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ノイズとヘイズを除去する画像強調

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Academic year: 2022

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(1)

ノイズとヘイズを除去する画像強調

于, 子涵

https://doi.org/10.15017/1654890

出版情報:Kyushu University, 2015, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

ノイズとヘイズを除去する画像強調 Image Enhancement Removing

Noise and Haze

2016 年 3 月 于 子涵

Zihan Yu

(3)

i

目次

第 1 章 序章 1

1.1 研究背景と目的 ………2

1.2 画像強調に関する研究の分類 ………4

1.2.1 ヒストグラム補正 ………5

1.2.2 コンボリューション処理 ………8

1.2.3 アンシャープ処理 ………8

1.2.4 雑音の強調を抑制した強調処理 ………10

1.3 ノイズ除去に関する研究 ………10

1.3.1 高感度ノイズ ………11

1.3.2 アート風 HDR 画像のノイズ ………12

1.3.3 ノイズ処理 ………13

1.4 ヘイズ除去に関する研究 ………14

1.5 本論文の構成 ………15

第 2 章 クロスバイラテラルフィルタによる雑音を抑制する画像強調 17

2.1 本章の概要 ………18

2.2 バイラテラルフィルタ (BF)………18

2.3 クロスバイラテラルフィルタ ………20

2.4 詳細成分増幅による鮮鋭化 ………22

2.5 BF による雑音抑制 ………22

2.5.1 2 段階 BF による雑音抑制 ………22

2.5.2 クロス BF による雑音抑制 ………23

(4)

ii

2.6 実験 ………24

2.7 一般の画像強調への拡張 ………30

2.8 まとめ ………35

第 3 章 値域分割フィルタによる雑音除去と鮮鋭化 36

3.1 本章の概要 ………37

3.2 値域分割フィルタ ………38

3.2.1 値域分割 ………38

3.2.2 チャネル平滑化 ………39

3.2.3 値域分割平滑化 ………40

3.2.4 実験 ………41

3.3 帯域選択平滑化 ………42

3.3.1 帯域選択値域分割フィルタ ………43

3.3.2 暗帯域平滑化フィルタ ………44

3.3.3 更新暗帯域平滑化フィルタ ………44

3.4 雑音除去の実験 ………46

3.5 値域分割画質改善 ………48

3.5.1 値域分割アンシャープマスキング ………49

3.5.2 値域選択アンシャープマスキング ………50

3.5.3 値域分割雑音抑制鮮鋭化 ………52

3.6 まとめ ………55

(5)

iii

第 4 章 L

バイラテラルフィルタによるアート風 HDR 画像の雑音除去 56

4.1 本章の概要 ………57

4.2

L

バイラテラルフィルタ ………62

4.3 細部テクスチャの回復 ………64

4.4 平滑化と鮮鋭化の反復 ………66

4.5 実験 ………70

4.6 まとめ ………74

第 5 章 画像の反復フィルタリングによる逆フィルタ 75

5.1 本章の概要 ………76

5.2 逆バイラテラルフィルタ ………77

5.3 ぼけがない場合の鮮鋭化 ………87

5.4 SOR 反復法 ………88

5.5 逆フィルタの反復法 ………91

5.6 減速逆反復法 ………93

5.7 緩和逆反復法 ………96

5.7.1 逆ハーフトーニング ………96

5.7.2 逆量子化 ………98

5.7.3 アート風フィルタの逆変換 ………99

5.7.4 超解像 ………102

5.7.5 反復正則化 ………104

5.8 まとめ ………106

(6)

iv

第 6 章 バイラテラル最小値 / 最大値フィルタによる画像のヘイズ除去 107

6.1 本章の概要 ………108

6.2 関連研究 ………109

6.3 バイラテラル最小値フィルタによる画像のヘイズ除去 ………110

6.3.1 最小値フィルタ ………111

6.3.2 バイラテラル最小値フィルタ ………111

6.3.3 ヘイズモデル ………113

6.3.4 奥行きの推定 ………114

6.3.5 環境光の推定 ………115

6.3.6 透過率の推定 ………115

6.3.7 Dehazing 処理 ………117

6.3.8 実験結果・評価 ………118

6.4 バイラテラル最小値フィルタとバイラテラル最大値フィルタによる画 像のヘイズ除去 ………130

6.4.1 バイラテラル最小値フィルタとバイラテラル最大値フィルタ ………131

6.4.2 暗包絡画像と明包絡画像 ………132

6.4.3 環境光の推定 ………132

6.4.4 透過率の推定 ………133

6.4.5 物体色の推定 ………135

6.4.6 実験・評価 ………136

6.5 バイラテラル最小値 / 最大値フィルタによる水中写真の強調 ………147

6.5.1 水中写真の強調 ………147

6.5.2 水中の環境光 ………148

6.5.3 水中の透過率 ………149

6.5.4 水中の物体色 ………149

6.5.5 実験・評価 ………150

6.6 まとめ ………155

(7)

v

第 7 章 色相を保存するシフトアンシャープマスキングによる物体色再現 156

7.1 本章の概要 ………157

7.2 議論の基礎 ………158

7.2.1 点処理と面処理 ………158

7.2.2 色相を保存するアフィン色変換 ………158

7.2.3 シフトアンシャープマスキング ………159

7.2.4 暗包絡画像と明包絡画像 ………161

7.3 ヘイズ除去 ………161

7.3.1 画像生成モデル ………161

7.3.2 逆問題 ………162

7.3.3 環境光と透過率 ………162

7.3.4 出力画像 ………163

7.3.5 0 割について ………163

7.4 緩和ヘイズ除去 ………164

7.5 画像の明変換 ………165

7.6 一般化画像生成モデル ………166

7.6.1

δij

と ε

ij

の設定 ………167

7.7 シフト UM としての画像変換 ………168

7.8 実験 ………169

7.9 まとめ ………181

第 8 章 バイラテラル包絡フィルタによる物体色の強調復元 182

8.1 本章の概要 ………183

8.2 バイラテラル包絡フィルタ ………184

8.2.1 最小値画像と最大値画像 ………184

8.2.2 包絡画像 ………184

(8)

vi

8.2.3 バイラテラル包絡フィルタ ………185

8.3 画像観測モデルによる物体色復元 ………189

8.4 画像の色域変換 ………191

8.5 彩度増幅率の適応的調節 ………192

8.6 実験 ………194

8.6.1 ヘイズ除去 ………194

8.6.2 露光不足補正 ………196

8.6.3 露光過多補正 ………197

8.6.4 明暗領域混在画像 ………198

8.6.5 モノクロ画像 ………200

8.7 まとめ ………202

第 9 章 結論 203

9.1 本研究のまとめ ………204

9.2 今後の課題 ………206

謝辞 208

参考文献 209

(9)

1

第 1 章

序論

(10)

2

1.1 研究背景と目的

近年の画像取得技術の急速な発達により,画像データの量と重要性は爆発的に増して いる.自然科学で用いられる医療用CT・MRI,共焦点レーザー顕微鏡,望遠鏡,人工 衛星等の観察・観測装置及び,工学・重工業でのCT,監視カメラ等の測定・計測装置 から得られるデジタルデータは,画像データとしてコンピュータ内に記録される.また,

デジタルカメラやカメラ付き携帯電話の普及により,デジタル画像データは研究者や技 術者だけでなく一般のユーザも日常的に取り扱うデジタルデータとなった.

デジタルカメラを用いて撮影する際,撮影画像には撮影者の意図しないノイズが発生 し,その結果,撮影画像の画質が劣化してしまう.この原因として,カメラの内部機構 の一つであるイメージセンサで撮影画像の輝度とは無関係な誤った電気信号が発生し てしまうことが挙げられる.イメージセンサで誤った電気信号が発生する要因として,

カメラのISO感度と呼ばれる光の感度を高く調整する機能に起因するものがある.光 量の少ない場所で撮影する際,ISO感度を高く調整することにより信号のゲインアップ をし,撮影画像を明るく表現する.このようにして,ISO感度を上げると,同時に撮影 画像中のノイズもゲインアップされてしまい,撮影画像中のノイズが目立ってしまうこ とになる.このゲインアップにより,撮影画像中において目立つようになるノイズを高 感度ノイズという[1].本研究では最初に,デジタルカメラで撮影した撮影画像に発生 するこのような高感度ノイズに着目し,撮影画像中の高感度ノイズ除去と画質向上化の ための手法について考察する.

デジタルカメラで撮影した撮影画像中の高感度ノイズを除去するには,一般にガウシ アンフィルタやメディアンフィルタがよく使われている.また,最近ではバイラテラル フィルタ[2]も使われるようになってきている.本研究ではバイラテラルフィルタを拡 張し,撮影画像のエッジ(輪郭)を保持したまま撮影画像中の高感度ノイズをどの程度 まで除去できるかを調べた.

また,露光を変えて撮影した複数枚の写真を融合してHDR(high-dynamic range) 画像を作成し[3],トーンマッピング[4],[5]と色彩強調をしてアート風HDR画像とする ソフトウェアが開発され,カメラにも実装されている.カメラでは手軽にアート風HDR 画像が作成できるが,強調度合いを調節できない[6].一方,ソフトウェアは手間がか かるが,パラメータを調節することができる.アート風な色合いにするには融合後の強

(11)

3 調度合いを強める必要があるが,画質を損ねるような雑音が部分的に生じてしまうこと が多い.本提案手法では,そのような雑音を除去する一手法を提案する.

更に,監視カメラや車載カメラ,デジタルカメラは屋外で使用する場合,ヘイズ(微 雨・霧・煙・空気中に多い微粒子PM2.5などの悪天候の状態)が発生していると,撮 影映像のコントラストが低下し,視認性が大きく悪化することがある.これにより物体 の認識・検出が困難となり,事故の発生や作業の中止などが多発する原因となる.ヘイ ズが強いと,人間の目では走行中の自動車やナンバープレートなどの物体を明確に識別 することができない.そのため,ヘイズを除去して,取得すべき情報の認識性の向上が 求められている.

画像のヘイズ除去の従来手法では,情景放射による光が,霧や煙の粒子に散乱されず にカメラに到達する度合い(透過率)の推定を必要とする.これらの従来手法のうち,

Heらの方法[7]のアルゴリズムフレームワークが最も単純でヘイズ除去品質が高い.He らは屋外のヘイズなし画像の統計に基づいてダークチャネル処理を使用し,粗い透過マ ップを推定して利用することにより,ヘイズを除去している.しかし,物体ごとに正確 なヘイズ濃度を推定することは容易ではなく,粗い透過率マップを推定することによる ブロック雑音を発生し,推定精度が低下する.また,環境光を推定することは,空の領 域を特定することと同等であるが,画像中に空の領域がないと推定値が不正確になる.

このようなことから本研究では,局所画素情報に基づく二つの単純なフィルタを組み合 わせて高精度の透過率マップを推定し,撮影条件によらずヘイズ除去の処理能力の向上 を図る手法を開発した.多様な画像を対象とした実験により画像強調結果を従来法と比 較し, 本論文の第6章で提案法の有効性を確認している[8],[9].

また本論文では,画像生成モデルによるヘイズ除去法と,それを一般化した画像生成 モデルによる画像強調法を画像の値域変換という観点からまとめ,これらがシフトアン シャープマスキングであることを示す[10].値域変換ではコントラストが強調されるだ けであるが,空間フィルタリングも組入れると鮮鋭化効果も付け加わる.提案法では色 相が保存されることを従来法との比較実験で示す.

本論文で提案する手法を監視カメラや車載カメラに利用すると,画像鮮明処理によっ て天候の影響による映像のコントラスト低下を改善して,画像中の物体を鮮明化し,視 認性を改善する.また,画像の中のヘイズで隠れた部分の視認性を向上させ,文字や数

(12)

4 字も読みやすくする.本手法を一般のビデオカメラへ搭載することで,豊かな色彩映像 を身近に視聴することも可能になる.また本提案法は,単一処理だけではなく,与えら れた画像(深海中や露光不足とヘイズが両方とも混在する画像)に応じでコントラスト 強調処理が可能なことも確認している[11],[12].

1.2 画像強調に関する研究の分類

画像強調は画像の有用性を高めるための処理で,その方法と目的は応用の種類によっ てかなり異なる.たとえば,カメラやテレビのように報道・娯楽・観賞のために画像が 強調される場合は画質,明瞭さ,見映えという視覚状況を改善するのが目的になる.機 械による物体認知の応用では,機械の性能を補うよう画像強調などの前処理をする.

画像強調は画像復元と密接に関連するが,両者の間には重要ないくつかの差異が存在 する.画像復元では理想の元画像が劣化されていることを前提に,処理後の画像をでき るだけ元画像に近づけることが目的となる.一方,画像強調では処理前の画像を改良し,

処理後の画像が鮮明に見えるようにするのが目的である.言い換えると,劣化のない元 画像をさらに復元することに意味はないが,明瞭さを高めることによってそれをより見 やすくすることができる.

画像の強調処理は対象物を見やすくするために画質を改善する処理であり,コントラ スト強調と画像鮮鋭化の二種類に大別される.コントラスト強調は白い部分はより白く,

黒い部分はより黒く表現する処理である.画像鮮鋭化は光学的なぼけで劣化している画 像に関してエッジや細部などの高周波数成分を強調し,見やすくする処理である.

以下に画像強調処理の手法の代表的なものとして,ヒストグラム補正,コンボリュー ション処理,アンシャープ処理,雑音の強調を抑制した強調処理を紹介する.

(13)

5

1.2.1 ヒストグラム補正

ヒストグラムは濃度値の分布の全体像をとらえるために多用される.これを補正する と,より鮮明な画像に変換できる.ヒストグラムの拡張と平坦化の2種類の補正方法を 選んで実行できるようにし,画像の改善を図る.ヒストグラムの補正方法には,ヒスト グラムの拡張(Histogram SpreadingまたはHistogram Stretching)と,ヒストグラ ムの平坦化(Histogram Equalization)の2種類がある.ヒストグラムの拡張のみを 行ない,これを平坦化と称している場合もある.

補正の対象とするヒストグラムは,Luminosity(輝度),またはRGB(R,G,B の平均)が一般的な画像である.

ヒストグラム拡張化はコントラスト強調法の一つであり,濃度値がある範囲に偏って 分布しているような画像に対して,もっと広い範囲に濃度の分布を無理やり広げるとい う濃度変換方法である.全体もしくは大部分の明るさに差が無く,見えにくい画像につ いて画像の濃淡をより強調して明確にし,視覚的な画質を改善させる処理である.

(a) 原画像のヒストグラム (b) 拡張化したヒストグラム 図1.1 ヒストグラム拡張化

図1.1(a)のようにヒストグラム拡張化前の濃度がある範囲に偏っている画像を,ヒス

トグラム拡張化によってより広い範囲に濃度の分布を拡大する処理である(図1.1(a)).

図1.1(a)における範囲( , )α β を図1.1(b)の( , )γ δ の範囲に変換するとき,変換後の濃度 y′

( )

y

δ γ

y

α γ

β α

 − 

′ = − ⋅ − + (1.1)

で求めることができる.図1.2は式(1.1)に示す濃度の変換を行う曲線の一例であり,こ の他種々の変換が考えられる.

(14)

6 図1.2 濃度変換曲線

図1.3(a)に示す見えにくい画像もヒストグラム拡張化法を用いることで図1.3(b)のよ

うに画像の濃淡がより明確になり,画質が改善したことがわかる.

(a) 入力画像 (b) 出力画像 図1.3 ヒストグラム拡張化した結果

濃度ヒストグラムの度数を平坦にすることで,明部と暗部を共に持つ原画像の補正に 適している.このような濃度変換をヒストグラム平坦化と呼ぶ.

(a) 原画像のヒストグラム (b) 平坦化したヒストグラム 図1.4 ヒストグラム平坦化

(15)

7 原画像の全ピクセル数をSIZEとすると,0から255までの,すべてのレベルの頻度

がSIZE/256になるように変換するのが,ヒストグラムの理想的な平坦化である.

これを式で表わすと,

0

255 ( )

y

i

y P i

SIZE =

′ = ⋅

(1.2)

となる.ただし,P i( )は原画像ヒストグラムにおけるレベルiのピクセル数である.変 換後の濃度y′は整数値をとるので,小さいP i( )が続くと,異なるyに対して同一のy′ 割り当てられ,大きいP i( )が来ると,y′が不連続になる.

(a) 入力画像 (b) 出力画像 図1.5 ヒストグラム平坦化した結果

図1.5(a)の画像にヒストグラム平坦化を行った画像が図1.5(b)である.このように,

濃度変換を行うことで,薄暗かったりしてわかりにくい画像をメリハリのついたはっき りした画像に変換することができる.

ヒストグラム補正による画像の改善は,グレイスケール画像には非常に効果がある.

しかし,カラー画像では色相のズレの問題が発生する.たとえば,カラー画像にグレイ の部分があったとする.このピクセルにおいては,R,G,B各成分は同じである.し かし,画像の他の部分に赤色の濃い部分があると,相対的にRは低い値となり,コン トラスト増強のためにR成分が抑えられ,シアンがかった色に変わってしまう.この ように,ヒストグラム補正はピクセルごとのR,G,B比率を保存するものではないこ とである.

(16)

8 これを防ぐために,画像を色相(Hue),彩度(Saturation),輝度(Luminance

またはLuminosity)で表現し,輝度のみをヒストグラム変換し,色相,彩度はそのま

まにする手法がある.

1.2.2 コンボリューション処理

コンボリューションは,畳み込みと呼ばれている処理である.元画像の平滑化(ノイ ズを除去したり,軟調化したりする),鮮鋭化(ボケ画像をシャープにする),エッジ 検出(線画のように輪郭を抽出する)などに広く用いられる.

コンボリューション処理は「像」を処理する行列形式で表せる.像とは画素を縦横の 座標に並べた2次元の集合である.対象とする効果によって利用されるカーネルは異な る.

1.2.3 アンシャープ処理

アンシャープマスキング処理(UM)は,文字通り解釈すると「シャープでは無くす る」と言う意味になってしまう.ところが,実際にはシャープにする処理である.アン シャープマスキング処理はピンぼけした画像を補正するときや,画像の光沢のある部分 などを鮮明にそれらしくしたいときによく使用される.

アンシャープマスキングが通常のシャープ処理と違うのは「しきい値」という設定項 目でシャープ処理する範囲をコントロールできることにある.閾値が0の場合は画像全 体にシャープ処理を実行し,設定する数値を大きくすると,輪郭部分の階調の差が大き い部分にだけシャープ処理が実行される.

画像をシャープにする処理というのは,隣接するピクセルの連続した階調の差分を大 きくすると言う事でもある.逆にぼかしをかけるとは,連続する階調をよりなだらかに する処理である.なだらかになった階調から元の階調を引いた差分に元の階調を足すと,

(17)

9 階調差分がより大きくなった画像にする事ができる.これがアンシャープマスキング処 理の原理である.

図1.6 アンシャープマスキング処理のアルゴリズム

アンシャープマスキング処理(図1.6)のアルゴリズムについて説明する.まず,オ リジナルの階調データOから,なだらかな階調Bを作成し,OとBの差分をとり,差 分とオリジナルの和でアンシャープ処理後の階調データ(O-B)+Oが得られる.図1.7 にUM処理の例を示す.

(a) 劣化画像 (b) UM処理結果 図1.7 アンシャープマスキング処理

(18)

10

1.2.4 雑音の強調を抑制した強調処理

デジタルカメラの写真ではCCDの暗電流や熱雑音の影響による雑音が画像に重畳す る.雑音が重畳したまま強調処理を行うと,雑音成分まで強調されてしまい,良好な画 像が得られない.このため雑音の影響がある画像に対しては予め雑音除去を行った後に 強調処理を行うことが一般的に行われるが,雑音除去処理は前節で説明したように低域 通過フィルタが基本であり,画像をぼけさせる原因となる.よって,劣化した画像に対 して強調処理を行うことは好ましいものではない.そこで,UM処理を拡張し,雑音は 強調せずにエッジや細部のみを強調する方法を用いる.

1.3 ノイズ除去に関する研究

従来,信号処理の分野において,ノイズは信号を阻害するものであり,除去すべきも のであるという認識が広く持たれてきた.コンピュータビジョンの分野においても,画 像や映像のノイズ除去は黎明期から積極的に研究されてきたトピックであり,今日にお いてもなお重要な課題の1つとして扱われている.

画像に表れるノイズは撮像素子の特性によるものや撮像素子表面に付着したごみ,レ ンズ光学系に起因するものがあるが,ここでは素子特性が原因となるものを考える.そ の主たるものは,フォトダイオードの暗電流による固定パターン的なインパルスノイズ,

CMOSではフォトダイオードに近接した増幅器の1 f ノイズやランダムテレグラフノ イズ,画素をリセットするときに発生するリセットノイズ,および電荷を転送するとき に発生するさまざまな回路的なノイズである.素子特性に起因するノイズは,半導体プ ロセスの改良と回路的な工夫によって年々改善されている.しかし,画素数の増加と撮 像素子の小型化も並行して進んでおり,フォトダイオードのセルサイズは縮小されてい る.従って画素あたりのノイズは必ずしも改善されておらず,画像処理によるノイズ除 去への期待は大きい.

(19)

11

1.3.1 高感度ノイズ

デジタルカメラで風景などを撮影した際,得られた画像にはノイズが加わるため,ざ らざらとした画像になることがある.デジタルカメラで撮影したこのような画像を拡大 すると色のついた小さな斑点があり,低画質な画像になってしまう.

多数あるノイズの種類の一つとして高感度ノイズがある.高感度ノイズは一般に,

ISO感度を高くすることにより発生する.ISO感度とはカメラの感光部が光を受けた際,

どの程度の大きさの信号を出力するのかを線型の指標により数値化したものである.光 量が少ない撮影条件でも信号をゲインアップすることにより,撮影画像をより明るく見 せることができる.しかし,信号をゲインアップすることによりノイズにも同じだけゲ インアップされるため撮影画像中のノイズが目立つことになる.原画像(図1.8(a))を 拡大した画像を図1.8(b)に示す.

(a) 原画像 (b) 原画像(a)を拡大した画像 図1.8 撮影画像に写る高感度ノイズ

図1.8(a)を拡大した画像には小さな斑点が現れており,このため画質が劣化してざら

ざらとした画像になっていることがわかる.以下ではデジタルカメラでこのような高感 度ノイズが発生する原因,信号のゲインアップによって目立つようになる高感度ノイズ,

そしてこの高感度ノイズを低減させるためのノイズ処理について説明する.

(20)

12

1.3.2 アート風 HDR 画像のノイズ

トーンマッピングと色彩強調をしてアート風HDR画像を生成する手法が種々提案さ れ,市販カメラにも実装されてきている.多重露光写真を融合してHDR画像にするだ けならノイズは生じないが,それに加えてコントラストや色調を強調してアート風にす るとノイズが発生することがある[13].図1.10(a)は図1.9(a)~(c)の3枚の多重露光写真 から作られたHDRアート画像[14],[15]である.

これから分かるように,図1.9(a)は色が暗い方に偏り,図1.9(b)は中程度の明るさで あるが,色が集中しておりコントラストは低い.図1.9(c)は明るいほうに偏っている.

これらに比べ,図1.10(a)は色が広い範囲に広がっており,色分布が向上している.こ のようにHDRアートは色が鮮やかで細かいテクスチャも鮮明であるが,図1.10(a)の 中央付近の路地奥の壁などにインパルス性のノイズが発生している.

(a) 低露光写真 (b) 中露光写真 (c) 高露光写真 図1.9 多重露光写真

(21)

13

(a) アート風HDR画像 (b) 画像(a)を拡大した画像 図1.10 図1.9(a)~(c)からのHDRアート画像

1.3.3 ノイズ処理

画像中のノイズを除去するには,撮影した画像に対してフィルタ処理を行わなければ ならない.そのフィルタ処理の中でも,ノイズ除去に適していると考えられるガウスフ ィルタやメディアンフィルタなどの平滑化フィルタがよく使われている.しかし,平滑 化フィルタを適用すると画像のノイズは除去できるものの画像のエッジがぼけてしま う傾向がある.したがって,平滑化フィルタを適用した後に鮮鋭化フィルタを適用する ことにより,ぼけた画像のエッジを強調して画質を保持する必要が出てくる.次の章か ら,そのような各種フィルタを説明する.

(22)

14

1.4 ヘイズ除去に関する研究

産業活動の大規模化から大気環境における汚染が増加して,これらのカメラを屋外で 使用する場合,霧やかすみ,ヘイズ(haze)などの悪天候は,しばしば撮影映像の鮮明 さを低下させる原因となり,視認性が大きく悪化することがある.このような場合,空 気中に多くの微粒子(2.5mm以下の微小粒子状物質PM2.5など)が存在し,これが実 物体からの放射を散乱させる.特に遠くからは,人間の目では物体をはっきりと識別す ることができない.

画像のヘイズ除去とは,霧や霞,塵埃の影響を排除し,物体の鮮明度・鮮鋭度を向上 させることである.この分野の従来手法は,ヘイズ画像とそれ以外の情報を利用するも ので,非単一画像ヘイズ除去方法と呼ばれている.偏光ベースの方法[16],[17]は偏光度 の異なる2枚以上の画像を使用する.また,深度ベースの方法[18],[19]は別の方法で取 得した深度情報を利用する.そのほかの方法[20],[21]は同じ情景を天候の違うタイミン グで撮影した複数の画像を使用する.このような方法はいずれも,計算量が多く実用的 でない.

単一画像ヘイズ除去方法はヘイズ画像1枚のみを入力として使用するもので,入力映 像をフレームごとにヘイズ除去処理できるため,監視カメラや車載カメラの用途に適し

ている.Robbyらは,マルコフ・ランダム場の枠組みでコスト関数を定義し,ヘイズと

画像のエッジとの関係を利用して霧の推定を行う方法を提案した[22].Tanらは,霧や ヘイズのない画像は霧画像やヘイズ画像よりもコントラストが高いと考え,霧除去画像 のコントラストを最大化して霧を除去している[23].Fattalらは透過と表面シェーディ ングは局所的に無相関であると仮定し,物体の拡散光を推定することによって霧除去を 行い,透過率を推測している[24].Kratzらは物体の拡散光と情景の奥行を統計的に独 立した二つの成分と仮定し,マルコフ確率場モデルにより画像を物体の拡散光と深度に 因数分解している[25].Heらは屋外の霧なし画像の統計に基づいてダークチャネル処 理を使用し,粗い透過率を推定して利用することにより,ヘイズを除去している[7].

Tarelらは,大気の環境光が正でヘイズ画像の成分の最小値より小さいと仮定し,メデ

ィアンフィルタを使用して霧除去画像を求めている[26].これに対し本提案手法では,

最小値・最大値フィルタをバイラテラルフィルタタイプに拡張したフィルタを提案し,

それを画像のヘイズ除去に応用する.更に,深海中や露光不足とヘイズが両方とも混在 する画像にも拡張する.

(23)

15

1.5 本論文の構成

本論文は全9章から構成される.以下に各章の概要を述べる.

第1章は序論であり,本研究の背景と本研究の目的および研究方法,また本論文の構 成を述べた.

第2章では,バイラテラルフィルタ(BF)を用いて画像を基調成分と詳細成分とに 分解する画像鮮鋭化法での雑音を低減化する手法を提案する.詳細成分をクロスバイラ テラルフィルタで平滑化してから増幅して基調成分に加えて強調画像を得る.本提案法 は画像を予め平滑化してから強調する2段階法よりも雑音除去性能と鮮鋭化能力とも に優れる.更に,本手法を拡張して,一般的な画像強調法の画質を改善する後処理法を 導き,画質改善効果を実験で示す.

第3章では,画像を画素値の値域[0,255]方向に複数の帯域にレイヤ分解して処理す る値域分割フィルタを提案する.提案フィルタは,値域全域を一様に処理する場合には バイラテラルフィルタ結果よりも劣るが,雑音が値域方向に偏在しているような画像の 処理に有用である.暗い領域に雑音が主に重畳される写真の雑音除去では,提案フィル タはバイラテラルフィルタよりも雑音除去能力と計算速度が優れる.また,そのような 画像を鮮鋭化するときも暗い領域の雑音を増幅せずに明るい領域を鮮鋭化するのに有 効である.

第4章では,露光を変えて撮影した複数枚の写真を融合してHDR画像を作成し,ト ーンマッピングと色彩強調をしてアート風HDR画像とする処理での雑音除去法を提案 する.アート風HDR画像の生成手段として,カメラでは手軽にアート風HDR画像が 作成できるが,強調度合いを調節できない.一方,ソフトウェアは手間がかかるが,パ ラメータを調節することができる.アート風な色合いにするには融合後の強調度合いを 強める必要があるが,画質を損ねるような雑音が部分的に生じてしまうことが多い.本 章では,そのような雑音を除去する一手法を提案する.

第5章では,バイラテラルフィルタでぼかされた画像が与えられたときに,BFをか ける前の鮮明な画像に戻すぼけ復元法として,逆BFを提案する.BFによるぼけを表 す連立非線形方程式を簡単な反復法で解く.この逆BFを,ぼけてない画像に適用する と画像が鮮明化される.非線形な平滑化フィルタや鮮鋭化フィルタの逆処理を求める方 法として,元のフィルタを反復する単純な手法を示し,収束性を解析する.更に,誤差

(24)

16 拡散ハーフトーニングやアート風フィルタなど非線形性が強い画像フィルタの逆処理 のための緩和逆反復法も示す.本手法の長所は,元のフィルタの詳細なアルゴリズムや パラメータ値などが未知でも適用できる点である.

第6章では,バイラテラルフィルタと最小値フィルタを組み合わせたバイラテラル最 小値フィルタを提案し,霧などのヘイズを画像から取り除く手法に応用する.提案法は 鮮鋭度が従来法よりも高いか同等程度にヘイズを除去することができることを実験で 示す.また,バイラテラル最小値フィルタで暗包絡画像を,バイラテラル最大値フィル タで明包絡画像を求め,それらから環境光と透過率を求めて,画像からヘイズを除去す る手法を提案する.更に,バイラテラル最小値・最大値フィルタによるヘイズ除去法を 拡張して,水中写真を色復元してコントラスト強調する方法を提案する.入力写真の赤 成分を明るくし,緑と青成分は暗くする.本提案法の出力画像のコントラストは従来法 よりも高いことを実験で示す.

第7章では,画像生成モデルによるヘイズ除去法と,それを一般化した画像生成モデ ルによる画像強調法を画像の値域変換という観点からまとめ,これらがシフトアンシャ ープマスキングであることを示す.値域変換ではコントラストが強調されるだけである が,空間フィルタリングも組入れると鮮鋭化効果も付け加わる.本提案法では色相が保 存されることを従来法との比較実験で示す.

第8章では,ヘイズや露光不足で色味が減退した写真から物体色を強調鮮鋭化して復 元する手法を提案する.バイラテラル暗包絡フィルタとバイラテラル明包絡フィルタで,

カラー画像の明包絡画像と暗包絡画像を求め,それに基づいて画像の色域を変換する.

ヘイズ除去と露光補正の実験により本提案法のカラー画像鮮明化能力を示す.モノクロ 画像の例も示す.

第9章では,本研究の結論を述べ,今後の課題を報告する.

(25)

17

第 2 章

クロスバイラテラルフィルタによる

雑音を抑制する画像強調

(26)

18

2.1 本章の概要

バイラテラルフィルタ(BF)で入力画像を平滑して基調成分を求めて,入力画像か ら基調成分を引いた残差を詳細成分として,入力画像を基調成分と詳細成分に分解する 画像鮮鋭化法が提案されている[1][2]が,入力画像が雑音を含む場合には,雑音も増幅 されてしまう.

本章では,詳細成分をクロスバイラテラルフィルタ[3]で平滑化して雑音増幅を抑え る鮮鋭化法を提案する.また,この雑音抑制画像強調法を拡張して,一般の画像強調画 像の画質を改善する後処理に利用する.

2.2 バイラテラルフィルタ

古典的なノイズ除去手法はガウスフィルタやメディアンフィルタである.本稿ではエ ッジ保存型平滑化フィルタであるバイラテラルフィルタを説明する.バイラテラルフィ ルタとは,1998年にC.TomasiとR.Manduchi[4]によって提案されたエッジ保存平滑化 フィルタである.ここで入力画像

aijにバイラテラルフィルタをかけた出力画像

bijは画素 ( , )i j の値として以下の式(2.1)で表される.

2 2 2

,

2 2 2

,

( ) ( )

,

( ) ( )

ij i l j m

ij i l j m

p p

l m a a

i l j m

l p m p

ij p p

l m a a

l p m p

e a

b

e

a b

a b

+ +

+ +

+

+ +

=− =−

+

=− =−

=

∑ ∑

∑ ∑

(2.1)

このBFは,以下のような長所[5]を持つ.

(1) 非線形拡散や平均シフトフィルタのような反復計算を要せず,動作が直感的に把 握しやすい.

(2) 簡潔な単一の式だけで表され,実装しやすい.

(3) パラメータが2個だけで設定しやすい.

(4) ガウス性白色ノイズの除去能力とエッジの保存能力の両方を兼ね備えている.

(27)

19 (5) 線形フィルタと同様に入力画素値の加重平均が出力画素値となる.

図2.1左上はノイズを含むステップ信号波形である.この波形上のステップ直前の注 目点に対してBF処理を施す場合を説明する.まず,注目点からの距離に応じたガウス 分布重みと,注目点との値の差に応じたガウス分布重みからなる,2つの重み係数を設 定する(図2.1左下).これを掛け合わせることで,注目点からの距離の差と値の差の 両方を考慮した重み係数を決定する(図2.1右下).この最終的な重み係数で近傍画素 を平滑化する.全ての原信号にBFを適用してノイズを除去した信号波形を図2.1右上に 示す.ガウス型平滑化フィルタと比較して,優れたエッジ保存性があることがわかる.

図2.1 バイラテラルフィルタによるノイズ除去

(28)

20

2.3 クロスバイラテラルフィルタ

クロスバイラテラルフィルタでは,同一視点の画像で,かつ,異なる情報を持つ2枚 の画像を用いる[5][6].図2.2~2.4では,フラッシュを焚いた場合と焚かない場合の2種 類をペアとしている.フラッシュを焚いた場合,得られる画像のノイズを除去すること ができるが,蝋燭の明かりの下などでは照明の様子が変化してしまう.一方,フラッシ ュを焚かない場合は,照明の様子は変化しないが,ノイズが現れる.そこで,フラッシ ュを焚いた画像の情報を基にして,フラッシュを焚かない画像をフィルタリングする.

その結果,照明の様子を維持したまま,ノイズの除去が可能である.ここで,重要点は,

ノイズの多い画像の代わりに,ノイズの少ない画像をフィルタリングの計算に用いるこ とで高い効果が得られる点である.入力画像の画素値を

fijとし,補助画像の画素値を

t

ij

とする.クロスバイラテラルフィルタの出力画素値

gijは,線形フィルタと同様に入力 画素値fijの加重平均

2 2 2

,

2 2 2

,

( ) ( )

,

( ) ( )

ij i l j m

ij i l j m

p p

l m t t

i l j m

l p m p

ij p p

l m t t

l p m p

e f

g

e

g δ

g δ

+ +

+ +

+

+ +

=− =−

+

=− =−

= ∑ ∑

∑ ∑

(2.2)

で 与 え ら れ る 。 通 常 の バ イ ラ テ ラ ル フ ィ ル タ の 重 み は 入 力 画 像 そ の も の か ら

2 2 2

(l m ) (fij fi l j m, )

eg + δ + + と計算されるが,クロスバイラテラルフィルタでは補助画像tijから 計算される[7].

(29)

21

図2.2 入力画像(通常撮影写真) 図2.3 補助画像(フラッシュ写真)

図2.4 クロスバイラテラルフィルタの出力

(30)

22

2.4 詳細成分増幅による鮮鋭化

入力画像aの画素値を

a

ijとする.2.2節の式(2.1)でBFの出力画像b=BF( )a の画素値 は

b

ijである.b=BF( )a は入力画像aのエッジを保存して平滑化した画像であり,a 基調成分である.残差a−BF( )aaの細かい変化を表す詳細成分である.

BFを用いる画像鮮鋭化(アンシャープマスキング:UM)では,詳細成分をλ( 1)> 倍 して基調成分に加える(以下UMBF(UM with BF)と呼ぶ).その出力画像は以下であ る.

UMBF( )a =BF( )a +

λ

[a−BF( )]a (2.3)

2.5 BF による雑音抑制

入力画像aが雑音を含む場合,このUMBFでは雑音も

λ

倍される.そこでBFで雑 音を平滑化する手法を考える.

2.5.1 2 段階 BF による雑音抑制

入力画像aを予めBFで平滑化してからUMBFを行う手法(以下UMBF2と呼ぶ)は

UMBF ( )

2

a = BF[ BF( )] a + λ BF[ a − BF( )] a

(2.4) となる.この手法は単純であるが,式(2.5)の基調成分BF[BF( )]a は入力画像aBFを2 回かけたものであるので,雑音だけでなくテクスチャ成分もある程度基調成分から失わ れてしまう.

(31)

23

2.5.2 クロス BF による雑音抑制

そこで,基調成分をBF( )a のまま保つために,式(2.3)の詳細成分r= −a BF( )a を,基調 成分BF( )a を重みとする式(2.3)クロスBF(CBF)で平滑化する.そのCBFの出力

=CBF( )

c r の画素値はcijである.BF( )a aよりも雑音が少ないので,c=CBF( )r は式(2.3) の第2項よりも雑音が少なくなる.

式(2.3)右辺の第2項をCBF( )r で置き換えると

UMCBF( ) a = BF( ) a + λ CBF[ a − BF( )] a

(2.5) となる.このUMCBFは,式(2.4)の

UMBF

2よりも,基調成分ではテクスチャの保存 性が高く,詳細成分では雑音が少ないと期待される.

(32)

24

2.6 実験

最初に,雑音のない図2.5(a)の画像“guilin”(420×315)を2.4節のUMBFで鮮鋭 化した結果を図2.5(b)に示す.図2.5(a)では暗くてテクスチャが不明瞭な部分が(b)では 視認しやすくなっている.p=5,a=0.01,b=0.001,g δ= =0.1(以下の図2.6や図2.7でも同 じ値)とした.ちなみに図2.5(c)は(a)のヒストグラム平坦化の結果であり,雲が鮮明に なっているが背景の山が薄くなっている.

(a) guilin (b) UMBF

(c) HE

図2.5 無雑音画像の鮮鋭化

次に,図2.5(a)に標準偏差20のガウス雑音を加えた図2.6(a)の画像をUMBFで鮮鋭 化した結果が図2.6(b)である.雑音が増幅されてしまっている.図2.6(c)はUMBF2 結果であり,(b)よりも雑音が抑制されているが,テクスチャ(山肌や水面の波)も平 滑化されている.図2.6(d)は提案法(UMCBF)の結果であり,(c)よりもテクスチャの

(33)

25 保存性が高い.

(a) noisy guilin (b) UMBF

(c)

UMBF

2 (d) UMCBF 図2.6 雑音重畳画像の鮮鋭化(guilin)

図2.6の結果の画質評価として,まず,図2.5(b)を理想出力として,それからのPSNR を求めたところ,表2.1の第1行のようにUMBF出力(図2.6(b))は23.36dB,UMBF2 出力(図2.6(c))は27.96dB,UMCBF出力(図2.6(d))は31.73dBとなり,図2.6(d) が図2.5(b)に最も近かった.

表2.1 雑音画像の鮮鋭化のPSNR

UMBF

UMBF

2 UMCBF

guilin 23.36 27.96 31.73

peppers 26.66 30.68 31.28

Xray 25.27 30.85 32.30

CT 24.72 29.05 29.73

(34)

26 次に,雑音付加画像の鮮鋭化の評価によく用いられる詳細分散(detail variance: DV) と背景分散(background variance: BV)[8]を求めた.DVが大きくBVが小さい,す なわちDV/BVが大きいほど良好な鮮鋭化である.図2.6(b),(c),(d)のDV/BVは表2.2 の1行目のようになった.提案法(UMCBF)のDV/BVが最も大きい.

表2.2 各画像のDV/BV

UMBF

UMBF

2 UMCBF

guilin 55.4 171.4 317.4

peppers 27.08 80.38 88.67

Xray 44.58 106.2 116.8

CT 22.17 101.8 195.1

他の画像例として,図2.7の“peppers”(500×500),図2.8の“Xray”(275×342), 図2.9の“CT”(448×336)のPSNRを表2.1の2行目から4行目に,DV/BVを表2.2 の2行目から4行目に示す.PSNRもDV/BVもすべての画像でUMBF<

UMBF

2

<UMCBFとなっており,提案法(UMCBF)の効果が確認された.実験結果の例を図

2.7から図2.9 に示す.

(35)

27

(a) peppers (b) noisy peppers

(b) UMBF (d)

UMBF

2

(e) UMCBF

図2.7 雑音重畳画像の鮮鋭化(peppers)

(36)

28

(a) Xray (b) noisy Xray

(c) UMBF (d)

UMBF

2

(e) UMCBF

図2.8 雑音重畳画像の鮮鋭化(Xray)

(37)

29

(a) CT (b) noisy CT

(c) UMBF (d)

UMBF

2

(e) UMCBF 図2.9 他の画像例(CT)

(38)

30

2.7 一般の画像強調への拡張

画像を鮮鋭化する手法としては,UM以外にもHEやガンマ補正など種々ある.そこ で以上の手法を他の鮮鋭化法にも一般化するために式(2.5)を,式(2.3)のUMBFを含む 形に書き変える.まず,式(2.3)からλ[a−BF( )]=UMBF( ) BF( )a aa となるから,これを 式(2.5)に代入すると,式(2.5)は

UMCBF( )a =BF( ) CBF[UMBF( ) BF( )]a + aa (2.6) となる.この右辺のUMBF( )a を一般の鮮鋭化処理X( )a に置き換えると,X( )a で鮮鋭化 した画像の雑音低減処理として次の式(2.7)が得られる:

XCBF( )a =BF( )a +CBF[X( )a −BF( )]a (2.7)

式(2.5)は入力画像aを鮮鋭化する1手法であったが,この式(2.7)は何らかの画像鮮鋭化

手法Xで得られた出力結果X( )a に事後処理を施してX( )a のなかの雑音を減らす後処理 である.Xとしては任意の手法が使える.UMでは画像の局所平均値は保たれるが,平 均値が保たれないHEや,更に処理Xの具体的な中身が不明な場合でも式(2.7)は適用 できる.

図2.10~2.13では図(a)が入力画像aであり,図(b)がX( )a ,図(c)がXCBF( )a である.

(39)

31 (a) guilin (b) X( )a

(c)

XCBF( ) a

図2.10 画像強調の後処理(guilin)

図2.10は図2.5の例であり,雑音のない図2.10(a)の画像“guilin”をヒストグラム 平坦化した結果を図2.10(b)に示す.

雲が鮮明になっているが中央遠方の山並が消えている.図2.10(c)のXCBFでは山並 が少し復元されている.図2.10(c)はテクスチャの保存性が高い.

(40)

32 (a) passage (b) X( )a

(c)

XCBF( ) a

図2.11 画像強調の後処理(passage)

図2.11(a)の画像“passage”をヒストグラム平坦化したのが図2.11(b)である.天井 のパイプやロッカーが見えるようになっているが,暗い所の雑音も増幅されている.図

2.11(c)はXCBFの結果であり,雑音が除去されている.

(41)

33 (a) flowers (b) X( )a

(c)

XCBF( ) a

図2.12 画像強調の後処理(flowers)

図2.12(a)“flowers”の画像の適応的鮮鋭化[9]が図2.12(b)であり,細かい雑音が画 質を損ねているが,図2.12(c)のXCBFでは雑音が減ってエッジも鮮明である.

(42)

34 (a) cup (b) X( )a

(c) XCBF( )a

図2.13 画像強調の後処理(cup)

図2.13(a)の写真のHDRトーンマッピング[10]が図2.13(b)であり,細かい雑音が一 面に出ているが,図2.13(c)のXCBFでは雑音が減ってカップや水滴が明瞭になってい る.各画像でのパラメータ値を表2.3に示す.これらは,p1ずつ,それ以外のパラ

メータ( ~ )a δ は値を基本的に1/10刻みで変え,出力画像の視覚的主観評価が最大にな

る値を絞り込んだものである.

(43)

35 表2.3 図2.10~2.13でのパラメータ値

p a

b

g

δ

guilin 5 0.1 0.1 0.01 0.0001

passage 5 0.1 0.1 0.01 0.3

flowers 5 0.1 0.1 0.1 0.08

cup 5 0.1 0.1 0.01 0.05

このように式(2.7)のXCBFは種々の画像強調法の画質を改善する後処理として有用 である.なお,式(2.7)を

XCBF( )a ≅CBF[X( )] BF[a + a−CBF( )]a (2.8) と書き変える(式(2.7)と式(2.8)の計算結果は多くの画像で,視認できるほどの誤差は生 じないが,厳密にはBFとCBFは非可換なので,式(2.8)は等号ではなく近似的にしか 成り立たない)と,式(2.5)に似た形になる.すなわち,式(2.7)は近似的に,基調成分が

CBF[X( )]a ,詳細成分がBF[a−CBF( )]a の雑音抑制鮮鋭化法であるとも解釈できる.ただ

し式(2.5)の

λ

は式(2.8)では1である(式(2.5)の

λ

は式(2.8)ではX( )a のなかに入っている).

2.8 まとめ

入力画像にバイラテラルフィルタをかけて基調成分と詳細成分に分解する画像鮮鋭 化法について,詳細成分をクロスバイラテラルフィルタで平滑化して雑音強調を抑制す る手法を提案し,入力画像を予めBFで平滑化してからUMBFをかける方法(

UMBF

2) より雑音除去や鮮鋭化能力が高いことを実験で確認した.一般的な画像強調法の後処理 にも拡張した.パラメータの自動的な設定法の開発が今後の課題である.

(44)

36

第 3 章

値域分割フィルタによる雑音除去と鮮鋭化

(45)

37

3.1 本章の概要

画像のエッジを保存して雑音を除去する処理としてバイラテラルフィルタ(BF)[1]

がよく使われている.同種の処理としてチャネル平滑化[2]も提案されている.これは,

画素の値域[0,255]を帯域に分割し,各帯域を別々にガウスフィルタ(GF)で平滑化す ることによって,エッジがなまるのを防ぐ手法である.

チャネル平滑化は,各チャネルを並列に同時処理すれば,各チャネルの平滑化は単純 なガウスフィルタなので,バイラテラルフィルタよりも高速化できる可能性もあるが,

通常の単一CPUでの計算では,チャネルの数だけ計算量が増えるので高速化は難しく,

雑音除去能力もバイラテラルフィルタに代われる程高くはない.しかし,雑音が特定の 値域だけに偏在している画像に対象を限定した場合には,その帯域だけを平滑化したほ うが,バイラテラルフィルタのように[0,255]の値域全体を一様に平滑化するよりも,

効率よく雑音を除去できる可能性がある.例えば高感度撮影雑音は主に暗い画素に重畳 されるので,暗い領域だけを平滑化するほうがよい.提案フィルタはバイラテラルフィ ルタよりも雑音除去能力と計算速度が優れる.

そこで本章では,画像の値域を互いに重なり合う数個の帯域に分割し,帯域ごとに,

あるいは1つの帯域のみを平滑化する値域分割フィルタ[4][5]を提案し,暗い画素だけ に雑音が偏在するような画像では,雑音除去性能がバイラテラルフィルタよりも高いこ とを実験で示す.

また本章では,この値域分割法を画像鮮鋭化に応用して,値域を分割して,帯域を選 択的にアンシャープマスキング(UM)する画像鮮鋭化法を提案する.

提案法では帯域内でだけアンシャープマスキングするので,通常の全値域でのアンシ ャープマスキングで見られるハローが生じない.また,値域分割アンシャープマスキン グはヒストグラム均等化と空間近傍処理による鮮鋭化の両効果を併せ持つので,各々の 単独処理よりも効果的な画像鮮鋭化が行える.また,特定の帯域のみを選択的にアンシ ャープマスキングする帯域選択アンシャープマスキングや,特定の帯域を平滑化して残 りの帯域を鮮鋭化する値域分割雑音抑制鮮鋭化にも拡張する.

(46)

38

3.2 値域分割フィルタ

まず,値域分割に基づくチャネル平滑化法について概説し,次に提案法である値域分 割フィルタを示す.チャネル平滑化も値域分割フィルタも画像を複数の帯域画像に分割 するのは同じである.

帯域画像は重み付き画像である.すなわち帯域画像の各画素は画素値と重みとを持つ.

重み(図3.1)はチャネル平滑化と値域分割フィルタとで同じであるが,画素値が異な る.なお,各帯域画像を平滑化する際には,計算量が少ないガウスフィルタを用いる.

図3.1 値域の帯域分割

3.2.1 値域分割

入力モノクロ画像の画素値をdijとする.画素の値域[0,255]をn個の帯域に等分割す るとし,第k帯域の中心をck =255(k−1) / (n−1) (k=1,..., )n とする(以下の実験ではn=5 とした).両端の0と255もckに含めるのは,ckから全域を復元できるようにするた めである.帯域の形状は図3.1のようにガウス関数がよく用いられる.すなわち,各画 素( , )i j の帯域kへのメンバシップは

(dij ck)2

x

ijk

= e

α (3.1) である.帯域kの確率(レイヤ表現でのアルファ値)はpijk=xijk

nk=1xijkである.

(47)

39

3.2.2 チャネル平滑化

このような画像表現は,RBFニューラルネットの受容野による符号化に似ており,

Felsbergらはチャネル表現と呼び,それによる画像平滑化をチャネル平滑化と呼称し

た[2].

チャネル平滑化では,帯域画像の重みは式(3.1)であり,画素値は場所 によらずck である.なお,Felsbergらは

xijkを( , )i j 画素値とする画像を第kチャネル画像と呼んだ.

このチャネル画像は本節での帯域画像とは異なる.また,チャネル画像をガウスフィル タで平滑化したものは局所無順序画像(locally orderless image)と呼ばれる[3].各画 素での局所無順序画像の最頻(モード)値を出力するのがチャネル平滑化である.しか し,最頻値を求めるのは手間がかかるので,ここでは期待値を出力することにする.す なわち,ここではチャネル平滑化の手順を以下とする:

1) 式(3.1)の重みxijkを計算する.

2) xijkをガウスフィルタで平滑化する:

2 2

2 2

( )

, ,

( )

p p

l m

i l j m k

l p m p

ijk p p

l m

l p m p

e x

y

e

β

β

+

+ +

=− =−

+

=− =−

= ∑ ∑

∑ ∑

(3.2)

3) 平滑化した重みで画素値を復元する.すなわち

1

1 n

ijk k k

ij n

ijk k

y c f

y

=

=

= ∑

(3.3) を計算して,出力画素値とする.

( , )i j

(48)

40

3.2.3 値域分割平滑化

上のチャネル平滑化では,帯域画像の画素値は場所 によらずckとしたが,本節 で提案する値域分割フィルタでは,第

k

帯域画像の画素値は帯域

k

によらず

dijである.

各画素の重みがxijkであるのはチャネル平滑化と同じである.値域分割平滑化の手順は 以下である.

1) 式(3.1)の重みxijkを計算する.

2) 各帯域画像を重み付きガウス平滑化する:

2 2

2 2

( )

, , ,

( )

, ,

p p

l m

i l j m k i l j m

l p m p

ijk p p

l m

i l j m k

l p m p

e x d

f

e x

β

β

+

+ + + +

=− =−

+

+ +

=− =−

= ∑ ∑

∑ ∑

(3.4)

3) 平滑化した帯域画像の重み付き平均:

1

1 n

ijk ijk k

ij n

ijk k

x f g

x

=

=

= ∑

(3.5) を計算して,出力画素値とする.以下,これを値域分割フィルタ(range-decomposed filter: RDF)と呼ぶ.

前節のチャネル平滑化では帯域の重みxijkを平滑化することにより,画像を間接的に 平滑化するが,帯域画像を直接平滑化するのは値域分割フィルタである.

( , )i j

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