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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

脱細胞化肝臓由来可溶化マトリックスの開発および 再生医療技術への応用に向けた検討

中村, 晋太郎

http://hdl.handle.net/2324/1500689

出版情報:Kyushu University, 2014, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(2)

(様式2)

氏 名 : 中村 晋太郎

論 文 名 : 脱細胞化肝臓由来可溶化マトリックスの開発および再生医療技術への 応用に向けた検討

区 分 : 甲

論 文 内 容 の 要 旨

臓器機能の代替技術として再生医療が期待されており、細胞、足場および増殖因子からなる組織 工学は再生医療技術の実現に対して有効なアプローチとして盛んに研究されている。ここで、足場 は細胞の挙動に影響を与える因子である。なかでも、生体由来天然高分子は細胞への情報伝達や生 体適合性に優れており、特に臓器特異的な細胞外マトリックス(ECM)は細胞に対して最適な微小 周囲環境を提供する足場材料として有望であると考えられる。一方、増殖因子は細胞の生存や増殖 だけではなく分化や機能発現にも影響を与えるシグナル伝達物質であるが、安定性に欠けるといっ た問題がある。そこで、増殖因子を足場材料に固定化する試みがなされており、これにより安定性 の向上だけではなく細胞への効率的なシグナル伝達が可能になることが期待される。本研究では、

肝組織構築に対して有効な足場材料の開発を目的とした。足場材料として、細胞に対して最適な微 小周囲環境の提供が可能であると考えられる肝臓特異的 ECM に着目した。ここでは、この足場材 料が増殖因子固定化能を有することで、細胞に対して足場と固定化増殖因子による相乗的なシグナ ル伝達が可能になることを期待した。このような特徴を有する足場材料により細胞の微小周囲環境 を整えることで肝組織の構築を目指した。具体的には、肝臓特異的 ECM の取得ならびにその可溶 化方法の検討(第3章)を行った。さらに、生体内微小周囲環境の模倣を目指した増殖因子固定化 可能な肝臓特異的ECMゲルの構築とその有効性評価(第4章)に関する研究に取り組んだ。

第1章では、本研究分野の背景を解説し、本研究の意義や方針を示した。

第2章では、組織工学用足場材料として果たすべき役割、有すべき特徴を示した。また、それぞ れの材料の特徴や肝組織工学の実現に向けた他者の研究を記すことで、本研究の位置づけを明らか にした。

第3章では、材料の獲得と本研究概念の正当性の検証を目的とし、取り扱いが容易な小動物であ るラットを用いて検討を行った。ラット肝臓を脱細胞化することで細胞成分を概ね除去できた肝臓 特異的ECM を取得した。これを6N 塩酸を用いて可溶化することで脱細胞化肝臓由来可溶化マト リックス(L-ECM)を開発した。L-ECMは肝細胞増殖因子をはじめとする各種増殖因子との親和 性を有しており、増殖因子の生物活性を保持したまま固定化可能であることを明らかにした。また、

L-ECM は成熟肝細胞および胎仔肝細胞の機能発現および肝分化もしくは成熟に対して有効であっ た。一方、実用化に向けた材料の大量取得を目指し、脱細胞化および可溶化条件の検討を行った。

脱細胞化方法は DNA 量、グリコサミノグリカン量、タンパク量、分子構造さらに取得に要する時 間に影響を与えることが示され、可溶化方法は肝臓特異的 ECM の可溶化率および分子構造に影響 を与えることを明らかにした。また、これらの検討から、肝臓 ECM の分子構造および組成を維持 した肝臓特異的ECMの取得に適した脱細胞化および可溶化方法を見出した。

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第4章では、角膜や心臓弁など、ヒトへの応用がなされているブタから肝臓特異的ECMの取 得を行った。具体的にはラット肝臓を用いて最適化された脱細胞化および可溶化方法によりL-ECM を開発した。ブタから得られた L-ECM は、ラットの場合と同様に増殖因子との親和性を有し、さ らに生理的温度および pHにおいて生じる分子の自発的な架橋によりゲルを形成することが可能で あった。したがって、L-ECMの開発により増殖因子固定化可能な肝臓特異的ECMゲルの構築が可 能であることを見出した。また、L-ECMの物性評価を行い、L-ECMの濃度を調整することでゲル 化挙動、ゲルを構成する線維密度、ゲルの分解挙動、力学強度などが操作可能であることを明らか にした。さらに、通常、機能が低下および損失しやすい初代肝細胞を用いた検討により、L-ECM は21日間の培養期間において初代ラット肝細胞の肝特異的機能(アルブミン合成、薬物代謝活性)

の向上および維持に対して有効であることが示された。また、異種動物の肝臓特異的 ECM でさえ も細胞に対して適切な周囲環境を提供できる可能性を見出した。一方、L-ECM ゲルを初代ラット 肝細胞の移植用キャリアとして用いることで、細胞の生着や組織体形成に対して有効であることが 示された。以上から、L-ECM は肝細胞の微小周囲環境を整える材料として有効であることを見出 した。

第5章では、各章の総括を行うとともに、得られた結果から今後の課題や将来展望を記述した。

参照

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