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「中学校国語科教育法 I」の実践報告 その2

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(1)Title. 「中学校国語科教育法 I」の実践報告 その2. Author(s). 内藤, 一志; 黒田, 諭. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 62(2): 45-60. Issue Date. 2012-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2832. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第62巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.62,No.2. 平成凶年2月 February,2012. 「中学校国語科教育法I」の実践報告 その2 内藤 一志・黒田 諭* 北海道教育大学函館枚 *北海道教育大学附属函館中学校. ReportonMethodsofTeachingJapaneseinJuniorHighSchooIsI(Part2) NAITOKazushiandKURODASatoshi* HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *HakodateJuniorHighSchool(affiliatedwithHokkaidoUniversityofEducation). 概 要 本ノ稿は本紀要第62巻第2号に掲載した「その1」の続報である。北海道教育大学函館校の中学校国語科教 員免許対応科目「中学校国語科教育法I」(全15時間)の内,主に第9∼15時間目の授業内容の詳細を報告 する。この時間は中学校1年生向けの説明文教材を用いて,指導案作成を最終目標として,それに必要な学 習指導要領の指導事項の理解とそれを踏まえた教材研究,指導計画の立案を中心とした授業内容となってお り,講義に一部演習を交えた展開となっている。. 承 前 北海道教育大学函館校では中学校国語科の教員免許希望者に対する必須科目「中学校国語科教育法I」が 開設されている。本科目は15回の授業の内,内藤が2回,片岡邦夫が6回,黒田諭が6回の順で担当してい る。この構成はこの科目が開設されたZOO8年皮以降変わっていない。. 本報告の目的は,片岡,黒田の講義内容を残すことにある。いわば講義録であって,先行実践を踏まえた 研究仮説を有する実践報告ではない。教科教育法の授業では多くの「現場人」が非常勤講師として招聴され. ている。それは招聴する側に,現場人がもつリアリティが受講生の学習意欲を促進したり,またその実践知 を提供することが教育効果を持つとの判断があるからだろう。私も同様の考えを持っている一人である。と. ころが,それら現場人がどのようなことを語っているのか,どのようなことが授業内容として提供されてい るか,その記録は極めて乏しい。そのような状況を受けて,先ずは記録として残すことに意味があると考え る。そのことは,現場人を招聴することの意義を裏付けるための資料にもなるのではないかと思う。. 本授業は学習指導案作成を最終目標として,その過程における教材研究および指導内容の構築を主たる内 容としている。担当者ごとの内容は,内藤が授業を作るための基本的な知識の講義とその後の授業内容に向. 45.

(3) 内藤 一志・黒田 諭. けての予備的な演習。片岡が文学教材を用いて教材研究法の講義と,発間作りに特化した演習。黒田が説明 文教材を用いての指導計画立案の講義と,年間指導計画や評価なども視野に入れた指導案作りの演習となっ ている。. 本稿では本紀要第62巻第1号に掲載した「その1」(以下,既発表満)と併せて,以下のような構成によっ て,「中学校国語科教育法I」の授業内容の報告をする。 「その1」(既発表満). 1.はじめに(内藤担当の授業概要も含む) 2.片岡担当の授業内容 3.片岡授業の意義 「その2」(本稿). 承前 4.黒田担当の授業内容 5.黒田授業の意義 6.本授業の意義と課題. 本稿は「中学校国語科教育法I」の授業のうち,黒田担当分の報告である。片岡の担当が学生に対して教 材となる文章を詳細に読むこと,つまり素材研究の重要性についての意識付けを図ること目的とするのに対 し,黒田の担当分は学習指導要領を念頭に置きつつ,指導事項を有機的に形成して,授業を立案する必要が あることについての意識付けを図ることを目的とする。. 大学における国語科教育法の授業についての報告は多くなされているが,指導要領理解を前提とした年間. 指導計画,単元および1時間の目標設定を焦点化して講じた報告は管見によると見出しがたい1)。報告の多 くは模擬授業の実施を組み込んだものとなっている。それは教科教育法が教育実習における1時間ごとの授 業設計,すなわち指導案作成とその実施のための授業スキル形成を主たる目標としているからであろう。 しかし,教科教育法は教育実習だけではなく,受講者が将来教壇に立つことを想定する必要があろう。そ のひとつが,指導要領理解であり,それと連動した年間指導計画や指導案の立案である。本稿の意義はそれ を組み込んだ授業の報告という点にもある。. 4.黒田の講義内容 黒田は現在41歳,教職経験は19年。附属中学校に在職していることもあって,これまで多くの公開授業を 行い,また多くの教育実習生を受け持ってきている。経験を重ねるごとに指導方法のバリエーションを豊か にする一方で,学習指導要領の深い理解に基づいた指導目標の明確な授業の立案と実施というのが,彼の授 業の特徴といえるだろう。その立案においては「教材」が目標実現の材として位置づけられる。言わば「教. 材で」教えることを強く意識したものとなっている。既発表の片岡が徹底した素材分析に基づいた,いわば 「教材を」教える傾向を有することから考えれば,対照的な手法であるといえよう。そして対照的なアプロー チは受講者にとって重要であると考えている。. 「教材を」という意識は素材分析への指向性を高める。一方「教材で」は指導内容や学習者への指向性を 高める。当然両者とも必要とされる事柄である。その両者を片岡,黒田という,いわば体現者が講じること も本講義の企みである。. 本章の記述は黒田による2010年度の授業報告原稿に基づく。既発表の片岡の報告は2009年度を対象にした. 46.

(4) 「中学校国語科教育法I」の実践報告 その2. ものであるが,講義内容については大きな変化はない。ただし,受講者が異なることから,同一の受講者が 片岡,黒田の二人の講義内容をどのように受け止めたかを比較する観点を盛り込むことは難しく,本稿では 言及していない。. 以下,計6回の授業を時系列順に節を立てて記す。各節は実施日,授業概要,主たる内容の記録という構 成である。黒田の記録には抄出以外の手を入れていないので,4−1から4−5にわたって文体が異なる。. 4−1.第1講義(2010.12.6) 講義概要:オリエンテーション,「中学校学習指導要領」の説明. 以下,主たる講義内容を項目化して記す。第2講以降の記録も同様。 (1)講師自己紹介. 所属・氏名・経歴・現在の自己研究テーマ等について (2)オリエンテーション. 「講義内容とその意図」と題した説明資料を配付して説明。以下にその内容をそのまま記載する。 ① はじめに 教職について今年で18年になる。これまでに多くの生徒に対して国語の授業を行ってきた。初任者の頃は,. 教育実習で学んだ事柄を手掛かりに授業を構築した。それは「国語科学習指導案」を作ることであり,十分 な教材研究をすることである。「綿密な準備が,経験の浅さをカバーする」というのが当時の信念だった。 準備さえしていれば,50分の授業をとりあえず無事に行うことができる。. 「生徒の実態」を考慮した授業ができるようになったのは教職2∼3年目の頃である。同じ題材でも学級 によって導入の仕方や発間内容を変えていくことの必要性は,いかに生徒を授業に意欲的に参加させるかと いう課題から気付いたことである。指導したい事柄が山ほどあっても,学習者に学ぼうという思いがなけれ ば,授業は成り立たない。そこで50分の授業の中に「静」と「動」の学習活動を交互に入れたり,学習形態 の工夫をしたりして,生徒を飽きさせない努力をしてきた。そして常に生徒の反応を大切にしながら授業を 進めるよう心掛けた。 そのため,内容によっては生徒の発言に揺さぶられ,指導事項が不明確な授業をしてしまうことがままあっ た。やがて気付いたのが「一単位時間内の指導事項を明確にもつこと」である。そこにたどり着くためには. 導入の型が違おうと,学級によって発間の仕方が違おうとかまわない。大切なのは指導者と学習者が本時の 目標を共有し,それに向かって授業を進めていくことである。新卒の教師とベテランの教師との経験の差を 埋めるカギは「目標を見失わずに授業をすること」である。. 一方,「学習指導要領」の存在をその内容とともに知ったのは,教職について間もない頃で,校内授業研 究の授業者として,学習指導案を作成することになったときである。教育実習の際の学習指導案では,「学 習指導要領」の指導事項をほとんど意識せずに作成してきていたため,大いに戸惑った記憶がある。「学習 指導要領」と「学習指導要領解説」の違いもわからない私には,そこに示されている文言を,実際の授業に 結びつけるすべが備わっていようはずもなかった。その対策として私がとった手段はたった一つ。多くの公 開授業を参観し,指導案に盛り込まれた文言と,授業の実態を分析することだった。. これを「研修」と呼ぶのなら,これから教職を目指している学生の皆さんにも大いに推奨したい。指導事 項が不明確な授業実践がどれほど多いことか。たとえ指導事項が指導案には盛り込まれていたとしても,実 際の授業はそこにふれもせずに進んでいったり,途中で違う方向に進んでいってしまったりと,参観してい ても納得できない事態に気付くはずである。「授業はやってみないとわからない」とか「生徒の実態によっ. て流れがかわる」とはよく耳にする言葉であるが,そのことと指導事項がぶれてしまうこととは根本が異な. 47.

(5) 内藤 一志・黒田 諭. る。. 木講座で私が示していきたい最初の入り口は「指導事項を明確にした授業を行うこと」である。 ② 「学習指導要領」の理解. 「学習指導要領」理解のために,「中学校学習指導要領解説国語編」(平成20年9月)を熟読したい。各章 のポイントをおさえながら内容を把握することが大切である。巻末に添えられた「付録4 各学年の目標及 び内容の系統表(小・中学校)」が特に見やすくまとめられている。これは今回の改訂で初めて盛り込まれ たもので,三領域一事項が,小学校の指導事項とのつながりの中で傭轍できるようになっている。. 各教科書会社の教科書も,「学習指導要領」にのっとって作成されていることを考えれば,教科書を通し て指導事項を確認することも十分に可能ではある。しかし,教科書や『教師用指導書』を読む際にもはやり 「何を指導するのか」という観点をもっていなければ,生徒の実態や3年間を通して身に付けさせるべき力 の系統性を無視した授業を構築しかねない。ぜひ,指導事項から授業者が教材を選ぶという観点をもってい ただきたい。本校では,ある出版社の教科書教材を中ノ亡べこ年間指導計画を作成しているが,指導事項や生徒. の実態を踏まえて,他社の教科書教材を採用することもままある。昔からよく耳にする言葉であるが,「教 科書を」授業するのではなく,「教科書で」授業するのである。 ③ 年間指導計画の作成. 次に授業者として行うべき事柄は,年間指導計画の作成である。「学習指導要領解説」の「指導計画の作 成と内容の取扱い」には,「A話すこと・聞くこと]の指導に配する授業時数が,第1学年及び第2学年で は年間15∼25単位時間程度,第3学年では年間10∼20単位時間程度と示されている。また「B書くこと」の 指導に配する授業時数は,第1学年及び第2学年では年間30∼40単位時間程度,第3学年では年間20∼30単 位時間程度と示されている。見通しのない行き当たりばったりの指導では,これらの時数をこなすのは難し い。やむを得ず「C読むこと」の指導の中で行った交流(例えばグループでの読みの交流等)を「A話すこ と・聞くこと」で評価してしまったり,同じく「C読むこと」の中で行った「自分の考えの形成」(例えば 学習後の感想等)を「B書くこと」で評価してしまったりする事態が発生する。授業者として自覚してほし いのは,はたして本当に「A話すこと・聞くこと」や「B書くこと」の指導事項のもとに授業を行っている かということである。. 学生の皆さんが教育実習で授業を担当する場合,本来的にはその学校にある年間指導計画の中に位置付け られた授業を任せられることになるので,担当教諭にぜひ質問してほしい。「自分がやる授業は,年間指導 計画の中ではどの指導領域になりますか?」と。そして教育実習生に授業を任せる担当教諭も,「何でもい いよ」「自分で考えなさい」ではなく,受け持っている児童・生徒への職務上の責任を果たすべく,明確な 指導領域・指導事項を学生に伝えるべきである。すべての授業は3年間を見通した計画的な年間指導計画の もとで行われているということを肝に銘じてほしい。 ④ 単元の指導計画の作成. 国語科の目標を達成するために,単元ごとの指導計画を立てる必要がある。ここからは教育実習として授 業を任せられたすべての授業者に必要となる事柄である。例えば,自分の担当する授業の指導領域は[C読 むこと]で,教材は「『新しい博物学』の時代」(池内了)。重点指導事項は[C読むこと]第2学年イ(文 章の解釈)とエ(自分の考えの形成)で,配当時数は全4時間。ここまで決まっていたのなら,あとは生徒 の実態に合わせて具体的に単元を構想していく。また,このときに,どのような言語活動にのせて単元を展 開すれば効果的なのかもあわせて考える。 単元構想の仕方がわからなければ,指導教諭が作成したものを例示してもらうといい。本講義においても, この部分を皆さんに例示していく。基本的には当該学年の各領域の指導事項をア→カとたどりながら単元を. 48.

(6) 「中学校国語科教育法I」の実践報告 その2. 構想していくが,前の学年での指導事項が定着していない場合や,特に弱い部分がある場合には,それらを 盛り込みながら作成していく。これが生徒の実態に合わせた単元の構想である。決して『教師用指導書』に. 例示されている単元の指導計画がすべての地域の学校・学級に有効だとは思わないでほしい。 ⑤ 教材研究 自分が取り扱おうと構想している教材を,事前に十分に分析しておく必要があることは言うまでもない。. その教材がもっている教材的価値は何なのか,どんな指導事項を指導するのに有効な教材なのかを,授業者 がしっかりと把握しておくことが求められる。. 留意事項としては,特に文学作品を教材として取扱う際に,教師自身の読み(作品論的解釈や作家論的解 釈を含む)を指導事項に位置付けるかどうかである。これについては別な場面で論じるが,. 「中学校学習指. 導要領」では,解釈を踏まえた自分の考えの形成をその指導事項としており,文学作品の読みは一点に絞ら れていくべきとの立場をとってはいない。これは,中学校段階における[C読むこと]の指導と「文学作品 をどう読むか」の狭間にある問題である。誤解しないでほしいのは,文学作品の読みは「何でもあり」とい うものではなく,「解釈」を踏まえて自分の考えを形成することであり,その「解釈」というのは,「中学校. 学習指導要領」[C読むこと]の指導事項をアイウとたどりながら,【伝統的な言語文化と国語の特質に関す る事項】の指導とあわせて行っていくものである。. ⑥ 学習指導案及び学習指導細案の作成 いよいよ学習指導案を作成する段階に入ったら,本時で指導したい事柄を柱にして,具体的な言語活動の 中での授業を構想していく。中心となるのは本時案の部分であるが,全体計画の中の1時間であることを明 確にするために,「教材について」「生徒の実態」「単元の指導計画」など,本時を取り巻く様々な情報を盛. り込んでおく。これは本時の授業が単狐で存在しているわけではなく,しっかりとした見通しや計画のもと での1時間であることを,教師自身が明確に自覚する上でも大切な作業である。. 教育実習で授業を行う場合には,時間配分や発間事項などを盛り込んだ「学習指導細案」を作成すること をすすめる。ほとんどの教育実習生が陥るのが,1単位時間内の予定が後ろにずれ込んで,指導案及び指導 計画のやり残しが生じてしまうという事態である。私がこれまでに担当した教育実習生の中で,事前の指導 案通りに単元の指導を終えた学生は皆無に近い。指導したい事柄と児童・生徒の実態を考え,どの程度の学 習内容であれば1単位時間内に終わるのかという見通しをもつこと。そのための一つの方法が学習指導細案 の作成である。 ⑦ 評価規準. 学習指導細案を作成すると実感してもらえると思うが,十分な教材研究をしていなければ,発間事項や予 想される児童・生徒の反応が不明確になってしまう。また発間内容においては,学習目標に照らし合わせて 軽重・階層をつけることや,指示なのか問いかけなのか返答を求めているものなのか等をはっきりとさせな ければならない。同時に,評価規準を学習指導細案の中に明示すること。. 評価規準の作成や学習指導細案への位置付けの仕方は,最初は難しいと思われるので,講義の中でその具 体を示していく。評価規準は後付けで行うものではなく,授業を構想する段階ですでに念頭においているべ きものである。料理(授業)を出し終わったら,児童・生徒が何を食べ切って何を残したのかを確認しなが ら,皿洗い(評価)までしっかりと行いたいものである。. ⑧ 大学での講義内容と現場での仕事内容とのギャップ 現在,北海道教育大学函館校では,このような講義を設け,実際に教壇に立ったときにすぐにでも実践で きるような資質や能力を学生の皆さんに身に付けさせる手だてを講じている。しかし,それとて完全なもの ではなく,実際に現場に立ってみて初めて目の当たりにする仕事内容があるものである。. 49.

(7) 内藤 一志・黒田 諭. 授業に関わる事柄では,⑦で述べた「評価規準とその見取り方」の他,「筆記テスト(定期テスト)の作 り方」や「児童・生徒の関心・意欲・態度の喚起の仕方」,「指導要録の書き方」等があげられる。実際には 大学でもこれらのことについて理論として学んではいるが,実践(具体)との結びつきの中で説明がなされ ないため,いざ現場に出たときにすべてが「初めて」の感覚になってしまう。 今回,私の講義では「教材研究」を中心に取り扱っているが,教員免許取得のための必修内容として,今 述べた事柄についても身に付けておくことが望ましいと感じている。 ⑨ おわりに. 教職は実にやりがいのある仕事である。仕事内容として明確なゴールもなければ仕事のノルマもない(事 務的な作業の締め切りは当然あるが)。しかし本気で取り組めば取り組むほど仕事内容は尽きない。目の前 の児童・生徒のよき変容ぶりを糧にして,日々努力を重ねていく仕事である。 私たちには中学校教師としての専門性はもちろんのこと,豊かな人間性や広い知見が求められる。その意 味では,児童・生徒に求めている確かな学力や豊かな心,健やかな体の調和,すなわち「生きる力」を教師 自身が身に付けてゆかねばならない。自戒をこめて言えば,わずかな知識や経験の上にあぐらをかいて授業 をするような教師は,時代に対応したよき教師とは言えないということである。 最後になるが,私が教育実習生に必ず言う言葉がある。それは,「児童・生徒とよい人間関係を築きたけ れば,今,自分の周囲にいる人との人間関係をよいものにすること」である。実際の学生生活の中で,周囲 との人間関係を充実させていない人が,教室に入ったときだけよい人間関係を築けるはずがない。児童・生 徒の純粋なしかし鋭い感性は,その教師の人となりを瞬時に見抜くものである。繰り返しになるが,教職は 実にやりがいのある仕事である。 (3)「中学校学習指導要領」の説明∼『中学校学習指導要領解説国語編』(東洋館出版社,2008)を用いて∼ 第1講の中で,『中学校学習指導要領解説国語編』(東洋館出版社,2008)を受講者全員にプレゼントした。. すでに所有していたり,文部科学省のHPからプリントアウトしたりしている受講生もいたが,「書き込ん で汚すために配付する」のだと説明した。 さらに,本講では次のような条件の下で教材分析を行っていくことを示した。. ・対象学年…第1学年(第2学年以降だと,中学校での指導内容の習得状況が想定しにくいため) ・指導領域…[C読むこと] ・使用数材…・「動物の睡眠と暮らし」(加藤由子) ・「言葉を考える」 「言葉は変わっていくけれど」(清水義範) 「テレビ言葉の聴き方」(梶原しげる) 「今どきの言葉づかい」(金田一秀穂) ・「ものづくりの知恵」(小関智弘). ・「まだ言葉にならないものを描く」(井上直久). 以上のことから,『中学校学習指導要領解説国語編』からは,[C読むこと]の中の説明的文章等に関わる 部分のみを取り出して説明した。説明した箇所は以下の通り。 ・第1節 国語科の目標 ・第1学年[C読むこと]の目標 ・第1学年[C読むこと]の内容と指導事項全体についてと,「イ・り文章の解釈に関する指導事項」,「エ・ オ自分の考えの形成に関する指導事項」 ・第1学年「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」の「(1)イ言葉の特徴やきまりに関する事項」. 50.

(8) 「中学校国語科教育法I」の実践報告 その2. ・取り上げる教材についての観点 ・各学年の目標及び内容の系統表(小・中学校)[C読むこと]. 各学年の目標及び内容の関連について考える際には,『中学校学習指導要領解説国語編』の「付録4」に 示されている系統表を活用することが大変便利であることを強調し,指導事項から授業を構想する際にも, 常に手元に置いておき,「生徒にどんな力をつけようとしているのか」を確認しながら作業を進めることを 指示した。. 4−2.第2講(2010.12.13) 講義概要:第1学年[C読むこと]の指導事項の確認及び教材研究 (1)第1学年[C読むこと]及び【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】の指導事項の確認. 図1 学習指導要領に基づく指導事項一覧 第1学年[C読むこと]の指導事項/【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】 ①文脈中の語句の意味/【文脈上の意味イ(イ)】. 芸芸芸…芸芸…芸芸芸:;〉芸芸霊芸芸…芸芸〉/【指示語や接続詞イ(エ)】 (昏要約. ⑦要旨の把握/【事象や行為などを表す語句イ(ウ)】. ア 語句の意味の理解(丑. (沙構成や展開にっての自分の考え. イ 文章の解釈. (9表現の特徴についての自分の考え. エオ 自分の考えの形成 ⑧⑨⑲. ⑲ものの見方や考え方についての自分の考え. カ 読書と情報活用 ⑪⑫. (丑(卦(宣)冨(亘)⑦. ⑪情報を集めるための方法を身に付けること ⑫必要な情報を読み取ること. ※(手∼⑫の番号については,本講義の中で活用するために便宜上つけたもの。. (2)教材研究. 図2 指導事項構想表. 右のような構想表を用いて,碇示した4つの説 明的文章の特徴を把握するとともに,どんな指導. 口 名. 事項を指導するのに適した教材であるのかを各々 で分析した。. 次に,作成した構想表をもとに3∼4人のグ. 樽 ●. ループで話し合いを行い,各々の考えを交流した. ■ 】轟. 後,再度各自の構想表を見直した。 各文章の特徴をとらえ,上記図1に示す①∼⑫ (番号については,本講義の中で活用するために. 便宜上つけたもの)のどの指導事項を指導するの に適した教材であるかを考える際の留意点として,次のことをあげた。 ・ひとつの教材にあれもこれも盛り込むのではなく,指導事項を精選し重点化を図ること。 (但し指導事項をあえてたくさん盛り込んで大きな単元にすることもあり得る). ・指導事項アに関するものなど,どの教材でも共通に取り扱う指導事項がある場合は,教材による取り 扱いの軽重をつけること。 ・指導事項に沿って,取り扱う教材の配列(順番)を決めること。 ・4つの教材のうち,指導事項が重複する等の理由で,「取り扱わない」ものがあってもかまわない。. 51.

(9) 内藤 一志・黒田 諭. ・「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」についても構想表に盛り込むこと。 ・指導者自身が感じている文章の魅力としての言語内容も加味すること。. 4−3.第3講(2010.12.20) 講義概要:教材分析と指導事項の配置. 前時に構想した,4つの教材への指導事項の配置を全員が発表した。その際には,各々の教材の特徴を最 初に述べ,「この教材は∼という特徴があるので,∼という指導事項を指導するのに適していると考える」 のような説明の仕方になるよう指示した。. 図3 受講生の指導事項構想表一覧 学生A 学生B 学生C 学生D 学生E 学生F 学生G 学生H 学生Ⅰ 学生J 学生K 学生L 学生M 学生N ①(卦 (‡x卦 (‡x卦 ①② ②(卦 ①② ②(も (‡x卦 ①(卦 ③(も. 動物の睡眠と 暮らし. ④⑧. (宣X∋. ⑧⑨. ⑥⑲. ⑤⑦. イ(エ). ①③ ①⑨ ⑦⑲ ⑥⑧. (享X参. せ イ(エ). イ(エ). ⑩. 言葉を考える. ⑨⑥. ⑤⑥ ⑦⑧⑩ 4. (‡x卦 ⑧⑨ ①⑤ (‡x卦 ③⑥ ⑧⑨ ①(卦 ①(卦 ①④ ①(卦 ⑪⑪. 物づくりの知 恵. ⑤⑪ ④⑤ ⑤(む. ⑪. ⑫. ⑤(∋. ⑧[∃. まだ言葉にな らないものを. 十十 (約 (摘 ④⑤. ⑨⑲. ⑨. 十サ ⑩. (軸. 描く. ③⑧ ⑨. ※①∼⑫は指導事項に便宜上つけた番号,[∃∼[召は指導する順番を表す。. 上記図3で斜線を引いて示したように,特に「扱わない」と判断している学生が2名いる「まだ言葉にな らないものを描く」について,その理由を実際のワークシートから一部抜粋する。. 他の教材では,事実と意見が明確に分かれているが,本作品は随筆に近くなっていて,そうはなってい ない。今回は事実と意見を分けて伝える説明文の基本を練習したいので,今回は扱わない。(学生H). この「随筆に近くなっている」という漠然とした捉え方について,本講義では言及しきることができなかっ たが,「まだ言葉にならないものを描く」という作品は,筆者の考えが述べられている部分と,例として善 かれている部分が明確であり,文章の構成や事実と意見の読み分け等の指導事項については十分に指導可能 である。その指導例については,本講義の中で黒田が口頭で簡単に示した。. このように,指導者が「扱わない」と判断するにあたっては,十分な教材研究が必要であり,現場にあっ ては「自分(指導者)が好まないから扱わない」「難しすぎて読めないから扱わない」と安易に結論を出さ ないことが大切であることがわかる。 受講生の多くは,同じ教材でもこれほど指導事項が異なる場合があることに驚いていた。講義の中では,「教. 科書に出てくる教材だから取り扱う」のではなく,生徒の実態と身に付けるべき事項を踏まえた指導者の意 図によって,年間指導計画が作成されるということを強調した。. 52.

(10) 「中学校国語科教育法I」の実践報告 その2. 4−4.第4講(2011.1.17) 講義概要:教材の内容確認と指導構想の見直し (1)教材の内容確認. 前時の講義より約1ケ月間が開いているので,まずはこれまでの3回分の講義内容について,流れをまと めたプリントを基にして想起した。次に,今回取り扱っている4つの教材文の内容を確認するために,学生 全員に指名音読した。そして,音読指導の際の留意点を,以下のように示した。 教室で指導する際には, ・語のまとまりへの意識を持たせること。(句読点で間を開けて読むことも含む). ・声は教室全員に聞こえていればよく,必ずしも一律に大声で読ませる指導は必要ないこと。 (但し,音声言語の役割等について学習しているときには,そのような指導を行うことがある). ・読み誤りがあった場合には,即座に訂正すること。 し2)指導構想の見直し. 次に,それぞれの教材文を黒田がこれまで実際の現場で,どのように扱ったことがあるのかを下記図4の ように簡単に示した。. 図4 黒田の指導事項一覧 教 材 名 動物の睡眠と暮らし. 指導する際の着眼点の例 ・「睡眠」を中心語としたマッピング(語嚢を入り口とした内容理解) ・ナンバリングをしている語への着目「まず・次に・また…」 ・事実と意見の読み分け(意見部分のマーキング). ・段落間のつながりの確認 言葉を考える. ・診断的評価の実施(既有知識の確認と動機付け) ・主張と根拠の読み分け(要約). ・わかりやすく説得力のある文章の特徴 ・言葉についての自分なりの考え 物づくりの知恵. ・文章中のすべての指示語の確認(指し示しているものの3つの類型) ・文章としての「連続型テキスト」と図表のような「非連続型テキスト」の結 び付け ・要旨の把握. まだ言葉にならないものを描く ・題名の検討 ・事実と意見の読み分け(意見部分のマーキングと要約). 図5 指導事項構想ワークシート. その後,右の図5ようなワークシート(一部 省略)を配布し,4つの教材の扱い方について 再度個別にまとめた。記入上の留意点として,. 教材名. 教材(文章)の特徴. 掃弾手項及び相場順番(A)と その意図(B) (A). 次の3点を示した。 ・教材(文章)の特徴について. 動㈹民と暮らし. (B). 何を指導するのに適した教材(文章)なのか を端的にまとめる。言語形式だけではなく,言. (A). 語内容に着目することが大切。 ・指導事項及び指導順番について. 凛を考える. (B). 指導事項については,前時までに構想したも. 53.

(11) 内藤 一志・黒田 諭. ので構わないが,第3講での交流や上記の黒田の話を聞いて改善した方がよい部分があったら,随時直すこ と。指導順番については,構想した指導事項に基づいて系統的な指導ができるようにすること。 ・指導事項及び指導順番の意図について. ここを考えることで,生徒に対して何をどのように指導したいのかがはっきりとする。今回は説明的文章 のみを取り扱っているが,文学的文章や古典,文法や漢字等についても同じように考えることで,1年間の 年間指導計画の下地が完成する。教材(文章)の特徴に記述した内容と関連性を持たせて,(A)の方針をと る意図を端的に書くこと。. 4−5.第5講(2011.1.24) 講義概要:指導事項の交流と単元の指導計画の作成 (1)指導事項の交流. 前時に作成した「4つの教材の取り扱い方と自分の指導構想」を全員分印刷して配付した。そして,この 後に取り扱っていく「言葉を考える」についての「教材(文章)の特徴」「指導事項及び指導順番」「その意. 図」を中心に交流を行った。配布物の内容は以下の図6の通りである。. 図6 受講生による教材「言葉を考える」の指導構想一覧 指導事項及び指導順番(A)とその意図(B). 教材(「言葉を考える」)の特徴. 言葉という身近なものを取り扱っており,読 (A)①③⑥⑧⑨⑲ 4番目 みやすい作品である。例や意見が明確であり, (B)考えやすい内容であるため,文章の把握に加えて,個人の考 自らの考えも持ちやすい。. えを表現させることを重視する。本文の内容だけでなく,具体的 な例も用いてことばの教育を達成できるよう指導する。. 言葉をとりまく環境の変化,変なしゃべり方, (A)①⑧⑨ 2番目 流行語という3つの内容で,どれも「現代の (B)現代の言語の問題点を把握し,自分たちの言葉がどのような 言葉」について述べている。それぞれ違う筆 状況にあるのかを理解させ,さらに日本語に親しめるようになる 者で量も少なく,生徒が読みやすい内容であ る。 3者の文章を並列させている。3者ともにス (A)⑧⑨⑲⑪⑫ 3番目 タンス,文章表現が異なっている。. (B)3者の文章を大いに生かして,⑧⑨⑲を指導したい。しかし,. それには基本的な「読むこと」の力が必要なので,指導順番は3 番目である。 「言葉」は生徒にとって身近なものである。 (A)⑦⑲ 3番目 そのため,生徒自身の意見を持ちやすい。. (B)3人の意見・主張を読み取り,要旨を把握させる。内容を把 握した上で,自分はどう考えるのかということを探めていく。. 3つの文章の構造が似ている。主張が読み取 (A)①⑧⑲ 4番目 りやすい。自分の考えを持ちやすい。. (B)生徒が自分の考えを表現する活動に重点を置きたい。そのた め,最後に扱い,今までの技能を活用させる。. ことわざや文法,しゃべり言葉など,実際の (A)①⑨ 2番目 例を通して説明していくところにおもしろみ (B)ことわざや語句の意味を知ることで,作者の意図,作品のお がある。ときどき出る筆者の語り口調もおも もしろさが理解できるのではないかと考える。ここでは,あまり しろい。. 頑張らずに,話を楽しむ。. 先の(B)の内容を指導するにふさわしい教材 (A)⑧⑨⑲ 2番目 である。. (B)文章に善かれた情報を的確に読み取る。「様々な種類の文章 から必要な情報を集めるための読み方を身につけること」自分の 言葉,現代の言葉を見直す。. 54.

(12) 「中学校国語科教育法I」の実践報告 その2. 3人それぞれのものの見方が善かれている。 (A)①⑥⑨⑲ 4番目 ことわざや文法,言葉の使い方などについて (B)ことわざなどの言葉の意味を正しく理解させる。筆者一人ひ 善かれている。. とりの表現の特徴について自分の意見を持つ。. 同じテーマについての複数の人の意見・考え (A)⑲⑪⑫ 3番目 が善かれている。言葉という身近なものが (B)これまでに扱った作品も参考にしながら,どのように書けば アーマ。. よく伝わるかを考えながら,自らも文章を書く。テーマが身近で. ※「読むこと」から「書くこと」への指導に あり,いくつかの意見に触れることで自分の意見を持ちやすくな つなげる。(※と下線は提出物のママ). ると考えた。. 文章そのものを読み込むというよりも,文章 (A)①⑧⑨⑲ 4番目 の問題提起を例として,発展的な学習をする (B)ことわざのアンケートを取ったり,正しい日本語について考 のに適している。. えるような発展的な学習をさせたい。. 3人の筆者が,それぞれ違う観点から言葉を (A)⑦⑲⑪ 3番目 とらえている。. (B)段落の中で,筆者の言いたいことは何かをまとめる。自分の 意見を持たせ,「自分はこう思う」という考えを話せるようにする。. 興味のあるものを扱う。 身近な話題とそれほどかたくない文章。どの (A)①⑤⑥⑦ 2番目 文章も例を多用している。. (B)例が多い中できちんと要約したり,要旨の把握ができるよう になる力をつけたい。. 事実をもとにした筆者の意見が善かれてい (A)①⑦⑲ 4番目 る。3人の文章がある。. (B)それぞれの筆者のものの見方について,考えることができる。. 文章が分かれてい. るので,最後にまとめとして,3つそれぞれで. 様々な項目を扱える。 言葉というものについて,3人の筆者が,そ (A)③⑦⑨⑲ 4番目 れぞれ興味深い見解を述べている。. (B)3者の言葉に関する意見から,生徒が自分の意見を持ち,考 えを深められればと思う。. 身近なテーマ。3者それぞれ,思考の流れ, (A)①⑲ 4番目 言葉遣いなどが違う。. (B)⑲「ものの見方や考え方についての自分の考え」を重点に置 き,言葉に対する自分なりの考えをもってもらう。. (2)単元の指導計画の作成. 記入する際の留意点として,以下の点を示した。 次頁図7に示した「単元の指導と評価の構想表」を用いて,「言葉を考える」の指導計画を立てた。留意 点は次の通り。 ・全5時間程度を目安とするが,意図が明確な場合には増減してもかまわない。 ・今回は「読むこと」の指導を構想しているが,「読むこと」の指導を踏まえて,「話すこと・聞くこと」 や「書くこと」の指導につなげてもよい。 ・「言語活動」は学習指導要領の言語活動例を参考にする。 ・「指導事項」は学習指導要領に示されたア∼カの記号を用いる。 ・「重点化」する部分は○や◎で示し,重点化する部分についてのみ「評価規準」を作成する。 ・「学習活動」は箇条書きで示す。. 55.

(13) 内藤 一志・黒田 諭. ・「時数」は凹∼国で示し,同じ学習活動が2時間続く. 図7 単元の指導と評価の構想表. 場合には,ひとつの欄に並記する。 ・「関連する事項」は学習指導要領の「伝統的な言語文 ■元(■#〉亀. ■t曹1えるα伝え合うt▲」十手■■1■ll▼t8■l. ■■■■ ウ・嶋. 化と国語の特質に関する事項」の(1)イ(言葉の特徴や きまりに関する事項)を盛り込む。. ■m. t点化. 十t●■. 柑■■. ・「国語への関心・意欲・態度」は,本単元の言語活動 を行うにあたって求められる生徒の様相を具体的に書 く。. 指導事項は構想できているが,具体的な学習活動に落と すことができないとい. う学生が少なからずいた。それらの. 学生については,黒田が個別にアドバイスをした。. 4−6.第6講(2011.1.31). 0. 【網. ナ●. ■■. ■○. へ○. ■■. ll. ・■. ▲t. (1)実践の紹介. ■. 講義概要:実践例の紹介と学習指導案の書き方. 前時に作成した「単元の指導計画」の修正を行った後,「言 葉を考える」に関わる黒田の実践例について,下記の資料を基に紹介した。. 図8 黒田による教材「言葉を考える」の実践例. Ⅰ 題材名 「言葉を考える」∼身近な言葉の探究∼. Ⅱ 題材について 今回は主に「言語事項」の中の語彙に焦点を当てた学習活動を行う。まずは「言葉を考える」(中学国語1『伝え合う言葉』 教育出版)を読み,文章の要旨を捉え,言葉の変化に対するそれぞれの筆者の考えを比較させる。その上で,実生活で使用し ている語句に関心をもち,「若者言葉」や「敬語表現」等,カテゴリー別に気になる表現を調べ,自分の考えを示しながら他 者に伝えていく。そして,実際の言語活動場面において,話や文章の中でどのような形態で使用されているか,自分が理解し たり表現したりする時にどのように活用すればよいかについて考えさせたい。. Ⅱ 生徒の実態 生徒たちの日常における「言葉の使い方」の実態には,いくつかの問題点が見られる。まずは,話す際の言葉が断片的であ り,文末までしっかりと言えていないということ。根拠や理由が不明確であり,論理的な話し方になっていないこと。さらに 使用する語彙が乏しく,誤用も多く見られるということである。そのため,これまでも「話すこと・聞くこと」「読むこと」「書 くこと」における言語活動を意図的に設けてきたが,まだまだ不足の感が残るところである。メタ言語活動をより多く取り入 れた学習活動の構築が望まれる。. 56. ■■.

(14) 「中学校国語科教育法I」の実践報告 その2. ・事実と意見等の関係に注意して,話したり聞き取ったりしながら,日 常の言語活動を振り返らせる。. 【話すこと・聞くこと】. ・様々な種類の文章から必要な情報を集めるための読み方を身につけさ. ・自分の言葉ヤ現代の言葉を見つめ,問題点ヤ改. 【読むこと】. せる。. 善点を探究しつつ,自分の考えを持たせる。 【国語への関心・意欲・態度】. ・日常の言語活動を対象化し,事象や行為等を表す多様な語句について 理解を深めさせる。. 【言語事項】. Ⅴ 指導計画 「読むこと」から「話すこと・聞くこと」の学習につなげる単元構成 学 習 内 容. 主な指導内容. 時間. O「言葉を考える」(中学国語1『伝え合う言葉』教育 03つの文章を通読し,読んだ感想を書かせ,交流させる。 出版)を読んで,内容を捉えながら比較するとともに, 03つの文章の要旨と,それぞれの筆者の立場や考えを明 らかにし,比較させる。. 自分なりの考えを持つ。 ・「言葉は変わっていくけれど」清水義範 ・「テレビ言葉の『聴き方』」. 梶原しげる. ・「今どきの言葉づかい」. 金田一秀穂. ○身近な人に,「言葉の使い方・使われ方で気になる表. 3. O「言葉の使い方・使われ方で気になる表現」について事. 現」について聞き取り調査をし,記録しておく。. 前に聞き取り調査を行わせる。 【事前学習】. ○身近な言葉の中で,気になる表現と,それに対する感 ○聞き取り調査の結果や,各々の言語生活の振り返りから, 想を発表し合う。 ○出された表現をカテゴリー別に分類する。. 気になる表現を交流させる。 ○主にどんな言葉が気になるのかカテゴリー別に分け,グ ループ編成の準備をさせる。. ○カテゴリー別にグループを作り,グループごとに情報 ○聞き取り調査,アンケート,辞書,書籍,新聞・雑誌, を集める。 ○集めた情報を比較・分析しながら整理する。 Z. テレビ,インターネット等から情報を集めさせる。 ○取り上げた言葉の実際の場面での使われカヤ,そこにあ. ○整理した情報についての自分たちの立場と,考えを明 る問題点等について,様々な情報を比較・分析させ,自 確にする。. 分たちの立場と考えを持たせる。. ○グループごとに調べた内容や,それに対するそれぞれ ○模造紙を用いて,Wローテーションで調べたこ の立場と考えを発表する。. とや自分. たちの考えを発表させる。. ○発表会の様子について,自己評価と相互評価を行う。 ○発表内容に対して自分の考えを持たせるとともに,発表 2. ○今回の学習を通して考えたことや気づいたことをまと の仕方について評価させる。 める。. ○自分の言葉や現代の言葉に対する自分の考えや感想をま とめさせる。. 上記のような実践例を紹介した後,本実践への質問をあげさせた。学生からは「グループ編成の仕方」等 についての質問があげられ,黒田がそれに答えていった。 (2)学習指導案の書き方. 学習指導案の書き方について,次の図9に示す資料を基に説明を行った。. 57.

(15) 内藤 一志・黒田 諭 図9 学習指導案の書き方. 慧‡;㍗㌶主題=tl㍉ゝロ■賄科学■■羽■坤■ホ .珊く柵、…. 生徒甜市立000孝枝 集0筆年0魚男子00名女子00名†K)0名 MSPゴシック,大事.旭j ポイント ≠ヰ曽畿Il0000. ・肝−ん慧㌣も■■鰍’内■モー遽しで仲ゝ ̄州■酬にの軋 ■伽との煉脚I. Ⅰ□■鷺・輌ロー(■薫名〉l. r(桝舶■上●★▲冊L〉l t□■棚■. 半元の日柵. 主な珊廿. ▼靂■▲ □□1ロ爛の筆書について. 椚示した■ ̄. エロ■附ヽて 榊 膿暮【生徒)の夫廿 ている■僧が加、あように出して下さlゝて下きlヽ0醐幡全♯の中での1立■付け.. ロロロロ・000. 蕉Ⅱで示したt柵の中に事■元が鑑t付けられ瀬■なる攣■の鴨■ではなく、以下のAに書量して蝕し. が働■けlナ帥ている暮トがわか○▲ウに七tして下さlヽ. 粁01攣耶■とyンタし¥2の攣■■■の■敷こ■けて・ まt東根r∼することがでにどん脚1帥ると(8I. 針口攣曹日義 字書活■ ・000. セ・1■一方怯も嘗めてt暮して下さlヽ. l榔のかかわりと書手点 ■■脆■・万蓼. l. l. l. た、こ醐■下さつlこE申ウていま ̄揮、. 単元の日欝. 椚細tとの対応 華r■元【珊と「兜■(生贅〉の仙細ナると、どんな 華左で示した■元のさP脚.桝伽とこと. 潜. P■批が宴■励l竜■鼻した上で.t漉して下さい.始の 癒しているのか象桝■にt漉して下さlヽ 児暮(生籠〉の舞●を■まえ、Ⅱで示した■元の日脚正され. た形になゥていてもか奮い憂せん■ ○鵬の輌こ開ナる日■ ○(左㈹と■さモモろ丈で■くと見ゃ寸ヽ、でナ) ○……・・・・・・・ ○【■納Il伝統的な■冨文化と酬lこlけ■る ¥必すしもー■棚ア∼カモすべて■り込む必. 事■】に綱ナる日蠣. ■はなく,▲鳥化.集馳こょり,一■翻したり, ぁさ醐に●化して中り事ったりナる■さがぁり ます.. 第4講で作成した「4つの教材の取り扱い方と自分の指導構想」は,上記の学習指導案の「Ⅲ 領域の指 導計画」に相当し,第5講で作成した「単元の指導計画」は「Ⅳ 単元の指導計画」に相当することを話し た。その上で,「Ⅴ 本時案」の作成へとつなげていくことを説明した。また,本講で示した学習指導案の 書き方はほんの一例であり,複数の型があることもあわせて伝えた。 そして,一単位時間の授業は,それのみで存在するのではなく,身に付けさせた力を明確にした単元の指 導計画の一部であり,さらにその単元は,「A話すこと・聞くこと」「B書くこと」「C読むこと」の指導領 域の一部であり,1年間の指導事項を系統的に網羅した年間指導計画の一部であり,さらには3年間の国語 科の教育課程の一部であることを強く話した。このような視点を持たずに,行き当たりばったりの授業を繰 り返すことは,すくなくとも義務教育では求めていない。 最後に,第1講から第6講までの講義を通しての感想を書いてすべての講義を終了した。以下に感想のい くつかを抄出する。. ・全体を通しての指導というものは,数学や英語では教科書における教材の配列もかなり意識されているが,. 数・英ほどではない国語において非常に重要なことだと感じた。また,私は英語の免許も取ろうと思って いるが,全体を意識することで教科書外の教材が使いやすくなるメリットがあると感じたし,その方が面 白い授業が提供できると考えた。他の授業で全体を捉えるものは少ないから,とても有意義で良かった。 ・一つの授業をするときに,このように学習指導要領を吟味し,教科書指導書を比較し,指導案を作成して クラスの活動準備に入るという⊥程はすごいことと思った。ベテランの先生は何年もこの研究を繰り返し. ていくのだということ,これがあって良い授業ができるのだということが理解できました。今年夏,教育. 58. ■憫.

(16) 「中学校国語科教育法I」の実践報告 その2. 実習があるので参考にさせていただきます。. ・教科書を前から順番にやっていく授業しか受けたことがなかったので,戻っても構わないということを 知った。今まで細かく指導計画を立てたことがなかったので勉強になった。同じ教材を取り扱うとしても,. 生徒の実態や指導者が替わるだけで全く違うものになるのだと思った。 ・指導するということについて,生徒にどのような能力を身に付けさせたいのか,その為に何を指導すれば 良いのかということが基本で,忘れてはいけないことであるということを強く認識させられる授業でした。 前の片岡先生の時と同様,高校受験の為に特化した授業はやろうと思えばいくらでもできると思いますが,. それだけではいけないのだと,黒田先生の授業でも強く感じました。 ・学習指導要領をもとに,指導案の作り方などを細かく説明してもらえたので,実に役に立った。欲張ると テストの作成方法や評価の仕方なども知りたい。自分の主たる免許(社会科・地歴科)の教育法よりはる かに実践に使える内容だったので,とても力がついた気分になった。(下線は提出物のママ) ・指導の進め方について,具体的な例を示しながら学ぶことができたため,とても良く理解することができ. ました。また,指導計画の書き方や指導要領の活用の仕方など細かく学ぶことができたため,ぜひ今後に 生かしていきたいと思います。他にも教員の動き方など多くのことを学びました。. 上記の感想には,それぞれ個別に「講義をして下さってありがとうございました」等の記述が添えられて いたが,それについては本稿では割愛した。また,感想の下線を記した部分に「テストの作成方法や評価の 仕方なども知りたい」とあるが,これは別講義で学生達に教授したいと黒田が考えている内容でもある。本 稿の第1講(2)⑧でも述べたが,大学での講義内容と現場での仕事内容とのギャップの一つに,「評価規準と その見取り方」や,「筆記テスト(定期テスト)の作り方」等がある。これらについても実践(具体)との 結びつきの中で,教授する機会が得られることを願って,今回の実践記録の執筆を終わりたいと思う。. 5.黒田の授業の意義 黒田の授業の意義は,授業立案において,徹底して教材と学習指導要領の示す指導事項(領域ごとの「内 容」)との照合の上で,指導事項を抽出させようとしている点にある。具体的には、2講目(本稿4−2)にお いて指導事項一覧(図1)を示した後、構想表の作成(図2)、3講目(本稿4−3)では受講生の作成した構 想の一覧化(図3)によって、指導事項の着眼点の差異について可視化を図り、4講目(本稿4−4)では再 度指導事項の構想(図5)という展開に見られる。指導事項を意識化させるこの展開は、黒田自身が1講目 (本稿4−1)で述べているように、「教材を」教えるのではなく、「教材で」教えるという考え、その「教える」 事項は学習指導要領に基づくという基本的な姿勢に拠るものである。確かに、学習指導要領の指導事項を教 科書教材を媒介として具現化させることは当たり前のことである。しかし,この一見当たり前の方法が,国 語科教育法という講義において,本当に実施されているのか。詳細な講義報告が乏しい中で,それを確かめ ることは難しい2)。 そして稿者は実施されていない可能性もあると推測している。それは教育法で使用することを想定したテ キストの構成からの類推である。国語科教育法に関連するテキストは複数ある。その構成は教育の目的,目 標,歴史などの,いわば理論部分と各領域あるいは教材ジャンルにそくして指導内容や方法について具体的 に言及する,いわば実践化部分との二部構成をとっているものが多い。そして,学習指導要領に基づく指導 事項についての言及は理論部分において必ずなされている。しかし,各領域あるいは各教材に即して具体的 にどのように構成されるかについての言及は乏しい。指導事項がどのように設定されるかは実践化部分に委. 59.

(17) 内藤 一志・黒田 諭. ねられている構図だが,実際のところ当該箇所において,いちいち指導要領との対応関係を明示した記述を 稿者は確認できていない。この点を焦点化して,指導を加えているところに黒田の授業の意義がある。. 6.本授業の意義と課題 授業作りの初心者にとって,立案段階において困難点は三つある。 1.素材を詳細に読み解く意識をもつことと,実際に分析すること。 2.分析をして得た事柄を指導事項に結びつけていくこと。. 3.指導事項を指導方法(教師の発間,指示,説明,学習者の言語活動)として具体化すること。 本授業では,片岡が1,黒田が2を焦点化し,それぞれが3と連動させるようにしている。しかし,3に ついては,片岡,黒田ともに受講者に案出させているが,その方法としての適否やバリエーションについて は言及していない。平成20年告示の学習指導要領の国語科が言語活動例を重視していることを踏まえれば, 指導方法について詳しく扱うことが必要となってくる。しかし,この点を本授業の限られた時間で実施する ことは難しい。続く中学校国語科教育法Ⅲ,Ⅲでの組み込みが必要となってくるし,それが函館校における 国語科教育法の課題でもある。. 注 1.榎本隆之(2005)は,国語科教育法で「何を教えるか」についてはテキスト類が豊富であることから蓄積がある一方,「ど う教えるか」については先行研究が少ないとしているが,テキスト類が豊富であることが,「何を教えるか」を保証するも のではない。限られた時間の中でテキストを消化することは,増田修(2000)の述べるように現実的には無理がある。 2.渡辺春美(2006)は国語科教育法関連の講義内容を詳細に報告する点において希有の報告書である。本書においても指導. 要領の指導事項と教材の指導事項の対応関係について具体的な言及は見いだせない。. 文献 榎本隆之(2005)「教職課程国語科教育法をめぐる問題」『国語教育史研究』第5号,国語教育史学会,pp.51−55 増田修(2000)「子午線 国語科教育法」『日本文学』第49巻第12号,日本文学協会,pp.32−34 渡辺春美(2006)『国語科教職課程の展開』沖縄国際大学. (内藤 一志 函館校教授) (黒田 諭 附属函館中学校教諭). 60.

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