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「神奈川大学宇宙ロケット部」活動報告

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Academic year: 2022

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1.緒言

「神奈川大学宇宙ロケット部」は2014年9月に設立された,まだ 日の浅いテクノサークルである.このサークルは,「ハイブリッド ロケット」と呼ばれるエンジンを用い,超小型衛星を打ち上げるた めの超小型ロケットの設計・開発を目的としている.現在,超小型 衛星の打ち上げが各地の大学で行われているが,これらは大型の衛 星に相乗りで打ち上げるためその打ち上げ機会は限られている.そ こで超小型ロケットを開発し,これら超小型衛星の安価な打ち上げ を実現させることを最終目標としている.従来衛星打ち上げのため に実用化されているロケットは,火薬を使用する固体ロケットか,

液体燃料・液体酸化剤を使用する液体ロケットの2種類に大別され てきた.これらは,可燃性の高い火薬や燃料を使用するため,万一 破損した場合爆発の危険性が高い.一方,ハイブリッドロケットは 燃料にプラスチック樹脂を,酸化剤に液体を使用するため,ロケッ トが破損しても自然に消火する性質を持っている.つまり爆発の危 険が無い[1].そのため,燃料の運用・管理コストを抑えることがで き,従来のロケットに比べ大幅に打ち上げコストを抑えることがで きる.これを受けて,当サークルでは機械工学科航空宇宙構造研究 室(以下,「研究室」と略記する)と共同でハイブリッドロケット の開発,打ち上げに取り組んできた.本報告ではこの1年間での活 動実績を報告する.

2.テレメトリ装置の開発(2016年12月~2017年8月)

昨年度8月,日本最大の大学生・社会人による模擬衛星及びハイ ブリッドロケットの打ち上げ大会である能代宇宙イベントに宇宙ロ ケット部及び航空宇宙構造研究室も参加し,ハイブリットロケット を海に向かって打ち上げた.他大学が上昇中の分解や機体の喪失,

機体が回収できてもデータを喪失するなど苦戦し,最高でも1282m

(しかもデータ喪失のため推定)のところ,宇宙ロケット部は機体 及びデータを完全回収に成功し,高度2236mを達成した.その後,

研究室が昨年度12月に,ロケット部も開発に参加した独自開発エン ジンを用いたロケットを伊豆大島にて打ち上げたが,1機目は機体 を喪失し記録が不明となってしまった.これはビーコンによる信号 が着水後30秒ほど受信できたものの,その後は海水に電波が遮られ たためか信号が途絶え,海流に流されてしまったためと考えられる.

漁船での回収方法を見直し2機目は回収できたものの,万一回収で きない場合は実験データが全く回収できなくなるため,データの回 収は大きな課題となった.そこで,宇宙ロケット部では飛翔中に データを電波で送信する,いわゆるテレメトリ装置の検討及び開発 に着手した.

まず,将来性も考慮して高度100kmでも通信可能,または将来 的に拡張可能な装置の構成を検討した.アマチュア無線帯や特定小 電力帯の使用,携帯電話の使用,特定実験無線局として本格的に作 成するなどの案についてトレードオフを行った.

当初,特定小電力帯の使用は高度100kmまでの拡張性を考える と実現性が低い,と考えていたが,最近開発が盛んになっている超 小型衛星の通信用にLoRa(Low Power Wide Area)と呼ばれる通信 方式の適用が検討されていることがわかり[2],それを使用すること とした.この通信方式を利用したモジュールを用いて通信実験を 行ったところ,小田原城から江の島まで30kmの通信に成功した.

このモジュールを用いて大気圧センサおよび温度センサによる高度 測定モジュール,GPSによる位置情報モジュールは開発が完了し,

9月2~4日の伊豆大島での打ち上げに使用した.図1に開発した高度 測定モジュールおよびGPS位置情報モジュールの外観を示す.重 量はそれぞれ38.0gおよび44.5gと,非常に軽量にできている.

開発最終段階において,打ち上げ状態を模擬して計測モジュー

「神奈川大学宇宙ロケット部」活動報告

高野 敦

Annual Report of “ Kanagawa University Space Rocket Club ”

Atsushi TAKANO

准教授 機械工学科

Associate Professor, Dept. of Mechanical Engineering

図1 高度測定モジュールおよびGPS位置情報モジュール

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ルにすべての発信機及び計測機器を搭載し,動作確認を行ったとこ ろ,近距離でも受信できなくなる不具合が発生したが,同じ周波数 帯を用いた混信であることがわかり,各発信機のチャンネルを重な らないよう設定することで解決できた.さらに打ち上げ搭載状態で 江の島から辻堂までの通信実験を行い,距離4.7km(今回打ち上げ るロケットの落下分散範囲)での通信ができることを確認した.

3.M型エンジンを使用した機体開発(2017年4月~2017年8月)

昨年度の能代宇宙イベントでの打ち上げ成功を受け,さらなる 高高度化を達成するために,購入品ではあるが昨年度使用したエン ジンに比べ推力で1.8倍のM型と呼ばれるエンジンを採用した機体 の開発を行った.信頼性を重視するため,機体の基本的なコンセプ トは昨年の設計を踏襲した.図2に機体の3次元モデルを示す.

機体はモジュール構成となっており,各部が独立して製造,組立,

試験が実施できるように配慮されている.上部から1段目分離機構 部,2段目分離機構部,中央部に計測モジュール,下部にエンジン 部及びフィンという構成になっている.

今年度の開発方針として,研究室側が新規開発エンジンとセパ レーションナットを用いた分離機構を開発する一方で,宇宙ロケッ ト部としては前述のテレメトリ装置を中心とした計測機器を開発の 重点とした.そのため,1段目及び2段目分離機構部およびフィン部 分は開発リスクを低減するため,昨年度研究室が伊豆大島で打ち上 げ,実績のある設計を踏襲し,若干の改修を行って使用している.

エンジン部はM型を採用するにあたり,強度計算の見直しに伴 う構造寸法の変更を行ったが,CFRP胴体部とジュラルミンリング で締結する方式は昨年の設計思想の踏襲である.

また打ち上げにおける失敗を想定し,同一設計の機体を2機用意 している.この考え方の有効性は昨年度の研究室機体の伊豆大島で の打ち上げにおいて,1機目は喪失したものの2機目は捜索方法の改 善で回収できたことにより実証されている[3]

4.伊豆大島での打ち上げ

前述の2機のほかに,研究室も同様に独自開発エンジンを搭載し た2機同一設計の機体を準備し,宇宙ロケット部及び研究室合同で 伊豆大島において打ち上げを行った.8月30日深夜23時に東京竹芝 桟橋を出発し,翌8月31日は発射台組み立て,9月1日にリハーサル,

9月2~4日の朝5時30分以降に打ち上げの予定であった.しかし8月 30日に小笠原で台風が発生,そのまま伊豆大島の東方をかすめる形 で北上した.その結果,8月31日の発射台組み立ては組立て途中か ら風雨が強まり危険と判断し,発射台を起立させる直前で中止した.

続く9月1日のリハーサルおよび9月2日の打ち上げ初日も宿で待機と なった.9月2日夜の時点で,翌9月3日は台風が過ぎる予報であった ものの海上にうねりが残ることが予想され,機体回収のための漁船

が出せるかどうかはわからず,結局当日の朝,日の出を待っての判 断となった.機体準備は打ち上げることを前提で進なければならず,

かつ発射台組立ての残作業とリハーサル省略により作業に手間取る ことが予想された.したがって当初の予定を2時間早め,宿で21時 30分からミーティングを行い,22時に射場(伊豆大島差木地トウシ キ園地)へ出発し,夜を徹して準備作業に取り組んだ(図3).準備 は順調に進み,朝5時には 船が出港できるとの判断が 示されたため,予定通り研 究室機体を5時30分に,ロ ケット部機体を8時ちょう どに打ち上げ,いずれも機 体の一部とデータの回収に 成功した(図4,図5).

研究室機体は高度4779m

(2台 の 気 圧 計 よ り 求 め た デ ー タ の 平 均, 図6) と,

昨年度の記録を2倍以上更 新した.頂点付近での機体 カメラから撮影した映像を 図7に示す.

宇 宙 ロ ケ ッ ト 部 の 機 体 は事前の解析より速度が速 くなり,音速を超えた模様 で,その結果,残念ながら 高 度1000m付 近 で ノ ー ズ コーンやフィンを固定する部材など,樹脂製の軽量な部品が分解し てしまった.

しかし,いずれの機体にも宇宙ロケット部が開発した無線によ るテレメトリ装置によって高度及びGPS座標データの受信に成功 し,その結果機体の一部回収につながった.データが回収できたこ とで,機体の分解の原因究明に大きく役立つものと期待される.現 在,不具合事象の整理と原因究明に着手した.

5.アウトリーチ活動

昨年度はアウトリーチ活動が弱いことが問題として挙げられて いたが,今年度は学内での各種イベント(ホームカミングデー,テ 図2 機体の3次元モデル

図3 準備作業の様子

図4 打ち上げの様子

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クノフェスタ,神大フェスタ)の参加はもちろんのこと,代表的な ものとして平塚市博物館からの依頼で展示,発表を行ったこと,

UNISEC(NPO法 人 大 学 宇 宙 工 学 コ ン ソ ー シ ア ム ) で の ワ ー ク ショップにおける発表をするなど,積極的な活動を行った.

平塚市博物館の展示,発表は,「知られざる平塚のロケット開発」

と題した企画展(2016年10月22日~12月18日)への参加を依頼され たことを受け参加した.機体やエンジン,ポスターの展示及び企画 展最終日における発表を学生代表が行った.平塚市は戦前,軍の火 薬廠があり,その中でロケット開発が行われ,その成果が戦後の糸 川博士のロケット研究の基礎となっている,という経緯を基に企画 されたものである.宇宙ロケット部・研究室は湘南ひらつかキャン パスにエンジンの燃焼試験設備を持っており,その成果をSNSな どで学外に発信していることが目に留まったようである.

UNISECワークショップは2016年12月に行われ,その際2016年8 月の能代宇宙イベントでのハイブリッドロケット打ち上げの成果が 評価され,IST(インターステラテクノロジズ株式会社)審査員特 別賞が授与された(図8).

6.結言

宇宙ロケット部は今年の9月で3年目になり,設立当初1年生で あった学生は3年生となった.当然のことながら,このような学生 は4年生になって研究室に入る学生よりノウハウ的な知識の量は圧 倒的に多く,4月から5月にかけては宇宙ロケット部学生が研究室学 生に指導をする場面が見られた.その点,テクノサークルの趣旨が 発揮され,よい結果が出つつあると考える.また,昨年度までは前 年度の研究室の機体を踏襲して作成することが多かったが,今年は それのみならずロケット部独自にテレメトリ装置を開発し,それを 研究室機体に供給するなど,テクノサークルとしての独自性という 面でも向上が見られた.

ま た, 参 加 し ている学生は機械 工 学 科 の 学 生 を リーダとしている が,総合工学プロ グラムや経営工学 科,建築学科,電 気電子情報工学科 の学生など,工学 部の中でも多彩な 学科の学生で構成 されている.しか し文系学生が確保できていないため,他大学の団体と比べ依然とし てアウトリーチ活動やマネジメント活動などの点で弱い部分が見ら れ課題となっている.

7.謝辞

1年間の活動を通じて協力いただいた本学関係者の方々,及び燃 焼試験設備のある湘南ひらつかキャンパス周辺の方々に感謝の意を 表します.また,打ち上げに際し協力いただいた東京都大島町役場,

警察,消防の皆様,大島漁協の皆様はじめ大島町の方々のご支援,

ご協力に感謝いたします.さらに打ち上げに際し発射台を無償で貸 与くださった千葉工大和田研究室にもこの場を借りて謝意を表しま す.

参考文献

[1]嶋田徹他,“平成27年度ハイブリッドロケット研究WG成果報 告書”,JAXA(2015-2),p.1.

[2] 青 柳 賢 英, 超 小 型 衛 星TRICOM-1の 開 発 成 果,7th UNISEC Space Takumi Conference,(2017.3).

[3]舘山哲也,高野敦,失敗許容設計及びマネジメント(ハイブリッ ドロケット開発・打上において),7th UNISEC Space Takumi Con- ference,(2017.3).

図5 上昇する宇宙ロケット部機体

図6 高度データ

図7 頂点付近での機体カメラからの映像

図8 UNISECワークショップでの表彰

参照

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