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九州大学学術情報リポジトリ

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

遷移金属カチオンにより飛躍的に活性化される部位 特異的RNA化学修飾反応の開発およびmRNA修飾による 翻訳制御法の検討

實﨑, 大地

http://hdl.handle.net/2324/1654814

出版情報:Kyushu University, 2015, 博士(創薬科学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(2)

遷移金属カチオンにより飛躍的に活性化される部位特異的RNA化学修飾反応の開発 およびmRNA修飾による翻訳制御法の検討

(分野名 生物有機合成化学分野) (学籍番号) 3PS13003E (氏名)實﨑大地

【目的】近年疾患の原因となる遺伝子を標的として、アンチ センス、siRNAやmiRNAなどのRNAを標的とした核酸医薬 品の研究が盛んに行われている。その中でもmRNAを標的と する部位特異的塩基部化学修飾は、翻訳阻害やコドン改変を 引き起こすことで mRNA レベルでの遺伝子編集技術や新規 核酸医薬品の基礎技術への展開が期待される(Fig. 1)。そこで 本研究では、部位特異的 RNA化学修飾の開発と修飾 mRNA による翻訳制御を目指し、プローブDNAと標的RNAの二本 鎖形成による近接効果により部位特異的に官能基を RNA へ と転移させる官能基転移人工核酸についての研究を進めてい る(Fig. 2)。

【方法と結果】これまでに当研究室では、第1世代の官能基 転移人工核酸としてジケトン型分子型転移基を6-チオグアニ

ン骨格に導入し、シトシンアミノ基のマイケル付加反応と引き続く6-チオグアニンの脱離反応によりシトシ ンアミノ基の修飾を達成している 1。この反応は条件をコントロールすることによってグアニン 2 位アミノ 基の修飾法にも展開された。しかし、第1 世代のジケトン型転移基は、プローブの安定性と反応性が低く、

高効率なシトシン修飾は達成されていなかった。本研究ではこれらの問題を解決する第2 世代の新しい転移 基として、ピリジンモノケトン型転移基を開発し、第1世代に比べて200倍以上の高効率な官能基転移反応 を実現した2。第2世代の転移官能基は、安定性と反応性という相反する性質を達成するために、金属カチオ ンによる反応誘起の利用を考え、ピリジンモノケトン型転移基を設計した(Fig. 3, 4)。

本研究の初期において、官能基前駆体として 1 を用い合成した DNA プローブを用いて標的部位にシトシ ンをもつRNAに対し官能基転移反応を行ったところ、中性条件・塩化ニッケル存在下で反応は速やかに進行 した。しかし、反応収率は約1時間後に30%に達した後変化せず、DNAプローブも消失しないことが分かっ た。この現象を検討した結果、DNAプローブ中に導入された転移基に2種類の異性体が混在し、一つの異性 体のみが選択的に反応していたことが分かった(Fig. 5)。そこで、これらの異性体が転移官能基中ビニル基の

E-, Z-異性体と予想し、転移基のE-, Z-異性体選択的な合成法を6-チオグアニンモノマー体で検討した。その

結果、転移基前駆体として2, 3を用いることで、E-, Z-異性体選択的な合成を達成した(Fig. 6)。

Fig. 4 ピリジン型での官能基転移反応

Fig. 3 第二世代型官能基の設計

Fig. 1 化学修飾によるmRNA機能制御

Fig. 2 官能基転移反応

Fig. 5 官能基転移反応初期検討 Fig. 6 E-, Z-異性体選択的合成法の検討

Low yield (< 30%)

(3)

そこで2, 3を用いE-, Z-異性体選択的にDNAプローブを合成し、標的塩基部位にシトシンをもつRNAに 対して官能基転移反応を検討したところ、中性条件下、RNAに対して1当量のNiCl2存在下、E-体転移基が 選択的に導入されたDNAプローブのみで高効率に反応が進行することを見出した(Fig. 7A)。また、反応液中 へのEDTA添加により反応が完全に停止したことから、金属カチオンが反応活性化に必須であることが分か った。非常に興味深いことに金属カチオンを添加しない緩衝液のみの条件においても反応速度は遅いものの 反応の進行が観測され、これから官能基転移反応では緩衝液中に含まれる微量金属カチオンによっても活性 化する可能性が示唆された(Fig. 7B)。さらに、シトシン以外の標的に対する反応性を比較したところ、他塩基 に対する反応性は非常に低く、高いシトシン塩基選択性が示された。NiCl2以外の二価金属カチオンによる反 応誘起効果についても検討を行ったところ、CoCl2も同等の加速効果を示した他、CuCl2およびZnCl2もNiCl2

には劣るが加速効果を示した(Fig. 7C)。

次に、官能基転移反応で得られた転移基修飾体の構造決定を試みた。転移官能基の転移した塩基部位の確

認はHPLC/MS/MSで決定し、標的RNA中シトシン以外の塩基部での修飾は起きていないことが確認された

(Fig. 8A)。さらに、シトシン塩基修飾部位の決定のため、修飾シトシン体を含むRNAを酵素加水分解するこ

とで修飾シトシン体の単離を試みたが、修飾シトシン体が酵素加水分解条件において分解し、単離が困難で あり、構造決定ができなかった。そこで、修飾シトシン体を安定な誘導体に変換した後に酵素加水分解を行 うことで構造決定を試みた。この誘導体化に際して、基質はRNAから還元反応条件下で安定なDNAに変更 した。転移反応により修飾されたDNAを単離精製後、NaBH4で還元し、加水分解を行うことで還元された誘 導体として修飾シトシン体を単離することに成功した。この誘導体はチミジンを出発原料として別途化学合 成した標品とHPLCにて比較し、その結果誘導体の構造はシトシン塩基部4位アミノ基修飾体であると決定 した(Fig. 8B, C)。

ピリジンモノケトン型転移基は、分子設計において金属錯体形成がルイス酸としての作用し、ビニル基の 反応性を高め反応が活性化されること期待していた。そこで、金属カチオンによる反応活性化効果を調べる ため緩衝液中における ODN プローブの安定性を第一世代のジケトン型転移基および反応性のないモノケト ン型転移基と半減期に基づき比較したところ、ジケトン型に比べ半減期が2 倍となり安定性の向上していた (Fig. 9A)。この時非常に興味深いことに、ピリジンモノケトン型転移官能基では、反応が飛躍的に活性化され ているNiCl2存在下条件においても水中での安定性にほとんど変化がなかった。加えて、この安定性は反応性 が大幅に低かったジケトン型転移基よりもさらに高いことが分かった(Fig. 9A, B)。つまり、ピリジンモノケ トン型転移基は化学的安定性を損なうことなく、DNA/RNA 2本鎖内で金属カチオンにより活性化されるとい う反応設計段階では考えられなかった特異な性質があると示唆された。そこで、官能基転移反応の反応活性 化機構を明らかとするため、さらに詳細な検討を加えた。

Fig. 8 修飾RNA構造決定(A:HPLC/MS/MSによる修飾位置の決定, B:修飾RNAの還元, C:標品合成)

(A) (B)

(C)

[ODN]=7.5 μM [RNA]=5μM [NiCl2]= 5μM pH 7.0, 37oC

Fig. 7 官能基転移反応評価(A:E-,Z-異性体の影響, B:NiCl2反応加速効果, C:各種金属カチオン反応加速効果)

(A) (B) (C)

(4)

詳細な反応機構を明らかとするため、官能基転移反応の標的 RNA 配列依存性の評価および反応の速度論 的解析を行った。まず、転移反応の標的RNA配列依存性の検討では、標的RNA中シトシンの隣接塩基配列 を変えた16種のRNAに対して官能基転移反応を行った。その結果、標的シトシンの5'側隣接塩基がアデニ ンとグアニンの場合に反応は効率的に進行した(Fig. 10A)。これから、標的シトシン隣接塩基で5'側プリン塩 基の7位窒素と金属カチオンとの錯体形成の関与が予測された。そこで、5'側又は3'側のグアニンを錯体形成 しない7-デアザグアニンに置換した標的RNAでの反応を試みたところ、5'および3'側、あるいは5'側のみ隣 接塩基を置換した標的RNAでは官能基転移反応は進行しなくなった。一方で、5'側にグアニンがある場合で は影響を受けなかったことから、5'側グアニン(プリン塩基)の7位窒素が錯体形成に寄与することが転移反応 の活性化に重要であることが示唆された(Fig. 10B)。

続いて、官能基転移反応を1次反応として解析し、反応温度依存性及びNiCl2濃度依存性を測定した。さら に、1次反応速度定数を算出、アレニウスプロットから各NiCl2濃度における⊿G、⊿S、⊿Hを求めた。そ の結果、官能基転移反応では NiCl2非存在下において-T⊿Sが⊿Gの主要素であり、NiCl2の濃度の増加に伴 い⊿Gが低下し、同時に⊿Hが⊿Gの主要素に変化することが分かった(Fig. 11A)。この変化を基に反応過程 を考察したところ、NiCl2濃度上昇に伴う律速段階の変化が予測された。つまり、官能基転移反応は1, 4付加 反応に続くβ脱離反応により進行するが、NiCl2非存在下では 2分子間反応の 1, 4付加反応が律速段階であ り、NiCl2存在下では1分子反応の脱離反応へと律速段階が変化したと考えられた(Fig. 11B)。以上の結果か ら、官能基転移反応の反応活性化段階について予測した。反応活性化段階では、ピリジンケト部分と錯体形 成したNi2+は更に標的シトシン部位の隣接プリン塩基、7位窒素原子と錯体形成し、DNA/RNA 2本鎖間に架 橋型の錯体を形成する。その結果、DNAプローブと標的のRNAが強制的に接近し、シトシンアミノ基と反 応点が近接することで、反応が飛躍的に加速した。また、この架橋型錯体形成による近接効果により律速段 階が変化し、1, 4付加反応の段階における-T⊿Sの低下、一方では脱離反応の段階における⊿Hの上昇が引き 起こされたと考えられた(Fig. 11C)。

さらに、本研究の最終目的であった修飾RNAによる翻訳過程への影響の評価を行うため、人工的に構築し た mRNA を用いた部位特異的修飾によるコード改変(アミノ酸置換)評価系の開発を行った(Fig. 12A)。人工 mRNAは蛍光タンパク質であるAcGFPにFLAG、標的配列、HisをコードしたmRNAとして設計した。この mRNAに官能基転移反応を行った後、in vitro translationにより得られたタンパク質をHis-Tagにより精製後、

(A) (B) (C)

Fig. 11 官能基転移反応機構の考察(A:速度論的パラメーター, B:反応機構考察, C:予測反応活性錯体)

Fig. 10 官能基転移反応の標的RNA配列依存性(A: 標的シトシン隣接塩基の影響, B:隣接グアニン7位窒素の影響)

[ODN]=7.5 μM [RNA]=5μM [NiCl2]= 5μM pH 7.0, 37oC 1 h

(A) (B)

Fig. 9 各転移官能基の安定性・反応性比較(A:緩衝液中の半減期, B:反応性比較)

(A) (B)

(5)

enterokinaseにより切断し、再びHis-Tagにより精製、アミノ酸置換部位を含む短鎖ペプチドを単離し、MALDI-

TOF/MS により構造決定を行うことで、官能基転移反応によるコドン改変の検出を試みた。その結果、官能

基転移反応を行わなかったコントロールで目的物である短鎖ペプチドを MALDI-TOF/MS で検出することに 成功した。一方で、官能基転移反応を行ったサンプルではコントロールと同様の短鎖ペプチドが検出された ものの、期待された1アミノ酸置換が起きた改変ペプチドは検出されなかった。この原因を検討したところ、

原因の一つとして人工mRNAへの転移反応による部位特異的修飾が進行していない、あるいは反応効率が低 下していた可能性が考えられた。そこで、長鎖RNA中での官能基転移反応による部位特異的修飾の検出およ び定量化を目的として、RNase Hおよびchimera probeを用いた部位選択的RNA切断を検討した(Fig. 12B)。

本手法ではRNase Hが標的RNAと2'OMe-RNA/DNA Chimera probeが形成する2本鎖のうちDNA/RNA 2本 鎖部位を特異的に認識し、選択的にRNA鎖を切断することで得られた修飾RNA部位を含む短鎖RNAをゲ ル電気泳動により分離することでゲルバンドシフトから、標的RNAの修飾検出を試みた。その結果、Luciferase mRNAの部位選択的切断により短鎖RNAの検出は達成されたが、修飾RNAのゲルバンドシフトを観測する ことはできなかった。これは、標的とした標的配列では転移反応効率が低い、あるいは修飾RNAバンドのシ フト幅が小さいことが考えられ、標的 RNA 配列選定と修飾に用いる転移基の検討が今後必要だと考えられ る。

【結論】

以上、本研究では新規転移官能基を用いた金属カチオンによる活性化を利用した官能基転移反応による部 位特異的RNA中シトシン修飾と反応機構解明を検討した。また、本反応を用いて人工mRNAおよびLuciferase mRNAの部位特異的修飾とその検出、さらに修飾mRNAがin vitro translationに及ぼす影響についての検討も 行った。その結果、新規転移官能基を用いた高効率な標的RNA中シトシン特異的修飾を達成し、さらに本反 応が反応活性化段階においてDNA-RNA間に架橋した錯体を形成することで高い反応性を実現しているとい う非常に興味深い反応機構を明らかにした。本反応を用いた長鎖RNAの修飾及び翻訳への影響評価は、人工 mRNA を用いたコード改変の評価系構築および長鎖 RNA 中での修飾部位の検出、定量化の手法の開発を達 成したが、修飾RNAによる翻訳過程での遺伝情報編集を検出することはできなかった。この原因は標的配列 による転移反応の反応性の低下が影響していると考えられ、適切な標的の選択により反応性を向上させるこ とで、修飾RNAによる翻訳過程の制御の検出が期待される。

【引用文献】

1. Sasaki, S.; Onizuka, K.; Taniguchi, Y. Chem. Soc. Rev., 2011, 40, 5698.(b Onizuka, K.; Shibata, A.; Taniguchi, Y.; Sasaki, S.

Chem. Comm., 2011, 47, 5004. (c) Onizuka, K.; Nishioka, T.; Li, Z.; Jitsuzaki, D.; Taniguchi, Y.; Sasaki, S. Chem. Comm., 2012, 48, 3969.

2. Jitsuzaki, D.; Onizuka, K.; Nishimoto, A.; Oshiro, I.; Taniguchi, Y.; Sasaki, S. Nucleic Acids Res.,2014, 42 (13), 8808.

Fig. 12 1アミノ酸置換検出の評価系(A)、mRNA中での修飾部位の検出法(B)

(A) (B)

参照

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