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長期海外在住経験がもたらす日本社会への再適応

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長期海外在住経験がもたらす日本社会への再適応

秦 野 悦 子 壇   史 織 川 峰 恵梨香

問題と目的

 1989年~ 2013年の長期海外滞在者人数推移(外務省,2013)によると、

長期海外滞在者(2か月以上滞在者対象)はこの5年間で、約8万人増加 し2013年には約84万人となり、外務省が本統計を開始した1968年以降、過 去最多となった。また、日本人の海外留学者数は1985年以降、年々上昇し ており、2004年がピークで約8万人となった(文部科学省,2014)。海外に 在住する人が増えていく一方、長期海外に在住して教育を受けてきた子ど もや成人した人が日本に戻ってきた数も同時に増えているのが現状である。

 日本社会による帰国子女や海外大学進学者への捉え方も時代と共に変化 がみられ、当初、帰国子女の受け入れ教育は、異文化体験の否定的な側面 や教育の不利益が強調されていた(海外子女教育史編纂委員会,1991)。

しかし、時代とともに帰国子女がもはや日本文化への再同化を強要される ような存在ではなく、国際化の社会でこそ能力を発揮できる特別な層にな りつつある(海外子女教育復興財団,2012)とも言われる。国際化の流れ で、帰国子女は存在が肯定的に捉えられてくるに伴い、調査研究数が減少 したことを小島・深田(2011)は言及したが、顕在化してこない現象を明 らかにするためにもこのような研究は継続して行われるべきものだと鹿野

(2012)は指摘した。

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 本研究では、長期海外在住に関する現状、課題についての今日的理解を 深めた上で、先行研究より抽出された課題を整理し、海外在住経験者に対 し、異文化異言語環境への心理的適応、また日本社会への再適応という側 面を明らかにしたい。

1. 心理的適応

 適応とは、生物学的には生物がその生活する環境に対して適合している ことをいう。心理学的には「個体に心理的・生理的欲求の不均衡な状態が 生じたときそれを安定した均衡状態へ戻そうとする緊張がおこる。これを うまく解消できるならば適応行動がされたことになるが、それがうまくさ れないならば、個体にのぞましくない状態が生じ、これを適応障害あるい は不適応という。個体が生活していく社会的環境は決して一定不変なもの ではないが、それに適切に対応した行動をとり、必要な技能を学習し、要 求阻止に耐えていくことが適応的とよばれるのであるが、それとともに能 動的に環境に働きかけてそれを自己に適合したものに変えていこうとする ことも適応的行動に含まれる(発達心理学辞典,1996)」と定義されている。

 社会的適応を個人と集団、環境に焦点を当てて明らかにした研究として、

Oyseman & Markus(1993)は社会文化的文脈の中の自己を捉えた。具 体的には、自己が中心にあり、その周りを家族、友人、重要他者、職場、

学校、地域、民族、性別、宗教、社会階級、歴史、経済、国家的文脈が囲 んでいる。西欧文化の人々はこれらの文脈を明確に分別した考えを持って いて、自己と文脈は全く切り離した形でとらえている。しかし、日本人を 含む東洋の人々はこれらが相互に協調することによって、適応能力や社会 文脈との調和維持能力が培っていて、心の安定に役立つ捉え方をしている。

またMyers(1999)は、他者との人間関係は幸福感・安定の最も有力な源

泉としており、人間関係や社会的交流の有無は満足度と相関がみられ、友

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人関係の研究からも同様のことが示された。つまり、社会的動物である人 間にとって、社会的絆が強いことは、社会的適応・満足と結びついている。

そこで、本研究では国(生活環境)、友人・教師との関係、学校での自己、

社会文化の中での自己など、これらの社会文脈とどの程度の繋がりを捉え る事により、周りとの繋がりの強さを適応力として捉えることとした。

2. 海外移住者の適応プロセス

 Gullaborn & Gullaborn,(1963)は、Figure 1 に示すように海外移住者 は①異文化に対する新鮮さが前面にでる、高揚的、楽観的なハネムーン期、

②物珍しさや興奮が薄れ、しだいに前にいた文化との違いにストレスを感 じる不満、絶望、混乱などのカルチャーショック期、③確信や満足などの 適応期、という適応過程をたどることを明らかにした。ハネムーン期、カ ルチャーショック期、適応期からなる異文化適応のU曲線は、さらに帰国 後の自文化への再適応過程の描写にも応用され、異文化適応と自国再適応 の2つのU曲線を合わせてW曲線と名付けた。

Figure 1 異文化適応と自国再適応のW曲線(Gullaborn & Gullaborn,1963)

 箕浦(1988)も同様の指摘があり、帰国後1年は日本を外国のように感

帰郷 時間 異文化到着

心身の状態

①ハネムーン期 ①ハネムーン期

②カルチャーショック期 ②カルチャーショック期

③適応機

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じ、表面的な違いや行動面の違いに気づき比較的対処しやすいが、2年半 後から情緒的・心理的違いを意識しだすと述べた。箕浦(1988)は「子ど もの異文化体験の帰国後の適応を考える際に、自分の育った環境は、「よ きもの」と価値づけられること、そのため、環境の違う社会に入り、自己 の意味空間がおびやかされる事態では、不安が生じるのはむしろ当然であ るという視点が必要である」と見解を示した。そこから、異文化体験の帰 国後の適応は、第1に海外生活への適応、第2に、海外生活中に、学校や 友人等を通じて日本社会への馴染みがどの程度培われているかに影響する ことを主張した。さらに年齢要因は、帰国後に体験を思い出すかどうかに 影響することも指摘した。さらに箕浦(1988)は「環境が変わることでの 居心地の悪さは、適応が上手くできていないことからきているが、どう解 釈して対処していくかによってストレスも変わってくる」ことを指摘した。

どのような出来事がストレスの源になるのかは、ある程度の共通点はみら れるが、人による違いがある。Holmes & Rahe(1976)による帰国後の「社 会再適応スケール」には、生活適応とストレスの相関が示された。

3. 日本社会への再適応に関する先行研究

 小島・深田(2011)は、帰国後の日本生活が約5年と比較的短い帰国子 女を対象に、アメリカ滞在中の適応と帰国後の日本再適応を検討した結果、

アメリカ在住者であった帰国子女の帰国後の再適応には海外在住中の適応 が上手くいっていることが重要であることを指摘した。箕浦(1988)は異 文化体験の帰国後の適応を知る上で、海外の生活にどれだけ深く適応して いたかも調べる必要性があること、日本社会への馴染みが海外生活中にど の程度培われているかを知る必要性があることを示した。また、箕浦(1988)

によれば、「帰国した時に海外の体験を思い出す際に帰国時年齢は大きな

要因」であること、そして、小島・深田(2011)の結果の比較から、「帰

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国後の日本生活の期間の長さが日本生活再適応に影響している可能性」が 示唆された。

 これらの先行研究では、インタビュー形式のため調査対象者が3人(箕 浦,1988)、質問紙形式で調査対象者が20名(小島・深田,2011)である ため、結果を一般化するのに十分な人数であるとはいえない。またどちら も対象者の滞在先がアメリカのみに絞っていた。この点から、小島・深田

(2011)の外国適応と日本再適応に差が見られなかったのは母集団が少な かったことによる結果の偏りがある可能性が考えられる。しかし、長期滞 在者の「就学別・地域別在留邦人(学齢期)子女数」(外務省,2013)に よると、年々海外に暮らす日本人の子どもが増加しており、過去は北米で 暮らす子どもがトップであったのに対し、2005年以降からアジアに滞在す る子どもがトップを維持していた。つまり、限られた国だけでなく、アジ アを含め様々な国を視野に入れる必要もあると思われた。

4. 本研究の目的

 本研究では、対象の国、年齢の範囲を広げて、海外で教育を受けた長期 在外経験のある者を対象に、長期海外在住経験者の日本社会への再適応に ついて調査を見直す必要があるだろうと考えた。先行研究で指摘されてい るように、海外の生活にどれだけ深く適応していたか、親等を通じて日本 社会への馴染みが海外生活中にどの程度培われているかなど、帰国後の日 本生活適応だけでなく、海外滞在中での生活適応についても検討を行う。

海外在住における生活適応と、海外における学校生活適応、そして日本に 帰国した時の日本における生活再適応について調査し、帰国時年齢や帰国 後の日本生活の年数の要因、性別の要因や滞在した大陸による要因を独立 変数として、どのように差があるのかを明らかにしていきたい。さらに、

ストレスに関しても調査し、海外生活時と帰国時に感じたストレスに対し

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てどのように対処をしたのか、またそれらストレスに対する対処と海外生 活適応、学校生活適応と、そして日本生活再適応の間に相関があるのかを 検討していくことを目的とした。

方 法

1.調査対象者

 調査対象者は、日本国籍を持ち、帰国子女および2年以上海外で生活し 教育を受けて帰国10年以内の者とした。不備回答者を除外し、最終的に 117名が有効回答者だった(M=19.8歳)。そのうち、男性30名(M=20.9歳)、

女性87名(M=19.4歳)であった。調査時点で社会人は22名(M=26.1歳)、

就学中の者は、高等教育(短・専・大)、中等教育(中・高)95名(M=18.4 歳,SD=2.62)だった。

 就学者のうち52名は東京都内帰国子女級をもつT高等学校の協力を得 て、調査対象の条件を満たす高校生で文章と口頭で説明合意を得た者であ り、男性10名女性42名で、調査時点の平均年齢は16.2歳(SD=0.70)だった。

 調査対象者の海外在地域は、北アメリカ大陸(アメリカ、カナダ、ドミ ニカ共和国、パナマ)は46名、アジア大陸(インド、ブータン、マレーシ ア、香港、中国、韓国、台湾、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネ シア、フィリピン)は31名、ヨーロッパ大陸(ベルギー、イタリア、ポー ランド、オーストリア、スイス、セルビア、イギリス、フランス、オラン ダ、ドイツ、ルーマニア)は29名、オセアニア大陸(オーストラリア、ニュー ジーランド、フィジー)は6名、南アメリカ大陸(ブラジル、ボリビア、

アルゼンチン)は4名、アフリカ大陸(ウガンダ)は1名であった 2. 調査期間

 調査期間:2014年9月~ 11月

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3.調査内容

 プロフィールとして、年齢・性別・現所属・在住国/都市・在住期間・

居住形態(家族・寮など)・現地学校(インターナショナルスクール/日 本人学校/現地学校/その他)・渡航回数・帰国時年齢・日本に帰国して 何年目かを問うた。設問は、海外生活適応18項目、日本生活再適応18項目、

海外学校生活適応24項目、海外生活ストレス14項目、日本再生活ストレス 14項目、その他、自由記述により構成された。項目の選定にあたり、小島・

深田(2011)、浅尾・森井・古川・上地(2002)、尾関(1993)を参照した。

4.手続き

 知人、友人を介し同意を得た協力者に対し、無記名の個別自記入形式の 質問調査紙で実施された。紙媒体での配布回収、メールによるWeb質問 紙の送信と回収、東京都内のT高校においては、教員によって配布、回収 された。協力者からは、すべて事前に文書での説明合意を得ており、守秘 義務遵守よび適正な個人情報の保全保守への配慮を行った。

5.分析方法

 各質問項目の因子構造を明らかにするために、最尤法(プロマックス回

転)による因子分析を行った。その結果、1.0以上の固有値と.35以上の負

荷量を持つ項目を抽出した。海外生活適応、日本再適応、そしてストレス

の男女差、滞在期間別、帰国時年齢別、帰国後期間別、大陸別による相関

分析を行った。

(8)

結 果

1. 海外生活適応・日本生活再適応・海外学校生活適応・海外生活スト レス・日本再生活ストレスにおける因子分析結果

 海外生活適応18項目の因子分析結果(Table 1)から、「海外生活への適 応困難」、「日本人友人関係」、「外国人友人関係」、「日本文化への嗜好性」

という4因子を抽出した。日本生活再適応18項目の因子分析結果(Table 2)

から、「日本生活への再適応困難」、「相談・助言」、「外国文化への嗜好性」

Table 1 海外生活適応の因子分析結果(最尤法、プロマックス回転)

質問項目 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ h2

Ⅰ因子:海外生活の適応困難(α=.778)

私は外国人やその国の社会の価値観が分からなくて困ることがあった 私は外国人の挨拶や礼儀が分からなくて困ることがあった(ハグなど)

生活の中での不便についての不安があった(言葉、病院、停電など)

私は感情の変化が激しかった 海外での住まいの住み心地は悪かった

.85 -.77 .43 .05 .69 .78 -.01 .12 .00 .62 .53 .25 -.07 .05 .49 .51 .00 .02 -.13 .25 .46 -.43 -.22 .19 .32

Ⅱ因子:日本人友人関係(α=.775)

私は日本人との交流があった

私が落ち込んだり、悩んだり、イライラしたとき、周囲の日本人は相談 に乗ってくれた

外国人と付き合う場合の行動や態度について周囲の日本人からアドバイ スをもらった

外国で日本にいる日本人と連絡をとっていた

-.13 .91 -.19 -.05 .68 .04 .71 .16 .00 .60 .09 .60 -.05 -.05 .39

.04 .47 .14 .18 .38

Ⅲ因子:外国人友人関係(α=.649)

私は外国文化(洋楽・洋画・洋書など)を好んで親しんでいた 私が落ち込んだり、悩んだり、イライラしたとき、周囲の外国人は相談 に乗ってくれた

私は外国人・外国文化に対して好感を持っていた

外国人と付き合う場合の行動や態度について、周囲の外国人からアドバイ スをもらった

私は外国人との交流があった

-.06 -.11 .75 -.06 .57 .13 -.05 .59 -.09 .37 -.12 .14 .53 .36 .44 .12 .13 .44 -.20 .28 -.03 -.03 .36 .04 .12

Ⅳ因子:日本文化への嗜好性(α=.649)

私は日本人・日本文化に対して好感を持っていた

私は日本文化(J-POP・邦画・和書など)を好んで親しんでいた

-.03 -.06 -.05 1.02 1.00 .09 .09 -.08 .43 .27 固有値 3.95 2.36 1.81 1.18 累積寄与率(%) 24.71 39.43 50.72 58.10

因子相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

Ⅰ ― .45 .03 .20

Ⅱ ― .18 .40

Ⅲ ― -.08

Ⅳ ―

(9)

という3因子がみいだされた。海外学校生活適応24項目の因子分析結果

(Table 3)から、「学校教師・学校友人関係」、「学業・将来への意欲」、「日 本人友人交流」、「学業への不安」という4因子がみいだされた。海外生活 ストレス14項目の因子分析結果(Table 4)から「海外 行動的・積極的思 考」、「海外 放置・逃避的思考」という2因子がみいだされた。日本再生 活ストレス14項目の因子分析結果(Table 5)から「日本 放置・逃避的思 考」、「日本 行動・積極的思考」という2因子がみいだされた。

Table 2 日本生活再適応の因子分析結果(最尤法、プロマックス回転)

質問項目 Ⅰ Ⅱ Ⅲ h2

Ⅰ因子:日本生活の再適応困難(α=.820)

私は日本人や日本社会の価値観が分からなくて困ることがあった 私は日本人の挨拶や礼儀が分からなくて困ることがあった(お辞儀など)

生活の中での不便についての不安があった(言葉・交通手段など)

日本人の国民性(性格)は自分に合うと思っていた(R)

私は日本人・日本文化に対して好意を持っていた(R)

私は感情の変化が激しかった 日本での住まいの住み心地は悪かった

私は「日本文化(J-POP・邦画・和書など)を好んで親しんでいた(R)

日本の気候は耐え難かった

.84 .03 .05 .70 .78 .06 .15 .63 .65 -.10 .13 .42 -.59 .05 .05 .36 -.56 .13 .24 .41 .55 .01 -.03 .30 .53 .21 -.06 .34 -.38 .22 -.01 .18 .37 .21 -.03 .19

Ⅱ因子:相談・助言(α=.717)

私が落ち込んだり、悩んだり、イライラしたとき、周囲の帰国子女は相 談に乗ってくれた

私が落ち込んだり、悩んだり、イライラしたとき、周囲の日本人は相談 に乗ってくれた

日本人と付き合う場合の行動や態度について周囲の帰国子女からアドバ イスをもらった

私は帰国子女との交流があった

日本人と付き合う場合の行動や態度について周囲の日本人からアドバイ スをもらった

-.08 .86 .04 .75 .03 .72 .03 .54 .05 .50 -.21 .24 -.13 .40 .07 .19 .15 .39 .08 .20

Ⅲ因子:外国文化への嗜好性(α=.703)

私は外国人・外国文化に対して好感を持っていた 私は外国文化(洋楽・洋画・洋書)を好んで親しんでいた

-.05 -.05 1.01 1.00 .09 .04 .55 .32 固有値 3.91 2.73 1.49 累積寄与率(%) 24.46 41.49 50.82

因子相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ

Ⅰ ― .08 -.06

Ⅱ ― .28

Ⅲ ―

(R)=逆転項目

(10)

Table 3 学校生活適応の因子分析結果(最尤法、プロマックス回転)

質問項目 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ h2

Ⅰ因子:学校教師・学校友人関係(α=.838)

先生は私によく声をかけてくれた 私は、海外の学校で気軽に話せる先生がいた 私は、海外の学校で相談できる先生がいた 私は、海外の学校に好きな先生がいた 私は、海外の学校の先生を信頼していた 私は、先生に親しみや暖かさを感じていた 友達がいるから学校へ行くのが楽しかった 海外の学校の授業は楽しくなかった(R)

私には親しい外国人の友人がいた 私は、友人からの相談を受けていた

.80 -.19 .08 -.04 .60 .72 -.01 -.09 .03 .51 .70 .22 -.08 .13 .62 .69 .09 -.07 .15 .51 .68 .07 -.02 .01 .50 .68 .00 -.05 .04 .45 .58 -.12 .06 -.11 .34 -.41 -.09 -.04 .28 .31 .38 -.07 .04 -.07 .14 .36 -.16 .17 .00 .16

Ⅱ因子:学業・将来への意欲(α=.824)

私は遊びと勉強のけじめがついていた 私は、予習や復習を毎日できるよう努力していた 私は授業を真面目に受けていた

私は勉強に積極的であった 私は自分にあった進路を考えていた 私には自分の将来に希望をもっていた

-.07 .84 -.02 .15 .68 -.11 .75 -.06 .00 .52 .00 .71 -.07 .03 .51 -.03 .70 .11 -.19 .55 -.01 .59 .03 .01 .35 .15 .44 .12 -.13 .30

Ⅲ因子:日本人友人交流(α=.927)

私には悩みを聞いてくれる日本人の友人がいた 私には親しい日本人の友人がいた

.02 .09 .99 .06 1.00 -.02 -.05 .87 .06 .77

Ⅳ因子:学業への不安(α=.691)

私は外国語の授業の内容が理解できなくてイライラしていた 私は授業で外国語を使って討論することが上手くできなかった 私は勉強を続けていく自信がなかった

-.04 .10 .10 .82 .70 .11 -.06 .04 .81 .65 -.21 -.22 -.05 .41 .33 固有値 5.22 2.81 2.30 1.79 累積寄与率(%) 24.86 38.24 49.20 57.72

因子相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

Ⅰ ― .33 .07 -.14

Ⅱ ― .01 -.09

Ⅲ ― .10

Ⅳ ―

(R)=逆転項目

(11)

Table 4 海外ストレスの因子分析結果(最尤法、プロマックス回転)

Table 5 日本帰国後ストレスの因子分析結果(最尤法、プロマックス回転)

質問項目 Ⅰ Ⅱ h2

Ⅰ因子:海外 行動・積極的思考(α=.762)

問題の原因を見つけようとした その時の状況を良くしようと努力した 今の経験はためになると思うことにした 情報を集めた

自分のおかれた状況を人に聞いてもらった 自分で自分を励ました

何らかの対応が出来るようになるのを待った

.73 -.04 .52 .63 -.06 .38 .58 -.06 .33 .58 -.15 .32 .52 -.08 .26 .51 .17 .32 .41 .28 .29

Ⅱ因子:海外 放置・逃避的思考(α=.692)

なるようになれと思った 時が過ぎるのにまかせた 先のことをあまり考えないようにした こんなこともあるのかと思って諦めた たいした問題ではないと考えた

.17 .71 .58 .00 .70 .49 -.12 .60 .35 -.04 .48 .22 -.23 .40 .17 固有値 3.17 2.32 累積寄与率(%) 26.41 45.78

因子相関 Ⅰ Ⅱ

Ⅰ ― .20

Ⅱ ―

質問項目 Ⅰ Ⅱ Ⅲ h2

Ⅰ因子:日本 放置・逃避的思考(α=.765)

先のことをあまり考えないようにする なるようになれと思う

こんなこともあるのかと思って諦める 時の過ぎるのにまかせる

.88 -.07 .06 .77 .68 .40 -.14 .61 .65 -.17 .10 .43 .52 -.03 .12 .27

Ⅱ因子:日本 行動・積極的思考(α=.674)

問題の原因を見つけようとする 自分で自分を励ます 現在の状況を変えるよう努力する 情報を集める

-.02 .61 .04 .40 .19 .56 -.07 .32 -.20 .50 .15 .39 -.17 .44 .32 .49

Ⅲ因子:認知的思考(α=.578)

今の経験はためになると思うことにする 自分のおかれた状況を人に聞いてもらう

.17 .02 .64 .43 .08 .04 .60 .39 固有値 2.67 2.47 .99 累積寄与率(%) 26.68 51.38 61.26

因子相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ

Ⅰ ― .03 -.09

Ⅱ ― .58

Ⅲ ―

(12)

2. 海外生活適応・日本生活再適応・海外学校生活適応・海外生活スト レス・日本再生活ストレスにおける相関分析の結果

 海外生活適応・日本生活再適応・海外学校生活適応・海外生活ストレ ス・日本再生活ストレスの構成因子間の関係をみるために、2年以上海外 在住経験ある対象者全員の相関結果をTable 6 に示した。この結果より以 下のことが明らかとなった。

Table 6 海外生活適応・日本生活再適応・海外学校生活適応・海外ストレス・

日本ストレスの相関分析の結果(N=117)         

(1) 海外活適応に関する相関の結果

 海外生活の適応困難は、海外で暮らす日本人との友人関係の深さ(r=.42, p<.01)、日本文化への嗜好性が高さ(r=.23, p<.05)との関連がみられた。

また海外生活の適応困難は、海外学校生活適応の中でも、日本人友人交流 の高さ(r=.27, p<.01)、学業への不安の高さ(r=.49, p<.01)との関連がみ られた。さらに海外生活の適応困難は、海外でのストレスに対し行動的、

項目 A1 A2 A3 A4 B1 B2 B3 C1 C2 C3 C4 D1 D2 E1 E2 E3

海外生活適応

A1.海外生活の適応困難 ― .42** .09 .23*

.23*

-.13 .08 -.09 -.13 .10 .27** .49** .33** -.09 .05 .08 .29**

A2.日本人友人関係 ― ― .20* .35** -.13 .16 .21* .21* .24** .71** .19* .24* -.09 -.03 .18 .31**

A3.外国人友人関係 ― ― ― .05 .07 .10 .24** .15 .07 .07 .22* .09 .17 .05 .21*

A4.日本文化への嗜好性 ― ― ― ― -.29** -.16 .02 -.10 -.03 .20* .09 .05 .07 .08 .10 .13 日本生活再適応

B1.日本生活の再適応困難 ― ― ― ― ― .07 .07 .03 -.07 -.08 -.21* .09 .08 .17 .01 .05

B2.相談・助言 ― ― ― ― ― ― .1. .14 .09 .14 -.07 .09 -.05 .01 .03 .18

B3.外国文化への嗜好性 ― ― ― ― ― ― ― .42** .20* .02 -.11 .17 -.14 .02 .16 .16

海外学校生活適応

C1.学校教師・学校友人関係 ― ― ― ― ― ― ― ― .26** .08 -.20* .20* -.02 .21* .15 .15

C2.学業・将来への意欲 ― ― ― ― ― ― ― ― ― .05 -.17 .43** -.11 .02 .32** .24*

C3.日本人友人交流 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― .17 .15 -.13 -.19 .19* .16

C4.学業への不安 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― .12 .05 .02 .12 .20*

海外ストレスコーピング

D1.海外 行動・積極的思考 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― .10 .25* .58** .46**

D2.海外 放置・逃避的思考 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― .42** .11 -.02

日本ストレスコーピング

E1.日本 放置・逃避的思考 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― .00 .14

E2.日本 行動・積極的思考 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― .46**

E3.認知的思考 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

**p <.01,*p <.05

(13)

積極的な思考(r=.33, p<.01)、および日本での再適応ストレスに対して、

自分の経験を積極的に意味づける認知(r=.29, p<.01)と関連した。

 海外在住時における日本人友人関係が高いほど、海外生活の中で外国人 の友人(r=.20, p<.05)関係が良く、日本文化への嗜好性が高く(r=.35, p<.01)、海外学校生活適応におけるすべての因子(「学校教師・学校友人 関係(r=.21, p<.05)」、「学業・将来への意欲(r=.24, p<.01)」、「日本人友 人交流(r=.71, p<.01)」、「学業への不安(r=.19, p<.05)」)との関連がみら れた。また、外国人友人関係が高いと、外国文化嗜好性が高く(r=.23, p<.05)、学校で教師や友人と良好な関係(r=.24, p<.01)にあった。

  一 方、 日 本 文 化 へ の 嗜 好 性 の 高 さ と 海 外 生 活 の 適 応 困 難(r=.23, p<.05)、日本人友人関係(r=.35, p<.01)、日本生活の再適応困難(r=-.29, p<.01)、日本人友人交流(r=.20, p<.05)との間に有意な相関が認められた。

つまり、海外で生活する中で日本文化への嗜好性が高い人であるほど、日 本人と友人関係が高かったり、海外の学校で日本人友人との交流も多い傾 向にあった。また、日本文化への嗜好性が高いほど、海外生活の適応困難 が高く、帰国後の日本生活の再適応困難が低い傾向にあった。

(2) 日本生活再適応

 日本生活再適応に関する相関の結果が以下の通りである。日本生活の再 適応困難では、日本文化への嗜好性(r=-.29, p<.01)と学業への不安(r=‒.21, p<.05)との間に有意な相関が認められた。つまり、海外生活の中で日本 文化への嗜好性が高い人や学業への不安が高い人であるほど、日本生活の 再適応に困難を感じにくい関係がみられた。

 日本生活再適応において、外国文化への嗜好性をみると、海外の生活の 中で日本人との友人関係(r=.21, p<.05)や、外国人との友人関係(r=.23,

p<.05)が高く、学校で教師や友人との関係が友好であり(r=.42, p<.01)、

学業や将来への意欲が高い(r=.20, p<.05)ほど、日本帰国後の外国文化

(14)

への嗜好性が高いという関係がみられた。

(3) 海外学校生活適応に関する相関

 既に述べたように、海外在住時における日本人友人との関係は、海外学 校生活適応のすべてに関係がみられた。つまり、海外の学校で教師や友人 と良好な関係である人ほど、日本人(r=.21, p<.05)や外国人(r=.24, p<.01)との関係が高く、学業や将来への意欲(r=.26, p<.01)も高く、学 業への不安(r=-.20, p<.05)が低い傾向があった。また、帰国後の外国文 化への嗜好性(r=.23, p<.05)が高いが、日本で感じたストレスに対して 放置したり、逃避的思考(r=.21, p<.05)になる関係がみられた。

 海外での学業への不安の高さは、海外生活の適応困難(r=.49, p<.01)

の高さ、日本人友人関係(r=.19, p<.05)の高さとの関連が認められた。

一方で、 海外での学業不安が高いと、海外での学校教師・学校友人関係

(r=-.20, p<.05)は低く、また日本生活の再適応困難(r=-21, p<.05)さは 低く、認知的思考(r=.20, p<.05)との間に有意な相関が認められた。

(4) 海外のストレスに関する相関

 海外でのストレスが高いと、海外での生活に困難(r=.33, p<.01)だと 感じたり、日本人友人関係(r=.24, p<.05)、や外国人との友人関係(r=.22, p<.05)が高かったり、学校での教師や友人との関係(r=.20, p<.05)が良 好であったり、学業や将来への意欲(r=.43, p<.01)が高かったりする人 であるほど、海外でのストレスに対し行動的になったり積極的な思考

(r=.25, p<.05)になる傾向にあった。また、海外でのストレスに対し行動 的になったり積極的な思考になりやすい傾向にある人ほど、日本でもスト レスに対して行動的になったり積極的な思考(r=.58, p<.01)になったり、

人に聞いてもらうなどして認知する傾向にあったが、同時にストレスの問

題に対して放置したり逃避的思考になる(r=.25, p<.05)こととも関連が

あった。

(15)

 海外 放置・逃避的思考では、日本 放置・逃避的思考(r=.42, p<.01)

との間に有意な相関が認められた。つまり、海外で感じたストレスに対し 放置したり逃避的思考になったりする人ほど日本帰国後に感じたストレス に対しても放置したり逃避的思考になったりする傾向にあった。

(5) 日本の再適応に対するストレスとの相関

 日本 放置・逃避的思考では、学校教師・学校友人関係(r=.21, p<.05)、

海外 行動・積極的思考(r=.25, p<.05)、海外  放置・逃避的思考(r=.42, p<.01)との間に有意な相関が認められた。つまり、海外の学校で教師や 友人との関係が良好であるほど、日本帰国後に感じたストレスに対して放 置したり逃避的思考になったりする傾向にあった。また、日本での放置や 逃避的思考と、海外でのストレスに対しての行動や積極的思考、放置や逃 避的思考との関連があった。

 日本 行動・積極的思考では、学業・将来への意欲(r=.32, p<.01)、日 本人友人交流(r=.19, p<.05)、海外 行動・積極的思考(r=.58, p<.01)、認 知的思考(r=.46, p<.01)との間に有意な相関が認められた。つまり、海 外の学校で学業や将来への意欲が高かったり日本人との友人交流が高いほ ど日本帰国後に感じたストレスに対して行動的になったり積極的な思考に なる傾向にあった。また、日本で感じたストレスに対しての行動や積極的 思考が高い人ほどストレスに対しての認知が高く、海外で感じたストレス に対しても行動や積極的思考になる傾向にあった。

 認知的思考では、海外生活の適応困難(r=.29, p<.01)、日本人友人関係

(r=.31, p<.01)、外国人友人関係(r=.21, p<.05)、学業・将来への意欲(r=.24,

p<.05)、学業への不安(r=.20, p<.05)、海外  行動・積極的思考(r=.46,

p<.01)、日本 行動・積極的思考(r=.46, p<.01)との間に有意な相関が認

められた。つまり、人に聞いてもらうことや今の経験は今後のためだと思

うといった認知的思考が高い人とであるほど、海外生活の適応に困難だと

(16)

感じたり、日本人や外国人との友人関係が高かったり、学業や将来への意 欲が高い反面、学業への不安が高かったりする傾向にあった。また、海外 そして日本で感じたストレスに対して行動したり積極的思考になることと も関連があった。

3. 女性と男性における海外生活適応・海外学校生活・海外ストレス・

日本再適応・日本再適応ストレスの比較

 女性群(N=85)と男性群(N=30)を独立変数として、得点の平均値に 相違があるのか明らかにするために、t検定によって分析を行った。海外 生活適応、海外学校生活適応、に関しては、性差はみられなかった。 男 女による差の有意が認められたのは、日本生活の再適応困難(t(30.06)

=2.14, p<.05)のみであった。日本生活の再適応困難は女性の平均得点が 11.63(SD=6.13)、男性の平均得点が22.13(SD=26.66)と男性の方が高く、

男性の方が日本に帰国した後の再適応が女性よりも困難であることが分 かった。

4. 海外在住期間の違いによる比較

 海外にどの程度滞在していたのか、5年未満、5年~ 10年未満、10年 以上という3つの期間別に分けて分散分析を行い、差に有意がでるかどう か分析を行った。

(1) 海外生活適応に関する在住期間の比較

 海外生活の適応困難(F(2, 112)= 5.06, p<.01)は、5年未満と10年以上 の間に1%の有意が認められた。日本人友人関係(F(2, 112)= 8.89, p<.001)

では、5年未満と10年以上の間に0.1%水準の有意、5年~ 10年未満と10

年以上に0.5%水準の有意が認められた。

(17)

Table 7 海外在住期間別による海外生活適応の得点

(2) 海外学校生活に関するに関する在住期間の比較

 日本人友人交流(F(2, 113)= 5.64, p<.01)は、5年未満と10年以上そし て5年~ 10年未満と10年以上に5%水準の有意差が認められた。

Table 8 海外在住期間別による海外学校生活適応の得点

 以上の結果から、海外在住期間別による差の有意が認められたのは、海 外生活適応の困難、海外在住時の中の日本人友人関係、海外学校の中の日 本人友人交流の3因子だった。海外生活適応の困難は5年未満と10年以上、

そして日本人友人関係と日本人友人交流は5年未満と10年以上、5~ 10 年未満と10年以上に有意であった。

5. 日本帰国後の生活期間によるストレスの比較

 Table 9 に海外ストレスおよび日本ストレスに関する因子の分散分析の

①5年未満(N=46) ②5~10年未満(N=41) ③10年以上(N=28) F値

平均値(SD) 平均値(SD) 平均値(SD) (多重比較)

5.06③<① 8.89***

***

**

③<①,③<② .68n.s.

.44n.s.

p<.01, p<.001

4.71(3.62)

4.86(3.39)

10.82(3.10)

4.17(1.91)

7.27(3.51) 5.90(3.11)

7.85(2.88) 7.17(2.88)

日本文化への嗜好性 4.36(1.53) 4.58(1.82)

外国人友人関係 13.30(13.22) 11.82(2.60)

日本人友人関係

海外生活の適応困難 **

①5年未満(N=46) ②5~10年未満(N=41)③10年以上(N=28) F値

平均値(SD) 平均値(SD) 平均値(SD) (多重比較)

1.80n.s.

2.07n.s.

5.64

③<①,③<② .67n.s.

p<.01

383(2.64) 3.29(2.10) 3.86(2.40)

13.28(3.83) 12.26(3.77) 11.36(4.07)

4.71(2.07) 4.78(1.86) 3.21(2.42)

学業への不安 学業・将来への意欲 日本人友人交流

学校教師・学校友人関係 25.06(5.05) 25.31(4.20) 24.66(5.17)

**

**

(18)

結果(F(2, 105)= 3.41, p<.05)、海外 行動・積極的思考は3年未満の者が 6年以上の者より有意(p<.05)に高かった。

Table 9 日本帰国後期間別によるストレスコーピングの得点

6. 海外在住地域による比較

 海外のどの大陸に滞在したのかを分けて分散分析を行い、差に有意がで るかどうか分析を行った。2か国以上滞在した者は最後に滞在した大陸と する。分析を行う上で、北アメリカに最終滞在したのは46人、ヨーロッパ に最終滞在したのは29人、アジアに最終滞在したのは31人であった。しか し、南アメリカは4人、アフリカは1人、オセアニアは6人と被験者の数 が少なかったため、今回の分析には含めなかった。

(1) 海外生活適応に関する海外在住地域による比較

 Table 10は海外生活適応に関する因子の分散分析の結果である。日本文 化への嗜好性(F(2, 100)= 4.60, p<.05)は、北アメリカ在住よりもアジア 在住の方が有意(p<.5)に高かった。

①3年未満(N=50) ②3~6年未満(N=28)③6年以上(N=37) F値

平均値(SD) 平均値(SD) 平均値(SD) (多重比較)

3.41③<① .72n.s.

1.03n.s.

.06n.s.

2.51n.s.

p<.05

海外 行動・積極的思考 13.57(4.33) 11.89(5.19) 10.85(4.86)

日本 放置・逃避的思考 6.88(3.69) 6.79(2.62) 7.06(3.07)

認知的思考 3.88(1.81) 3.07(2.09) 3.06(1.90)

海外 放置・逃避的思考 8.67(4.02) 8.70(3.16) 9.56(3.00)

日本 行動・積極的思考 7.08(3.05) 6.54(3.45) 6.11(2.90)

*

*

(19)

Table 10 海外生活適応に関する因子の分散分析

(2) 海外学校生活に関する海外在住地域による比較

 Table 11は海外学校生活に関する因子の分散分析の結果である。学業・

将来への意欲(F(2, 100)=

4.23, p<.05)、日本人友人交流(F(2, 102)= 4.16, p<.05)のいづれも、北アメリカ在住の方がヨーロッパ在住よりも有意

(p<.5)に高かった。

Table 11 海外学校生活に関する因子の分散分析

 以上の結果から、大陸別によって有意な差がでたのは、日本文化への嗜 好性、学業・将来への意欲、日本人友人交流の4因子であった。北アメリ カとアジアの間には日本文化への嗜好性の差が認められ、北アメリカと ヨーロッパの間には、学業・将来への意欲、日本人友人交流に有意な差が 認められた。

①北アメリカ(N=46) ②ヨーロッパ(N=28) ③アジア(N=29) F値

平均値(SD) 平均値(SD) 平均値(SD) (多重比較)

1.29n.s.

2.23n.s.

n.s..99

①<③4.6

p<.05

海外生活の適応困難 6.70(3.28) 5.64(4.02) 5.52(3.55)

日本人友人関係 7.36(3.02) 5.86(3.24) 7.28(3.30)

外国人友人関係 13.4(13.01) 11.75(2.98) 10.45(3.05)

日本文化への嗜好性 4.00(1.93) 4.17(1.56) 5.17(1.31)

*

*

①北アメリカ(N=46) ②ヨーロッパ(N=28) ③アジア(N=31) F値

平均値(SD) 平均値(SD) 平均値(SD) (多重比較)

.03n.s.

4.23

②<① 4.16

②<① 1.84n.s.

日本人友人交流 4.78(1.86) 3.43(2.41) 4.71(2.08)

学業への不安 3.93(2.33) 3.96(2.85) 2.97(1.94)

学校教師・学校友人関係 24.67(4.40) 24.52(6.47) 24.87(5.16)

学業・将来への意欲 13.61(3.72) 10.96(5.02) 11.68(3.49)

p

<.05

*

*

*

(20)

考 察

 海外生活適応・海外学校生活適応・海外ストレスについては、海外生活 適応の困難と日本人友人関係、学業への不安の対して強い相関が見られた。

この結果から海外に在住することになった日本人は自分よりも長く在住し ている日本人に相談する可能性高いことが考えられた。それにより関係が 深まり日本人友人と一緒に時間を過ごすことにより、滞在国の適応に影響 することも考えられた。現地校に通っていた場合、母語以外の言語習得の 困難さもあり、学業への不安も高くなるといえた。

 また日本人友人関係と日本文化への嗜好性、日本人友人交流に対して強 い相関が見られた。この結果から在住国で日本人と友人関係があると日本 の文化や流行などを話すことにより、日本文化への嗜好性があったと思わ れる。そして学校でも悩みを聞いてくれる日本人,親しい日本人がいるこ とによってより日本に対する嗜好性を高めると示唆された。

 日本生活再適応、日本ストレスについては、日本の行動・積極的思考と 認知的思考との間に強い相関が見られた。これは日本へ戻った時に問題の 原因を見つけ、今の経験は自分のためになると思うことにするという傾向 が高いと考えられた。

 性差については、男性の方が日本に帰国した後の再適応が女性よりも困 難であることが分かったが、帰国時の年齢や地域との関係でさらに詳細を 検討する必要がある。また海外在住期間による比較では、海外生活適応の 困難、海外在住時の中の日本人友人関係、海外学校の中の日本人友人交流 に差がみられた。海外生活の適応は10年以上の滞在者よりも5年未満の滞 在者の方が困難に感じることが分かった。これは、Gullaborn & Gullaborn

(1963)による適応プロセスの中によって説明されるだろう。5年未満滞

在者は異文化に対しての不安・混乱といったカルチャーショック期であ

り、10年以上滞在者が適応期である確信や満足の時期の適応過程をすでに

(21)

たどっている可能性が考えられるからである。

 日本人友人関係では10年以上滞在者よりも5年未満滞在者、そして10年 以上滞在者よりも5~ 10年未満滞在者の方が平均的に高いことが明らか になった。これは、先ほどの視点から、5年未満滞在者が適応プロセスの 中のカルチャーショック期であったことや、5~ 10年未満滞在者が10年 以上滞在者よりも適応期のレベルが低いことを考えると、海外生活や学校 生活の中で日本人と交流が多いのではないかと思われた。

 一方、日本に帰国してからどれくらいの年月が経っているのかによって の海外生活適応、日本再適応、ストレスの得点平均値の結果、ストレスへ の行動的・積極的思考の中に差が認められた。海外での行動的・積極的思 考は日本に帰国して6年以上経っている者よりも、日本に帰国して3年未 満の者の方が高かった。理由として、3年未満の者は帰国して長い期間が 経っていないため、6年以上経っている者よりもずっと鮮明に海外で過ご してきたことや、頑張ってきたことを思い出しやすく、海外で行動的・積 極的にしてきたことを回答したのではないかと考えられた。また、過去の 自分の記憶(Ross,1989)と適応プロセス(Gullaborn & Gullaborn,1963)

から考えると、日本に帰国して時間が経たない間はハネムーン期であり、

日本に戻ってきて高揚する時期であるため、日本で正な感情のまま、海外 で過ごしてきたことも同じく正として考えられるのではないかと推測され た。また、海外ストレスへの行動的・積極的思考による相関で6年以上と 3年未満の相関では、どちらも学業・将来への意欲と関連があることが分 かった。つまり、海外ストレスへの行動的・積極的思考は学業・将来への 意欲と関連があり、日本に帰国して3年未満の者の方が高かったことが明 らかになった。

 海外在住地域により異なる結果が得られた。日本文化への嗜好性は北ア

メリカよりもアジアに在住していた者が高かった。北アメリカとアジアを

(22)

比べると、北アメリカに日本から遠く、多民族が暮らしている地域であり、

日本人を含む外国人を受け入れやすい環境であり住みやすく、多くの文化 に触れあう機会がある。対する、アジアは日本から近く北アメリカよりも 日本に人種や文化が似ていることから小さな違いを意識しやすく、また、

北アメリカに比べて経済が発展している国が少ないことから、日本文化へ の嗜好性に繋がったのではないかと考えられた。

 学業・将来への意欲、日本人友人交流ではヨーロッパよりも北アメリカ の方が高かった結果となった。ヨーロッパと北アメリカを比べると、長期 滞在者の「就学別・地域別在留邦人(学齢期)子女数」(外務省,2013)

による2005年以前まではアメリカがトップであり、2005年以降も2番目に 日本人の子どもが多いことから、日本人友人交流が多いことが推測された。

また、学業・将来への意欲に関しても、周りが英語の環境でありながら日 本人の友達が多いことから、安心して勉強し、将来への意欲に繋がった可 能性があった。また、放置・逃避的思考がヨーロッパよりも多い理由とし て、ヨーロッパと北アメリカを比べてみる。Maki(2001)によると、ヨー ロッパの教育の特徴としては「個人主義、自己責任が強い(自立)、本質的、

学校は勉強重視」であるのに対し、アメリカは「集団の中の個、面倒見が いい(依存)、表面的、学校は社会性も重視」である。この中の「本質的、

表面的」の対比について、アメリカでは「表面的」といった部分を持つた め、そこで教育を受けたものへの影響も示唆された。

 従来の日本再適応の研究では、対象が子どもに絞られていたり、アメリ

カ在住者が多かったりして、帰国子女というイメージや概念が一括りにさ

れてきた。しかし、今回の調査では子どものみに限定するのではなく20歳

以上も視野に入れたことや、多くの国を対象としたことから、大変興味深

い見解が得られた。また、今回の結果から、小島・深田(2011)による「帰

国後の長さによって日本生活再適応に影響する」といった見解や箕浦

(23)

(1988)による「帰国した時に海外の体験を思い出す際に帰国時年齢は大 きな要因」といった見解の重要性を再確認することができた。男女の違い だけでなく滞在期間の長さや帰国してからの長さ、大陸の違いよって生活 してきた者たちの海外生活適応、日本再適応、ストレスに違いがあること が明らかとなった。結果に示された長期滞在者の多様性から、海外から帰 国してきた者たちへの対応や学校を含めた支援は違ってくるのではないだ ろうか。

今後の課題

 本調査により、学校生活適応・日本生活再適応・海外および日本ストレ スとの関連性を明らかにしたが、どの要因が影響しあうのかの関係性を明 らかにする分析が必要である。今回の調査では、日本人学校、現地学校、

インターナショナルスクール、その他のデータを取っていたが分析の対象 としなかった。そのため、滞在地でどのように教育を受けていたかを調べ ることができなかった。また、海外生活での適応困難では、日本人友人関 係との強い相関があったが、今後の課題として、どのような状況、環境の 中で教育を受けてきたのか、現地の生活との関連から具体的に検討してい きたい。

文 献

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(25)

付 記

・本研究は第1著者が指導教員として提出された、2014年度白百合女子大学卒業論文「長 期海外在住経験がもたらす日本社会への再適応」(壇史織・川峰恵梨香)を再検討した ものである。

・本研究を進めていくにあたり、高校生52名の調査協力に際しては、東京都立国際高等 学校(青山彰校長)の御理解と御協力を得た。とりわけ、同校の志村修司教諭には、

実施上の多大な御尽力をいただいた。また、白百合女子大学の倉住修准教授には協力

校への紹介の労をいただいた。記して感謝いたします。

(26)

Table 3 学校生活適応の因子分析結果(最尤法、プロマックス回転) 質問項目 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ h 2 Ⅰ因子:学校教師・学校友人関係(α=.838) 先生は私によく声をかけてくれた 私は、海外の学校で気軽に話せる先生がいた 私は、海外の学校で相談できる先生がいた 私は、海外の学校に好きな先生がいた 私は、海外の学校の先生を信頼していた 私は、先生に親しみや暖かさを感じていた 友達がいるから学校へ行くのが楽しかった 海外の学校の授業は楽しくなかった(R) 私には親しい外国人の友人がいた 私は、友人からの相
Table 4 海外ストレスの因子分析結果(最尤法、プロマックス回転) Table 5 日本帰国後ストレスの因子分析結果(最尤法、プロマックス回転)質問項目ⅠⅡh2Ⅰ因子:海外 行動・積極的思考(α=.762)問題の原因を見つけようとしたその時の状況を良くしようと努力した今の経験はためになると思うことにした情報を集めた自分のおかれた状況を人に聞いてもらった自分で自分を励ました何らかの対応が出来るようになるのを待った.73-.04.52.63-.06.38.58-.06.33.58-.15.32.52-.08
Table 7 海外在住期間別による海外生活適応の得点 (2) 海外学校生活に関するに関する在住期間の比較  日本人友人交流(F(2, 113)= 5.64, p&lt;.01)は、5年未満と10年以上そし て5年~ 10年未満と10年以上に5%水準の有意差が認められた。 Table 8 海外在住期間別による海外学校生活適応の得点  以上の結果から、海外在住期間別による差の有意が認められたのは、海 外生活適応の困難、海外在住時の中の日本人友人関係、海外学校の中の日 本人友人交流の3因子だった。海外生活適応の
Table 10 海外生活適応に関する因子の分散分析 (2) 海外学校生活に関する海外在住地域による比較  Table 11は海外学校生活に関する因子の分散分析の結果である。学業・ 将来への意欲(F(2, 100)=   4.23, p&lt;.05)、日本人友人交流(F(2, 102)= 4.16,  p&lt;.05)のいづれも、北アメリカ在住の方がヨーロッパ在住よりも有意 (p&lt;.5)に高かった。 Table 11 海外学校生活に関する因子の分散分析  以上の結果から、大陸別によって有意な差がで

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