論文内容要旨
Survey of a nutrition management method for very low birth weight infants: status before wide use of breast milk banks in Japan
(極低出生体重児の栄養管理方法に関する調査 -日本における母乳バンク普及前の現況-)
Pediatrics International (2020年2月掲載予定)
社会医学系衛生学公衆衛生学 及川 洸輔
近年、極低出生体重児に対する母乳栄養の重要性が注目されている。海外では、経腸栄養の標 準化により児の予後が改善したとの報告が多数存在する。一方わが国では、栄養管理は主治医の 裁量に委ねられており、統一されたガイドラインが存在しない。そこで、本邦における栄養管理 方針の現状を明らかにすることを目的とし、オンライン上でアンケート調査を施行した。
全国の新生児領域の代表指導医300名に調査を告知し、出生体重群ごと(出生体重500g未満、
500~749g、750~999g、1000~1249g、1250~1499g)の栄養戦略について回答を依頼した。
計137名(45.7%)から回答が得られた。極低出生体重児に対する統一された栄養管理指針が 存在しない施設が63.5%と過半数であった。出生体重にかかわらず経腸栄養は生後 12~24時間 で開始するとの回答が、37.2%(500g未満、500g~749g)~47.4%(1000g~1499g)と最も多く、
各体重群において、50%以上で生後24時間以内に経腸栄養が開始されていた。生後1週間までの 経腸栄養の第一選択は、各体重群で90%以上が母乳であった。但し、母乳が不足する場合、主に 人工乳が選択されていた。出生体重750g未満において、自母乳が得られるまでの期間の管理は、
絶食およびもらい乳の使用があわせて 30%を超えていた。出生体重 1250g 以上では 7 日~9 日
(59.9%)、出生体重500g未満では13~15日(32.1%)が最多であるように、出生体重が小さい ほど、経腸栄養確立(経腸栄養量が100mL/kg/dayに達したときと定義)まで日数を要していた。
経腸栄養の開始時期は、母乳分泌の状況や児の全身状態に左右される。特に出生体重が小さく なるほど、すなわち在胎週数が短くなるほど、自母乳が得られにくく、また人工乳の使用を避け る傾向にある。そのため、やむを得ず絶食期間を延長するか、もらい母乳を使用するかの二者択 一となってしまう。絶食は消化管合併症のリスク、もらい乳は感染のリスクとなり、結果として 経腸栄養確立がさらに長期化する可能性がある。ドナーミルク(ドナーの母乳を適切に殺菌処理 したもの)の使用はこれらリスクを軽減するとの報告があり、経腸栄養確立を早期化することも 期待される。
本邦では2017年度に日本母乳バンク協会が設立され、ドナーミルクの試験運用が開始された。
今後、本邦での使用経験が増加すれば、欧米のように標準的な栄養管理法となるかもしれない。