論文内容要旨(乙)
Magnifying narrow-band imaging of surface patterns for diagnosing colorectal cancer
(NBI 拡大観察による早期大腸癌の表面構造の観察)
Oncology reports(Vol.30 No.1 2013 年掲載)
内科学(消化器内科学分野)(横浜市北部病院) 三澤 将史
背景
Narrow-band imaging (NBI)による大腸病変の微細血管観察は腫瘍・非腫 瘍の鑑別、病理組織診断に有用であることはこれまでに多く報告されてい る。現在、色素拡大内視鏡による pit pattern 診断が腫瘍・非腫瘍の鑑別、
大腸癌の深達度診断の gold standard である。色素拡大観察で無構造領域 を示すⅤN 型 pit pattern は粘膜下層深部浸潤癌(SMm)の診断指標とされ ている。しかし最近では NBI 拡大観察による血管観察に加え、NBI で観察 される粘膜模様も観察することで大腸癌の深達度診断に有用であること が報告されている。日本では NBI によって観察される粘膜模様を Surface pattern と呼称している。
大腸病変の肉眼型から検討すると陥凹型とそれ以外でそれぞれ典型的な 色素内視鏡による pit pattern が異なることが報告されている。そのため NBI によって観察される Surface pattern も肉眼型毎に異なることが推測 されるが文献的な報告はほとんどみられない。
目的
この研究の目的は Surface pattern が深達度診断に有用であるかという点 と、肉眼型毎の surface pattern の深達度診断能を比較することである。
方法
この研究は 2010 年 1 月から 2011 年 3 月までの期間に昭和大学横浜市北部 病院消化器センターで行われた。NBI 拡大観察された連続 357 症例、378 の早期大腸癌を対象とした。
記録された静止画を二人の病理診断結果を知らされていない内視鏡医 2 名に無作為に別々に提示し、surface pattern を以下に示す分類に従って 診断した。また検査者間一致性と検査者内一致性を検討するために 40 症 例を別に準備し surface pattern を診断し 1 ヶ月後に再度試験を行った。
本研究では NBI 拡大による surface pattern を以下の 3 pattern に分類し て検討した type I; 表面構造が白い縁取りとして観察されその配列形態
は均一。Type II; 表面構造は見えにくい、もしくは構造や配列が不均一。
Type III; 表面構造は全く確認できない。
肉眼形態は隆起型、平坦型、陥凹型の 3 種類に分類した
結果
Surface pattern typeIII を SMm の指標とすると感度 56.9%、特異度 91.7%、
正診率 85.7%であった。肉眼形態毎に検討すると Type III の各肉眼形態 における診断精度は隆起型:感度 34.8%,特異度 96.4%,正診率 90.0%,
平坦型:感度 54.2%,特異度 92.7%,正診率 85.0%,陥凹型:感度 88.9%,
特異度 40.0%,正診率 63.2%であった。陥凹型と他の形態を比較すると、
陥凹型は特異度と正診率が有意に劣っていた(P<0.001)。また kappa 統計 値を用いた surface pattern の検査者間一致性は“十分”な一致率であり、
検査者内一致性は“ほぼ完全”な一致率であった。
考察
色素拡大内視鏡で観察される無構造な表面構造(VN型 pit pattern)は SMm の深達度診断に非常に有用であることは以前より多くの文献で報告され ている。当センターの検討では感度 75.3%,特異度 97.6%,正診率 93.8%
と報告した.しかし本研究で検討した pit pattern での VN 型 pit pattern) に相当すると考えられた type III の SMm に対する診断精度は十分ではな かった。この理由としては NBI 拡大観察によって観察される表面構造は色 素内視鏡で観察される pit pattern と完全に一致しないことが以前より報 告されており、とくに NBI 拡大観察は対象病変が不整な表面構造の場合 pit pattern と一致しないことがある。NBI で表面構造が無構造にみえて も実際は表面構造が残存しており、深達度が浅い病変が多かったため surface pattern は pit pattern にくらべると診断精度が劣っていると考 えられた。
肉眼形態毎に検討すると陥凹型腫瘍はほかの肉眼形態に比べて診断精度 が劣っていたが、陥凹型腫瘍は粘膜内病変であっても表面構造が非常に細 かく微少になっていることが特徴であり,このため深達度が浅い病変であ っても NBI で表面構造がみえず誤診した症例が多かったためと考えられ た.
結果
Surface pattern による深達度診断の正診率が 85.7%と,従来の色素拡大 内視鏡診断に比べ劣っており日常臨床で使用するには不十分である,また 肉眼形態毎に surface pattern の正診率は異なっており特に陥凹型で劣っ ていた.