ファイトレメディエーションによる都市河川水中の内分泌攪乱化学物質の除去に関する研究
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(2) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,201-210,2010.12. 表-1 沈水植物に関する実験条件(CaseA) 表面洗浄. 細断・粉砕 メタノール 添加 超音波抽出 10min. 残留物. 超音波抽出 10min 遠心分離 3000rpm 20min. Amount of. Water temperature. plant [ g-wet]. [°C]. CaseA0 CaseA1. blank 5. 25 25. CaseA2. 5. 17. CaseA3. 5. 10. 表-2 付着藻類に関する実験条件(CaseB) 遠心分離 3000rpm 20min. 上澄み液. 上澄み液. 分析. 図-1. Amount of periphyton [g-wet]. Water temperature [°C]. CaseB0. blank. CaseB1 CaseB2. 2 5. CaseB3. 10. CaseB4. 10. CaseB5. 10. 25 25 25 25 20 15. 植物試料の前処理法. 樹脂やエポキシ樹脂に使用され,その有害性が指摘され ているビスフェノール A(以下 BPA)を選定した 8), 9), 10).ま た,沈水植物として日本各地の水域に群生しており,都 市河川のような汚染の進んでいる水域でも生育すること のできるオオカナダモ(学名: Egeria densa) を使用した. また,付着藻類としては典型的な都市河川であり,東京 都の世田谷区や大田区を流れる丸子川から採取した藻類 (緑藻網 Oocystis sp.が優占)を用いた. 本実験では,BPA,E2 を溶質とする水溶液((株) 関東化学,BPA,E2 標準品)が入ったビーカ内に沈水 植物および付着藻類を添加し,BPA,E2 濃度の時間変 化を 120 時間後まで調べた.なお,濃度計測の前にはビ ーカー内の攪拌を行った.水溶液試料の分析には操作が 簡便な ELISA 法((株)武田薬品工業,E2,BPA ELISA キット)を使用した.計測の測定誤差は 5%程度 であった.また,沈水植物を用いた実験では植物中の BPA,E2 含有量の時間変化の計測を行った.ここでは, 120 時間に 7 回の含有量の測定を行うため,7 つの独立 した系を用いた.植物中の BPA,E2 含有量の計測では, 図-1 に示す前処理を行った上で ELISA 法を用いた.植 物試料に関しては ELISA 法により得られた値との比較 の為,同試料を用いて環境ホルモン物質調査暫定マニュ アルに記載の GC-MS 法による分析を同時に行った 11). それらの分析値の差は最大で 15%程度であった.このこ とから本研究において,ELISA 法により得られた植物試 料の分析値を用いて,植物体内における E2 と BPA の挙 動を把握する事が可能であるとした.植物試料であるオ オカナダモは実験で使用する前に純水に 7 日間以上浸し た.その後,実験開始前にオオカナダモ体内に含まれる E2 及び BPA の濃度を GC-MS 法により分析したところ,. 202. それらの物質が検出されなかった.そのため本実験で使 用したオオカナダモは,体内に E2 及び BPA を含まない 試料とみなし実験を行った. BPA,E2 の初期濃度は,100μg/L として,沈水植物の 実験では 1 リットルの水溶液内に 5g(湿潤重量)のオ オカナダモを,付着藻類の実験では 0.5 リットルの水溶 液内に 2~10g(湿潤重量)の藻類をビーカー内に投入し た.ビーカーは水浴による恒温槽内に入れ,温度を一定 に保った.沈水植物および藻類の光合成活動に必要な日 射を与えるために,恒温槽の約 1m 上方にセラミックメ タルハライドランプを設置した.白熱灯が与える照度は 約 15klux(ビーカー水表面での値)であり,光合成を行 うのに十分な光量であると判断される 12),13). 沈水植物に関する実験(CaseA)では水温を変化させ て 4 ケースの実験を行い,付着藻類に関する実験 (CaseB)では水温および投入湿潤重量を変化させて 6 ケースの実験を行った.それぞれの実験条件を表-1,2 に示す. (2). 沈水植物に関する実験結果(CaseA) 図-2にCaseA0およびCaseA1におけるBPA,E2濃度の時 系列変化を示す.オオカナダモを投入していないCase A0においてはBPA,E2濃度はほとんど変化がないのに. 対して,CaseA1においては濃度の顕著な減少がみられる. また,図-3にCaseA1におけるオオカナダモ中のBPA,E2 含有量の時系列変化を示す.オオカナダモ体内の含有量 は最初の12時間程度で急激に上昇し,その後は緩やかに 減少している.これはオオカナダモの体内でのBPAおよ びE2の分解が行われたためと考えられる.これらの結 果から沈水植物にはEDCsの除去能力があることが明ら かとなった..
(3) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,201-210,2010.12. CaseA0. (b) E2. CaseA1. CaseA0. 120. 120. 100. 100. Concentration of E2 [μg/L]. Concentration of BPA [μg/L]. (a) BPA. 80 60 40 20. 80 60 40 20. 0. 0. 0. 30. 60 90 Time [hour]. 120. 150. 0. 30. 60 90 Time [hour]. 120. 150. 溶液中の BPA,E2 濃度の時系列変化(CaseA0,CaseA1). 図-2. (a) BPA. (b) E2. 1000. 1000. 800. 800. Content of E2 [μg/kg]. Content of BPA [μg/kg]. CaseA1. 600 400 200. 600 400 200. 0. 0 0. 30. 60. 90. 120. 150. 0. 30. Time [hour]. 60. 90. 120. 150. Time [hour]. 図-3 オオカナダモ中の BPA,E2 含有量の時系列変化(CaseA1) (エラーバーは 3 回の測定の標準偏差). (a) BPA. (b) E2 120 CaseA1 (25℃). 100 80. CaseA2 (17℃). 60. CaseA3 (10℃). 40 20. Concentration of E2 [μg/L]. Concentration of BPA [μg/L]. 120. 0. 100. CaseA1 (25℃). 80. CaseA2 (17℃). 60. CaseA3 (10℃). 40 20 0. 0. 20. 40. 60. 80. 0. Time [hour]. 20. 40 60 Time [hour]. 80. 図-4 溶液中の BPA,E2 濃度の時系列変化(CaseA0~3). 図-4 に水温 25°C,17°C,10°C のケースでの溶液中の BPA,E2 濃度の時系列変化の比較を示す.沈水植物の EDCs 除去能力は水温が上がるほど高くなることがわか. る.オオカナダモは熱帯の南アメリカ原産の植物であり, 28°C 程度までが生育適温であるため本実験における温度 条件(10°C~25°C)では温度が上がるほど活性が高くな. 203.
(4) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,201-210,2010.12. (a) BPA. (b) E2. 120. 100. CaseB3 (25°C). 80. CaseB4 (20°C). 60 40. CaseB5 (15°C). 20. Concentration of E2 [μg/L]. Concentration of BPA [μg/L]. 120. 100. CaseB3 (25°C). 80. CaseB4 (20°C). 60 40. CaseB5 (15°C). 20. 0. 0 0. 10. 20 Time [hour]. 30. 0. 10. 20 Time [hour]. 30. 図-5 溶液中の BPA,E2 濃度の時系列変化(CaseB3~4). (a) BPA. 100 Concentration of BPA [μg/L]. (b) E2. 120. CaseB0 (Blank). 80. CaseB1 (2g). 60 40. CaseB2 (5g). 20. CaseB3 (10g). 100. Concentration of E2 [μg/L]. 120. CaseB0 (Blank). 80. CaseB1 (2g). 60 40. CaseB2 (5g). 20. CaseB3 (10g). 0. 0 0. 10. 20 Time [hour]. 0. 30. 10. 20 Time [hour]. 30. 図-6 溶液中の BPA,E2 濃度の時系列変化(CaseB0~3). るように一次反応であると仮定し,以下の式 (1) を導入 した.. ったと考えられる. (3). 付着藻類に関する実験結果(CaseB) 図-5に水温25°C,15°C,10°CのケースでのBPA,E2濃 度の時系列変化の比較を示す.付着藻類も沈水植物と同 様に水温が高くなるほどBPA,E2濃度の減少が大きくな ることが分かる.E2に関しては沈水植物に比べて付着 藻類による除去率が高く,24時間後にはすべてのケース において2割以下にまで濃度が低下している.また,図6に付着藻類湿潤重量が0g, 2g, 5g, 10gのケースでのBPA, E2濃度の時系列変化を示す.水溶液中の付着藻類量が. dC = − kC dt. (1). ここに,C:水溶液中の BPA,E2 濃度(μg/L), k:除去 速度係数(1/hr),t :時間(hr)である.式(1)より, C = C0 exp(−kt ). (2). が導かれる.ここに,C0:BPA,E2 の初期濃度(μg/L)で ある. 式(2)を残差二乗和が最小になるように実験結果に対 してフィッティングし,各ケースについて除去速度係数 kを算定した.図-2,6において,沈水植物および付着藻. 多いほど,BPAおよびE2の除去能力が高くなることが分 かる.. 類を投入しない場合でもEDCsの除去が確認されたもの の,その濃度の低下は微量であり,低下後に再び濃度が 増加する傾向が見られる.したがって,本研究では沈水 植物および付着藻類を投入しない場合にはEDCsの濃度 は低下しないと仮定し,除去速度係数の算定を行った.. (4). 除去速度の算定 実験結果に基づいて,沈水植物および付着藻類の EDCs を除去する能力の定式化を行った. 実験で見られた EDCs の除去過程は図-4,6 で示唆され. 204.
(5) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,201-210,2010.12. 表-3 沈水植物による EDCs 除去速度係数 k(1/hr). 表-5 最大除去速度係数 kmax(1/hr)および温度影響定数 β. (CaseA). Plant. BPA CaseA1 (25℃) CaseA2 (17℃) CaseA3 (10℃). E2 -2. -2. 1.05×10. 1.04×10. -3. -3. 5.08×10. -3. 2.44×10. 3.94×10. Periphyton. BPA. E2. BPA. E2. ß. 1.08. 1.10. 1.05. 1.05. k max. 2.77×10. -8. -8. -8. 1.99×10. 6.61×10. -3. 4.36×10. 表-4 付着藻類による EDCs 除去速度係数 k(1/hr). 多摩川. (CaseB). 網島街道. 東急東横線. BPA CaseB1 (25℃,2g) CaseB2 (25℃,5g) CaseB3 (25℃,10g). E2 -3. 3.79×10. -2. 7.51×10. -2. -1. 1.48×10. -2. 1.12×10. -2. 9.52×10. 4.23×10 3.30×10. CaseB5 (15℃,10g). 2.68×10. 第 三 京 浜. -2. 1.76×10. 武蔵小杉駅. 府中街道. -2. 8.33×10. CaseB4 (20℃,10g). -7. 2.31×10. -1. 二ヶ領用水 JR南武線. -2. 0.16 BPA. 0.14. E2. 0.12. 図-8 観測地. k (1/hr). 0.1. (a) February. Plant area. Stn.1 1. 0.08. 80m. 0.06. Stn.3 3. Stn.2 2. 100m. 45m. Flow. 0.04. (b) May 1. 0.02. 2. 80m. Stn.4 4. 8.5m. 3 100m. 4 45m. 0 0. 5. 10. 15. 20. 25. (c) August. Amount of periphyton per unit volume (g/L. 80m. 図-7 溶液中単位体積あたりの付着藻類の重量と除去速度. 2.2m (エビモ). 9.1m. 100m. 45m. の関係 25.3m. 表-3,4に各ケースの除去速度係数kを示す.一般に河川 における有機物の除去速度定数が0.004~0.04(1/hr)の範 囲であり14),本実験の結果はほぼこの範囲内である.沈 水植物,付着藻類ともに水温が高くなるにつれて除去速 度が高くなることがわかる.さらに,溶液中単位体積あ たりの付着藻類の重量と除去速度係数の関係を図-7に示 す.この結果から単位体積あたりの付着藻類の重量と除 去速度には線形関係があることが分かる.実験結果より, EDCsの除去は植物の生理活動に伴って行われると考え られるため,EDCsの除去速度係数は植物プランクトン の呼吸速度を参考に15),温度および沈水植物・付着藻類 の重量の関数として以下のように表わされる.. 40.7m. 16.3m. 図-9 沈水植物の繁茂状況. k = αk max (β ). T. (3). ここに,kmax:沈水植物・付着藻類による最大除去速度 係数(1/hr),T:水温(°C),α:溶液中の単位体積あ たりのEDCs量に対する沈水植物・付着藻類量の割合, β:沈水植物・付着藻類のEDCs除去速度(活性)に対す る温度の影響を表す温度影響係数である.表-3,4の CaseA1~3およびCaseB3~5から得られた除去速度と温度の 関係に式(3)をフィッティングし,最大除去速度係数kmax および定数βを算出した(表-5).最大除去速度係数は BPA,E2ともに付着藻類の方が高く,特に付着藻類のE2. 205.
(6) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,201-210,2010.12. 温・水理環境を示す.また,河川水中の EDCs 濃度の日 変化を確認するために,Stn.3 において 2006 年 5 月 31 日 0:00~24:00 にかけて 4 時間おきに採水を行った.なお, 採水した河川水は実験室に持ち帰り,BPA および E2 濃 度を測定した.さらに,Stn.3 において河川水の採取と 同時にオオカナダモを採取し,体内の BPA,E2 含有量 を測定することにより,実河川に群生しているオオカナ ダモの EDCs 吸収・分解状況を調べた.また,室内実験 で使用した体内に BPA 及び E2 を含まないオオカナダモ を 2 房用意し,Stn.3 において水路内に静置した.静置し て 1 日経過後と 7 日経過後の正午にそれぞれ 1 房ずつ回 収して,オオカナダモ体内の BPA,E2 含有量を測定し た.. の除去能力が高いことが分かった.. 3. 現地観測 (1) 観測概要 現地観測は神奈川県川崎市を流れる二ヶ領用水を対象 として実施した(図-8).二ヶ領用水は多摩川を水源と し,川崎市多摩区(上河原堰堤)から幸区までを流れる全 長 32km の用水路である.ニヶ領用水内のオオカナダモ の繁茂域を含む約 225m の区間を調査対象領域として, 2006 年 2,5,8 月に現地調査を行った.それぞれの月に おけるオオカナダモの繁茂状況を図-9 に示す. 現地調査では図-9 中の Stn.1~4 において,採水および 水温・流速計測を行った.採水は生活排水等による河川 への汚濁負荷が高くなると考えられる日中(13:00~ 14:00)の間に行った.表-6 に各月の Stn.1~4 における水. (2) 観測結果及び考察 図-10 に Stn.3 における 2006 年 5 月 31 日 0:00~24:00 に かけての BPA,E2 濃度の日変化を示す.BPA,E2 とも. 表-6 観測対象域の水温・水理環境. August. (a) BPA 400. wild one day after placement seven day after placement. 250. 4 BPA. 200. 3. 150 2 100 1. 50 0. 0. 0:00. 4:00. 8:00 12:00 16:00 20:00 0:00 Time. 図-10 BPA,E2 濃度の日変化. (b) E2 1.2. wild one day after placement seven day after placement. 300. 200. 100. 0. 0.8. 0.4. 0 February. May. August. February. May. August. 図-11 自生,設置後 1日経過と 7 日経過後のオオカナダモ中の BPA,E2 含有量. 206. E2. Concentration of E2 [ng/L]. Velocity [m/s] 0.275 0.324 0.353 0.336 0.368 0.388 0.454 0.51 0.269 0.216 0.378 0.304. Concentration of BPA [ng/L]. Depth [m] 0.29 0.275 0.255 0.275 0.35 0.37 0.38 0.32 0.345 0.4 0.39 0.27. Content of E2 [μg/kg]. May. Content of BPA [μg/kg]. February. Stn.1 Stn.2 Stn.3 Stn.4 Stn.1 Stn.2 Stn.3 Stn.4 Stn.1 Stn.2 Stn.3 Stn.4. Water temperature [°C] 10 10 10 10.5 19 19 19 19 24 24 24 24.
(7) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,201-210,2010.12. 700. February. Stn.1. May. 600. 18. Stn.3. Stn.2. (b) E2. August Stn.4. Concentration of E2 (ng/L). Concentration of BPA (ng/L). (a) BPA. 500 400 300 200 100. February. Stn.1. August. Stn.2. 15 12 9 Stn.3. 6. Stn.4. 3 0. 0 0. 50. 100. 150. 200. 0. 250. 50. 100. Distance from Stn.1 (m). 図-12. 150. 200. 250. Distance from Stn.1 (m). Stn.1-4 間の BPA,E2濃度の流下方向への変化. (a) BPA. (b) E2. 0.0008. 0.0008. 0.0006. 0.0006 r ([1/s). r ([1/s). May. 0.0004. 0.0002. 0.0004. 0.0002. 0. 0 February. May. 図-13. August. February. May. August. 2,5,8 月の BPA,E2 濃度の減少速度 r. に日変化が大きく,12 時前後に濃度がピークとなって いる.これは日中に EDCs を含んだ生活排水が多量に流 入するためであると考えられる. また,図-11 に 2,5,8 月の各月での自生,設置後 1 日経過と 7 日経過後のオオカナダモ中の BPA,E2 含有 量を示す.すべての月において,設置して 1 日後のオオ カナダモの BPA,E2 含有量は設置して 7 日後のそれら に比較して大きい値を示した.河川水の EDCs 濃度の変 化が影響している可能性は完全には否定できないが,短 期間に EDCs 濃度が大きく変化するとは考えられないこ とから,これは実河川においても EDCs の吸収・分解が 起っているためと考えるのが自然である.また,自生の オオカナダモの BPA,E2 含有量は 8 月を除いては設置 して 1 日後のものより低い値を示している.8 月の自生 のオオカナダモの BPA,E2 含有量が設置 1 日後のオオ カナダモよりも多いという結果は,8 月は水温が高く,. オオカナダモの代謝が活発であるため,EDCs の分解も 促進されるという推論に反するものである.したがって, 吸収した EDCs の分解作用に関しては今後検討が必要で あると考えられる. 図-12 に 2006 年 2,5,8 月における Stn.1~4 間の BPA, E2 濃度の流下方向変化を示す.どの月においても Stn.1~4 間で流下に従って BPA,E2 濃度が減少する傾向 を示した.水温が高い 8 月において流下に伴う濃度の低 下が顕著であり,特にオオカナダモが広範囲に繁茂して いた Stn.2 と Stn.3 の間では急激な濃度の減少が見られる. ここで,流下に伴う濃度の減少を定量的に評価するた めに以下の式に示す減少速度 r(1/s)を導入した. r=. (C1 − C4 ) /C 1. (4). 3. ∑t i =1. i. ここで,C1, C4:Stn.1,4 のBPA およびE2 の濃度(ng/L),. 207.
(8) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,201-210,2010.12 表-7 計算に用いた沈水植物および付着藻類の現存量. Inflow. Outflow. Removal Periphyton. Amount of. h. Amount of 2. Plant dx. 2. February May. plant [kg/m ] 1.8 2.4. periphyton [kg/m ] 0.02 0.03. August. 20.8. 0.05. 図-14 モデル河川. (a) BPA. (b) E2. February (calculation) May (calculation) August (calculation) February (observation) May(observation) August(observation). 700. February (calculation) May (calculation) August (calculation) February (observation) May(observation) August(observation). 18 16. 600 500. Concetrarion of E2 (ng/L). Concetrarion of BPA (ng/L). 14. 400 300 200. 12 10 8 6 4. 100. 2. 0. 0 0. 50. 100. 150. 200. 250. 0. 50. Distance from Stn.1 (m). 100. 150. 200. 250. Distance from Stn.1 (m). 図-15 計算された BPA,E2濃度の流下方向への変化と観測値の比較. ∂C ∂C ∂ 2C (5) + hu = hD 2 − hkC ∂t ∂x ∂x ここで,C :河川水中の BPA,E2 濃度(ng/L),t:時間 (s),h:水深(m),u:流下方向の断面平均流速(m/s),x: 流下方向の距離(m),D:縦分散係数(m2/s),k:沈水植 物・付着藻類による EDCs の除去速度(1/s)である.除去 速度は実験から得られた式(3)を用いて算定した. 式(5)において,縦分散係数 D が十分小さく無視で き,かつ定常状態であると仮定すると,以下の式(6)が 得られる. ⎛ k ⎞ (6) C ( x) = C 0 exp⎜ − x ⎟ ⎝ u ⎠ ここで,C0 :対象区間の最上流点(Stn.1)での BPA, E2 濃度である. 式(6)を用いて現地観測を行った二ヶ領用水の Stn.1~4. ti:地点i とi+1の間の流下時間(s)である.図-13に各月の BPA,E2 濃度の減少速度rの比較を示す.減少速度は水. h. 温が高く,沈水植物が広域に繁茂する夏季に大きな値を とることがわかる.. 4. 都市河川における水中の内分泌攪乱化学物質 の除去 室内実験および現地観測結果を基に,都市河川内での 流下に伴う河川水中の EDCs の除去について検討した. ここでは,図-14 に示すような水理条件や河床上の付 着生物量が流下方向に一定であるモデル河川の dx 区間 について考えると,そこでの物質収支は以下の式(5)に よって表わされる.. 208.
(9) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,201-210,2010.12. 区間を対象として流下に伴う BPA ,E2 の濃度の変化の 予測を行った.計算は現地観測から得られた水温・水理 条件(表-6)および沈水植物・付着藻類の繁茂状況(表 -7)を用いて行った.ここでは,オオカナダモの繁茂域 以外は付着藻類の繁茂域として(図-9),付着藻類の現 存量は水理・水質環境の酷似している丸子川における観 測値を参考に決定した.オオカナダモに関しては現地で 計測した現存量を計算に用いた. 図-15 に予測された流下に伴う BPA ,E2 濃度の変化 と観測値の比較を示す.8 月に関しては Stn.1 から 55~ 120m の区間に高密度に繁茂したオオカナダモの影響が 強く,計算では観測地よりも急激な BPA ,E2 濃度の減 少が見られる.これは現地の一点で調査したオオカナダ モの密度を約 55m の繁茂域全体に適用したためである と考えられる(実際には 20.8kg/m2 という高密度で存在 していた領域は限られていたと考えられる).また,実 験から得らた除去速度は,植物体内に EDCs 蓄積量がな い状態で実験を開始していることや実河川では懸濁物質 の影響で照度の低下が考えられることから,過大評価さ れている可能性も考えられる.次に,2,5 月に関して は,E2 濃度は計算値と観測値の良好な一致が見られ, BPA 濃度に関しては観測値の方が流下に伴う減少が顕 著であるものの,計算値と観測値ともに流下方向微減す る傾向は一致している.これらの結果から,本研究で得 られた BPA,E2 の除去速度の定式化は実河川への適用 に際して更なる検討が必要であるものの,実河川におい ても沈水植物や付着藻類による EDCs の除去が期待でき ることが示唆された.. 究代表者:池田駿介)の支援を受けたものである.記し て謝意を表する. 参考文献 1). 嶋津暉之,和波一夫,関善行,大原拓也:都内水域の環 境ホルモン問題に関する研究(その 2),東京都環境科学 研究所年報,pp.63-71,2003.. 2). 森川弘道,高橋美佐,川村義史:PCP 及び PAH を含む土 壌のファイトレメディエーション,環境バイオテクノロ ジー学会誌,1巻,1 号,pp.10-13,2001.. 3). Lai,. K.M.,. Scrimshaw,. Biotransformation Estrogens. by. and. M.D.. and. Lester,. Bioconcentration. Chlorella. vulgaris,. of. J.N.: Steroid. Applied. and. Environmental Microbiology, Vol.68, No.2, pp.859-864, 2002. 4). Nakajima, N., Teramoto, H., Kasai, F., Sano, T., Tamaoki, M., Aono, M., Kubo, A., Kamada, H. and Azumi, Y.: Glycosylation of bisphenol A by freshwater microalgae, Chemosphere, Vol.69, Issue 6, pp.934-941, 2007.. 5). 任勇翔,中野和典,大堀雅人,千葉信男,野村宗弘,西 村修:養豚場排水処理施設におけるエストロゲンの季節 変動と低減化処理の実態,水環境学会誌,Vol.31,No.3, pp.155-161,2008.. 6). 斉藤貴:水生植物による内分泌攪乱物質のファイトレメ ディエーション,ECO INDUSTRY,Vol.7,pp.5-13,2002.. 7). 大内良二,関根正人:環境ホルモン物質の河道内貯留に 関する現地観測,土木学会年次講演集,Vol.60,2-245, 2005.. 8). Lahnsteiner, F., Berger, B., Kletzl, M. and Weismann, T.:. 5. 結論. Effect of 17β-estradiol on gamete quality and maturation. 都市河川生態系の主役である沈水植物や付着藻類は河 川水中に含まれる EDCs を吸収・分解する能力があるこ とを室内実験により確認し,EDCs の除去速度と温度・ 生物量の関係を定式化した.また,沈水植物や付着藻類 の繁茂が見られる神奈川県川崎市二ヶ領用水において, 流下に伴い EDCs 濃度が減少していることを現地観測に よって確認した.実験結果から得られた沈水植物や付着 藻類の EDCs の除去速度を用いて再現計算を行ったとこ ろ,この流下に伴う EDCs 濃度の減少傾向を再現可能で あり,ファイトレメディエーションによる EDCs の除去 が期待できることが示唆された.. Issue 2, pp.233-246, 2006.. in two salmonid species, Aquatic Toxicology, Vol.79, 9). 多田満,軽部智美,小神野豊:ヌカエビを用いた 17β-エ ストラジオールの繁殖影響,水環境学会誌,Vol.26, No.11,pp.707-712,2003.. 10). 田畑彰久,亀井翼,眞柄泰基,渡辺哲理,宮本信一,大 西悠太,伊藤光明:ヒメダカビテロジェニンを指標とし たノニルフェノール,ビスフェノール A,17β-エストラ ジオールおよびこれらの混合曝露の影響,水環境学会誌, Vol.26,No.10,pp.671-676,2003.. 11). 環境庁水質保全局水質管理課:外因性内分泌攪乱化学物 質調査暫定マニュアル(水生生物),1998.. 12). 謝辞:本研究は日本学術振興会科学研究費補助金萌芽研 究(課題番号:17656157,研究代表者:池田駿介)および 財団法人とうきゅう環境浄化財団2005年度多摩川および その流域の環境浄化に関する調査・試験研究助成金(研. 戸田祐嗣,赤松良久,池田駿介:平坦河床上の藻類の増 殖と剥離に関する研究,水工学論文集,Vol.45,pp.11111115,2001.. 13). 矢島久美子:コカナダモの生育条件に関する研究,第 2 報:光合成速度に及ぼす照度,温度の影響,群馬県衛生. 209.
(10) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,201-210,2010.12 公害研究所年報,通号 19,pp.109-113,1987.. Sacramento-San Joaquin delta, Advances in Chemistry,. 14). 宗宮功:自然の浄化機構,pp.91,技報堂出版, 1990.. series 106, pp.131-180, 1971.. 15). Ditoro, D.M., O'Conor, D.J. and Thomann, R.V.: A (2009. 7. 28 受付). Dynamic model of phytoplankton population in the. PHYTOREMEDIATION OF ENDOCRINE DISRUPTING CHEMICALS IN URBAN RIVER WATER Yoshihisa AKAMATSU, Syunsuke IKEDA, Seiichiro KANAI, Syuichi OSAWA and Kazutoshi OSAWA In recent years, a small amount of endocrine disrupting chemicals (EDCs) were found in urban river water despite of EDCs elimination through sewage farm. Phytoremediation using quatic organism is one of remarkable methods to remove such a very small quantity of EDCs. In this study, the removal rate of EDCs such as 17β-estraziol (E2) and bisphenol A (BPA) by aquatic plant and periphyton is determined from laboratory experiments as a function of water temperature and weight of the quatic organism. Field observations revealed that concentrations of BPA and E2 decrease with flowing down in Nikaryo canal, Tokyo, Japan, where the aquatic plant and periphyton grow thickly. The prediction model using the experimental result on the removal rate can explain the observed decrease. These results suggested that the quatic organism in urban river ecosystem has a self-purification capacity for EDCs.. 210.
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