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主観的映像の可能性

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Academic year: 2021

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主観的映像の可能性

映画とゲームにおける一人称映像作品の系譜と比較を通して Possibilities of first person perspective video

Comparison of first-person perspectives between movies and video-games 1w163081-4 鶴田 晃大 指導教員 土田 環、是枝 裕和

TSURUTA Akihiro TSUCHIDA Tamaki KORE-EDA Hirokazu

概要:近年、監督・上田慎一郎の「カメラを止めるな」(2017)がヒットするなど、POVショットを採用した映画が身近なものとな

ってきている。しかし、POVを掲げる映画の撮影方法は様々であり、POVが映画手法または様式として確立しているとは言い切 れない。また、その要因は、POVが一人称視点の撮影方法であると言う茫然とした解釈が広まっていることにあると考える。本論 では、いくつかのPOVショットの撮影方式と肉眼において認知することのできる一人称的な視覚情報を比較し、POVショットの 撮影方式の再分類・再定義を行った。

キーワード:POV、FPS、主観ショット、一人称視点ゲーム

Keywords: Point-of-View, First Person Shooter,Subjective shot , First person perspective videogames

はじめに

映画やゲーム、漫画のなかでは一人称視点の表現技法が多く 使われており、一般的にPoint-of-view(以降POVと表記する) と呼ばれている。しかし、POVの具体的なイメージを想起する ことは、決して容易ではない。POVはある人物の視点や、手持 ちのビデオカメラの視点が多い。しかし、一括りにPOVFirst Person Shooter (以降FPS)と表現するには一人称視点の表現技 法の多様さを補えない。実際の人間の視点も一人称であるし、

ビデオカメラも一人称である、そして、ゲームにおいては一人 称視点の操作まで可能だ。実際の人間の視点を映像によって完 全に再現することは不可能であるが、それぞれの作品が操作す る人間は「主観」であると感じている。本研究ではゲームと映 画のなかの主観的な映像において、表現技術を比較し、肉眼と の差異、作品ごとの表現の差異を見出すことで、主観映像の展 望に言及することが目的である。

1.POVの定義と分類

「POV」とは「Point-of-view」の略称である。直訳すると「視 点」という意味になる言葉であるが、エドワード・ブラニガン によれば、一般的な概念としての「視点」にはハイフンなしの

「Point of view」を使用し、キャラクターの視点と観客の眼の 位置が空間的に重なる映像手法において、ハイフンを用いた

「Point-of-view」ないし省略形の「POV」を用いると決定して いる(EdwardBranigan,1984)。本章では、POVという表現の定 義について考察しつつ、その技術としての曖昧さ、多様さにつ いて整理を行った。その結果、映画とゲームにおいて系譜を辿

るなかで、一人称視点の映像を6つに分類した。

⑴マンガ的POV: 2コマのモンタージュを採用した、マンガ 的な説明をする初期の POV様式。Ex.『おばあさんの虫眼鏡』

(1900)

⑵鍵穴型POV:のぞき見形式で物語が展開する様式。穴をのぞ く主人公の視点を観客は観察者として共有する。Ex.『証拠探し』

(1903)

⑶ビデオカメラ型POV:ビデオカメラで仮想の出来事を、ドキ ュメンタリー調に撮影したPOV様式。Ex.『食人族』(1980)

⑷肉眼視点型POV:カメラ越しではなく、実際の肉眼を通して 視点を観客と共有するPOV様式。主人公自身の肉体や四肢の 存在が感じられる演出が多い。『武器人間』(2013)

⑸ヘッドマウント型 POV:頭にヘッドマウント型の小型カメ ラを装着し、撮影を行ったPOV様式。FPSゲームから発想を 得ており、視点移動が激しい。Ex.『ハード・コア』(2016)

⑹FPSゲーム型POV:FPSゲームに代表されるプレイヤーが操

作することができる一人称映像。Ex.『Doom』(1993) 本論文では、上記の分類にしたがって、それぞれのPOV 対して、①POVの映像が一人称の対象である主人公(キャラク ター)の視点に実際に一致しているか、また、②主人公の視点が 固定されているかを基準にして評価を行った。①に関しては、

POV の定義に観客とキャラクターの視点の位置が一致すると あるので、それぞれの様式について、POVの定義に当てはまっ ているか確認した。②については、実際の私たちの視点は自在 に動かすことが可能であるが、固定カメラによる撮影は自由な

(2)

視点移動を制限していると言える。そこで、それぞれの POV の撮影において、主人公が、鍵穴をのぞいたり、カメラをのぞ いたりと視点が固定されていることを前提とした作品か否か を判断した。

2.考察

考察の結果、以下の結論が得られた。

図:各POV様式(年代)と①、②に関しての評価

「マンガ的POV」においてはPOV映像と主人公の視点は一 致していると言える。というのも、1コマ目で主人公がのぞき 見る対象に意識を向ける動作が入るため、観客は2コマ目で主 人公の視点が来ることを理解できるからだ。2コマ目にどの様 な景色が映しだされるかに関わらず、観客と主人公は同じ景色 を目撃する。また「マンガ的POV」においては2コマ目の状態 において主人公の状態は映し出されず、重要な要素ではないた め不明とした。

「鍵穴型POV」に関しては、穴をのぞいているため主人公の

視点は固定され、体の動きも固定されている。あくまでも物語 の主体は鍵穴の先の景色で起きていることである。

「ビデオカメラ型POV」においては、ビデオカメラに視点が 固定されており、ビデオカメラ越しに見える景色をのぞき見て いる。一方で主人公の視点とPOV映像、すなわち観客が見る 映像が一致しているかに関しては、完全に一致はしないとした。

理由は2つある。まず一つ目に、ビデオカメラが映し出す映像 と主人公が見る肉眼の視点にわずかながら位置的な差がある ということだ。2つ目に、映画の演出でカメラを落としたり、

奪われたりして、主人公の視点でなくなる時がある。これらの 2つの理由から、「ビデオカメラ型POV」において主人公と観 客の視点が完全に一致しているとは言えず、しかし、一人称視 点の映像であることは確かであるため、曖昧さを表現するため に“△”の評価にすることにした。

「肉眼視点型POV」に関しては、主人公の視点と一致してい て、主人公の視点は固定されていないと評価した。『武器人間』

(2013)では、肉眼の位置から撮影を行っており、主人公の手

足が一人称の視点で確認できる。技術的には「ビデオカメラ型 POV」との差異は無く、演出においての差異であると言える。

「ヘッドマウント型」の撮影方法である場合、カメラの向き は視点でなく、顔面の向きであり、主人公の視線とは一致しな い。極端、主人公の額の位置にあるカメラから物語を観察する 第三者視点であると言える。

FPSゲームの視点においては、「肉眼視点的POV」と映像の 見た目は近いが、その視点の操作まで可能である。欠点は、コ ントローラーによる視点の操作が乱れてしまうと、映像も乱れ、

プレイヤーは画面酔いなどの違和感を抱いてしまうことだ。一 方、操作に慣れれば、長時間映像を見ても違和感を抱くことは ない。実際の肉眼に近い映像と操作が可能になった映像作品で あると言える。

結論

近年、カメラの稼働領域が広がり、小型化が進むことで役者 にカメラを装着して撮影ができるようになった。この様な、技 術的な進歩が新しいPOVの誕生を加速してきた。また、より 臨場感を高めるように、実際の人間の肉眼の視点に近づけよう とする装置への関心は高まってきている。実際に、POV様式は 固定された視点から、動きを含む視点に進歩してきた。

一方で、主観に対する捉え方も時代とともに変化してきたと 言える。初期のPOV様式ではのぞき見る対象に関心が向いて いることに対し、近年のPOV様式では主観の持ち主である主 人公(キャラクター)が体験することに関心が向いている。時 代の変化と共に、観客を主人公の視点に固定させる考え方から、

主人公の視点を観客の実感に近い視点に寄せるよう、撮影方法 を進歩させるという考え方に変化していると言える。そして、

FPSゲームにおいては、誕生した当時から主人公の体験に重き を置いていたため、近年の主人公の体験に重きを置いた POV 様式と交流が行われるようになったのではないか。しかし、低 予算で、臨場感のある映像が撮れるとPOVを採用している作 品も少なくない。一度、主人公が目撃をするという一人称視点 の本質を振り返り、作品に主観的表現をとりいれる意義を再考 する必要があるのではないか。

参考文献

・三輪健太朗『「映画的手法」から「映画的様式」へ―マンガと POVをめぐる諸問題―』、2014年、NTT出版。

・竹内正樹「VR を用いて「他者観察」を行わせる授業の開発

―バレーボールの実践から―」『授業実践開発研究 11巻』、

2018年、31-40。

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2019 年度 卒業論文

主観的映像の可能性

映画とゲームにおける一人称映像作品の系譜と比較を通して

提出日:2020 年 2 月3日

指導教員:土田 環 講師

是枝 裕和 教授

早稲田大学理工学術院 表現工学科

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