博士(地球環境科学)大宮可容子
学位論文題名
TFT −LCD 製造プロセスにおけるアッシング技術の研究 学位論文内容の要旨
ノート型パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサの普及に伴い、カラーのthin film transistor‑liquid crystal display (TFT‑LCD)の生産量が年々増加している。TFT―LC Dは同じ表示デバイスのブラウン管(CRT)に比較して消費電カが小さいことから、一見、
省資源に寄与しているように思われる。しかし、生産に必要な電力、水、薬品の使用量は 非常に大きく、環境的な見地からこれらを削減していくことが必要である。このため、レ ジス ト剥 離工 程の 薬液 使用 量の 削減 を目的とし、TFT―LCD製造のためのレジストア ッシング技術について研究した。
アッシング技術は半導体製造工程では既に使われているが、この方法をそのまま液晶製 造プロセスに当てはめることは難しい。なぜなら、O半導体に比べ大形の基板を扱うため 専用の装置がない、◎基板がシリコンではなくガラスのため真空中での昇温に時間を要す る、◎半導体に比べ膜質が脆弱なため、ダメージが懸念される、からである。このため、
@高温でのアッシングなら加熱しやすい大気圧での方法、◎できれば低温の方法、◎膜、
デバイスにダメージを与えず、環境影響も小さい方法、を基本的な考え方として、オゾン アッシング技術およびフッ素系ガスを添加した酸素のプラズマによるアッシング技術を研 究した。
オゾンアッシングは加熱した基板を大気圧下でオゾンガスに曝してレジストをアッシン グする方法である。この方法をTFT製造プロセスに適用し、低温化の方法も考えるため に、レジストのオゾンアッシングによる分解のメカニズムを調べ、また、TFTの半導体 層で ある アモルファスシリコン (a―Si:H)へのダメージを 表面の酸化と水素濃度に ついて調べた。
ア ッシ ング 前後 のレ ジス トの 化学 構造 変化 をFT―IR、XPSで、 アッシング中の脱 離成 分をMSで 分析 した 結果 、レ ジス トは オゾ ンガ ス で表 面に 冫C‑Oや−O―C‑O、,
共役 した 二重結合を形成しなが ら、CO、C02などを生成して 酸化分解されることが示 唆された。また、オゾンアッシングによるa―Si: Flの表面酸化を02プラズマアッシ ング と比 べた結果、オゾンアッ シングの方が酸化の程度が低かった。また、a―Si:H 膜中の水素濃度をSIMSで分析した結果、アッシング処 理前後で水素濃度に差はなく、
こ れ ら の 結 果 か ら 電 気 特 性 へ の 懸 念 も 少 な い こ と が 示 唆 さ れ た 。 さらに、オゾンアッシングのアッシングレートを上げ、低温化するために、オゾンへの ガス添加の効果を調べた。オゾンガスヘアルコールガス、アンモニアベーパーを添加する と、アッシングレートが上昇することがわかり、これらはガスの流量、オゾン濃度が高い ほど顕著に観察された。
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アルコール′、アンモニアの役割を調べるために、アッシング処理したレジストのFT― IR、XPS分 析 を行 っ た 。ア ル コール として 重メタノ ールを使 用した レジスト をIR測 定した結果、アルコールの水素がレジストに取り込まれたことがわかり、この水素がレジ ストの二重結合に付加し、ラジカルを生成させ、アッシングの酸化分解を促進させたこと が示唆された。アンモニアの場合は、アルコールとは異なり、水素だけではなく窒素も含 む 状 態 で レ ジ ス ト に 付 加 し た こと がXPS、IRか ら 示 され た 。NH或 い はNH2の 形で レ ジ ス 卜 の 二 重 結 合 に 付 加 し 、 ア ッ シ ン グ を 加 速 し た と 考 え ら れ る 。 一方、室温でのアッシングプロセスの可能性を調べるために、フッ素系ガスを添加した 酸素のプラズマによるアッシング技術を研究した。
酸素にフッ素系ガスを混合したプラズマが有機膜を低温でエッチングすることは知られ て いる。しかし、この方法はそのままTFTのアッシングには適用できない。なぜなら、
フッ素の活性種により下地の膜がエッチングされるからである。そのため、まず、下地の 膜に対して高い選択比でレジストのみをアッシングできる条件を調べ、さらに選択比を上 げ る た め に 下 地 膜 の 上 に 塩 を 生成 さ せ 、工 ッ チ ング を 抑 制す る 方 法を 試 み た 。 TFTで 使 用 さ れ るSi0、a−Si:Hな ど 何 種 類 か の 膜 と レ ジ ス ト に つ い て 、CF 4/02混 合ガスプラズマで処理し、膜のエッチングレート及びレジストのアッシングレ ー トを測定した。その結果、処理条件として、低CF4濃度、低処理温度、低圧カである ほど下地の膜がエッチングされにくい、すなわちレジストのみが高い選択性でアッシング されることがわかった。
比 較的エッチングされ易いSiNについては、膜上に蒸気圧の低いアンモニウム塩を生 成 させ、エッチングを抑制させることを試みた。アッシングガスのCF4の代わりにC Fl F3を 用いて 上記の処 理を行 った結果 、レジ ス卜/SiNの選択 比が10倍以上増加した。
XPS、IRに よ り処 理 後 のSiN表面 を 分 析し た 結 果、 ア ン モニウ ムヘキサ フルオ ロシ リ ケ ー ト (NH4)2SiF6に 類 似 し た 塩 の 生 成 が 認 め ら れ た 。CHF3由 来 の 水 素 ・ フ ッ素系の活性種とSiNとの反応で塩が生成し、この塩がマスクのように機能しエッチ ン グ反応 が抑制さ れたと 考えられる。同様な塩の生成によるエッチングの抑制をa一S i:Hにも応用し、選択比が上昇することを確認した。
最 後 にCF4/02及 びCFIF3/02混合 ガ ス プラ ズ マ の基 本 的 な アッ シ ン グ特 性 を 把握するため、プラズマ処理したレジストのXPS分析とアッシングレート測定を行った。
その結果、アッシングは処理する基板のレジス卜面積(レジス卜による被覆率)に大きく 依存し、レジスト面積に適したフッ素系ガス濃度があることがわかった。フッ素系ガス/
02プラズマを実際のレジスト剥離に運用する際にはこの点を十分考慮して条件を設定す る必要がある。
これら のアッシ ング技 術を用い て実際にTFT−LCDを試 作した 結果、良 好なト ラン ジスタ特性が得られた。本研究の一部は実用化の段階にある。
以上
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学位論文審査の要旨
゛ 学位論文題名
TFT ―LCD 製造プロセスにおけるアッシング技術の研究
申 請 者 は 、 ノ ー ト 型/ヾー ソ ナル コン ピュ ー夕 、ワ ード プロ セッ サの 普及 に伴 い、 カ ラー のthin film transistor‑liquid crystal display (TFT‑LCD)の生産量が年々増加しているが、生産 に 必 要 な 電 力 、 水 、 薬 品 の 使 用 量 は 非 常 に 大 き く 、 環 境 的 な 見 地 か ら こ れ ら を 削 減 し て い く こ と が 必 要 で あ る 。 こ の た め 、 レ ジ ス ト 剥 離 工 程 の 薬 液 使 用 量 の 削 減 を 目 的 と し 、 TFT―LCD製造のためのレジストアッシング技術について研究 した。
ア ッ シ ン グ 技 術 は 半 導 体 製 造 工 程 で は 既 に 使 わ れ て い る が 、 こ の 方 法 を そ の ま ま 液 晶 製 造 プ ロ セ ス に 適 用 で き な い た め 、 (1) 高 温 で の ア ッ シ ン グ な ら 加 熱 し や す い 大 気 圧 で の 方 法 、 (2) で き れ ば 低 温 の 方 法 、 (3) 膜 、 デ パ イ ス に ダ メ ー ジ を 与 え ず 、 環 境 影 響 も 小 さ い 方 法 を 基 本 的 な 考 え 方 と し て 、 オ ゾ ン ア ッ シ ン グ 技 術 お よ ぴ フ ッ 素 系 ガ ス を 添 加 し た 酸 素 の プ ラ ズ マ に よ る ア ッ シ ン グ 技 術 を 研 究 し た 。 オ ゾ ン ア ッ シ ン グ は 加 熱 し た 基 板 を 大 気 圧 下 で オ ゾ ン ガ ス に 曝 し て レ ジ ス ト を ア ッ シ ン グ す る 方 法 で あ る 。 こ の 方 法 をTFT製 造 プ ロ セ ス に 適 用 し 、 低 温 化 の 方 法 も 考 え る た め に 、 レ ジ ス ト の オ ゾ ン ア ッ シ ン グ に よ る 分 解 の メ カ ニ ズ ム を 調 ベ 、 ま た 、TFTの 半 導 体 層 で あ る ア モ ル フ ア ス シ リ コ ン (a−Si:H) へ の ダ メ ー ジ を 表 面 の 酸 化 と 水 素 濃 度 に つ い て 調 べ た 。 ア ッ シ ン グ 前 後 の レ ジ ス ト の 化 学 構 造 変 化 をFTー エR、XPSで 、 ア ッ シ ン グ 中 の 脱 離 成 分 をMSで 分 析 し た 結 果 、 レ ジ ス ト は オ ゾ ン ガ ス で 表 面 に > C=Oや‑O−C= O、 共 役 し た 二 重 結 合 を 形 成 し な が ら 、CO、C02な ど を 生 成 し て 酸 化 分 解 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、 オ ゾ ン ア ッ シ ン グ に よ るa一Si:Hの 表 面 酸 化 を 酸 素 プ ラ ズ マ ア ッ シ ン グ と 比 べ た 結 果 、 オ ゾ ン ア ッ シ ン グ の 方 が 酸 化 の 程 度 が 低 か っ た 。 ま た 、a
−Si:H膜 中 の 水 素 濃 度 をSIMSで 分 析 し た 結 果 、 ア ッ シ ン グ 処 理 前 後 で 水 素 濃 度 に変 化が無いので、電気特性への懸念も少ないことを示した 。
さ ら に 、 低 温 下 で オ ゾ ン ア ッ シ ン グ の 速 度 を 上 げ る た め に 、 オ ゾ ン へ の ガ ス 添 加 の 効 果 を 調 べ た 。 オ ゾ ン ガ ス ヘ ア ル コ ー ル ガ ス 、 気 体 ア ン モ ニ ア を 添 加 す る と 、 ア ッ シ ン グ 速 度 が 上 昇 す る が 、 ガ ス の 流 量 と オ ゾ ン 濃 度 に 大 き く 依 存 す る こ と を 示 し た 。 更 に 、 ア ル コ ー ル 、 ア ン モ ニ ア の 役 割 を 調 べ る た め に 、 ア ッ シ ン グ 処 理 し た レ ジ ス ト
一
雄
次
明
清
則
豊
克
倉
知
津
戸
西
覚
嶋
授 授
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査
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XPS分析を行 った。アル コールとし て重メタノールを使用したレジス トをIR 測定した結果、アルコールの水素がレジストに取り込まれたことがわかり、こ の水素がレジストの二重結合に付加し、ラジカルを生成させ、アッシングの酸化分解を 促進させたことを明らかにした。アンモニアの場合は、アルコールとは異なり、水素だ けでは なく窒素も 含む状態で レジストに 付加したことがXPS 、
IRから示された。
N H或いはNH2 の形でレジストの二重結合に付加し、アッシングを加速したと考えられ る。
一方、室温でのアッシングブ口セスを実現させるため、フツ素系ガスを添加した酸素 のプラズマによるアッシング技術を研究した。このプラズマの問題点は、フッ素の活性 種により下地の膜がェッチングされることである。このため、まず下地の膜に対して高 い選択比でレジストのみをアッシングできる条件を調ベ、さらに選択比を上げるために 下 地 膜 の 上 に 塩 を 生 成 さ せ 、 エ ッ チ ン グ を 抑 制 す る 方 法 を 試 み た 。
その結果、ダウンフロータイプのブラズマ処理装置を用いて、条件を低CF4 濃度、
低処理温度、低圧カにすることで膜がエッチングされにくいこと、すなわちレジストの みが高い選択性でアッシングされることを見付けた。比較的エッチングされ易いSiN にっい ては、CF4 の代わりに
CHF3を用いて膜上に蒸気圧の低いアンモニウム塩を生 成させエッチングを抑制させることで、選択比が
10倍以上増加することを示した。
更にフツ素系ガス/02 プラズマの基本的なアッシング特性を調べた結果、アッシン グは処理する基板のレジスト面積(レジストによる被覆率)に大きく依存し、レジスト 面積に適したフツ素系ガス濃度があることを明らかにした。