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イネにおける高温登熟の世代間応答に関する研究

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

イネにおける高温登熟の世代間応答に関する研究

スリヤサック, チェットピリン

http://hdl.handle.net/2324/4475185

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)

(2)

氏 名 :スリヤサック チェットピリン

論文題名 :Study on the Transgenerational Responses to High Temperature during Grain Filling in Rice (Oryza sativa L.)

(イネにおける高温登熟の世代間応答に関する研究)

区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

本研究では、イネ(Oryza Sativa L.)の高温適応機構を解明するため、子実登熟における高温スト レスが玄米外観品質に及ぼす影響や、前世代の高温環境が次世代の生育に及ぼす影響について、作 物生理学的および分子生物学的に解析した。

開花期から収穫期まで、対照区(25℃)および高温区(30℃)で生育させ、玄米の外観品質 を調査したところ、高温登熟した玄米の白未熟粒率は対照区と比べ有意に高く、高温登熟における 白未熟粒発生に関与するデンプン分解遺伝子の発現も高温区において有意に高かった。イネの種子 発芽時において、デンプン分解遺伝子の発現は、活性酸素を介した植物ホルモンによって制御され ることが報告されている。高温登熟された子実内の過酸化水素含量は対照区と比べ高く、活性酸素 産生に関与する NADPHオキシターゼ遺伝子の発現上昇も認められた。これらの結果は、高温登熟 による白未熟粒発生機構に高温による子実内の活性酸素産生が関与すること示唆した。そこで、高 温条件下において抗酸化剤を処理し、玄米外観品質を調査したところ、高温登熟による白未熟粒率 の上昇を有意に抑制した。さらに、抗酸化剤を処理した子実は、高温登熟によって増加するジベレ リン(GA)合成関連遺伝子やアブシジン酸(ABA)代謝関連遺伝子およびデンプン分解遺伝子の 発現を抑制した。以上の結果から、高温登熟による玄米外観品質の低下は、活性酸素を介した植物 ホルモンの制御によるデンプン分解遺伝子の発現調節によって引き起こされていると考えられた。

高温登熟が次世代の生育へ及ぼす影響について、始めに、対照区と高温区で登熟された種子を用 いて発芽試験を行った結果、高温登熟された種子の発芽遅延が確認された。先行研究において、高 温下で登熟されたイネ種子は、休眠性が深くなることが報告されている。そこで、追熟処理により 休眠を解除後、発芽率を調査したところ、高温登熟種子の発芽遅延は追熟処理後も維持された。こ れらの結果は、高温登熟された種子の発芽遅延は、これまで報告されている種子休眠機構とは異な るとことを示唆した。種子発芽・休眠関連遺伝子の発現解析において、高温登熟種子は ABA 合成 遺伝子の発現上昇、ABA代謝遺伝子およびデンプン分解遺伝子の発現低下を示した。さらに、これ らの遺伝子のプロモーター領域について、DNA のメチル化を確認したところ、ABA 代謝遺伝子お よびデンプン分解遺伝子において高いメチル化が認められた。以上の結果から、高温登熟による種 子の発芽遅延は、発芽関連遺伝子のDNAのメチル化が関与すると考えられた。

次に、高温登熟された種子を用いて、イネ個体の成長解析を行った結果、高温登熟を経験した植 物体は、対照区と比べ、分げつの促進、早期開花および止葉伸長の抑制を示した。早期開花につい て着目して解析したところ、高温登熟を経験した植物体は、出穂・開花関連遺伝子の発現促進が認 められた。さらに、その遺伝子のプロモーター領域の DNA のメチル化は、高温登熟した種子にお いて低いことが示された。また、高温登熟を経験した植物体は、高温条件下における止葉の光合成 速度の低下および登熟子実のデンプン合成遺伝子発現の低下を抑制し、玄米外観品質を向上させた。

以上のことから、イネの登熟期における高温は、DNAのメチル化などエピジェネティックな制御を 介して、次世代の成長へ影響を及ぼすことが示された。

参照

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