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(1)

第66巻 第2号,2007(243~246) 243

ランチョン教育セミナー

成長曲線から何がわかるか

西 美和(広島赤+字・原爆病院小児科)

 ●成長障害チェックの出発点は,健康診断   時1回の身長,体重測定値よりも成長曲線   の作成である。

 ●身長の伸び不良,逆に急な身長の伸びに

  も注意。

 ●「生まれが小さいから低い」,「親が低いか   ら子どもも低い」,「いずれ伸びるだろう」

  の大部分は正しい。しかし,それで安心し   ていると病気による成長障害の発見が遅れ   ることもある。

 ●低身長の多くは病的原因のない低身長が   圧倒的に多い。

 ●低身長=成長ホルモン欠損症低身長=

  成長ホルモン治療可能と誤解しないよう   に。

 ●両親とも肥満であれば子どもが肥満にな   る率は60~70%である。

 ●病的原因がない単純性肥満が圧倒的に多   い。病的原因があるのを症候性肥満と称す   る。

 ●成長曲線から異常に体重が増加,減少す   る場合も注意。

1.成長曲線の作成(図)が出発点

 健康診断時1回の身長,体重測定値よりも,

出生時から現在までの身長,体重(母子手帳,園・

学校での身長,体重のデータ)から成長曲線作 成が重要である。成長曲線から詳しい検査をす べきか,経過観察のみでよいのか大体の見当を つける。

 母子手帳には6歳までの成長曲線があるので それを利用する。保健所,園・学校でも成長曲

長而80 70 60 50 40 30 20 10 00 90 80 70 60 50身¢1 1 1 1 1 1 1 1 1

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 O 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

         年齢(歳〉

      図 成長曲線(男子)

身長の伸びが正常かどうかは,成長曲線を作るのが 出発点。

図のA,B, C, D, Fのようにかなりの低身長や 次第に伸びが悪くなっている場合は注意。

 →成長ホルモン分泌不全性低身長症,甲状腺機能 低下症女児のターナー症候群(性染色体異常),

脳腫瘍,ステロイド剤の長期間使用,慢性腎不全,

慢性疾患など

図のC,D

 →上記の疾患以外に“おくて”(思春期が来るの が遅い)や性腺機能低下症

図のE

 →“わせ”(思春期が早く来る),思春期早発症(性 早熟),脳腫瘍,副腎,精巣,卵巣の病気など

図のG

 →巨人症,家族性高身長など 広島赤十字・原爆病院小児科 〒730-8619広島県広島市中区千田町1-9-6

Tel:082-241’3111 Fax:082-246-0676

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(2)

244 小児保健研究

線を作成しておけば,病気の早期発見・早期治 療に有用である。

 両親・同胞・親族の身長,体重,二次性徴発 来時期,成長障害の有無が,家族性低身長,体 質性思春期遅発(おくて),思春期早発傾向(わ せ)などを知るのに重要である。

皿t低身長・身長の伸び異常の原因(表)

 圧倒的に病的原因でない家族性低身長「親が 低いから子どもも低い」,体質性思春期遅発(お くて)「親も後で大きくなったから子どももい ずれ大きくなるだろう」,子宮内発育不全性低 身長症,低出生体重児の低身長症「生まれが小 さいから低い」が多い。

 低身長や身長の伸びが次第に悪くなる場合に は病的な原因も考えられる。病的原因としては,

成長ホルモン分泌不全性低身長症,甲状腺機能 低下症,ターナー症候群(女児のみ),慢性疾 患(慢性腎不全,クローン病,潰瘍性大腸炎な ど),骨の病気(軟骨無形成症など)や長期間 ステロイド剤使用などがある。

 年齢不相応に急激に身長が伸びる場合も要注 意である。思春期早発症(性早熟)や思春期早 発傾向(わせ)がある。思春期が早く来るので 骨(骨年齢)も早く発達し早く成人身長に達す るので,結局は思ったよりも身長は高くない。

身長が低いのに思春期が早く来ると,成人身 長は思ったよりも低くなる(Tall Child Short

Adult) o

皿.検

 身長が伸びることは骨が発育することなの で,骨の発育状態を見るのに左の手のレントゲ ン写真を撮って骨年齢をみる。骨年齢が暦年齢 より遅れているのか進んでいるのかを判定す る。さらに内分泌検査(成長ホルモン,甲状腺 ホルモン,性ホルモンなど)をする場合もある。

骨の病気を疑えば全身の骨のレントゲン検査を する。まれに脳腫瘍による成長障害もあるので 頭のMRIやCT検査を撮る場合もある。詳し い検査するには入院してから検査する場合があ

る。

表低身長,成長障害の原因・疾患

● 家族性低身長(親が低いから子も低い)

● 低出生体重児の低身長症,子宮内発育不全性低身長症

   多くの場合(80~90%)は2歳ごろまでには正常範囲内になる

● 体質性思春期遅発(おくて)(いずれ伸びるだろう):大部分は成人身長は正常,男児に多い。家系内に“お  くて”であった人がいる

● 特発性低身長(上記以外の低身長)

● 思春期早発傾向(わせ):女児に多い, 家系内に“わせlyであった人がいる

● 内分泌疾患

   成長ホルモン分泌不全性低身長症(下垂体性小人症の小人症は差別用語のために使用しない),

   pituitary dwarfismのdwar丘smも差別用語    甲状腺機能低下症

   思春期早発症:Tall Child, Short Adult     副腎,精巣,卵巣の病気

   脳腫瘍    その他

● 染色体異常,奇形症候群

   ターナー症候群,ダウン症候群,プラダー・ウィリー症候群

● 骨系統の病気

  軟骨無形成症(軟骨異栄養症),軟骨低形成症,くる病

● 慢性疾患

  慢性腎不全(多飲・多尿夜尿症),慢性心疾患,慢性肝疾患,クローン病,潰瘍性大腸炎,血液疾患,

  悪性腫瘍など

● 代謝性疾患

● 栄養障害,栄養不良

   アトピー性皮膚炎に対する厳格除去食療法など

● アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎など)に対するステロイドを含む薬の長期間使用  (特に内服薬,セレスタミン):医原性クッシング症候群

● 心因性,養育環境の悪化:愛情遮断症候群

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(3)

第66巻 第2号,2007

N.成長ホルモン分泌不全性低身長症

 下垂体からは,成長ホルモン(Growth Hor-

mone:GH)以外に性腺刺激ホルモン,甲状腺 刺激ホルモン,副腎皮質刺激ホルモン,抗利尿

ホルモン,乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)

がある。GHのみが欠損しているGH単独欠損 症とGHと他の下垂体ホルモン分泌不全を伴う 複合型下垂体ホルモン欠損症がある。

 下垂体は頭部の真ん中にあるので,顔面・頭 部正中奇形(代表が兎唇,口蓋裂)に成長ホル モン欠損症を合併することがあるので,このよ うな子どもでは必ず成長曲線を作成して,身長 の伸びが正常かどうかみておく必要がある。

 最近は,脳腫瘍や白血病などへの頭蓋内放射 線照射後や脳腫瘍の手術後の下垂体機能低下症 が注目されている。放射線照射後や脳腫瘍手術 後の下垂体機能は加齢とともに低下するので,

1回の検査で正常であっても生涯正常とは限ら ず,長期にわたるフォローアップが必要である。

V.現在日本で認められているGH治療適応疾患  低身長でかつ骨端線の閉鎖を伴わない(成人 の骨になっていない)成長ホルモン分泌不全性 低身長症,ターナー症候群,軟骨異栄養症(軟 骨無形成症,軟骨低形成症),慢性腎不全性低 身長,プラダー・ウィリー症候群がGH治療対 象疾患である。それぞれGH治療開始基準継 続基準,小児慢性特定疾患適応基準(H17年4 月より厳しくなっている)がある。低身長のす べてがGH治療適応とは考えない。

 最近,成人の成長ホルモン欠損症に対する GH治療が保険適応になった。この治療は,身 長を伸ばすのではなく,全身の代謝改善に対す るものである。GHは,子どもだけに必要なホ ルモンではなく,脂質やタンパク質,糖質など の代謝に必要で,一生にわたって健康なからだ を維持する重要なホルモンである。

 今後のGH治療適応疾患として,低出生体重 による低身長症が予定されている。すでに欧米 では適応となっている。

245

Vl.低出生体重児の低身長症,子宮内発育不全   性低身長症

 基礎疾患のない正期産の低出生体重児では 2歳頃までに80~90%くらいが正常範囲内に catch-upする。在胎週数が少ないほどcatch-

upする率は低下する。

 低出生体重児には正常出生児に比して“わせ”

がみられることが少し多い。

V旺.思春期早発症,わせ(急に身長が伸びる)

 急に身長が伸びたら喜んではいけない。一部 の脳腫瘍では,急な身長の伸びと思春期早発症 を伴う。身長が急に伸びるので子どもの時には 身長は高いが,早く成人になるので成人身長 は結局低いことになる場合もある(Tall Child,

Short Adult)。この中にはまれに脳腫瘍や副腎 睾丸,卵巣の病気によるものがある。

 思春期早発症の定義には該当しないが,少し 思春期発来が早いのを思春期早発傾向“わせ”

と称する。急に伸びているのでそのまま大きく なると早合点してはいけない。家系内に“わせ”

を認めることと女児が比較的多い。

「皿.体質性思春期遅発症(おくて)

 “おくて”は,思春期発来が遅いが,思春期 勿来とともに身長が伸び,最終身長は大部分が 正常であるが,低身長に終わる場合がある。女 児より男児に多くみられ,家系内にも“おくて”

を認めることが比較的多い。

1X.体重の評価

 身長との関連で評価する。肥満度は次の式で 計算する。

 (実測体重一標準体重)÷標準体重×100%

 標準体重は身長に見合った体重である。肥満 度20%以上30%未満が軽度肥満,30%以上50%

未満が中等度肥満,50%以上が高度肥満である。

幼児期では15%以上が要注意である。一20%以 下をやせと定義する。一15%以下は要注意であ

る。

 成長曲線から異常に体重が増加,減少する場 合も要注意である。

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(4)

246 小児保健研究

X.肥満(単純性肥満,症候性肥満)

 両親とも肥満であれば子どもが肥満になる 率は60~70%,一方の親が肥満の場合は30~

50%,両親とも肥満でない場合は約10%である。

 病的原因がない単純性肥満が圧倒的に多い。

摂取カロリー量が消費カロリー量よりも多いの が原因である。

 病的原因による肥満が症候性肥満で,甲状腺 機能低下症,プラダー・ウィリー症候群,脳腫 瘍,脳炎後,長期間のステロイド剤使用などが ある。症候性肥満では,体重は増えるが低身長 や身長の伸びは不良のことが多い。家系内に一 人も肥満がいないのに,その子だけ異常に肥満 である場合も症候性肥満を疑う。症候性肥満で は原疾患の治療が第一である。

 食事療法と運動療法が必要である。本人・家

庭・学校の肥満に対する理解と協力も必要であ る。体重の現状維持か体重の増加率を今までよ りは増やさないようにすれば小児期では身長 が伸びることより次第に肥満度は改善する。高 度な肥満や肥満による合併症がある場合には体 重を減量するが,医師,栄養士の管理の元で行

う。

Xしおわりに

 成長障害の診断・治療の出発点は,受診時1 回の身長,体重測定値よりも成長曲線の作成で ある。成長曲線と臨床症状・所見より病的な成 長障害か,積極的に検査すべきかどうかの判断

をする。

 いずれにしても成長障害は,小児内分泌専門 医に相談することが良い。

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