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スモン検診受診者の骨量・筋肉量と身体状況の関連について

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Academic year: 2021

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(1)

A. 研究目的

スモン患者の高齢化に伴い日常生活の自立度が下が り、 生活の質の低下が危惧される。 そこで身体の状況 (歩行・日常生活・転倒等) と骨量・筋肉量・握力と の関連を分析することでスモン患者支援の一助とする ことを目的とする。

B. 研究方法

対象者は平成 27 年度および平成 28 年度の愛知県ス モン検診受診者実 29 名のうち女性 22 名について分析 した。 筋肉量については、 体成分分析装置 InBodyS10 (BIA 法) を使用し、 身長の影響を考慮した筋肉量の 指 標 で あ る Baumgartner の 定 義 に よ る 骨 格 筋 指 数 SMI (kg/m2) を算出した。 また SMI を上肢 SMI と 下肢 SMI に分解した。 骨量測定は超音波式踵骨骨評 価装置 AOS-100 (ALOKA 社) を用いた。 握力は、 左 右それぞれを測定し、 平均を握力値とした。

統計学的解析は SPSS Statistics 19 を用い有意水準 を 5%とした。 正規性の検定を行い、 有意に正規分布 に 従 わ な い こ と を 確 認 後 、 個 人 票 の 歩 行 (1〜6 自 助 具等、 7〜9 独歩)・1 日の生活 (1〜5 ほとんど屋内、 6 毎日外出)・最近 1 年間の転倒 (1〜2 なし、 3〜4 あり)・

異 常 知 覚 (1〜2 中 等 度 以 上 、 3〜4 軽 度 ・ な し ) ・ Barthel Index (80 未満、 80 以上) について二群に分 け て 、 BMI・ SMI・ 上 肢 SMI・ 下 肢 SMI・ 骨 密 度 (OSI・ 若 年 成 人 比 ・ 同 年 齢 比 ) ・ 握 力 と の 関 連 を ノ ンパラメトリック法の Mann-Whitney の U 検定を行っ て分析した。

(倫理的配慮)

本調査は、 名古屋市衛生研究所疫学倫理審査委員会 (平成 26 年 10 月 1 日) の承認を得て実施した。 スモ ン検診受診者に対して、 口頭および書面でデータ解析・

発表の同意を得た。 情報は統計処理のみに用いるもの とし、 個人は特定できない。

― 212 ―

スモン検診受診者の骨量・筋肉量と身体状況の関連について

山田 敬一 (名古屋市健康福祉局)

原田 裕子 (名古古屋市衛生研究所疫学情報部) 伊藤 勇貴 (名古屋学芸大学 管理栄養学部) 山中 克己 (名古屋学芸大学 管理栄養学部) 須崎 尚 (名古屋学芸大学 管理栄養学部) 安友 裕子 (名古屋学芸大学 管理栄養学部)

研究要旨

対象者は、 平成 27 年度および平成 28 年度の愛知県スモン検診受診者実 29 名のうち女性 22 名 (実) について分析した。 歩行・1 日の生活・最近 1 年間の転倒・異常知覚・Barthel Index について二群に分けて、 SMI (上肢 SMI・下肢 SMI)・骨密度 (OSI・若年成人比・同 年齢比)・握力との関連を分析した。 独歩以上の群は車椅子・歩行器・松葉杖等の自助具利 用群と比較して骨密度に有意な差が認められた。 ほとんど毎日外出群は、 歩行との関連と同 じように骨密度が有意に高い結果になった。 歩行時の垂直荷重や刺激が骨量の維持に良い影 響を与えていることが推察される。 また、 転倒あり群 (n=12) のうち 11 事例 (92%) は異 常知覚が高度・中等度であったことから今後の運動指導にはバランス運動能力維持の指導な どスモン特有の配慮の必要性も示唆された。

(2)

C. 研究結果

①スモン検診受診者の性別統計量を表 1に示した。

(②以降は女性を分析)

②歩行との関連について

(自助具等 n=13、 独歩 n=9)

独歩群は、 自助具等の群に比較して上肢 SMI 以外 の BMI・SMI・上肢 SMI・下肢 SMI・骨密度 (OS I・若年成人比・同年齢比)・握力が高かった。 中で も OSI・ 若 年 成 人 比 に 有 意 差 が 認 め ら れ た 。 上 肢 SMI に は 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た も の の 、 自 助 具群が独歩群より高い結果となった。 (図 1、 図 2)

③1 日の生活 (動き) との関連について (ほとんど屋内 n=16、 毎日外出 n=6)

ほとんど毎日外出している群は、 ほとんど屋内での 生活群に比較して SMI・下肢 SMI・骨密度 (OSI・

若年成人比・同年齢比) ・握力が高く、 同年齢比は 有 意 差 が 認 め ら れ た 。 (図 3、 図 4) BMI は ほ と ん ど屋内での生活群の方が高かった。

④転倒との関連について

(転倒あり n=12、 転倒なし n=10)

しばしば倒れそうになったも含めると 1 年以内転倒 あ り 群 は 55% で あ っ た 。 転 倒 あ り 群 は 転 倒 な し 群

― 213 ― 表 1 記述統計量 性別=M

記述統計量 a

性別=F

記述統計量 a

図 1 歩行と筋肉量

図 2 歩行と骨密度、 握力

図 3 1 日の生活 (動き) と筋肉量

図 4 1 日の生活 (動き) と骨密度

(3)

と比較して、 BMI・SMI・下肢 SMI・握力が低かっ たが、 骨密度 (OSI・若年成人比・同年齢比) の差 は少なかった。 いずれも有意な差は認められなかっ た。 (図 5、 図 6) また、 転倒あり群 (n=12) の 11

事例は異常知覚が高度・中等度であった。

⑤異常知覚との関連について (あり n=17、 なし n=5)

78%が異常知覚中等度以上であった。 異常知覚が中 等度以上 (以下、 あり群) は軽度またはなし (以下、

なし群) と比較して、 SMI・上肢 SMI・下肢 SMI・

骨 密 度 (OSI・ 若 年 成 人 比 ・ 同 年 齢 比 )・ 握 力 が 低 かった。 しかしいずれも有意な差は認められなかっ た。 また、 異常知覚あり群はなし群と比べて筋肉量 や骨密度のばらつきが大きかった。 (図 7、 図 8)

⑥Barthel Index との関連について (80 未満 n=4、 80 以上 n=17)

81%が自立状態の 80 以上であった。 80 以上の群は 80 未 満 の 群 と 比 較 し て 、 BMI・ SMI・ 上 肢 SMI・

下肢 SMI・骨密度 (OSI・若年成人比・同年齢比)・

握力が高い結果であった。 しかしいずれも有意差は 認められなかった。 (図 9、 図 10)

D. 考察

スモン検診受診者の身体状況と筋力・骨密度・握力 (筋力) との関連を調査した。

歩行との関連では、 独歩以上の群は車椅子・歩行器・

― 214 ― 図 5 最近 1 年間の転倒と筋肉量

図 6 最近 1 年間の転倒と骨密度

図 7 異常知覚と筋肉量

図 8 異常知覚と骨密度、 握力

図 9 Barthel Index と筋肉量

図 10 Barthel Index と骨密度

(4)

松葉杖等の自助具利用者と比較して筋肉量・骨密度・

握力 (筋力) ともに高い結果となった。 骨密度は有意 な差が認められ、 歩行時の垂直荷重や刺激が骨量の維 持に良い影響を与えていることが推察された。 有意差 は認められなかったものの、 上肢の筋肉量は自助具利 用者が高い結果となった。 日々の移動手段として自助 具等の利用は上肢の筋肉量を維持させている可能性が あると考えられる。

また、 ほとんど毎日外出群は、 歩行との関連と同じ ように骨密度が有意に高く、 日常生活の範囲の広さが 骨量の維持に良い影響を与えていることが推察された。

転倒あり群はなし群に比べて筋肉量は低かった。 そ の他の指標を見てみると、 転倒あり群 (n=12) のう ち 11 事例 (92%) は異常知覚が高度・中等度であっ たことから、 転倒の原因となる背景には骨密度や筋肉 量だけでなく、 異常知覚の影響の可能性も示唆された。

また、 受診者の 8 割近くに中等度以上の異常知覚が 認められ、 その筋肉量や骨密度のばらつきが大きかっ たことから個人差が大きいことが示唆された。 今後の 運動指導には個別的なバランス運動能力維持の指導な どスモン特有の配慮の必要性も示唆された。

E. 結論

今回、 身体状況 (歩行・日常生活・転倒・異常知覚・

Barthel Index) を 2 群 に 分 け て 調 査 し た 結 果 、 独 歩 で生活範囲が屋外まで可能な群に有意に骨密度が高かっ たことが示された。 外出頻度の現状維持への支援など 日常生活機能の低下をできるだけ予防する支援が必要 である。 また、 異常知覚の影響が転倒に結びついてい る可能性も示唆された。

これらのことから、 異常知覚の有無などスモン特有 の症状や身体状況の個別性に配慮し、 今後も事故防止 も含めた日常生活指導、 運動指導、 栄養指導が求めら れる。

G. 研究発表 1 . 論文発表

なし 2 . 学会発表

なし

H. 知的財産権の出願・登録状況 なし

I. 文献

1 ) 原発性骨粗鬆症の診断基準改訂検討委員会:原発 性骨粗鬆症の診断基準, Osteoporosis Japan 1 (1), 9-22, 2013

2 ) 西沢良記他:骨粗鬆症 Q&A, 先端医学社, 2010 3 ) 飛田哲郎, 原田敦:サルコペニアの診断法 〜高

齢者の転倒・骨折予防を目的として〜, CLINICAL CALCIUM, vol 23, No 5, 73-78, 2013

4 ) 瓦林信子, 大里進子:高齢者の骨量に及ぼす各種 要 因 の 検 討 , 九 州 栄 養 福 祉 大 学 紀 要 9 , 155-163, 2012

5 ) 原田敦, 秋下雅弘:サルコペニア定義と診断に関 する欧州関連学会のコンセンサスの監訳と Q&A, 日老医誌 49, 2012Y

6 ) 伊 賀 瀬 道 也 , 越 智 雅 之 ほ か : 高 齢 者 に お け る sarcopenia, sarcopenic obesity と転倒リスクの関連, Modern Physician Vol 31, No 11, 2011-11

7 ) 渡辺博史, 古賀吉生ら:高齢者の下肢筋量と筋力 の関係〜スポーツ習慣による比較〜, スポーツ障害, Vol 12, 43-45, 2007

8 ) 山田陽介:骨格筋量・筋力の評価法, 医学のあゆ み, Vol, 248 No 9, 2014

9 ) 中江公裕ら:スモン患者の重症度の変化 30 年前 との比較, スモンに関する調査研究班 平成 11 年 度報告書, P 113-121 (2000)

10) 佐々木栄子ら:スモンに関する調査研究班 異常 知 覚 を 抱 え て 生 活 し て い る ス モ ン 患 者 の 語 り , P 151-157 (2007)

― 215 ―

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