Ni系ろう材を用いた球状黒鉛鋳鉄接合材の衝撃特性
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中村憲和* 西尾一政* 加藤光昭*
Impact Characteristics of Joints of Spheroidal Graphite Cast Irons with Ni-Base Brazing Sheet
Norikazu Nakamura
,Kazumasa Nishio and Mitsuaki Katoh
球状黒鉛鋳鉄に対して溶融溶接を行うと,溶接金属は白銑化し,溶接熱影響部にはマルテンサイトが生じたり,
割れが発生するなどその接合性は極めて悪い。そこで,本研究では球状黒鉛鋳鉄同士の接合に溶融溶接に変わって 系ろう材を用いた液相拡散接合法を適用し,その衝撃特性を評価した。その結果,接合時間を2分間とした場 Ni
合の真空中接合材の吸収エネルギーは,母材の吸収エネルギーに及ばないものの JIS 規格値と同程度であった。ま アルゴン中及び大気中接合材の吸収エネルギーは,真空中接合材の吸収エネルギーの約 であった。
た, 1/3
1 はじめに
著者らは球状黒鉛鋳鉄の接合にインサート金属とし てNi系ろう材を適用し,その接合部の組織観察,EPMA による分析及び引張試験を行って接合性について検討 してきた。その結果,Ni-Si-B 系ろう材を用いた場合 には大気中接合であっても,接合材の引張特性は母材 と同程度であることが分かった。このように,引張特 性は良好であったが,実用化を考慮した場合,衝撃特 性を検討しておく必要がある。
そこで,本研究では Ni-Si-B系ろう材を用いて球状 黒鉛鋳鉄同士を真空,アルゴン及び大気中で接合し,
シャルピー衝撃試験を行って接合部の衝撃特性につい て検討した。
2 使用材料及び実験方法
本研究に使用した材料は,フェライト基地球状黒鉛
FCD370 40 m
鋳鉄 である。また,ろう材は,厚さ μ のNi系ろう材MBF30 Si 4.5 B 3mass% Ni( : , : , :
)を使用した。接合は の真空容器内にお
Bal. 1.3mPa
いて11 ×11×30mmの角棒試験片の端面同士を突 き合わせて行った。被接合面はエメリー紙 1000 番仕
。 , ,
上げとした 接合温度は1313K 接合圧力は5MPa
, 。 ,
接合時間は2 10及び30分間の3水準とした 次に 接合雰囲気の影響を検討するために,アルゴン中及び 大気中で接合を行った。この時の接合温度及び接合圧
力は前述と同じ条件とし,接合時間を2分間と一定に
。 ,
した 接合材からJIS-3号衝撃試験片を加工した後 で 分間のフェライト化焼鈍を行った。衝撃 993K 180
試験は容量 32 Jのシャルピー衝撃試験機を用いて,
持ち上げ角を 90 ゜に設定して試験温度 273K にて同 一の条件で接合した3本の試験片について行った。
3 結果と考察
図−1に吸収エネルギーに及ぼす接合時間の影響に ついて示す。図中の斜線は1313Kで2分間の加熱をし た後,993Kで180分間のフェライト化焼鈍を行った母 材の吸収エネルギーである。接合時間が2分の場合に は吸収エネルギーは3本の平均値で12.6Jであり,こ れは,母材の吸収エネルギーの14.8Jに及ばないもの の,JIS規格値の12.7Jと同等の値である。また,吸
*1 機械電子研究所
*2 九州工業大学
。 収エネルギーのバラツキの幅は0.6Jと非常に小さい 接合時間を長くすると最大値はJIS規格値に近い値で あるが,吸収エネルギーの平均値は低下し,接合時間 が10及び30分の場合はそれぞれ8.9J及び9.3Jであ る。また,吸収エネルギーのバラツキの幅はそれぞれ 5.9J及び5.1Jと接合時間が2分の場合より大きくな った。
次に,接合時間を長くすることにより,吸収エネル ギーが減少し,バラツキの幅が大きくなった原因につ いて,破面及び接合部の組織を観察して検討した。図
−2(a)及び(b)にそれぞれ接合時間が2分で吸収エネ ルギーが12.6J及び接合時間が30分で吸収エネルギー が6.4Jの場合のノッチ底中心部における破断面のSEM 像を示す。ノッチ底は左端である。接合時間が2分の 場合は,黒鉛を核としたディンプル状の延性破面であ る。一方,接合時間が30分の場合は基地部分はリバー パターンが認められ脆性破面である。ところが,接合 時間が30分の場合で吸収エネルギーが高い場合は,接 合時間が2分の場合と同様な延性破面であった。接合 時間が10分の場合も30分と同様な破壊形態であった。
このように,接合時間の違いにより,破壊形態が異な っていた。破断位置は接合時間が2分の場合は,接合 界面から約300μm離れた鋳鉄母材内で破壊していた。
また,接合時間が長い場合は,接合界面から数十μm から100μm程度離れた鋳鉄母材内で破壊していた。
図−3に接合時間が30分の場合の接合部の組織写真 を示す。接合界面近傍の鋳鉄母材のフェライト基地中 にフェライト組織と異なった組織が認められる。これ は,AESの分析結果から Fe C, 及び若干のBが検出さ れたことよりBを固溶した複炭化物 Fe (C,B)3 と思われ る。この領域の硬さは約Hv720であり,その領域以外
2 0μm 20μm
の基地組織の硬さは約Hv220であった。き裂はこの複 炭化物を通って進行していた。また,接合時間が10分 の場合も同様な複炭化物が認められ,吸収エネルギー が低い場合には,き裂はこの複炭化物を通って進行し ていた。一方,接合時間が2分の場合は複炭化物はほ とんど認められなかった。
接合雰囲気の影響を検討した結果,真空中接合材の 吸収エネルギーは 12.6 Jであるが,アルゴン中及び 大気中接合材の吸収エネルギーは 4.5 J程度とかなり 低下した。真空中接合材の場合は母材内で延性破壊を 生じていたが,アルゴン中及び大気中接合材の場合は 接合界面で脆性破壊を生じていた。
4 まとめ
系ろう材 接合時間を2分間と
Ni MBF30 を用いて
した場合の真空中接合材の吸収エネルギーは,母材の に及ばないものの 規格値と同程度
吸収エネルギー JIS
。 , ,
であった しかし 真空中接合材の吸収エネルギーは 接合時間を長くすることにより低下した。これは,接 合時間を長くすることにより,接合界面近傍の鋳鉄母 材内に複炭化物 Fe (C,B)3 が析出し,き裂はこの部分を 伝播して脆性破壊を生じたものと思われる。アルゴン 中及び大気中接合材の吸収エネルギーは 4.5 J程度で あり,真空中接合材の吸収エネルギーの約 1/3 であっ た。
5 参考文献(論文投稿)
溶接学会論文集,Vol.20,No.4,p.523-530(2002) 2 0μm