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第 51 回神奈川腎炎研究会 急性腎不全を伴った Streptococcus suis 敗血症 髄膜炎の一例 西脇宏樹平出聡柴潤一郎山本弓月岩崎滋樹 症例症例 :64 歳男性主訴 : 頭痛家族歴 : 兄 : 前立腺癌 (?) 既往歴 :39 歳頃刃物切傷, 64 歳足白鮮嗜好 : タバコ 20 本

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症  例

症 例:64歳 男性 主 訴:頭痛 家族歴:兄:前立腺癌(?) 既往歴:39歳頃 刃物切傷, 64歳 足白鮮 嗜 好:タバコ20本/日×50年間,日本酒2 合ビール大1本焼酎2杯/日×50本 薬 歴:定期内服無し,入院約3 ヶ月前に白 鮮の薬(詳細不明,抗生物質を含む2剤を14日 間) 健診歴:定期受診あり 最終受診は入院1年 前で特に異常を指摘されたことはない 生活歴:独居,明らかなsick contactなし 海 外渡航歴無し 職 歴:15 ~ 20歳まで鉄工所勤務,20~35 歳まで焼肉屋厨房勤務,以降現在まで精肉所に て豚・牛の内臓を取り扱う仕事 現病歴:入院2日前の20時頃,業務より帰宅 後よりむかつきと倦怠感を自覚。入院1日前起 床時に全身の脱力を自覚し,這って移動する状 態となり,微熱,嘔気,嘔吐が出現。食欲の低 下があり飲水摂取のみを行っていた。入院当日 には前述の症状に加えて水様便を認め耳鳴と左 右手関節・肘関節・首から肩にかけての疼痛を 伴うようになった。15時ごろ友人に電話した 際に聴力低下を自覚。頭痛も悪化してきたため 救急車にて当院救急外来を受診した。 入院時現症:身長:162cm,体重:59.2kg,体温: 38.5℃,血圧:128/74mmHg,脈拍:84/分 整, 概観:皮膚所見異常無し,浮腫無し,虚脱,頭 頚部:眼瞼結膜は貧血無し,眼球結膜に黄染無 し,著明な項部硬直あり,口腔内に特記すべき 所見無し,胸部:呼吸音清,心雑音無し,腹部: 平坦軟,圧痛無し,グル音正常,遊走性の関節 痛(炎?)→発赤はないが腫脹・圧痛・可動制 限あり 神経学的所見:JCSⅠ-2,脳神経系:両側聴 力低下を認める(左<右),四肢に筋力低下, 協調運動:異常無し,感覚障害無し 画像所見:胸部レントゲン:特記すべき所 見無し,頭部CT:特記すべき所見無し,頭部 MRI:特記すべき所見無し,腹部エコー:肝胆 膵に特記すべき所見無し,腎サイズ 右121× 58mm,左112×58mm,両側腎臓ともにCEC はやや不明瞭,心エコー:特記すべき所見無し, EF59%,IVC20.6mm,asynergy(-),vegetation(-)

急性腎不全を伴った

Streptococcus suis 敗血症・髄膜炎の一例

西 脇 宏 樹  平 出   聡  柴   潤一郎

山 本 弓 月  岩 崎 滋 樹         

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図1 図2 尿所見 比重 1.017 尿蛋白 2+ 尿潜血 3+ WBC 2 /HPF RBC 120 /HPF Cast Hyaline 1 Gran 1 蓄尿 24hCCr 28.1 ml/min 尿蛋白 0.43 g/day β2MG 11400 μg/L NAG 18.7 血算 WBC 12600 /μl Neut 93.40 % Eosino 0.10 % Baso 0.10 % Mono 2.80 % Lymph 3.70 % RBC 449 万/mm3 Hb 13.5 g/dl Hct 40 % Plt 6.3 万/μL 凝固 aPTT 32.9 sec PT 107.10 % Fibrinogen 614 mg/dl FDP 14.1 μg/ml d-dimer 9.0 μg/ml 生化学 TP 7.1 g/dl Alb 3.6 g/dl 50.50 % α1 0.39 % α2 0.94 % β 0.63 % γ 15.50 % Glu 153 mg/dl BUN 49.9 mg/dl UA 8.3 mg/dl Cre 2.15 mg/dl Na 131 mEq/L Cl 95 mEq/L K 3.4 mEq/L Ca 7.6 mg/dl i-P 3.1 mg/dl T-Bil 0.5 mg/dl AST 67 IU/L ALT 36 IU/L LDH 281 IU/L ALP 161 IU/L γ-GTP 40 IU/L CK 198 IU/L 髄液 Cell 1190 /3 poly/mono 1140 /50 protein 320 mg/dl C-Glu 320 mg/dl Gram stain GPC(+) 免疫 CRP 35.1 mg/dl IgG 1193 mg/dl IgA 198 mg/ml IgM 38 mg/dl C3 110 mg/dl C4 37 mg/dl 血清補体価 51.6 CH50/ml RF 1 IU/ml 特殊検査 ANA <×40 P-ANCA <10 IU/L C-ANCA <10 IU/L 抗GBM抗体 <10 IU/L ASO 245 IU/ml 血液ガス分析 pH 7.496 pCO2 31.1 mmHg pO2 71.0 mmHg HCO3 23.5 mEq/L BE 1.1 mEq/L AnionGap 13.4 mEq/L 感染症 HBsAg (-) HCVAb (-) HIV (-) RPR/TPHA (-)/(-) 検査所見

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図3 図4 図5 図6 図7 図8

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図9 図10 図11 図12 図13 図14

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図15 図16 腎生検:検体数 3     皮質髄質比 6:4     観察糸球体数 14 糸球体:管内増殖性変化を伴う糸球体を認め, focal・segmentalな係蹄内の微小血栓様の像を 認める 血管:内皮障害・動脈硬化性病変は認めない 間質・尿細管:間質の繊維化とリンパ球と一 部形質細胞と思われる単核細胞の浸潤を認め る。尿細管は広範に浮腫状変化を認める。 免疫染色 法:IgG・IgM・IgA・C3ともに有 意な所見なし 電子顕微鏡:基底膜内のdepositを散見する。 foot process effacementを認める

S. suisについて

◦ グラム陽性の通性嫌気性菌。莢膜のpolysac-charideから35の抗原型に分類される。豚との 人畜感染症で臨床上の問題となる。そのほと んどがserotype 2によるものである。ヒツジの 血液培地でα溶血を示す。Lancefield抗原分 類ではGroup Dとなる。 ◦ 症例の報告の多くが中国などの東~東南ア ジアなどの食用として豚を消費する国・地 域に集中している。中国四川では2005年8月 に罹患者数215人,死亡者数38名に達した Outbreakが起きている。 ◦ 現在のところヒト-ヒト感染は確認されてい ない。ブタ-ヒト感染,ブタ-ブタ感染で伝 播する。 ◦ ヒトでの感染の臨床像としては髄膜炎を呈す ることが最も多い。難聴が出やすいことも特 徴。敗血症による多臓器不全を呈することも 多い。心内膜炎の報告もあり。 ◦ 敗血症についてはA群β溶連菌やブドウ球菌 同様のToxic shock syndromeを呈すると述べ られた報告もいくつか見られる。 ◦ そのほとんどがペニシリンGを含めた抗生剤 に感受性を示すが一部の株にペニシリンG耐 性株が報告されている ◦ 腎臓病理についての報告は多くないが4例の 剖検例について検討したものでは以下の所見 が見られた  ◦ 腎容量の増大  ◦ 糸球体毛細血管内の微小血栓  ◦ 尿細管内の硝子様円柱  ◦ 尿細管上皮組織の浮腫状変化と萎縮  ◦ 好中球浸潤をともなう多巣状の壊死性変化

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討  論

座長 次の演題へいかせていただきたいと思い ます。  「急性腎不全を伴ったStreptococcus suis敗血 症・髄膜炎の一例」。聖隷横浜病院,腎臓・高 血圧内科,西脇宏樹先生,よろしくお願いします。 西脇 よろしくお願いします。  「急性腎不全を伴ったStreptococcus suis敗血 症・髄膜炎の一例」について発表いたします。  症例は,64歳の男性で,頭痛を主訴に来院 されています。バックグラウンドとしては,家 族暦,既往歴などに,今回の経過で問題になる 点はなかったのですが,本症例について重要な 点として,職業で,精肉場でブタを取り扱う仕 事をしていた点が後に問題になってきます。  現病歴です。入院二日前仕事から帰宅後,悪 心と倦怠感を自覚。入院1日前の朝から前身の 脱力が出現し,この時点ですでに,はってでな いと移動ができない状態にありました。また, 頭痛・発熱・嘔気・嘔吐が出現,食欲が低下し, 水のみを取っている状態でした。入院当日には 下痢と,耳鳴り,多発関節痛が出現。午後にな り,知人と電話の際に聴力低下を自覚したため に救急隊を要請し,当院受診となっております。  入院時の現症です。バイタルは,38.5℃の熱 を認めましたが,血圧・脈拍は正常範囲内。意 識はJCSでⅠ-2,概観はぐったりしていて,身 体所見では著明な項部硬直を認めました。また, 入院後も持続する遊走性の関節痛を認めており ます。聴力は右に強い難聴を認め,これは後に 感音性難聴性の聴力低下であることが明らかに なっております。その他は,四肢の筋力低下を 認める以外に,所見の異常は明らかではありま せんでした。  検査所見です。尿所見は,尿蛋白(2+)・潜 血(3+)。凝固はPTを経過中に軽度の延長と, FDP,Fibrinogen,d-dimerの高値を認めました。 順序が逆になったのですが,血算は,白血球が 12600で好中球優位,血小板は63000と減少を 認めました。生化学では,クレアチニン2.15, BUN49.9と腎機能の悪化を認め,AST,ALTと もに軽度高値を認めました。  入院時に髄膜腫所見を認めたことから,髄 液穿刺を施行しております。細胞数が1190で, 多核球優位,蛋白濃度の上昇と,血糖153に対 して,こちらは記載が間違っていますが,髄液 の糖が5と著明な低下を認めました。また,髄 液のグラム染色ではグラム陽性球菌を多数認 め,入院時に行った血液培養でも,後に同様の グラム陽性球菌を検出しております。  CRPは35.1と抗炎症反応を認め,その他免疫 グロブリンや,自己抗体の検査を提出しました が,特記すべき異常はありませんでした。ASO は245と軽度高値。血液ガスでは,呼吸性alka-losisの所見を認めました。入院時のscreeningで 行う感染症検査は,梅毒・肝炎ウイルス・HIV については陰性でした。  画像所見です。腎エコーの所見では,腎サイ ズはほぼ正常で,CECはややpoorな所見。心 エコーについても心機能が保たれている所見で した。  入院後の経過です。グラフは上からクレアチ ニン,下のグラフにCRPと白血球,緑色の数字 は経過中の髄液の多核白血球数を示しています。  グラム陽性球菌による髄膜炎,敗血症,DIC の診断にて,当院脳外科のほうに初め入院しま して,入院時にゲンタマイシンの髄注を行い, その後,髄液移行性のよいセフトリアキソンに よる治療を開始しております。  治療後も全身状態が悪化し,腎機能も悪化し たため腎臓内科のほうに転科となりまして,起 因菌として耐性の肺炎球菌等を想定しましてバ ンコマイシンを追加,その後,腎臓で用量調節 が必要ないリネゾリドのほうに変更になってお ります。  その後も全身状態が悪化しまして,腎機能は クレアチニン6を加えまして血液浄化療法を開 始,点滴量に対して尿量が少なく肺鬱血像を呈 してきたため,血液浄化療法を開始しております。

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 その同日中に,起因菌がStreptococcus suisで あることが判明しまして,感受性試験を基に, ビクシリンに抗生剤を変更しました。その後腎 機能は改善し,そのほかのパラメーターについ ても改善しました。  第17病日に腎生検を施行しております。腎生 検施行時のクレアチニンは,2.8でした。献体数 が3本で,皮質髄質が6.4,観察糸球体は14でし た。約半数の糸球体に,富核を伴う管内増殖性 の変化を見られる糸球体を認めました。  また,一部の,これは同じ糸球体のMasson ですが,マッソントリクローム染色,こちら の3時方向にあるような微小血栓にも見えるよ うな像を認めておりますが,今回こちらのほう に関しては,PT,AH染色等は行っていないの で,これが本当に血栓かどうか分かりませんで した。  これはまた同じもののPAMです。全くこう いったほぼ正常に見えるような糸球体もありま した。  血管については,構築の乱れ等もなく,内膜 の肥厚についても明らかな変化はないように思 えました。  尿細管間質については,広範な尿細管の浮腫 状変化を認めまして,一部で上皮の脱落も認め ました。また,間質性は,皮質,髄質ともに, 単核細胞の浸潤を認め,一部には形質細胞の浸 潤を認めました。  こちらのほうが髄質の所見になります。  電子顕微鏡の所見ですが,幾つか基底膜内 に大小不同のdepositを認めました。あと,foot processのeffacementも認めております。こちら の赤印で示したものを何カ所かでこういった像 を認めました。  われわれのほうでの,腎生検の所見のまとめ としてはこちらのとおりになっておりまして, 免疫染色法については,今回提示しませんでし たが,有意な所見はなかったように思いました。  Streptococcus suisについては,あまりなじみ のない細菌ですので,ちょっと簡単にまとめま した。Streptococcus suisは,グラム陽性の連鎖 球菌で莢膜のpolysaccharideから35の抗原型に 分類されます。人間の感染症で問題になるのは, そのほとんどがtype2といわれる抗原型で,本 症例についても,国立感染症研究所でPCR法 で抗原型を同定し,type2であると判明してお ります。溶血パターンはα溶血で,Lancefield の抗原型ではGroup D,一部ではGroup Rとい うふうな表記も文献上認めますが,そのような 分類になっております。  東アジアなどの特にブタを食用として用いて いる国からの報告が多くて,スライドにあるよ うに,中国からの症例報告が圧倒的に多くを占 めております。また,2005年には四川で死者 38人を出すOutbreakの報告もあります。あま り日本にはなじみのない感染症ですので,今回 患者様にブタの出どころということについて聞 いたのですけれども,一番初めは「国産です」 ということだったのですが,その後,「そう言 わないとあまり売れないので」ということで ちょっと産地偽装を疑わせるような言動が聞か れました。詳細は不明です。  感染経路については,現在のところヒト-ヒ ト感染はあまり確認されていませんで,ブタ- ヒト感染,また,ブタ-ブタ感染での伝播が主 だということです。  臨床像としては,髄膜炎や敗血症をきたす例 が多くて,toxic shock syndromeの機序も報告さ れています。今回の症例でもそうだったのです が,この髄膜炎のときに難聴がほかの髄膜炎に 比べて出やすいというような報告も見られて います。ただ,toxic shockに関しては,ビルレ ンスファクターとか,どういったものがtoxic shockの原因になっているかということについ ては,明らかになっていません。  感受性に関しては,ペニシリンGでほとんど よい感受性が示されているのですが,一部の報 告ではペニシリンGの耐性株についても報告が されています。  腎臓との病理ということに関して,われわれ

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が探したものについてですが,2008年10月に publishされたものなのですけれども,こちら のほうで4例の中国での(★00:15:32 /一語不 明)の症例ですが,報告がありまして,このよ うな腎容量の増大ですとか,糸球体の毛細血管 内の微小血栓,尿細管の硝子様円柱,尿細管上 皮組織の浮腫状変化と委縮とか,好中球浸潤を 伴う多巣状の壊死変化といったような病理像が 認められたという報告があります。  以上を踏まえて,臨床経過と病理について のまとめです。今回,Streptococcus suisによる 敗血症と,それに伴うDIC,MOFが中心病態 と考えられ,一症状として腎不全をきたしたも のと考えられました。腎不全の遷移要素として は,敗血症自体の腎障害があったということと, 敗血症自体の腎障害というのは,髄質を含む広 範な間質の障害からちょっとそういったものが あったのではないかと考えました。  また,血栓様の像を認めたことからも,DIC の影響もあったのではないかと考えています。 また,尿細管の著しい節状の変化を認めたこ とから,尿細管壊死があったものと思われ, β2MGの上昇というのは,そういったものを 指示するものではないかと考えました。  硬化などの糸球体自体の変化が乏しかったこ とから,少なくとも光顕所見からは,今回の腎 不全の病態というのは,急性尿細管壊死がメー ンの病態ではないかと思っています。  ですが,電子顕微鏡で基底膜にdeposit様の 像もあったのですが,これが,これらの病態で 説明がつくかどうかということは,われわれの 中で結論が出せませんでした。それ以外にも, ほかの光顕所見でも,実を言うと,Streptococ-cus suis的な特有の変化といえるものがあるの かどうかということに関して,ご意見を賜れば と思います。  また経過中,各種抗生剤も使っていますので, そういった影響もあったのかどうかということ について,もし,病理の像から何かそういった ものを示唆するものがあれば,ぜひご意見をい ただければと思います。  以上,Streptococcus suisの腎生検について, 多少の文献的考察を交えて発表しました。ご教 示のほうをよろしくお願いします。 座長 ありがとうございました。ただ今のご発 表に対しまして,ご質問のほう,よろしくお願 いします。 重松 電顕ではimmune depositがずいぶん示さ れていましたけれども,IFでどれも有意に染 まっていないということは,immune depositで はないということですか。 西脇 IFのほうなのですけれども,一番初めに biopsyした組織から取ったものは糸球体が入っ ていなかったので,あれはパラフィン切片から 取りだしたものなのです。送らせていただい たと思うのですけれども,同じ糸球体の中で, IgGが染まっているものと染まっていないもの が同じ画面内に写ったりとか,ちょっとあれを もってどうかなというのがあったのと,その 後免疫染色を送らせていただいたのですが,確 かにあちらのほうでも僕らの目で見て,ちょっ とそういった有意なものがなかったので,一体 あれは何なのかなという疑問はずっと残ってし まったのです。それが疑問点として残ったとこ ろではあるのです。 座長 ほかにありますでしょうか。この方の場 合,感染の経路は,手か何かに傷があったため に感染したということなのでしょうか。 西脇 この症例は,国立感染症研究所のほうを とおして,感染症のほうで国内で発表もさせて いただいたのですが,この方は作業中に手袋を 使って作業されていたのです。それで,今まで 国立感染症研究所のほうとしては,suisの感染 防護策として手袋を使ってくださいということ だったにもかかわらず,この方は手袋を使って 感染をしてしまったので。所見上は,明らかに 手の傷だとか,そういった傷口がなかったので, 何が感染経路なのかというのは,ちょっとはっ きり。要するに進入部位がちょっとはっきりし なかったというのが今のところです。

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森田 藤が丘の森田と申します。病理の所見 を述べていただく際に参考になると思うので, ちょっとまとめでもう一度言っていただきたい のですけれども。6月24日に腎生検をしたとき には,臨床的にはまだ急性腎不全で,血清のク レアチニンがどれぐらいで,発症のどのステー ジにあるかということと,そのときの尿所見, 蛋白も含めてどんなふうだったか,もう一度教 えてください。 西脇 クレアチニンが2.8で,尿量としては, すみませんちょっと具体的な数値は忘れたので すけれども,尿所見は。 森田 多尿期に入っている? 西脇 ちょっとごめんなさい。はっきり覚えて いないのです。ただ,もう腎生検が行えるだけ の,全身状態としては腎生検を行うのに十分な 状態だったというふうに。 森田 蛋白尿はどのぐらい出ていましたか。 西脇 蛋白尿は,この方は経過中,蓄尿を3回し かしていなくて,この時点での蓄尿というのが取 れていないというのが実際のところなのです。 森田 沈渣成分で各種円柱はどんな感じですか。 西脇 この時点でということですか。 森田 はい。生検のときです。 西脇 顆粒円柱はもう出ていたか。すみません, ちょっとはっきり覚えていません。 森田 だから,ピークアウトした感じで。 西脇 そうです。 森田 どうもありがとうございました。 座長 ほかにありませんでしょうか。suisで感 染症になって,剖検例のペーパーをお示しにな られていますけれども,今まで腎生検をされた というのはあるのかどうか。 西脇 われわれが探した限りは,ちょっと見つ からなかったのですけれども,もしかしたら ちょっと見逃しているかもしれません。 座長 日本において,このsuisの感染症という ことに対しての報告例は。 西脇 今まで約10例あるかないかということ です。 座長 その,だいたい10例ぐらいの症例の経 過というのは,どういったものなのでしょうか。 西脇 10例の経過に関しては,敗血症という かたちで来たものもあれば,髄膜炎というかた ちで来たものもあるのですけれども,死亡例も あってというかたちです。  すみません,具体的に10例程度のもののう ち,どれぐらいが死亡例,死亡に至ったかとい うのはちょっと把握していないです。 座長 ほかにありますでしょうか。多くは septicshockという,rushに症状が進行するとい うtypeですか? 西脇 そうですね。ただ,今回,いわゆるA群 βみたいなtoxic shockみたいな経過とは違うの ではないのかな。そこまでrushにはきていない かなというふうに考えたのですけれど。 座長 よろしいでしょうか。そうしましたら病 理のほうに移させていただきますので,重松先 生お願いします。 重松 この症例は,結局,Sepsisに伴う腎病変 ということになると思うのです。それで,ちょっ とIFの所見とEMの所見がうまくかみ合わない ところがあるのですけれども。  わたしは,Sepsisに伴うIgA関連の腎炎とし て解釈してもおかしくはないのではないかと 思っています。 【スライド01】間質にかなりの細胞浸潤があり ます。糸球体にも,軽度か,中等度のmesan-giumの増殖がある腎炎像があります。それか ら,演者が言われているように尿細管の空胞変 性があります。ただ,tubular necrosisと言える ような変化は,わたしはこの症例ではそんなに 強いものではないと思います。 【スライド02】やはり,強い変化は,髄質にあ る間質の細胞浸潤です。一部は尿細管の中に 入っていますけれども,これはどうも血行由来 で何かimmune complexみたいなものが流れて きて起こっている間質炎としておかしくない変 化と思います。 【スライド03】一部は少し線維の増殖がありま

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すけれども,細胞浸潤部は,急性の変化になっ ています。 【スライド04】糸球体の病変は,この程度の増 殖性の腎炎です。crescentとかはありません。 そこに動脈がありますが,動脈もそれほど強い 変化はないし,ここに大きな静脈がありますが, 静脈炎様の変化もないということです。 【スライド05】やはり間質の病変が,確かに糸 球体病変などに比べて有意にひどくて,しかも それが臨床症状に相関しているということで, ここらへんを検索しました。ご覧のように好酸 球も結構出ていますし,monoclonalではなくて, polyclonalの細胞が浸潤しているというのが分 かります。 【スライド06】PAS染色陽性のglycogen richの 好中球が,周りに強く出ています。 【スライド07】どうしてこんなに基底膜につい ているのでしょうか。先ほどの尿路感染症と 違って,管壁にうんとついているのです。これ は何かのTBMの上に問題があって,それに対 する反応と病理の組織を読む目では見なければ いけないかと思います。一部はTBMが壊れて しまっているところもあります。 【スライド08】それで,PAS染色で見ているの ですが,確かにperitubular capillaritisなどがあっ て,細胞がそういう血管から出て,そしてこの 周りに集まっているということです。 【スライド09】パラフィン切片でIgAの染色が やってありました。これは非常に役に立ったの ですが,特にIgA positiveのplasma cellが結構周 りに出ているのです。そして管内にも出ている ものもあります。 【スライド10】こういうふうにマクロファージ も入っているでしょうけれども,IgAが陽性 の細胞があって,そして,基底膜の一部にこ ういうふうにdepositionが,こっちはちょっと granularになっていますが,depositionがあるの です。細胞がうんと集まっているところはそ んなに強くないのですけれども,要するに何か TBMに病変があって,それで細胞が集まって きているということが言えると思います。これ はIgAのついたタム・ホースファル蛋白だろう と思います。 【スライド11】それから糸球体のほうなのです が,diffuseの増殖性の腎炎というかたちを取っ ています。ここに空胞変性を起こした尿細管が ありますけれども,これは電解質の異常か。血 管運動性の尿細管病変というふうに言っていま すけれども,低カリウム血症などでよく起こっ てくる変化で,これ自身はまだ尿細管壊死の直 接の引き金にはならないと言われています。 【スライド12】PAS染色でmesangium増殖性の 腎炎であるというところです。 【スライド13】これもそうです。 【スライド14】immune depositと思われるのは, mesangiumにあるとわたしは思いました。 【スライド15】送られてきたIFの写真なのです けれども,これは何を染めたか書いてなかっ たのですけれども,こういうcastが染まってい ますから恐らくIgAだと思います。そうします と,これはmesangial patternでIgAが染まって いますから,それから血管極部も染まっていま す。これはIgAが陽性と見たほうがいいと思い ます。 【 ス ラ イ ド16】 後 の 標 本 は ど れ が ど れ だ か ちょっと分かりません。これもIgAがちょっと 入っているのかもしれないです。 【スライド17】これもちょっとコメントができ ません。 【スライド18】これなんかもちょっとIgAパター ンなのですが,ちょっと背景が強過ぎて分かり ません。 【スライド19】電顕を見ます。そうすると,電 顕にはmesangial depositが結構あります。 【スライド20】これも,mesangial depositが主で す。それから辺緑部のほうにもちょっとdeposit が見られます。 【スライド21】これは,subendothelialみたいに 見えますけれども,これはmesangial interposi-tionのあるところなので,間入部のmesangium

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基質に沈着したと言ってもいいと思います。こ こは,mesangial areaだと思いますけれども, 細かいdepositがあります。 【スライド22】ここにはmesangium間入があり まして,そこにdepositが見られます。これも mesangium間入です。 【スライド23】ここには少し上皮側に沈着物が 出ています。 【スライド24】nterpositionがあります。 【スライド25】間質の病変です。間質の病変は vacuolar changeがいっぱいありまして空胞変性 という状態なのですけれども,まだ核はちゃん としていますし,まだネクローゼではない。ただ, 細胞がずっと基底膜に接して集まっています。 【スライド26】そして,こういうところには depositがあるのです。恐らくこれはパラフィン 切片で見たIgAのdepositionですから,恐らく 糸球体と,間質の病変はともに感染によって起 こったimmune complex型のtubulitis,それから glomerulitisが起こったのだろうというふうに考 えました。  ということで,ちょっと演者の考え方と違っ ているのですけれども,わたし自身は,これは やはり感染症に伴うIgA関連の感染性腎炎と見 ていいと思いました。 座長 ありがとうございました。では,山口先 生,よろしくお願いします。 山口 ちょっと重松先生と似て非なるものかも しれませんけれど。 【スライド01】比較的全体がよく撮れているの ではないでしょうか。髄質のほうにもずいぶん 病変がありますので,糸球体の数はそれほど多 くないですが,つぶれた糸球体も特にないよう です。 【スライド02】こちらが皮質で,こちらが髄質 です。髄質にずいぶん炎症所見が強いです。先 ほど重松先生が出されて,非常に強調的に集簇 したように部分的には見られる場所もありま す。ただ,それ以外にも比較的ぱらぱらと,瀰 漫性にあります。基質のほうにも,糸球体は意 外とおとなしいのですが,炎症がずっと波及し て尿細管のこういうfoamy changeが散在性に見 られている。上のほうは少し線維化が絡んでき ています。 【スライド03】先ほどと同じですが,好酸球, 好中球,リンパ球,plasma cell。そういったも のが比較的局所に集簇して見られて,一部こう いうような尿細管内のcell debrisを構成してい るわけで,通常こういうcell debrisがある場合 は,ピエロを一つ考えないといけない所見だろ うと思います。  好中球もいますし,2核のplasma cellとか, 慢性,反応性の少しリンパ球形質細胞系の反応 も見られている。一部尿細管内に,こういうよ うに入り込んでいるところもあります。 【スライド04】1カ所だけなのですが,何だか 多核の巨細胞みたいなものが1カ所だけなので す。これは1カ所だけなので,なぜ出てきてし まったのかというのが問題になってしまうので すが,薬剤性の間質性腎炎でも肉芽腫ができる 場合もありますし,あるいは局所に何か処理で きないものがあったときに,ここに何か抜けた ようなものがありますけれども,そういったも のに対しての反応ということもあり得ると思い ます。  これは,髄質部の炎症層で,少しfragmentus になったapoptoticないろいろなcell debrisがた まっている場所です。炎症層の一部ということ で,1カ所だけなのでこれだけで意味付けるの はちょっと難しいように思います。 【スライド05】あと,確かに重松先生が言われ たのですが,このTBMにへばりつくように好 中球がくっついて見えるわけで,tubular質の場 合は,もちろんこういうように中に入ってここ に居座るというのが一般的ですが,この場合は やはり,TBMに何か所見がないとこういう変 化は出てこない。広い意味での尿細管炎という ふうにとらえられる所見だろうと思います。こ のままこちら側は,どちらかというと,尿細管 の中にリンパ球が入り込んで,尿細管炎的な反

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応が見られています。  ここはちょっとつぶれてしまって,基底膜が はっきりしなくなっていますけれども,ちょっ とこうグラニュラー(★00:36:36 /一語不明) ですかね,組織球様の細胞がちょっと混ざって きている印象です。 【スライド06】そういうような感じの変化です。 capillaritisは,この場所はよく出てくるので, 非特異的な変化だろうと思います。 【スライド07】一部,ヘモジデリンか,リポフ シン様のものが尿細管上皮内にあって,plas-ma,好中球,リンパ球系の集まり,エオジノが ちょっと混ざっている。尿細管上皮障害もある ということだと思います。 【スライド08】際立った変化は,このサイク ロスポリンとか何かで見るような,いわゆる foamyな, 非 常 にuniformなfoamy chainで, 薬 剤による障害でもおかしくはないと思います。 通常のATNに伴う(★00:37:42 /一語不明,リ ジネアティブ)な変化ともちょっと言えないよ うに思いますので,ARFがあったのが,間質 炎と,尿細管上皮障害と両方が相まって少しこ ういうところは扁平化していますので,やはり ATM様の所見もこのへんを見ると,ちょっと否 定はできないかなというふうには思います。 【スライド09】銀で見ますと,糸球体は特に…。 少し全体に大きくなっているというのが印象的 だったです。capillaryが非常に細かくなってい るのですが,大きく糸球体の展開が広がる。軽 いend capillaryというか,何か糸球体がglowす る理由があったのだろうと思います。 【スライド10】それで見ていますと,血栓は ちょっと僕もはっきりしないように思います。 少し好中球様の外来性の細胞が,場所によって はちょっと入り込んできているのかなという感 じなのですが,PASを見ると,ほんのわずかな のです。あまり目立たないです。  mesangiumの反応は,ほとんどあまり際立っ ていないように思います。無理やり言えば,糸 球体が少し育って,管内の増殖がちょっとある のかなという印象だったです。 【スライド11】糸球体がだいぶ大きいです。そ れから,capillaryが非常に細かくなって,増え ているということで,外来性の細胞はパラパラ にしかないです。 【スライド12】この動脈には特になくて,尿細 管間質に非常に強い変化があります。 【スライド】電子顕微鏡なのですが,どちらか というと僕は,こういうところも確かにmesan-gial matrixのあれなのですが,intramembranous, あるいは内皮下にちょっと近い側のdepositが 主体で,mesangiumの反応は比較的軽いように 思います。  このように,どちらかというと,感染に絡ん だintramembranous depositというふうに取った ほうが,こういうちょっと境界不明瞭な,amor-phousなdensityがあるものというのは,よく感 染に伴って出てくる所見のように思います。 【スライド13】これはhumpかどうか分かりま せんけれども,ちょっとhump-likeなものです。 それから境界がやや不明瞭な,内皮側にちょっ と 寄 っ て。interpositionは 否 定 は で き な い よ うに思いますが,どちらかというと,本来の para mesangiumの領域よりも,膜の基底膜内に mesangium matrix内には一部それ様のdensityの ものがありますけれども,ぼわっとした感じの ものが多いように思います。こういうようなも の。intramembranous,どちらかというと感染に 絡んだ,いわゆる感染関連の腎炎で見るような depositのような気がします。 【スライド14】同じような。これは比較的はっ きりしていますけれども,こういうような,少 し内皮下にあるようなやつ。intramembranous か,あるいは内皮下にちょっとあるぐらいの感 じで,ここはちょっと強いかもしれないです。 内皮細胞のちょっと腫大が見られています。 【スライド15】こういう感じで,intramembra-nous depositで,一部内側に少し寄っているか なという感じのものであります。 【スライド16】ちょっとTBMは気が付かなかっ

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たのですが,foamy changeのこちらの変化です。 光顕で見られましたような,いわゆるvacuolar が異常に増えている状態ですので,やはり何か toxicな尿細管上皮障害といったものも,一応, サイクロスポリンとか,カルチニンインヒビ ターでもこういう同じような,必ずしもERで はなくて,こういうようなvacuolarがたくさん 増えて見られることがありますので,何かやは りtoxicな変化も考えないといけないだろうと 思います。 【スライド17】IFはちょっと分からなかったの ですが,普通のあれではあまり特異的な沈着は ないように思いました。 【スライド18】そういうようなことで,感染に 絡 ん だtubular-interstitialなnephritisで, も し か したらcell debrisもありますので,少しピエロ 的なものもあるので,intramembranous subendo depositを中心に考えると,感染に絡んだ軽い endocapillaryな glomerulonephritis で,tubular vaculizationが あ っ て, こ れ が も し か し た ら toxicな変化かもしれないということだろうと 思います。 【スライド19】たまたま文献が同じになってし まいましたけれども,ARFの程度が非常に強 いというようなことで,これ以外の文献で間質 性腎炎がきたという文献がほかの文献にありま したので,感染に絡んだ急性の尿細管間質炎と いうことも一つ考える必要があるのではないか というふうに思います。  以上です。 座長 ありがとうございました。今までの病理 所見を踏まえて何かご質問ありますでしょうか。 鎌田 この症例を記憶にとどめるにあたって, 演者に確認をしたいのですけれど。先ほど重松 先生が「これはIgAじゃないか」とおっしゃっ たIFは,IgAでよろしいのでしょうか。 西脇 どれがどれだかというお話だったと思い ますけれども,一応ファイルに名前がついてい たのでそれで分かるかなと思って取ってしまっ たのですが,すみません。  ちょっと僕も,IFに関してはああやってばら つきがあったので,あまり記憶にとどめていな いというのが今の実情なのです。ちょっとすみ ません,確認を。 鎌田 この症例を整理すると,感染症糸球体腎 炎で,小山先生が報告したMRSA腎炎,ない しはsuper antigen nephritisというメサンギウム にIgA沈着が見られるものに近いと思います。 HSP腎炎でも原因として感染が挙げられていま すが,同様にメサンギウムにIgAは沈着が見ら れます。HSPの光顕所見は一部がMPGNの形 を取ります。本例の光顕所見はHSP腎炎のMP-GNtypeに類似しています。Streptococcus suis感 染症でも,super antigen nephritis様の病変を取 ると記憶にとどめたいので,あのIFがIgAであ るか否かというのは非常に重要な点となります ので確認してお教えください。 西脇 分かりました。すみません。 座長 ありがとうございました。次の演題に移 させていただきたいと思います。 西脇 ありがとうございます。

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