平成 17 年度日本自転車振興会補助事業 動画映像の視覚評価に関する調査研究事業
「 動画映像の視覚評価に関する技術動向調査と その感性的評価の実験的検討 」
報告書
平成18年3月
財団法人 デジタルコンテンツ協会
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
目次
第1章 はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.1 本事業委員会の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1.2 本年度の活動状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1.3 本事業委員会の推進体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 1.4 平成 17 年度の事業の方向性と概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61.4.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.4.2 事業展開の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.4.3 事業展開の具体的項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.4.4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
第2章 動画映像の視覚評価に関する技術的動向調査
・・・・・・・・・・ 8 2.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 2.2 動画映像の視覚評価に関する有識者の講演調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2.2.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2.2.2 早稲田大学 森島繁生教授による講演 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2.2.3 北陸先端科学技術大学院大学 宮原誠教授による講演 ・・・・・・・・・・・・・・・ 12 2.2.4 北陸先端科学技術大学院大学 宮原誠教授による講演と現場調査 ・・・・・ 15 2.2.5 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 2.3 動画映像の視覚評価に関する文献調査とその方向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 2.3.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 2.3.2 動画映像の評価方法に関する研究資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 2.3.3 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 2.4 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26第3章 海外における動画映像の技術動向調査
・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 3.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 3.2 北米調査報告2005 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 3.3 Hollywood視察日記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 413.4 動画映像に関する資料調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 3.4.1 海外書籍文献調査概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 3.4.2 海外文献の翻訳調査概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52 3.5 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53
第4章 動画映像に関する感性的評価の実験的検討
・・・・・・・・・・・ 56 4.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 564.1.1 本研究の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 4.1.2 本研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 4.1.3 本章の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 4.2 感性的評価実験に使用する映像プロジェクターについて ・・・・・・・・・・・・・・・ 57 4.2.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 4.2.2 プロジェクターの選択 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 4.2.3 LCD 方式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 4.2.4 DLP 方式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 4.2.5 各映像表示方式の特徴について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 4.2.6 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 4.3 評価方法と解析方法について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 4.3.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 4.3.2 評価方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 4.3.3 解析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 4.3.4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 4.4 映像コンテンツの評価実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 4.4.1 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 4.4.2 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 4.4.3 映像評価実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 4.4.4 解析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68 4.4.5 映像評価実験 その1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 4.4.6 映像評価実験 その 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 4.4.7 映像評価実験 その 3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 4.4.8 考察とまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73 4.4.9 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 4.5 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74
第5章 むすび
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77資料
資料1 高臨場感ディスプレイフォーラム 2005 招待論文
・・・ 79資料2 動画映像の評価方法に関する文献一覧
・・・・・・・・・・・・・・・・ 83資料3 映像評価実験アンケート用紙
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119(空白)
第1章 はじめに
現在の成熟した IT(情報技術)による情報化社会を背景に、21世紀の知識創発型社会の到 来に向けて平成13年度に、(財)デジタルコンテンツ協会(DCAj)が発足した。本協会は、
情報社会をリードする良質なデジタルコンテンツの制作、流通、利活用の推進を目的とし、か つ、将来的に世界市場の中で我が国のデジタルコンテンツ関連産業が世界トップレベルを目指 すことを視野に入れている。その中で開発事業を推進する開発政策委員会では、時代をリード する将来のデジタルコンテンツと今後の我が国のデジタルコンテンツ関連産業の発展を鑑み、
平成13年度に自主事業として 新しい概念としての感性コンテンツ研究委員会を立ち上げた。
この委員会は、平成14年度から16年度にわたり、日本自転車振興会よりの補助事業として感 性コンテンツ事業委員会の活動を行い、「感性コンテンツに係わる調査研究」に関する事業を実 施してきた。この調査事業により、デジタルコンテンツの制作流通に関するいくつかの貴重な 知見を得てきている。特に、IT 時代のけん引役である様々なマルチメディア情報と感性的処 理、さらにその中身であるデジタルコンテンツに注目し、人が心地よく感じる良質なコンテン ツを創り、鑑賞するには、エンドユーザである視聴者にはどのような視聴環境が好ましいのか、
さらに、我が国における優れた先達のクリエータたちの制作手法を分析して、多くの優秀なク リエータの育成を目指し、一方で、より感動できるコンテンツ制作にはどのような制作手法が 感性を高めることができるか、など、数多くの視聴実験を通じて事業を実施して、貴重な知見 を得ることができた。この結果、コンテンツのエンドユーザが感動できる視聴環境の提言、さ らには、優れたクリエータの育成に寄与できる優秀な制作手法の可視化やデータベース化など、
この事業によりいくつかの貴重な事業成果が得られてきている。なお、最終的には、この感性 コンテンツの調査事業を通じて、人にやさしい社会の実現に寄与することを指向し、人の心に 訴える心地良いデジタルコンテンツ、すなわち感性コンテンツをキー技術の1 つとして追求す ることが、今後のより豊かな社会生活が実現に連なると期待するものであるとした。
本調査事業は、この調査事業の事業結果を踏まえ、また情報化社会の要請に基づいて発足し たものであり、本年度は、エンドユーザが心地よく感じられるデジタルコンテンツの視聴環境 を取り上げている。特に、多様化している動画映像の表現技術において、臨場感あるプロジェ クターなどのコンテンツ視聴環境を取り上げ、この環境における使用機材の違いによる映像表 現のバラツキに注目している。中でも、エンドユーザが機材の違いによるさまざまに異なった 視聴環境において色表現の映像を視聴するという現象に注視した。そして、最終的に、視聴環 境において、どこでも誰でも動画映像制作者の意図する適切な映像の色表現の再現を目的とし、
この実現の可能性を探っていくことが急務と考えられ、この点を事業の目的とした。この観点 から、今年度の事業は、これに関する国内外のさまざまな文献調査と、我が国における有識者 の講演による動向調査、さらに先進国である米国のハリウッドを取り上げ、これを視察調査す る。また、スタジオホールなどの条件の良い視聴環境において、実際にプロジェクターを使っ てデジタルコンテンツの動画映像による感性的評価実験を行い、適切な映像の色表現の再現可 能性を探ることも目指していくものである。そして、この結果を手がかりにして、将来的に、
動画映像の色表現に関する一定の基準作りに貢献できることを指向していく。
1.1 本事業委員会の目的
本事業委員会は、最終的には21世紀のテーマである、“人にやさしい社会の構築”を目指し ている。特に、その貢献に必要な IT による情報化社会構築の要素の一つである人間が豊かな 社会を実感できる環境を創生できる、TV 放送、通信、情報家電、ビデオゲームなどに利用し ているマルチメディアデジタルコンテンツの内容と表現環境に注目している。中でも、コンテ ンツの視聴環境に関し、臨場感の得られるプロジェクターに注目し、これらの様々なプロジェ クターでも、いつでも誰でも適切なコンテンツ再現が実現できる可能性を探るものである。こ の背景には、近年のデジタル機器の著しい進歩に伴い、動画映像の表現技術の多様化が進展し ており、様々な使用機材の違いにより、映像表現のバラツキが拡大し、このために動画映像制 作者の意図する表現と異なる映像を視聴するという状況がある。このように、異なった視聴環 境にある、特に、色表現の映像を感性的観点から捉え、これを少しでも改善できる技術的可能 性を指向し、最終的に、画像の再現性に関する定量的な測定方法、評価方法、対処方法等につ いての課題の明確化及び解決方策の調査研究を行い、一定の基準作りについての知見を得るこ と目的とする。
この観点から、本事業委員会では、調査事業の初年度としてのスタンスを考え、まず、市場 調査を行うこととする。また一方で、感性的観点からの、コンテンツの色表現の再現可能性を 探るため、感性的観点から、動画映像の視聴評価実験を行い、その知見を得ることも指向して いく。このため、まず、この色再現性に関するさまざまな文献調査を行って、内外の主要情報 を収集し、その動向を調査する。次に、我が国におけるこの分野の有識者を招き、講演による 動向調査を行う。また一方で、デジタルコンテンツ、デジタルムービーの先進国である米国の ハリウッドに注目し、現地の先進的な企業を調査対象として取り上げ、その技術とトレンドを 視察調査する。また、一方で実務面から、実際にプロジェクターを使って、デジタルコンテン ツの動画映像による感性的評価実験を行い、適切な映像の色表現の再現の可能性を探ることも 目指していくものである。このため、映像コンテンツを視聴した際に表示形態にかかわらず、
同じ印象が得られるようにでき、また映像コンテンツのジャンル等に応じて色の明度や彩度等 を適切に可変できることを目指す検討を行う。実際には、現在プロジェクターとして主流とな っている、DLP(Digital Light Processing)方式に注目し、これとLCD(Liquid Crystal Display) 方式のプロジェクターとの比較評価により色再現性の実現可能性を調査していくものである。
この調査を通して、将来的には、特に色に関して、制作者の意図する画像の再現性に関する定 量的な測定方法、評価方法、対処方法等についての課題の明確化及び解決方策の調査研究に発 展させ、一定の基準作りについての提案にも結び付けたいとも考えている。
1.2 本年度の活動状況
本年度は、合計 10 回の委員会の開催し、そのうち、3回の有識者講演会を開催した。有識 者講演会は、まず9月20日に、早稲田大学 森島繁生教授が、「愛知万博『三井・東芝館』の フューチャーキャストシステムにおける感動評価」と題した講演、また、10月7日には、北陸 先端技術大学院大学 宮原誠教授が、「動画映像の感性的評価」と題した講演と、さらに、12 月5日に、「高品位画像システムExtra HI System M」と題した講演とデモンストレーション
を実施した。さらに、社会への啓蒙活動として、本委員会の委員による講演が2回実施されて いる。1つは、11月11日に、高臨場感ディスプレイフォーラム2005において、宇都宮大学大 学院教授・春日正男委員長が、「心地よい世界を拓く感性コンテンツを求めて」と題しての招待 講演を実施した(資料1)。また、ワーキンググループ活動として、2006年2月7日には、「人 間の視聴覚特性と AV コンテンツの感性的評価手法」と題しての有識者講演会を宇都宮大学で 開催した。これらの各種の事業の開催により、本事業の社会活動と、社会への啓蒙に貢献して いる。
以下に本事業委員会の活動状況について述べる。
(1) 平成17年度 第1回 動画映像の視覚評価事業委員会 日時:平成17年6月17日(金)午後3時~午後8時 場所:秀和紀尾井町TBRビル 1F 第1会議室 議事内容:
① 委員長選任および各委員自己紹介
② 平成17年度事業計画案報告(事務局)
③ 今年度委員会方針審議
(2) 平成17年度 動画映像の視覚評価事業委員会 第1回WG 日時:平成17年7月25日(月)午後3時~午後5時 場所:DCAj B会議室
議事内容:
① 評価実験計画検討
② 今年度事業内容検討
(3) 平成17年度 第2回 動画映像の視覚評価事業委員会 日時:平成17年9月20日(火)午後3時~午後6時 場所:DCAj A会議室
議事内容:
① 講演「愛知万博『三井・東芝館』のフューチャーキャストシステムにおける感動評価」:
(早稲田大学 森島繁生教授)
開発内容/観客の反応/リップシンク評価/モデル化、他
② 動画映像評価について
③ 今年度事業内容審議
(4) 平成17年度 第3回 動画映像の視覚評価事業委員会 日時:平成17年10月7日(金)午後3時~午後6時 場所:DCAj A会議室
議事内容:
① 講演「動画映像の感性的評価」:(北陸先端技術大学院大学 宮原誠教授)
高品位映像/動き表現 Jerkiness 妨害、追従視/錯視、Craik-O’brien 効果/
MUSE方式、他
② 評価実験について
③ 今年度事業内容審議
(5) 平成17年度 動画映像の視覚評価事業委員会 第2回WG
日時:平成17年11月14日(月)午前10時~午前12時 場所:DCAj B会議室
議事内容:
① 評価実験計画検討
② 今年度事業内容検討
(6) 平成17年度 動画映像の視覚評価事業委員会 第3回WG 日時:平成17年12月1日(木)午前10時~午前12時 場所:工学院大学 マルチメディアホール
議事内容:
① 評価実験内容検討
② 今年度事業内容検討
(7) 平成17年度 第4回 動画映像の視覚評価事業委員会 日時:平成17年12月5日(月)午後3時~午後7時 場所:JASIT東京田町キャンパス、東京工業大学 議事内容:
① 講演及びデモ「高品位画像システムExtra HI System M」:(北陸先端技術大学院大学 宮原誠教授) 開発目的/仕様/画像評価映像、他
② 米国調査報告
③ 今年度事業内容審議
(8) 平成17年度 第5回 動画映像の視覚評価事業委員会 日時:平成17年12月19日(月)午後3時~午後8時 場所:DCAj A会議室
調査・議事内容:
① 報告書執筆要領審議
② 米国調査報告
③ 評価実験中間報告
④ 今年度事業内容審議
(9) 平成17年度 第6回 動画映像の視覚評価事業委員会 日時:平成18年2月13日(月)午後3時~午後5時 場所:DCAj A会議室
調査・議事内容:
① 事業報告書内容審議
② 文献調査内容審議
③ 事業報告書執筆内容審議
(10) 平成17年度 第7回 動画映像の視覚評価事業委員会 日時:平成18年3月6日(火)午後3時~午後8時 場所:DCAj A会議室
調査内容:
① 事業報告書執筆内容及び纏め方審議
1.3 本事業委員会の推進体制
本事業委員会は、(財)デジタルコンテンツ協会(DCAj)における開発事業として、事業 開発政策委員会のもとに推進体制を実施している。
本事業委員会は以下に示す組織(図1.3 - 1)から成る。
図 1.3 - 1 動画映像の視覚評価事業委員会 事業推進体制
また、組織メンバーは表1.3 - 1に示すように、宇都宮大学大学院教授春日正男を委員長とし、
(財)デジタルコンテンツ協会事業開発本部先導的事業推進部が事務局を担当し、大学、企業、
財団等からなる11名の委員から構成されている。
委員役職 氏名 所属先 所属部所名・役職名 委員長 春日 正男 宇都宮大学大学院 工学研究科 教授 委員 河合 輝男 (財)NHKエンジニアリングサービス 先端応用開発部 開発部長 委員 森 俊文 (株)ビデオテック 制作本部長 委員 増村 興 (株)八峯テレビ 専務取締役 委員 神保 至 東海大学 工学部材料科学科 教授 委員 日高 恒義 東京工業大学 大学院情報理工学研究科 研究員 委員 小黒 久史 凸版印刷(株) 情報ビジネス開発本部 研究開発部 部長 委員 馬場 哲治 (株)ナムコ 事業開発グループ VT研究チームリーダー 委員 内山 裕治 日本ビクター(株) 技術開発本部 コア技術開発センター 委員 植田 信夫 (株)エム・ピー・テクノロジーズ 技術顧問 委員 森嶋 真理 (株)電通テック プロモーション・テクノロジー本部 プランナー・キュレーター 事務局 田中 誠一 DCAj 常務 事業開発本部長 事務局 工藤 浩輔 DCAj 参与 事務局 大橋 武夫 DCAj 事業開発本部 先導的事業推進部長 事務局 土屋 光久 DCAj 先導的事業推進部 研究主幹 事務局 千葉 祐治 DCAj 先導的事業推進部 研究主幹
*順不同・敬称略・各委員の所属は平成17年10月1日現在 (財)デジタルコンテンツ協会
事業開発政策委員会
動画映像の視覚評価事業委員会
表 1.3 - 1 本事業委員会の構成
1.4 平成 17 年度の事業の方向性と概要
1.4.1 はじめに
本事業委員会はまず、調査事業として初年度のスタンスを考え、国内外の文献調査、市場調 査を行うこととする。動画映像の評価技術を中心に、特に、まだ我が国には完全とはいえない 感性的評価手法について何らかの知見を得ることを目標とする。また、動画映像の表現技術に 注目し、この点に関する市場動向なども調査する。さらに、動画像の色表現に注目した感性的 評価実験などに関する知見を得るため、スタジオホールなどの理想的な視聴環境で、この種の コンテンツを使った感性的評価実験も行っていく。そして、将来的に動画映像の色表現に関す る一定の基準作りに貢献できることを指向した検討を行っていくこととする。
1.4.2 事業展開の方法
本事業委員会は、大きな方向として、まず市場調査を行うこととする。また一方で、感性的 観点からの、コンテンツの最適な色表現の再現の可能性を探る方向から、感性的評価手法に基 づき、動画映像の視聴評価実験を行い、その知見を得ることも指向していく。
この観点から、まず、動画映像の色再現性に関するさまざまな文献調査を行って、内外の主 要情報を収集し、その動向を調査する。次に、我が国におけるこの分野の有識者を招き、講演 による動向調査を行う。また一方で、デジタルコンテンツ、デジタルムービーの先進国である 米国のハリウッドに注目し、現地の先進的な企業を調査対象として取り上げ、その技術とトレ ンドを視察調査する。また、一方で実務面から、実際にプロジェクターを使って、デジタルコ ンテンツの動画映像による感性的評価実験を行い、適切な映像の色表現の再現の可能性を探る ことも目指していくものである。このため、映像コンテンツを視聴した際に表示形態にかかわ らず、同じ印象が得られるようにでき、また映像コンテンツのジャンル等に応じて色の明度や 彩度等を適切に可変できることを目指す検討を行う。実際には、現在プロジェクターとして主 流となっている、DLP(Digital Light Processing)方式に注目し、これとLCD(Liquid Crystal Display)方式のプロジェクターとの比較評価により色再現性の実現可能性を調査していくもの である。この調査を通して、将来的には、特に色に関して、制作者の意図する画像の再現性に 関する定量的な測定方法、評価方法、対処方法等についての課題の明確化及び解決方策の調査 研究に発展させ、一定の基準作りについての提案にも結び付けていくことを目指すこととする。
1.4.3 事業展開の具体的項目
以上に述べた、事業展開を総括し、以下の具体的な項目にまとめる。
1)動画映像の視覚評価に関する市場動向調査とその方向性 2)動画映像の視覚評価に関する有識者の講演調査
3)コンテンツ先進国である米国における動画映像の業界動向に関する調査 4)動画映像に関する感性的評価の実験的検討
5)海外における動画映像に関する資料検討 本年度の事業は、この方針に添って進めていく。
1.4.4 まとめ
本事業の目的に基づいて、具体的な事業展開方法について述べてきた。特に、国内外の文献
調査による動向の調査、有識者の教授講演による調査、さらには、動画映像の先進国である米 国の動向市場調査を行った。また、動画映像の色再現性の実現可能性を調査するために、動画 映像に関する感性的評価の実験的検討を実施する方向についても触れる。以下に、この方針に 添って実行していく事業内容について述べていくこととする。
第2章 動画映像の視覚評価に関する技術的動向と資料調査
2.1 はじめに
(財)デジタルコンテンツ協会(DCAj)は、情報社会をリードする良質なデジタルコンテ ンツの制作、流通、利活用の推進を目的とし、かつ、将来的に世界市場の中で世界トップレベ ルとなる我が国のデジタルコンテンツ関連産業の振興を目指すことを視野に入れて、活動を実 施している。特に、IT時代のけん引役である様々なマルチメディア情報と感性的処理、さらに その中身であるデジタルコンテンツに注目し、このコンテンツが、人が心地よく感じる良質な コンテンツ、すなわち感性コンテンツとして流通し、利活用されることにより、今後のより豊 かな社会生活の実現に貢献できる、との期待からの活動は重要である。この観点から、平成14 年度から 16 年度にわたり、日本自転車振興会よりの補助事業として感性コンテンツ事業委員 会の活動を行い、「感性コンテンツに係わる調査研究」に関する事業を実施してきた。
本調査事業は、この調査事業の事業結果を踏まえ、また情報化社会の要請に基づいて発足し たものであり、本年度は、エンドユーザが心地よく感じられるデジタルコンテンツの視聴環境 を取り上げ、この課題における調査事業を、国内外の文献調査、我が国の有識者を招き、講演 による動向調査を実施する。また、動画映像の表現技術に注目し、特に、動画像の色表現に注 目した感性的評価実験などを行い、将来的に動画映像の色表現に関する何らかの基準作りに貢 献できることを指向した検討を行っていく。さらに、制作者の意図する動画像の再現性に関す る定量的な測定方法、評価方法、対処方法等についての課題の明確化及び解決方策の調査研究 としても発展させ、一定の基準作りについての提案に結び付けたいとも考えている。
この観点から検討を進め、本章では、まず、動画映像の視覚評価に関する有識者の講演調査 を行う。このために、我が国において、この分野における先進的見識を持つ有識者の講演調査 を実施し、この結果についてまとめる。次に、国内外の文献調査として、動画映像の表現技術、
評価方法などをキーワードに、ここでは我が国の動画映像の視覚評価に関する文献調査を行い、
さらに技術資料を中心に考察し、その方向性をまとめる。
2.2 動画映像の視覚評価に関する有識者の講演調査
2.2.1 はじめに
本節では、我が国における動画映像の視覚評価に関する有識者の講演調査を行う。このため に、この分野における先進的見識を持つ2名の大学教授による講演調査を実施し、この結果に ついてまとめる。
2.2.2 早稲田大学 森島繁生教授による講演
2.2.2.1 概要
(1)日 時 : 平成17年9月20日(火) 15:00~18:00 (2)場 所 : DCAj A会議室
(3)講 師 : 森島 繁生 教授(早稲田大学理工学部応用物理学科)
(4)出席者 :(敬称略、順不同)
委員長 : 春日(宇都宮大学)
委 員 : 神保(東海大学)、日高(東京工業大学)、河合(NHK-ES)、小黒(凸版印刷)、 増村(八峯テレビ)、森(ビデオテック)、森嶋(電通テック)
事務局 : 土屋、千葉(DCAj)
(5)講演内容 : 「愛知万博『三井・東芝館』のフューチャーキャストシステムにおける感動 評価」と題し、森島教授にご講演いただいた。
2.2.2.2 講演内容
フューチャーキャストシステムとは、観客が映画の出演者になるもので、現在開催されてい る愛知万博『三井・東芝館』のメインアトラクションで公開されている。これは来場者一人一 人の顔をキャプチャリグして映画のキャストに変換させる、フルCGのSF映画『グランドオ デッセイ』という物語である。
F Fa ac ce e C Ca ap pt tu ur ri in ng g
C CG G Mo M od de el l
P Pe er rs so on na al l M Mo od de el l Re R ea al l- -t ti im me e S Sy yn nt th he es si is s i in n S St to or ry y V
Vi is si it to or r
図2.2.2 - 1 システム概要
シアターのキャパシティ240席、1時間に3回転という運営形態から、プレショー7分、メ インショー13分という20分サイクルのショーである。このプレショーで、20名を収容できる シアターを12室用意。5分以内に、各シアター20名分の髪の毛を除く顔情報をレンジスキャ ナーで取り込み、240台のPCで240名分の顔をポリゴンモデル化、それに目や唇の動きなど の演技をつけ、身体や背景などの映像と合成する。
図2.2.1 - 2 キャプチャーイメージ
本人の顔の形状にカスタマイズするポリゴンモデル化には、89ポイントの特徴点を自動抽出 し、年齢、性別推定による配役自動決定、表情合成やリップシンクの実時間製作なども、すべ てが自動化されていて、オペレーターは介在しない。
顔面に光るものがあれば、それなりに光のハイライトが反映される仕組みも持っている。ス クリーンは、12面あり、その1面ごとにリアルタイムリングは、8台のPCクラスターで行っ ている。3 台ダウンしても運用できるようにした。ただし、顔のスキャナがセンシティブなの で、ずれないようにアテンダントがガイドを行っている。また年齢推定はある程度容易だが、
男女判定が難しく、アテンダントがタッチパネルで男女の訂正を行った。
観客は自分が映画のどのシーンに登場するのか、自分の顔探しをするのに夢中で、ストーリ ーをよく覚えていない。自分が若返ったと喜ぶ高齢者や、かっこよかったとはしゃぐ人もいた 代わりに、自分が自分と実感できなかったという人もいて、人それぞれの反応があった。これ は既存の映画を観て共通感動するものとは別種の反応である。1 回ごとに自分が演じる役が変 わるため、何度もチャレンジする人もいて、1日に7回出演したという人もいた。また、しゃ
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べることのできない息子が映像のなかでは話していた場面に感動したという親御さんや、出演 した後に亡くなった方の映像があればぜひ見たいなど、さまざまな感想や要望があった。当初、
DVDに保存する案もあったが、肖像権など煩雑なため、データはすべて消去している。
今回は、顔だけであったが、フューチャーキャストは技術的には全身制御も可能であり、今 後、身体全体をリアルタイムレンダリングすれば、赤ちゃんや女性のボディを与えることもで きる。そうなればインタラクティブ性を活かしたゲームや、ストーリー性を持った映画、ある いはその両者のハイブリッドしたものなど、新しいエンターテインメントの世界が拓けてくる と思う。
今回は顔のデータを毎回とっていたが、今後データを個人認証できる IC チップなり、カー ドなりに保存しておけば、どこでも何にでも使用できるようになる。ただし肖像権の問題があ るので、映像をほしい人だけ本人のものを使い、他はデフォルトの顔で置き換えるなどという ことは、将来的に可能である。
ストーリーに没入するとは、どういうことなのか。想定される配役が誰になるのかわからな いため、コンテンツの作り方が変わってくるのではないか。インタラクティブ性が増えるほど、
予期せぬアクションが起こる。基調となるストーリーのあり方も考えていかなければならない 問題である。
モデル化した顔を業種別に分けて平均値をとると、個人性が抜けて職業の特徴だけが大きく クローズアップされてくる。顔の特徴と同様に、例えば、自動車のセダンのベストセラーの特 徴など、モデル化によって抽出することが可能となり、評価に応用することができよう。
2.2.2.3 質疑応答
・ 映像製作会社はどこか? フランスのスパーク社。
・ ストーリーが初めにありきか、システムがありきか? フューチャーキャストシステムが初 めにありきで、どういうコンテンツが感動を与えられるかを議論してストーリーが決まっ た。
・ 性別の識別は? 顔かたちをデータベースに基づいて統計的に処理している。
・ アップの目の色は? キャプチャーした目は死んでしまうので、作り物の目を入れてレンダ リングをかける。光沢感とか反射とかを考慮して行っている。
2.2.2.4 所感
・ シナリオにバリエーションを持たせたり、コンポーネント化して動的に変化させることが 可能となると思う。またシナリオ決定に、参加する観客が関与するようにすれば、ストー リーへの関心度があがると思う。
・ 高齢者や障害者が参加できるコンテンツを作れたらすばらしい。映像のなかで自分が体感 できないような人やモノになったり、違う自分を表現できたりすると面白い。
・ ストーリーのあらすじの試作に使用できないだろうか。
・ 身体全体の3Dデータを使用できる時代はすぐくると思う。
・ ゲームはパーソナルな要素が多く、映画は一般的でユーザー層が広い。この両者をつなげ る方法があれば、ユーザー層がひろがり面白いコンテンツができるであろう。
(委員 森嶋 真理)
2.2.3 北陸先端科学技術大学院大学 宮原誠教授による講演 2.2.3.1 概要
(1)日 時:平成17年10月7日(金) 15:00~18:00 (2)場 所:DCAj A会議室
(3)講 師:宮原 誠 教授(北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)
(4)出席者(敬称略、順不同)
委員長:春日(宇都宮大学)
委 員:神保(東海大学)、日高(東京工業大学)、増村(八峯テレビ)、森嶋(電通テック)、 森(ビデオテック)、植田(エム・ピー・テクノロジーズ)、小黒(凸版印刷)、河合(NHK-ES)
事務局:工藤、大橋、千葉(DCAj)
(5)講演内容:「動画映像の感性的評価」と題し、宮原教授にご講演いただいた。
2.2.3.2 講演内容 (1) 講演資料:
①視覚特性を考慮した動画像の符号化の基礎研究―MUSE,JPEG,MPEG方式の基礎-
②動画像の画質―動き物体のぼけによるテレビジョン画質劣化―
③テレビジョンにおける動画像画質―ぼけの減少と毎秒フィールド数の増加による改善―
④動きの知覚特性-フィールドくり返しに起因する滑らかさの劣化-
⑤帯域圧縮を対象としたフレーム差信号特性の実測と検討 ⑥動きの視覚特性から検討したテレビ信号帯域圧縮
⑦テレビジョン信号帯域圧縮を対象としたフレーム差信号特性の実測と検討
⑧Improvements of Television Picture Quality by Eliminating the Disturbances Caused by Interlaced Scanning
(2) 宮原誠教授の研究履歴
東工大修士(電子)では任意の伝送関数を実現できるRC能動回路を考案、回路技術に習熟。
NHK技研にて、約10年間画像信号の帯域圧縮、符号化の研究に従事。特に知覚レベルの視・
知覚、動きの視・知覚特性の研究、実験により、直交変換符号化方式、フレーム間符号化、ハ イビジョン符号化方式の基本アイディアを与えた。
画質評価は「網膜レベルの視覚特性の考慮に加えて上位階層の知覚」の考慮が重要であり、
人は静止、動き画像ともに、単純な視力より 10 倍以上の知覚能力があることを示した。この 結果を高画質の直交変換符号化、動画像の符号化の研究に結びつけ、block 歪みの解析、削減 法など、JPEG、MPEG符号化の基礎を与えた。これを発展させて、客観評価尺度(PQS)の 研究に結びつけた。画像の符号化設計、評価用の PQS ソフトは公開している。動画像の符号 化(フレーム間符号化)で発生する符号化歪みの解析、その視・知覚の心理物理学的研究成果 は、現在、LED、PDP、SEDディスプレイ方式の画質検討の基礎として使われている。
1990 年より、Audio-Visual の雰囲気、実在感、臨場感、質感などに重要な高度感性情報の ロスレス符号化の研究および心理物理学的研究「Audio-Visualの雰囲気、実在感、臨場感、質 感などの高度知覚を得るための物理要因・特性を明らかにする科学的基礎研究」に取り組む。
これらの要因を考慮した「Extra HI Quality-Audio Visual Systems」を開発。これらのインフ ラとコンテンツを融合させた、新文化「未来映像・音、芸術」創造をテーマに、東京芸術大学
と協力し、未来開拓研究project を中心に成果を発表。さらに“深い癒し”への応用の研究、
教育(情報マスターの育成)へ発展、母の胎内癒しシステム第1号を開発試作。
(3) 講演概要
① 暗闇、静寂から生まれる深いAudio-Visual表現
伝統芸能の匠や画家、陶芸家などは、現在の映像メディアの表現に満足していない。何十年 もかけて到達した深い表現を“電気紙芝居”でディスプレイされて、まちがった芸術的印象を 持たれてしまうからである。
宮原教授はAudio-Visualの雰囲気、実在感、臨場感、質感などの高度知覚を得るための物理 要因、特性を明らかにする研究を行ってきた。そして 21 世紀の新しいメディア「Extra HI System M」を開発した。
暗闇、静寂で期待できる、これまでにできなかった表現の例としては、永井ふさ子の「心の 闇」、速水御舟の「炎舞」、悲母観音、伊藤若冲の「旭日鳳凰図」、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の 世界、糺の森のエピソードの世界、井筒のシックスセンス、今昔物語などがあげられる。
上記のような心の深いところで感じるものを表現するには、高度感性情報の忠実な再現が必 要であるが、そのための物理要因のうち、黒と階調の再現は重要な要素である。品格を表現す るには、従来のテレビでは不可能な0.005cd/m2が必要であり、白(自発光)100cd/ m2および
12bit(4096) 階調の精密なγ特性の補正も必要となる。
② 動き表現 (a) Jerkiness妨害
テレビや映画でのコマ繰り返しはJerkinessと呼ばれる動き妨害を発生させる。コマ繰り返 しをしないときは、24度/秒の速い動きまで自然な動きにみえる。
(b) 追従視
テレビの動画像に対しては、目が動きに追従して見ている追従視である。その実証は、(1)、 振動している物体に対する動視力は振動の振幅によらない。(2)、また振動数が5Hz を超え ると、目が動き物体をとらえられなくなって急に見えなくなる。 以上のように眼球が動きに 追従していれば静止画を見る場合と同様に見える。よって、カメラによる動画像のボケ(動き ぶれ)は、静止画がぶれた場合のように見える。即ち、追従視である限り、動いているものが 見え難いということはない。(3)、テレビの垂直同期信号に同期した回転シャッターを用いた カメラで、シャッター速度を1/120秒、1/180秒と変えて動きボケを少なくすると動画質が改 善される。これは人の目が動きに追従して対象物が網膜上では動かず固定して捉えているため である。
人の眼球はsaccadic movementと呼ばれる動きをともなう。約220msの時間間隔できょろ きょろと自律神経により動く。蛙の目は動かないので、見ている対象物が動かないと見えない。
しかし人間は高度に発達した生物なので、対象物が動かなくても、常時見えるようにするため に眼球を不随意に動かしているものと考えられる。saccadic movementの動作中に、動物体は ほとんど見えていないが、視知覚系では「動きを直線近似して予測曲線の上にのっていれば問 題なし」と知覚しているものと考えられる。
(c) 視覚特性と画質評価
従来のS/Nでは、符号化で生ずる誤差をランダムノイズと同じ重み付けで扱っているが、客
観評価尺度(PQS)では輪郭に沿う歪は目立つので、重み付けを大きくしている。また印象的 な場面は総合画質評価に3倍くらいの重みを持つ。
動きの視覚特性を利用した帯域圧縮の例として、MUSE方式は、ハイビジョン信号を4シー ンアダプティブで1/3.5(8.1MHz)に圧縮している。
動きが非常に小さい場合には視覚特性はよりシビアになる。人間が動きを感じる速度閾は、
視覚速度で1~2分/秒である。テレビで表現できる100倍も人間の目の方がよい。高品位な映 像ではこの精度を実現しなければ作品のニュアンスが再現されない。
③ 電子画像の更なる深い表現を可能にする「Extra HI System M」
Extra HI System Mは“黒百色、肉色の変容、顕幽相即”という語で表す深い表現を有する
高品位なコンテンツを表現することを目標として開発した。
高度感性情報の忠実な再現のための要因を発見するために、まず高度感性情報として、深み、
凄み、空気感、生命感を設定し、心理物理的キー評価語として、奥行き、階調(黒を含む)鮮 鋭を手がかりとして6つの物理要因・特性(波形歪・輪郭強調、色差、絶対黒・白、インパル スレスポンスなど)を抽出した。
従来の画像処理の孤立点除去では画像がきれいになるが、感動が伝わらないので、波形歪の ないロスレス符号化を用いねばならない。
Extra HI System M は“暗闇ではなく黄昏、無音ではなく森の環境場”を実現している。
これは「顕幽相即」心地よいノイズの存在の世界であり、即ちノイズを徹底的に取り去った 後の無音よりも、森の環境の静寂が心地よいということである。また無光より「未明」「黄昏」
にこそ闇と静寂の深化があるという表現を実現している。従来のメディアでは実現し得なかっ た高度感性情報の伝達手法といえる。
④ 新次元メディア論
文系、芸術分野の人との協力は任せるのではなく、科学工学分野の人が社会、美術、心理、
宗教などを勉強して、同格に議論できる感性ある情報マイスターとなることが必要である。
2.2.3.3 質疑応答
・映画は意識して黒が見えるように作っている。テレビの黒は相対的に作る。→真っ黒にした とたん、画面の印象が違う。ディスプレイのフレームが見えてはだめ。
・感性的な評価は必要→作家の人たちはそう思っていた。電子紙芝居なんか使えるかといって いた人たちの一部が、ここまで表現できるのかと評価してくれた。
・テスト画像StEMは目的を明確にする必要がある。作者に要求をいえるレベルになること。
・動きに対する追従性の個人差、年齢差のデータは→データはないが、個人差はあるが、そん なに違わない。映画は1カットづつ、ちょっとした動きのシーンでつないでいく。人間は5Hz くらいのところまでしかフォローできない。人間がフリッカーを最大に感ずるのは、13Hz くらいまで。これを人間のクロック系と考え、サンプリングで 5~6Hz くらいまでしか情報 が入らないと考えると、きれいに説明ができる。
・人間の視覚特性について、脳の働きを含めた研究は→絶対必要。感性はこわくて触れられな かった面があるが、早くこれは常識だというところまで学問化する必要がある。
2.2.3.4 所感
・宮原教授の人間の視・知覚の心理物理学的研究にもとづいた動画像の符号化の研究成果は大 変すばらしい業績である。
・Audio-Visualの雰囲気、実在感、臨場感、質感などの高度感性情報を有するコンテンツを 実現するための基礎研究の手法、ならびにこれを実現した「Extra HI System M」は感性コ ンテンツの取り組みに対して大変参考になる。
・「芸術・心理と科学・工学の結合による新次元メディア論」が、映像・音響メディアと美的世 界、感性の世界との橋渡しとなることが大いに期待される。
(委員 河合 輝男)
2.2.4 北陸先端科学技術大学院大学 宮原誠教授による講演と現場調査
2.2.4.1 概要
(1) 日 時:平成17年12月5日(月) 15:00~19:00
(2) 場 所:北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)東京田町キャンパス、東京工業大学大岡 山キャンパス
(3) 講 師:宮原 誠 教授(北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)
(4) 出席者(敬称略、順不同): 委員長:春日(宇都宮大学)
委 員:神保(東海大学)、日高(東京工業大学)、河合(NHK-ES)、 森嶋(電通テック)、森(ビデオテック)、馬場(ナムコ)
事務局:工藤、大橋、千葉(DCAj)
(5) 講演内容:「感性のテクノロジー」についてのご講演、及び、宮原誠教授らが開発した高品 位画像システム「Extra HI System M」のデモをしていただいた。
2.2.4.2 講演内容
① 講義資料:
宮原誠教授の著書「感性のテクノロジー入門」(暗闇から生まれる映像表現)(発行所:株式 会社アスキー)[1]をベースに行われた。
② 使用機材:
ナナオ社製液晶モニター「EIZO FlexScan L985EX」を使用した。このモニターは、正確な 色の表現を必要とするプロ向けで、より多彩な色合いやより細やかな色の階調を表現できるの が特徴となっている。仕様は、解像度1,600×1,200ドット(UXGA)、視野角 上下/左右とも170 度、輝度250cd/m2、コントラスト比400:1、応答速度40ms、表示色数1,677万色、ドットピ
ッチ0.27mmとなっている。走査周波数はアナログが水平24~94kHz/垂直49~86Hz、デジ
タルが水平31~76kHz/垂直59~61Hzとなっている。PCから出力された8bitデータをディ スプレイ内部で10bit変換し、再度理想的な8bitに割り当て、ズレを調整する自動ガンマ補正 機能を搭載している。また、PCとUSBで接続することで、ガンマ値を1.4~3.0まで0.2単 位で調整できる。そのほか、「色空間変換機能」、ディスプレイ上で画像の特定の色を変換す る「6色独立調整機能」、アクティブなアプリケーションを検知して自動的に輝度/色温度/彩度
/色相などを調整する「Auto Fine Contrast」機能などを搭載している。
③ 「未来映像・音響創作と双方向臨場感通信を目的とした高品位Audio-Visual Systemの研 究」(図2.2.4 - 1)[2]:
平成8年度から平成13年度に採択された未来開拓学術研究推進事業研究プロジェクトであ り、高品位な「未来映像・音響」新文化創造、のインフラを研究開発することを目的としてお り、以下の内容となっている。
(a) 従来のコンピュータ・グラフィックス、シンセサイザーより一世代新しい高度感性情報(感 激、凄みなど)も忠実に伝達できる超高品位画像・音システムの開発。そのための必要とされ る物理要因、特性を心理物理学的基礎研究により解明し、A-V システムの実現。
(b) 研究開発される新しい道具による創作を通じて、芸術技術者(情報ソムリエ)を育て、 コン テンツ開発の分野を広げ、新たな雇用の創造。
(c) 高品位な「未来映像・音響」を歪なく効率良く通信する方法の解明。
(d) 創発メディア環境によるグループ意志決定支援のためのシステムの研究開発。
(e) 開発されるインフラ技術の応用(医学の画像診断等)
前記の研究プロジェクトの研究成果として最終的に開発した高品位画像システム「Extra HI
System M」(図2.2.4 - 2)は、東京芸術大学に保存されている高品位な名作品のディジタルア
ーカイブを製作するに堪える性能を持つものであり、それらをもとに、東京芸術大学の創作グ
ループはExtra HI System M の性能を示せるような実験的作品を本気で作った。そして、こ
図2.2.4 - 1 「未来映像・音響創作と双方向臨場感通信を目的とした
高品位Audio-Visual Systemの研究」[2]
れまでにない深い芸術性を忠実に表現できたとして、高く評価されたものである。特に、ロス レスで圧縮率1/2が可能、深い感性の測定評価について解を得ることができたとのことである。
開発されたExtra HI System Mの仕様を以下に示す。
(a) 色差が1以下の色実現:RGB発光Cross Modulationを発見し、規格化 (b) 黒の再現と階調性の再現:
従来の黒の1/100の0.005cd/m2の黒の再現 4096階調の精密なγ特性の補正方法の実現
Common Mode Noise、電源ノイズの除去。シャーシの振動制御 (c) 白(100cd/m2)の再現:みずから発光する輝き
(d) 奥行き感、鮮鋭(品位)の再現:
Impulse ResponseとAliasingの考慮 表示面の光散乱、Halation
④ 画像と映像と創作・感じる心:
宮原誠教授の著書「感性のテクノロジー入門」(暗闇から生まれる映像表現)[1]に記載され ている写真をモニターに表示しながら、宮原誠教授の思いが語られた。
(a) 自分が伝えたい“深いもの”を創作に盛り込み、その作品により、自分を表現し、人に“深 いもの”を伝えたい心があるが、それには、技術者が深い美意識を持って、「映像が持ってい る本質を変えてしまう、輪郭強調などの安易な信号処理を施す」ことは慎重にして、高忠実 に作者が伝えたいものを伝送する必要がある。そのために、画像システムには、以下の考慮 が必要である。
- 人がどんな感じ方をするか(視覚・知覚特性)
- ディスプレイの癖や特徴
- 伝送系、符号・複合化器の特徴、癖 - カメラの特性や癖
図2.2.4-2 高品位画像システム「Extra HI System M」
「蓮華寺庭園(6月、AM10:00、曇)」 [1]:
中田昭氏の作品であるが、このモニターで見る奥行き感は素晴らしい。2眼式のTVなど はいらない画像である。午前の光、樹木の枯れた感じの再現が素晴らしい。
「永井ふさ子さんポートレート」 [1]:
彼女の悲しい運命か、陰の存在として生きなければならなかった心が、凄みをともなって、
高貴な感じの雰囲気と官能的な雰囲気とが、一瞬の強い表情に表れている。このモニターで はしっとりと見えるが、一般液晶モニターではきつさだけが目立つ。
「オレンジと琺瑯水差し(カット面、古びた琺瑯ポット)」 [1]:
使い古した琺瑯の質感、新品木綿のハンカチの質感、切り口の乾いたオレンジの質感、卵 の殻の質感が素晴らしい画像である。一般液晶モニターではこれほどまでの画像は表現でき ていない。
「霧山の石楠花」 [1]:
空気感を伴って、霧と石楠花が再現されている。このモニターではヒヤッとした感じがす るが、一般液晶モニターではでない。
「トランペット(金属の高級感のある質感と立体感)」 [1]:
楽器の輝きを伴った質感と二眼視の立体映像より立体感がある画像である。
(b) テスト画像、映像について、「何を表現したいのか、それが伝達されているのか?」を深く 吟味してから使う必要がある。今後、高品位な内容を忠実に伝達できるか、表示できるか、
新たにテスト映像を作る必要がある。また、「突き詰めた究極の設計、製作、調整は、所謂“目 利き”が行うしかなく」、そのためには、自身が情報マイスターになる必要がある。
ハリウッドが決めるテスト画像だけには頼ってはいけない。工学部の学生も、クリエイタ ーの仕事をやることにより、美意識が分かるようになる。
「炎舞」 [1]:
山種美術館に収蔵されている速水御舟の作品である。自分の家が燃えて子を亡くし、いの る心でココロの闇を紅蓮の炎で描いたものであるが、深い心の世界を表現するには、引き締 まった凄みの黒の表現がなければだめである。そのためにも、0.005cd/m2までの黒を表現で きるモニターを開発した。
「旭日鳳凰図」 [1]:
伊藤若冲の作品である。和紙の裏の胡粉に光が反射するのが見える必要がある。
(c) 画像はどうディスプレイされるか(映像は正しく表現されるか)について、ディジタル化 したときの階調数と画質を分かる必要がある。
以下は、それぞれ、6bitと4bit の画像[1]であるが、量子化レベルが少ないとき、本来滑 らかな変化の画像部分に偽輪郭が生じる。一方、8bitのときは、自然な雰囲気まで再現する ことが分かる。12bit くらいまで階調数を多くすると、空気感、高品位な印象が表示するこ とが出来る。高品位画像システム「Extra HI System M」は、空気感、高品位な印象までも 表示できるものである。
「永井ふさ子さん(6bit)」、「永井ふさ子さん(4bit)」
「オレンジと琺瑯水差し(6bit)」、「オレンジと琺瑯水差し(4bit)」
「霧山の石楠花(6bit)」、「霧山の石楠花(4bit)」
「トランペット(6bit)」(、「トランペット(4bit)」 (d) 感性情報伝達の前提条件
高品位画像システム「Extra HI System M」のように完璧な伝達システムができたとして も、受け手が送り手の伝えたいものを受け取れるかどうかは、双方の美意識が一致しなけれ ば伝わらないことを留意する必要がある。
(e) 質疑
(Q1) ビット数を増やす目的は?
(A1) 映画人が求める深み、凄みを表現するには、黒の表現、ビット数、階調数が重要であり、
色の再現よりも必要性が高い。また、全体から細部まで人間の全体を見る能力は凄い。そ のためには、空間の解像度だけでなく、白から黒の階調も重要である。カラスの濡れ羽色、
しっとりとした口紅などは、相対的な黒でなく、絶対的な黒が重要である。真っ黒な闇と フレームが見える世界の違い、鼓膜で聞く音と体で聞く音の違いを認識する必要がある。
(Q2) カラープリントしたOHPの裏に白い紙を置いて見ると立体感が出るのは?
(A2) 光が中に入るマルチ反射です。印刷の凹版に近い。
2.2.4.3 高品位画像システム「Extra HI System M」の現場調査:
① 使用機材:
東京工業大学大岡山キャンパスにおいて行われた高品位画像システム「Extra HI System M」の性能実験に用いられた映像モニターおよび音響システムは、以下のものであった。
(a) 映像モニター:ソニー製DDM(Data Display Monitor)-2802CN(高品位対策型)(図2.2.4 - 2、図2.2.4 - 3)
ソニー製DDMは、世界最高の表示能力を持つトリニトロンブラウン管として1988年5 月に発表されたものであり、20×20インチの正方形の大画面に、2048×2048ラインのフルカ ラー表示を実現している。当時の標準的なコンピューター・グラフィックスやCAD/CAM用 のディスプレイの倍の細かさで、4 万字以上のアルファベットが映し出せる表示解像度を有 している。このDDMは、アメリカの運輸省FAA(連邦航空局)が国家的プロジェクトとし て進めるAAS(次世代航空管制システム)にも採用されており、全米の航空システムなどの 情報分析を行い、このような産業用分野でも、トリニトロンのきめの細かい画面、フラット な画面、しかも近くから見ても鮮明で明るい画面が評価されたことから、高品位画像システ ム「Extra HI System M」に採用したとのことである。
(b) 音響システム:宮原研究室製(図2.2.4 - 2、図2.2.4 - 3)
普通のCDであっても録音さえ良ければ、生演奏に近い音を引き出す究極の「高品位音楽 再生システム」として、宮原研究室で独自に開発されたものである。現在のCDの音が、力 がなく臨場感に欠ける原因として、再生信号のかすかな時間的ひずみにあるという仮説に基 づいて、研究開発をスタートした。音は時間とともに大きさが連続変化するアナログ信号で あり、CD はそれを一定間隔(約五万分の一秒)で区切ってデジタル信号で記録し、再生時 はそれをアナログ信号に戻すものである。CD 音質を改良するひとつの方法として時間を区 切る間隔を短くして音を滑らかにする試みもあったが、音質は大きくは変わらなかった。そ こで、宮原教授たちは、アナログに戻したCDの音信号が十億分の数秒の間隔で伸び縮みし ているのを発見し、これが音質劣化の原因のインデックスだと究明し、音響システムを改良 したものである。東京芸術大学の先生も、CD に記録されていた音を装置が忠実に引き出し ており「目をつぶると、演奏者がすぐそばにいるみたい」と高い評価をしている。
② 高品位画像システム「Extra HI System M」:
以下に示す映像(1カット、6秒)をソニー製DDM(Data Display Monitor)-2802CN(高品 位対策型)に表示し、同時に宮原研究室製音響システムで音(Enya の音楽など)を流しなが ら、宮原誠教授の説明があった。映像の中の文字は東京芸術大学の先生が書かれたものであっ た。
(a) デモ映像
「静止画(白黒)」:暗闇の実験室の中で、さらに黒の深みが印象的であった。
「悲母観音」[1]:東京芸術大学の原点となる作品であるが、精細に描かれた悲母観音の高貴 さ、気品が漆黒の闇に浮かぶものである。画像自身のコントラストが低く、黒もさほど濃く もないが、白から黒への十分なる階調が滑らかに表現できていた。
「広隆寺弥勒菩薩」:京都太秦広隆寺の売店で購入した写真からのものである。奈良の飛鳥苑 の先代の主人が撮影したものであるが、照明光を少なくし、ピントを目と指の辺りにあわせ、
焦点深度を深くして撮ったものである。0.005cd/m2の漆黒の再現により、弥勒菩薩の慈愛、
厳しさ、やさしさ、色っぽさが表現できている。
「夏目雅子」:彼女のまなざしや髪の毛の細かさが素晴らしく表現できている。
(b) 質疑
(Q1) 1シーンの長さが6秒とのことであるが、作品ごとにもっと長く見せたほうが良いので
は。長く見ると印象が変わってくる。
(A1) ごもっとも。映像制作のプロのアドバイスをお願いしたい。
(Q2) 映像モニターと印刷物の違いは?
(A2) 映像モニターは、自分で光っているので色が異なってくる。
(委員 馬場 哲治) 図2.2.4 - 3 高品位画像システム「Extra HI System M」