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システム理論的アプローチによる分散システムの 設計・解析・制御

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Academic year: 2021

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図 1:離散事象システムモデル

はじめに

 システムの大規模・複雑化,ネットワーク化にと もない,様々な分野において分散システムに関する 研究開発が盛んに行われている.例えば,制御シス テムに関しては,自動車に代表されるように,ネッ トワーク化された電子制御システムが多くの工業製 品に用いられている.また,群ロボットやセンサネ ットワークなども分散システムの典型例である.

 分散システムにおいては,自律的に動作する各エ ージェントの意思決定機能,各エージェント間の通 信機能,各エージェントのローカルな判断を統合す る機能などを如何に設計するかにより,その性能が 大きく左右される.本研究室では,宮本俊幸准教授,

林直樹助教と共同で,数学モデルを用いた数理的ア プローチであるシステム理論に基づく分散システム の設計・解析・制御に関する研究を行っている.そ こで本稿では,分散システムを離散事象システム,

マルチエージェントシステムとして捉えた幾つかの 研究について紹介する.

離散事象システムの分散制御に関する研究

 離散事象システムは,事象の生起により,その状 態が離散的に遷移するような事象駆動型システムの 総称であり,オペレーティングシステム,通信シス テム,データベースシステム,生産システムなどは

離散事象システムとしての側面をもつシステムの例 である.

 離散事象システムは,図 1 に示すオートマトン,

ペトリネットのように,その離散的な状態遷移構造 に着目してモデル化される.デッドロック回避制御,

排他制御,並行処理制御などの制御問題は,システ ムで生起する事象の順序を制御する問題であり,こ のような制御問題に対するフィードバック制御の手 法にスーパバイザ制御がある.スーパバイザ制御で は,制御された対象システムの振舞いが望ましい動 作を記述した制御仕様とある意味で等価となるよう なスーパバイザと呼ばれるコントローラを構成する ことが制御問題である.特に対象システムが複数の サブシステムからなる分散システムの場合には,例 えばサブシステム毎にローカルスーパバイザを構成 するような,分散スーパバイザ制御が有効である.

その概念図を図 2 に示す.このような分散スーパバ イザ制御系では,各スーパバイザは全体システムの 一部(図 2 においては対応するサブシステム)に関 するローカル情報に基づき制御判断を下す必要があ り,その判断機能,および各スーパバイザの制御判 断の統合機能を適切に定める必要がある.本研究室 では,このような機能の設計,設計した機能により

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生 産 と 技 術  第66巻 第2号(2014)

 Shigemasa TAKAI 1966年6月生

神戸大学 工学研究科 システム工学専 攻修士課程修了(1991年)

現在、大阪大学 大学院工学研究科 電 気電子情報工学専攻教授 博士(工学)

システム理論 TEL:06-6879-7693 FAX:06-6879-7263

E-mail:[email protected]

システム理論的アプローチによる分散システムの 設計・解析・制御

Design, Analysis, and Control of Decentralized/Distributed Systems Based on the Systems Theoretic Approach

Key Words:decentralized/distributed system, systems theoretic approach, discrete event system, multi-agent system

高 井 重 昌 研究室紹介

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図 4:コンセンサス制御の例 図 3:群の概念図 図 2:分散スーパバイザ制御系

満足することができる制御仕様の特徴づけなどに関 する研究に取り組んでいる.

マルチエージェントシステムに関する研究

 地球温暖化への対策として,CO2排出量の削減は 世界の最重要課題の一つである.また,エネルギー 売買の自由化の流れから,エネルギー変換機器をも つ事業者が,自らのエネルギー需要量を超えたエネ ルギーを生産し余剰分を販売する,逆に自らのエネ ルギー生産を抑えて他の事業者から購入するといっ たエネルギー売買が現実的となってきている.機器 には最も効率の良い動作点が存在し,自身のエネル ギー需要を満たすためだけならば,効率の悪い動作 点での運転を余儀なくされる場合でも,上述のよう なエネルギー売買が可能であれば,より効率のよい 動作点での機器の運転が可能となる.特に地域レベ ルにおいて,エネルギー取引によるエネルギー利用 の効率化が期待されており,本研究室では,地域レ ベルでの消費コストを削減することを目的とし,事 業者間のエネルギー売買を考慮した機器運転計画を 作成する研究を行っている.

 独自の電力・熱エネルギー需要を持ち,CO2排出 量制約が課されている独立した企業体で構成され,

それら企業体間で電力・熱エネルギー売買の自由が 認められた特区を想定し,そのような特区を群と呼 ぶ.群の概念図を図 3 に示す.群全体に対して最適 な機器運転計画を立案する集中型のアプローチにお いては,立案された運転計画が独立した各企業体に 受け入れられるのか,といった問題がある.そこで,

本研究室では,各企業体をエージェントとみなし,

各エージェントがエネルギー売買を考慮しながら CO2排出量制約のもとで機器運転計画を立て,エー ジェント間の協調により,群全体の消費コストを削 減するマルチエージェントシステムとしての,分散 エネルギー管理システムを提案している.

 また,本研究室では,エージェント同士のローカ ルな相互作用によってシステム全体としてのグロー バルな目的を達成するための協調制御に関する研究 も行っている.無人航空機の編隊形成,高度交通シ ステム,群ロボット,センサネットワークなど協調 制御の応用分野は多岐にわたる.特に,すべてのエ ージェントの状態が等しくなるような制御を行う協 調制御問題はコンセンサス問題と呼ばれる.コンセ ンサス問題の例として,図 4 に示すように,モバイ ルロボットの進行方向を同じ方向に収束させる問題 などがあげられる.

 近年,物理システムと情報システムが結合したサ

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イバーフィジカルシステムという新しい概念が提案 され,情報工学や制御工学など様々な分野で注目さ れている.本研究室では,各エージェントが物理シ ステムと情報システムの結合とみなせるようなマル チエージェントシステムを対象とし,サイバーフィ ジカルシステムにおける協調制御の理論構築とその 応用を目指して研究を進めている.

おわりに

 本稿では,筆者の研究室で行っている分散システ ムに関する研究の概要を紹介した.情報通信技術を 活用した制御システムの重要性は増すばかりであり,

安全かつ高性能で,エネルギー効率にも優れたシス テムの実現へ向けて,精力的に研究を進めていく所 存である.

生 産 と 技 術  第66巻 第2号(2014)

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図 1:離散事象システムモデルはじめに システムの大規模・複雑化,ネットワーク化にともない,様々な分野において分散システムに関する研究開発が盛んに行われている.例えば,制御システムに関しては,自動車に代表されるように,ネットワーク化された電子制御システムが多くの工業製品に用いられている.また,群ロボットやセンサネットワークなども分散システムの典型例である. 分散システムにおいては,自律的に動作する各エージェントの意思決定機能,各エージェント間の通信機能,各エージェントのローカルな判断を統合す る機能などを如
図 4:コンセンサス制御の例図 3:群の概念図図 2:分散スーパバイザ制御系満足することができる制御仕様の特徴づけなどに関する研究に取り組んでいる.マルチエージェントシステムに関する研究 地球温暖化への対策として,CO2排出量の削減は世界の最重要課題の一つである.また,エネルギー売買の自由化の流れから,エネルギー変換機器をもつ事業者が,自らのエネルギー需要量を超えたエネルギーを生産し余剰分を販売する,逆に自らのエネルギー生産を抑えて他の事業者から購入するといったエネルギー売買が現実的となってきている.機器に

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