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第 5 回東北病理談話会症例の紹介

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Academic year: 2021

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(1)

第 5 回東北病理談話会症例の紹介 1

動衛研研究報告 第 118 号,1-3(平成 24 年 3 月)

 東北病理談話会は,家畜疾病の診断に関する知識・技 術の向上を図るとともに,東北各県の現場で問題となっ ている疾病や,問題となりつつある疾病についての情報 交換を目的とした勉強会として,2008 年にスタートした。

毎年 9 月に動物衛生研究所東北支所で行われている東北 病理標本検討会は,東北 6 県の家畜保健衛生所病理担当者 の研修を目的としたクローズドな会であるが,本談話会 はオープンな勉強会として,家保の方だけでなく大学や 食肉衛生検査所などからもご参加いただいている。内容 は講演と標本交見会の 2 本立てで,6 月と 12 月の年 2 回 開催しているが,2010 年は口蹄疫の発生により 6 月の開 催は中止された。

 第 5 回東北病理談話会は 2010 年 12 月 7 日に七戸町商工 会館で 14 名が参加して開催された。当所疾病診断室の久 保正法室長による「PRRS および PCV2 感染の病理」,安 全性研究チームの嶋田伸明主任研究員による「トリコテ セン系マイコトキシンが誘導する細胞内シグナル伝達機 構の解明」の講演に引き続き,山形県中央家畜保健衛生所 の水戸部俊治主任獣医師に「子牛の橋におけるアカバネ ウイルスによる非化膿性脳炎」,福島県県中家畜保健衛生 所の壁谷昌彦主任獣医技師に「羊の腸管内腔に多数の大 口腸線虫卵を含むカタル性結腸炎」について発表してい ただき,組織診断・疾病診断等について討論を行った。

 本稿では,2010 年の東北病理談話会で発表された  2 題 の症例について紹介する。

資   料

第 5 回東北病理談話会症例の紹介

三上 修 1),水戸部俊治 2),壁谷昌彦 3)

(平成 23 年 8 月 5 日 受付)

Proceedings of the 5th Tohoku Veterinary Pathology Seminar Osamu MIKAMI 1),Shunji MITOBE 2) & Masahiko KABEYA 3)

       1)三上 修(Osamu  MIKAMI) :農研機構  動物衛生研究所  東北

支所,〒 039-2586 青森県上北郡七戸町字海内 31

2) 水 戸 部 俊 治(Shunji  MITOBE): 山 形 県 中 央 家 畜 保 健 衛 生 所,

〒 990-2161  山形市大字漆山 736(現:山形県農林水産部畜産課)

3)壁谷昌彦(Masahiko  KABEYA):福島県県中家畜保健衛生所,

〒 960-8041  郡山市富田町字満水田 2 番地

      

* Corresponding  author;  Mailing  address:  Tohoku  Research  Station,  National  Institute  of  Animal  Health,  31  Uminai,  Shichinohe, Aomori, 039-2586 JAPAN.

  Tel: +81-176-62-5373   Fax: +81-176-62-5117   E-mail: mikami@affrc.go.jp 

(2)

三上 修,水戸部俊治,壁谷昌彦 2

Bull. Natl. Inst. Anim. Health    No.118. 1-3 (March 2012)

 症 例:牛(ホルスタイン),3 日齢,雌,鑑定殺。

 発生状況と臨床所見:本症例は 2010 年 10 月 2 日 に,難産のため帝王切開で娩出された。娩出時から 後弓反張,左前後肢の強直および右前後肢の脱力を 示し,起立不能であった。当該牛は初乳を摂取して いた。同農場では 7, 8 月に予定日 1 ヵ月前の死産が 2 件あった。おとり牛によるアルボウイルス流行状 況検査では,同年 9 月に県内全域でアカバネウイル ス(AKAV)抗体陽転が確認された。

 剖検所見:特に異常は認められなかった。

 組織所見:中枢神経系ではリンパ球,形質細胞お よびマクロファージによる囲管性細胞浸潤,グリア 細胞の増数およびグリア結節からなる非化膿性脳脊 髄炎が観察された(写真 1,2)。病変は中脳,橋お よび延髄では重度,大脳および小脳では髄質に軽度,

脊髄では頚〜腰髄にかけて軽度から中等度に認めら れた。抗 AKAV(OBE-1 株)兎血清(動衛研)を用 いた免疫組織化学的染色では,橋,小脳および脊髄 において散在性に病変部の軸索およびグリア細胞で 陽性反応が確認された。

 病原検査:AKAV に対する中和抗体価は,当該子 牛血清で 128 倍(初乳摂取後),母牛血清で 128 倍で あった。大脳,小脳および脊髄の PCR 検査において AKAV 遺伝子が検出された。アイノウイルス,チュ ウザンウイルスおよび牛ウイルス性下痢ウイルスは PCR 陰性であった。また,脊髄から AKAV が分離 された。

 診断と討議:組織診断名は子牛の橋におけるアカ バネウイルスによる非化膿性脳炎,疾病診断名は子 牛のアカバネ病とされた。AKAV の免疫組織化学的 染色では,一般的に神経細胞やグリア細胞などで陽 性反応が認められるが,本症例では軸索およびグリ ア細胞にだけ陽性反応がみられ,神経細胞には陽性 反応が認められなかった。しかし,このことはウイ ルスの偏在性を示すものではなく,脳幹部の別の部 位で免疫染色を行えば,神経細胞で陽性を示す部位 もあるのではないかとの意見が出された。

(東北病理談話会 症例番号 9)

 現所属:山形県農林水産部畜産課

子牛の橋におけるアカバネウイルスによる非化膿性脳炎

水戸部俊治(山形県中央家畜保健衛生所 

) 

写真 1.橋におけるリンパ球,形質細胞およびマク ロファージの囲管性細胞浸潤。HE 染色,Bar=20  μm。

写真 2.橋におけるグリア細胞の集簇巣。HE 染色,

Bar=20 μm。

(3)

第 5 回東北病理談話会症例の紹介 3

動衛研研究報告 第 118 号,1-3(平成 24 年 3 月)

 症 例:羊(サフォーク種),2 歳,雌,鑑定殺。

 発生状況と臨床所見:めん羊 22 頭,山羊 2 頭を飼 養する農場で,2010 年 8 月 31 日から 9 月 7 日にか け,放牧中のめん羊 3 頭が斃死したため,3 頭目に 斃死した個体について病性鑑定を実施した。

 剖検所見:眼瞼結膜および口腔粘膜の蒼白が認め られた。第四胃の粘膜は全体的に軽度潮紅し,内容 物は黒褐色を呈していた。十二指腸上部に線虫を多 数含む暗赤色透明な内容物の貯留が認められた。結 腸内容物中には線虫が散見された。また,気管〜気 管支内腔に泡沫がみられた。その他の臓器に著変は 認められなかった。

 組織所見:結腸では,粘膜表面に脱落した粘膜上 皮細胞および好酸性滲出物を含む粘液が偽膜状に付 着し,陰窩の杯細胞の軽度増数と粘膜固有層のうっ 血およびリンパ球の軽度浸潤が認められ(写真 1),

腸管内腔の腸内容物中に多数の線虫卵とまれに虫体 が確認された(写真 2)。

 その他,第四胃内腔に捻転胃虫が散見され,散在

性に胃小窩の不規則な拡張および粘膜固有層にリン パ球の軽度浸潤が認められた。十二指腸内腔には捻 転胃虫がみられた。肝臓では小葉中心性壊死が認め られた。

 病原・血液生化学的検査:細菌検査では有意な菌 は分離されなかった。糞便検査では,線虫卵:20,000  OPG,含子虫卵:378 OPG を検出した。血液生化学 的検査では,血清中 Cu:150.1  μg/d

l

,血清中 Fe:

63.4 μg/d

l

であった。

 診断と討議:組織診断名は羊の腸管内腔に多数の 大口腸線虫卵を含むカタル性結腸炎,疾病診断名は 羊の捻転胃虫症および大口腸線虫症とされた。本症 例では,剖検時に結腸に寄生する大口腸線虫を認め たが,組織所見で結腸粘膜に虫体の咬着や肥厚など の特徴的所見は認められず,虫体は結腸で成長し宿 主斃死時には成虫期に移行していたものと考えられ た。また,腸内容物中に多数の虫卵が認められた点 は,大口腸線虫の特徴的所見であるとされた。

(東北病理談話会 症例番号 10)

 

羊の腸管内腔に多数の大口腸線虫卵を含むカタル性結腸炎

壁谷昌彦(福島県県中家畜保健衛生所)

写真 1.結腸粘膜表層の滲出物と杯細胞の軽度過形 成。HE 染色,Bar=100 μm。

写真 2.結腸内腔にみられた線虫と線虫卵。HE 染色,

Bar=20 μm。

参照

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