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荒 砂 雅 徳

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Academic year: 2021

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A Comparative Study of Thθ Old Man and the Sea and  Umi  no  Inochi" 

by Wahei  Tatematsu  in an Elementary School  ]apanese Language Textbook  教科・領域教育専攻

言語系コース (英語) 荒 砂 雅 徳

I  研究の目的

『老人と海』に関する先行研究は数多く存在 する。しかし、批判的に解釈をしている先行 研究は少ない。まず、これら『老人と海』に 関する研究を集約し、それに「海の命」に関 する先行研究を対比させ、自らの意見をまと める。

まず、「海の命」は復讐と愛の物語である。

瀬のもぐり漁師だった父親を巨大なクエとの 闘いで、失った太ーは、父親のような優れた漁 師になるべく村の長老与吉じいさに漁を学び、

与吉じいさの死後、青年へと成長した太ーは 父親が死んだ瀬にもぐる。その深い岩陰に父 を殺した巨大なクエを見つける。復讐に燃え る太ーはモリを突き刺そうとするが、クエは 微動だにしない。与吉じいさから自然の摂理 と自然と人間の共生について教わっていた太 ーは、クエに父親の存在をも認めついに殺さ ずにおく。その後、太ーは村一番の漁師にな ったが、巨大なクエにモリを打たなかったこ とは、生涯誰にも話さなかった、という結末 である。

それに対して、『老人と海』では、 90日間

指 欝 損 前 田 一平 ヤゴは、その大魚の骸骨を漁村に持ち帰り、

浜辺に置き去りにすることによって、その骸 骨を村民や観光客の目にさらす。その結果、

骸骨はひとつの象徴になり、観る者にその象 徴的意味を解読するように迫る。しかし、こ の物語のメッセージが物理的敗北における精 神的勝利 Aman can be destroyed but not  defeated"  (103)であるならば、サンチャゴ は大魚の骸骨をしかるべき自然の場に葬り、

自らの精神的勝利のみ持ち帰ればよかったの である。両作品のこの決定的な差異が見られ るクライマックスにおける主人公の太ーと老 人の行動の違し、から、何を読み取ることがで きるかを考察する。

また加えて、『老人と海~ (1952)以前のへミ ングウェイのモダニストとしての作風につい て触れ、対比することで晩年の作品『老人と 海』に隠れるへミングウェイの作家としての 欲望を読み解き、へミング、ウェイの老いを論 じる。あわせて、『老人と海』との比較からみ えてくる「海の命」の優れた点を掲示し、授 業実践に役立てる。

も魚を獲ることができないでいる老人サンチ E 論文の構成

ャゴが、今まで誰も見たこともないような大 まずIntroductionで,本研究の研究動機,目 魚を格闘の末に釣りあげる。しかし、大魚の 的,構成について述べる。 Chapter1では,立 血におびき寄せられたサメ達に大魚は食われ 松和平著「海の命」に関する先行研究から分 てしまう。誰にも認められることもなく孤高 かる『老人と海』との類似点と「太一の成長」

にもこの「男らしし、偉業」を達成したサンチ という観点からの解釈(Ecologyから見える

(2)

− 216 − こと)を掲示する。 Chapter

n

では,アーネス

ト・へミングウェイ著『老人と海』における 大衆的評価(AmazonUSAレビ、ューより引用)と 先行研究を参考にして省察してし、く。Chapter Eでは両作品を比較することを通して,なぜ 太ーはそのことを誰にも語らなかったのか,

なぜ老人は大魚の骸骨を浜辺に置いたのかと いう両作品の類似する山場の場面に着目して 考察し,両作品の決定的な差異について言及 する。最後にConclusionとして,自分が小学 校教員として,実際に「海の命」の授業をどの ように展開していくべきかについて考察する。

E 論文の概要

『老人と海

I J

(1952)は、へミングウェイが 1954年にノーベル文学賞を受賞するきっか けとなった著名な作品である。本研究ではへ ミング、ウェイ晩年の作品『老人と海』と、そ の物語性が非常に類似する小学校6学年国語 教科書所収立松和平作「海の命」を比較研究 することを通して、若きモダニスト,へミン グウェイには考えられなかったへミングウェ イの欲望を『老人と海』から読み取り、批判 的解釈を行うことでへミングウェイの老いを 解釈する。同時に、『老人と海』との比較によ って際立つ「海の命」の解釈の次元を提示す る。

N  まとめと今後の課題

『老人と海』は,あたかも「氷山の象徴 原理」を構造化しているかのように,いわば 物語の8分の1で漁村を描き, 8分の7は大 海におけるサンチャゴの孤独な戦いを描く。

観衆のいない孤高の物語を,観衆のいる日常 世界の場面で挟み込む物語構造は極めて珍し い。自己完結したサンチャゴの孤高の物語の

前後に読者以外の認証者を配置するという異 例のテクストには,作者による恋意的な操作 が読み取れる。読者を結末で大魚の骨の象徴 的意味を解釈する共同体に参加させることに よって,既知の物語を再解釈させるという物 語構造においては,

r

氷山の象徴原理Jは自己 破綻しているといえよう。つまり,英雄的な 行為を世間の観衆に認めさせるまでは,その 行為は不完全なのだというへミングウェイの パフォーマンス観は,裏返せば,英雄的な行 為に衆目を集めたいという欲望の露呈のよう に思える。観衆を操作するというテクストに 刻まれた作者の欲望と象徴化された戦利品に 既 知 の 物 語 を 語 ら せ る と い う 演 出 (theatricali ty)において,

r

氷山の象徴原理」

の破綻が言える。読者を水面下の8分の?と 水面上の8分のlの両方を見る受動的な立場 に置くからである。そこにモダニスト・へミ ングウェイの芸術上の老いの兆候が見える。

それに対して,

r

海の命」の太ーは,父や与 吉じいさの教えの意味を自らの経験を通して 自らの認識へと高めたのだと解釈できる。そ の認識は青年太一の人生の中で最初の大きな 成長の瞬間である。その認識が覚えさせる畏 怖の念が若き太ーに,その認識を誰にも言わ なかった理由だ、と考えられる。語っても理解 してもらえない。理解してもらおうと誇張や 嘘を交えることによって,その認、識を損なっ てしまう。

t

寺してしまう。だから,ジェイク・

パーンズが言うように,

r

しゃべると,失って しまう」のである。その意味で「海の命Jは 成長物語として,小学六年生にとって優れた 学習教材だと『老人と海』との比較研究を通

じて私は考える。

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