ﹁庭園にはあらゆる草本が栽培されることを余は望む︒すなわち︑ニワシロユリ︑ドッグ・ローズ︑コロハ︑バルサ
ムギク︹モッコウ︺︑ヤクヨウサルビア︑ヘンルーダ︑サザンウッド︑キュウリ︑メロン︑ユウガオ︑ササゲ︹フジマメ︺︑
クミン︑マンネンロウ︑ヒメウイキョウ︑ヒヨコマメ︑カイソウ︑ドイツアヤメ︹グラジオラスの一種︺︑イブキトラ
ノオ︹エストラゴン︺︑アニス︑コロシントウリ︹セイヨウスズメウリ︺︑ヨウシュキダチルリソウ︹キンセンカ︺︑アジョ
ワン︹ボールドマネー︺︑サーマウンテン︑チシャ︹ビター・レタス︺︑ブラック・クミン︑キバナスズシロ︑オランダガラシ︑ゴボウ︑メグサハッカ︑アレキサンダーズ︑オランダゼリ︑オランダミツバ︑ガーデン・ラヴィッジ︹マウン
テン・ラヴィッジ︺︑サビン︑イノンド︑ウイキョウ︑キクニガナ︑ヨウシュハクセン︑シロガラシ︑キダチハッカ︑ウォーター・ミント︑オランダハッカ︑ホース・ミント︑ヨモギギク︑イヌハッカ︑ナツシロギク︹シマセンブリの一種︺︑ケシ︑
フダンソウ︑オウシュウサイシン︑ビロードアオイ︑ウスベニアオイ︑ニンジン︑アメリカボウフウ︑ヤマホウレンソウ︑
ワイルド・アマランス︑カブカンラン︹オクテノカブラ︺︑ワイルド・キャベッジ︑ネギ︹ラムザン︺︑チャイブ︑リーキ︑ラディッシュ︑シャロット︑タマネギ︑ニンニク︑セイヨウアカネ︑ラシャカキグサ︹カルドン︺︑ソラマメ︑エンドウ︑
コエンドロ︑チャーヴィル︑ホルトソウ︑オニサルビアである︒また︑どの庭師も自分の家の屋根にヤネバンダイソウを植栽すべし︒樹木に関しては︑以下のものが栽培されることを余は望む︒すなわち︑各種のリンゴ︑各種のセイヨウ
ナシ︑各種のセイヨウスモモ︑ナナカマドの一種︑セイヨウカリン︑ヨーロッパグリ︑各種のモモ︑マルメロ︑セイヨ
ウハシバミ︑アーモンド︑クログワ︑ゲッケイジュ︑イタリアカサマツ︑イチジク︑ペルシアグルミ︑各種のセイヨウミザクラである︒リンゴの品種はゴズマリンガー︑ゲロルディンガー︑クレヴェデルレン︑シュパイエルエプフェルで︑
甘味のあるもの︑酸味のあるもの︑よく保存のきくもの︑すぐさま食べられるもの︑早生のものがある︒ナシに関しては︑よく保存のきくものを三・四種類︑甘味のあるもの︑調理用のもの︑晩熟のもの﹇を栽培するように ︵5︶﹈︒﹂ 右にみた御料地令第七〇条において︑草本の最後︵第七三番目︶に数えられるのはヤネバンダイソウである︒これ
について︑史料では﹁どの庭師も自分の家の屋根にヤネバンダイソウを植栽すべし﹂︵Et ille hortulanus habeat super domum suam Iovis barbam︶として︑独立した一文が掲げられている︒ヤネバンダイソウは雷神に奉納されたハーブで︑
古来︑これが屋根に生えた家は稲妻︑雷鳴︑火災︑厄病︑魔物の難をまぬかれるという伝承があった︒御料地令にヤネ バンダイソウが登場しているのは︑そうした俗信のあらわれとみてとれる ︵6︶︒蛇足ながら︑従来の邦訳ではille hortulanusは﹁その庭園師は﹂︵上原訳︑船木訳︶と訳されているが︑この場合illeを指示形容詞ととると︑具体的に﹁その庭園師﹂
の﹁その﹂が何を指すのか不明である︒筆者は﹁どの庭師も﹂ないしは﹁いずれの庭師も﹂という意味に解した ︵7︶︒また︑
omnia servatoriaは﹁全くの貯蔵用﹂︵上原訳︶で意を尽くしていると思われるが︑ここでは﹁よく保存のきくもの﹂と
いう試訳をあげてみた︒なお︑前述した諸史料集では︑この部分はいずれも訳出されていない︒
二︑カール大帝御料地令第七〇条をめぐって
ドイツの医療心理学者ディーター・ベックマンは︑御料地令第七〇条に列挙されている植物を周知のギリシア人医師
ディオスコリデス︵紀元一世紀︶に依拠して︑一四のグループに分け︑各グループに該当する植物を史料収載中の最初のものから順次あげている︒すなわち︑
一︑芳香性の植物︵ニワシロユリ〜サザンウッド︶ 二︑緩下作用のある植物︵キュウリ〜ヒメウイキョウ︶
三︑利尿作用のある植物︵ヒヨコマメ〜キンセンカ︶ 四︑鎮痛効果のある植物︵アジョワン〜ゴボウ︶
五︑月経促進作用のある植物︵メグサハッカ〜サビン︶ 六︑消化促進作用のある植物︵イノンド〜キダチハッカ︶
七︑呼吸器官に作用する植物︵ウォーター・ミント〜ケシ︶
八︑根菜類︵フダンソウ〜アメリカボウフウ︶ 九︑葉菜類︵ヤマホウレンソウ〜ワイルド・キャベッジ︶ 一〇︑辛みのある調理用植物︵ネギ〜ニンニク︶ 一一︑織物用植物︵セイヨウアカネ〜カルドン︶ 一二︑化粧用植物︵ソラマメ〜ヤネバンダイソウ︶ 一三︑新鮮な果実を得るための果樹︵リンゴ〜モモ︶ 一四︑貯蔵用果実を得るための樹木︵マルメロ〜セイヨウミザクラ︶︒ これら一四のグループは用途に応じて︑次の三つに大別される︒第一は︑滋養に関係するもの︒換言すれば︑食用植物であり︑グループ八︑九︑一〇︑一三︑一四がこれに該当する︒第二は︑健康維持に役立つ植物で︑これにはグループ
二︑三︑四︑五︑六︑七が当てはまる︒第三は︑生活に愉悦を与えてくれるもので︑二義的には健康にも関係する︒これに
該当するのは︑グループ一︑二︑一二である ︵8︶︒ 一方︑フランスの植物学者ミッシェル・ボチノーは︑中世庭園の植物を扱った書物のなかで︑御料地令第七〇条記載 の植物に随所で言及し︑その特徴と用途を述べている ︵9︶︒それを筆者なりに整理してまとめれば︑次のようになる︒
一︑ポットハーブ︑すなわちポタージュならびに煮込み用ハーブ︵チシャ︹ビター・レタス︺︑キバナスズシロ︑
オランダミズガラシ︑キクニガナ︑シロガラシ︑フダンソウ︑ヤマホウレンソウ︑ワイルド・アラマンス︑ワイルド・キャベッジ︑ウスベニアオイ︶
二︑根菜類︵サーマウンテン︑ゴボウ︑アレキサンダーズ︑ニンジン︑アメリカボウフウ︑カブカンラン︹オクテ
ノカブラ︺︑ネギ︹ラムザン︺︑リーキ︑ラディッシュ︑シャロット︑ニンニク︶
三︑芳香性植物ならびに香辛料︵クミン︑マンネンロウ︑ヒメウイキョウ︑ヒヨコマメ︑アニス︑アジョワン︹ボー
ルドマネー︺︑オランダゼリ︑オランダミツバ︑ガーデン・ラヴィッジ︹マウンテン・ラヴィッジ︺︑イノンド︑ウイキョウ︑キダチハッカ︑チャイブ︑タマネギ︑コエンドロ︑チャーヴィル︑ブラック・クミン︶
四︑ウリ科の蔓性植物︵キュウリ︑メロン︑ユウガオ︑コロシントウリ︹セイヨウスズメウリ︺︶ 五︑果樹ならびに木質植物︵リンゴ︑セイヨウナシ︑セイヨウスモモ︑ナナカマドの一種︑セイヨウカリン︑ヨー
ロッパグリ︑モモ︑マルメロ︑セイヨウハシバミ︑アーモンド︑クログワ︑ペルシアグルミ︑セイヨウミザク
ラ︹スミノミザクラ︺︑イチジク︑ゲッケイジュ︑イタリアカサマツ︶ 六︑織物・染色用植物︵セイヨウアカネ︑ラシャカキグサ︹カルドン︺︶
七︑腹痛に効く植物︵バルサムギク︹モッコウ︺︑サザンウッド︑メグサハッカ︑ウォーター・ミント︑オランダハッカ︑ホース・ミント︑ヨモギギク︶
八︑婦人病に効く植物︵ヘンルーダ︑サビン︶ 九︑マメ科植物︵コロハ︑ササゲ︹フジマメ︺︑ヒヨコマメ︑ソラマメ︑エンドウ︶ 一〇︑毒性植物︵ケシ︶ 一一︑万能薬ないしは魔力を秘めた植物︵ヤクヨウサルビア︑ホルトソウ︑カイソウ︑ヨウシュキダチルリソウ︹キンセンカ︺︑ドッグ・ローズ︑ヤネバンダイソウ︶ 一二︑緩下作用のある植物︵ホルトソウ︶ 一三︑解熱作用のある植物︵ナツシロギク︹シマセンブリの一種︺︶
一四︑去痰を促す植物︵ビロードアオイ︶ 一五︑外傷を癒す植物︵イブキトラノオ︹エストラゴン︺︶
一六︑聖母の植物︵ニワシロユリ︑ドッグ・ローズ︑ドイツアヤメ︹グラジオラスの一種︺︑ヨウシュハクセン︶︑
以上である︒
このようにみてくると︑御料地令第七〇条に列挙されている草本・樹木の用途は多種多様であったことが理解される︒
とりわけ薬用植物の重要性については疑問の余地がない︒ここで当御料地令とほぼ同時代に作成された他の史料に目を向けてみると︑たとえばザンクト・ガレン修道院の設計図︵八二五年頃︶には︑薬草園︵herbularius︶に植栽されるべ
きものとして︑次の一六種類の薬草が記されている︒すなわち︑ニワシロユリ︑フレンチ・ローズ︑ソラマメ︑キダチ
ハッカ︑バルサムギク︑コロハ︑マンネンロウ︑ペパーミント︑ヤクヨウサルビア︑ヘンルーダ︑ドイツアヤメ︑メグサハッカ︑ミドリハッカ︑クミン︑ガーデン・ラヴィッジ︑ウイキョウである︒さらに同修道院プランには︑タマネギ︑
ニンニク︑チシャ︑ダイコン︑オランダゼリなど計一八種類の野菜と︑リンゴ︑セイヨウナシ︑セイヨウスモモ︑ナナカマドの一種︑セイヨウカリン︑イチジクなど計一四種類の果樹︵墓地の敷地内に点在︶が記されている︒それらはま
さに既述のカール大帝御料地令にもみうけられるものなのであ 0る ︵1︶︒ また︑ライヒェナウの修道院長にしてすぐれた詩人でもあったヴァラフリド・ストラボ︵八〇九年頃〜八四九年︶の作品﹃小さき庭﹄︵Hortulus︶には︑イヌハッカ︑バルサムギク︑オニサルビア︑ウイキョウ︑オランダハッカ︑メグサハッカ︑
ヘンルーダ︑ヤクヨウサルビアなど計二九種類の植物が登場するが︑その大半は南欧・地中海原産の薬草である︒言いかえれば︑﹃小さき庭﹄においてとり扱われているのは︑主として南方からボーデン湖に浮かぶ小島に到達した帰化植
物であって︑ドイツに自生するニガヨモギ︑カッコウチョロギ︑セイヨウキンミズヒキを除けば︑ゲルマン的と称される薬用植物は皆無なのである︒さらに︑この作品における植物描写が具象的であるところから︑それらの植物はライヒェ
ナウ修道院にあったストラボ自身の薬草園で実際に栽培されていたものと考えられてい 1る ︵1︶︒ここでは︑彼がとりあげて
いる植物の大半がカールの御料地令にもみうけられるものであることに留意しておきたい︒
いずれにせよ︑御料地令第七〇条は御料地の庭園を対象としているが︑ほぼ同時代︵九世紀前半︶のザンクト・ガレ
ン修道院やライヒェナウ修道院の史料においても同様の植物が散見されるところから︑カール大帝の御料地令にみられる植物は当時よく知られていたもので︑薬用・食用を問わず︑じゅうぶんにその価値が認められていたものであったと
考えられ 2る ︵1︶︒ ところで︑カール大帝御料地令の発布者︑発布年代︑そしてその適用地域をめぐっては一九世紀以来︑諸家によって
種々の見解が提示されており︑厳密にいえば︑いまだ見解の一致をみていない︒一般的には当御料地令はカール大帝に
よって︑フランク王国全土の御料地を対象とし︑八〇〇年頃に発布されたものと考えられている 3が ︵1︶︑たとえばアルフォンス・ドプシュによれば︑当御料地令は敬虔王ルードヴィヒによって︑七九四年ないしは七九五年に発布されたもので
あり︑その適用地域はアキテーヌ地方に限定さるべきものであった︒この説じたいの当否はさておき︑筆者の興味をひいたのは︑ドプシュが自説を補強するために用いたその方法である︒すなわち︑彼は当令第七〇条に列挙されている植
物を仔細に検討し︑その多くが南仏だけにしか適さないゆえに︑御料地令はアキテーヌ王国のためにルードヴィヒ王に
よって発布されたと考えたのであ 4る ︵1︶︒ しかしながら︑問題は第七〇条に南欧原産の植物が多数あげられている事実をもって︑直ちに当御料地令の適用範 囲をアキテーヌと速断してしまったところにあ 5る ︵1︶︒たとえばマルク・ブロックは︑カール大帝が子息ルードウィヒにアキテーヌとセプティマニを譲渡する一方︑他方でローヌ川以東の全領地︑とりわけ地中海沿岸のプロヴァンスを手
離さなかった事実を指摘し︑プロヴァンスではマンネンロウその他数多くの草本が繁茂していたであろうと述べ︑ドプシュの論法でいけば︑アキテーヌよりもプロヴァンスの方がより当令の適用範囲としてふさわしいことを言外に匂
わせている︒さらにブロックは︑ドプシュが七〇条の最初の文言︵Volumus quod in horto omnes herbas habeant.﹁庭園 にはあらゆる草本が栽培されることを余は望む︒﹂︶をカール大帝の命令 00︵傍点筆者︒以下︑同様︶と受けとったとこ
ろに問題があるとする︒ブロックによれば︑七〇条に列挙されている植物のすべてが王の庭で栽培されなければなら 000000
なかった 0000と考えるのは︑やや勇み足の感がある︒御料地令の作成者は︑あくまでも王の庭園にあるのが望ましい 0000と思われる有用な植物リストを提示しようとしたにすぎず︑それは要するにカールの願望 00なのだというわけであ 6る ︵1︶︒
南欧原産の植物がイル・ド・フランスの御料地において栽培されていたことは︑八一〇年頃のものとされる﹃資財目録範例集﹄︵Brevium exempla ad describendas res ecclesiasticas et fiscales) からもうかがえ 7る ︵1︶︒いまここで当史料をもとに アスナピウムAsnapium︵現在のアナップ︶とトレオラTreola︵現在のティール 8︶ ︵1︶の御料地の庭園に見いだされる植物 をみてみると︑次のようにな 9る ︵1︶︒ アスナピウムでは︑草本はニワシロユリ︑バルサムギク︑オランダハッカ︑オランダゼリ︑ヘンルーダ︑オランダミツバ︑
ガーデン・ラヴィッジ︑ヤクヨウサルビア︑キダチハッカ︑サビン︑リーキ︑ニンニク︑ヨモギギク︑ホース・ミント︑コエンドロ︑シャロット︑タマネギ︑カブカンラン︑ワイルド・キャベッジ︑カッコウチョロギ︒樹木は︑セイヨウナ
シ︑リンゴ︑セイヨウカリン︑モモ︑セイヨウハシバミ︑クルミ︑クログワ︑マルメロであ 0る ︵2︶︒ 一方︑トレオラでは︑草本はバルサムギク︑オランダハッカ︑ガーデン・ラヴィッジ︑オランダミツバ︑フダンソウ︑ニワシロユリ︑サザンウッド︑ヨモギギク︑ヤクヨウサルビア︑キダチハッカ︑イヌハッカ︑サビン︑オニサルビア︑
キクニガナ︑ホース・ミント︑カッコウチョロギ︑セイヨウキンミズヒキ︑ウスベニアオイ︑ビロードアオイ︑カブカンラン︑チャーヴィル︑コエンドロ︑リーキ︑ネギ︑シャロット︑チャイブ︑ニンニ 1ク ︵2︶︒樹木は︑セイヨウナシ︑リンゴ︑
セイヨウカリン︑モモ︑クルミ︑セイヨウスモモ︑セイヨウハシバミ︑クログワ︑マルメロ︑セイヨウミザクラであ 2る ︵2︶︒ これらの草本ならびに樹木が九世紀初頭にフランク王国の北部で栽培されていたのである︒既述の御料地令第七〇条
に列挙されている植物とかさなりあうものがかなりみうけられる点︑またヤクヨウサルビアやヘンルーダのように地中
海沿岸地域を原産地とする植物や︑セイヨウカワラニンジンやコエンドロといった南欧原産の植物が︑当時イル・ド・
フランスでも栽培されていた点が注目されよう︒
最近の植物考古学の研究成果によれば︑御料地令第七〇条に列挙されている七三種類の植物のうち四二種類が︑アルプス以北のフランスの中世初期遺構から出土しているという︒しかも︑地中海沿岸地域を原産地とする植物が圧倒的に 多く︑その大部分が薬用植物なのである︒また果樹等の樹木に関していえば︑同条にあげられている計一六種類のうち一三種類の存在が考古学的に立証されてい 3る ︵2︶︒さらにラインラントだけでも︑第七〇条のリストにみられる植物のうち 三七種の草本と九種の果樹が考古学的に証明されてい 4る ︵2︶︒このことは北西ヨーロッパにおいて︑中世初期に地中海沿岸
地域原産の植物が実際に栽培されていたことを裏づけている︒
お わ り に
かつてマルク・ブロックが述べたように︑御料地令第七〇条には︑たんに王の庭園において栽培されるのが望ましいと思われる植物が網羅的に列挙されているにすぎないのかもしれない︒それをカール大帝の命として︑いわば額面どお
りにうけとったアルフォンス・ドプシュは︑一種の消去法により︑同条に掲げられている植物のすべてが栽培可能な地域は結局のところアキテーヌしかないと考えた︒かくして当御料地令の適用範囲もアキテーヌに限定されることになっ
たのである︒しかしながら︑最近の植物考古学は︑御料地令第七〇条に記されている植物のすべてが栽培されていたわけではなかったにせよ︑また同条の最初の文言がカール大帝の願望 00もしくは推奨 00の意に解され︑命令 00とはうけとめられ なかったにせよ︑アルプス以北の地においても地中海沿岸地域原産の植物が現に栽培 000000000000000000000000000000さ 0れていた 0000ことを明らかにしてい る ︵2︶︒ 5御料地の実地調査にもとづいて作成された資財帳を底本とする既述の﹃資材目録範例集﹄︵八一〇年頃︶も︑その
傍証となり得るであろう︒
既述のように︑ベックマンはディオスコリデスに依拠して第七〇条の分析をおこなったが︑あくまでも分析指標としてディオスコリデスを援用し︑薬用植物の重要性を指摘したにすぎない︒第七〇条において推奨されている植物の大 部分は︑周知のプリニウス︵いわゆる大プリニウス︑二三年頃〜七九年︶ならびに四世紀ローマの農学者パラディウスの著作からの引用であるとの指摘もあ 6る ︵2︶︒カール大帝と彼の助言者あるいは当御料地令の起草者は︑植物の栽培とその 活用という点でも︑ローマの伝統と知識を継受していたのであ 7る ︵2︶︒その助言者のひとりがアルクイン︵七三〇年頃〜 八〇四年︶であったことは︑容易に推測がつ 8く ︵2︶︒ さらにドプシュによれば︑御料地令はザンクト・ガレンの修道院プランのもとになり︑ライヒェナウ修道院のストラ ボも﹃小さき庭﹄︵Hortulus︶を執筆するさいに御料地令の写しを利用したとい 9う ︵2︶︒であるとすれば︑御料地令第七〇条は九世紀前半における修道院付属庭園の植栽プランの淵源であったということになる︒これとの関連で︑ザンクト・
ガレンの修道院設計図に記されている草本・樹木が御料地令のそれと類似していること︑またストラボの庭にあった苗
床︵areolae︶の配列がザンクト・ガレンの薬草園︵herbularius︶のそれに酷似している事実は︑三者の密接な関係を示すものとして注目に値す 0る ︵3︶︒
以上にみてきたところより︑王の庭園を対象としていた御料地令第七〇条は︑ベネディクト会を中心とする修道院付属庭園のありようにも少なからず影響を及ぼしていたことが理解されよう︒九世紀カロリング朝の王の庭ないしは修道
院の庭において︑具体的にどのような植物が栽培されていたのか︒あるいは栽培されるべきこととされていたのか︒当﹁ノート﹂は︑この問いに対するひとつのささやかな答応でもある︒中世の医療における薬草ないしは薬草園の重要性
については︑多言を要しな 1い ︵3︶︒
註︵1︶上原專祿﹁傳カール大王御料地令國譯嘗試﹂︑小堅武夫博士還暦記念論文集︑﹃西洋農業経済史研究﹄︑昭和二三年︑一〜三六頁︒のち﹃上原專祿著作集 四﹄評論社︑一九九四年︑八六〜一二四頁に再録︒ちなみに成稿は昭和一八年のことであった︒カピトゥラリアについては︑加納 修﹁メロヴィング期にカピトゥラリアはあったのか―フランク時代の国王命令と文書類型―﹂﹃歴史学研究﹄︑七九五号︑二〇〇四年︑三二〜四三︑六三頁
; 大久保泰甫訳﹁カピトゥラリア﹂
︑久保正幡先生還暦記念出版準備会編﹃西洋法制史料選二中世﹄創文社︑一九七八年︑三一〜四三頁参照︒︵2︶下中 弘編﹃西洋史料集成﹄平凡社︑一九五六年︑二四七頁︵舟越康壽訳︶
; ヨーロッパ中世史研究会編﹃西洋中世史料集﹄
東京大学出版会︑二〇〇〇年︑六一頁︵船木順一訳︶
して以下の文献を参看した︒北村四郎︑村田源︑堀勝﹃日本植物大図鑑・草本編Ⅰ﹄保育社︑昭和三二年 ︵5︶試訳に際しては︑緒先学とりわけ上原專祿氏の訳例を参照した︒また植物の和名・原産地・効能その他については︑主と SS.90-91. Capitularia regum Francorum, Monumenta Germaniae Historica, Tom. I, hrsg,v. Alfredus Boretius,Hannover,1883, n.32, ︵4︶ Mainz am Rhein, 2008. Karl Josef Strank und Jutta Meurers-Balke (Hrsg.), Obst, Gemüse und Kräuter Karls des Großen, Philipp von Zabern Verlag, ︵3︶ 波書店︑二〇〇七年︑一二二頁︵渡辺節夫訳︶︒ 史学研究会編﹃世界史史料5 ヨーロッパ世界の成立と膨張﹄岩 ; 歴
; 北村四郎︑村田
源﹃日本植物大図鑑・草本編Ⅱ﹄保育社︑昭和三六年
; 北村四郎︑村田源︑小山鐵夫﹃日本植物大図鑑
・草本編Ⅲ﹄保育社︑昭和三九年
; 北村四郎︑村田源﹃原色日本植物大図鑑
・木本編Ⅰ﹄保育社︑昭和四六年
; 北村四郎︑村田源﹃原色日本植物
大図鑑・木本編Ⅱ﹄保育社︑昭和五四年
; 林弥栄︑古里和夫監修﹃原色世界植物大図鑑﹄北隆館︑昭和六一年
; 牧野富太郎
﹃改訂版原色牧野植物大図鑑 合弁花・離弁花編﹄北隆館︑平成八年
植物編﹄北隆館︑平成一三年 野富太郎﹃原色牧野植物大図鑑 離弁花・単子葉 ; 牧
; 田中修﹃園芸植物大辞典︿コンパクト版﹀全三巻﹄小学館︑
一九九四年
; 日外アソシエーツ
編集部﹃植物レファレンス事典﹄日外アソシエーツ︑二〇〇四年
; リチャード
・メイビー著︑神田シゲ︑豊田正博訳﹃ハー
ブ大全﹄小学館︑一九九〇年
; 福屋正修︑山中雅也﹃ハーブとスパイス﹄八坂書房︑一九九〇年
; ペネラピ
・オディ著︑近藤修訳﹃メディカルハーブ﹄日本ヴォーグ社︑一九九五年
; デニー
・バウン著︑吉村則子︑石原真理訳﹃ハーブ大百科﹄誠文堂新光社︑一九九七年
Dieter Beckmann,︵8︶ Vgl. Ibid., S.320.︵7︶ Karl Josef Strank und Jutta Meurers-Balke, op. cit., S.320.︵6︶ in Folk Tradition, Timber Press, Portland/Cambridge, 2004. Grieve, A Modern Herbal, 2vols. Dover Publications, New York, 1971; David E. Allen & Gabrielle Hatfield, Medicinal Plants Umberto Quattrocchi, F. L. S., CRC World Dictionary of Plant Names, 4vols. CRC Press, 2000; M. ;
Der Garten Kals des Groben:Gesundheit und Lebensfreude im Mittelalter “
︵ Michel Botineau, Les Plantes du Jardin Médiéval, Éditions Belin, Paris, 2003.︵9︶ (2001), SS.50-58. , Spiegel der Forschung, 18. Jg/2 ”
Carolingian Monastery, University of California Press, 1979, vol.2, pp.181-184; Ulrich Willerding, “ 10Walter Horn and Ernest Born, The Plan of St. Gall. A Study of the Architecture & Economy of, & life in a Paradigmatic ︶
Garten und Pflanzen des Mittelalters ”
, inDer Gärten von der Antike bis zum Mittelalter, hrsg, von M. Caroll-Spillecke, Mainz, 1992, SS.255-256;Rudolf Schmitz, Geschichte der Pharmazie, Bd.1, Von den Anfängen bis zum Ausgang des Mittelalters, Eschborn,1998, SS.304-308; Barbara S. Bowers, The Medieval Hospital and Medical Practice, Ashgate Publishing. Ltd., 2007, p.244; Jerry Stannard, “
Medieval Gardens and Their Plants ”
, inGardens of the Middle Ages, ed., Marolyn Stokstad and Jerrt Stannard, Lawrence, KS, 1983, pp.47-52; 相澤隆﹁ザンクト・ガレンの修道院プラン﹂︑ヨーロッパ中世史研究会編︑前掲書︑八三―八四頁︒森義信﹁サン・ガレン修道院所領の成立と構造﹂︑久保正幡編﹃中世の自由と国家・下﹄創文社︑一九六九年所収は︑わが国におけるサン・ガレン修道院所領に関する本格的な研究である︒なお︑ザンクト・ガレンの地名のもとにもなったアイルランド修道士ガルスのガリアにおける宣教については︑さしあたりM・D・ノウルズ他著︑橋口倫介監修﹃中世キリスト教の成立﹄︵キリスト教史︑第三巻︶講談社︑一九八一年︑二〇頁以下を参照︒現存する修道院設計図は複製で︑オリジナルは第七代修道院長ゴツベルト︵在任八一六〜三七年︶の依頼にもとづき︑ライヒェナウ修道院において︑バーゼル司教にしてライヒェナウ修道院長でもあったハイトによって八一六年〜八三〇年の間に作成されたと考えられている︒ザンクト・ガレン修道院はゴツベルトの時代に帝国修道院︵Reichskloster︶に格上げされ︑その後約一世紀余りにわたって﹁黄金時代﹂を現出する︒世に言う﹁カロリング・ルネサンス﹂の波はボーデン湖周辺にまで押しよせていたのである︒これら
の諸点については︑Walter Horn and Ernest Born, op. cit., vol.1, pp.8-11; Johannes Duft, Anton Gossi und Werner Vogler. Die Abtei St. Gallen, Stiftsarchiv St. Gallen, St. Gallen, 1986, S.22.︵
Library, Pittsburgh, 1966; Ulrich Willerding, op. cit., S.257. Klaus-Gunther Wesseling,ストラボについては︑ 1926, SS.XIII-XIV; Raef Payne and Wilfrid Blunt, Hortulus, Walahfrid Srabo, The Hunt Facsimile Series, no. 2, Hunt Botanical gewürdigt, Münchener Beiträge zur Geschichte und Literatur der Naturwissenschaften und Medizin, 1. Sonderheft, Munich, Wiedergabe des ersten Wiener Druckes vom Jahre 1510, eingeleitet und medizinisch, botanisch und druckgeschichtlich 11Karl Sudhoff, Des Walahfrid von der Reichenau Hortulus: Gedichte über die Kräuter seines Klostergartens vom Jahre 827; ︶
Walahfrid Strabo “
”
in Biographisch-Bibliographisches Kirchenlexikon, vol.13,Norhausen,1998, pp.169-176; Jan M. Ziolkowski,
Walahfrid Strabo “
” in John M. Jeep ed., Medieval Germany: An Encyclopedia, Garland Pub., New York, 2001, p.793. ライヒェナウについては︑Kristen M. Collins, “
Reichenau ”
ibid., pp.643-645; Scott Wells, “
Reichenau ”
inEncyclopedia of Monasticism, ed., William M. Johnston, Chicago and London, 2000, vol.2, pp.1070-1071 をそれぞれ参看︒︵
︵ http://www.mittelalterzentrum.uni-bonn.de/workshop/mero̲karo.pdf︵︶ 12Maria Schäpers, Ernährung in der Merowinger-und Karolingerzeit︶ 13︶ヨーロッパ中世史研究会編︑前掲書︑六〇頁
史学研究会編︑前掲書︑一二二頁 ; 歴
Alain Touwaide, ;
in The Eastern Mediterranean: A Case Study in the Methodology of Textual Archeobotany The Jujube Tree “
︵ ニュないしは敬虔王ルイのいずれかによって︑八世紀末頃に発布されたとしている︒ Medieval Garden, edited by Peter Dendle and Alain Touwaide,The Boydell Press, 2008, p.72は︑当御料地令はシャルルマー in Health and Healing from the ” villis, die Brevium Exempla und der Bauplan von St. Gallen ” 14Alfons Dopsch, Die Wirtschaftsentwicklung der Karolingerzeit, 1. Teil, Weimar, 1912, SS.26-64; Idem,Das Capitulare de ︶ “
, Vierteljahrschrift für Sozial- und Wirtschaftsgeschichte, 13 (1916), SS.41-70.︵
︵ 経済発展﹂に就いて﹂︵第一回︶︑﹃史学雑誌﹄︑第二六編第三号︑七六〜八六頁参照︒ りわけ四九〜六九頁︑﹁三 ドープシュ教授の研究﹂参照︒さらに古くは︑植村清之介﹁ドプシュ氏﹁カロリング朝時代の 15︶上原專祿﹁﹃傳カール大王御料地令﹄文獻考﹂︑昭和八年稿︑﹃独逸中世史研究﹄弘文堂︑一九四二年︑二九〜一〇三頁︑と 16Marc Bloch, ︶
L “ ʼ
origine et la date du Capitulaire de Villis
︵ , Revue historique, 143 (1923), pp.40-56. ”
17Capitularia regum Francorum, Monumenta Germaniae Historica, Tom. I, hrsg, v. Alfredus Boretius, Hannover, 1883, n.128, ︶
SS.250-256.︵
Norman J. G. Pounds,れぞれ所在︒この点については︑ 18AnnapesThiel︶アナップはリールの真東︑ベルギー国境に近いフランスの北西端に︑またティールはヴェルサイユ近郊にそ
the Polyptyques Northwest Europe in the Ninth Century; Its Geography in Light of “
︵ , Annals of the Association of American Geographers. vol.57 (3), 1966, pp.445, 456参照︒ ”
︵ 19Hermann Fischer, Mittelalterliche Pflanzenkunde, Georg Olms Verlag, 2001, S.133︶植物名に関してはを参看︒
ravacaules, vittonicam. De arboribus: pirarios, pmoarios, mispilarios, persicarios, avelanarios, nucarios, morarios, cotaniarios. apium, libesticum, salviam, satureiam, savinam, porrum, alia, tanazitam, mentastram, coliandrum, scalonias, cepas, caules, 20A. Boretius, op. cit., S.255, n29.De herbis hortulanis quas repperimus: id est lilium, costum, mentam, petresilum, rutam, ︶ ʻ
ʼ
︵
cerfolium, coriandrum, porrum, cepas, scalenias, brittolos, alia. salviam, satureiam, neptam, savinam, sclareiam, solsequia, mentastram, vittonicam, acrimona, malvas, mismalvas, caulas, 21Ibid., S.256, n.37.De herbis hortulanis: id est costum, mentam, livesticum, apium, betas, lilium, abrotanum, tanezatum, ︶ ʻ
ʼ
︵
prunarios, avelanarios, morarios, cotoniarios, cerisarios. 22Ibid., S.256, n.38. De arboribus: pirarios diversi generis, pomarios diversi generis, mispilarios, persicarios, nucarios, ︶ ʻ
ʼ
︵
︵ 23Karl Josef Strank und Jutta Meurers-Balke, hrsg, op. cit., S.44.︶
︵ 24Ibid., S.45.︶
︵ 25Ibid., S.45.︶
︵ 2000, p.307 and p.312, footnote 46. 26Minta Collins, Medieval Herbals, The British Studies in Medieval Culture, The British Library and University of Tronto Press, ︶
︵ 27Karl Josef Strank und Jutta Meurers-Balke, hrsg, op. cit., S.45.︶
︵ 28Michel Botineau, op. cit., p.11.︶ 29Alfons Dopsch, Das Capitulare de villis, die Brevium Exemple und der bauplan von St. Gallen︶ “
︵ Sozial und Wirtschafts Geschichte, 13 (1916), SS.63-70. , Vierteljahresschrift für ”
30Ulrich Willerding, op. cit., SS.255-257, 258, Abb. 88; ︶
PLAN OF ST. GALL. MEDICINAL HERB GARDEN ʻ
︵ ; and Ernest Born, op. cit., p.182Hermann Fischer, op. cit., SS. 136-9. , in Walter Horn ʼ 31︶これに関連して想起されるのが︑アルクインとシャルルマーニュがかわしたとされる問答である︒すなわち︑教師である
アルクインが生徒であるシャルルマーニュに対して﹁ハーブとは何か﹂と尋ねると︑シャルルマーニュが﹁それは医者の友であり︑料理人の称賛の的である﹂と答えた︑というのである︵Margaret B. Freeman, Herbs for the Mediaeval Household, The Metropolitan Museum of Art, New York, 1943,p.ix︶︒実際には︑質問者︵生徒︶はシャルルマーニュの子息ピピンで︑それに対してアルクイン︵教師︶が答えるという形式で討論が展開されているが︵
trans. Gillian Spraggs The Debate Between Pippin and Alcuin, “
ハーブの定義は簡にして要を得たもので︑ハーブが医療と料理にとって不可欠であった時代をうかがわせる︒ http://www.gillianspraggs.com/translations/alcuin.html︶︑フリーマン女史も述べているように︑この ” また︑アルクインはアニアンヌ修道院長ベネディクト宛の書簡︵七八二〜七九六年頃︶の中で︑同修道院長がアルクインの健康に配慮・贈与してくれた薬草を拝受した旨︑謝意を表しつつ︑次のように書き記している。 ʻ
Herbas medicinales, quas direxisti, gratanti animo accepi. Et sicut corporali me sanitate praevidere curasti,ita tuae spiritali saluti praevideri semper desidero,optans te in eo strenue perficere opere quod coepisti et gregem gubernare fideliter quem congregasti. ʼ ︵
Epistolae Karolini aevi, Monumenta Germaniae Historica, Tom.
にはやや疑問が残る︒ 推測がつく︒しかし︑だからといって︑この書簡が御料地令の適用範囲を南仏に限定する傍証になり得るのかどうか︑筆者 00000000000000000 地令﹄文獻考﹂︑五三頁︶︒確かにアニアンヌ修道院の所在するラングドック地方が︑薬草の栽培に適していたことは容易に Alfons Dopsch, Die Wirtschaftsentwicklung der Karolingerzeit, 1. Teil, Weimar, 1912, S.46; ︵上原專祿﹁﹃傳カール大王御料 実際に薬用植物の栽培が促進されていたことを示す有力な証拠とみなし︑御料地令の適用範囲を南仏とみる傍証としている 薬草の重要性をじゅうぶん認識していたことを間接的ながら示すものであろう︒ドプシュはこの書簡を︑当時南仏において Ⅱ, hrsg, v. Ernst Dümmler, et al., Berlin, 1895, S.100.︶これは両者が
﹇補遺﹈ カール大帝御料地令第七〇条︑植物目録以下のリストは︑Karl Josef Strank und Jutta Meurers-Balke (Hrsg.), Obst, Gemüse und Kräuter Karls des Großen, Philipp von Zabern Verlag, Mainz am Rhein, 2008に準拠し︑作成したものである︒原文に記されている植物の中世ラテン名とそれに該当すると推定される現在の植物の学名︑独名︑和名が併記されているが︑ひとつの植物に特定できない場合は︑推定され得る他の植物名も附記した︵同一番号でa︑bと区分されているものがそれに該当する︶︒各植物の和名・原産地・効能その他については︑本稿の註︵5︶に挙げた参考文献を参照されたい︒なお︑周知のように︑個々の植物には異名ないしは俗称が複数存在するが︑ここでは最少限にとどめた︒大方の了承を請う次第である︒
1.lilium Lilium candidum L. Madonnenlilie ニワシロユリ︑マドンナ・リリー2.rosas Rosa canina L. Hundsrose ドッグ・ローズ3.fenigrecum Trigonella foenum-graecum L. Bockshornklee/Griechisch Heu コロハ 4a costumTanacetum balsamita L.Frauenminze.バルサムギク︑コストマリー peponesCucumis melo L.Zuckermelone9.メロン cucumeresCucumis sativum L.Gurke8.キュウリ abrotanumArtemisia abrotanum L.Eberraute7.サザンウッド rutamRuta graveolens L.Weinraute6.ヘンルーダ salviamSalvia officinalis L.Gartensalbei5.ヤクヨウサルビア︑セージ 4b costumSaussurea costus (Falc.) LipschützKostuswurzel.モッコウ︑コスタス
10 cucurbitasCucurbita lagenaria L.Flaschenkürbis.ユウガオ 11a fasiolumVigna unguiculata (L.) WalpKuherbse/Kuhbohne.ササゲ 11b fasiolumDolichos lablab L.Helmbohne.フジマメ 12 ciminumCuminum cyminum L.Kreuzkümmel.クミン 13 ros marinumRosmarinus officinalis L.Rosmarin.マンネンロウ︑ローズマリー 14 careiumCarum carvi L.Kümmel.ヒメウイキョウ︑キャラウェイ 15 cicerum italicumCicer arietinum L.Kichererbse.ヒヨコマメ 16 squillamscilla maritima L.Meerzwiebel.カイソウ 17a gladiolumIris germanica L.Deutsche Schwertlilie.ドイツアヤメ 17b gladiolumGladiolus italicus Mill.Gladiole/Siegwurz.グラジオラスの一種 18a draganteaPolygonum bistorta L.Schlangen-Knöteric.イブキトラノオ 18b draganteaArtemisia dracunculus L.Estragon.エストラゴン︑タラゴン 19 anesumPimpinella anisum L.Anis.アニス 20a coloquentidasCitrullus colocynthis (L.) Schrad.Kololquinthe.コロシントウリ 20b coloquentidasBryonia alba L.Weise Zaunrübe.セイヨウスズメウリ︑ホワイト・ブリオニー
21a solsequiamHeliotropium europaeum L.Europäische Sonnenwende.ヨウシュキダチルリソウ 21b solsequiamCalendula officinalis L.Ringelblume.キンセンカ︑マリゴールド 22a ameumAmmi copticum L.Ammei.アジョワン︑エチオピアクミン 22b ameumMeum athamanticum Jacq.Bärwurz.ボールドマネー 23 silumLaserpitium siler L.Bergkümmel.サーマウンテン 24a lactucasLactuca sativa L.Lattich.チシャ︑レタス 24b lactucasLactuca virosa L.Gift-Lattich.ビター・レタス 25 gitNigella sativa L.Schwarzkümmel.ブラック・クミン︑ローマン・コリアンダー 26 eruca albaEruca sativa Mill.Ölrauke.キバナスズシロ 27 nasturtiumNasturtium officinale R. Br.Brunnenkresse.オランダガラシ︑クレソン 28 pardunaArctium lappa L.Große Klette.ゴボウ 29 pulediumMentha pulegium L.Poleiminze.メグサハッカ︑ペニーロイヤル 30 olisatumSmyrnium olusatrum L.Pferdeeppich.アレキサンダーズ︑ホース・パセリ 31 petresilinumPetroselinum crispum (Mill.) Nym. ex A. W. HillPetersilie.オランダゼリ︑パセリ 32 apiumApium graveolens L.Sellerie.オランダミツバ︑セロリ 33a levisticumLevisticum officinale W. D. J. KochLiebstöckel.ガーデン・ラヴィッジ 33b levisticumLigusticum mutellinua (L.) CrantzMutterwurz.マウンテン・ラヴィッジ 34 savinamJuniperus sabina L.Sadebaum.サビン 35 anetumAnethum graveolens L.Dill.イノンド︑ディル 36 fenicolumFoeniculum vulgare Mill.Fenchel.ウイキョウ︑フェンネル 37 intubasCichorium intybus L.Wegwarte.キクニガナ︑チコリー 38 diptamnumDictamnus albus L.Diptam.ヨウシュハクセン︑ディタニー 39 sinapeSinapis alba L.Weißer Senf.シロガラシ 40 satureiamSatureja hortensis L.Bohnenkraut.キダチハッカ︑サマーセイボリー 41 sisimbriumMentha aquatica L.Wasserminze.ウォーター・ミント
42 mentamMentha spicata L.Ährenminze.オランダハッカ︑スペアミント 43 mentastrumMentha longifolia (L.) L.Rossminze.ホース・ミント 44 tanazitamTanacetum vulgare L.Rainfarn.ヨモギギク︑タンジー 45 neptamNepeta cataria L.Katzenminze.イヌハッカ 46a febrefugiamTanacetum parthenium (L.) Schultz Bip.Mutterkraut.ナツシロギク︑フィーバーフュー 46b febrefugiamCentaurium erythraea L.Echtes Tausendgüldenkraut.シマセンブリの一種 47 papaverPapaver somniferum L.Schlafmohn.ケシ 48 betasBeta vulgaris L. ssp. vulgare cv. cicla (L.) AlefSchnittmangold.フダンソウ 49 vulgiginaAsarum europaeum L.Haselwurz.オウシュウサイシン 50 mismalvas, i. e., althaeaAlthaea officinalis L.Eibisch.ビロードアオイ 51 malvasMalva sylvestris L.Große Käsepappel.ウスベニアオイ 52 carvitasDaucus carota L.Möhre/Katotte.ニンジン 53 pastinacasPastinaca sativa L.Pastinak.アメリカボウフウ︑パースニップ 54 adripiasAtriplex hortensis L.Gartenmelde.ヤマホウレンソウ 55 blidasAmaranthus blitum L.Blutmeier/Amaranth.ワイルド・アマランス︑パープル・アマランス ラビ 56a ravacaulosBrassica oleracea L. convar. caulorapa (DC.) Alef. var. gongylodesKohlrabi.カブカンラン︑コール 56b ravacaulosBrassica rapa L. emend. Metzg. ssp. repaStoppelrübe.オクテノカブラ︑ワイルド・ターニップ 57 caulosBrassica oleracea L.Kohl.ワイルド・キャベッジ 58a unionsAllium fistulosum L.Winterheckzwiebel.ネギ 58b unionsAllium ursinum L.Bärlauch.ラムザン 59 britlasAllium schoenoprasum L.Schnittlauch.チャイブ 60 porrosAllium porrum L.Breitlauch/Porree.リーキ︑ポロネギ 61 radicesRaphanus sativus L.Rettich.ラディッシュ 62 ascaloniasAllium cepa L. var. ascalonicumSchalotte.シャロット︑エシャロット
63 cepasAllium cepa L. var. cepaKüchenzwiebel.タマネギ 64 aliaAllium sativum L.Knoblauch.ニンニク 65 warentiamRubia tinctorum L.Krapp.セイヨウアカネ︑マダー 66a cardonesDipsacus sativus (L.) Honck.Weberkarde.ラシャカキグサ 66b cardonesCynara cardunculus L.Kardone.カルドン 67 fabas maioresVicia faba L.Dicke Bohne/Saubohne.ソラマメ 68 pisos MauriscosPisum sativum L.Erbse.エンドウ 69 coriandrumCoriandrum sativum L.Koriander.コエンドロ︑コリアンダー 70 cerfoliumAnthriscus cerefolium (L.) Hoffm.Gartenkerbel.チャーヴィル 71 lacteridasEuphorbia lathyrus L.Kreuzblättrige Wolfsmilch.ホルトソウ 72 sclareiamSalvia sclarea L.Muskatellersalbei.オニサルビア︑クラリーセージ 73 Iovis barbamSempervivum tectorum L.Dachhauswurz.ヤネバンダイソウ 74 pomariosMalus domestica Borkh.Apfel.リンゴ 75 pirariosPyrus communis L.Birne.セイヨウナシ 76 prunariosPrunus domestica L.Pflaume.セイヨウスモモ 77 sorbariosSorbus domestica Borkh.Speierling.ナナカマドの一種 78 mespilariosMespilus germanica L.Mispel.セイヨウカリン 79 castanariosCastanea sativa Mill.Edelkastanie/Esskastanie.ヨーロッパグリ 80 persicariosPrunus persica (L.) BatschPfirsich.モモ 81 cotoniariosCydonia oblonga Mill.Quitte.マルメロ 82 avellanariosCorylus avellana L.Haselnuss.セイヨウハシバミ︑ヨーロッパヘイゼル 83 amandalariosPrunus dulcis(Mill.) D. A. WebbMandel.アーモンド 84 morariosMorus nigra L.Schwarze Maulbeere.クログワ 85 laurosLaurus nobilis L.Lorbeer.ゲッケイジュ 86 pinosPinus pinea L.Pinie.イタリアカサマツ
87 ficusFicus carica L.Feige.イチジク 88 nucariosJuglans regia L.Walnuss.ペルシアグルミ 89a ceresariosPrunus avium L.Süskirsche.セイヨウミザクラ︑スイート・チェリー 89b ceresariosPrunus cerasus L.Sauerkirsche.スミノミザクラ︑サワー・チェリー spiraucaSpeieräpfeld.シュパイエルエプフェル crevedellaKrevedellenc.クレヴェデルレン geroldingaGeroldingerb.ゲロルディンガー gozmaringaGosmaringera.ゴズマリンガー 90 Malorum nominaSortennamen d. ÄpfelApfelsorten.リンゴの品種